1. 天才スピヴェット
《ネタバレ》 物語も画も、子ども向けの上質な絵本といった趣。 個性的な家族と美しい自然と科学への探求心と、心に負った傷。これが10歳のT・Sのすべて。 T・Sが冒険心を起こして向かう状況の全てが「過酷さ」を排しているので、かなりファンタジー寄りです。子ども一人がうろうろしているのに大人が誰も通報しない、というのも子ども目線では理想形。‶人語を話すペット”的な相方がいればもっと完璧だったかも。 T・S役のカイル君が半端ない透明感で、小奇麗な画にぴったりとハマります。ストーリーのユルさは大人には物足りないけれど、とにもかくにも画の美しさに引っ張られての鑑賞でありました。 [地上波(字幕)] 6点(2022-04-12 22:45:47) |
2. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 ドン・キホーテは児童書で読んで以来。子どもの頃抱いた「?」という不可思議な感想をまんま映像作品にしてくれたテリー・ギリアム。そう、元々のお話も整合性なんかなくてオチもどっか行っちゃってる「夢」そのものだもんね。 振り回される気の毒なサンチョことアダム・ドライバーとドン・キホーテその人なジョナサン・プライス二人の軽快な芝居っぷりが楽しく、この二人に引っ張られての鑑賞でした。 スペインのロケーションも素晴らしく、乾いた土と風、強い陽射し、これらの風土はドン・キホーテの世界には不可欠だと感じ入ります。むきだしの土色と岩の中にギリアムがこしらえた赤と金の濃い色彩の迷宮。この色彩のメリハリは強烈でちょっとぼうっとなりました。 そう、役者のお芝居、美麗な画。退屈しなかったのは間違いないんだけど、面白かったかと聞かれると微妙ではあります。そこはそもそもドン・キホーテですから、ということで。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-11-02 23:38:18) |
3. 天使の分け前
《ネタバレ》 スコットランドの世相は、いろんな映画を観てきたがいつも不景気で大変だ。若者の失業率の高さ、はびこるドラッグ、天気まで悪い。実際、階級社会であるところのかの国で、社会の底の方にいるとそれはそれは這い上がることがキビシイそうだ。わが国と比べて社会構造がずっとシビアなのだと聞いたことがある。 ケン・ローチという人は、そういう苦労している階層の人々に寄り添う作品を撮る監督だが、今作はまたかなりの力技に持ち込んでいて、一種のカタルシスみたいな感興もわきます。 ”自然と無くなる”2%のウイスキーを天使の分け前とは美しいネーミング。たかが酒樽に、とてつもない額を出せる人間がいる。そんな人たちにとっては ほんのわずかの”分け前”を頂いたところで、それこそ天使の采配のうちでありましょう。頂いた”ギフト”を元手に、それぞれが健全な道をゆくことを祈る気持ちでいっぱいだ。 世話になったハリーに一瓶進呈する律儀さ、半分を”うっかり”で失ってしまう奥ゆかしさ、ケン・ローチのこんな演出が好きだ。 ロビーがこの先醸造所で働いて、障害を負わせた相手に少しでも償おうとしてくれればなあ。してほしい。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-07-08 23:32:39)(良:1票) |
4. 天井桟敷の人々
《ネタバレ》 19世紀パリを再現したというセット、特に犯罪大通りの描写、雑踏がリアルに息づいているような人波の熱量には圧倒される。劇場の舞台裏、路地裏、酒場、丁寧に作りこまれた仕事ぶりに制作者の並々ならぬ情熱を感じる。加えてJ・ルイ・バローの至高のマイム。作品に芸術の香りを一段高く纏わせるほどに圧巻。 だけど、私は映画製作時の時代背景等を踏まえて作品を観賞することが苦手で。この名高い作品が公開されたのは70年も前。現在90歳前後のおばあちゃんが「あのころとても感動したのよ」と語るのなら、その思い出は尊重するけれど。現在の感覚から観れば、ガランスの男から男へと、けろりと渡る不誠実さは悲恋物語のヒロインに置くにはそぐわない気がして仕方ない。バティストを想ってるだなんてウソだろ、よく言うぜ。お気楽キャラの台詞俳優の立ち回りも中途半端な印象だし、悪漢ぶっている似非作家もやることなすこと唐突だ。こんなに尺が長いのに、人物の造形を掴みにくくて誰にも感情移入できなくて観ていて困った。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-06-19 00:20:54) |
5. テス
どうも一昔前の文芸作品はべったべたの愛憎劇が多くて肌に合わない。この映画もストーリー云々より記憶に残るのは映像美と、ナスターシャ・キンスキー。ああ、彼女から発光されるのは美の極致。この世のものではないような。すっかり魂を抜かれたワタクシ。弱冠15歳の美の女神に手を出したというポランスキー監督。この小男を私は絶対許さない。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-10-03 23:48:14) |
6. デリカテッセン
《ネタバレ》 神経症的に作り上げられた美術が私にとっては悪夢のようだった。壁びっしりのカタツムリ&カエルでもうだめ。生理的嫌悪感ばかりがおぞおぞしてずっと寒かった。スプリングのきしみにたくさんの音がかぶさってゆく・・笑っていいのかなんなのかわからん。当時本木雅弘が勧めていた(たしか)からって乗った自分に反省した。 [映画館(字幕)] 2点(2011-07-29 15:24:21) |