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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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1.  プロジェクトA2/史上最大の標的 《ネタバレ》 
 世の中には「単品として考えれば悪くないけど、あの○○の続編と考えると物足りない」って映画が沢山あるんですが、本作もその一つと言えそうですね。   何せ本作ってば、冒頭にて前作「プロジェクトA」の名場面を流しており、そっちの方が本編より面白かったりするんです。  これはもう、実に残酷。  冒頭にはサモ・ハンも、ユン・ピョウもいて画面が華やかなのに、いざ本編がスタートしたら彼らは出てこないんだから、落胆するなという方が無理な話です。   そんな「続編ならではの欠点」が、劇中で散見される形になってるのも辛いですね。  例えば「敵のアジトに乗り込み、多勢に無勢で負けちゃったドラゴンを沿岸警備隊が助けに来てくれる場面」なんかも、それ単体で考えれば悪くないんだけど……  前作では敵のアジトで大暴れし、ドラゴンが一人で犯人を捕まえた流れがあっただけに(あれ? 今度は負けちゃったの?)って、拍子抜けしちゃうんです。   前作で良い味を出してた「大口」が続けて登場しているんだけど、サッパリ目立たなくて活躍しないというのも、寂しい限り。  自分は前作の感想にて「終盤で、唐突に大口が準主役級の扱いになるのは不自然」と指摘しているのだから、徹底して脇役な本作の方が、自然といえば自然なんだけど……  やはり、責任を取って欲しいというか、一度は活躍させて観客に愛着を持たせた以上、最後まで愛されるように、大事に扱って欲しかったです。   それと、前作でハロルド・ロイドの「要心無用」(1923年)をパロってみせたように、本作ではバスター・キートンの「蒸気船」(1928年)をパロっている訳だけど、それも成功してるとは言い難いんですよね。  前作では「時計の針にしがみつくだけでなく、そこから落下してみせる」という形で、元ネタを越えるほどの迫力を出していたのに、本作では元ネタと殆ど同じで「看板が倒れてくるけど、丁度枠の部分にジャッキーが収まる形になって助かった」というだけなんです。  しかも元ネタの「蒸気船」では、キートンは立ったまま位置を動いておらず、それゆえに「たまたま窓枠の中に収まって助かった」という可笑しみが生まれているんだけど、本作のジャッキーは看板が倒れてくる際に、咄嗟に位置をズラして大丈夫なよう調整しちゃっている訳で、これは如何にも拙い。  どうせ動くなら、バレないように微かに動く形ではなく、もっとダイナミックに動いて「動かないキートンと、動くジャッキー」という形で、元ネタとは違った面白さを打ち出すべきだったと思います。  あるいは、劇中で「神様、感謝」と言っている「神様」とは、喜劇の神様であるバスター・キートンの事を指しており「ドラゴンは『蒸気船』を観ていたお陰で、咄嗟に位置調整してキートンのように助かる事が出来た」って展開なのかとも思えるんですが……  劇中の時代設定は「蒸気船」が公開される前のはずなので、この解釈は無理があるんですね。残念。   何だか不満点ばかり長々と述べちゃいましたが、良かった点も挙げておくなら……  ・前作より「刑事物」としての純度は高まっており、署長に就任した主人公が腐敗した警察署を改革していく流れは、中々痛快。 ・「レバーペースト」の機械に囚われた主人公が脱出する件は、記憶に残るだけのインパクトが有る。 ・サン親分の仇を取ろうとしてた海賊達が、主人公に助けられ和解するオチは、人情譚としての魅力があって良い。 ・刑事物と歴史物とキートンが大好きなジャッキーが、それらの要素を盛りに盛った「オタク映画」と考えれば、何だか微笑ましい。   と、そのくらいになるでしょうか。  あと、これは良かった部分なのか、それとも悪かった部分なのかと判断に迷う要素もあって、それが「悪役であるチンの存在」と「時代劇らしく辛亥革命を絡めている事」ですね。  前者に関しては、ドラゴンと手錠で繋がれ一緒に逃げる場面などから(あれ? もしかして二人が和解するオチ?)と思われたのに、結局は単なる悪役のまま終わったのがスッキリしないし、後者に関しても、映画の中で活かしきれていなかった気がします。  この辺り「手錠での逃走シーンがあるからこそ、悪役にも愛嬌が生まれた」「主人公が安易に革命に加担せず、警察官として人々を守る道を選ぶ場面は良かった」って具合に、褒める事も出来そうなので、判断が難しい。   本作は試写会で流れたバージョンと、今観る事が出来る完成版とでは中盤の展開が異なっており、試写会バージョンでは「チンの悪辣さ」「革命軍の出番」が増す形になっているようなので……  そちらを観る事が叶ったなら、また印象も変わってくるかも知れません。
[DVD(吹替)] 6点(2023-10-11 09:44:43)(良:1票)
2.  プロジェクトA 《ネタバレ》 
