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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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161.  ゼロの未来 《ネタバレ》 
ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは現在93.789%です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。次の解析済みデータを1時間後にアップロードしてください。不可能ならば超過時間を分単位で入力してください。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%であるべきです。ハロー、コーエン・レス、連絡です。ゼロは100%で――。コンピューターが異常な発達を遂げた近未来。仕事一筋で生きてきた真面目な男、コーエン・レスは人生の意味を教えてもらうための電話を待ち続けて孤独に生きてきた。より思索に耽りたいと願うあまり、彼は会社に在宅勤務を要請する。当初は難色を示していた上司だったが、マネージメントと呼ばれる経営トップの判断により、彼はとある極秘プロジェクトを任されるのだった。そのプロジェクトとは、「ゼロの定理の証明」。家に閉じこもり、来る日も来る日もデータ解析に打ち込んでいた彼だったが、作業は遅々として進まない。会社からは次々と催促の連絡が入るものの、肝心の電話は一向に掛かってこず、次第に追い詰められていくコーエン。そんな彼の元に、怪しげな売春婦ベインズリーやマネージメントの息子ボブを名乗る青年がやってきて……。唯一無二の独創的な映像や超現実的なストーリー等々、もはや生ける伝説と言っても過言ではないカルト映画界の巨匠テリー・ギリアムの最新作は、いかにも彼らしいそんな超シュールな作品でございました。いやー、やっぱりいいですね、このギリアムにしか描き出せない摩訶不思議な世界観。『未来世紀ブラジル』や『12モンキーズ』『フィッシャー・キング』といった彼の往年の名作を髣髴とさせる唯一無二の独創的な映像に僕は久し振りに痺れてしまいました。そこに今回はベインズリーというそれまでのギリアム作品にはなかった(?)エロティシズム要素も加わって、いやはやどうして一筋縄ではいかない作品に仕上がっていて嬉しい限り。相変わらず訳の分からないストーリーなのですが、きっとそこには〝愛〟がテーマとして埋め込まれていたような気がする?!頭髪や眉毛まで剃り落としたクリストフ・ヴァルツの怪演振りもバッチリ嵌まっていてナイス!胸元ざっくりのセクシー・コスチュームで惜しげもなく色気を振りまいていたベインズリーちゃんも超キュートで大変よかったです!うん、相変わらず観る人を選ぶかなりぶっ飛んだ作品でしたけれど、僕は充分楽しめました!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2016-05-07 19:42:51)
162.  リピーテッド 《ネタバレ》 
「私の名はクリスティーン。今夜も私が眠りにつくと今日の記憶は消えてしまう。そう、1日の全てを忘れてしまうの。朝、目覚めると頭の中は若いころの私。そう、この映像をいま観ているだろうあなたのことよ、クリスティーン」――。その日、ベッドの中で目を覚ましたクリスティーンは見知らぬ中年男性の腕に抱かれていた。鏡を見るとすっかり歳を取った自分の顔。男はそんな彼女に「戸惑うのも無理はない。僕は君の夫だ。君は10年前に事故に遭い、眠りに就くとその日の記憶を全て失ってしまう障害を負ってしまったんだ」と告げるのだった。戸惑いつつも、これから会社へと向かうという夫を見送り、過去を知ろうとアルバムを見直していた彼女の携帯に電話が掛かってくる。電話の相手は精神科医、夫に内緒で自分のカウンセリングをしていると言うのだった。その証拠に、クローゼットの靴箱の中に隠してあるカメラの映像を見ろと言う。そこには、昨日眠りに就いて記憶を失う前の自分が、今の自分に向けて残したメッセージが収められていたのだった……。果たして夫を名乗る男は本当に彼女の夫なのか?どうして彼女は眠ると記憶を失う身体となってしまったのか?精神科医を名乗る男は本当に彼女の味方なのか?本作は、記憶が一日しかもたないある女性とその過去をミステリアスに描いたサイコロジカルなサスペンスだ。リドリー・スコットが製作をつとめ、ニコール・キッドマンやコリン・ファースとなかなか豪華な役者陣が共演ということで、期待して今回鑑賞してみた。ところがこれがなんとも残念な出来で、僕は正直がっかりしてしまった。何が駄目かって、まずこの眠ってしまうと記憶がリセットされるという主人公の設定が単なる思い付きの域を出ず、物語に全く活かされていないところだろう。サスペンスを盛り上げるのにこんな素晴らしい設定があるにも関わらず、どうしてここまでのっぺりとした展開になってしまったのか。恐らくそれは、N・キッドマン演じるこの主人公が意外なほどあっさり現実を受け入れ納得してしまうところだろう。切迫感が微塵もなく、一切感情移入できない。サスペンスとして、これは致命的な欠点というほかない。最後に明かされる真相もかなり無理のある――というより殆ど破綻してしまっている点など、もはや目も当てられない。結論を言うと、ほとんど観る価値のない凡作だった。設定自体は面白いものだっただけに残念だ。
[DVD(字幕)] 4点(2016-05-06 22:30:59)
163.  嗤う分身 《ネタバレ》 
