101. ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
トマス・ウルフ。学生の頃講義で名前だけは知っていたけれど、作品に触れたことはありませんでした。ましてヘミングウェイやフィッツジェラルドも担当した名編集者の存在も今作で初めて知り、当時の世相描写とあわせて興味深かったです。 キャスティングが成功してまして、破天荒な天才を演じたのはジュード・ロウ。イケメンなので分かりづらいけれど、かなり器用にいろんな役をこなせる人です。C・ファースは言うに及ばず安定感ハンパないですし、想いは常に一方通行のパトロン、N・キッドマンも痛々しいヒステリックぶり。下降気味のフィッツジェラルドのG・ピアースも良かった。 トムの抑え切れない表現欲と苦しみも、パーキンスの情熱と困惑も、アリーンの嫉妬心も生々しく伝わります。人間ドラマの濃さが尺足らずの脚本を補って余りある、役者陣の力演でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-11-18 23:33:18)(良:1票) |
102. バルカン超特急(1938)
さすがに今の時代に観てしまうと、トリックも想像つくし窓の字がキーになる伏線だな、と読めてしまうのですが、でもこれ戦前の作品なんですね。当時初見だったらきっとすごく興奮したと思うなあ。列車の中で忽然と人が消え、目撃者もいない。ヒロインが追い詰められる展開は緊張感があってスリリングですし、時折はさまるコミカルなセンスも品があります。 クリケットの試合のことしか考えないイギリス人二人組なんかは脇役ながら変な存在感があったり、皆キャラ立ちしてます。古典ながら娯楽作品としてのあり方を確立しててやっぱりヒッチコックは凄い。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-25 20:36:44) |
103. 恐怖(1961)
《ネタバレ》 全然知らなかった作品なんですが、サスペンスとしての出来の良さにびっくりしました。これがヒッチコックの手によるものだったら、名監督の代表作として不朽の名声を得ていたでありましょう。一体なぜに(ほぼ)無名なのかしら。 S・ストラスバーグの線の細い情緒不安定な演技は、こちらの疑念をかきたてるのにぴったりハマりました。冒頭の伏線も、実に鮮やかにどんでん返しの一助を担ってますし、プロットがとても良くできています。ああそれに窓の外に見える崖っぷちの車椅子。ラストのあの画は怖かった。直後に何が起きるか想像つくからだろうか。こんな風に直接グロい画を見せるのでなく、間接的に観る者の想像を煽るのです。良作です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-06-11 23:53:11) |
104. ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー
《ネタバレ》 誰がどう見ても破綻確率100%の男女。身分の差はもとより、女は子持ちのうえパトロン有りの風俗業で男は不実ときたもんだ。あーダメでしょコレ。 ところが人間て不思議なもので条件がことごとく合わなくても、「コイツほんとに腹立つ」と思いながらも、”心が惹かれる”という生理現象が起こるのですね。私は女なのでマズイことにルースの気持ちがわからなくもないのだった。 生来がずるくて不誠実で、でも するっと人のフトコロに入り込んでくる軟派男のルパート・エヴェレットはハマリ役ともいえる仕事っぷりでした。アナカンで世間を騒がせた美貌は健在で、良家の子息という設定にもすんなり納まる。さすがです。対するミランダ・リチャードソンも、「そんなに男どもが騒ぐ美人かなあ」と序盤は思いましたが、愛憎に絡め取られて狂気を帯びてゆく様は迫真の演技でした。 彼女だけが裁かれたとは、この映画を観る限り実にやるせない感慨になります。恋愛の沙汰はやはり両成敗してもらいたいものですが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-04 00:47:26) |
105. 上海の伯爵夫人
