Menu
 > レビュワー
 > かたゆき さんの口コミ一覧。3ページ目
かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : イギリス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12345678910111213141516
投稿日付順12345678910111213141516
変更日付順12345678910111213141516
>> カレンダー表示
>> 通常表示
41.  ニンフォマニアック Vol.2 《ネタバレ》 
「何も感じない…。私、何も感じなくなってしまったの。信じて…、いくらセックスしても、私、もう何も感じない」――。そんな衝撃の言葉を残して静かに幕を下ろしたVol.1から続く、生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”ジョーの性遍歴の物語もいよいよ後半戦。愛を信じず、セックスで得られる快感だけが生きる支えだった彼女に突如として降りかかる不感症という名の災厄(笑)。Vol.2では、冒頭からそんなセックスの快感を再び取り戻そうとするジョーの苦難に満ちた紆余曲折が描かれていきます。言葉の通じないアフリカ人に抱かれたらどうだろうと安ホテルの一室に身を投じてみたものの、やって来た2人の黒人は訳が分からない議論に明け暮れてことに及ばず(黒人男性2人の勃起したペニスに挟まれて佇むジョーの姿はなかなかシュール!笑)、最終的に辿り着いたのはアパートの一室にある秘密SMクラブでした。ちなみにこの間、ジョーは自分の処女を奪った男性と再会して一緒になってちゃっかり男の子を出産してます。でも、そんな最愛の息子が居るにも関わらず、ジョーは超ドSな男に鞭で調教されゆくうちに久し振りに性的快感を取り戻しいつの間にか濡れていた自分を発見するのでした。子供の世話なんかそっちのけでSMクラブ通いを止められなくなるジョー。ここらあたりから、それまでジョーを演じていた若い女優から一転、くたびれた身体のシャルロット・ゲンズブールというおばさん女優へとバトンタッチされるので、もはや目の保養すらなくなってただひたすらイタい展開となっていきます。このセックス大好きおばさんジョーという本作の主人公ほど反発も共感も感じさせない、見事なまでの性的ピエロを僕は初めて見たような気がします。もう完全に喋るダッチ・ワイフ(笑)。ところが、彼女の長い話をずっと聞き続けていた〝男〟が実はこれまで性経験が一切ない汚れなき童貞であることが判明します。そんな奔放な彼女と対極をなす〝汚れなき男〟が、最後に語りだす男と女のセクシュアリティの違い、そしてその違いから端を発する性差別の歴史…。最後に暗闇から聞こえてくる銃声は、結局この社会を形作る倫理観の壁は男どもにとって都合の良いように築き上げられたもので、そんな道徳的な顔をしながら裏側では「女は男の性欲を満足させるための穴でしかない(でも、子供を産み育ててくれる)」と無意識のうちに思い込んでいる男どもへの、女性たちの復讐なのでしょう。トリアー監督って、女性の心からの味方でありながら、それでも自らにもある女性たちへの醜いまでの性欲を自覚している、絶対に友達にはなりたくないタイプの超面倒臭いペシミストなんだろうね。でも、そんな彼が僕は大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2023-07-03 11:52:53)
42.  ニンフォマニアック Vol.1 《ネタバレ》 
「聞いてくれる?十代のころ、私は仲間たちとある会を作ったの」「どんな会だ?」「ファックと好色でいる権利の会よ。みんなで一緒にオナニーとかするの…。恋人は持たない。同じ男とは2度とヤらない。私たちは反抗的だった」「そうか…。で、そんな君たちは何に反抗してた?」「愛よ」「愛?」「そう、愛。愛なんてくだらないものに取り憑かれたこの世の中と闘っていたの」――。雪が舞い、冷風吹き荒ぶ寒い冬のとある夜。〝男〟は、道端に痣だらけになって捨てられたある〝女〟を発見するのだった。救急車も警察も要らない、ただ温かい紅茶が飲みたいと願う彼女を〝男〟は躊躇うことなく家へと連れて帰ってくる。〝女〟の名前はジョー。自らを生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”だと言う。雪が降り積もる音まで聞こえてきそうな静かな部屋の中で、ジョーは〝男〟にこれまでの性にまみれた自分の人生を赤裸々に語り始めるのだった…。人間の愚かさや社会の不条理をその冷徹なまでの視線で持って見つめ続けてきた鬱映画の巨匠ラース・フォン・トリアー監督の最新作は、そんな人間の性の醜さをシニカルに描いた意欲作でした。いやー、相変わらずこの人は人間、及び人間の生きる源泉であるはずのリビドー(性衝動、性欲)が嫌いなんでしょうね。なんだか中二病をこじらせた挙句にオナ禁している日本の若い男と精神構造的に似ているような気が…(笑)。でも、本作はそんな自分の言ってしまえばしょーもない悩みをまるで自己戯画化するような視線があって素直に面白かったです。きっと、そんなニンフォマニアであるジョーの話に、倫理観を一切持たずに耳を傾ける聞き手の男は、トリアー自身の投影なのでしょうね。観終わって、僕は遥か昔に読んだ18世紀フランスの自然主義文学の大家モーパッサンの代表作『女の一生』の中に出てくる神父のことを思い出してしまいました。その神父は、とても厳格で保守的でセックスこそが諸悪の根源であると妄信していて、道を歩いていた妊娠中の普通の雌犬を「この淫乱め!」と蹴り上げてしまうのです!馬鹿ですよね。セックスは人間が生きる上での重要な営みであるけれど、だからといって誰彼構わず何処ででもセックスするのは許されない。だから人は、その中間に倫理観という線を引くのだけど、この線引きの位置がいつの世も曖昧なものだから人間は何処までも愚かで社会から不幸な現実はなくならない…。そんな曖昧な線引き(もしかしてその位置を愛と呼ぶのか?笑)なんか完全に無視しちゃっているジョーのセックス遍歴の旅路は観ていて爽快ですらありました。そんなセックス大好きっ子だったジョーが最後に呟く衝撃の発言…(笑)。Vol.2も期待して観てみようと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2023-07-03 11:41:36)
