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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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81.  ブラック・シー 《ネタバレ》 
第二次大戦時、莫大な金塊を積んだまま海の底へと沈んでしまったナチスドイツの潜水艦、Uボート。元潜水艦乗りで現在失業中のロビンソンはある日、半世紀もの長きにわたって海の藻屑となっていたそんな潜水艦の情報を偶然耳にする。妻とは離婚、愛する息子とも自由に会うことも出来ず、仲間とともに酒場へと入り浸るようなどうしようもない毎日を送っていたロビンソン。「自分の人生を一発逆転させてやる!!」。仲間とともにそう決意した彼は、大金を求めてウクライナ近海の海底へと旅立つことを決断するのだった。だが、当然のように一人で出発することなど出来ない。旧友のつてでイギリス人とロシア人による12人のにわか混成チームをどうにか集めたロビンソンは、現在は退役した旧ソ連の潜水艦を格安で手に入れるのだった。それぞれの思惑を抱えた彼らは、見渡す限り闇に閉ざされた暗い海の底へと繰り出してゆくのだが…。潜水艦内という閉ざされた世界で繰り広げられるそんな男たちの熱いドラマを重厚に描いたサスペンス・アクション。監督は、社会性の強いエンタメを得意とするケビン・マクドナルド。彼の代表作である『ラストキング・オブ・スコットランド』同様、こういう狂気と英雄紙一重の危険な男を描かせたらやっぱり巧いですね~。ジュード・ロウ演じる主人公が最初はいかにも艦長らしくみんなを纏め上げていたのに、様々な計画の綻びや仲間たちからの反発で神経をすり減らし、次第に暴走していく過程が説得力抜群。彼らが乗るという中古の潜水艦が、その余りに年季が入っていそうな錆びついたボディで登場したときも不安感ヤバかったです。うん、今にも沈没しそうなこんなおんぼろ潜水艦に乗るなんて絶対いや(笑)。また即席で集められた12人のイギリス人とロシア人という最初からうまくいくはずなんてない彼らの内輪揉めも緊迫感があり、徐々に始まる銃撃戦は見応えありました。まあこういう映画のお約束ながら、最初から最後までむさ苦しいおっさんばかりが出ずっぱりで女っけゼロなのはご愛敬。にしてもジュード・ロウ、すっかり禿げたなぁ(笑)。ラストはちょっとあっさりし過ぎかな。もう少し彼らのその後のドラマが見たかったような気がしなくもない。それでも乗組員12人の個性もそれぞれちゃんと描き分けられていたし、潜水艦映画の醍醐味であるキリキリするような閉塞感も感じられたし、僕は充分楽しめました。7点。
[DVD(字幕)] 7点(2018-04-21 23:56:08)
82.  ヒットマンズ・レクイエム 《ネタバレ》 
殺し屋家業に手を染めたばかりの今どきの若者レイ。ボスからの指示でベテランのケンとコンビを組み、初仕事をこなした彼だったが、直後に取り返しのつかない過ちを犯してしまったことに気付く。なんと殺したターゲットの身体を突き抜けた銃弾が小さな男の子の額を直撃してしまったのだ。ボスからのさらなる指示で、ベルギーの古都ブルーシュへの逃亡生活を余儀なくされた彼らは、気持ちを切り替えボスからの電話を待つことに。レイは酒と女に明け暮れ、インテリのケンは古都観光を満喫する。だが、子供殺しの事実は容赦なく彼らの良心を蝕んでゆくのだった。そんな折、ケンにだけボスから秘密の指示が下される。「俺は筋を通す男だ。子供を殺すような奴は何があろうと許さねえ。必ずその街で奴を消せ。それまで帰ってくるんじゃねえ」――。内密に拳銃を手に入れたケンはレイを殺すチャンスを窺っていたのだが、レイもまた良心の呵責から死に場所を求めていたのだった…。ベルギーの伝統ある古都を舞台に、親子ほども歳の離れた殺し屋たちの葛藤と悲哀を屈折したユーモアを交えて描いたクライム・ドラマ。コリン・ファレルとレイフ・ファインズが共演、アカデミー脚本賞にノミネートされたということで今回鑑賞してみました。前半、正反対の二人の男が旅先で噛み合わないやり取りを繰り返すというありがちで冗漫な展開に、「え、これのどこが脚本賞?」と疑問に感じながら観ていたのだけど、相棒に殺されそうになる主人公もまた自殺を図ろうとしていたという事実が判明する辺りからこの作品の印象が一転して良くなっていきます。罪の意識から逃れられない若者、彼を更生させたいと願う初老の男、何よりもメンツを重んじるために若者を殺そうとするボス。なるほど、この三人の殺し屋たちの三者三様の思惑が交錯する心理ドラマはなかなか深い。また、取り留めがないと思われていた前半の小人や美人局のカナダ人といったエピソードが後半、奇麗に回収されていくという伏線の張り方もとてもセンスがいいですね。舞台となった伝統ある古都ブルージュの映像もスタイリッシュで美しく、クライマックスで男たちが自らのプライドのために命を懸けて戦う姿も悲壮感が画面から匂い経つようで素晴らしかったです。惜しいのは前半のあまりにも散漫な展開ぐらいかな。とはいえ、なかなか技ありな一本でありました。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2018-02-16 00:58:02)
83.  美女と野獣(2017) 《ネタバレ》 
もはや王道のディズニーエンタメ。最新技術で描かれた、ゴージャスできれいな映像は見ているだけで楽しくなります。家具に姿を変えられた召使たちの造り込まれた造形美なんて凄いの一言。美女役のエマ・ワトソンも非の打ち所のない美女でさすがの貫禄でした。うん、なかなか面白かったですね。元のアニメは未見だけど、この機会に観てみようかな。
[DVD(字幕)] 7点(2018-01-31 21:43:19)
84.  ダーク・プレイス(2015) 《ネタバレ》 