 映画史に残る大傑作。   ジャッキーの自伝に曰く「少林寺や彷徨う戦士達を主人公にしなくても、格闘時代劇が作れる事を証明した」点が画期的との事で、言われてみれば本作の主人公って、現代の刑事物にも通じる「正義感溢れる警官」として描かれてるんですよね。  だからこそ、現代の観客にとっても感情移入し易いし、時代を越えた普遍性が有る。  そもそも中国(&香港)においては「官は悪、侠は善」(役人は庶民をいじめる悪役であり、御上に逆らう無頼漢が庶民の味方)という作劇上の伝統があった訳で、警官を主役に据えてる時点で、本作が斬新な映画であった事が窺えます。   その一方で「警察なんて辞めてやるぜ!」と啖呵を切ってバッジを投げ捨てる場面など、ちゃんと「理不尽な役人に逆らうアウトローな主人公」としての魅力も描いてるのが凄い。  当時の人々や「権力者側を善玉として描くのを嫌がる人」でも受け入れ易いよう作ってある訳で、この辺りのバランス感覚が、本当に見事。  「王道を裏切らずに、斬新な事をやってる」という形であり、これって理想的な「時代の先取り」の仕方だと思います。    自転車を駆使してのアクション(自分は「ノック」の件が特にお気に入り)も素晴らしいし、今や語り草になってる「時計台からの落下」シーンも、迫力満点。  後者に関しては、怯えるジャッキーを叱咤激励する形でサモ・ハンが監督しているとの事で、あの場面ではジャッキーが「監督」ではなく、単なる「役者」そして「スタントマン」に立ち返っているという意味でも、趣深い魅力がありますね。  「あの画には全く演技がなく、全て真剣だった」とジャッキーが語る通り、本当に限界を越えて手から力が抜けて(もう、だめだ)と思いながら落下したとの事で、作り物ではない「本物」の迫力が感じられるのも納得。   ただ、そんな名場面にも唯一の瑕が有り「時間が巻き戻ったかのように、違う落ち方を二度見せている」のが不自然なのですが……  これに関しては、劇中で「大口」役を演じたマースが、念の為に一度ジャッキーの代役として落下しているという裏話が影響していそうなんですよね。  つまり、ジャッキーが彼に敬意を表して、彼のスタント場面も無理やり本編に挿入した結果、不自然な形になったのではないかと推測出来るんですか、真相や如何に。   上述の「大口」への敬意の表れが、終盤の展開に影響してるように思える辺りも、ちょっと気になります。  本作のラスボスであるサン親分って、ジャッキーとサモ・ハンとユン・ピョウが三人掛かりで立ち向かうような強敵だったのに、何故か大口がトドメを刺す形になっているんです。  最後の漂流シーンでも、三大スターを押しのけて大口が一番目立っているし……  大口が当初から準主役だった訳でもなく、脇役に過ぎなかった事を考えると、この「急に何かが変わったかのような優遇っぷり」は、如何にも不自然。  これも、時計台落下という危険なスタントをこなした大口に対する、ジャッキー監督からの「ご褒美」だったんじゃないかと、そんな風に妄想しちゃいますね。   でもまぁ、そういった難点があったとしても、本作が傑作である事は、疑う余地が無いです。  冒頭、ジャッキーが自転車を柵に突っ込ませる場面で、もう面白くって「これから凄い映画が始まる」って予感で、ワクワクしますし。  酒場での乱闘シーンなど、音楽の使い方も上手かったです。  沿岸警備隊が復活し「これより、プロジェクトAを決行致します」と告げる場面も恰好良くって、もしかしたらココが一番の名場面じゃないかと思えたくらい。   サモ・ハン演じるフェイとドラゴンが再会する件で、自然な流れで食事してジャンケンする場面など、短い尺で「二人は旧知の仲」と納得させる演出なんかも、流石だなぁと唸っちゃいますね。  この辺りは、実際に少年時代からの付き合いである二人だからこその、阿吽の呼吸を感じました。  京劇出身な二人らしい一幕もあったりするし、色んなジャッキー映画の中でも「サモ・ハンとの絆」が、最も良い具合に作用したのが本作だったように思えます。   他にも「時計台落下はハロルド・ロイドから、逃走シーンはバスター・キートンから影響を受けている」とか、この映画について語り出すと、止まらなくなっちゃいますね。   映画の評価なんて移ろい易いものであり「子供の頃に好きだった映画が、今観るとつまらなくて幻滅しちゃう」とか、逆に「子供の頃は退屈だった映画が、名作だと気付かされる」とか、色んなパターンがある訳ですが……  本作に関しては「子供の頃も、大人になった今でも、大好きな映画」だと、胸を張って言えそうです。
[DVD(吹替)] 9点(2023-10-10 10:00:19)(良:3票)
3.  バトルクリーク・ブロー 《ネタバレ》 
 ジャッキーが自伝にて「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画を、金払って観ようという人はいない」と語っている通り、商業的には失敗した映画。  その原因は「燃えよドラゴン」(1973年)を手掛けたロバート・クローズ監督が、ジャッキーに「ブルース・リーのような魅力」を求めてしまったからに他ならない……なんてイメージがあったのですが、久し振りに再見し、それは間違いだったと気付かされましたね。   それというのも、本作は意外にもコメディ色が強くて「ジャッキーらしい魅力」を、ちゃんと描こうとしてた痕跡があるんです。  (これはブルース・リーっぽいな)と感じた場面なんて「敵の屋敷に侵入する場面」「友人を殺された仇討ちしようと、怒りの声を放つ場面」くらいでしたし。  少なくとも「ジャッキーにブルース・リーの真似事やらせたから失敗したんだ」って認識は間違ってたみたいで、大いに反省させられました。   ただ、映画として面白かったかどうかっていうと……やっぱり「微妙」「退屈」って印象の方が強いです。  ジャッキー当人はキレのある動きを見せているんだけど、肝心の相手側が「戦ってる」というより「事前の打ち合わせ通りに動いてる」って感じが見え見えで、迫力が伝わってこないんですよね。  