1. ガール・ピクチャー
ネタバレ 子供の頃から続けてきたフィギアスケートの大会を間近に控え、 寝る間も惜しんで練習に打ち込む高校生エマ。良い結果が出せずプレッシャーに押しつぶされそうになっていた彼女はある日、気分転換にと訪れた友達のホームパーティーで〝その人〟に出逢ってしまうのだった。魅惑的な目で自分を見つめてくる彼女の名は、ミンミ。一瞬で恋に落ちたエマはそのまま2人でパーティーを抜け出し、一週間後には世界で一番幸せな恋人同士となっていた。重圧も忘れ次第に心が癒されてゆくエマ。だが、練習ではますます失敗が増えてゆくのだった。一方、恋人のミンミもまた誰も知らない家族の問題を抱えていて――。そんな2人を暖かく見守る、ミンミの親友ロンコ。恋愛やセックスに興味津々の彼女は、とにかく運命の出会いを求めて様々なパーティーに出かけてゆくのだが、空気の読めない自分の言動のせいでいつも失敗してばかり。果たして3人の恋と青春の行方は?そんなシンプルなストーリーに全編を彩るノリのいい音楽、そして色彩感覚豊かな映像と、一言で言うならこれまで幾度となく作られてきたセンス系リリカル映画の王道。さすがにベタすぎて新味なさすぎじゃないとも思ったけど、主要登場人物であるこの3人の女の子たちがなんとも魅力的で大変グッド!初めて付き合った恋人といつも一緒にいたい、私の人生の全て!なんて思ってしまう彼女たちの初々しさは、普遍的であるがゆえにやっぱり切ない。その後、あんなに永遠だと信じていた2人も次第に擦れ違ってゆく。ここら辺の心理描写もかなり繊細で、この哀しみはどんな性自認を持った人でも関係ないというメッセージにもいたく共感。とは言え、やはりシンプル過ぎてこれまでさんざん作られてきた百合萌え映画と何が違うねんと言われると弱いところ。でも、本作の新しいところはそんな2人の親友であるロンコの存在にある。恋愛にもセックスにも物凄く興味があるのに、頭でっかちになり過ぎていつも失敗してしまう彼女。そんな彼女の前に運命の出会いかも知れない男の子が現れる。でも、結局上手くいかなくて、最後、彼女は自分がアセクシャルかもしれないことに気づく。正直、エマとミンミの2人だけの物語として完結していたら、自分もよくある百合映画として特に印象に残らなかったかも知れない。でも、そんな彼女の存在が物語に違う深みを与えている。ピンクを多用したフルーツパーラーでちょこんと座る2人の女の子や夜の公園でダンスを踊る少女たちというキュートな画も良いセンスしている。この監督の感性の豊かさには要注目ですね。最後、それぞれの道を歩みだした3人が笑顔で語らうパーティーのシーンも心地良い余韻を残してくれます。うん、良質のガールズピクチャーでありました。このそのまんまの超ダサい邦題以外は! [DVD(字幕)] 8点(2025-03-06 11:01:21) |
2. イノセンツ
ネタバレ とある地方都市に建てられた集合住宅を舞台に、そこに住む不思議な力を持った4人の子供たちのバトルを濃厚に描いたサイキック・スリラー。日本のSF漫画界のレジェンド、大友克洋の名作『童夢』からインスパイアされたということで今回鑑賞。てか、インスパイアどころかこれてまんま『童夢』じゃないですか。さすがにここまでおんなじだと原作なり原案なりでクレジット入れとかんとダメでしょー。自分は、『AKIRA』が全盛期だったころにその流れで『童夢』も読んだんですが、その緻密な画の力に圧倒されてかなり衝撃的で今でも思い出深い一作。観ながら、「あぁ、こんなんやったわ、懐かしい~」とはなったものの、残念ながら作品としての完成度は雲泥の差でした。とにかくテンポが悪いし、魅力的な登場人物もいないし、画も小汚いし、最後までダラダラダラダラ……。これで人間ドラマがしっかりしていれば良かったんですが、そちらもさして深みもないし、猫殺したり親が子供を刺し殺したりとただ胸糞悪いだけのシーンが延々続くし……。身も蓋もない言い方をすると、つまんない映画でした。取り敢えず、久々に『童夢』を読みたくなりました。 [DVD(字幕)] 4点(2025-01-29 09:44:12) |