43.  マーベラス 《ネタバレ》 
世界を股にかけて暗躍する凄腕女アサシンの戦いをダイナミックに描いたクライム・アクション。なんというかゆるーーーい映画でしたね、これ。よく分かんないまま始まってよく分かんないままお話が進んでよく分かんないまま終わっちゃいました。一番よく分からなかったのは、主人公演じるマギー・Qと悪役であるマイケル・キートンがそれまで命をかけて戦ってたのに、何故か急にエッチしちゃうところ。「俺たち、このまま殺るかそれともヤるか、どっちにする?」ってなんでやねん(笑)。冒頭であっけなく死んじゃうサミュエル・L・ジャクソンが中盤で「実はどっこい生きてました」って再登場するのもテキトー過ぎてもはや失笑レベル。なんか、シリアスでいくのかコメディによせるのか、最後までどっちつかずの中途半端な感じでいまいち面白くなかったです。
[DVD(字幕)] 4点(2023-07-01 02:25:20)
44.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
「ドイツ軍がこれから行う奇襲攻撃や爆弾投下、神出鬼没のUボート攻撃、全ての指令が今この空中を飛び交っている。これらの無線信号は受信機さえあれば子供でも傍受出来る。だが、その内容は高度に暗号化されている。その組合せは、159×10の18剰通り……。10人が1分間で一つの組合せを試し、1日24時間、週7日休みなく続けても、全てを調べ終わるのに2000万年もかかるのだ。しかも、それは1日のはじめに全て設定しなおされてしまう…。それが、ナチスドイツが開発した世界最高峰の暗号化システム、エニグマだ」――。本作は第二次大戦中、英国諜報部の極秘指令を受け、そんな難解な暗号化システムの解読に成功したものの長らく極秘扱いにされ、歴史の闇に埋もれていた天才数学者アラン・チューリングの生涯を描いた伝記映画だ。なるほど、数々の賞を受賞しただけあって、堅実に創られた歴史ドラマとしてなかなかよく出来ている。アラン・チューリングという天才的な頭脳を有するものの、人間としては社交性ゼロ、偏屈な変わり者が如何にして仲間たちと協力し合いエニグマという世界最高峰の暗号を解読することが出来たのか?また、第二次大戦の終結を2年は早め、多くの人命を救ったばかりか現代のコンピューターの原型と呼ぶべきシステムを開発したのに、何故それが何十年も極秘扱いされてきたのか?そんな興味深い内容であるもののいかんせん地味になりがちなテーマを極めて分かりやすく、かつ魅力あるドラマとして描き出すことに成功している。主人公の人格形成に大きく影響を与えた少年時代、仲間とともにエニグマ解読に全精力を捧げた第二次大戦下、そして、その抱えた秘密によって不遇の晩年を余儀なくされた終戦後…。ともすれば空中分解しそうなそんな三つのエピソードを、極めてバランスよく配置したその物語構築の手腕は高く評価されるべきものだろう。観客の好感を得られにくい偏屈な数学者という難しい役柄を、一人の人間として見事なまでに演じきったB・カンバーバッチの仕事ぶりも大したものだった。ただ一つ難点を挙げるとすれば、それはK・ナイトレイが演じたアランの婚約者、ジョーンの存在だろうか。同性愛者であった主人公がどうしてそこまで彼女に執着し、あまつさえ婚約者となって引き止めたのか。そこにいまいち説得力が感じられない。ここらへんをもう少し丁寧に描いてほしかった。とはいえ、歴史の荒波に翻弄され、不遇の人生を歩まざるをえなかった一人の偉人の生涯を現代に甦らせた本作の業績は称賛に値する。なかなかの佳品と言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2023-06-22 13:07:32)
45.  オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体 《ネタバレ》 
第二次大戦下、ナチスドイツを欺くためにイギリス政府が極秘に行った特殊作戦、その名も「オペレーション・ミンスミート」。それは偽装されたイギリス将校の死体を地中海に漂流させ、敢えてナチスの手に渡そうと言うもの。あらかじめ死体に持たせておいた偽造文書によって、敵の目を自軍の上陸作戦から逸らそうというのだ。あまりに無謀な作戦だったが、首相の決断により実行にうつされることに。失敗すれば2万人もの若き英国兵の命が危険に晒される。作戦の責任者として任命されたモンタギューは、集められたごく少数のメンバーとともに着々と計画を練ってゆくのだが……。実話を元に、そんな無謀とも言える極秘任務に従事した英国諜報部員たちの奮闘を描いたスパイ・サスペンス。監督は、『恋におちたシェイクスピア』で有名なジョン・マッデン。名優コリン・ファースが主演を務めたということもあり今回鑑賞してみました。題材は物凄く良かったと思うんですよ、これ。ドイツの同盟国であったイタリアのムッソリーニ政権を倒すためにシチリア島に進攻しようというイギリス軍。敵の目を島から逸らすために偽造文書を持たせた死体を海に流す(海流が変わって違うとこに流されたら終わりですやん!)なんて、常人にはとても成功するようには思えない作戦を実行に移したというだけでも凄いのに、ましてやそれが実話なんて!なのに、なんだろう、この最後まで付きまとう微妙な空気……。映像が終始暗くて地味だし、お話も無駄にややこしいのがその原因じゃないですかね。特に敵が死体を見つけてからの展開が、いったいどうなったら作戦が成功なのかいまいち分かりづらい!さらにそこに無駄としか思えない主人公のロマンス要素も加わって、まぁサスペンスが盛り上がらない盛り上がらない。もう少しお話を整理してもっと分かりやすく見せてほしかった。この監督の前作がけっこうお気に入りだっただけに残念!