ローラーレースの場面でもスローモーションを多用していてテンポが悪いし、演出も良くなかったと思います。   そして致命的なのが、脚本の拙さ。  何せ本作と来たら「ジャッキーが人質を取られてギャングの言いなりとなり、要求通りにストリートファイトの大会で優勝しました」ってだけの話なんです。  一応、途中で仇敵の一人は倒して溜飲を下げてるんだけど、肝心のギャングの親玉は無傷どころか、ジャッキーが言いなりになってくれたお陰で万々歳。  そんな親玉に「約束通り人質を解放する」って言われ、ジャッキーは笑顔になって終わるんだけど……  (それでハッピーエンドにして良いのか?)ってツッコむしか無かったです。  主人公の父親が料理店を経営してるとか、現実のジャッキーの生い立ちにリンクさせるような設定は悪くなかっただけに、どうにも着地の仕方に納得出来ない。  どんなにベタでも良いから「人質を取った卑劣なギャングに復讐するカタルシス」は描いて欲しかったですね。   「口笛を交えたBGMは良い感じ」とか「特訓の描写は頑張ってる」とか、一応褒めるべき点はあるし、何より自分は「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画」でも結構楽しめちゃう口なので、駄作と断ずる事は出来ないんですが……  失敗作扱いされても、特に反論しようって気にはなれないです。   それと、後世の人間としては「紆余曲折を経て、ジャッキーはハリウッドで大成功を収めた」のを知ってるからこそ、余裕を持って鑑賞出来たけど……  もし自分が「公開当時のジャッキーファン」だったとしたら、相当キツかったと思いますね。  (違うんだ、ジャッキーは本当は凄い奴なんだ)(ハリウッドで通用しなかったのは偶々なんだ)って想いで一杯になってた気がします。  成功してくれて良かったです、本当に。
[DVD(吹替)] 5点(2022-05-18 03:49:19)(良:2票)
4.  レッド・ブロンクス 《ネタバレ》 
 配給側が「ジャッキー・チェンこそが世界最大のアクションスターであると、世界中の皆に教えてみせる」という気概を持ち、並々ならぬ熱意で宣伝したという一作。  その甲斐もあり、ジャッキーの悲願であったハリウッド進出を成功させた、記念すべき作品なのですが……   所謂「ジャッキー映画」の中では、際立った傑作というほどではないというのが、少し寂しいですね。  (他にも良い映画は一杯あるのに、これを観るまで全米はジャッキーの魅力に気付かなかったのか)って、つい思っちゃいます。   とはいえ、商業的に成功しない事には始まらないんだとばかりに「米国でウケる為のアレコレ」を映画に盛り込んでいる辺りは、結構微笑ましく、また興味深くもありましたね。  この辺りは、ジャッキーの「芸術家」としての拘りとは違った「プロフェッショナル」としての懐の広さを感じられます。   アジア人以外の俳優も多く起用し、対話の大部分を英語にしてる辺りなんかが、特に顕著。  自伝によると、ジャッキーも「できるだけ国際的な香港映画」を目指していたようで「これは香港映画である」という信念は崩さないまま、可能な限りの配慮を行ったのが窺えました。   映画の完成度は高いとは言えず(香港に恋人がいるって設定、必要だった?)とか(最後ホバークラフトを使わなきゃ黒幕を逮捕出来ないって、無理矢理過ぎない?)とか、色々ツッコミ所は多いんだけど……  自分としては、そういった粗の数々も含めて楽しめちゃいましたね。   「アジア人の主人公が、治安の悪いブロンクスで生活している内に、美女二人と良い仲になり、車椅子の少年と友達になったりする」ってストーリー展開も、非常に好み。  「主人公はカンフーの達人である」と分かる場面を序盤に挟んであったりして、ジャッキー・チェンという存在を知らない観客に対し、丁寧な作りになっている点も良いですね。  これって、一見すると何気無い場面だけど、実は「ハリウッドで成功する為には、絶対必要な描写」だったと思いますし。  商業的な成功が、必ずしも傑作の条件という訳ではありませんが、こういう「目的の為に必要な事」をキチンと行ってる映画って、観ていて嬉しくなっちゃいます。   序盤、不良グループが好き勝手に暴れる件は陰鬱だけど、それだけにジャッキーが「お前らはクズだ!」と断言し、彼らを倒してみせる流れが痛快。  そこで悪い奴らを倒して「めでたし、めでたし」で終わらせず、彼らを改心させ友情が芽生えるって展開にした辺りも、ジャッキー映画らしい魅力があって好きですね。  欲を言えば、後半にその「和解」っぷりを活かし、彼らと共闘して巨悪を倒すような展開にしても良かったんじゃないかって思えるんですが……まぁ、それは贅沢な要望でしょうか。   終盤の、海から上陸して市街地を暴走するホバークラフトという展開に関しても、文句無しの迫力があって良いですね。  車に剣を添えて、擦れ違いざまにタイヤを切り裂くという「ホバークラフトの倒し方」も、恰好良くて好き。  本作が成功した理由としては、この場面も大きかったんじゃないかなって思えます。  つまり「ジャッキー・チェン特有のアクション」を求めていない観客でも満足出来ちゃうような「見せ場」が用意されている訳であり、それが客を呼ぶ一因になってくれたんじゃないかと。   それと、自分としてはスーパーの店主になったエレインってキャラが、凄くお気に入りなんですよね。  話の筋としては、ダニー少年の姉であるナンシーの方がヒロインっぽいんですが(エレインと結ばれて欲しいな)って、そう思えたくらい。  