「そこは俺の席だ」――。来る日も来る日も同じような毎日を遣り過ごしているうだつの上がらないサラリーマン、サイモン。ある日、いつものようにがらがらの電車に揺られ会社へと向かっていた彼は、見知らぬ男に急にそう告げられるのだった。高圧的な男の言葉に仕方なく席を譲ったサイモン、その後も電車のドアにカバンを挟まれなくしてしまう。会社に着くと上司や同僚、警備員にまでそのことを馬鹿にされ、密かな想いを抱く同僚女性には今日も声を掛けられず、施設に入所する母親の面倒すらままならない。次の日、そんな八方塞がりのサイモンがいつものように出社するとなんと自分と瓜二つの男が採用され、めきめきと働いているを発見するのだった。社交的で誰からも好かれるそんな彼の〝分身〟は、社内でどんどんと出世し、上司からの信頼も厚く、密かに想いを抱いていた同僚女性まで易々と手に入れてしまう。嫉妬と焦燥に駆られてゆく彼の日常は、まるで出口のない迷路に迷い込んでしまったかの如く徐々に歪み始めてゆくのだった……。ロシアの文豪ドストエフスキーの初期の小説を独創的な映像で描いたシュルレアリスム劇。率直な感想を述べさせてもらうと、これはドストエフスキーというよりもどちらかと言うとカフカ的な不条理物語に近い印象ですかね。まさに、意味不明。でも自分、この何処か安部公房をも髣髴させるシュールな世界観はけっこう嫌いじゃない。何をしているのかさっぱり分からない会社組織や、一つも温かみを感じさせない工業的な夜の街並み、主人公を翻弄する怪しげな登場人物たち…。細部にまで拘り抜いたであろう映像や小道具の数々に僕はけっこうセンスを感じました。そんな摩訶不思議な映像を彩る、坂本九の「上を向いて歩こう」などの昭和歌謡の名曲群もこの作品に横溢する不穏な空気を煽るのに一役買ってます。そもそもなんで昭和歌謡やねん(笑)。ジェシー・アイゼンバーグやミア・ワシコウスカという実力派の若手陣もナイスな仕事ぶり。欲を言えば、後半もっと突き抜けてくれても良かったかもとは思うものの、それでも次作が楽しみな才能に出会うことが出来ました。
[DVD(字幕)] 6点(2016-05-06 21:41:45)
164.  オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 《ネタバレ》 
それはたった一度の過ちだった――。イギリス、ロンドン。愛する妻と2人の息子に恵まれ、仕事でもビッグプロジェクトを任されるなど、順風満帆の生活を送っていた建築技師、アイヴァン・ロック。だが、彼はその夜、そんな愛する家族が待つ家へと向かう道を逸れ、高速道路へとハンドルを切るのだった。目的は、一つ。それは7ヶ月前にたった一度だけ関係を持ってしまった女性の突然の出産に立ち会うため。孤独に道を走らせるアイヴァンに、当然家族から何度も電話が掛かってくる。さらに間の悪いことに、明日はヨーロッパで最大規模を誇る高層ビルの大事な基礎工事立会いの日だった。総責任者である彼がいなければ工事は始められない。このまま車を走らせれば、会社は首。だが、アイヴァンは男のけじめをつけるため、たった一人で夜の高速道路をひた走るのだった……。都会の片隅で、たった一度の過ちから人生の危機を迎えてしまったある一人の男のドラマを、高速道路を走らせる彼の車の中のみで描いたヒューマン・ドラマ。映画が始まって86分、登場人物はトム・ハーディ演じるこの一人の男しか出てこず、彼にかかってくる色んな人々との会話のみでドラマを展開してゆくというなかなか挑戦的な作品だった。なのに、最後まで観客の興味をぐいぐい惹き込むこの監督の手腕は大したものだ。彼に電話をかけてくる人々も誰もがちゃんとキャラ立ちし、今何処で何をしているのかが容易に映像として浮かんでくる。トム・ハーディの相当に役作りしているだろう一人芝居も充分に見応えがあった。そして、何より映像が美しい。夜の高速道路、窓のフレームに写り込む色とりどりの幾つもの灯りがとても綺麗で、この孤独な男の心情を色濃く表している。小品ながら、なかなか見応えのあるドラマだった。ただ、お話としてはありきたりなもので少々物足りなさを覚えたのが僕としてはちょっと残念だった。6点と言ったところか。
[DVD(字幕)] 6点(2016-04-15 21:34:46)(良:1票)
165.  イントゥ・ザ・ウッズ 《ネタバレ》 
意地悪な継母と義理の姉たちにいじめられ、森の向こうにあるお城の舞踏会に行きたくても行けない少女の物語――『シンデレラ』。貧乏暮らしから乳の出なくなった牛を売ろうと森を彷徨い歩き、魔法の豆と交換する少年の物語――『ジャックと天空の巨人』。森の中に住むおばあちゃんにパンを届けようとするものの、そこで待っていたおばあちゃんに化けたオオカミに食べられる女の子の物語――『赤ずきん』。母親を騙る魔女によって高い塔の頂上に閉じ込められた、長く美しい金髪を持つ少女の物語――『塔の上のラプンツェル』。誰もが知るそんな四つのおとぎ話に、魔女の呪いを解こうと彼・彼女たちの手にした重要なものを求めて暗い森の中へと足を踏み入れるパン屋夫婦の物語を絡めて描き出すミュージカル作品。ジョニー・デップとメリル・ストリープが夢の競演ということで、『シカゴ』という素晴らしい作品を撮って以降いまいちパッとしない印象のロブ・マーシャル監督の作品だったけれど今回鑑賞してみました。うーん、やっぱりいまいちパッとしない作品に仕上がってましたね、これ。何が駄目かって、そんな五つの物語が同時並行的に描かれるのですが、その中心を貫くようなものが一つもないせいでただごちゃごちゃと取っ散らかっただけの印象しか残らないところでしょう。つまり、観客が感情移入できる登場人物が一人も居ないんですよ。本作において、その役割を担い観客をぐいぐい引き込む狂言回しとなるはずのキャラクターはきっとパン屋夫婦になると思うのですが、いかんせん彼らがその役割を放棄しちゃってるせいでちっともこの世界に入り込めません。異世界を描くファンタジーにとってこれは致命傷と言ってもいいでしょう。個々の物語も肝心の要所要所を端折っているうえに、変なアレンジを施しているせいで矛盾や突っ込みどころも多く、とてもじゃないけど面白いとは言い難かったです。あと、個人的に赤ずきんちゃんを演じた女の子が全く可愛くないくせに物凄く小生意気なところが観ていてとても不愉快でした。肝心のジョニー・デップも早々に退場しちゃうし、良かったところと言えばメリル・ストリープの堂々とした魔女っぷりくらいでしょうか。ロブ・マーシャル監督、やっぱり『シカゴ』は奇跡の一品だったんでしょうね。
[DVD(字幕)] 3点(2016-04-09 15:53:49)(良:1票)
166.  パーフェクト・プラン 《ネタバレ》 