[DVD(字幕)] 4点(2023-06-22 07:21:29)
46.  チャーリーとチョコレート工場 《ネタバレ》 
過去の辛い出来事が原因で人を信じることが出来なくなってしまった天才チョコ職人、ウィリー・ウォンカ。彼の造りあげたカラフルでポップでユーモラスだけど、その裏側に恐ろしい狂気を感じさせる工場で日々作られるのは世界的な人気を誇るウィリー・ウォンカのチョコレートだ。そんな魅惑的なチョコを作る工場の作業員たちは、無表情でみな同じ顔をした小人族であるウンパ・ルンパ。彼らが用意した〝特別賞〟を求めてある日、一癖も二癖もある5組の親子たちがこの謎めいた工場へと足を踏み入れる。だが、賞品を手にすることが出来るのは1組のみ。脱落した親子には、どこか歪んだモラルによって次々と酷い制裁が加えられていく……。ともすると、とても陰鬱な映画になりそうなのに、天才ティム・バートンにかかると、まるでウィリー・ウォンカの魔法のチョコのように、どこまでも明るく楽しいメルヘンに仕上がってしまうのだから凄い。この映画の優れている点は、あくまで子供の目から見た鋭い社会批判となっているところだろう。通常大人が子供に聞かせるおとぎ話には、多くの場合、子供への教訓が含まれている。例えば、赤ずきんちゃんには「子供だけで森に行くと狼をはじめとする危険がいっぱいなので絶対にダメだぞ」。アリとキリギリスには「今が楽だからと仕事を怠けていると後でしっぺ返しを食らうぞ」。浦島太郎には「酒や女にかまけていると気づいたときにはもう老人で一人ぼっちになるぞ」……。でも、大人社会にはどうしても子供に説明できないような理不尽や不条理がまかり通っている。豚のように意地汚い子供は砕いて食べてしまうよ、いつも喧嘩ばかりの子供は大きなブルーベリーにするぞ、我が儘ばかりの子供はゴミ捨て場行き、屁理屈ばかりの子供はちっさくして指チョンだ。そうやって子供に教訓ばかり垂れるあなたたち大人はそんなに立派なのですか。良い子にしていれば僕たちは立派な大人になれるのですか。でも結局、あなたたち大人も僕たち子供と大して変わらないんじゃないですか。だってこの世界には今でも戦争や犯罪や貧困がまかり通っているじゃん――。子供たちからのそんな痛烈な社会批判が最後まで一貫しているからこそ、この作品は傑作となりえている。一時期低迷していたティム・バートンが見事なまでの復活を遂げた歴史的名作と言っていい。盟友ジョニー・デップの類稀なる怪演も本作の成功に多大な貢献を果たしてることも忘れてはならない。
[DVD(字幕)] 10点(2023-06-02 11:22:31)
47.  家をめぐる3つの物語 《ネタバレ》 
人が生きていくうえで絶対に欠かせないもの、それは「家」。今住んでいる家はもちろん、過去に住んだ家もこれから住むことになるだろう家も必ず人々の記憶に深く刻まれることになるだろう。もちろん、その家に一緒に住んでいた家族や友人の思い出とともに――。これはそんな「家」にまつわる、ある三つの物語。第一話『内側で聞こえて紡がれるウソ』。家族の反対を押し切り、駆け落ち同然でで一緒になったとある夫婦。2人の可愛い子供には恵まれたものの、現実は厳しく、もはや潰れかけの古い家で貧しい暮らしを余儀なくされていた。そんな折、ある怪しい男が訪ねてくる。彼曰く、「裕福な建築家があなた方に無償で家を差し上げると申しております」。不審に思いながらも提案を受け入れた家族。早速引っ越してみると、そこはにわかには信じがたいほどの豪邸だった。当初の懸念も忘れて何不自由ない生活を満喫する家族だったが、次第に言いようのない違和感を抱き始め……。恐らくフェルトで作ったであろうキャラクターの造形が見事。子供の頃に遊んだ人形のようにぬくもりを感じさせるそんなキャラクターと反対に、紡がれる物語が恐ろしく不気味なのが良かった。このなんとも言えない違和感が最後まで良い意味で気持ち悪い。ただお話としてはありがちなもので、もう一捻りあればなお良かったと思う。第二話『敗北の心理にたどり着けない』。自らの持ち家をイノベーションして高値で売り払おうとしているとあるオーナー。銀行から多額の資金を借り入れ、家具や内装も一級品を揃えあと少しで完成するところまで辿り着く。ところが脈ありな客たちを招いて内覧会を開こうとしていた矢先、様々なトラブルに見舞われるようになる。謎の虫が大量発生したり、家電が正常に動かなかったり。さらには内覧会に招いた怪しい客が様々な理由をつけて居座ってしまい……。スマホやDIYと言った現代的で洗練されたアイテムを駆使しながら、演じているキャラクターがどれもリアルなネズミだというのが皮肉が効いていて大変グッド。人間なんて、どれだけ見た目を着飾っても一皮剝けばみな動物なんだよというシニカルなテーマがユーモラスに描かれる。特に最後、ネズミに戻ってしまった人々が小奇麗だった家をどんどん汚してゆくところが最高にグロテスクでとても良かった。リアルな虫が一斉に踊るダンスシーンは、虫嫌いな人はトラウマになるかも。お話としては、こちらもごく普通。第三話『もう一度耳を傾けて太陽を目指して』。大地がほとんど水没してしまった未来。数少ない残された土地でアパートを経営する大家の女性が、様々な訳アリ住民に悩まされる姿をコミカルに描く。最後は何処か希望を持たせる物語で締めたかったのだろうが、いまいちパンチに欠ける印象。猫というキャラクター造形も別段新鮮味を感じなかった。ただヒステリー気味な主人公と何処かイカレタ住民との嚙み合わない会話劇はシュールで良かった。それぞれに独創的なセンスを感じさせるそんなストップモーション・アニメ。お話としてはありがちなものばかりだったが、三者三様のこの唯一無二の世界観はどれも好みで普通に楽しめました。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-31 10:31:46)