1985年、カンザス州のとある田舎町で起こった凄惨な一家惨殺事件。シングルマザーだった母親とその二人の娘が残虐な手法で殺され、生き残ったのは当時8歳だった末娘のリビーただ一人だった。容疑者として逮捕されたのは、なんと一家の長男である当時17歳だったベン。悪魔崇拝に傾倒し地元の不良グループとも付き合いのあった彼は、唯一の生き残りであるリビーの証言により刑務所へと送られることに。こうしてこの忌まわしい事件は解決したかに見えた――。30年後、事件のトラウマから誰にも心を開けず、ずっと一人で生きてきたリビーももはや40になろうとしている。刑務所に28年も服役している兄とは連絡すら取っていない。そんな彼女にある日、殺人クラブと名乗る謎の団体から声がかかる。それは、全国各地に散らばる未解決事件を独自に調査するという犯罪マニアたちの集団だった。「君の家族の事件には、新たな真犯人がいるかもしれない。もう一度、一緒にあの事件を調査しよう」。兄の犯行を信じて疑わないリビーだったが、金のために渋々了承することに。クラブのメンバーである青年ライルとともに関係者や服役中の兄にまで話を聞きにいくリビー。彼女の脳裏に再び、あの30年前の悪夢の夜が甦ってくる…。果たして事件の真相とは?30年前に起こった一家惨殺事件の唯一の生き残りである女性が再び事件と向き合うとき、炙りだされる衝撃の真実を描いた重厚なミステリー作品。シャーリーズ・セロンとクロエ・グレース・モレッツが初共演、監督はかつて『サラの鍵』というナチスドイツに運命を翻弄される少女を描いたヒューマンドラマの秀作を撮ったジル・パケ=ブランネールということで今回鑑賞。とにかく、主役を演じたシャーリーズ・セロンの圧倒的な存在感はさすがというほかありません。心に深い傷を負い、決して幸福な人生を歩んでこれなかったやさぐれた女性役を熱演しております。また、男を翻弄する不良少女役を演じたクロエ・グレース・モレッツもなかなか嵌まっておりました。やはりクロエちゃんはこういう役の方がよく似合いますね。あの夜、本当は何があったのか――。事件を巡り過去と現在を複雑に行き来する演出も分かりやすく整理されており、監督の演出力も冴えています。特に過去と現在がリンクするクライマックスは見事な出来映えでした。ただ、残念だったのは肝心の事件の真相。ちょっといろいろと強引に詰め込み過ぎていて、いまいち納得できません。ここらへん、もう少し頑張ってほしかった。とはいえ全体的に見れば、なかなか見応えのある力作と言っていいんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2017-08-27 22:03:46)
85.  エクス・マキナ(2015) 《ネタバレ》 
ストーリーはいたってシンプル。主人公は、ネット検索エンジン世界最大手の巨大IT企業に勤める寡黙な青年ケイレブ。ある日、彼が社内抽選に当選し社長の別荘へと特別に招かれたことから物語は始まる。ヘリで連れてこられた先は雄大な大自然に囲まれた山の中の一軒家だ。だが、その山荘は見た目こそみすぼらしいものの、内部に一歩踏み込むと最先端の技術とそこかしこに高度な意匠が凝らされた、極めて洗練された施設であることが判明する。そしてそこには秘書と思しき日本人女性ケイコと二人切りで暮らす社長ネイサンが待ち構えていたのだった。「君には特別な仕事をしてもらうことになる」。ネイサンの言葉に促されるまま守秘義務契約の書類にサインしたケイレブは、ガラスの壁に隔てられたとある秘密の部屋へと連れてこられる。そこに居たのは、〝エヴァ〟という名の高度なAIを搭載した美しい女性型アンドロイドだった――。そう、彼に与えられた仕事とは、そのエヴァという人工知能に人間と変わらぬ高度な感情や想像力があるかどうかをテストするというものだったのだ…。人間によって創られた美しき人工知能エヴァ、彼女を巡って交わされる人間とコンピューターの違いや自意識の源泉、アイデンティティや感情はどのように育まれるのかといった哲学的な考察をスタイリッシュな映像の中に描いたSF作品。と、これまでの同系統の作品よりは幾分か哲学的ではあるもののストーリー自体は極めてオーソドックスな人工知能ものなのですが、本作がそれらの作品と一線を画しているのはやはりこの全編に渡って冴え渡る抜群の映像センスでしょう。美しい女性の顔を持ちながら頭部や腹部には明らかに人工的な光を湛えたアンドロイド・エヴァの洗練された造形美はもちろんのこと、生活感を微塵も感じさせないまるで現代アートの世界に入り込んだかのような極めて人工的な研究施設内部、口の利けない日本人秘書ケイコが醸し出すエキゾチックかつエロティックな雰囲気、登場人物たちが交わす知的で洞察力に富んだ会話劇、どこを切り取ってもこの監督のセンスの良さが溢れ返っています。アカデミー視覚効果賞受賞も納得の出来栄え。まあ逆に言えば、センスしかなかったんじゃないかという気がしなくもないですが…(笑)。とはいえ、この唯一無二の極めて洗練された世界観はやはり素晴らしいと言うしかありません。充実した映画体験をさせてもらいました。
[DVD(字幕)] 7点(2017-08-24 22:58:57)
86.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
「ドイツ軍がこれから行う奇襲攻撃や爆弾投下、神出鬼没のUボート攻撃、全ての指令が今この空中を飛び交っている。これらの無線信号は受信機さえあれば子供でも傍受出来る。だが、その内容は高度に暗号化されている。その組合せは、159×10の18剰通り……。10人が1分間で一つの組合せを試し、1日24時間、週7日休みなく続けても、全てを調べ終わるのに2000万年もかかるのだ。しかも、それは1日のはじめに全て設定しなおされてしまう…。それが、ナチスドイツが開発した世界最高峰の暗号化システム、エニグマだ」――。本作は第二次大戦中、英国諜報部の極秘指令を受け、そんな難解な暗号化システムの解読に成功したものの長らく極秘扱いにされ、歴史の闇に埋もれていた天才数学者アラン・チューリングの生涯を描いた伝記映画だ。なるほど、数々の賞を受賞しただけあって、堅実に創られた歴史ドラマとしてなかなかよく出来ている。アラン・チューリングという天才的な頭脳を有するものの、人間としては社交性ゼロ、偏屈な変わり者が如何にして仲間たちと協力し合いエニグマという世界最高峰の暗号を解読することが出来たのか?また、第二次大戦の終結を2年は早め、多くの人命を救ったばかりか現代のコンピューターの原型と呼ぶべきシステムを開発したのに、何故それが何十年も極秘扱いされてきたのか?そんな興味深い内容であるもののいかんせん地味になりがちなテーマを極めて分かりやすく、かつ魅力あるドラマとして描き出すことに成功している。