俺たち、ずっと真面目に生きてきてそれで何を手に入れた?答えは、何もだ。この金はそんな俺たちに対する贈り物だ。確かに君の言うとおり、この金はもしかしたら汚いものかも知れない。でも、金は悪くない。問題なのは、人がそれをどう使うかだ――。アメリカで夢破れ、妻とともにロンドンへと帰ってきた造園設計士トム。だが、現実は何処までも厳しく、生活は一向に上向かないばかりか、妻とは不妊のせいでギクシャクし、さらには母が遺してくれた唯一の財産である実家も来週までに金を払わなければ差押えられてしまうことに。そんな折、トムは少しでも生活の足しにしようと間借りさせていた地下室でそこの住人が薬の過剰摂取で死んでいるのを発見する。単なる麻薬中毒者の孤独死、警察はすぐに捜査を終了しさっさと帰ってゆく。ところが、残された部屋を掃除している最中、トムは屋根裏から大金が入ったバッグを見つけてしまうのだった。総額22万ポンド。なんとしてでも生活を立て直したかったトムは、思わず窓枠の隙間にそれを隠してしまう。だが、彼は知らなかった。その金は、麻薬組織の取引現場から強奪された危険な金であることを……。生活に困窮した夫婦がある日発見した危ない大金、それを巡って繰り広げられる麻薬組織や犯罪グループ、汚職警官たちの駆け引きを濃厚に描いたクライム・サスペンス。なんだけど、これがこれまで散々作られてきた同ジャンル作品の見事なまでの焼き直しに過ぎませんでした。もう何処かで見たようなストーリーに何処かで見たような設定、何処かで見たようなキャラクターたちに何処かで見たようなアクション・シーンの雨あられ。別に、これで面白ければ娯楽映画として充分アリなんだけど、本作はびっくりするぐらいお話のテンポが悪く、出てくる登場人物も根暗でウジウジしたちっとも魅力を感じさせない人たちばかりで、もう途中から眠気と戦いながらの鑑賞となってしまいました。それに脚本上の粗も多すぎ!特に悪役。多くの汚職警官に金を払って犯罪を繰り返しているマフィアのボスなのに、主人公のところに部下一人を引き連れてわざわざやって来るってどんなけ警戒心ないねん!しかもど素人の主人公に反撃されて呆気なく怪我させられちゃうって、お間抜けにもほどがある。挙句、何故か最後は主人公の実家に麻薬組織やマフィアのボスがのこのこやってくるのだけど、どちらもやはり部下は一人だけ…、んで何度も強調しますけどど素人の主人公夫婦に電動クギ打ち機や電ノコで呆気なくぼこぼこにされるって…、お間抜けにもほどがあるって!!このチープ感たるやもはや目も当てられない。ま、ぎりぎり暇潰しにはなるかなぁってくらいの凡作でありました。
[DVD(字幕)] 4点(2016-02-28 23:31:56)
167.  ギリシャに消えた嘘 《ネタバレ》 
1962年、ギリシャ。3度目の結婚を果たし、新たな若い妻と新婚旅行でこの地を訪れた初老の証券マン、チェスター。その正体は本国アメリカで詐欺まがいの取引によって多くの被害者を生んだ証券詐欺師だ。ある夜、高級ホテルに泊まっていた彼らの部屋に怪しげな男が訪れる。どんな手を使ってでも金を取り戻したいと言う投資家に雇われたという彼に、チェスターはいきなり拳銃を突きつけられるのだった。だが、チェスターは思わず反撃し彼を殺してしまう。さらに間の悪いことに、数日前に知り合った怪しげな現地の観光ガイドにそれを見られてしまう。「あなたとあなたの奥さんを助けてあげてもいい」。何故かそう訴えるその若い観光ガイドの名はライダル。その日から、証券詐欺師とその若く美しい妻、そして彼女に熱い視線を向ける観光ガイドという3人の危険な逃避行が始まったのだった…。風光明媚な観光地ギリシャを舞台に、嫉妬と愛情、そして犯罪が渦巻く男女の逃避行をミステリアスに描き出すサスペンス・スリラー。ヴィゴ・モーテンセンとキルスティン・ダンストという実力派俳優2人が、そんな刹那的な逃避行を続ける夫婦を艶かしく演じていると言うことで今回鑑賞してみました。夫婦に何故か現地の貧しい若い男が割り込み、アテネからクレタ島へと逃走を続けていくうちに、彼らに何だか三角関係的な葛藤が芽生えていく様を本作はスリリングに描き出していきます。確かにこの最後まで続くねっとりとした緊迫感はなかなかのもの。歴史や文化に彩られた60年代ギリシャの風景もとても美しく、そんな3人のミステリアスな関係を盛り上げるのに一役買ってます。そこらへんは素直に楽しめました。ただ、演出的に爪の甘さが目立つのが本作の弱点ですね。特に、簡単に人が死んでしまうのは如何なものか。冒頭、私立探偵がホテルにたった一人でやって来て主人公ともみ合ううちに浴室に頭を打って呆気なく死んでしまうというのは、さすがに物語の導入としては弱いと言わざるを得ません。他にも、若い観光ガイドが何故か主人公たちの逃避行についてくる理由付けや主人公の妻が辿る運命など、色んなところに粗さが目立ちます。3人の男女の嘘と嫉妬が交錯する怪しげな雰囲気は凄くよかっただけに、そこらへんが残念な作品でありました。6点。
[DVD(字幕)] 6点(2016-02-20 22:38:48)
168.  エクソダス:神と王 《ネタバレ》 
「出エジプト記」――。それはユダヤ教、キリスト教、イスラム教という世界の約半数の人々の精神的支柱であり、さらにはあらゆる文化的生活の基礎となり道徳心や倫理観の規範となるべきものでもあり、時にはその解釈を巡って歴史を揺るがすような諍いを巻き起こし続けた旧約聖書、世界宗教の原点とも言うべきその中でももっとも重要な部分と言っていいだろう。そして恐らく人々が歴史に刻んだ原初にしてもっとも有名な物語だ。本作は、そんな誰もが知るお話をいまやハリウッドの重鎮となったリドリー・スコット監督が、新たな解釈のもとに映像化した重厚な歴史スペクタクル巨編である。特徴的なのは、そんな宗教掛かった原典から出来るだけ神秘性を排除し、あくまで科学的に解釈出来るように神の奇跡を描いていることだろう。特に〝エジプトを襲う十の災い〟と〝追い詰められたヘブライ人のために海が割れる奇跡〟。現代の常識ではあり得ないこの奇跡を、監督は――多少の無理があるとはいえ――あくまで科学的に証明できるものとして描き出してゆく。また、モーゼが縋る神の存在も見えるのは彼自身にのみであり、子供の姿で現れる神はあくまでモーゼの妄想が創り出した想像上の産物かもしれないものとして描写されている。ここでこの老監督の狙いが明らかとなってくる。「神は死んだ」。これはニーチェが唱えた有名な言葉だが、神とはもしかしたら人が生きるために創り出した一つの壮大な物語ではないのか。科学が極限まで発達し、この世に神が居ないということを論理的に証明しつつある現代においてもなお、宗教が現代のあらゆる問題に影を落としている。もしかして、人は生きるために神という物語を必要とする生き物なのかもしれない、たとえそれが間違った物語であったとしても――。本作の優れている点は、宗教という人間の生きるうえでの根源的なものをテーマとしながらも敢えて否定的な視点をも備えているところだろう。そこには、それでも自分は映画という世界で物語をずっと創り続けてきたというスコット監督の矜持が力強く貫かれている。ただ、本作はよくも悪くもR・スコット作品。長い間、人が生きるうえでの倫理的規範であり続けてきた〝十戒〟を根底から否定するわけでもなく、かといって狂信的なまでに肯定するわけでもないそのスタンスは「浅い」と非難されても仕方がない。『グラディエーター』や『ロビンフッド』という、その重厚な世界観には圧倒されはするものの肝心の内容のほうは――あくまで個人的にだが――そこまで深いものが感じられなかった過去の作品に比べればより芸術性は増したものの、彼の代表作の一つとして映画史に残るほどの出来かというと残念ながら“否”と言わざるを得ない。それが僕の本作に対するあくまで冷静な評価だ。