でも、ダニー少年も良い子なので、彼を喜ばせる為にはナンシーと結ばれた方が……とも思えるしで、そんな歪な三角関係が、妙に好きなんです。   ストーリー展開よりも「主人公周りの設定」「ヒロインや脇役」が魅力的っていう意味では、映画よりも、むしろ連続ドラマ向きの題材だったのかも知れませんね。  元々のプロットも「主人公は留学生で、スーパーマーケットで働いている」「様々な苦難を乗り越えて異国に馴染んでいき、周りの人々と友情を育んでいく」って形であり、一本で終わる映画よりも、何話も使えるドラマの方が面白くなりそうですし。  そうしたら、最終回にて香港に帰る主人公を、寂しそうに見送るダニー少年とか、向こうに恋人がいると理解しつつも諦めきれないヒロイン達とか、そんな展開に繋がったかもと考えたりするのが、何だか楽しい。   完成度も低く、粗も多いだけに、妄想で補う楽しみもあるという……  そんな一本でした。
[DVD(吹替)] 7点(2021-06-10 08:04:43)
5.  ナイス・ガイ 《ネタバレ》 
 美女が生き埋めにされるという、陰鬱な導入部に吃驚。  ラストも「巨大な車で、敵のボス宅を滅茶苦茶にして終わり」という形であり、どうも「レッド・ブロンクス」(1995年)の二番煎じというか……  (こういうのが、ハリウッド映画らしさなんだ)という打算のようなものが感じられて、ノリ切れませんでしたね。  自分としては「ハリウッド映画」よりも「ジャッキー映画」が観たいんだよって、つい思っちゃいます。   主人公に感情移入する前に、悪党達との追いかけっこが始まってしまう(しかも、それがやたら長い)ってのも如何かと思うし、三人いるヒロインとイチャつく場面が随所にあるのも、何か妙な感じ。  この手の「ヒロインが複数いるハーレム映画」としては「プロジェクト・イーグル」(1991年)という前例もあるし、個々の要素は「ジャッキー映画らしさ」を備えているんだけど、何かそれがチグハグなんですよね。  そもそも主人公の恋人はミキであると結論が出てる訳だから「主人公は誰と結ばれるのか」とドキドキしたり、完結後の恋愛模様を想像したりする楽しみも無い訳で、ヒロインが三人いる必然性が薄かったように思えます。   必然性といえば、主人公が料理人であるって設定も、途中から有耶無耶になっちゃうんですよね。  唯一、序盤の「客の口に料理を放り投げるショー」は面白かったし、料理人設定も活かされていたけど、本当にそれくらいですし。  ジャッキーの自伝などを読んで、彼の経歴を知っていれば「若い頃、オーストラリアのレストランや建築現場で働いてた」って事で、料理人設定や、終盤の建築現場での乱闘シーンにもニヤリと出来ちゃうけど……  知らなかった場合、鑑賞後には(で、どうして料理人設定にしたの?)って、疑問符しか残らない気がします。   そんな具合に「完成度」や「構成力」といった点で考えると、とても褒められない代物なんですが……  「面白いか、面白くないか」で考えた場合、答えは「面白い」になっちゃうんですよね、これ。   「馬車とタクシーの衝突」とか「コーラの缶が路上に散乱し、あちこちで噴水のように中身が噴き出てる」とか、印象的な場面が随所にあって、それだけでも観る価値はあったと思います。  終盤における、無数のドアを活かしたコントも面白かったし、色んな大工道具を駆使したアクションも、流石といった感じ。   監督のサモ・ハンがチョイ役で出てくるのも嬉しいし、ジャッキー映画ではお馴染み(?)のリチャード・ノートンも、ラスボスとして良い味出してましたね。  本作のMVPには、この二人を推したいくらいです。   ……以下、映画の内容とは直接関係無い余談なのですが、そもそも「ジャッキー」という名前自体、オーストラリアの建築現場やレストランで働いてる際に、同僚から「ジャッキー」と呼ばれてたのが由来だったりするんですよね。  つまり、本作における「建築現場でのアクション」「料理人という設定」って、ジャッキー映画としては凄くオイシイはずなんです。  それだけに、前者はともかく、後者の設定を活かせてないのが勿体無い。   素材は良かったのに、味付けが拙かったという……そんな印象が残る一本でした。
[DVD(吹替)] 6点(2021-05-20 15:48:07)(良:2票)
6.  コネクテッド 《ネタバレ》 
 「セルラー」(2004年)ほどのスタイリッシュな魅力はありませんが、アジア映画らしい泥臭さが濃密に盛り込まれており、あちらに負けず劣らずの傑作に仕上がっていますね。   勿論、全編に亘って改良が施されているという訳ではなく(ここは「セルラー」の方が良かったなぁ……)と思える部分もチラホラ見つかってしまうのは、非常に残念。  恐らく「セルラー」で不自然だった箇所を、なるべく自然にしようと改変を行ったのだと思いますが、それによってテンポが悪くなっていたり、逆に説得力が失われていたりもするんですよね。  この「悪くなっている部分」さえ無ければ、あの「セルラー」を越える傑作だと、胸を張って紹介出来た気がします。   中でもキツかったのが「監禁中のヒロインの手枷を解いてあげる犯人達」という場面。  確かに「セルラー」に対しても「なんでヒロインの手を縛っておかなかったんだよ」というツッコミは成立する為「最初は縛っておいた」という形にするのは分からないでもないんですが……それによって「わざわざ一度縛ったものを、何故解いた?」という、より強いツッコミ所が生まれているんだから、本末転倒じゃないかと。  