1. オリバー・ツイスト(2005)
《ネタバレ》 なんかこれって、1年丁場の子供向け連続アニメでやれそうですよね、ハウス劇場とかの。で、おそらく原作に忠実なんでしょうが、映画の尺では、序盤の救貧院と葬儀屋、ロンドンへの7日間の徒歩の旅は思い切って削り、ロンドンで行き倒れていたのを子供窃盗団に拾われるところから始めた方がいいのではないかと思います。それ以前のことは、粥のおかわりのエピソードを回想で入れる位でいいかと。とにかく物語がさくさく進みすぎ、ちっともオリバーに感情移入できません。映画の尺では的を絞るべきです。原作は未読ですが、運命に流されるオリバー像はそのままらしく、ディケンズは新救貧法への強い不満を書きたかったらしいので、まあ「オリバーに主体性がない」とかはいいことにするとしても、この急いだ展開がオリバーに感情移入できないもう1つの理由だと思います。ロンドンでの登場人物、フェイギンやドジャーら窃盗団の仲間をもっと掘り込んで欲しかったですね。特に最後を生かすには、オリバーのフェイギンに対する心理描写が明らかに不足してます。キングスレーは抜群の存在感なのに、もったいない限り。フェイギンを完全な悪党としていないのは、せっかくの原作からの「改良」点ということなのに、浅薄な描き方で、オリバーが処刑前のフェイギンを訪れるラストに説得性がなく、感動できません。19世紀のロンドンの街並みのセットは、確かに素晴らしかったと思います。 [DVD(字幕なし「原語」)] 5点(2009-04-28 13:50:50) |
2. モンパルナスの灯
《ネタバレ》 母はモディリアニの絵が大変なお気に入りだが、少女時代の私はただ不気味としか思えなかった。そんな頃に鑑賞した本作、フランスってすごい美男美女をキャスティングできるんだなあ、とまずそこに感心したが、芸術家っていうのは自尊心ばかり高くて、勝手で理解できないもんだな、と思った。お客様は神様なのよ!評価してくれてるのに、贅沢言うんじゃありません!特に養ってる家族がいるならなおさらでしょ!って感じで。なので、こういう部分では芸術を解さないと感情移入しにくいものの、病気が進行しだすあたりから、目が離せなくなってくる。そしてラスト・・・思わず息を詰めて観てしまい、鑑賞後しばらくショックでぼっとなった。あの残酷さはただものではない。今まで観た映画の中でも最大級だ。衰弱した画家の背後に死神のように迫りささやく画商。画家がついに行き倒れる場面も壮絶だが、さらに画商はその死を見届け、画家の家におもむく。家には夫の死を知らずに待つ妻。画商が夫の絵を買い漁る様を見ながら、とびきり美しい微笑を浮かべる。あなた、絵が売れたわよ、と言わんばかりに…。この微笑が、心臓を突き刺さんばかりだ。そして画商がひたすら絵を繰ってるシーンで映画はそのまま終わってしまう。なんと容赦ないことか。妻はその後夫の死を知り自殺・・・事実ではさらに悲惨な結末を辿るが、敢えてそれを見せない本作なのに、この容赦なさがトラウマになってしまった。モディリアニの絵が現在何億と言う値で取引されている事実が、さらにやるせなさを増強させる。余談だがこの映画を観たせいなのか、今はモディリアニの絵を見ると、何か独特の感慨がある。 [地上波(字幕)] 7点(2009-04-18 13:09:45)(良:1票) |
3. 太陽がいっぱい
キリ番の200レビュー目なので昔から好きだった映画にしておこっと。やっぱドロン。ドロン。ドロンですがな~~(すんません)。最初に観た時はまだ小学生だったと思うが、やられた。あの上目遣いに手のひらにキスするシーンなんて背筋がゾクっとした。本当の色男って言うのはこういうのを言うんだなあ。やっぱりこの時のこの人ってのは単なるハンサム君じゃないんだよね、私なんか好みでいえばスティングやサム・ニール系の顔だもん。でもやられてしまったし。これはフェロモンってやつか?ヒロインとか魅力なくって、「ドロンのプロモーション映画として撮られた」ってのにも納得してしまうのだが、実は!ちゃんと映画としてもすごく面白かったりする(ってもう名画の誉れ高いので、実は、でもなんでもないんだけど)。ああばれちゃうよう、逃げ切ってくれ!!というハラハラ感もあるし、破滅の直前で終わらせるラストなんか実にいい。原作には「リプリー」の方が近いらしいけど、これはもう別途に完成された作品。音楽も名曲、邦題も秀逸、名画にふさわしいと思う。 [地上波(吹替)] 9点(2009-03-28 11:16:30) |
4. クリフハンガー