クレジットに”written by Kazuo Ishiguro" とあって、おおなるほど、と膝を打ちました。抑制の効いた、品のある佇まいはまさにこの作家の筆致です。第二次大戦前の上海租界を舞台に、凋落したロシア貴族と元米国人外交官らが織り成す物語など、この人以外に誰が書けましょうか。 再現された上海の混沌として退廃なこと、時折挟まるロシア貴族の輝かしい時代の回想場面。猥雑さえ甘美な映像美に代える監督の手腕が冴えわたり、充足した視覚体験でありました。 元外交官のR・ファインズも伯爵夫人のN・リチャードソンも暗躍する日本人工作員の真田広之も、皆各々の矜持を維持して生きる様が高潔で観ていて心地よいのです。役者がみなハマった良いキャスティングだと思いました。 全編淡々としているようでいて、目を凝らすと底意地の悪い義母や義姉らはソフィアにとって人生の大きな棘だし、松田氏の怪しい動きにも心乱されたりと、水面下で大きなうねりは起きているのでした。クライマックスの群集混乱シーンは圧巻です。 そして忌々しいロシア貴族姉妹の余りの非情さに腹煮えたぎったワタシは、このラストに心から満足しました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-03-07 00:49:37) |
106. マラヴィータ
《ネタバレ》 スタッフが楽しんで作っているなあ、と伝わる雰囲気の良い(?)クライム・ファミリー話です。無茶なことを、はっちゃけてやる。いや、面白かったです。デ・ニーロとトミー・リーにこんな役はまあバイトみたいなもんでしょう。余裕のあること、楽しそう。だいたいロバート・デ・ニーロをゲストに呼んで上映するのが“グッド・フェローズ”ですからね。この冗談センスを受け入れられれば楽しめること間違いなし。 おとーさんの過激な倍返し妄想は「わかるわかる」と膝を打ちましたし、凶暴純情長女も知能派謀略家の弟も、若々しいM・ファイファーも、この家族みんな好き。ただ何故犬の名前がタイトルなの? [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-06 00:09:53)(良:1票) |
107. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 R・スコットらしい遠大な画に魅せられる140分でした。相変わらず凄い映像を作る人だ。リアルで緻密で、ああ火星でのロケって大変だろうなと私が小学生だったら素直に思ったかもしれないレベルです。画作りにはいつも情熱を注ぐ監督ですが、話はたまに(先日観た)プロメテ○スみたいに脚本おざなりにぶっとんだりします。だけど今作は大丈夫。スタンダードなサバイバルドラマ、プラス人類の同胞愛を高々と謳い成功しています。 M・デイモン演じる植物学者のタフで明るいキャラクターが、物語を見易くしていると思います。無人の地に一人ぼっち=”キャスト・アウェイ”と似てはいても、トム・ハンクスが苛烈な孤独と闘っていたのに対し、マットの方はあまり思いつめない。比較的早く地球と交信できたのが大きいのでしょう。毎日たくさんのメールが来る、これは非常に精神の支えになりますよね。 宇宙科学や物理学についてはど素人の目から見ても、クライマックスのマット確保劇は「いやそれは無理では」と思わなくもないですが、でもこの映画 その他たくさんあるであろう「理論的に不可」な事例をことごとく一蹴する位の清清しい力技を備えています。 気持ちとしては、地球人の一人として彼の帰還を喜びましたから、完全にのせられてしまいました。ただやっぱり中国市場を意識しすぎな作りは煩いです。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-20 18:03:25) |
108. キャロル(2015)
《ネタバレ》 オスカー女優とカンヌ女優賞、二人の競演はとても見ごたえがありました。そしてなんと番狂わせなことに、ケイトを抑えてルーニー・マーラに軍配が上がりました、ワタシの中では。ケイトが押されている・・?とびっくりしました。 だって、テレーズはもう完全にキャロルに惚れている。彼女を追う時の目線の熱っぽさや、頬が自然と上がるときめき、恋する人間の発する独特の甘い空気。ルーニー・マーラすげえ。 一方、ケイトはルーニーよりハンデがありまして、なにしろ忙しいのです役が。我が子を思う母親であり、愛の冷えた夫とその家族に疲弊する妻でもあり、元カノに弱みをさらす一人の女性でもあって、ケイト・ブランシェットだからこそこんなに沢山のタスクをこなせたとも思うのですが、恋に身を焦がすほどの想いをばんばん放出してきたルーニーの方が印象強かったです、はい。 [映画館(字幕)] 7点(2017-09-15 00:19:51)(良:1票) |
109. 長く熱い週末