無理矢理に推測するなら「手枷を解いてやる事によって飴を与え、自白させやすくする」という効果を狙ったのかも知れませんが、ちょっと分かり難かった気がします。  「セルラー」では「犯人達が手を縛る事を思い付かなかっただけ」という事で、ギリギリ納得出来る形だった訳だし、ここは変えなくても良かった気がしますね。   と、そんな具合に冒頭部で(こりゃあダメじゃないかな……)と失望させられたりもした訳ですが、その後にどんどん挽回。  気が付けば画面に釘付けになっていたんだから、やはり凄い映画なんだと思います。   先程は「セルラー」に比べて悪くなっている部分を述べましたが、それと同じか、あるいはそれ以上に良くなっている部分も多かったんですよね。  まず、主役格の「青年」「女性」「警官」の三人が、不自然な程に有能過ぎない、等身大な存在となっている点が好ましい。  中でもヒロインのグレイスが「教師だから色んな事に精通していて、何でも出来てしまう」という万能属性を取っ払われて「設計士だから電話を直す事が出来た」「男との揉み合いで勝利出来たのも、偶々刃物が血管を傷付けたから」といった感じに改変されており、これは凄く良かったと思います。  警官に関しても「これまでロクに銃を撃った事も無いはずなのに、何故か物凄く有能」というキャラから「性格に難があって降格させられている元敏腕刑事」という設定になっており、グッと説得力が増している。  極めつけはルイス・クー演じる主人公の青年であり「如何にも頼りない眼鏡姿」「でもやる時はやるという精悍な顔立ち」「経理関係の仕事をしており、頭も良い」「これまで息子に嘘を吐き続けていた為、今度こそ約束を守ろうと奔走する」というキャラクターになっていて、実に自分好みでしたね。  小道具として「バットマン」を巧みに活用し「ヒーローに憧れているはずなのに、現実と妥協して情けなく生きてきた主人公が、今度こそ本物のヒーローになる」というカタルシスを生み出している辺りなんて、見事としか言いようがないです。   誘拐犯のリーダーも貫禄があって良かったし、香港映画らしいカーアクションが盛り込まれている点も、嬉しい限り。  空港での犯人達との駆け引きも緊迫感がありましたし「一件落着かと思いきや、実は……」という、どんでん返しのやり方も上手かったと思います。   ヒロインは人妻ではなくシングルマザーなので、この後に主人公と結ばれる未来が示唆されているんですが、それも直接そうとは描かず、あくまで「結ばれるかも?」と思わせる程度に留めている辺りも、上手いバランスでしたね。  最後に息子に理解してもらえて、親子で抱き合うハッピーエンドになるのも、実に気持ち良い。  人質の命を救う為、止むを得ず息子との約束を破ってしまう主人公の姿が切なかっただけに、この「和解」のシーンは、本当に心に響くものがありました。  (あんなに約束を守ろうと頑張ったのに……)というやるせなさが強かっただけに、約束を破ってでも他人の命を救ってみせた主人公の恰好良さと、それが息子に伝わって仲直りする事が出来たという感動も、更に際立つという形。   「バットマンに転職したら?」との言葉通り、この後の主人公は、貧乏な家族を泣かせるようなヤクザ紛いの仕事なんて辞めちゃって、警官になっていたりもしそうですよね。  あるいは息子をロビン役にして、クライムファイター的なヒーローになるかも?  なんて妄想まで出来ちゃう、実に面白い一本でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-12-19 21:30:31)
7.  ライジング・ドラゴン 《ネタバレ》 
 「アジアの鷹」シリーズの第三弾……なのですが、ちょっと毛色が違うというか、外伝のような印象も受けましたね。   それというのも、本作の主人公は「JC」と呼ばれており、彼が「アジアの鷹」であると判明するのは終盤も終盤、クライマックスの空中戦においてだったりするのです。  自分としては観賞前から「プロジェクト・イーグルの続編」という気持ちでいたもので、その辺ちょっとチグハグというか、ノリ切れないものがあって残念。   多分これ、作り手側としても意図的に「主人公の正体は不明」にしておき、ラスト間際にて「主人公は、あのアジアの鷹だった」と種明かしして、驚かせる構造にしていたんじゃないでしょうか。  過去二作における主人公のトレードマック「ガムを食べるシーン」が登場するのがラスト三十分ほどになってから、というのもそれを裏付けており、ここで(あのガムの食べ方は、もしかして?)と観客に思わせた後(やっぱり、そうだった!)というカタルシスを与えるつもりだったんじゃないかなぁ……と予想します。   基本的には単独で仕事をこなすイメージのあった「アジアの鷹」が、チームワークを活かして盗みを働く存在になっている事、何時の間にか奥さんまでゲットしていた事など、戸惑う展開が多い辺りも困り物。  さながら「プロジェクト・イーグル」と本作の間に何本も作品があって、その間に仲間が増えたり、ライバルの「禿鷹」と出会ったり、結婚したりしたかのようで、置いてけぼり感がありました。   そんなこんなで、中途半端な予備知識が仇となってしまったパターンなのですが……それでも充分楽しめる作品に仕上がっている辺りは、流石という感じ。  「世界に四枚しかない切手」の内の三枚を破り捨て「世界に一枚の切手」にして価値を高めるシーンなど「物の価値とは何だろう」と考えさせる脚本になっているのは、如何にも「アジアの鷹」シリーズっぽくて、嬉しかったですね。  