[DVD(字幕)] 7点(2015-12-22 21:35:48)
169.  ファーナス/訣別の朝 《ネタバレ》 
製鉄所で働けだって?馬鹿らしい、はっきり言ってやるよ、兄貴、製鉄所なんてクソだ。確かに俺たちの親父もずっと製鉄所で働いていたよ。でも、そんな製鉄所が親父を殺したんだ。生きるための立派な仕事だって?じゃあ、俺が派遣されたイラクでの戦いも立派な仕事だって言うのか、兄貴。俺はこんなクソみたいなところから一刻も早く抜け出したいんだ――。製鉄所や町工場が建ち並ぶアメリカのとある地方都市。長年にわたりそこの鉄工所で働いてきたラッセルは、愛する彼女と年老いた父親とともにささやかながらも充実した日々を過ごしていた。ところがある日、彼は飲酒運転中に事故を起こし、相手の女性を死なせてしまうのだった。当然のように刑務所暮らしを余儀なくされるラッセル。もちろん仕事も同棲していた彼女も失ってしまった。そんな彼をずっと支えてくれたのは、海兵隊としてイラクへと派遣されていた弟のロドニーだった。数年後、ようやく釈放された彼は弟のロドニーとともに新たな生活を営もうと決意するのだったが、イラクで心に深い傷を負った弟は一攫千金を求めて次第に闇ボクシングの世界へとのめり込んでいく…。貧困の連鎖に喘ぐアメリカの寂れた一地方都市を舞台に、どん底を這いずり回るような困窮した日々を送るそんな2人の兄弟を描いたヒューマン・ドラマ。クリスチャン・ベイルやウディ・ハレルソン、ウィレム・デフォーといった何気に豪華な役者陣競演に惹かれて今回鑑賞してみました。冒頭から薄暗い何処にも晴れ間なんてなさそうな鉄工所の映像から始まり、登場する人物たちも誰も未来なんてなさそうな鬱屈した人間ばかり、酒を飲んでは下品な冗談を交わし、賭け事や麻薬に溺れていく…。そして、ただ幸せになりたかっただけなのに、次第に心を擦れ違っていく兄弟に忍び寄る闇社会の住人たち。と、見れば見るほど気が滅入るような暗いお話なのですが、アメリカの地方都市が抱えるリアルな現実を冷徹に見つめ続けるこの監督の視線は鋭い。実力派の役者陣も静かな熱演でもってそんな監督の要求に応えていて、重厚な人間ドラマとして充分見応えのある作品に仕上がっていたと思います。ただ、脚本のところどころに細かな破綻があるのが惜しい。特に、ウディ・ハレルソン(いかにもいやらしいマフィアのボスを演じた彼の熱演も見事でした)が森の中でどうしてあんな行動にはしったのか、そこにいまいち説得力が感じられなかったのが残念でした。最後にお店に現れる彼ももっと用心棒を引き連れていてしかるべきでしょう。と、細かな部分に爪の甘さが目立つものの、この全編を覆う重厚な雰囲気はなかなかのもの。この監督の次回作も期待して待ちたいと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2015-12-07 13:55:02)(良:1票)
170.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
ドイツ、ハンブルク。2001年、911の実行犯がこの港湾都市で計画を練って以降、それを察知できなかった現地の情報機関は躍起になってテロ対策を加速させていた。そんな国際都市にある日、ロシア当局に拷問を受けた過去があるチェチェン人青年イッサが入国してくる。そのことを察知したテロ対策諜報員バッハマンは、彼が大手銀行員と接触したがっていることを知り、全容を解明しようと彼をしばらく泳がせることを決断する。だが、バッハマンの思惑など意に関せず、国の上部機関、警察、現地のイスラムネットワーク、さらにはアメリカのCIAまでが絡んでき、事態はさらに複雑な様相を呈していくのだった。そんな折、イッサを支援していた女性弁護士の手筈で彼がドイツの街中で失踪してしまう……。名優フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作となったのは、ドイツの国際都市を舞台にテロ対策の最前線をリアルに描いたスパイ・サスペンスでした。スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの原作を映画化しただけあって、この全編に漲る息を呑むような緊迫感はなかなか凄かった。派手なアクションやスキャンダラスな設定で観客を煽るのではなく、あくまでもリアルで地味なストーリーなのに最後まで見せきる本作のスタッフたちの手腕は大したもの。そんな無差別テロという悪魔の所業を阻止するために誰も知らないところで彼らのような人が日夜、神経を磨り減らすような情報戦を繰り広げているのかと思うと本当に頭が下がる思いです。特に、何処にでも居るサラリーマンのようないでたちでありながら、それでも時折その隠し切れない狂気性を垣間見せるF・S・ホフマンの熱演は見事でした。権謀術数渦巻くテロ対策という問題の難しさに翻弄され、自分の無力さを思い知らされた彼の魂の咆哮とでも言うべき最後の雄叫びは胸の奥深くに突き刺さってくるようでした。つくづく惜しい人を失くしたと残念でなりません。奇しくも昨日(2015/11/14)、フランスのパリでイスラム国と見られる組織によって大規模なテロが発生してしまいました。あらためて、本作のラストに漂う無力感に胸が引き裂かれる思いです。本作の主人公バッハマンのような人たちがそれでもテロという悪魔の所業に決して負けず闘い続けてほしいと、今回のテロで亡くなった人々のためにそう願わずにはいられません。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-15 22:00:09)
171.  サード・パーソン 《ネタバレ》 