《ネタバレ》 ギャング映画のカテゴリーにしてはちょっと地味ですが、切れ味はなかなかの一品です。自分の力を過信気味のボスはB・ホスキンス。小っちゃい身体でキレながらこまこまと動き回り、自ら真相を追う。やたらフットワークの良いボスではあるんだけどいかんせんワンマン。周りの意見にもっと耳を貸すことができたなら、非業のラストを迎えることにはならなかったのに。このラストシーン、とうとう詰んだホスキンスのアップを数秒間突きつけられる。ヤバさ極まれり。このラスト以外にも、じわーっと冷たい空気感を裂くように銃口が火を噴いたり、突如刃物が閃いたりと、全編緊張が途切れない演出の上手さも印象的。 あまり考えの深くない恫喝型ホスキンスが暴走気味になったとき、ビンタをかまして落ち着かせるヘレン・ミレンの姐御っぷりも見逃せない。こんなに若い時から目が据わっていたのね。 そしてIRA、この頃はテロリストの定番のようにいろんな映画に登場していたなあ。状況がもうだいぶ変わって映画の題材になることは無さそうですね。 [DVD(字幕)] 7点(2017-08-19 00:23:10) |
110. オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
《ネタバレ》 トム・ハーディのあっぱれな一人芝居。登場人物一名、場所は車中、交わされる電話の会話のみでストーリーを構築してゆく脚本は舞台劇のよう。目に映るのはひたすらトムの正面顔と横顔か、車内電話の着信画面。この単調さにも関わらず、ただならぬ展開を見せるのでもらい緊張でどきどきした。もう口が乾いて。 アイヴァン・ロックは困ったことになったもんだ。反父親という思いが骨の髄まで沁み込んでしまってて、「奴のようにはならない」「俺はきちんと責任を取る」を信条に生きてきた。その生き様は仕事においては非常に有能で、家庭も円満だったのだ。彼がいかに仕事のデキる男かは、この数十分でつまびらかに伝わる。ああその律儀さが、まじめさが、父への反発心が、築き上げてきた人生を葬り去ろうとは。 ロックに言いたい。間違ってるよ。「誰に対しても等しく責任を取る」なんてことはできないのだよ。仕事のように段取りを正確にこなして、突発的なトラブルにも的確に対処してゆけば事が運ぶのとはフィールドが違うんだ、こればかりは。 突然大仕事を丸投げされた同僚のパニックも、打ちのめされた妻の気持ちも手に取るように分かる。「悪気のない」ロックは大好きなトム・ハーディだしで、もう困っちゃったなああ、とワタシまで頭を抱えるシマツだ。この後をいろいろ想像するが、私の技量では誰も良いことにならないんだどうしましょう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-02 00:15:09)(良:1票) |
111. ヴェルサイユの宮廷庭師
《ネタバレ》 2016年はたくさん偉大なアーティストを失った辛い年でした。アラン・リックマンも逝ってしまった一人。長い演劇活動の最後に彼自らがメガホンを取った作品は、上品で格調高いラブストーリーでした。 17世紀のフランスにおいての女性造園家の奮闘が描かれているのかと思いましたが、公式サイトによるとサビーヌ・ド・バラは架空の人物だそうで、恋愛ドラマの主人公をわざわざベルサイユに持ってきた意味はといえば、やはり絢爛豪華な舞台装置が欲しかったんでしょうな。狙い通り、映像がとても美しい。豪奢な宮殿も、フランスの緑濃い森や田舎の一本道も。なんと英国での撮影も混じっているとのことですが、輝く陽光の下での庭園などは美術品のようです。 マダム・サビーヌについては資料も残っていないそうですし、あの時代に未亡人が誰の弟子でもなく、援護も受けず庭園技師として独り立ちしていたとはちょっと考えづらいなあと思ったのだけど、K・ウィンスレットが、芯の強い聡明な当時のキャリア・ウーマン像を見事に作り上げています。庭仕事イコール力仕事。ケイトの立派な二の腕やかっちりした肩幅なんかも、女性造園家の設定に説得力を持たせているような。 フランス貴族社会のお約束などろどろ恋愛模様もちゃんと織り込みつつ、マダム・サビーヌとル・ノートルの互いの想いはあくまで奥ゆかしく、英国人監督の感性を感じさせます。 名優アラン・リックマン、美しい作品を残してくれました。改めて合掌の思いです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-09 17:23:22) |
112. SHAME -シェイム-