主人公の人格形成に大きく影響を与えた少年時代、仲間とともにエニグマ解読に全精力を捧げた第二次大戦下、そして、その抱えた秘密によって不遇の晩年を余儀なくされた終戦後…。ともすれば空中分解しそうなそんな三つのエピソードを、極めてバランスよく配置したその物語構築の手腕は高く評価されるべきものだろう。観客の好感を得られにくい偏屈な数学者という難しい役柄を、一人の人間として見事なまでに演じきったB・カンバーバッチの仕事ぶりも大したものだった。ただ一つ難点を挙げるとすれば、それはK・ナイトレイが演じたアランの婚約者、ジョーンの存在だろうか。同性愛者であった主人公がどうしてそこまで彼女に執着し、あまつさえ婚約者となって引き止めたのか。そこにいまいち説得力が感じられない。ここらへんをもう少し丁寧に描いてほしかった。とはいえ、歴史の荒波に翻弄され、不遇の人生を歩まざるをえなかった一人の偉人の生涯を現代に甦らせた本作の業績は称賛に値する。なかなかの佳品と言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2016-07-21 21:50:42)
87.  博士と彼女のセオリー 《ネタバレ》 
ホーキングさん、あなたの病名は運動ニューロン疾患です。脳からの命令が徐々に筋肉に伝わらなくなり、運動が困難になります。たとえば、話すこと、歩くこと、そして食事や呼吸までも…。最後には、随意運動を制御する能力が完全に失われます。自分の意志で身体を動かすことが出来なくなるのです。残念ですが、余命は2年といったところでしょう。もちろん、脳は影響を受けません。思考力も変わらない。ただ、それを誰にも伝えることが出来なくなるのです。実に、残念です――。1963年、英国。ケンブリッジ大学の宇宙物理学科に進学してきた青年、ホーキングはその卓越した思考能力で将来を有望視されていた。大学のパーティで知り合ったジェーンという素敵な恋人も手に入れ、輝かしい未来に向けて順風満帆に過ごしていた彼だったが、突如として悲劇に見舞われる。ALS。徐々に筋肉が衰え、いずれは寝たきりとなってしまうそんな難病を発症してしまったのだ。当然、自暴自棄に陥りそうになるホーキング。だが、名実共に妻となり献身的に支えてくれるジェーンの助けによって彼は博士号を手に入れ、さらには愛する子供たちまで授かることに。そんな2人に更なる試練が訪れる……。車椅子の天才として名高い物理学者、スティーブン・ホーキング博士。本作は、そんな彼と妻との長年にわたる愛の日々に焦点をあてて描いたヒューマン・ドラマだ。昔、『ホーキング、宇宙を語る』という彼の著書を読んで、その虚時間という考え方――時間というものは自分たち3次元の人間からしたら流れているように見えるけれども、5次元6次元という高度な視点から見ればそれはあらかじめ描かれた地図のようなもので、全ては決まっている(なにぶん大昔に読んだもので間違ってたらごめんなさい!)に感銘を受けた者としては、彼のその人間としての私生活を描いた本作を興味深く鑑賞してみました。確かに、まだ描かれた人々がご存命ということもあってか、幾分か綺麗事に纏めすぎられたきらいはあるものの、美しい映像や音楽、何より役者陣のナチュラルな演技が素晴らしく、最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。これは男と女のままならない愛の物語であり、人が家族となることの素晴らしさをとことんまで肯定的に描いた心温まるドラマでもあり、決して数式では割り切れない人間の力強さを描いた賛歌でもある。最後は別れてしまったけれど、彼らの愛の軌跡になんだか柄にもなく切なくなってしまいました。欲を言えば、もう少しホーキング博士の科学者としての側面にも光をあててほしかったけれど、それでも充分見応えのあるヒューマン・ドラマの佳品と言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2016-05-11 01:25:11)
88.  ゼロの未来 《ネタバレ》 
ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは現在93.789%です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。次の解析済みデータを1時間後にアップロードしてください。不可能ならば超過時間を分単位で入力してください。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%で――。コンピューターが異常な発達を遂げた近未来。仕事一筋で生きてきた真面目な男、コーエン・レスは人生の意味を教えてもらうための電話を待ち続けて孤独に生きてきた。より思索に耽りたいと願うあまり、彼は会社に在宅勤務を要請する。当初は難色を示していた上司だったが、マネージメントと呼ばれる経営トップの判断により、彼はとある極秘プロジェクトを任されるのだった。そのプロジェクトとは、「ゼロの定理の証明」。家に閉じこもり、来る日も来る日もデータ解析に打ち込んでいた彼だったが、作業は遅々として進まない。会社からは次々と催促の連絡が入るものの、肝心の電話は一向に掛かってこず、次第に追い詰められていくコーエン。そんな彼の元に、怪しげな売春婦ベインズリーやマネージメントの息子ボブを名乗る青年がやってきて……。唯一無二の独創的な映像や超現実的なストーリー等々、もはや生ける伝説と言っても過言ではないカルト映画界の巨匠テリー・ギリアムの最新作は、いかにも彼らしいそんな超シュールな作品でございました。いやー、やっぱりいいですね、このギリアムにしか描き出せない摩訶不思議な世界観。『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』『フィッシャー・キング』といった彼の往年の名作を髣髴とさせる唯一無二の独創的な映像に僕は久し振りに痺れてしまいました。そこに今回はベインズリーというそれまでのギリアム作品にはなかった(?)エロティシズム要素も加わって、いやはやどうして一筋縄ではいかない作品に仕上がっていて嬉しい限り。相変わらず訳の分からないストーリーなのですが、きっとそこには〝愛〟がテーマとして埋め込まれていたような気がする?!頭髪や眉毛まで剃り落としたクリストフ・ヴァルツの怪演振りもバッチリ嵌まっていてナイス!胸元ざっくりのセクシー・コスチュームで惜しげもなく色気を振りまいていたベインズリーちゃんも超キュートで大変よかったです!うん、相変わらず観る人を選ぶかなりぶっ飛んだ作品でしたけれど、僕は充分楽しめました!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2016-05-07 19:42:51)