パリ、ニューヨーク、ローマ。時代の先端をゆくそんな人種の坩堝のような3つの国際都市には、今日も様々な事情を抱えた男女が集い出会いと別れを繰り返してゆく。ある男女には新たな愛が芽生え、またある男女は疑念と嫉妬によって心をぼろぼろにされ、そしてまたある男女は辛い別れを経験してゆく……。本作は、そんな3つの国際都市を自在に行き交いながら、そこに生きる様々な男女の出会いと別れを静謐な雰囲気の中に描き出してゆく群像劇。自分の不注意から最愛の子供を失ってしまった作家は若い女性との不倫に溺れ、ストレスから自らの子供を虐待してしまった母親は引き離された息子との面会を果たすため必死になって生活を立て直そうとし、街のカフェで移民の女性と偶然知り合った男は彼女の奪われた子供を取り戻そうと金策に駆けずり回る。一見無関係に見えるそんな3つのストーリーが、物語の進行とともにまるで縺れた糸のように絡み合い複雑に交錯していく――。同じく群像劇の秀作『クラッシュ』でアカデミー賞の栄誉に輝くポール・ハギス監督の最新作は、そんないかにも彼らしいミステリアスで魅惑的なヒューマン・ドラマだった。登場人物の数も多く、各々のストーリーもかなり複雑なのに、この監督の演出力は相変わらず冴えわたっている。極めて分かりやすいストーリーテリング、それぞれに個性豊かな登場人物たち、詩的で美しく時には官能的ですらある映像、そして観る者を深い迷宮へと誘うように魅惑する壮麗な音楽……。挙げていけばきりがないほど、画面の端々にまで才気が漲っている。親子間であれ男女であれ深く愛するがゆえに憎み傷つき、それでも愛されることを求めてもがき苦しみながらも必死になって生きていこうとする主人公たちに最後まで釘付けだった。特に、ミラ・クニス演じる若いシングル・マザーが直面する苦悩には深く胸打たれた(ホテルの一室で他人の幸せの象徴である白い百合の花を無茶苦茶にするシーンは、最近観た中では息を呑むほど印象的で美しいものだった)。ただ、ほとんど謎を残したままで終わる本作のラストはやはり賛否の分かれるところだろう。こういうメタ・フィクション構造は夢オチと同じでよほど丁寧に扱わないと何でもアリとなってしまうので、多くの場合観客を興醒めさせてしまうもの。本作もその例に漏れず、やっぱりそんな〝興醒め〟感から逃れられていない。こんな奇を衒った構造などせず、直球の群像劇として終わらせていれば『クラッシュ』を超える傑作になりえたかも知れないと思うと、つくづく惜しいと言わざるを得ない。とはいえ、静謐な空気に満ちた上質のヒューマンドラマとして最後まで惹き込まれたことは確か。充分鑑賞に耐えうる良質の作品と言っていいだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-08 19:05:13)
172.  アンダー・ザ・スキン 種の捕食 《ネタバレ》 
イギリス、スコットランド。大きな車を乗りこなし、夜な夜な夜の街を徘徊する“女”は道行く男どもに声を掛け、独り者で急に居なくなってもしばらく誰にも気にされないだろう男を探し求めるのだった。彼女の色香に惑わされて家まで着いてきた男は、皆一様にまるで暗い底なし沼に引き摺りこまれるように彼女に捕食されてゆく。そう、彼女は何処とも知れぬ世界からやって来た捕食者なのだ。次々とその皮の内側にある中身を引き摺り出されていく、捕らえられた男たち。ところが、生まれつき顔の皮膚に障害を持つ醜い青年に出会ったことによって、彼女の冷酷な心にとある変化が起きていくのだった…。当代きっての人気女優スカーレット・ヨハンソンがオールヌードも辞さない姿勢でもって挑んだのは、そんな最後まで淡々と描かれるアート系作品でありました。うん、観終わってすぐの率直な感想を言わせてください。死ぬほどつまんなかったです、これ。この監督の「とにかく意味ありげで思わせ振りな映像を撮って、そこに神秘的な音楽を流しとけば、それだけでゲージツっぽい感じになるんでしょ」と言わんばかりの、観客を舐め切った余りにも独り善がりな唯我独尊的態度に僕は正直腹立ちが止まりませんでした。もうひたすら退屈!!場面が切り替わる度に、ただでさえ弱い因果律がそこでブツリと寸断されるので観ていて凄くイライラさせられます。キューブリックの正当な後継者かもしれないなんて誇大広告もいいところ!!たとえば、キューブリックの『2001年宇宙の旅』という同じような前衛的作品なんて、いくら難解で哲学的な映像が延々と繰り広げられようともそこにはしっかりとした因果律や観客に伝えたい明確なテーマが強固としてあるからこそ傑作たりえているのです。対してこの作品が観客に伝えたかったテーマってなんなのでしょう?「人間はその皮の下に色々なものを隠し持っているので、人を外見だけで判断するのは止めましょう」ってくらいのモンっしょ。薄っぺらいにも程がある!!ホント、ただただ退屈で無意味な2時間弱を過ごしてしまいました。
[DVD(字幕)] 1点(2015-09-09 01:30:17)
173.  ニンフォマニアック Vol.2 《ネタバレ》 
「何も感じない…。私、何も感じなくなってしまったの。信じて…、いくらセックスしても、私、もう何も感じない」――。そんな衝撃の言葉を残して静かに幕を下ろしたVol.1から続く、生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”ジョーの性遍歴の物語もいよいよ後半戦。愛を信じず、セックスで得られる快感だけが生きる支えだった彼女に突如として降りかかる不感症という名の災厄(笑)。Vol.2では、冒頭からそんなセックスの快感を再び取り戻そうとするジョーの苦難に満ちた紆余曲折が描かれていきます。言葉の通じないアフリカ人に抱かれたらどうだろうと安ホテルの一室に身を投じてみたものの、やって来た2人の黒人は訳が分からない議論に明け暮れてことに及ばず(黒人男性2人の勃起したペニスに挟まれて佇むジョーの姿はなかなかシュール!笑)、最終的に辿り着いたのはアパートの一室にある秘密SMクラブでした。ちなみにこの間、ジョーは自分の処女を奪った男性と再会して一緒になってちゃっかり男の子を出産してます。でも、そんな最愛の息子が居るにも関わらず、ジョーは超ドSな男に鞭で調教されゆくうちに久し振りに性的快感を取り戻しいつの間にか濡れていた自分を発見するのでした。子供の世話なんかそっちのけでSMクラブ通いを止められなくなるジョー。ここらあたりから、それまでジョーを演じていた若い女優から一転、くたびれた身体のシャルロット・ゲンズブールというおばさん女優へとバトンタッチされるので、もはや目の保養すらなくなってただひたすらイタい展開となっていきます。このセックス大好きおばさんジョーという本作の主人公ほど反発も共感も感じさせない、見事なまでの性的ピエロを僕は初めて見たような気がします。