1. マッチポイント
《ネタバレ》 クラシックなオペラ歌曲にのせて展開するは現代のお話なれど、中身ははるか昔から繰り返されてきたであろう男女のいざこざ。不誠実な男と、責任を迫る女。ありがちな話がアレンにかかると「運」まで動員される。神の役回りはもちろん監督なんだが。大体神様が女好きだからねえ。 自分でも誰の立場で観てるのかちょっとわかんないまま、いつ男のハリボテがはがれるのかと変に手に汗握りながらの観賞だった。とにかく性格のひん曲がっている監督の手腕が凄いとしか。スカヨハ登場一発目のシーンからこの先の倫理違反は明白、「あれ?きのうの夕方お前を見たぞ」と証言する友人がやなとこで現われるしスカヨハはどんどんヒステリックになってゆくし、落とした薬きょうを「見せて」とウルサイ妻。小心者のワタシはまったく気が休まらない。極めつけは空に放り投げた老婆の指輪。欄干に当たって、そして「こちら側」に落ちる。もちろん思い出すのは冒頭の「運」のお話。ああ、そうなるのかと思いますよね。ついに引導を渡されるのかと。・・が、ところがなんですね。つくづく食えないジジイ監督だ。 ちなみにキャスティングも天才的に的確だ。ヨハンソン以外にも「育ちが良くて」「つまらない」妻E・モーティマー、温室育ちの坊ちゃん長男M・グード。うるさい割りに鈍感な義父母。駄目刑事。こわいほどにハマっている。やっぱり監督ただ者じゃない。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-15 23:56:52) |
2. マドモアゼル
《ネタバレ》 自分の情欲や憤懣やらを周囲に撒き散らかしておいてお天道様からも成敗されない妖女のお話。うへえー、となりました。 男を破滅させてしまう女の話とくれば、日本製の人情話なら女側にもそれなりの事情なり、汲んでやりたくもなるいきさつを抱えてそうなものですが、フランス女にはそんなもの無いんだねえ。ただただ悪い。冒頭からいきなり水門開けて村の民家水浸し。理由は特に無し(!)。 顔が仏頂面のJ・モロー。教師として生徒にアカハラする場面などはただのおっかない中年女なのですがイタリア人の林業労働者の男と情交にふける終盤は色欲全開。艶っぽいというレベルを超えてもはや禍々しさすら感じましたね。いやオソロシイ話でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-04-10 16:02:13) |
3. マラヴィータ
《ネタバレ》 スタッフが楽しんで作っているなあ、と伝わる雰囲気の良い(?)クライム・ファミリー話です。無茶なことを、はっちゃけてやる。いや、面白かったです。デ・ニーロとトミー・リーにこんな役はまあバイトみたいなもんでしょう。余裕のあること、楽しそう。だいたいロバート・デ・ニーロをゲストに呼んで上映するのが“グッド・フェローズ”ですからね。この冗談センスを受け入れられれば楽しめること間違いなし。 おとーさんの過激な倍返し妄想は「わかるわかる」と膝を打ちましたし、凶暴純情長女も知能派謀略家の弟も、若々しいM・ファイファーも、この家族みんな好き。ただ何故犬の名前がタイトルなの? [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-06 00:09:53)(良:1票) |
4. まぼろしの市街戦
《ネタバレ》 殺伐とした現実風景に投げ込まれた色とりどりの夢世界。北フランスのその町がグレーの石造りが基調となっているので華やかな衣装がとりわけ映えます。 暴力と理不尽の圧倒する現実VS笑顔とカラフルの狂気。両者は拮抗し、でもやはり現実の圧は圧倒的に大きくて呆気なく病院に収まる患者たち。そこで終わらないのがこの映画の言ってみればもっとも重要な落としどころで。どっちを選ぶかな、貴方なら、私なら。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-10-23 23:10:26) |
5. マダム・フローレンス! 夢見るふたり
《ネタバレ》 同一女性をモデルにしていながら、この英作品と仏映画「偉大なるマルグリット」の手触りのあまりに違うこと。これって国の文化の違いなのか、解釈が色々できそうで興味深いですね。 まあ、フランス作の方が主人公に対してアタリがキツイです。夫の造形もヒュー・グラントよりずっとイジワル度が高く描かれている。やはり芸術の都を擁するフランス人としては、彼女のしてきたこと、そしてそれを隠蔽し煽った周囲の人間らは音楽に対する冒涜だと感じるのでしょうか。 対してメリル・ストリープ版はフローレンス女史のカーネギー公演は今尚人気が高い、その側面を評価して人物像を創っています。彼女はいたって純粋に音楽を愛し、人はその一途さに何故か惹かれる。ちょっとエド・ウッド人気に近いものを感じます。 両作品、趣は違えど印象に残る映画です。 私は映画作品としてはフランス製のガツン、としたパンチ力を買いますが、フローレンス女史への眼差しは本作の優しさが好きです。伴奏者のピアニストの彼が良いです。戸惑いつつなし崩しに巻き込まれる彼が、いつしか彼女に心を寄せてショパンを一緒に奏でるシーンはほろりとしました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-12-09 17:22:14) |
6. マジック・イン・ムーンライト