《ネタバレ》 性交シーンが多く、しかもどぎつくて不道徳とも感じかねないけれども、この話の根っこにあるのは心の飢餓に苦しむ男の孤独である。心が不安定だと依存症になる場合がある。人により、アルコールだったりギャンブルだったり。この男はセックスだった。 キャスティングが容姿端麗なM・ファスベンダーで正解だった。画が生臭くならずに済むし、見た目とのギャップの大きさも強く印象に残る。かなりきわどい性描写もこなし、X-MEN俳優で終わるまい、というあっぱれな役者根性の持ち主とみた。 妹シシーを配した脚本が巧いと思う。シシーは男の映し鏡。欠落しているものが同じなので、自分を見ているみたいでイライラするのである。二人とも孤独で、空っぽだ。 男にとってセックスは渇望を満たすための行為。愛の行為ではないので、好きな女のことはどう抱けばいいのか分からない。この場面は深刻だ。深刻さを解消できぬまま、後半には彼のセックスは自己破壊にも近くなる。 兄妹の生い立ちがどういったものなのか描かれず、つらいまま話は終わってしまう。 男にはセラピーが絶対に必要だ。まだ希望はあると思う。妹が死にかけた時、初めて人間らしく動揺し、男は泣いた。なんとかして、彼が苦しみから抜けられますように。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-07 00:22:27) |
113. オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
《ネタバレ》 ジャームッシュ健在、を印象付ける一本。気だるくて美しくてちょっとエスプリも効いていて。 タンジールの異国情緒も、デトロイトの廃れた佇まいもどちらも夜のショットの中に耽美的に切り取られていて魅力的だ。 ストーリーは淡々と、何世紀もの生を生きるヴァンパイアらの”日常”をつづり、一編の詩のよう。 静かな湖面に石を投げ込んだような、異端児エヴァの存在も光る。 主役二人が本物の吸血鬼っぽくてリアリティ有りまくり。いや本物は見た事ないけど。 あそれとドクター・ストレンジ・ラブの血を買ってましたね。ははは。大丈夫かな あんな風にイカレたら耽美どころじゃなくなっちゃうよね。 [DVD(字幕)] 7点(2017-03-14 00:28:23)(良:1票) |
114. ロックンローラ
《ネタバレ》 ガイ・リッチー一流の一気収束展開が小気味良い脚本ではあるけれど、いかんせん前作「リボルバー」でぽしゃった後のリハビリ的な出来でして「ロック・ストック~」や「スナッチ」ほどのキレはありません。 人物描写は鮮やかで各キャラは立ちまくり、会話も粋で心地よい。だけど大きな失敗として、タイトルの影の主人公(なのか?)であるロックンローラーがこれ存在感非常に薄い。コイツの偽装死も柱の一つのはずが、G・バトラーやM・ストロング、T・ハーディやその他ロシア人といったアクの強い連中のどたばたの陰に隠れてしまっているので、終盤になってキーマンとして登場するも”待ってました”感が無いんですわ。 なにしろ観終わって一番印象に残ったことといえば、トム・ハーディにゲイを告白されたバトラーのパニックぶりと、その後の友情あふれる涙ぐましくも麗しいフォローぶりだったりする。いやここ、何度観返してもほのぼのと笑える。親友に恋情を抱くハーディが意外やゲイの芝居が巧いですし、つまりこの部分でもって点数が甘くなりました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-10-08 16:39:55) |
115. モネ・ゲーム
《ネタバレ》 私これけっこう好きです。全体的に、もう少しぴりっと締まる演出がほしいかなあとは思うけど。椅子が動かないネタにしろ、ズボン無しのコリンの災難ネタにしろ、引っ張りすぎでちょっと飽きます。馬鹿みたいな日本人のくだりは(裏があるにしろ)ちょっと耐え難いものがありました。 でもベテラン演者の安定感は心地よく、A・リックマンの二役演技はみものです。コリン・ファースの脳内イメージでの変人バージョンのシャバンダー氏はアラン渾身の変人演技でした。 キャメロン・ディアスはテキサス出身のカウ・ガールに大はまり。三十路?なれど変わらぬコメディエンヌぶりを発揮。 savoyのフロント二人組の絡む場面も好き。シチュエーション誤解ネタの定番連発で、一番笑わしてもらいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-05-27 01:02:07) |
116. ハンガー(1983)
