1. 北の橋
うん、分からん。現実と想像の入り乱れるドン・キホーテ型作品と聞いておいて良かったな。まともに取り組んですべての謎解きをラストに求めたら大怪我するところだった。 ジャック・リヴェットですから、‶分からない”ままでも良いんです。持ち味といいますかね。でも、かの「セリーヌとジュリー」のような「分からないなりの納得感」というのが乏しい。おいてけぼり感が半端ないです。 もっとも、パリの街は中心も郊外も雰囲気があって素敵でした。演じる二人の母娘女優もなんだかクセになるような魅力があります。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-04-21 23:15:24) |
2. 木と市長と文化会館/または七つの偶然
《ネタバレ》 ロメールが恋バナから離れた珍しい一本。好いた惚れたでなく、政治信条が今作人物らをして熱く語らせるテーマ。 ネタは違えど「人間というのはこういうもの」と遠巻きに眺めるようなロメール視線は相変わらずです。批判もせず絶望もせず。正直で雄弁なのはいつも通り。まあ今作も皆よくしゃべります。それ受け答えになってるの?と思うような自己意識中心なディベートっぷり。フランス人てめんどくさいな。 田舎の街での箱もの建設を廻って賛成派と反対派の主張が繰り広げられるけれど、この手につきもののリベート・汚職とかの生臭さは皆無。長々と論争してもケンカにはならない。そこはフランスの大人の流儀でしょうか。市長、記事に不満だったのに当事者の美人記者と仲良くなってるし笑。 いかんせん政治の話なのでいつものロメール恋愛譚の軽快さが無いのはやっぱりちょっと物足りなく感じます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-23 11:48:19) |
3. 君の名前で僕を呼んで
《ネタバレ》 陽光に輝く木々の緑や、石造りの街並みの美しいこと。美形の俳優二名によるラブ・ストーリーは美的センスに関しては非の打ちどころのない小品に仕上がっています。 相手への思慕が止めようもなく溢れ出て、文字通り悶え悩むティモシー・シャラメの繊細な演技は印象的でした。彼はさほど表情筋を使わないのだけど、全身を使って表現を行う役者さんですね。ピアノをふざけた時の大袈裟な腕の振りとか、面倒な来客の際に見せるおどけたステップとか。そしてオリバーを想う時の苦しそうな寝返り。 悲恋の範疇に入るのかもですが、ゲイ・カップルの話にしては、障害の極めて少ないケースでした。かつて見てきた同性愛モノにつきものだった「迫害」がほとんど無いです。なんと両親も公認、さらに驚異的なことに気晴らしにぞんざいに付き合った女友達まで許してくれるとは。ばれたら最後、社会からリンチすら受けかねないとか、家族からの絶望的な目つきとか、そういうヒリついた状況下のゲイストーリーばかり聞いてきたのでこの作品の甘いことにはとても驚きました。もっとも、どんな恋愛パターンでもそうですが周囲からの抵抗値が高い方が、お話が強く激しく輝くような気もしますが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-02-05 17:49:57)(良:1票) |
4. 木靴の樹
ほんの100年ほど前の、イタリアの寒村での名も無き人々の暮らし。土地を耕し家畜を世話し、子供を育て、祈りながら肩寄せ合って日々を送る。車も電気の恩恵も無縁の時代に生きた人たちを見ていると、歴史というのは大きな事件だけで作られているのではないのだなあとつくづく思う。無数の、彼らのような庶民・農民たちによって育まれた生活を受け継いで今の我々は生きている。 働くだけで一杯の日常だけど、人は恋をするし年に一度は華やかなカーニバルもやってくる。より貧しい恵まれぬ人には祈りと共に施しをし、物売りの行商人との丁々発止の掛け合いは生活者のたくましさも感じる。 先人の生きた足跡をあふれる情操で再現したパルムドール受賞作。全体通してシビアなタッチなので、心楽しくはならないのですが、苦く辛いラストを含め”人間が生きること”に圧倒された180分でありました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2018-11-15 20:18:10)(良:1票) |
5. 96時間 レクイエム