48.  おみおくりの作法 《ネタバレ》 
彼の名は、ジョン・メイ。22年間、ケニントン地区の民生委員を勤めてきた真面目な男だ。その仕事は、管轄区域内で孤独死した身寄りのない人々の事後処理をすること。部屋に遺された僅かばかりの遺品を手掛かりに、身内が発見されれば速やかに連絡を取り、発見されなければしめやかに葬儀を執り行う。だが、多くの場合、彼らの身内が発見されることはなく、発見されたとしてもあからさまな拒否反応を示される。ジョン・メイは、誰からも気にされることもなく孤独に葬られていったそんな人々を見送っては哀しみを深めていくのだった――。40代も半ばに差し掛かった彼自身もまた、ずっと独りきりで生きてきた孤独な男。ただただ与えられた仕事をこなし、日々独りぼっちで食事をしてきた彼にある日、人生の転機が訪れる。それは、市の財政悪化に伴う突然の解雇通告。戸惑いながらも現実を受け入れた彼は、最後に廻ってきた仕事だけは責任をもって終わらせようと決意する。その仕事とは彼の自宅前のアパートで孤独死した独居老人、ビリーの〝おみおくり〟だった。一度も会ったこともないビリーという名の老人の経歴を探ってゆくうちに、そんな酒浸りで孤独に死んでいった彼にもちゃんと一人の人間としての過去があることが分かってゆく……。一度も会ったこともない人々をただ淡々と見送ってきた孤独な男を通して、人として誰もが避けては通れない生と死のドラマを静かに見つめたヒューマン・ドラマ。全編に流れるこの静謐な空気は確かに素晴らしいとは思うのですが、あまりにも淡々としすぎていて正直、僕にはちょっと合わなかったです。というのもこの主人公であるジョン・メイという人に、僕は全く共感できなかったんですよね。映画を観ている間、この人、いったい何が楽しくて生きてるんだろうって思って…。だって酒や女はもちろん、趣味らしきものも全くないんですもん。たとえば、夜な夜な熱帯魚を愛でるとか誰にも読まれることもない小説を書いているだとか、極端な話、覗き見を趣味にしてるだとか、そんな人間的な側面があったればこそ感情移入できるのに、それが彼にはいっさいないんですよ。まるでロボットみたい。なんだかいかにも作為的に作られたキャラクターのような気がして僕はちょっと感情移入できませんでした。でも、意表を突くあのラストシーンだけはけっこう良かった!そう来るか~って感じで。そこはちょっとジーンと来ちゃいました。という訳で、+1点。
[DVD(字幕)] 6点(2023-05-04 13:24:19)
49.  黄金のアデーレ 名画の帰還 《ネタバレ》 
1998年、ロサンゼルス。長年この地で小さなお店を営んできた平凡な老婦人マリア・アルトマンが、オーストリアという国を相手にある訴えを起こす。それはこの国で長い間国宝として大事にされてきたクリムトの名画『黄金のアデーレ』が第二次大戦中ナチスによって不当に奪取されたもので、本当の所有者である自分に速やかに返還すべきだというもの。まだ駆け出しの弁護士を専属で雇い、巨大な国家権力を相手に無謀ともいえるそんな戦いを挑んだマリア。それでも彼女には決して負けられない理由があった――。幼い時に亡くなった彼女の叔母アデーレこそがその名画のモデルだったからだ。つらい過去を忘れるためにずっと足を踏み入れたことのなかった祖国の地にまで足を運び、マリアは煩雑な手続きの壁に立ち向かってゆく。同時に、それはナチスに蹂躙された彼女の激動の半生をも甦らせてゆくのだった……。世界的な名画の裏に隠された、時代の荒波に翻弄され続けたとある女性の真実を描いた大河ドラマ。興味深い題材ではあるし、主役である老婦人を気品豊かに演じたヘレン・ミレンの魅力も相俟って、なかなか堅実に創られた歴史ものとして最後まで面白く観ることが出来ました。時代考証もしっかりしていたし、ドラマとして過不足なく演出出来ていたと思います。なのだけど、正直に自分の感想を述べさせてもらえれば、「何かが足りない」。全てに対して何処か踏み込みが甘いような気がしてしまうのです。クリムトの名画に隠された真実、国家権力に戦いを挑んだ市井の一市民、ナチスに蹂躙された家族の物語と、どの題材も魅力的であるのにそのどれに対しても表面的なアプローチしかなされていない。なので、本作は結果的に薄味な印象を観客に与えてしまう。題材が良いだけに、「惜しい」と言わざるを得ません。監督には、破綻を恐れずもっと踏み込んだアプローチをしてほしかった。そうすれば、より多くの観客の心に残る「名画」となれたであろうに。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-19 12:26:43)
50.  コードネーム U.N.C.L.E. 《ネタバレ》 