《ネタバレ》 先日逝ってしまったD・ボウイ氏。本当に美しいなあ。ドヌーブもさすがの美貌だなあ。ヨーロッパ型美形のお二方が揃ってのヴァンパイアはハマりすぎて画が完璧だ。吸血鬼はやっぱりヨーロッパ出身でないと、との思いを強くする。白っぽい粒子がキラキラしているような映像は幽玄さを醸し、現代のニューヨークにおいてもゴシックな芳香が漂う。早々とボウイ氏が降りた後釜はスーザン・サランドンと、急に20世紀顔になってしまうのは少々惜しかった。 お話はポーの一族さながら、永遠を生きる彼らの不変の苦悩がベースではあるけれど、半分人間の血が入っている者は死ぬに死に切れないという恐ろしいオチがついててびっくりだ。これではボウイさんは”永遠の命詐欺”に遭ったみたいなものではないか。何世紀にもわたる過去の被害者たちが朽ちかけた肉体を引きずってカトリーヌにすがりつく場面は恐いけど可哀想でもあった。 思いもよらない逆転打を放ったサランドンの横顔と、ドヌーブの切ない呼びかけ。徹頭徹尾クールな美学を貫いた感のあるラスト。 [ビデオ(字幕)] 7点(2016-03-05 00:40:41) |
117. 007/スペクター
《ネタバレ》 さすがスパイ映画本家本元の007、客を飽きさせない見せ場の連続であります。正直おなかいっぱいになります。ボンド様が強いのはお約束ですので、もう少し手に汗握りたいワタシのような一見客はちょっと物足りない。しかしながら、今回の悪役クリストフ・ヴァルツはとても良かった。ランダ大佐とはまたちょっとタイプの違うサディズムを漂わせて、序盤は完璧。惜しいことに彼ほどのキレ者が椅子の後ろ手テープを甘くしているとは考えづらいのだが。 あー、それとモニカ・ベルッチ、ボンドガールじゃないじゃん。出番はあれだけっすか。もう少し華麗な活躍の場を差し上げないと、さしものモニカも老けたなあ、で終わってしまうではないか。 それと、Q萌えの皆さんには朗報です。彼はとてもキュートです。ローンと猫2匹を抱えてMとボンドの間で苦労が絶えないながら、009のために5億もする車に環境設定してあげる細やかさだ。009はきっとオジサンだ。 と、なんだかんだで結構楽しめたダニエルボンドの4作目でありました。 [映画館(字幕)] 7点(2015-12-12 00:14:45)(良:1票) |
118. ミッション
会社の都合で出向し、現地で成果を上げたにも関わらず 数年後本社から“事情が変わったからそのプロジェクトはチャラね”と告げられた社員たち。本作の場合、社員は宣教師たちで、交流を深めてきた現地住民の居住権を取り上げるって話だ。神に仕えし者達の、政治の闘いは人間のご都合丸出しだ。白人至上主義の現場ってのは実際こうも酷いものだったのかあ、とつくづく勉強させられた。19世紀、南米でのイエズス会の活動のことなど、この映画を観るまで想像したこともなかったです。 イグアスの滝の勇壮なこと、音もしぶきもつぶさに切り取ったカメラの力も凄い。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-08-20 00:19:07) |
119. カレンダー・ガールズ
《ネタバレ》 なんか、英国の人って裸になるの好きですよね。おっさんはもとより、王室のプリンセスからおばちゃんに至るまでよく脱ぐなあ、という印象があります はい。 ヘレン・ミレンを代表に、おばさんたち皆あっけらかんとして楽しそうだ。迷いなんてほんの一瞬。ヨークシャーの風景も目に美しく、イギリス人らしいヒネリの効いた台詞も粋です。“事業”が成功してちょっと天狗になっちゃうクリスと、それをやんわり制するマギー。夫たちや女性連盟のお偉いさん達といった背景もきちんと織り込んだドラマの奥深さも、英国映画らしいなあと感じました。 ただ、ワタシが最も注目したのはクリスの息子のこと。オカンが人前に裸を晒すなど10代男子には耐え難いことでありましょうし、息子を愛して止まない自分としてはわが身に置き換えてみると、うーわ絶対こんなことできねえ、と思いましたね。彼の社会生活がどれほど支障をきたすことか。そこらへん、息子さんに関しての回収が今ひとつおざなりで物足りなかったのでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-08-04 23:09:06) |
120. 未来世紀ブラジル
《ネタバレ》 全編にわたって趣味が悪く、黒いユーモアがふんだんに。たしかに笑えもするけど、笑ったあとにざらつくような不快感も残る。整形に血眼なオバサンたちは死んだら原型もキープできないほどに切り刻まれ、食事は色のついてるだけの何やらマッシュ状のかたまり。管理史上主義の世界では紙切れが異常な権威を持ち、暖房修理すら許可証が必要なんだとか。うあー、こんな未来像を構築したギリアムの感性には畏れ入る。畏れ入るが、例えば「時計じかけのオレンジ」にワタシは心胆奪われたものであるが、ブラジルの方はまだまだずっと理解可能な世界で、両者のエッジの効き方の違いを大きく感じたりもする。どっちが好きかと聞かれれば、いやどっちも好きというわけじゃないんだけど。 [DVD(字幕)] 7点(2015-07-31 23:37:46) |