89.  エクソダス:神と王 《ネタバレ》 
「出エジプト記」――。それはユダヤ教、キリスト教、イスラム教という世界の約半数の人々の精神的支柱であり、さらにはあらゆる文化的生活の基礎となり道徳心や倫理観の規範となるべきものでもあり、時にはその解釈を巡って歴史を揺るがすような諍いを巻き起こし続けた旧約聖書、世界宗教の原点とも言うべきその中でももっとも重要な部分と言っていいだろう。そして恐らく人々が歴史に刻んだ原初にしてもっとも有名な物語だ。本作は、そんな誰もが知るお話をいまやハリウッドの重鎮となったリドリー・スコット監督が、新たな解釈のもとに映像化した重厚な歴史スペクタクル巨編である。特徴的なのは、そんな宗教掛かった原典から出来るだけ神秘性を排除し、あくまで科学的に解釈出来るように神の奇跡を描いていることだろう。特に〝エジプトを襲う十の災い〟と〝追い詰められたヘブライ人のために海が割れる奇跡〟。現代の常識ではあり得ないこの奇跡を、監督は――多少の無理があるとはいえ――あくまで科学的に証明できるものとして描き出してゆく。また、モーゼが縋る神の存在も見えるのは彼自身にのみであり、子供の姿で現れる神はあくまでモーゼの妄想が創り出した想像上の産物かもしれないものとして描写されている。ここでこの老監督の狙いが明らかとなってくる。「神は死んだ」。これはニーチェが唱えた有名な言葉だが、神とはもしかしたら人が生きるために創り出した一つの壮大な物語ではないのか。科学が極限まで発達し、この世に神が居ないということを論理的に証明しつつある現代においてもなお、宗教が現代のあらゆる問題に影を落としている。もしかして、人は生きるために神という物語を必要とする生き物なのかもしれない、たとえそれが間違った物語であったとしても――。本作の優れている点は、宗教という人間の生きるうえでの根源的なものをテーマとしながらも敢えて否定的な視点をも備えているところだろう。そこには、それでも自分は映画という世界で物語をずっと創り続けてきたというスコット監督の矜持が力強く貫かれている。ただ、本作はよくも悪くもR・スコット作品。長い間、人が生きるうえでの倫理的規範であり続けてきた〝十戒〟を根底から否定するわけでもなく、かといって狂信的なまでに肯定するわけでもないそのスタンスは「浅い」と非難されても仕方がない。『グラディエーター』や『ロビンフッド』という、その重厚な世界観には圧倒されはするものの肝心の内容のほうは――あくまで個人的にだが――そこまで深いものが感じられなかった過去の作品に比べればより芸術性は増したものの、彼の代表作の一つとして映画史に残るほどの出来かというと残念ながら“否”と言わざるを得ない。それが僕の本作に対するあくまで冷静な評価だ。
[DVD(字幕)] 7点(2015-12-22 21:35:48)
90.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
ドイツ、ハンブルク。2001年、911の実行犯がこの港湾都市で計画を練って以降、それを察知できなかった現地の情報機関は躍起になってテロ対策を加速させていた。そんな国際都市にある日、ロシア当局に拷問を受けた過去があるチェチェン人青年イッサが入国してくる。そのことを察知したテロ対策諜報員バッハマンは、彼が大手銀行員と接触したがっていることを知り、全容を解明しようと彼をしばらく泳がせることを決断する。だが、バッハマンの思惑など意に関せず、国の上部機関、警察、現地のイスラムネットワーク、さらにはアメリカのCIAまでが絡んでき、事態はさらに複雑な様相を呈していくのだった。そんな折、イッサを支援していた女性弁護士の手筈で彼がドイツの街中で失踪してしまう……。名優フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作となったのは、ドイツの国際都市を舞台にテロ対策の最前線をリアルに描いたスパイ・サスペンスでした。スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの原作を映画化しただけあって、この全編に漲る息を呑むような緊迫感はなかなか凄かった。派手なアクションやスキャンダラスな設定で観客を煽るのではなく、あくまでもリアルで地味なストーリーなのに最後まで見せきる本作のスタッフたちの手腕は大したもの。そんな無差別テロという悪魔の所業を阻止するために誰も知らないところで彼らのような人が日夜、神経を磨り減らすような情報戦を繰り広げているのかと思うと本当に頭が下がる思いです。特に、何処にでも居るサラリーマンのようないでたちでありながら、それでも時折その隠し切れない狂気性を垣間見せるF・S・ホフマンの熱演は見事でした。権謀術数渦巻くテロ対策という問題の難しさに翻弄され、自分の無力さを思い知らされた彼の魂の咆哮とでも言うべき最後の雄叫びは胸の奥深くに突き刺さってくるようでした。つくづく惜しい人を失くしたと残念でなりません。奇しくも昨日(2015/11/14)、フランスのパリでイスラム国と見られる組織によって大規模なテロが発生してしまいました。あらためて、本作のラストに漂う無力感に胸が引き裂かれる思いです。本作の主人公バッハマンのような人たちがそれでもテロという悪魔の所業に決して負けず闘い続けてほしいと、今回のテロで亡くなった人々のためにそう願わずにはいられません。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-15 22:00:09)
91.  サード・パーソン 《ネタバレ》 