税関を用いた本物と偽物を入れ替えて盗むテクニックには感心させられたし「薔薇を大切にしろよ」という台詞が伏線になっており、それが黒幕の逮捕劇に繋がっている流れも良い。  「戦争によって奪われた国宝を取り戻す」という、やや堅苦しいテーマの作品なんだけど、愛国心やら戦争犯罪やらを訴える役割は新キャラのココが担っており、主人公は「中国という枠組みに囚われず、時には英国贔屓な見解を示す事もある」「昔の過ちを今の考えで裁くなんて不可能だと主張する」という中立的な描き方をしている辺りも、上手いバランスだなと思えました。   全身ローラースーツや、カメラと脚立を駆使したアクション。  それに、画面を華やかに彩る美女達の存在も、忘れず盛り込まれており、このシリーズにおける「お約束」「娯楽性」を忘れていないなと感じさせる辺りも嬉しい。  また「戦っていた敵であっても、目の前で死にそうになると、咄嗟に助けてしまう」「最初は敵対していた相手とも、なんだかんだで仲良しになる」というシーンが印象的に描かれているのも本シリーズの特徴であり、その点はヒューマニズムならぬジャッキーイズムといったものを体現していた気がしますね。  生まれてきた赤ん坊に「世界平和」という意味の名前を付ける辺りも、如何にもジャッキーらしくて好きです。   一作目においては「何よりも金が大事」という考え方だった主人公。  そんな彼が、二作目において「金よりも大事なものがあるんじゃないか?」と疑問を抱くようになり、三作目において「金よりも家族が大事だ」という結論に着地する。  三つの映画を使って、少しずつ主人公の考えが変わっていく様を描いてきたからこその感動があり、妻と仲間に囲まれて幸せそうな「アジアの鷹」を描いて終わる本作は、やっぱり嫌いになれないです。   アクション大作からの引退を決意しての、記念すべき一品という事で、主人公の妻役にジョアン・リン(=私生活においてもジャッキー・チェンの妻である女優さん)を起用する遊び心なんかも「そう来るか!」という感じがして、ニヤけちゃいましたね。  自分としては(妻になったのは誰? メイ? エイダ? エルサ? 桃子?)と、過去作の女性キャラクターを色々思い浮かべていただけに、完全に意表を突かれた形。   この「主人公の妻」のチョイスに関しては、それだけ「アジアの鷹」というキャラクターがジャッキーに愛されており、文字通りの意味で「ジャッキーの分身」と呼ぶに相応しい存在である事を証明してくれたかのようで、ファンとしては感慨深かったです。  妻だけでなく、ジャッキーとしても、これまで頑張り続けてきた自分に「お疲れ様」と伝えてあげる……そんな意図があった映画なんじゃないかな、と思えました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2018-10-18 11:43:47)(良:2票)
8.  プロジェクト・イーグル 《ネタバレ》 
 「サンダーアーム/龍兄虎弟」に続く「アジアの鷹」シリーズ第二弾。   始まって早々、お馴染みの「ガムを食べる」シーンを挟んでくれるのが、ファンとしては嬉しい限りですね。  (あのアジアの鷹が帰って来た!)と思えて、大いにテンションが上がりました。  「原住民達との追いかけっこ」「旅の移動時間に曲を流す演出」なども前作と共通しているのが嬉しい一方で、アランやメイといったキャラクター達が出て来ないのは寂しいですが……まぁ、バノン伯爵が続投しているだけでも良しとすべきでしょうか。    そんな本作は無論、アクション重視の冒険活劇なのですが、ストーリーに関しても優れていたと思います。  「宝石よりも水の方が価値がある」と、冒頭のシーンで伏線が張ってある事には感心させられるし、敵となる集団が仲間割れして「ラスボス」枠かと思われたアドルフが味方になってくれるという意外性も良い。  前作において「俺が信じる神の名は『金』さ」と嘯いていた主人公が「人間にとって、一番必要な物は何なのかな」と呟き「金」の無価値さ「水」の大切さを実感しつつ砂漠を彷徨って終わるというのも、皮肉が効いてて良かったですね。   そして何といっても……エンディング曲が素晴らしい!  数あるジャッキーソングの中でも、一番好きな曲じゃなかろうかって思えるくらいですね。  「世の中は、空気と水に満ちている」「無欲ならば、どこでも楽園さ」という歌詞は心に響くものがあり、映画の内容とも完璧に合っていて、実に味わい深い。  普段は笑いながら観賞する事が多いエンディングのNG集なのですが、この曲のお蔭で、涙が滲んでくる事さえあるほどです。   それと、本作の特色としては、もう一つ。  お色気要素が豊富な点も見逃せないですね。  キャリアウーマン風のエイダに、金髪お嬢様のエルサ、不思議な雰囲気漂う旅人の桃子と、個性豊かな三人の美女が揃っており、実に華やか。  彼女達の立ち位置が、これまた絶妙であり「主人公の存在感を食ってしまうほどには目立たない」「全くの役立たずという訳じゃなく、適度に活躍してくれる」っていう形に仕上がっているんだから、お見事です。  鉄の装備で身を固め、敵兵をボコボコにして倒しちゃう件は痛快だったし、ジャッキーに水を飲ませてもらう場面なんかは妙にエロティックで「ハーレム」な匂いすら漂っていたのも、凄く魅力的に思えちゃいました。   序盤のバイクに、巨大な送風機を駆使したラストの大立ち回りと、アクションパートの面白さも文句無し。  そういった「ジャッキー映画お馴染みの魅力」と「感動」「お色気」という本作独自の魅力とが、非常にバランス良く交じり合っている。  傑作と呼ぶに相応しい一本だと思います。