3. コンパートメントNo.6
ネタバレ 1990年代のロシア。フィンランドからの留学生である中年女性ラウラは、世界最北端の駅ムルマンスクへの旅行を計画する。目的は、その地にある有名なペトログリフを見に行くこと。それは1万年前、この地に暮らしていた人類が岩肌に描いたという壁画だった。考古学者であるラウラはそんな人類最古と言ってもいい貴重な壁画を見ることが長年の夢だったのだ。ところが出発直前になって、一緒に行く予定だった同性の恋人からキャンセルを告げられる。それでも見に行きたい――。ラウラは一人、寝台列車に乗り込こむとそんな世界最北端の駅を目指して数日間の旅に出るのだった。だが、予約した寝台列車6号室で同室となったのは、粗野で下品な言動を繰り返し、夜になると常に強いウォッカを煽るような炭鉱労働者リョーハだった。最悪だと思いながらも長年の夢を叶えるために彼とともに出発するラウラ。当初こそ衝突を繰り返していた彼女だったが、旅を進めるうちに次第に彼の隠れた優しさに気づいてゆき……。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、この淡々とした物語展開といまいち魅力を感じない主人公2人に特に感情移入することもなく、最初はけっこう退屈でした。でも、中盤辺りから次第にこの不器用な2人の隠された魅力に気づいて、途中からはけっこう微笑ましく観ることが出来ました。普通、こーゆー一期一会の出会いを描いたロードムービーって、どちらかが魅力的な若い人だったりあるいはのっぴきならない過去を引き摺っていたりするものだけど、この2人にそんなものはありません。普通に何処にでもいるような、くたびれた冴えないおっさんとおばさん。この2人の等身大にも程があるほどの等身大の魅力が良いですね~~。倦怠期を迎えている恋人と別れが近いことを自覚しながら何度も電話する主人公や、そんな彼女を最初はバカにしながらも他の男と仲良くしているとこを見てやきもち焼いて機嫌悪くなっちゃう男とか、ホント面倒臭い(笑)。でも、そんな近所の飲み屋でよく見かけるような男女のやり取りが妙に心地良いんですよね~。終盤、今は閉鎖されているペトログリフに向かうシーンは、こいつらアホやと思いつつも普通に応援している自分がいました。んで、最後に主人公が男から受け取る似顔絵と裏側のメッセージ。前半のエピソードを見事に回収してて、こんなにバッチリ決まっているオチは久しぶりかも。ただ、前半がかなり退屈だったのと全体的に画がいまいちキレイじゃなかったのが自分としてはそこまでって感じだったかな。ま、そこまで心に残るものはないけど愛すべき小品であったと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2024-09-11 12:32:20) |
4. ハッチング―孵化―
ネタバレ 彼女の名は、ティンヤ。北欧フィンランドで裕福な家庭に暮らす何処にでもいるような12歳の女の子だ。ネットで幸せな毎日を全世界に発信することを趣味とするお母さんと、そんな母親に若干疲れ気味のお父さん、生意気盛りの弟と普通に生活している。そんな彼女が今、最も取り組んでいるのは、新体操。近々開催される全国大会に向け日夜練習に励んでいた。母親もまるで我が事のように応援してくれている。だが、なかなか思うような結果が残せない。そんなある日、ティンヤは夜の森で小さな鳥の卵を拾うのだった。瀕死の重傷を負った母鳥は近くで死にかけている。このままではこの卵もここで朽ち果ててしまうだろう。ティンヤは思わずその卵を持ち帰り、部屋のベッドで温め始めるのだった。すると不思議なことに2日3日と経つうちに卵は徐々に大きくなってゆく。まるで妊婦のお腹のように大きくなった卵は、とうとう〝その時〟を迎えてしまう――。思春期を迎えたばかりの少女が孵化させた、そんな恐るべき存在の恐怖を描いたモダンホラー。この全編に漂う、なんともいや~~~な感じが最高に良いですねぇ、これ。