もう完全に喋るダッチ・ワイフ(笑)。ところが、彼女の長い話をずっと聞き続けていた〝男〟が実はこれまで性経験が一切ない汚れなき童貞であることが判明します。そんな奔放な彼女と対極をなす〝汚れなき男〟が、最後に語りだす男と女のセクシュアリティの違い、そしてその違いから端を発する性差別の歴史…。最後に暗闇から聞こえてくる銃声は、結局この社会を形作る倫理観の壁は男どもにとって都合の良いように築き上げられたもので、そんな道徳的な顔をしながら裏側では「女は男の性欲を満足させるための穴でしかない(でも、子供を産み育ててくれる)」と無意識のうちに思い込んでいる男どもへの、女性たちの復讐なのでしょう。トリアー監督って、女性の心からの味方でありながら、それでも自らにもある女性たちへの醜いまでの性欲を自覚している、絶対に友達にはなりたくないタイプの超面倒臭いペシミストなんだろうね。でも、そんな彼が僕は大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2015-08-10 01:47:27)
174.  ニンフォマニアック Vol.1 《ネタバレ》 
「聞いてくれる?十代のころ、私は仲間たちとある会を作ったの」「どんな会だ?」「ファックと好色でいる権利の会よ。みんなで一緒にオナニーとかするの…。恋人は持たない。同じ男とは2度とヤらない。私たちは反抗的だった」「そうか…。で、そんな君たちは何に反抗してた?」「愛よ」「愛?」「そう、愛。愛なんてくだらないものに取り憑かれたこの世の中と闘っていたの」――。雪が舞い、冷風吹き荒ぶ寒い冬のとある夜。〝男〟は、道端に痣だらけになって捨てられたある〝女〟を発見するのだった。救急車も警察も要らない、ただ温かい紅茶が飲みたいと願う彼女を〝男〟は躊躇うことなく家へと連れて帰ってくる。〝女〟の名前はジョー。自らを生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”だと言う。雪が降り積もる音まで聞こえてきそうな静かな部屋の中で、ジョーは〝男〟にこれまでの性にまみれた自分の人生を赤裸々に語り始めるのだった…。人間の愚かさや社会の不条理をその冷徹なまでの視線で持って見つめ続けてきた鬱映画の巨匠ラース・フォン・トリアー監督の最新作は、そんな人間の性の醜さをシニカルに描いた意欲作でした。いやー、相変わらずこの人は人間、及び人間の生きる源泉であるはずのリビドー(性衝動、性欲)が嫌いなんでしょうね。なんだか中二病をこじらせた挙句にオナ禁している日本の若い男と精神構造的に似ているような気が…(笑)。でも、本作はそんな自分の言ってしまえばしょーもない悩みをまるで自己戯画化するような視線があって素直に面白かったです。きっと、そんなニンフォマニアであるジョーの話に、倫理観を一切持たずに耳を傾ける聞き手の男は、トリアー自身の投影なのでしょうね。観終わって、僕は遥か昔に読んだ18世紀フランスの自然主義文学の大家モーパッサンの代表作『女の一生』の中に出てくる神父のことを思い出してしまいました。その神父は、とても厳格で保守的でセックスこそが諸悪の根源であると妄信していて、道を歩いていた妊娠中の普通の雌犬を「この淫乱め!」と蹴り上げてしまうのです!馬鹿ですよね。セックスは人間が生きる上での重要な営みであるけれど、だからといって誰彼構わず何処ででもセックスするのは許されない。だから人は、その中間に倫理観という線を引くのだけど、この線引きの位置がいつの世も曖昧なものだから人間は何処までも愚かで社会から不幸な現実はなくならない…。そんな曖昧な線引き(もしかしてその位置を愛と呼ぶのか?笑)なんか完全に無視しちゃっているジョーのセックス遍歴の旅路は観ていて爽快ですらありました。そんなセックス大好きっ子だったジョーが最後に呟く衝撃の発言…(笑)。Vol.2も期待して観てみようと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2015-08-08 01:56:51)
175.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 
最愛の娘を病気で亡くし、以来酒浸りのアル中となってしまった航空保安官ビル。その日も、コーヒーに混ぜたウィスキーを呷り、彼は担当するロンドン行きの旅客機へと乗り込むことに。乗員乗客150名と供に今日も平穏なフライトになる予定だった。ビルの携帯端末にそのメールが届くまでは――。「20分以内にこの口座に1億5千万ドルを振り込め。入金が確認できなければ乗客のうちの誰かを殺す」。まるで自分のことを近くから観察しているかのような犯人の脅迫文に、ビルの緊張感は一気に高まるのだった。コカインの密輸に手を染めていた同僚、アラブ系の医師、何故か自分の隣に座りたがった女性、正義感の強いNY市警、急遽乗り合わせることになったCA…。乗客乗員誰もが容疑者となる中、とうとう最初の犠牲者が発生するのだった。決死の覚悟で犯人探しに奔走するビルだったが、入金先の口座が自分名義であることが分かり、疑いの目は自分にまで向けられてしまう……。果たして犯人は誰なのか?ビルは無事にこの150名を乗せた旅客機を地上へと着陸させることが出来るのか?最近、すっかりアクション俳優としての顔が定着してしまったリーアム・ニーソンの新たな主演作は、そんな密閉された空間で序盤からノンストップで展開されるフライト・アクションでした。一言で言ってしまえばワン・シュチュエーションのベタなスリラーなんですが、そこはこれまでエンタメ映画の良品を幾つかものしてきたセラ監督(これはちょっと…ってのも中にはあったけどね笑)、ツボを押さえた演出と練られた脚本、そしてリーアム・ニーソンを初めとする何気に豪華な役者陣競演で最後まで一気に見せる娯楽映画としてなかなか面白かったです。特に、見れば見るほど誰も(主人公含む)が怪しく見えてしまうこのミスリードの巧みさはなかなかのもの。携帯のメール文を画面に映し込む演出もなかなか冴えてました(壊れてしまった画面をそのまま映すとかナイス!)。そして、クライマックスで一気に爆発する畳み掛けるようなアクションシーンにもテンション上がりまくり!まあ、観終わって冷静に思いなおしてみたらけっこう「?」な部分もあったし、強く印象に残るようなシーンなりエピソードなりが乏しいせいで1週間後にはすっかり忘れてしまいそうな内容ではあったけど、ぼちぼち面白かった!6点!!