《ネタバレ》 おや、3作目にしてついに誰も"TAKEN"されてないぞ?まあここまでついてきた客はブライアンの暴れっぷりを見たいだけだから細かいことはいいんだけど。 さすがに三本目ともなると脚本もネタ切れ気味。大学生の娘にでかいパンダを贈ろうという親父のズレっぷりは相変わらずのお約束。うん、ミルズの娘溺愛描写はきちんと入れないと。あと元妻の再婚相手が役者が変わってるので戸惑った。こいつを真の悪玉にしましたか。うーん、やや安易な脚本かなあやっぱ。冒頭のロシア人が暴れてるのもありがちな「釣り」だとわかっちゃうしなあ。 ああそれに警察の無能炸裂ぶりには恐れ入りました。ラストシーンのF・ウィテカーの台詞には笑った。「私は真実を知っていたのだ」ってアンタたち後手後手に回ってばっかだったじゃんかよー。 [DVD(字幕)] 6点(2018-07-01 23:30:57) |
6. 96時間 リベンジ
《ネタバレ》 1作目より世間の評価は低いみたいですけど、私はこちらも同じくらい楽しめました。攫われるのが娘じゃなくてオカンだと皆さん血のたぎり具合が違ってくるということ? 相変わらず娘大好きのブライアン、黙ってりゃ渋い佇まいなのに彼氏の家にまで押しかけるとはいよいよクレイジー。やっぱり身辺調査ソッコーでやってるし笑。娘のサプライズ登場には相好を崩す様子もまあ微笑ましく、こういう親バカぶりをきちんと前作から踏襲しているのも好感度が高いです。 元CIA親父の指示によって動くキム、意外と足手まといにならず、親父と二人三脚でイスタンブールの街を(破壊しつつ)駆け巡る前半のヤマ場は見ごたえありです。 目隠し状態で”音”のみ手がかりに現在地を絞り込んだり、電話で娘に出す指示が驚異的に的確だったり、ブライアン・ミルズの今回も「やる時はやる」頼れるオヤジっぷりには惚れ惚れします。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-26 00:14:56)(良:1票) |
7. 96時間
《ネタバレ》 決して筋肉アクション派ではないリーアム・ニーソンがオヤジ・アクションものでスマッシュヒットを放つとはねえ。 まずブライアン・ミルズのキャラクターを度を越えた親バカに設定したのが効きました。世の親は多かれ少なかれ我が子に対して親バカですから、彼が娘を救うために何をしようと客の承認は得たも同然。なのでブライアンがもう虐殺レベルな暴れっぷりを披露しても眉根を寄せる客はいない。敵に電気ショックをかまそうが、元同僚のヨメを撃とうが、「まあ仕方あるまい」と思わせちゃうのがミルズ親父の人徳か。人身売買組織に情けをかける必要も全然ないし、と思わせる脚本も念が入っている。 電話越しに聞かされる娘の大ピンチ、足元だけ映す暴漢らの気配。この場面のスリリングな怖さはベッソンの十八番。導入からラストのカタルシスへと一気に見せます。ノッてるベッソンはこれくらいできるのですな。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-24 23:29:37)(良:1票) |
8. 記憶探偵と鍵のかかった少女
《ネタバレ》 M・ストロングが美少女に振り回されっぱなしのナサケないおじさんになっちまってる・・。あーあ。なんでこう男の人は”魔性の”美少女に弱いかね。記憶を辿らずとも、彼女が嘘ついてんの一発でわかるじゃないですか。私は女だからこの娘の言うことより、周囲の証言の方を信用したよ。しかも、記憶を自分で改ざんできるのなら、そこへ潜る意味無いじゃないですか。物語の大前提を自己否定しちゃってる。 映像はダークで思わせぶりに妖しいのですが、話の骨格に突っ込みどころが多くてノレないです。あの娘16才で家を出たはいいけど、どうやって自活すんのかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-18 17:34:20) |
9. キャロル(2015)