パリ、ニューヨーク、ローマ。時代の先端をゆくそんな人種の坩堝のような3つの国際都市には、今日も様々な事情を抱えた男女が集い出会いと別れを繰り返してゆく。ある男女には新たな愛が芽生え、またある男女は疑念と嫉妬によって心をぼろぼろにされ、そしてまたある男女は辛い別れを経験してゆく……。本作は、そんな3つの国際都市を自在に行き交いながら、そこに生きる様々な男女の出会いと別れを静謐な雰囲気の中に描き出してゆく群像劇。自分の不注意から最愛の子供を失ってしまった作家は若い女性との不倫に溺れ、ストレスから自らの子供を虐待してしまった母親は引き離された息子との面会を果たすため必死になって生活を立て直そうとし、街のカフェで移民の女性と偶然知り合った男は彼女の奪われた子供を取り戻そうと金策に駆けずり回る。一見無関係に見えるそんな3つのストーリーが、物語の進行とともにまるで縺れた糸のように絡み合い複雑に交錯していく――。同じく群像劇の秀作『クラッシュ』でアカデミー賞の栄誉に輝くポール・ハギス監督の最新作は、そんないかにも彼らしいミステリアスで魅惑的なヒューマン・ドラマだった。登場人物の数も多く、各々のストーリーもかなり複雑なのに、この監督の演出力は相変わらず冴えわたっている。極めて分かりやすいストーリーテリング、それぞれに個性豊かな登場人物たち、詩的で美しく時には官能的ですらある映像、そして観る者を深い迷宮へと誘うように魅惑する壮麗な音楽……。挙げていけばきりがないほど、画面の端々にまで才気が漲っている。親子間であれ男女であれ深く愛するがゆえに憎み傷つき、それでも愛されることを求めてもがき苦しみながらも必死になって生きていこうとする主人公たちに最後まで釘付けだった。特に、ミラ・クニス演じる若いシングル・マザーが直面する苦悩には深く胸打たれた(ホテルの一室で他人の幸せの象徴である白い百合の花を無茶苦茶にするシーンは、最近観た中では息を呑むほど印象的で美しいものだった)。ただ、ほとんど謎を残したままで終わる本作のラストはやはり賛否の分かれるところだろう。こういうメタ・フィクション構造は夢オチと同じでよほど丁寧に扱わないと何でもアリとなってしまうので、多くの場合観客を興醒めさせてしまうもの。本作もその例に漏れず、やっぱりそんな〝興醒め〟感から逃れられていない。こんな奇を衒った構造などせず、直球の群像劇として終わらせていれば『クラッシュ』を超える傑作になりえたかも知れないと思うと、つくづく惜しいと言わざるを得ない。とはいえ、静謐な空気に満ちた上質のヒューマンドラマとして最後まで惹き込まれたことは確か。充分鑑賞に耐えうる良質の作品と言っていいだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-08 19:05:13)
92.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
ノーマン、何処に居る?こっちへ来い。分かるか、こいつはさっき捕まえたドイツ兵だ。ドイツ野郎を殺せないような役立たずはいらない。こいつの背中に風穴を開けろ。間違っていようと関係ない。お前は何をしにここに来たんだ?俺たちの任務はナチスを殺すことだ!ノーマン、お前はこいつを殺すためにここにいる。そして、こいつはお前を殺すためにここに来た。こいつを殺すか、お前が死ぬかだ――。1945年、4月。連合軍に追い詰められ、降伏寸前のナチスドイツは、最後の総力戦を戦うために女子供を問わず戦場へと駆り立てていた。兵役についたばかりのノーマン二等兵は、そんなドイツ軍との熾烈な戦いの最前線へと送り込まれるのだった。それまで事務仕事ばかりで実戦経験のほとんどないノーマンだったが、歴戦のベテランであるドン・コリアー軍曹の愛機“フューリー号”の副操縦士として配属される。鋼鉄と油にまみれたそんな狭い戦車に揺られながら、ノーマンは戦場の汚い現実を目の当たりにしていく。自分が信じる神と良心に縋ることによって何とか理性を保とうとするノーマンに、そんなものなど当の昔に捨ててしまったドンは、ドイツ兵は誰であろうとたとえ女子供であろうと躊躇なく殺せるマシーンになれという教育を施していくのだった…。第2次大戦末期のドイツを舞台に、戦車部隊の工員として過酷な戦場を生きたそんな男たちのドラマを生々しく描き出す軍事アクション。とにかく、この徹底的にリアルさに拘った重厚な戦場描写は凄まじいものがあります。ナチスドイツの狂気性はもちろんのこと、歴史的には英雄として認識されることが多い連合軍にもきっと蔓延していたであろうモラリティの欠落も、ちゃんと目を逸らさず描き出した本作のこの冷徹な姿勢は賞賛に値すると思います。そんな汗と泥の臭いにまみれた男臭い物語なのですが、中盤に登場する一人の可憐な女性を巡るエピソードは強い印象を残してくれました。もし、自分の童貞を捧げた美しい女性が、その次の瞬間に死んでしまうなんて経験をしてしまったら、そりゃ人間性なんてどっかに吹っ飛んじゃいますって。今では粗野な振る舞いを繰り返す先輩たちも、きっと入隊したての頃は彼のような葛藤があっただろうにと思うと見ていて辛いものがあります。ただ…、終始そんな冷徹な視線でもって戦争のやり切れなさを見つめていた本作なのですが、後半における無謀なヒロイシズムへと安易に流れてしまった展開はやはり大きなマイナスポイントでしょう。「俺の最大の任務は、仲間を生きて帰らせることだ」と言っていたドン軍曹の信念がここで揺らいでしまったのが残念でした。とはいえ、最後までヒリつくような緊張感を途切れさずに見せきる戦争ドラマとしてなかなか良く出来ていたと思います。7点。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-04 01:38:22)(良:1票)
93.  アクト・オブ・キリング 《ネタバレ》 