東西冷戦が激化し始めた1960年代を舞台に、本来は敵同士であるはずのCIAとKGBのトップエージェントがタッグを組み、世界を救うために大活躍する姿を描いたスパイ・アクション。アメリカ側の主人公はいかにも軽いプレイボーイのナポレオン・ソロ、ソ連側の主人公はこれまたいかにもお堅いクソ真面目男(失礼!)イリヤ・クリヤキン。そんな二人を翻弄する謎の美女も登場し、物語は騙し騙され時に反発しあいながらも最終的には世界を救うために互いに協力して悪に立ち向かってゆく姿が描かれる…。と、いかにもガイ・リッチーらしいスタイリッシュ&お洒落な軽いノリのエンタメ作品なのだが、これがなかなか手堅く作られており、素直に面白かった。遊び心満載のアクションシーンは切れ味抜群、全く正反対の主人公二人が巻き起こす騒動はベタながらもクスリとさせられ、美男美女の主人公たちも役柄にばっちり嵌まっていて見応えはかなり高い。特に、あの「ヒロシです。エロ本を買っているのだから、テープでよろしいわけないじゃないですか…」でお馴染みのあの曲をバックに展開される、水中チェイスシーンは出色の出来だった。ただ、作品の性質上仕方ないとは言え、本作の欠点はよくも悪くもこの軽さ。観終わった後に何も残らないのだ。これに、ピリリと辛い一片の毒のような隠し味でも効いていればもう少し違った印象を残しただろうけれど、それは好みの問題だろうか。クライマックスにおける若干の尻すぼみ感も気になった。とはいえエンドロールを迎えるまでの2時間弱、安心して観ていられるアクション・エンタメとしては充分水準に達しているので見て損はないだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-14 11:09:51)
51.  さざなみ 《ネタバレ》 
寝る前に一つだけ教えて。あの時、彼女が死ななければあなたは彼女と結婚していた?――。結婚45年目を迎えた老夫婦ケイトとジェフは、人並みにいろんなことを経験しつつも今は仲睦まじく暮らしている。子供には恵まれなかったものの一匹の年老いた犬と共に過ごす静かで満たされた日々。来週の土曜日には親戚や知り合いを集めて記念パーティーを開くことも計画していたそんなある日、スイスの山奥から夫に宛ててある一通の手紙が届く。50年前、まだケイトが彼と知り合う前に付き合っていた女性の遺体が今回発見されたというのだ。氷河に凍ったクレパスに転落死したという彼女は、50年前のそのままの姿で今も氷の中に閉じ込められているという。明らかに動揺し、長年やめていた煙草を喫い始めたり、無謀なスイス行きを計画したりする夫。努めて冷静に振舞おうとするケイトだったが、それでも心の静かな泉に投じられたその小さな石は、次第に大きなさざ波となっていく…。結婚45年目にして破局の危機を迎えてしまった老夫婦の葛藤を終始淡々とした視点で見つめたヒューマン・ドラマ。妻を演じたシャーロット・ランプリングが史上最高齢でアカデミー主演女優賞の候補になったということだったので、今回鑑賞してみた。長年連れ添った夫の秘められた過去を知り、明らかに動揺しながらもそれでも凛とした姿勢を崩そうとしない彼女の気品に満ちた佇まいは確かに素晴らしかった。男と女、愛と嫉妬、そして老いとその先に待っている死……。一組の老夫婦の姿を通して、そんな人生のやるせなさを照射するその眼差しは最後まで優しく、そしてどこまでも心地よい。最後、妻に向けて感謝の言葉を述べて涙する夫と対照的に何処か冷めたままの妻。いつまでも過去の幻想に囚われる夫とどこまでも未来に目を向ける妻。どんなに長く一緒にいようとも永遠に分かり合えない男と女の心のありようをうまく表していて、同じ男として身につまされるものがある。派手さはないものの堅実に作られた良品と言っていいだろう。ただ、もう少し心に残る印象的なエピソードなりシーンがあればもっと良かったと思わなくもないが。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-05 10:38:10)
52.  キャロル(2015) 《ネタバレ》 
私の天使、天から落ちたひと――。1950年代のニューヨーク、まだ同性愛に厳しい保守的な思想が色濃く残っていたこの時代。デパート店員として平凡な日々を過ごしていたテレーズはある日、運命の人と出逢ってしまうのだった。相手の名は、キャロル。愛のない結婚生活に終止符を打ち、かけがえのない一人娘とともに新たな生活に踏み出そうとしていた美しい女性だった。人目を忍んで何度も逢瀬を重ねた二人は、ある夜、重大な決断を下す。「このまま何もかもを捨てて二人で旅に出ましょう。気の赴くまま、どこまでも西へと……」。離婚するなら娘の親権は渡さないと強硬な態度に出る夫、どうせすぐに自分の元へと戻ってくると言い張る横柄な彼氏。面倒なしがらみを一切捨てて、ただ運命の赴くまま西へと逃避行を続けてゆくキャロルとテレーズ。やがて、二人は女同士の友情を遥かに超えた運命の恋という名の美酒に溶けてゆく……。同性愛者でもあった人気ミステリー作家が別名義で発表した恋愛小説を詩情豊かに映像化した大人のラブストーリー。この映画の最大の美点は主役を演じた、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの二人の魅力に尽きると思います。社会の理不尽な仕打ちに抗うためプライドと美意識で必死に武装するキャロル、かたや自分の感情に常に忠実であろうとする若く美しい女性テレーズ。正反対であるがゆえ、またどちらも社会の中で生まれついてのマイノリティであるがゆえに、お互いの魅力に強く惹かれ合ってゆく二人。極めて純粋で情熱的な愛の形をこれほどまでに美しく演じた彼女たちの奇跡の共演に、最大限の賛辞を贈りたい。特に、二人が初めて身体を重ね合わせるシーン、僕がこれまで観たすべての映画の中でも比肩しうるもののない、もっとも官能的で美しいベッドシーンでした。もちろんそんな二人の複雑な心理を繊細に紡いだ、監督の演出力の高さも忘れてはなりません。女と女という狭い枠を超越する普遍的な愛の物語。至高の映画体験をさせてもらいました。8点。
[DVD(字幕)] 8点(2023-03-27 13:18:22)
53.  アウトバーン 《ネタバレ》 