冒頭、自分たち家族がいかに幸せで愛と希望に満ち溢れているかを動画にしてネットにアップしまくる母親のウザい感じが最高にグッド。母親のそんな圧から逃れるかのように、少女が密かに温め始めた卵とやがて産まれてくる〝娘〟。こいつが焼き鳥屋さんに並んでそうな部位ばかりで出来た焼き鳥少女で超絶気持ち悪い!餌を柔らかくするために主人公が自らいちいち呑み込んで吐き出してから与えるのも、そりゃ鳥の習性やからしゃあないとは言え、そこまでリアルにせんでもえーやん(笑)。でも、主人公と一緒にお風呂に入るシーンくらいからちょっと可愛く見えてくるから不思議。この絶妙にキモ可愛いセンスは、例えるならお上品な楳図かずおって感じですかね。主人公の隠していた願望を叶えるためにこの娘が暴走するのもいちいち神経を逆なでする嫌なものばかりで凄く良かったです。きっと彼女の母親は若い頃足のケガでアイススケートを諦めてしまい、その夢を娘に託そうとしているのだろう。そんな母親の身勝手さやどんどん変わってゆく友達との関係に次第に心に鬱屈したものを抱えてゆく少女。初めて知った自らの嫉妬や憎悪といった醜い感情を鳥人間という存在に無意識に託している。なかなか深い。この怪物が実は妄想の産物でホントは彼女の自作自演なのではと思わせてからのオチのつけ方は見事というしかない。最後、この醜い娘とともにこれからも彼らは「幸せな家族」を演じて生きていくのだろう。純粋無垢だった少女は、こうして大人へと生まれ変わってゆくのだ。監督はこれがデビュー作らしいが、この先要注目の才能だ!8点! [DVD(字幕)] 8点(2023-05-13 06:42:42) |
5. レア・エクスポーツ ~囚われのサンタクロース~
ネタバレ サンタクロースの正体は、実は冷酷無比なモンスターだった!雪深いフィンランドの片田舎の地中から発見された、そんなサンタクロースたちが村を襲い、子供たちを次々とさらっていってしまう。そんななか、何故か唯一サンタの毒牙にかからなかった肉屋の息子ピエタリは、生き残った大人たちと共に村を取り囲むサンタの脅威へと奮然と立ち向かっていくのだった。というヘンテコな設定のお馬鹿映画。はっきり言って、主人公たちへと襲い掛かる化け物がサンタという設定を取り除けば、後には低予算で作られたZ級レベルの観るに耐えないクソつまらないゾンビ映画しか残りません。つながりの悪いストーリー展開、極度なまでに魅力に乏しい登場人物たち、中途半端でうざったい親子の葛藤描写、挙句の果てはよぼよぼのジジイどもが全裸で襲ってくるだけというちっとも怖くないモンスター(サンタ)たち…。そんな中で唯一新しいと言える、サンタクロースがモンスターだったという設定も、味の素2、3粒を超まずい炒飯に振り掛けた程度のスパイスしか効いていない安易でお粗末な代物でありました。いやー、久々にこんなつまらん映画を観てしまったよー、こんにゃろー。 [DVD(字幕)] 2点(2014-02-14 22:37:12) |
6. アイアン・スカイ
ネタバレ なんとなく『マーズ・アタック』のような馬鹿馬鹿しくてくだらないけど、それでも最高に笑える映画を期待して観たのだけど、残念ながら自分は一秒たりとも笑えませんでした。眠気を堪えて、なんとか最後まで観終えて、そして出てきた感想は「しょーもな」の一言だけです。 [DVD(字幕)] 3点(2013-06-12 23:39:55)(良:1票) |
7. ダーウィンの悪夢
ネタバレ 言いたいことは分かるけど、で、だから?という印象。ほらほら世界にはこんなにもグロテスクで不条理な現実があるんですよ、なんてことをわざわざ教えられてもじゃあどうすればいいんだという疑問に、この映画はなにも応えていない。村上龍がコメントを寄せていたから、もっと「シティ・オブ・ゴット」のような、どんな劣悪な環境のなかでも力強く生きる人間の姿を描いたドキュメンタリーだろうと期待していただけに残念。 [DVD(字幕)] 3点(2012-04-24 13:31:20) |