1965年、インドネシア。軍部によるクーデターが発生し、軍事独裁政権が誕生した。政府に逆らう者は共産主義者として告発され、西側諸国の支援のもと、100万人を超す“共産主義者”が1年足らずの間に殺された。虐殺や拷問の主な実行者は〝プレマン〟と呼ばれる、ほとんどヤクザと変わらない民兵集団だった。当時、彼らは権力者として敵対するものを容赦なく迫害。驚くべきことに、彼らは今も罪に問われることもなく国民的英雄として幸せに暮らしているのだった。今回、取材に応じたそんな殺人者たちは、かつて自らが犯した残虐行為を誇らしげに語り始める。どうして彼らはそんな鬼畜にも劣る行為を嬉々として実行できたのか――。その理由を知るため、本作のスタッフたちは、彼らに当時の拷問や虐殺を自由に再現し撮影して1本の映画として完成させるよう依頼する。本作は、その過程を追い、そんな殺人者たちの形成過程を記録したドキュメンタリーである。主な出演者は、当時プレマンと呼ばれ残虐の限りを尽くしたものの、今では地元の権力者として住民から英雄視されている初老の男たち。つまり当事者自らが当時のことを再現してみせるのだ。例えるなら、本物のナチスが多くのユダヤ人をガス室に送った工程を自ら演じてみせるようなもの。こういう今まであり得なかった手法で撮られた本作は、もうそれだけで観る者の知的好奇心を否応なく刺激してくる。映画を撮るために、久々に集った当時の仲間たちが、まるで学校の同窓会のように抱擁を交わし、そして当時の虐殺の様子を楽しそうに語り始める姿は観客の倫理観に挑戦状を叩きつけてくるようだ。「俺たちは当時正しいと信じられていたことをやっただけだ。それを言うなら、アメリカだってイラクで同じようなことをした。戦争犯罪は勝者が規定するものさ。殺人を責めるなら〝カインとアベル〟からやれ。俺たちは勝者だ、自分の解釈に従う」と主張する彼らに、真に有効な反論をいったい誰が有しているだろう。人間の倫理観の規範となるべき根拠の脆弱性を鋭く問う本作のテーマは、なかなか深いものがある。ただ、後半における「そんな彼らも当時のことを再現する過程で罪悪感に目覚めていった。きっと人間の本質にあるのはやはり〝善〟だ」という既存の道徳観に(無難に)収めていく展開は、残念ながら監督の“逃げ”と捉えられても仕方ないだろう。日本が世界に誇るカルト・ドキュメンタリーの怪作『ゆきゆきて神軍』における奥崎謙三が放っていた真の狂気性には到底及ばない。監督には彼らの心にいまだ眠っているだろう真の闇に、徹底的に肉薄して欲しかった。そうしたら、歴史に残る傑作になり得ただろうに。惜しい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-28 16:02:14)
94.  わたしは生きていける 《ネタバレ》 
「緊急ニュース速報です。ただいまロンドンで核爆弾が爆発した模様です。繰り返します、ロンドンで核爆発、首都近郊はいまや炎に包まれ、数万人規模の死者が出ているようです。確認できただけで15の組織が犯行声明を出していますが、真偽のほどは分かりません。現在、ヨーロッパ各地に死の灰が降り注いでおり、政府は戒厳令を発令しました。繰り返します、世界はいまや第3次世界大戦の瀬戸際に立たされています」――。ハードロックをこよなく愛する反抗期真っ只中の16歳の少女デイジーは、ひと夏を都会の喧騒から逃れて過ごすため、イギリス郊外の叔母の家へとやって来る。のどかな田園風景が拡がるそんな田舎町で彼女を迎えてくれたのは、自由気儘に暮らす従兄弟たち兄妹だった。最初こそ、情緒不安定な性格のせいで反発を覚えたデイジーだったが、次第に彼らの純朴な人柄に心を許してゆく。やがて、長男のエディに仄かな恋心を抱くまでになるのだった。だがある日、緑に囲まれた丘の上でのどかなピクニックを楽しんでいたデイジーたちは、遠くの空に一筋の閃光を見るのだった。直後に降り注ぐ謎の白い灰。急いで家に帰ったデイジーたちは、テレビのニュースで第3次世界大戦が勃発したことを知る……。これまで社会派ドラマの良品を幾つもものしてきたK・マクドナルド監督が数々の権威ある賞に輝くベストセラーを映画化したという本作、正直に言って、明らかな瑕疵の目立つ作品でありました。前半での青春ドラマパートにおける主人公デイジーとエディの恋があまりにも唐突過ぎて説得力に欠けるうえに、彼の動物と話せるらしい特殊能力もデイジーを終始苦しめる頭の中の声も一向にドラマに絡んできません。挙句、最後の取ってつけたような展開にいたってはもう目も当てられない。なのですが、本作にはそれを補って余りある魅力が随処に感じられて、僕は素直に観て良かったと思えました。たとえば、デイジーが大量の打ち捨てられた死体の山で従兄弟のことを捜すシーン、こんなにも悲哀に満ちたシーンを僕は久し振りに見たような気がします。あるいは、従兄弟の女の子を捕まえようとした男たちにデイジーが躊躇なく引き金を引くシーン、彼女の深い怒りに胸が張り裂けそうになりました。本作の優れた点は、戦争という巨大な災厄をあくまで一人の無力な少女の目線から捉えたところでしょう。この世界はロクでもない暴力に満ち溢れていて常に犠牲になるのは女や子供といった弱い者たち…、それでも人を想う気持ちさえあれば“わたしは生きていける”。そんなシンプルだけど、力強いメッセージにどうやら僕は心打たれようです。それだけにこの脚本上の欠点がつくづく惜しい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-26 20:56:50)
95.  ブリングリング 《ネタバレ》 
「ミーシャ・バートンが飲酒運転で捕まったって」「マジで?」「うん、それにパリス・ヒルトンは今夜、ベガスでパーティー」「ねえ、パリスの自宅って調べられる?」「ちょっと待って…。えーっと、ブライア・サミット・サークル2342番地…」「行こうよ!中に入れたりしたら最高に楽しそうじゃん!」――。おちこぼれて三流高への転校を余儀なくされた高校生、マーク。彼はそこで、自由奔放に生きる女の子レベッカを初めとする不良グループと出会うのだった。退屈な日常から少しでも逃れたい彼女たちは、常にネットでセレブたちの煌びやかな生活をチェックし、夜毎パーティーへと繰り出してはドラッグと酒に手を出す享楽的な日々を過ごしていた。ところがある日、手癖の悪いレベッカの思いつきによって、彼らはパリス・ヒルトンの自宅へと侵入することに成功する。そこで見た大量のブランド品やキュートな靴、眩いばかりの宝飾品の数々に彼女たちのテンションは最高潮に。無事にパリスのものを盗みだせた彼女たちは、「あたしもパリスみたいなセレブ生活を楽しみたい!!」と次第にその行動をエスカレートさせていくのだった…。ハリウッドのセレブたちを標的に数億円規模の金品を盗み出したティーンエイジャーたちによる窃盗事件を基に、ソフィア・コッポラ監督がスタイリッシュに描き出す青春クライム・ムービー。もういかにもソフィア・コッポラらしい、なかなかカッコいいガールズ映画でしたね、これ。彼女たちの行動に当然のように嫌悪感を抱くだろう、自称・良識派の人たちや年配の方には申し訳ないですが、若いってこういうことだと僕は思います。後先のことなんかこれっぽっちも考えず、「取り敢えず楽しそうだからやってみよう!!」