かつて某森田一義氏の○キャブラ天国というダジャレの投稿番組があり、採用したダジャレを映像化した寸劇?が中々面白く、よく観ていました。その中で確かこういうのがありました。崖から崖に張られたロープから宙吊り状態のバンドにしがみつく女性。ロープから手を差し伸べる救助隊員の男性。「頑張れ!もう少しだ」手を必死で伸ばす女性。手には白い容器。「ああ、もうだめよ」「諦めるな!頑張れ!」が、白い容器が男性の手に届く直前に女性の手を離れる。「あっ・・・」谷間に落ちていく容器。容器のふたが開く。“クリフハンガー”というテロップが出てその上から文字がなぞるように変わっていき、悲鳴調のアナウンスがかぶる。「栗ごはんが~」落ちていくくりごはん。…あまりのバカバカしさに腹がよじれるくらい笑いました。スタジオの評価も良かったんじゃないかな。 あっ!ごめんなさい、映画の話じゃなかったですね。つまり映画は、そちらの短編(?)の方がよっぽど強烈に記憶に残ってる、という程度の内容だったということで…。雪山ロケを頑張ってること位が誉めどころでしょうか。 [地上波(吹替)] 4点(2009-03-26 13:15:38) |
5. ジョニー・イングリッシュ
Mr.ビーンというキャラがあまりに強烈なので、イメージが固定してしまってるが、アトキンソンはあの顔芸を使わなくても、ちゃんとコメディが演じられる俳優なのだと判った。007を殆ど観てないのでパロディが判らなかったが、それでも充分笑えた。いかにも好き嫌い分かれそうだが…。そのまま直訳されてもばっちりだったキャッチコピー(He knows no fear. He knows no danger. He knows nothing. = 彼は恐れを知らない。彼は危険を知らない。彼は何も知らない。)も心憎い。まあウンコかぶりはちょっとやりすぎ、あそこを省くだけでここの点ももちっと上がるんではないか。悪役の事業家が「刑務所王」ってのが訳わかんなくて笑っちゃうし、イギリス王位を狙ってるってのも壮大じゃないの。どんどんぶっ飛んでいく後半も◎。ブリティッシュ・コメディに期待される適度な毒があり、ビーンの映画版よりはるかに面白い。007を観てる人はもっと楽しめるんじゃないか。なんでシリーズ化されないの? [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2009-03-19 13:08:42) |
6. ユナイテッド93
公開時は、「アメリカのプロパガンダになってるだろう」と思ったのと、世紀の大事件を映画化するにはあまりに時期尚早な印象で、観る気はしなかった。今般、アメリカも「テロとの戦い」を大義名分に好き勝手したツケがようやくまわって国民意識も変化し、政権も交代し、また他国にそうそうちょっかい出す余裕も無い経済危機に直面している。なので、自分でも今は「公平」な目で鑑賞できるのではと思って観ることにした。そしてなんともリアリティがあるのに驚いた。これは手技のことを言ってるのではない。いや、むしろ映画として、リアリティを追求するが故ハンドカメラを多用しすぎるのはいただけず(酔う)、特に管制塔や軍など地上のシーンでの手ぶれはまったく不要で、これは難なくらいだ。私が驚いたのは、「人間」の描き方のリアリティの方。映画は私などよりはるかに「公平な」目で描かれていたのだ。乗客を英雄に仕立てても、ハイジャッカーを悪魔のように描いてもいなかった。ハイジャッカーたちの惑い、焦り、祈りながら自らの使命を遂げようとする様は、していることは許すまじきテロでも、あくまで人間くさく、「狂信にとりつかれた鬼」には見えなかった。そして、乗客。“ただのハイジャックでない、どこかに降りて人質を順次解放ということはない、彼らは我々と共に死ぬ前提で乗り込んでいる”…それを知り、何もしなくて死ぬなら何かやってやれ、可能性はある、極限状況の中でそう判断した乗客も、まさに窮鼠猫を噛むといった緊迫感で、英雄的に描かれているわけではなかった。(彼らをワシントンを救った英雄に祭り上げ、乗客の言った“let’s roll”を「テロとの戦い」のスローガンに持ち上げてイラクに乗り込んだブッシュは犯罪者だと思う。こんな風に利用されていいはずがない。)「人間」をリアルに描こうと試みた監督の気迫が伝わってくる。フィクションが含まれていることは解っているが、私は犠牲者への追悼を強く感じ、どうしてこのような事件が起きなくてはならなかったかを、深く考えさせられた。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2009-03-14 18:38:21)(良:3票) |
7. ミノタウロス