最愛の女性のために足を洗った元犯罪者、ケイシー。スクラップ工場で働き、彼女とともに貧しいながらも幸せな生活を送っていたある日、彼は最悪の事態に見舞われる。愛する女性ジュリエットに重大な腎疾患が見つかり、医者から腎臓移植しか助かる道はないと宣告されたのだ。だが、手術には途方もない額の大金がいる。追い詰められたケイシーは、かつてのボスであったゲランといういかれた犯罪者の元を訪れ、金になる仕事を廻してもらうように依頼するのだった――。与えられた仕事は、強大な麻薬密売組織の現金を積んだトラックを強奪するというもの。相棒とともに綿密な計画を立て、計画実行の日を迎えたケイシーだったが……。恋人の命を救うため、〝アウトバーン(速度無制限道路)〟をどこまでも疾走する青年のそんな息詰まるような攻防を描いたクライム・アクション。敵対する悪の組織のボス役で往年の名俳優、ベン・キングズレーとアンソニー・ホプキンスが豪華共演を果たしております。まあ率直に言って本作の見どころはそれぐらい(笑)。なんか脚本がイマイチなんですよね~、これ。物語の軸となるべきものがすごく弱い。主人公ははじめ、現金強奪の為のトラックを調達するはずが、すぐさま失敗。そのまま麻薬組織に追われる展開となります。だが、その過程で手に入れた高級車から大量の現金が発見されたので、これでどうにかしようと主人公は考えるわけです。でも、そのためには恋人を組織から守らなければならない。なので、組織と敵対する自分の雇い主であるボスに保護を依頼します。んで、何故かガソリンスタンドでのよく分からない紆余曲折を経てこの雇い主の元へと命からがら帰ってくる。でも、そこに居たのはなんと手違いで連れてこられた恋人とは似ても似つかない赤の他人。そこにまた組織の手下が現れ…、と、このように物語があっちこっちへと寄り道回り道するせいで全然サスペンスが盛り上がらない。肝心のカーチェイスシーンも頑張って撮っているんでしょうけど、なんかありがちでいまいちテンション上がりません。最後のオチにいたってはお粗末すぎて失笑レベルでありました。うーん、率直に言って駄作!
[DVD(字幕)] 4点(2023-03-22 13:33:03)
54.  シラノ 《ネタバレ》 
19世紀に初演されたフランスの名作戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を元に、自らの外見にコンプレックスを持つある一人の剣士の長年にわたる片思いを美麗に描いたミュージカル。監督は、現代的な解釈で古典的名作を幾つも蘇らせてきた名匠、ジョー・ライト。このお話って確か、主人公は鼻が物凄く大きいことにコンプレックスを持っててそのせいで好きな人に告白できず何年も片思いに苦しめられるって設定だったよね。でも、本作でシラノを演じるのはピーター・ディンクレイジ。持って生まれたハンディを乗り越え、実力で今の地位を築いた個性派俳優。とにかく彼の自身の境遇を重ね合わせたかのような、周りの偏見や同情を圧倒的な力で捻じ伏せるかのような熱演が素晴らしかったです。心から愛する女性が自身の後輩に想いを寄せていると知った時に見せる彼の切なそうな表情には思わず感情移入してしまいました。それでも彼女の幸せを願って、後輩との仲を取り持とうとする主人公。自分の恋心を納得させたいがため、彼からの手紙だと偽って自らが書いた恋文を何通も彼女に渡すシーンには胸がぎゅうぎゅう締め付けられますね。監督、モテない男の気持ちをよく分かってらっしゃる。癒えたはずの僕の心の古傷がズキズキ疼いちゃいましたわ(笑)。肝心のミュージカルシーンはいかにもジョー・ライトらしい、煌びやかで華のある場面の連続でもはや抜群の安定感。中世フランスの宮廷を再現した、ゴージャスで美しい映像には思わず乙女のように見惚れてしまいました。殺伐とした戦場シーンも何処か気品を感じられて、この計算された統一感は素晴らしいですね。ヒロインを演じた、ヘイリー・ベネットのいかにも恋に恋する自由奔放な感じもグッド。男を振り回す典型的な小悪魔感が憎たらしいけど、でも悔しいけど魅力的でした。彼女と彼女が想いを寄せるイケメンとシラノがベランダ越しに会話するシーンは、それぞれの情熱と諦念が交錯する素晴らしい名場面。片想いの切なさに苦しんだことがある全ての人にぜひ観てもらいたい、なかなかの秀作でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2023-03-20 07:28:43)
55.  ダーク・プレイス(2015) 《ネタバレ》 
1985年、カンザス州のとある田舎町で起こった凄惨な一家惨殺事件。シングルマザーだった母親とその二人の娘が残虐な手法で殺され、生き残ったのは当時8歳だった末娘のリビーただ一人だった。容疑者として逮捕されたのは、なんと一家の長男である当時17歳だったベン。悪魔崇拝に傾倒し地元の不良グループとも付き合いのあった彼は、唯一の生き残りであるリビーの証言により刑務所へと送られることに。こうしてこの忌まわしい事件は解決したかに見えた――。30年後、事件のトラウマから誰にも心を開けず、ずっと一人で生きてきたリビーももはや40になろうとしている。刑務所に28年も服役している兄とは連絡すら取っていない。そんな彼女にある日、殺人クラブと名乗る謎の団体から声がかかる。それは、全国各地に散らばる未解決事件を独自に調査するという犯罪マニアたちの集団だった。「君の家族の事件には、新たな真犯人がいるかもしれない。もう一度、一緒にあの事件を調査しよう」。兄の犯行を信じて疑わないリビーだったが、金のために渋々了承することに。クラブのメンバーである青年ライルとともに関係者や服役中の兄にまで話を聞きにいくリビー。彼女の脳裏に再び、あの30年前の悪夢の夜が甦ってくる…。