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-07 15:12:30)
176.  グランド・ブダペスト・ホテル 《ネタバレ》 
1968年、ヨーロッパの東端にある小国旧ズブロフカ共和国。閑散としたかつての豪華ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」に泊まっていたとある作家は、そこでこのホテルのオーナーで大金持ちの老人ゼロと出会う。いかにも変わり者と言った彼に小説の題材を探していた作家は、いたく興味を惹かれ、思わず夕食の誘いに乗ってしまうのだった。そこでゼロが語り始めた物語は、彼の師でありホテルのコンシェルジュでもあったムッシュ・グスタヴと共に経験したとある殺人事件を巡る波乱万丈の冒険活劇だった…。豪華俳優陣を存分に使い、昔から独特の作風で知られるウェス・アンダーソン監督が新たに製作したのは、そんな奇想天外なスラップスティック・コメディでした。正直に言わせてください、僕はこのウェス・アンダーソン監督のセンスとはやっぱり合わないみたいです。確かに、この作品の全編に横溢する唯一無二の独特の世界観や、まるで絵画のように美しい色彩感覚や、上質なウェットとユーモアに富んだストーリー等々、その実力は充分に認めるところなのだけど、それでもこの監督の「どうだい?俺ってセンスあるだろう。まぁ分からない奴には一生分からないだろうけどね。ははは」と言わんばかりのまるで自分のセンスを上からひけらかすような唯我独尊的態度(え、卑屈すぎ?笑)が、僕は昔から妙に鼻について正直あまり好きではないんですよね~。ティム・バートンやジャン・ピエール・ジュネのように、もっとアクの強い一片の毒のようなものがそこに含まれていれば良いのだけど、この意図された極度なまでの軽薄さはやっぱり僕には物足りないっす。って、「じゃあ、観なきゃいいじゃん!!」と突っ込まれるとイタイところなのだけど、この人の作品て毎回キャストが豪華だからやっぱり手が伸びてしまうんですよ、悔しいけどさ。こうなると、なんだか文句を言うために映画を観てるみたいで、「これじゃ、テレビ局にクレームの電話したいがためにテレビ見ているクレーマーおばさんと大して変わらないじゃん…(泣)」と自己嫌悪に陥りそうなのだけど、それでも自分の心を鬼(クレーマーおばさん?笑)にして評価させてください。5点!!
[DVD(字幕)] 5点(2015-08-05 21:59:28)(良:1票)
177.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
ノーマン、何処に居る?こっちへ来い。分かるか、こいつはさっき捕まえたドイツ兵だ。ドイツ野郎を殺せないような役立たずはいらない。こいつの背中に風穴を開けろ。間違っていようと関係ない。お前は何をしにここに来たんだ?俺たちの任務はナチスを殺すことだ!ノーマン、お前はこいつを殺すためにここにいる。そして、こいつはお前を殺すためにここに来た。こいつを殺すか、お前が死ぬかだ――。1945年、4月。連合軍に追い詰められ、降伏寸前のナチスドイツは、最後の総力戦を戦うために女子供を問わず戦場へと駆り立てていた。兵役についたばかりのノーマン二等兵は、そんなドイツ軍との熾烈な戦いの最前線へと送り込まれるのだった。それまで事務仕事ばかりで実戦経験のほとんどないノーマンだったが、歴戦のベテランであるドン・コリアー軍曹の愛機“フューリー号”の副操縦士として配属される。鋼鉄と油にまみれたそんな狭い戦車に揺られながら、ノーマンは戦場の汚い現実を目の当たりにしていく。自分が信じる神と良心に縋ることによって何とか理性を保とうとするノーマンに、そんなものなど当の昔に捨ててしまったドンは、ドイツ兵は誰であろうとたとえ女子供であろうと躊躇なく殺せるマシーンになれという教育を施していくのだった…。第2次大戦末期のドイツを舞台に、戦車部隊の工員として過酷な戦場を生きたそんな男たちのドラマを生々しく描き出す軍事アクション。とにかく、この徹底的にリアルさに拘った重厚な戦場描写は凄まじいものがあります。ナチスドイツの狂気性はもちろんのこと、歴史的には英雄として認識されることが多い連合軍にもきっと蔓延していたであろうモラリティの欠落も、ちゃんと目を逸らさず描き出した本作のこの冷徹な姿勢は賞賛に値すると思います。そんな汗と泥の臭いにまみれた男臭い物語なのですが、中盤に登場する一人の可憐な女性を巡るエピソードは強い印象を残してくれました。もし、自分の童貞を捧げた美しい女性が、その次の瞬間に死んでしまうなんて経験をしてしまったら、そりゃ人間性なんてどっかに吹っ飛んじゃいますって。今では粗野な振る舞いを繰り返す先輩たちも、きっと入隊したての頃は彼のような葛藤があっただろうにと思うと見ていて辛いものがあります。ただ…、終始そんな冷徹な視線でもって戦争のやり切れなさを見つめていた本作なのですが、後半における無謀なヒロイシズムへと安易に流れてしまった展開はやはり大きなマイナスポイントでしょう。「俺の最大の任務は、仲間を生きて帰らせることだ」と言っていたドン軍曹の信念がここで揺らいでしまったのが残念でした。とはいえ、最後までヒリつくような緊張感を途切れさずに見せきる戦争ドラマとしてなかなか良く出来ていたと思います。7点。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-04 01:38:22)(良:1票)
178.  アクト・オブ・キリング 《ネタバレ》 
1965年、インドネシア。軍部によるクーデターが発生し、軍事独裁政権が誕生した。政府に逆らう者は共産主義者として告発され、西側諸国の支援のもと、100万人を超す“共産主義者”が1年足らずの間に殺された。虐殺や拷問の主な実行者は〝プレマン〟と呼ばれる、ほとんどヤクザと変わらない民兵集団だった。当時、彼らは権力者として敵対するものを容赦なく迫害。驚くべきことに、彼らは今も罪に問われることもなく国民的英雄として幸せに暮らしているのだった。今回、取材に応じたそんな殺人者たちは、かつて自らが犯した残虐行為を誇らしげに語り始める。どうして彼らはそんな鬼畜にも劣る行為を嬉々として実行できたのか――。その理由を知るため、本作のスタッフたちは、彼らに当時の拷問や虐殺を自由に再現し撮影して1本の映画として完成させるよう依頼する。本作は、その過程を追い、そんな殺人者たちの形成過程を記録したドキュメンタリーである。主な出演者は、当時プレマンと呼ばれ残虐の限りを尽くしたものの、今では地元の権力者として住民から英雄視されている初老の男たち。つまり当事者自らが当時のことを再現してみせるのだ。例えるなら、本物のナチスが多くのユダヤ人をガス室に送った工程を自ら演じてみせるようなもの。