《ネタバレ》 オスカー女優とカンヌ女優賞、二人の競演はとても見ごたえがありました。そしてなんと番狂わせなことに、ケイトを抑えてルーニー・マーラに軍配が上がりました、ワタシの中では。ケイトが押されている・・?とびっくりしました。 だって、テレーズはもう完全にキャロルに惚れている。彼女を追う時の目線の熱っぽさや、頬が自然と上がるときめき、恋する人間の発する独特の甘い空気。ルーニー・マーラすげえ。 一方、ケイトはルーニーよりハンデがありまして、なにしろ忙しいのです役が。我が子を思う母親であり、愛の冷えた夫とその家族に疲弊する妻でもあり、元カノに弱みをさらす一人の女性でもあって、ケイト・ブランシェットだからこそこんなに沢山のタスクをこなせたとも思うのですが、恋に身を焦がすほどの想いをばんばん放出してきたルーニーの方が印象強かったです、はい。 [映画館(字幕)] 7点(2017-09-15 00:19:51)(良:1票) |
10. 禁じられた遊び(1952)
「死」の扱い方がここまで特異な話を私は知らない。死を解らない子供にこの重たいテーマを預けて、戦時下にもかかわらず、どこかのどかな調子で美しい画が紡がれる。大人にとっては容認し難い十字架遊び、いやひどい光景なんだけども、それを言う以前に大人にしてからが戦争やってたりご近所と諍ってたり大層愚かなんである。美しい要素など無い話なのに、甘美な音楽と無邪気な子供の表情につい心地良くなりそうで、はなはだ奇妙な心持ちにさせられた。 [地上波(字幕)] 7点(2014-01-10 23:21:04) |
11. 奇人たちの晩餐会
《ネタバレ》 本作の前にUSA版を観たので、観てしまったので、本家がどうなっているのか興味本位で観賞。良かった。ここに辿り着いたのだから、USA版にも存在意義はあったのだな。 舞台劇さながらの本作はフランス風ボケと突っ込みの応酬に行間が活きていて、面白いほど日本人的。観客の目線になって笑いを誘導する友人の役回りが心憎い。ボケ役のおじさんは最後まで天然炸裂、ラストは見事にオトシてくれました。“お前が取るな”。 [DVD(字幕)] 8点(2013-11-29 00:58:18) |
12. 昨日・今日・明日
つっこみどころの多すぎな第1話、つっこむ所すら無い第2話、ときて3話目のどたばたが一番面白かった。とにかく3話通してソフィア・ローレンが素晴らしく美しい。この人を美人だと思ったのはこの映画が初めて。感情の起伏激しく、わがままなビーナス。ソフィアを堪能したければおすすめの一品。盟友たる彼女を引き立てるべく、だめだめで阿呆に徹するM・マストロヤンニの懐の深さにも胸が熱くなるわあ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-01 00:21:38) |
13. 気狂いピエロ
まるで美的センスの塊みたいな映画だなあ。冒頭の本屋さんの1ショットからいきなり鮮やかな本の背表紙や店看板がわっと迫ってくる。何者かが死んでいる白い壁の部屋には計算済みな配置の絵と真っ赤なランプシェード。脱帽するほどの色彩の妙だけどもゴダールは好きじゃない。この人のユーモアの無さにはいつも疲れる。自分を笑う勇気の無い人じゃないかと思う(多分)。ゴダールがフェリーニかと言われれば愛嬌のあるフェリーニをとります。比べる意味も特に無いんだけど。どっちもなんか分かりづらい映画、という雑な区分ですが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-07-01 00:42:01) |
14. 去年マリエンバートで
まるでガマン大会のごとき2時間でした。えー、女のひとのイヤリングがきれいだったです。あとお庭も白いお部屋もきれいだったです。私ゃ小学2年生か。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2012-06-24 12:20:40) |
15. 恐怖の報酬(1953)
《ネタバレ》 なんかもう心が一時も休まらない映画。前半は食い詰めた男たちの希望の無さに気が滅入り、ニトロ運搬のくだりからはうああーとかぎゃーとか言いっぱなし。自宅で良かった。崖にせり出した木製の足場、横滑りするぶっといタイヤ、ひいぃー。作業に集中せねばって時にへたれてくれるジョー、あああーこのオヤジ、マリオじゃなくてもキレるわ。モノクロだというのがまたなんだか恐怖1.5倍増しだ。油まみれになった二人なんてもうまっ黒坊主で視覚的に怖いのなんの。これが微妙な黒と茶の感じが出ては凄味がダウンしてしまうんだきっと。ああ、体力使ったなあとへなへなしてるところへラストもう一撃。マリオの阿呆~普通に走れよ・・ああー・・。 [ビデオ(字幕)] 8点(2012-06-17 23:43:49) |