果たして事件の真相とは?30年前に起こった一家惨殺事件の唯一の生き残りである女性が再び事件と向き合うとき、炙りだされる衝撃の真実を描いた重厚なミステリー作品。シャーリーズ・セロンとクロエ・グレース・モレッツが初共演、監督はかつて『サラの鍵』というナチスドイツに運命を翻弄される少女を描いたヒューマンドラマの秀作を撮ったジル・パケ=ブランネールということで今回鑑賞。とにかく、主役を演じたシャーリーズ・セロンの圧倒的な存在感はさすがというほかありません。心に深い傷を負い、決して幸福な人生を歩んでこれなかったやさぐれた女性役を熱演しております。また、男を翻弄する不良少女役を演じたクロエ・グレース・モレッツもなかなか嵌まっておりました。やはりクロエちゃんはこういう役の方がよく似合いますね。あの夜、本当は何があったのか――。事件を巡り過去と現在を複雑に行き来する演出も分かりやすく整理されており、監督の演出力も冴えています。特に過去と現在がリンクするクライマックスは見事な出来映えでした。ただ、残念だったのは肝心の事件の真相。ちょっといろいろと強引に詰め込み過ぎていて、いまいち納得できません。ここらへん、もう少し頑張ってほしかった。とはいえ全体的に見れば、なかなか見応えのある力作と言っていいんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2023-03-14 00:12:20)
56.  インセプション 《ネタバレ》 
これは面白い!!自分が認識する世界はどこまで信頼できるのだろうという、「われ思うゆえにわれあり」のような極めて哲学的なテーマを扱いながら、超一級の娯楽作品としても成功している凄い映画だった。人の夢の中へと入り込み、その人が将来、考えつくであろうアイデアを盗むことを生業としているディカプリオ演じる主人公コブ。恐らく映画でしか表現しえないだろう、そんな設定を最大限活かして、クリストファー・ノーラン監督は今まで誰も観たことがなかった世界を見事に映像化してみせた。第一層から第三層まであり、それぞれが全く違う世界で下に行けば行くほど時間の進み方も全く違ってくるという複雑な人間の深層心理の中を、コブたちはどんどんと奥深くへと沈み込んでいく。それを徹底的にスタイリッシュに、しかもアクション映画としても一級の迫力をも備えた映像で描き出す手腕は見事としか言いようがない。そこへ絡んでくる、コブ自身の亡き妻を巡る哀しい思い出もまた切なくて良い。そして最後、コマが止まるのかどうか、その寸前で終わるという、最高に格好良いラスト!!「このまま、コマが止まるかどうか?それを信じるのは君たちしだいなんだよ」観終えたあと、あまりの格好良さにしばらく痺れてしまったよ!!
[DVD(字幕)] 10点(2023-03-13 07:50:28)
57.  クーリエ 最高機密の運び屋 《ネタバレ》 
彼の名は、グレヴィル・ウィン。英国の中堅企業で働くごく普通のセールスマンだ。愛する妻とまだ幼い一人息子に恵まれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしている。東西冷戦が激化し始めていたこの時代、それでも彼は得意の語学力を活かし、東欧諸国にもそのビジネスチャンスを拡げていた。定年後の安らかな老後だけを楽しみに、家族のため日夜仕事に精を出していたある日、彼は政府の役人と名乗る人物から会いたいと打診を受ける。商務庁の人間だと待ち合わせ場所に向かったグレヴィルは、そこで待っていた人物に衝撃を受けるのだった――。彼らはなんとMI6とCIAに所属する、いわゆるスパイだったのだ。「ソ連のある高官が西側に寝返ろうとしている。彼と接触するためにはソ連に怪しまれない人物が必要だ。平凡なビジネスマンであるあなたはまさに適役。どうだ、国に貢献してみないか」。彼らの提案に最初は難色を示すグレヴィルだったが、現実味を帯びる核戦争の危機に触発され、渋々スパイとなることを決意する。モスクワへと赴き、当局の監視の目を搔い潜って情報を持ち帰るグレヴィル。もちろんバレると命の保証はない。何度もソ連へと行き来するうちに彼の神経は徐々に擦り減ってゆき……。キューバ危機に見舞われた東西冷戦期を舞台に、核戦争を回避するためにスパイとなったある平凡なセールスマンを描いたサスペンス。実話を元にしただけあって、この全編に漲る緊張感は凄まじかった。いつどこに監視の目が光っているかも分からず、部屋に一人でいるときも盗聴器の存在を常に意識しなければいけない。それでも国のため家族のために任務を遂行する、もともと普通のセールスマン……。圧し潰されそうな重圧から次第に家族と険悪となってゆくというのは皮肉極まりない。そんな難しい役をリアルに演じたベネディクト・カンバーバッチの熱演が光る。そんな中、同じく世界の未来の為に祖国を裏切るソ連高官との次第に深まってゆく絆。当局から疑いの目を向けられるようになり任務も遂行不可能となったのに、それでも彼を亡命させるためもう一度モスクワへと渡る決心をした主人公の決断は重い。そこからはまさに息詰まるようなシーンの連続で自分も固唾を吞んで見守るしかなかった。ただ、惜しいのは拘束されてからの後半。妻がようやく彼に会いにモスクワへとやってくるところが意外とあっさりで、ここをもっと踏み込んで描いてほしかった。地獄のような収容所生活で彼が正気を失わずにいられたという重要な場面、何ならここをクライマックスにしても良かったのでは。げっそりと痩せてしまったカンバーバッチの演技が見事なだけに、惜しい。誰もが不安を抱えて生きていた当時、核戦争を回避するために自分を犠牲にしてまで動いてくれた人がいた――。その事実に改めて畏敬の念を感じざるを得ない、なかなかの秀作であった。