[DVD(吹替)] 9点(2018-10-04 02:38:30)(良:2票)
9.  サンダーアーム/龍兄虎弟 《ネタバレ》 
 この頃のジャッキーは意外と皮肉屋な男を演じる事が多いのですが、その最たる例が本作における「アジアの鷹」でしょうね。   単なる「良い人」ではなく「俺が信じる神の名は『金』さ」と嘯き、時には卑怯な真似もやってみせる。  それでいてジャッキー特有の「愛嬌」「優しさ」は失っていないというバランスが絶妙であり、凄く魅力的。  後に本作がシリーズ化して三部作となるのは、映画の面白さだけが理由では無く、この「アジアの鷹」というキャラクターの魅力に依るところも大きかったんじゃないかな、と思えます。   それと、本作においては主人公ジャッキーと、親友のアラン、敵の人質になっているローレライ、金持ちお嬢様のメイによる恋の四角関係も描かれており「若者達による青春物語」といった趣があるのも良かったですね。  アランとローレライの絆を確かめる為、自身の失恋にケリを付ける為に、ジャッキーが悪役を演じてみせる終盤の件なんて、特に好き。   他にも、脱出機能付きの愛車コルト・スパイダーは恰好良いし、それを駆使したカーアクション有り、お馴染みのカンフーも有りで、とっても豪華な内容なんですよね。  ともすれば「ジャッキー版インディ・ジョーンズ」という一言だけで終わってしまいそうな映画なのに、単なる模倣で終わらず、ちゃんと独自の魅力を打ち出せているのが凄い。   撮影中、ジャッキーが命に関わる程の大怪我をした影響で、冒頭の短髪姿から一気に髪が伸びた形になるのが少し不自然とか、相棒役かと思われたアランが殆ど活躍しなかったのは寂しいとか、欠点と呼べそうな部分もあるんだけど、そんなの些細な問題。  当時のジャッキー映画お馴染みの「三菱マークが目立つ事」も「ちゃんと作中で宣伝しているからこそ、これだけ派手なカーアクションが出来たんだ」と思えるし「人気歌手のアラン・タムが準主役である事」も「彼ならではのミュージック・ビデオ風の演出が良いアクセントになっている」と思えるしで、なんていうか「大人の事情」が垣間見える部分も、きっちり「映画としての長所」に変えてみせたという、懐の深さが伝わってくるんですよね。  スポンサーを満足させるだけでなく、セクシーな巨乳女性軍団を登場させるファンサービスまでしてくれるし、そういった「清濁併せ呑む」スタイルが、本作の主人公の性格とも合致していて、実に良い味を出していたと思います。   コメディ面においても「アランからの手紙を読み、ホテルの二階からロビーに戻る」件はクスッとさせられたし、アクション面も「相手のドロップキックを、下から上に突き上げるドロップキックで撃退する」という場面があったりして、どちらも印象多い。  そして何といっても、主人公のガムを食べる仕草がやたら恰好良くて、自分としては、もうそれを観るだけでも満足しちゃうんですよね。  子供時代に、何度も練習して、その仕草を真似していた事を思い出します。   数あるジャッキー映画の中で「最も魅力的な主人公は?」と問われたら、本作の「アジアの鷹」を挙げたくなる。  粗削りだけど、若々しいパワーを感じる、良い映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2018-09-25 12:55:33)
10.  スパルタンX 《ネタバレ》 
 これはジャッキー主演映画の中でも、五指に入るくらい好きな作品。   もう設定の時点で白旗を上げちゃうというか、とにかく好みなんですよね。  兄弟のように仲の良い男友達と二人暮らしで、朝起きたら武術の稽古。  それからシャワーで汗を流し、牛乳を飲んで出掛ける。  この一連のシークエンスを眺めているだけでも、楽しくって仕方ない。  お隣さん夫婦に、階下の店主と、近所の人々も魅力的で(良いなぁ、こういう暮らしをしてみたいなぁ……)って、憧れちゃうものがあります。   彼らの愛車「スパルタン号」のギミックにも痺れるし、出張屋台で働く姿も楽しそうで、おまけに謎の美女との三角関係まで付いてくるんだから、もう言う事無し。  子供の頃、何度となく「ジャッキー・チェンになりたい」と思ったものですが「じゃあ、どの映画のジャッキーになりたいの?」と問われたら「アジアの鷹」か、本作のトマスの名前を挙げていた気がします。   ジャッキー自身もベストバウトに選んでいるという、ベニー・ユキーデとの戦いも、本当に素晴らしいですね。  緊迫した空気の中に、適度なユーモアが漂っており、彼だからこそ醸し出せる魅力がある。  飄々として、惚けていて、でも強くて恰好良いという「理想の男性像」「理想の主人公像」を、そこに感じ取る事が出来ます。   対する敵の「アメリカン・ギャング」ことベニー・ユキーデの存在感も抜群であり、この戦いがベストバウトであるという以上に、彼が「ジャッキー映画最大の強敵」である事も、はっきりと感じられますね。  ラッシュの勢いが凄過ぎて、防戦一方のジャッキーが押されまくり、背中に当たったテーブルが、そのまま音を立ててズレ動いてしまう描写。  蹴りの風圧が凄過ぎて、幾つもの蝋燭の炎が、一瞬で消えてしまう描写。  どちらも印象的で「こいつは強い!」と確信させるだけの力がある。   そんな二人の戦いが「窓から落ちそうになった敵の脚を掴み、引き上げて助けてみせる主人公」という形で決着するのも、実にジャッキーらしくて好き。  彼には「相手を殺す」倒し方よりも「相手を救う」倒し方の方が、ずっと似合うと思います。   