という彼女たちの行動原理には、いたく共感出来ました。僕も若いころは酒飲んでいっぱい無茶やりましたもん。皆でゲームして一番負けたもんが女装してコンビニに行くとか、バイト先の倉庫に忍び込んで夜中中麻雀してみたりとか…(あん時、SNSがあれば僕なんか真っ先にお騒がせ画像を投稿しただろうなぁ、おーこわ笑)。そしてソフィア・コッポラの美点って、そんな無軌道な若者たちを描かせても、最後まで上品でお洒落な雰囲気を維持しちゃうその感性にあると思います。もう全編を彩るその映像や音楽の品の良さといったら…。ただ、良くも悪くも薄味なんですよね~。その薄っぺらさが現代社会を象徴していると言えば聞こえはいいのだけど、ちょっぴり物足りなさを感じたのも事実。彼女のセンスとは僕は昔から相性がいいんで本作も普通に楽しめましたけど、そろそろコッポラ監督の新境地みたいなものも観てみたい気もします。とはいえ、若い女性を可愛く撮らせたらやっぱり彼女の右に出る者は居ないですね。出てくる女の子、全員めっちゃキュートで可愛くてえがったっす!あ、あとパリス・ヒルトン、普通にアホ過ぎやろ(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2015-05-07 22:48:46)(良:2票)
96.  レイルウェイ 運命の旅路 《ネタバレ》 
「長い年月、僕はずっと想像してきた。奴を見つけ出し、その舌骨を折り、眼球には箸を突き刺す。悲鳴を上げさせ、そして赦しを乞わせることを。その声を子守唄に眠った…。だが、時代は変わったんだ。我々はもう兵士じゃない。今の僕は単なる〝夫〟だ。妻は僕の全てだ。もう奴の事を掘り返さないでくれ」――。1980年、英国。一年前に結婚した妻と平凡ながらも幸せな日々を過ごしている初老の男性エリック。だが彼は、時々精神的に錯乱して妻を困らせてしまう。次第に私生活に支障を来たし始める夫に、妻は真実を知ろうと詰め寄るのだが彼は一向に理由を明かそうとしない。やがて、実はエリックは第二次大戦中のシンガポールで旧日本軍によって言語を絶する壮絶な体験を強いられたことが明らかとなる。そんな彼に追い討ちをかけるように、旧友からかつての敵であった〝彼〟が実は今も生きていて、のうのうと生活していることを知らされるのだった……。物語は、そんなトラウマに苦しむ現代のエリックと彼が日本軍の捕虜となって地獄のような鉄道建設に従事させられた日々を交互に行き交いながら、罪と赦しを巡るドラマを濃厚に炙り出してゆく。実話を基にして描かれたというそんな本作を複雑な思いを抱きながら、この度鑑賞いたしました。戦争という非日常に追い込まれたとき、人は誰もが各々の正義を振りかざし、時には取り返しのつかない過ちを犯してしまうという真実を、実力派の役者陣をそろえ、冷徹に見つめたその視線はなかなか鋭い。やはり戦争は悲劇しか生まないということを改めて実感させられました。戦争を知る世代がもはや殆ど居なくなろうとしている現代の日本において、この事実は忘れてはいけない。ただ、純粋に映画としてみれば、演出として拙い面がちらほら散見されるのが惜しい(特に、過去パートでの日本軍に隠れてラジオを造るエピソードや自死を選ぶ主人公の友人。もっと巧い見せ方があったはず)。とはいえ、この事実を多くの人に伝えなければという製作陣の思いには、一日本人として素直に好感持てました。最後に提示される本人たちの写真からは、やはり事実の重みがずっしりと心に響きますね。うん、久々に観て良かったと思える作品に出会えました。
[DVD(字幕)] 7点(2015-03-20 05:29:31)
97.  オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ 《ネタバレ》 
「あなたの新しい音楽も素敵だわ。なんだかあなたが過去にシューベルトに書いた弦楽五重奏を思い出す」「懐かしい。彼はあれを自作として発表したんだ。実際に書いたのはアダージョの楽章だけさ」――。都会の片隅で誰からも隠れて生きるヴァンパイアの夫婦、アダムとイヴ。もう何百年もの昔からその存在を人に知られることなく、気まぐれにシェイクスピアやシューベルトに作品を提供しては、人間の血を啜り生活してきた。そんな彼らもアイフォーンやユーチューブが常識になった現代では、昔のような自由を満喫することが出来なくなってしまった。病院から横流しされる輸血用の血液を啜り、ただひたすら夜陰に紛れて細々とした生活を営む彼ら。ところがそこに自由奔放なイヴの妹が転がり込んできたことから、そんな静かな生活に少しずつ罅が入ってゆく……。インディペンデント映画界の名匠、ジム・ジャームッシュ監督が満を持して贈る現代の幻想奇譚。もういかにもジム・ジャームッシュといった感じの、ストーリーよりも雰囲気優先、リアリティよりもセンス重視、物語の整合性よりもスタイリッシュさ命、もうとにかく都会の夜の匂いを濃厚に漂わせるジャジーで格好良い映画でしたね、これ。昔から、その我が道をゆくぶれない姿勢は好感が持てるし確かに彼にしか表現しえない独自の世界観を持った監督であることは大いに認めるところなのだけど、本作に関してはどーなんですかね?てか、ジョニー・デップ扮する瀕死の銃傷を負ったガンマンがただひたすら逃げまくる「デッドマン」やフォレスト・ウィテカー扮する武士道に心酔する殺し屋がひたすら殺し続ける「ゴーストドッグ」とやってることがほとんど一緒なような…(笑)。まあ、ファンにとってはこの大いなるマンネリ感が堪らないんですけどね。というわけで今回も、この“物凄く中身があるように見えながら、実際はそんな面倒臭いことはどーでもいい、ただこの雰囲気だけを楽しんでくれ”と言わんばかりの潔いまでの中身のなさは素直に好印象。ただちょっと長かったですかね。もう少し短く纏めてくれても良かったような気がしなくもない。あと、最近の僕のお気に入りの若手女優ミア・ワシコウスカが、ほんのチョイ役ですが、そのキュートでコケティッシュな魅力でもって作品に華を添えておりとても印象的でした。彼女の牙剥き出し笑顔に思わずキュンとしちゃったことをここに付け加えておきます。
[DVD(字幕)] 7点(2015-02-09 22:15:56)
98.  月に囚われた男 《ネタバレ》 