こういう今まであり得なかった手法で撮られた本作は、もうそれだけで観る者の知的好奇心を否応なく刺激してくる。映画を撮るために、久々に集った当時の仲間たちが、まるで学校の同窓会のように抱擁を交わし、そして当時の虐殺の様子を楽しそうに語り始める姿は観客の倫理観に挑戦状を叩きつけてくるようだ。「俺たちは当時正しいと信じられていたことをやっただけだ。それを言うなら、アメリカだってイラクで同じようなことをした。戦争犯罪は勝者が規定するものさ。殺人を責めるなら〝カインとアベル〟からやれ。俺たちは勝者だ、自分の解釈に従う」と主張する彼らに、真に有効な反論をいったい誰が有しているだろう。人間の倫理観の規範となるべき根拠の脆弱性を鋭く問う本作のテーマは、なかなか深いものがある。ただ、後半における「そんな彼らも当時のことを再現する過程で罪悪感に目覚めていった。きっと人間の本質にあるのはやはり〝善〟だ」という既存の道徳観に(無難に)収めていく展開は、残念ながら監督の“逃げ”と捉えられても仕方ないだろう。日本が世界に誇るカルト・ドキュメンタリーの怪作『ゆきゆきて神軍』における奥崎謙三が放っていた真の狂気性には到底及ばない。監督には彼らの心にいまだ眠っているだろう真の闇に、徹底的に肉薄して欲しかった。そうしたら、歴史に残る傑作になり得ただろうに。惜しい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-28 16:02:14)
179.  わたしは生きていける 《ネタバレ》 
「緊急ニュース速報です。ただいまロンドンで核爆弾が爆発した模様です。繰り返します、ロンドンで核爆発、首都近郊はいまや炎に包まれ、数万人規模の死者が出ているようです。確認できただけで15の組織が犯行声明を出していますが、真偽のほどは分かりません。現在、ヨーロッパ各地に死の灰が降り注いでおり、政府は戒厳令を発令しました。繰り返します、世界はいまや第3次世界大戦の瀬戸際に立たされています」――。ハードロックをこよなく愛する反抗期真っ只中の16歳の少女デイジーは、ひと夏を都会の喧騒から逃れて過ごすため、イギリス郊外の叔母の家へとやって来る。のどかな田園風景が拡がるそんな田舎町で彼女を迎えてくれたのは、自由気儘に暮らす従兄弟たち兄妹だった。最初こそ、情緒不安定な性格のせいで反発を覚えたデイジーだったが、次第に彼らの純朴な人柄に心を許してゆく。やがて、長男のエディに仄かな恋心を抱くまでになるのだった。だがある日、緑に囲まれた丘の上でのどかなピクニックを楽しんでいたデイジーたちは、遠くの空に一筋の閃光を見るのだった。直後に降り注ぐ謎の白い灰。急いで家に帰ったデイジーたちは、テレビのニュースで第3次世界大戦が勃発したことを知る……。これまで社会派ドラマの良品を幾つもものしてきたK・マクドナルド監督が数々の権威ある賞に輝くベストセラーを映画化したという本作、正直に言って、明らかな瑕疵の目立つ作品でありました。前半での青春ドラマパートにおける主人公デイジーとエディの恋があまりにも唐突過ぎて説得力に欠けるうえに、彼の動物と話せるらしい特殊能力もデイジーを終始苦しめる頭の中の声も一向にドラマに絡んできません。挙句、最後の取ってつけたような展開にいたってはもう目も当てられない。なのですが、本作にはそれを補って余りある魅力が随処に感じられて、僕は素直に観て良かったと思えました。たとえば、デイジーが大量の打ち捨てられた死体の山で従兄弟のことを捜すシーン、こんなにも悲哀に満ちたシーンを僕は久し振りに見たような気がします。あるいは、従兄弟の女の子を捕まえようとした男たちにデイジーが躊躇なく引き金を引くシーン、彼女の深い怒りに胸が張り裂けそうになりました。本作の優れた点は、戦争という巨大な災厄をあくまで一人の無力な少女の目線から捉えたところでしょう。この世界はロクでもない暴力に満ち溢れていて常に犠牲になるのは女や子供といった弱い者たち…、それでも人を想う気持ちさえあれば“わたしは生きていける”。そんなシンプルだけど、力強いメッセージにどうやら僕は心打たれようです。それだけにこの脚本上の欠点がつくづく惜しい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-26 20:56:50)
180.  ザ・マシーン(2013) 《ネタバレ》 
近未来。世界の軍拡競争の中心は、人工知能を搭載した人型ロボット兵器の開発に移行したのだった――。政府によって秘密裏に設立された地下の研究施設で、最新鋭ロボット兵器として開発された女性型アンドロイド、エヴァ。不幸な事故によって命を落とした女性科学者の記憶をアップデートされた彼女は、人間としての自分と兵器としての自分というアイデンティティの狭間で苦悩していた。あくまで人間として接してくれる優しい開発者の博士と、すぐにでも兵器として戦線へと送り出したい政府との思惑に、彼女のそんな思いは翻弄されていく。やがて、限界を迎えた彼女のストレスは、地下研究施設内で暴走を開始してゆくのだった……。美しい女性の姿をした人型ロボット“ザ・マシーン”の苦悩と暴走を抑えた演出で描き出す近未来SF作品。『ブレードランナー』にもっとも近付いた映画という宣伝文句に惹かれ今回鑑賞してみたのだけど、いやー、これの何処が『ブレードランナー』やねん!『ブレードランナー』の足元にも及ばんどころか、天と地にも格差が開きまくりの、例えるなら「最新鋭のスパコンと昔懐かしのゲームウォッチ」くらい差のある、質の悪~~い映画でした。とにかく物語が始まってから最後まで、登場人物誰一人としてキャラが立っていないのが致命的。マシーンを開発する博士ものちにアンドロイドとなる若い女性科学者も政府の役人もいったい何がしたいのか最後までいまいちよく分かんないから、物語が一向に盛り上がらない。ストーリーもずっと地下の狭い研究施設内だけでちまちま進行していくし、変なアンドロイドみたいなあの喋れない兵士もいったい何なのかよく分かんないし、最後の取ってつけたようなハッピーエンドも「はぁ、なんやねん!それ!」と腹立つし、唯一期待できた全裸の女性型ロボットが暴れまくるというエロ…、おっとセクシーシーンもCGでぼやかしてお茶を濁すしで、僕は最後まで観るのが苦痛で苦痛で仕方なかったです。こーゆーつまんない作品を観ると、監督や脚本家を初めとする製作陣は今まで面白い映画を観て来なかったんじゃないのって疑いたくなります。……て、ちょっと言い過ぎ?(笑)でも、それっっっくらい、つまんなかったです。
[DVD(字幕)] 2点(2015-07-23 15:23:21)
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