曲者W・アレンが少女マンガを撮ってる!どうした年取って丸くなりすぎたのか。 男と女が意地張り合って、本音は惹かれているのに距離をなかなか詰められない。恋敵は女に求婚するし、さあ二人の行く末やいかに、ってひねりの無いラブコメの王道ですな。いつものアレン毒はどうしたんだろう。エマ・ストーンが可愛すぎなのでじじー毒気を抜かれたのか? お話はコリン・ファースも気恥ずかしかろう的にガーリーで甘甘。でも南仏の風景の力は偉大でして、映像がきらっきらで綺麗この上ない。思いっきり純情ぶりっ子しているエマ・ストーンもすんごくキレイ。 アレン好きなら物足りないかもですが、たまにはこんなストレートなのも飲みやすいかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-05 23:47:40)(良:1票) |
7. マダムと泥棒
《ネタバレ》 古き良き英国のコメディですね。中盤以降、急激にブラックな展開になりますがイギリス人って昔からこういう感性なんだな。 もっとも、私は序盤のお人よしの老婦人が連中を信じきっているシチュエーションコメディの方が好み。大男がオウムを追いかけて屋根まで登る、いや登れない、のすったもんだは喜劇の基本。笑えます。できればあのお婆ちゃんは金の出所を知らないまま手元に残る、という筋が良かったな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-01-21 23:58:18) |
8. マイ・ビューティフル・ランドレット
1985年、不景気真っ只中の英国。くすんだ空、活気の無い街並み、素行の悪い若者に汚いコインランドリー。幅を利かすのは目端の利く移民のみ。なんにも良いことなさそうな人生にも、ほんの少しは希望の陽が差したり、人を信じたり愛したりのドラマは発生するのだね。ビターな現実話だけど、不思議と“まあいいか そんなに悪くはないよね”と思ってしまうのはD・デイ・ルイスの飄々とした雰囲気がそうさせるのかな。 [映画館(字幕)] 6点(2014-01-11 23:42:53) |
9. マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙
《ネタバレ》 英国史上初の女性首相、男社会を闘い抜き、瀕死の英国経済を立て直し、旧ソ連をして“IRON LADY”と言わしめた女傑M・サッチャー。当時政治家としての彼女の存在感は凄かった。日本の首相は印象薄くても彼女のことは明瞭に思い出せる。彼女の生涯を二時間弱に詰め込むのはそもそも無理で、やっぱり諸々のエピソード紹介になってしまっている感がある。教科書のように出来事を短く次々つながれても、こちらとしては「それ知ってる」ことばかり、たとえば予算案をめぐって党内で揉める折、サッチャー氏が持論を強硬に展開し、「おお」と思ったところでその話は終わっちゃう。がくっ。ただ、家族とのエピソードは他国民が知りえないことで、どれほどが創作かはわからないけれど、かつての栄光無く、息子に会えなくてがっかりする老女の姿には胸が詰まる思いがした。なにしろメリル・ストリープがオスカー何本でも持ってけー、と言いたくなるような卓抜の芝居芸を見せる。ほんとに上手い。個人的には彼女の演技はシツコイなあ、といつも思うけれど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-08-29 23:55:22) |
10. マレフィセント
《ネタバレ》 アナ雪に引き続き、これまたディズニーが「王子様なんていない」と言い放っております。うわあ。呪いから解き放つのは姉妹愛だったり母の愛だったり。愛の多様性を提示して、男に頼るなと女の子たちを啓蒙してんのかいな。 とは言っても女の子はフツーにロマンスに憧れるものでしょう。白馬の王子様をかのディズニーが放棄してしまったらガールズの夢は一体どこへ向かえば? マレフィセントは私が幼少期に聞いたシンプルな筋においては単なるイジワルな悪いやつ。世の中にはそういう輩も存在するよ、ということで子供にはそれで良いんじゃないだろうか。悪キャラの隠れた内面まで探って掘り下げて理解しようとか、ややこしくなるからいらないんじゃないかなーと思っちゃった。 アンジーはもう容貌がずばりハマってますので、問題なし。エル・ファニングは素朴な顔立ちで抜擢されたのでしょうが、一生懸命感が伝わりすぎで観ててやや辛い。王様は声が良くないなあ。余裕も無くてダメキングだ。VFXもキラキラしすぎかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-07-10 17:29:01) |
11. マリリン 7日間の恋
俺さあ、マリリン・モンローとちょっと付き合いあってさ、いや仕事でだけどね、というスタッフの自慢話だった。邦題といい、マリリンがこの主人公と恋に落ちました的なストーリーといい、どこまで盛ってんだか。彼女の遅刻癖とか夫との不仲とかはとっくにゴシップネタとして世間に知れ渡っていることで、この映画からはマリリンの実像なんてさっぱり見えてこない。そしてこれは創作を観ているワタシの責任ではあるんだけど、M・ウィリアムズがマリリンじゃないんだ。精一杯演じているのはわかるんだけど。メイクや仕草を真似ても、スクリーンのマリリンをなぞっても、天然マリリンの自家発光とは決定的に何かが違ってる。私はマリリン・モンローに恋焦がれたこともあるので、ミシェルに想像力を効かせることができなかった。主人公の貴族の坊ちゃんはへらへらしてるだけだし、マリリン・モンローを観てた時のトキメキももらえないし、なんだかなあな映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-11-08 01:12:22) |