それと、本作はジャッキーがアクション面で一番目立っている訳だけど、共演のユン・ピョウはヒロインの本命となっているし、サモ・ハン・キンポーはコメディリリーフに徹して良い味を出しているしで、この三大スターのバランスが非常に良かった事も、特筆に値するかと。   思うに、監督兼任のサモ・ハンが「一番情けなくて、散々な目に遭う」という探偵の役を率先して引き受け、兄貴分としての度量の広さを示してみせたのが、成功の秘訣だったんじゃないでしょうか。  弟分の二人には、それぞれ「アクションの主役」「ロマンスの主役」を割り当てて、綺麗に纏めてみせたという形。  ラスボスも「一心同体、三銃士」という合体攻撃で倒してみせるし「三大スター夢の共演」を楽しむならば、この映画が一番だと、胸を張ってオススメ出来ます。   「三菱の宣伝が目立つ」「精神病院の患者で笑いを取る件は、ちょっと浮いているし、テンポが乱れる」などの不満点も、あるにはありますが、まぁ御愛嬌と笑って受け流せる範囲内。  それと、本作についてはDVD版やBD版も観賞済みですが、個人的には一時間半ほどでテンポ良くまとめ、BGMも素敵なTV放送版が、一番お気に入りですね。  色んなバージョンを見比べ、音楽や翻訳の違いを楽しむのも良いものですが「どれか一本だけ選んで欲しい」と言われたら、これを選ぶ事になりそうです。
[地上波(吹替)] 9点(2017-12-07 14:12:28)(良:3票)
11.  グリーン・デスティニー 《ネタバレ》 
 この作品が、後世の武侠映画に与えた影響は大きいのでしょうね。  ただ、それゆえに、現代の目からすると斬新どころか、陳腐にさえ見えてしまうのが残念なところ。  それだけ模倣されてきた画期的な作品という事ではないか、と頭の片隅では感じているのですが、観賞中「これは凄い!」と唸らされる場面には遭遇出来ませんでした。   とはいえ、終始退屈だったという訳では決してなく、壁走りや竹の上を走る場面、剣を使って敵の剣のギザギザ部分を一気に削ぎ落とす場面などは面白かったし、テンションも上がりましたね。  今時はこんなシンプルな、分かりやすい引っ張り上げ方のワイヤーアクションには中々お目に掛かれないという事もあり、何やらストップモーションで動く怪獣を見るような、時代が違うからこその目新しさもありました。   ではストーリーはどうかというと、残念ながら好みとは言い難い内容。  まず、主人公であろうイェンの立ち位置が「悪い事をしてしまって大人に追いかけられている子供」という印象なのです。  善人とは言い難いし、かといって格好良い悪党でもない。  作中の雰囲気からしても、いずれ彼女に罰が当たるという事は随所から感じ取る事が出来るので、彼女に感情移入して物語を追いかけると、酷く居心地の悪い感覚を味わう事になるのですよね。  じゃあ俯瞰で楽しもうと距離を置いて観賞すれば、何だか家出娘が引き返せずにどんどん深みに嵌っていくのを見守るだけのような気分になって、やっぱり楽しめない。  結末もハッピーエンドとは思えず、スッキリしない後味となってしまいました。   好みの映画ではない、と断言出来たら気持ちも楽なのですが、上述のアクションの数々など、面白かった部分も確かに存在しているのが、悩ましいところですね。  著名な竹林での攻防シーンも、非常に緑が印象的で、白い着物が幻想的で、美しさすら感じました。  とかく知名度が高く、エポックメイキング的な作品という事もあり、何とも判断が難しい。  この映画は面白いかと問われたら、素直に頷く事は出来ませんが、そういった諸々を含めて、観る価値はあった映画だと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2016-05-07 07:51:36)
12.  グランド・マスター 《ネタバレ》 
 二重の魅力を秘めた作品だと思います。  武侠物としても、恋愛物としても楽しめる側面を備えている。   でも、自分の場合は上記の要素どちらに比重を置いて観賞して良いのか分からず、今一つ集中する事が出来ませんでしたね。  「ウォン・カーウァイ監督? なら格闘シーンはオマケ扱いで、恋愛模様がメインなんだろなぁ……」 「おぉっ、思った以上にアクションのクオリティ高い! 甘く見てた自分が馬鹿だった!」 「これ完全に武侠映画だなぁ、やっぱ映画に先入観を持つのは禁物だわ」 「あれ? このラスボス(と思われた人物)あっさり負けちゃったけど、どう話の決着付けるの?」 「……って、結局は恋愛映画かよ!」   と、こんな感じで混乱してしまった次第。  途中から終盤にかけては、トニー・レオン演じる葉問よりも、チャン・ツィイー演じる宮若梅の方が主軸に据えられているように感じましたね。  それでいて最初と最後をキチッと葉問で〆るのは生真面目な作りでしたが、それゆえに葉問が全然目立たない場面の長さも際立ってしまい、少々軸がブレているようにも思えました。   冒頭の雨中の格闘シーンを筆頭として、アクションは格好良く描かれていましたし、監督の得意分野とも言うべき恋愛描写の部分も良かったです。  不器用な自分としては、さながら左右から腕を引っ張られているかのような居心地の悪さを覚えてしまいましたが、器用な人であれば、その両方をしっかり楽しんで、満足出来そう。  そんな器用さを備えた人が羨ましくなる、ちょっと手の届きそうにない位置に咲いている花のような映画でした。
[DVD(吹替)] 5点(2016-05-06 05:21:05)
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