「皆さん、これまで地球環境を汚し続けてきたエネルギー問題を我が社は画期的な手法で改善することに成功しました。人類を救うエネルギーは、なんと空に浮かぶ月の裏側にあったのです。太陽エネルギーを多量に含む石を月の裏側から採掘することで、地球のエネルギー消費の約7割をまかなうことが出来るようになったのです。月の力は私たちの未来を創造する」――ルナ産業。  近未来。月の裏側に建造された採掘施設でたった独り、黙々と仕事をこなしてきた作業員サム。3年という契約期間の満了を2週間後に控えた彼の唯一の心の慰めは、人工知能を搭載したロボット・ガーティとの何気ない会話と、地球に残してきた愛する家族からのビデオレターだった。「もうすぐ地球に帰って愛娘にキスできる……」と浮き足立つサム。そんな折、彼は採掘場で致命的な事故を起こしてしまう。瀕死の状態で基地へと連れ戻されたサムだったが、そこで自分と瓜二つのもう一人のサムと出会ってしまうのだった……。いったい彼は誰なのか?そしてこの施設に隠された恐るべき真実とは?舞台はこの採掘施設のみ、主演俳優もほぼこのサムの一人二役のみ(あ、人工知能の声役のK・スペイシーも忘れちゃいけません!)という、そんな明らかな低予算映画なのだけど、センス溢れる映像と音楽、緻密に考えられた脚本の力で最後まで小気味良く見せるSF映画の佳品へと仕上がっておりました。いやー、良いですね、この圧倒的な孤独感。こういう広大な宇宙の中でずっと独りぼっちという寂寥感溢れるSF作品、もろ自分の好みなんですけど!あの人工知能のガーティ、今までのSF映画の常識なら後半で主人公を追い詰めていくんだろうけど、最後は意外にも男気(ロボット気?笑)を見せるトコなんか気持ちよく騙されました。2人のサムが辿ることになるそれぞれの運命もなかなか切なかったしね。まあ、後で思い返してみればアイデア的にはそんなに新しいものはなかったし、設定にも突っ込みどころ(こんな凄い技術があるなら人を常駐したりせず、全部オートメーションにしたら良かったやん!とか、サムが最初に手を怪我するきっかけになったあの不気味なおねーちゃんは結局誰やったねん!とかッ笑)はあったけど、普通に面白かった。うん、ちょっぴりおまけして7点あげちゃおう!
[DVD(字幕)] 7点(2015-01-23 11:13:29)
99.  悪の法則 《ネタバレ》 
麻薬組織と繋がりのある企業の顧問弁護士として、今まさに引き返せない悪の道へと手を染めようとしている男。何も知らない美しい彼の妻。金と女のためならどんな手段でも平気で行う強欲な経営者。淫乱で謎の多い怪しげなその彼女。そして、何もかも分かったように斜に構え全てを冷笑的に見つめる男…。果てしない欲望と愚かで醜い性欲を抱えたそんな彼らが互いに騙し騙され破滅へと向かってゆく姿をシニカルに描き出すピカレスクロマン。「エイリアン」や「ブレードランナー」といったSF映画の名作を数多く残してきたものの、「グラディエーター」辺りから世間での高評価とは裏腹に僕の中では確かにその映像の美しさやスケールの壮大さなどは認めるものの、いまいち心に響くものが乏しい作品ばかり撮ってきたリドリー・スコット監督。現代アメリカ文学の重鎮マッカーシーの原作を映画化したという今作も、やはり哲学的で難解な作品でありました。でも、この華がありながらちゃんと実力も兼ね備えた豪華な役者陣が織り成すミステリアスなストーリーと、 淫猥な雰囲気がこってり濃厚に漂うこのダークな世界観はけっこう良かったかも。特に、フェラーリのフロントガラスに無毛つるつるのあそこをねっとりぐっちょり擦り付けて絶頂を迎えちゃうキャメロン・ディアスの文字通りのカーセックスシーンはめちゃくちゃエロかったっすね~。久し振りに、映画を観ながら僕の股間がエキサイトしちゃいました(笑)。まあ、見事なまでに最低の人間ばかりが登場する、胸糞悪~い後味最悪な映画ではあったけど(最後に送り付けられるあのDVDの中身なんか、想像しただけで吐きそうやし笑)、全ての人間の根源には必ず悪があるという事実を冷徹に見つめながらもどこかコミカルでエネルギッシュに描いたこの作品、うん、けっこう見応えあったっす。リドリー・スコット、ちょっぴり見直したよ!
[DVD(字幕)] 7点(2014-07-01 08:40:18)(良:1票)
100.  路上のソリスト 《ネタバレ》 
LAタイムスという超一流新聞社で、多忙な毎日を過ごす敏腕記者ロペスは、ある日、路上でバイオリンを弾くホームレス・ナサニエルと出会う。その奇矯な言動と特異な格好とはうらはらに、彼の奏でる美しい旋律に興味を引かれたロペスは、思わずコラムで彼のことを取り上げるとそれが静かな反響を巻き起こすのだった。本格的にナサニエルの過去を調べ始めたロペス、するとそこにはかつてその才能を認められ将来を嘱望されながらも統合失調症によって悲惨な現実を生きざるをえなかった彼の哀しい人生があったのだった――。静かな正義感を胸に秘めた新聞記者と路上という自由で孤独な世界に生きる元ソリストとの、人生の再生をかけた友情を淡々と描き出すヒューマンストーリー。とにかく抑えた演出と全編を彩るクラシックの名曲群のおかげでとても美しい静謐な雰囲気に満ちた、ジョー・ライト監督らしい佳作だと僕は思いました。実話を元にしているということもあり、二人の友情物語が変にドラマティックに描かれていないところも好印象です。統合失調症を発症し、四六時中続く幻聴に次第に追い詰められてゆく若き日のナサニエルと、その後、心がすっかり壊れてしまいホームレスとなった現在の彼を見事に演じ分けたジェイミー・フォックスの熱演もなかなか見応えありました。それにしても、こういう適切な治療を受けられずホームレスとならざるをえなかった統合失調症患者は果たしてどれくらいの割合で居るのでしょう。ナサニエルのような哀しい人生を歩んでしまった人を少しでも減らすために、公的機関のサポートがもっと充実されることを願うばかりです。ただ、映画としては最後まであまりにも優等生な演出が続くためちょっとパンチに欠けるかなぁというところが若干気にはなったけど、この気品に満ちた作品世界に僕は最後までしっとりと浸ることが出来ました。ジョー・ライト監督とは、どうやら相性が良いようなのでこれからも観ていこうと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2014-06-24 19:04:54)
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