やっぱり日本未公開だったか・・・大した映画ではないが(じゃ、登録要望するなよ!と突っ込まれそうだが)、アマゾンに2件ほど、ヤフー映画に4件ほどレビューがあったので、何かの縁で観てる人もいるんだなと思い、レビューしたい。私も何かの縁で観たのでw。 ギリシャ神話のミノタウロス退治を題材にした作品。ミノタウロスはミノス王妃と牡牛の間に生まれた半人半獣の怪物で、神話ではアテネの英雄テセウスが退治する。…なんだが、神話的な部分は期待せず、怪物のいる地下迷宮に放り込まれた若者たちを描く、正統派モンスター・パニック・ムービー、と思って観た方が良い。1人また1人やられていく展開はお約束。このジャンルの映画としてそこそこ及第点かとも思うが(そもそもモンスター映画という時点で大半がB級だし)、途中はひたすらやられる&逃げるで戦いらしいことをするのはラストだけ、アクション好きには物足りないかも。地下迷宮もややちゃっちい。ま、ミノタウロスを退治するのを、神話の英雄テセウスから、等身大の村の青年にしたのはちょっと面白いかな。俺が殺す!と鼻息荒い割にそんなに強くないし。それにしても怪物ミノタウロスのこの造形・・・半人半獣じゃないじゃんよ~。 [DVD(字幕なし「原語」)] 4点(2009-02-13 13:06:40) |
8. ベニスに死す
いや本当によく見つけたよな、こんな美少年。この映画は基本的に芸術・哲学作品ですが、芸術・哲学だけだと観る人を選ぶわけです。私はあまり芸術のわかる人間ではないし、一歩違えればただ退屈してたと思うけど、アンドレセンの美しさで物語に説得性が出るし、「映画」には不可欠な「娯楽」面を備えたといっても過言ではない。加えて、マーラーのアダージェットとベニスの街並みの美しさ。こんなに「お耽美」にはまらせてくれる映画も滅多にないですね。でもこれは、その対極の「醜」「老」「病」が絶妙に描かれているからだとも思う。もっと老いてからもう一度観てみたら、より深みが解るかも。今でも高得点つけれますが。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-01-20 13:44:14) |
9. ターミネーター2
始めストーリーの概要「前作で敵役だったT-800シュワちゃんが少年となったジョン・コナーを守る」を知った時、ええ?変じゃん?前みたいに人間送れよ、T-800って元々敵側のロボットだろ、シュワをクローズアップしたいがために作った設定なんだろうけど、無理がある!と非常に厳しい先入観を抱いた(笑)。この設定については、続編として考えるとやはり無理はあると今でも思うのだけど、それをあまり気にさせない程、ストーリー運びはよく出来ていた。そして、感情のようなものを獲得していくシュワちゃん、やさぐれになり切れない少年らしい繊細さがよく出ていたファーロン、意志の塊のようなハミルトン、そして無表情な殺戮マシーンが本当に板についていたパトリック、主要登場人物の演技が実にしっかりと役にはまっていたので、これだけの作品になったのだと思う。ラストには素直に泣かされた。あれだけネガティブな先入観を持って観たのに、脱帽。 [地上波(吹替)] 8点(2009-01-08 16:06:35)(良:1票) |
10. フラッド
いいの、スレーターはB級俳優になっても、とりあえずかっこいいから(笑)。まあいいんじゃないですかね、立派なB級アクションと思いますよ。洪水要素をとったらC級以下かもしれないけど、最後の最後まで水にこだわり、「乾き」を全く入れずに一貫して雨の中という徹底振りでちゃんとB級になってます(笑)。水を生かしたアクションを堪能させて頂きました。それから、フリーマンの「ありがちなちょっといい悪役」、他の俳優だったらC級(以下)になっていたかもしれないけど、やはりさすがでした。それなりに中々に演じた彼の功績も大。ただ、他の人も書いてますが、この6カ国協賛には首を傾げる。。。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-01-05 16:15:54) |
11. 禁じられた遊び(1952)
深く悲しい。子供の頃から放映されるたびに観て(ほとんどがNHK教育字幕)、その度に泣いた作品。でも好きではなかったのだ。子供にはあの結末は可哀相過ぎて、何とかハッピーエンドにならないかと思ったりした。あの頃の思いは今もあるが、何故あのラストなのか、が解るので大好きな映画だ。戦争の直接描写は最初だけなのに、きっちり反戦映画となっている。二人の子役は素晴らしいとしか言いようがない。予算が足りなくなってギター一本のバック・ミュージックになったというエピソードは驚き。映画音楽含め名作だが、怪我の功名?だったとは。「嘘つき!場所を言ったらうちで引き取るって言ったじゃないか!」の辺りからラストにかけいつも号泣。 [地上波(字幕)] 10点(2008-12-23 15:12:24)(良:1票) |
12. 屋敷女
恐るべし、フレンチ・ホラー。密室ものと思いきや、かなり多くの人がやって来る、そうやって来るのだが・・・畳み掛ける絶望感。スプラッタ表現も相当ですが、精神的にもかなりキます。妊婦さんは見ちゃダメです。 [DVD(字幕)] 6点(2008-12-15 18:19:26) |