[DVD(字幕)] 7点(2023-03-13 03:23:09)
58.  キャッシュトラック 《ネタバレ》 
彼の名は、パトリック・ヒル。通称〝H〟。最近、現金輸送を専門とするセキュリティ会社に就職したばかりの普通の男だ。10年務めた欧州の警備会社が倒産し今回この会社に応募、採用試験もぎりぎり合格点レベル、妻とも離婚、家族もおらず無口で不愛想。同僚からも少し浮いた存在である彼は、簡単に言うと冴えない男だ。ロサンゼルスの街で日々黙々と働いていたそんなある日、彼が運転する輸送車が武装した凶悪な強盗集団に襲われる。だが、Hは全く取り乱すことなく冷静沈着な判断力と高い射撃能力でやすやすと敵を排除するのだった。そればかりか、後日襲ってきた別の強盗集団も彼の顔を見た瞬間、金には目もくれずすぐさま逃げ出してしまう。上司も同僚もこれには驚くばかり。果たして彼は何者なのか?FBIや会社の上層部が疑念を深める中、全米で最も現金が動くブラック・フライデーが近づいてくる……。世界でも有数の危険区域であるLAで現金輸送車のドライバーとして働く謎めいた男の過去を巡るドラマを重厚に描いたクライム・アクション。監督・主演は、ハリウッドのエンタメ映画界を牽引するガイ・リッチー&ジェイソン・ステイサムコンビ。と言う訳で、そこそこ期待して今回鑑賞してみました。そんな僕の期待をそこそこ上回るそこそこ面白い映画でしたね、これ。まあベタっちゃあベタですけどツボを押さえた演出はどれも嵌まっていて、最後までそこそこ楽しめました。いかにもガイ・リッチーらしい現代と過去を行き来する脚本も分かりやすく練られていて、後半の急展開にもけっこう驚かされました。まあかなり力技でしたけど(笑)。重低音を効かせた重苦しい雰囲気も嫌いじゃなく、ひたすら口をへの字にして無双するジェイソン・ステイサムも相変わらず渋い。各シーンにタイトルをつけて章仕立てで見せる演出もかっこいいし、特に最後の「肝臓・肺・脾臓・心臓」のタイトルの意味が分かるラストシーンは痺れました。まあ内容の方は3日も経てばきれいに忘れそうなお話だったけど、そこそこキレのいいアクション、そこそこ面白い脚本、そこそこ華のある役者陣と、そこそこ面白い映画の見本のような作品でありました。うん、そこそこの7点!!
[DVD(邦画)] 7点(2023-03-10 07:20:56)
59.  レジェンド 狂気の美学 《ネタバレ》 
1960年代、ロンドンの裏社会で暗躍した双子のギャング、クレイ兄弟。兄レジーはその明晰な頭脳ともって生まれたカリスマ性で他のギャングたちを圧倒し、精神的な問題を抱えた弟ロンはその無軌道で命知らずな性格ゆえ回りから狂犬と恐れられていた。本作は、そんな実在した双子のギャングをトム・ハーディが一人二役で挑んだクライム・ドラマ。監督は、血腥い犯罪物を得意とするブライアン・ヘルゲランド。なのでなかなか安定感のある一本に仕上がっておりました。本作の最大の見どころはこの正反対の双子の兄弟を見事に演じ分けたトム・ハーディの魅力に尽きる。同じ顔をしているのに、最後まで完全に別の人間にしか見えないのはさすがというほかない。ストーリーの方も実話を基にしていながら分かりやすく整理され、なおかつちゃんとギャングもののツボを押さえているのもポイント高い。ただその反面、実話を基にしたから仕方ないのかもしれないが若干パンチに欠ける面があるのも事実。狂気の美学と言いながら、残念ながらそこまでの狂気性を感じられませんでした。またストーリーの重要なキーパーソンであり、物語の語り部となる兄の恋人フランシスに全く人間的な深みが感じられないのも本作の大きな弱点。トム・ハーディの熱演がなかなか光っているだけに色々と惜しい作品でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2023-03-02 13:35:42)
60.  西部戦線異状なし(2022) 《ネタバレ》 
凄惨を極めた第一次大戦下のヨーロッパを舞台に、愛国心から志願した若き一兵士の目を通して戦争の真実を見つめた反戦ドラマ。過去に何度も映画化されたドイツの作家レマルクの古典的反戦小説『西部戦線異状なし』を再び映像化したという本作、今年のアカデミー作品賞はじめ数々の部門でノミネートを果たしたということで今回鑑賞。いやはや、予想していたこととは言え、凄まじい内容でした。汚泥と硝煙に塗れた塹壕戦はこちらにまで血の臭いが漂ってきそうなほどリアルで、観ているだけで胃のあたりが重くなります。さっきまで和気藹々と話していた同僚の兵士が上官の命令とともに出撃し、呆気なく命を落とすシーンは戦争の不条理を否が応でも分からせてくれますね。そんなこと気にもしない国の上層部は、きれいな広い部屋で豪華な食事にありついている……。戦争の実態をこれ以上ないくらい皮肉たっぷりに描いている。そして最後。あと15分で停戦が成立するというのに、将軍の意地とプライドのために再び出撃させられる一兵士たち。まさに無駄死にとしか言いようのない絶望感漂うラストは、戦争の虚しさをこれでもかというほど訴えかけてきます。自分や自分の大事な人がもしこの場に居たらと思うと堪えられない……。今も同じようなことがウクライナで起こっているのだろう。ますます混迷の度を深めてゆく現代社会に於いて、真に観るべき映画の一つと言っていい。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-02-13 07:13:50)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS