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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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1.  スリーデイズ 《ネタバレ》 
 久し振りに再見し、細かい部分まで「すべて彼女のために」(2008年)をそのまま再現してるんだと感心させられた一方で、物語の根幹に関わる部分を大きく改変してるって事にも気が付き、驚かされましたね。  自分は最初に本作を鑑賞し、その何年後かに「すべて彼女のために」を観賞し、此度感想を書く為に二本連続で観てみたという形なのですが……  最初に観た時より衝撃が大きかったし、それに伴って、本作に対する評価も更に高まったように思えます。   何せ本作ってば、主人公が妻への疑いを捨て切れていないんです。  一応台詞では「妻を信じる」というスタンスだし、疑いを持ってるだなんて、それこそ自分の邪推に過ぎないのかも知れませんが、一途に妻を信じていた「すべて彼女のために」の主人公に比べると、見るからに様子が違うんですよね。  でも、それによって妻への愛が弱々しく感じられるなんて事は無く「たとえ妻が殺人を犯したとしても、それでも妻を愛する」という意思の強さが感じられる形になっているんだから、本当に見事。  「すべて彼女のために」は「妻を一途に信じ抜く男」を描いたのに対し、本作では「妻に疑惑を抱きつつも、それでも愛する男」を描いたのかな、と思えました。  だからこそ、同じストーリーの映画なのに「違った味わい」「独自の魅力」が生み出されている訳で、この辺りは本当に上手い。   「ドン・キホーテ」から影響を受けて「理性を捨てた方が人は強くなれる」と言い出す場面とか「狂人となっても、絶望に生きるよりはマシ」と覚悟を決める場面とか、この主人公は愛ゆえに狂気の暴走を果たす事になると、序盤の段階で示してるのも良いですね。  「すべて彼女のために」では、中盤以降の主人公の暴走っぷりに驚かされ、多少引いちゃう気持ちになったりもしたんだけど……  その点、本作は主人公に肩入れし易いし、過激な選択に至るまでの説得力も増していた気がします。   物語の途中で出会う「ママ友」ならぬ「親友(おやとも)」な女性の活かし方も上手い。  「すべて彼女のために」では主人公とのロマンスを予感させ「その気になれば他の女性と幸せになる事も出来るが、それでも妻を選ぶ主人公」って示すだけの存在だったと思うんですが、本作は彼女に他の役目も与えているんですよね。  いざという時に備え、息子のルークを預ける場面を挟み、主人公の「もしかしたら、自分は助からないかも知れない」という悲壮感を高めるのに成功してる。  こういうリメイク映画における「既存の人物の重要性を高める改変」っていうのは、観ていて本当に嬉しくなっちゃうし、もう大好物です。   他にも「あえて偽の証拠を残しておき、警察の捜査を欺く」という罠を用いる事によって、主人公の有能さが増している事。  妻に嫌疑が掛かった殺人事件の真犯人が誰か、観客に教えてくれる事なんかも、嬉しい改変。  これらの改変部分に関しては「余計な事をした」「何でもかんでも説明し過ぎて、野暮な作りになった」と感じる人もいるんでしょうけど、自分としては正解だったと思いますね。  あれだけ用意周到に計画を立てていた主人公が、証拠を燃やしもせずにゴミ箱に捨てて警察に見つかっちゃうってのは違和感あったし、殺人事件の真相についても、明確に描いておいた方が、スッキリとした後味になるんじゃないかと。   そんな具合に、色々と改変している一方で「すべて彼女のために」でも印象的だった、不仲だった父との別れ際のハグについては、ほぼそのまま情感たっぷりに描いてくれてるのも、実に嬉しい配慮。  主人公の妻は美女で、息子は美少年っていう辺りも、殆どそのまま再現しており、感心させられましたね。   そのままの方が良い箇所に関しては、そのまま。  そして変えるべき箇所に関しては、思い切って変えるという采配が絶妙でした。   本作「スリーデイズ」は傑作であり、これ単品で鑑賞しても、文句無しに楽しめるのですが……  「すべて彼女のために」とセットで鑑賞すれば「リメイクの妙味」「新たに映画を作り直すという意義」についても感じ取る事が出来るんじゃないかって、そんな風に思えましたね。  娯楽作品としても、リメイク映画の理想形としても、オススメしたい一本です。
[DVD(吹替)] 8点(2023-09-28 21:29:31)(良:3票)
2.  すべて彼女のために 《ネタバレ》 
 「脱獄は簡単だが、その後が大変だ」という台詞が印象的。  この台詞が序盤で語られる場面だけでも充分にインパクトがあったのですが、映画の終わりにも再び繰り返されるというんだから、何だか徹底していましたね。  脱獄に成功した主人公達の未来を示唆する台詞であり、この映画を象徴する台詞でもあったように思えます。   とはいえ、その簡単なはずの「脱獄」も充分に困難である事が劇中で描かれており、だからこそ(逃げ続けるのは、コレ以上に大変なのか……)と思える終わり方になっているのが見事。  脱獄に成功し、ハッピーエンドと呼べる終わり方のはずなのに、まだまだ前途多難である事を示唆される。  でも、それまでに描かれてきた主人公の力強さを思えば、そんな困難も必ず乗り越えられるはず……と、希望を失わずに前向きな着地を果たすバランスは、かなり好みです。   そんな具合に、中々の佳作と呼べる品なのですが、難点としてはやはり「主人公の妻が無罪かどうか、最後まで謎のまま」って事が挙げられるでしょうか。  主人公は一貫して無罪を信じている訳だし、物語の展開としても「そんなの、どっちでも構わない」って話ではあるんですが、やっぱり観客としては気になっちゃうんですよね。  仮に有罪であれば「それでも主人公は妻の無罪を信じ、殺人を犯すほどに暴走してしまった」という切なさが生まれただろうし、無罪であればハッピーエンド感が増したであろうし、答えを明かさないままというのが勿体無く思えてしまうんです。  意味深な場面を挟み「どちらでも観客の好きなように解釈して良いよ」って思わせるような形でもなく、何か「妻が有罪なのか無罪なのか、答えを出すのを忘れてた」って感じられる構成だったのも痛い。  ここは素直に「妻は無罪である」と示す場面を挟んでも良かったと思います。   あと、コレは観客側の自分が悪いんでしょうけど、今回久し振りに鑑賞し(あれ? 主人公が殺す相手って、因縁とか全く無い麻薬の売人だったの?)って驚いて、ガッカリもしちゃったんですよね。  「序盤に主人公を騙して金を奪い取った相手から、復讐がてら大量の利息込みで金を奪い返す」って展開だと記憶していたんですが、実際はそういったストーリーの繋がりは無く、勝手に美化して記憶しちゃってたみたい。  その場合、序盤で主人公を騙した奴らに何の仕返しもしないまま終わっちゃうのかって不満も生まれるし……  この辺りは、思い出補正の恐ろしさというか「一度観た映画を、何年振りかに観返して評価する」事の難しさのようなものを感じました。   でもまぁ、そういった諸々込みで考えても、やっぱり「良い映画」「面白い映画」でしたね。  単純に、妻が美人で息子が可愛いってだけでも、主人公を応援したくなるような魅力がありましたし。  脱獄計画で大変な中でも、幼い息子を公園に連れて行って遊んであげたりする場面とか、ちゃんと主人公が「良い奴」だって事を示す描写があるのも嬉しかったです。  劇中で妻のリザが困惑していたように、ともすれば観客としても(この主人公、やり過ぎ)(いくら愛する妻の為とはいえ、流石に応援出来ない)って気持ちになってもおかしくなかったのに、そこをギリギリで踏み止まる形になっていましたからね。  空港に指名手配の写真が届く前に、間一髪で間に合った場面とか、そこで観客に(あぁ、良かった……)と安堵させる為にも、主人公を完全に「暴走する狂人」としては描かず、感情移入出来る余地を残しておいたのは、正解だったと思います。   警察側も数多くの証拠を掴んでいるし、後の「スリーデイズ」(2010年)に比べると、主人公達がいずれ逮捕される可能性も高そうな本作品。  それでも、きっと彼らなら大丈夫だと思えるし、そう思いたくなるという……  ビターなチョコレートのような、程好い余韻を味わえる映画でした。
[DVD(字幕)] 7点(2023-09-28 21:24:50)(良:1票)
3.  ハンニバル・ライジング 《ネタバレ》 
 「ハンニバル」の時点で(殺人鬼であるレクターを、ヒーローとして描こうとしてるのでは?)って違和感があった訳だけど、本作では完全にヒーローに変身しちゃってますね。  「羊たちの沈黙」にて、罪の無い警官を平気で殺してた男が、良くもまぁここまで変わったもんだと、妙に感心しちゃいます。   そんな具合に、皮肉な目線で捉えるなら「レクターを正義の味方みたいに描かないで欲しい」とか何とか、文句も言えちゃう訳だけど……  意外や意外、これが結構楽しめたんですよね。  後のシリーズと切り離し、本作単体で考えるなら「妹を殺した連中と、愛する女性を侮辱した男しか殺してない主人公」って形になってるし、シンプルな復讐劇として、奇麗に纏まってると思います。   むしろ本作に関しては「主人公は後のハンニバル・レクターである」って点が、デメリットになってるんじゃないかと思えたくらい。  レディ・ムラサキから剣道を習い、それを活かして最初の殺人を行う訳だけど(それなら、後々も日本刀がレクターの得意武器となるはずでは?)って、気になっちゃうんですよね。  それと、この後レクターは上述の通り「罪の無い警官を平気で殺してた男」に変貌する訳だけど、その変貌するキッカケなども描かれていないから「殺人鬼ハンニバル・レクターが誕生した理由」ってのが、見えてこないんです。  あえて言うなら、愛する女性のレディ・ムラサキに振られた事が「復讐者」から「殺人鬼」に変わった理由かとも思えるんですが……  それにしては、エンディングにて「復讐」を完遂しようとする姿で終わってるしで、何かチグハグですよね。   素人の浅知恵ですが、本作に関しては「純粋な復讐劇」として考えるなら、自らも妹を食べていたと悟った主人公は、復讐を完遂した後に自殺する結末の方が良かったと思うし、逆に「ハンニバル・レクター誕生を描いた物語」として考えるなら、復讐の為じゃなく快楽の為に殺人を犯すようになった場面を描くべきだったと思います。  「ハンニバル」よりは面白いって思えた一作なんですが、この辺りの歪さに関しては、正直褒められないです。   その他にも「山小屋の兵士達が、それほど餓えてるように見えない」とか「失語症が治るカタルシスを描かずに、あっさり治しちゃうのは勿体無い」とか、色々と気になる点も多い映画なんですが……  レクターが返り血を舐める場面なんかは、素直に恰好良かったし「正義では裁けない悪を、悪をもって誅す」というダークヒーロー的な魅力は、しっかり描けてたと思います。   何より見逃せない功績は、本作にてレクターに美形属性が備わった点ですね。  本作で美少年としてのレクターが描かれたからこそ、後にドラマ版「ハンニバル」が生まれたのかも知れないし……  そう考えると、非常に意義のある一本だったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2023-05-10 03:21:23)(良:1票)
4.  ショーガール 《ネタバレ》 
 何処となく「イヴの総て」(1950年)や「哀愁の花びら」(1967年)を連想させる内容。  女性のショービジネスにおける若手とベテランの確執を描いており、既視感は否めないんだけど、その分だけ王道の魅力もあるって感じですね。  上記二作に比べると女優陣が露出度高めで、エロティックな要素濃い目なのも、結果的には程好い「個性」になってた気がします。   それと、主人公ノエミ(=若手)とクリスタル(=ベテラン)の関係に、何やらレズビアンな匂いが漂ってるのも、興味深いポイント。  別れのキスの場面なんて、明らかに友情を越えた愛情というか「性愛」の匂いが感じられますし。  しかもノエミが出会う男は最低な奴ばかりで、女性にだけ優しい眼差しが注がれてる作りなんですよね。  この辺りの歪さは、オタク女子が描く「美男子だらけの同性愛世界」の性別逆転バージョンって感じにも思えました。  本作に不思議な魅力を感じてしまうのって、案外この「男にとって都合の良いレズビアン世界」っぽさにあるのかも知れません。   そんなこんなで、自分としては「女優陣の性的な魅力」「レズ要素」を好意的に捉えた訳だけど、それがそのまま「下品で低俗」「あざとくて幼稚」と欠点に感じる人もいるでしょうし、評価が分かれやすい映画だと思います。  正直言って、脚本の筋運びも雑であり(女友達のモリーがノエミを許す流れが唐突、など)完成度という意味では、決して高くないですからね。  ノエミが麻薬に手を出す場面や、クリスタルを階段で突き落とす場面を妙にアッサリ描いたりとか、監督の手腕にも疑問を抱いちゃう場面が多いです。   それでも、自分としては「好き」か「嫌い」かと考えたら前者になっちゃうというか……  なんか憎めない映画なんですよね。  観客どころか、脚本家のジョー・エスターハスにすら自虐ネタにされ「アラン・スミシー・フィルム」(1998年)で笑いものにされてるのを観た時も(もっと自分の作品に愛情持ってやれよ)って思えて、寂しくなっちゃったくらい。   その他にも、色んな映画で「最低の出来」と揶揄されてるし「ショーガール」ならどれだけ馬鹿にして笑っても構わないって扱い受けてるけど、ちゃんと良い所もあると思うんですよね。  終盤、モリーを傷付けた男に復讐するノエミの姿には、スッとしたし……  階段で突き落とされたクリスタルが、ノエミを責めようとせず「私も昔、同じ事をしたから」と淡々と語るのも、彼女が背負ってきたドラマを窺わせるものがあり、味わい深い場面でした。  ヒッチハイクで始まり、ヒッチハイクで終わる構成も、綺麗でしたね。  ノエミが出会った男の中では、この最初と最後に出会う「スーツケースを盗んだ男」が一番マシだったんじゃないかと思えちゃうのも、皮肉な魅力があって良かったです。   本作を世間が絶賛してたら(そうかぁ?)とは思うけど、まぁ反発はしないだろうし、逆に嘲笑の対象にされてたら「そこまで悪くないだろ」と庇いたくなる。  そんな距離感の、不思議な映画です。
[DVD(吹替)] 6点(2021-11-25 22:29:03)(良:1票)
5.  ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期 《ネタバレ》 
 冒頭にて、初代同様に「All By Myself」が流れたりと、ちゃんとファンの事を意識して作ったのが窺える三作目。   とはいえ、2で最高のエンディングを迎えておきながら「やっぱりマークと別れました」と言われても納得出来ない訳で……  「無理矢理作った続編」感は否めなかったですね。  三作目まで「マークと他の男、どちらと結ばれるか?」で引っ張るのにも、無理があった気がします。   と、そんな具合にストーリー面には不満もありますが「痩せて熟女になったブリジット」を拝めるという意味では、充分に楽しめる映画。  ラブコメのヒロインが老けちゃうのって、基本的にはマイナスでしかないはずなんだけど、彼女に関しては作中の台詞通り「エロ年増」的な魅力もあって、良かったですね。  とうとう禁煙に成功したっていうのも感慨深かったし、誕生日ケーキに立てられた四十三本の蝋燭を見つめ、何とも言えない笑みを浮かべる姿も良い。  母としての愛に目覚め、無事に出産して赤ちゃんを抱く姿にも、本当に(おめでとう)と祝福する気持ちになれました。   ギャグの面でも可笑しい箇所が色々ありましたし、特に「スタバの店員」ネタはお気に入り。  ここ、過去作にも共通する「元ネタを知らずとも充分面白い」バランスに仕上げてあるのが、本当に良いと思いますね。  エド・シーランを知らなくても、ちゃんと話の流れで「彼は凄い歌手だったんだ」と理解出来るよう作ってある。  クライマックスにおける「愛と青春の旅だち」をパロった演出も、また然り。  本シリーズって、根底には「ダーシー様に恋する文学オタクの為の映画」ってのがある訳だけど、マニアックな笑いに走り過ぎず、色んな人が楽しめるよう配慮されているのが見事でした。   「夢は共有出来るのに、現実はズレてばかり」という台詞も切ないし、旦那候補のジャックも、女医さんも良いキャラでしたね。  前作におけるレベッカもそうでしたが、続編で出てくる新キャラにもきっちり魅力があるというのは、大いに評価したいところです。   その一方で、そんなレベッカが本作で再登場してくれないというのは寂しいんだけど……  まぁ、これは登場人物を絞る為に、仕方無かったのかな?  初代からの恋敵であるダニエルが出てこないのも「流石に三作連続で、同じ顔触れの三角関係やる訳にはいかないから」って事で、納得出来る範疇でした。   改めて考えてみると「マークの元妻であるカミラの存在感が薄過ぎる」とか「女上司のアリスがそこまで悪い人じゃないので、啖呵を切って辞職する場面に一作目ほどの爽快感が無い」とか、欠点も色々思い付いちゃうんだけど……  決定的にファンを裏切るような真似はしていないし、一定のクオリティはあったしで「不平不満」より「映画三本分かけて付き合ったブリジットへの愛着」が優っちゃいますね、どうしても。   マークと結婚して幸せになりましたって終わり方なのも「王道」というより「予定調和」なんですが、それが心地良い。  エンドロールの最後を飾る、家族三人の写真にも和みましたね。  良い映画であり、良い三部作だったと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2020-11-11 10:33:36)
6.  ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 《ネタバレ》 
 前作が「これから面白くなりそうって所で終わる映画」だったもので、自分としては嬉しい続編映画。   元々、ラブコメ映画の続編って代物自体が珍しい訳で、そういう意味でも新鮮でしたね。  映画一本分をかけて結ばれた背景があるもんだから、前半部分にてブリジットとマークがイチャついている様も、とても微笑ましく感じられて良かったです。   ジェーン・オースティンの「説得」が下敷きだったり、マークが濡れたシャツ姿を披露したりと、基本的には「元ネタありきの映画」なのですが……  個人的には、元ネタを知らずとも充分楽しめるんじゃないかと思えましたね。  例えば、タイの刑務所にて女囚達と一緒にマドンナの曲を歌う場面なんかも、原曲を知らずとも十分に楽し気な雰囲気が伝わってくると思いますし。  前作は「高慢と偏見」ありきの映画だな、って印象でしたが、本作に関しては「元ネタよりも面白い映画」とすら思えちゃいました。   妊娠検査の最中に、二人が喧嘩しちゃう件なんて、特に面白い。  ここ、ほんの数分間なのに「二人の価値観や、育った環境の違い」が如実に伝わる作りになってるんですよね。  ラブラブな二人だったのに、徐々に擦れ違いが生じて喧嘩別れしちゃう流れに、自然に繋がっていたと思います。   他にも「そろそろ不幸じゃない事が起こるはず」と言った途端に、ブリジットが空港で逮捕されちゃうとか「引きずり出せるならどうぞ」と挑発したダニエルを、マークが本当に引きずり出して外で喧嘩しちゃうとか、台詞の使い方が上手いんですよね。  前作以上に「ブリジットがダニエルを選ぶ訳無い」「マークと結ばれるに決まってる」と分かり切ってる内容なのに、それでも楽しめたのは、こういう細かい部分が面白いお陰だと思います。   新キャラとなるレベッカも、非常にキュートで良かったですね。  「ブリジット→マーク←レベッカ」という関係と思わせておいて、実は「マーク→ブリジット←レベッカ」という関係だと判明する件は驚きましたし、ストーリーの面白さにも凄く貢献してる。  色んな映画に出てくるレズビアン女性の中でも、五指に入るくらい好きなキャラになりました。  妙な仮定になりますけど、もし自分がブリジットだとしたらレベッカを選んだかも知れないな……って、そう思えたくらいに可愛かったです。  煙草を吸う理由は「もっと悪い事が起きる前に死ねると思うと、心が安らぐから」と語るブリジット父も良い味出してましたし、前作以上に脇役の魅力が光ってた気がします。   そんな本作の難点としては……  タイの女囚達に見栄を張る形で「マークには酷い事された。暴力を振るわれたり、薬漬けにされたり」と嘘を吐く辺りは、流石に引いちゃった事。  あとは、中盤にてマークに部屋の鍵を渡すのが伏線かと思いきや、全然違ってて拍子抜けしちゃった事とか、そのくらいかな?   ブリジットを主役にした映画は現在三本ありますが、自分としては本作が一番好きですね。  作中の台詞にある通り「ハッピーエンドの、その先」を描いた映画として、しっかり楽しむ事が出来ました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-11-11 10:22:20)
7.  フラッド 《ネタバレ》 
  これは……  「途中までは面白かったのに」ってタイプの映画ですね、残念ながら。    クレジットではモーガン・フリーマンが一番上になっているけど、物語の主人公は間違い無くクリスチャン・スレーター演じるトムの方って時点で、既に歪というか、どこかバランスが狂ってる感じ。  両者を好きな自分にとっては「夢の共演」と言える映画のはずなのに、この二人が手を組む流れも雑に思えちゃって、全然興奮しなかったです。  トムに関しては凄く好きなタイプの主人公で、スレーターが演じた役柄の中でも一番じゃなかろうかと思えるくらい気に入っていただけに、途中から(何でそうなるの?)って展開になってしまったことが、本当に惜しい。   繰り返しになりますが、途中までは面白かったんです。  町が水浸しになっている光景だけで、如何にも「非日常の世界」って感じがしてワクワクしちゃったし、狭い室内でのジェットスキーを駆使したアクションなんかも、目新しくて興奮。  牢の中にまで水が押し寄せ、溺死しそうになったところを間一髪で助かる場面なんて、本当にドキドキさせられましたね。  口喧嘩ばかりしているけど、実は強い絆で結ばれていた老夫婦の存在など、脇役の魅力も光っていたと思います。  「他人様の金を命懸けで守るなんて、下らん仕事さ」と自嘲していた相棒のチャーリーが、実は裏切り者だったと明かされる流れも、程好い意外性があって好み。   じゃあ、何で「残念映画」と感じてしまったかというと……  やっぱり、主人公のトムと、モーガン・フリーマン演じるジムが手を組む流れが、無理矢理過ぎるんですよね。  せめて、もうちょっと「トムVSジムVS保安官達」という三つ巴展開を描き、終盤にてようやく緊急避難的にトムとジムが手を組むとか、そういう形にした方が良かったんじゃないでしょうか。  本作の場合「金に目が眩んだ保安官達が、敵になる」というだけでも充分にサプライズ展開だったのに、そこにプラスして「トムとジムが手を組む」っていう展開までセットで押し通しちゃったもんだから、驚きを通り越して困惑に繋がってしまった気がします。   あと「引鉄をひいても弾が出ない」って展開を繰り返しやってるのも興醒めだし、スローモーションの使い方も雑だし、終盤になると脚本だけでなく演出まで一気にレベルが下がっていたように思えるんですが……  (制作現場で、何かトラブルでもあったの?)って心配になっちゃいますね。   途中までは本当(意外な傑作に巡り会えた)(しかもクリスチャン・スレーター主演じゃん! 最高!)ってテンション上がっていただけに、終盤のグダグダっぷりが、返す返すも残念。  スレーター好きな自分としては、彼が主演というだけでも満足度は高めだったのですが……  もうちょっとだけ頑張って「文句無しの傑作」「スレーターの代表作といえばコレ」と言わせて欲しかったという、そんな口惜しさの残る一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-26 05:37:51)
8.  エスター 《ネタバレ》 
 「オーメン」という有名過ぎる先例がある事が、良い目晦ましになっていましたね。  それによって、悪役であるエスターの勝利エンドとなる可能性もあるのでは? と思えたし、最後まで結末を読めないまま楽しむ事が出来ました。  この映画が2009年製であり、三年前にあたる2006年には「オーメン」のリメイクが公開されていた事を考慮すると、作り手側も意図的に「オーメン」とは異なる「悪が退治されて、めでたしめでたし」エンドを選んだんじゃないかな……って気がしますね。  DVD特典の未公開エンドでも、エスターが逮捕される事を示唆する終わり方でしたから。   そんな具合に、基本的には「面白かった」「充分に楽しめた」という一本なのですが、ちょっと気になる点もチラホラ。  まず「襲われるかと思ったら、実は大丈夫だった」という肩透かし演出を何度も繰り返す点に関しては、正直キツかったです。  作り手の意図としては「本当に襲われちゃう場面」の衝撃を強める為、あえてブラフを重ねておいたのかも知れませんが、流石にこれだけの頻度でやられると(もういいよ……)とゲンナリしちゃいましたからね。  この辺りの「ハッタリの積み重ね」を、もっと少なめにしてもらえたら、より自分好みな映画になっていた気がします。   エスターのジョンに対する愛情が、本物だったのかどうか曖昧なのも、クライマックスにおける集中力を削ぐ効果があって、勿体無かったです。  「エスターなりに本気でジョンを愛していた」でも「単なる性欲に過ぎなかった」でも、どっちでも構わないから、ハッキリした描き方をして欲しかったんですよね。  仮に前者の場合なら、エスターが彼に惹かれるキッカケを丁寧に描くべきだったと思うし、後者の場合なら、彼に拒まれた際にあんなに泣く事は無いだろうと思えるしで、どうも中途半端でした。    翻って、良かった点はといえば……やはり、エスター演じるイザベル・ファーマンの熱演が挙げられそう。  劇中における「三十三歳の素顔」は特殊メイクなのでしょうが、本当にそちらが素顔なんじゃないかって思えるくらい、劇中のキャラクターと一体化していましたからね。  ジュースを欲しがって、それを拒否されたら寂しそうに俯き大人を騙す場面や「殴る?」と挑発する場面など、幼い子供という立場を活用する「狡い大人」としての姿に、真に迫った説得力があったんだから、お見事です。   そんなエスターの正体が明かされていく流れを、丁寧に描いている点も素晴らしい。  最初の出会いや、養子としてコールマン家に貰われていく序盤の段階では「天使のような良い子」という印象を与えた上で、少しずつ「この娘、どこかが変だ」と思わせていく構成になっているんですよね。  特に感心させられたのが「パパに構って欲しがるダニエルと、そんな彼に見せ付けるようにパパに抱き付き甘えるエスター」という場面。  ここって、普通に考えれば「子供っぽい独占欲の発露」でしかないはずなのに、観ていて微かな違和感を覚えちゃうっていう、そのバランスが絶妙なんです。  ブレンダを突き落とす場面や、尼さんを殺害する場面で一気に衝撃を与える形ではなく、事前にそういった伏線を張っておき、猜疑心や恐怖心を徐々に高めていく形にしたのは、本当に上手かったと思います。   ケイトがアルコール依存症、マックスが聴覚障碍者であるという設定に、きちんと意味のある脚本だった点も良いですね。  特に前者は「ケイトが酒の誘惑に打ち勝った事を観客は知っているのに、酒を飲んだんだろうとジョンに責められてしまう」という展開への繋げ方が上手くて、本当にやるせない気持ちになるし、その分だけケイトを応援したい気持ちにもなる。  また、それによって「妻のケイトはエスターを疑っているのに、夫のジョンはエスターの言う事を信じている」という状況設定にも、説得力を与えていたと思います。   エスターが細かく肉を切り分けて食べる事すら伏線だった(歯がボロボロだから細かく切る必要がある)のには感心しちゃったし「薔薇のプレゼント」「万力で自らの腕を折る」場面なんかも、ショッキングで良かったですね。  白い雪原に、黒いコート姿のエスターが立っているコントラストの美しさには見惚れちゃったし「光を当てる事によって、絵の中に隠された別の一面が見えてくる」場面の衝撃も、忘れ難い。   自分は冒頭にて「オーメン」を「有名過ぎる先例」と評しましたが、この「エスター」もまた、今後「悪の子供」をテーマにした映画が製作される度に引き合いに出されるような……  そんな、スタンダードな品になっていく気がします。
[DVD(吹替)] 7点(2019-09-27 12:03:22)(良:3票)
9.  フィリップ、きみを愛してる! 《ネタバレ》 
 「愛」と「脱獄」を描いた映画として、非常に良く出来ていると思います。   始まって十分程で「言い忘れてたけど、俺はゲイ」と主人公が告白し、本作における「愛」とは「同性愛」であると分かるんですが、それでも戸惑いは最小限で、楽しく観賞出来ちゃうんですよね。  冒頭、自分を養子に出した母親との対面シーンだけでも「ジム・キャリーだからこその魅力」を堪能出来ましたし「可憐な乙女」としか形容しようのないフィリップ・モリスを演じ切ったユアン・マクレガーも、これまた素晴らしい。  この二人が主演だからこそ「男同士のカップル」という際どい役どころでも、自然に感情移入出来た気がします。  ・それまでの恋愛対象は髭を生やしたタイプだったのに、女性的なフィリップに主人公が一目惚れするのには戸惑う。 ・「叫び屋」を殴らせた件でフィリップが感激しちゃうのは、違和感あり。 ・ゲイの男性って、ゴルフを毛嫌いするのが普通なの?   などなど、不可解さを感じる部分もありましたが、それらを差し引いても面白い作品でしたね。  フィリップと出会う前の恋人であるジミーが、死の床にて「僕は生涯の恋人と出会ったけど、君は未だ出会ってない」と語り、自分の死後に出会うパートナーを大切にして欲しいと訴える場面は、特に感動的。  作中にて「フィリップ、きみを愛してる」と告げるシーンが二回ある訳だけど、最初の場面は思い切りドラマティックに叫び「燃え上がる愛」を感じさせて、二回目の場面では「愛の終わり」を連想させるような、静かな雰囲気の中で呟かせるという対比も、凄く良かったです。   そんな「愛」に比べると「脱獄」の方は添え物というか「フィリップに愛を伝える為には、脱獄する必要がある」という程度の描かれ方なんですが、これがまた滅法面白いんですよね。  最後の大技と言うべき「エイズ詐欺」も良かったけれど、ハイテンポで描かれる「判事の書類を偽装して保釈させる」「刑務所内で働く医療スタッフに変装して逃げ出す」「セクシー(?)な職員に変装して逃げ出す」という三つの脱獄シーンも、同じくらいお気に入り。  本当に、あの手この手で刑務所を抜け出そうとする様が愉快で、痛快でさえありました。   「約束を守る」事に拘って、看守達に止められても最後まで音楽を流そうとする囚人仲間も良い味出していたし、食堂にて特別に豪華なメニューを食べる事になり、フィリップが喜んでいる場面なんかも印象的。  ラストシーンにて、愛しい彼を忘れられない主人公が、再び脱獄騒ぎを起こし、笑いながら走る姿で終わるというのも良かったです。   実際の「フィリップ・モリス」が主人公の弁護士役としてカメオ出演している為「決定的な嘘をつく訳にはいかない」という配慮もあってか、最終的にフィリップ側は主人公に愛想をつかしたとしか思えない作りになっているのは、悲しいけれど……  それもまた、本作の魅力の一つと言えそうなんですよね。  実話ネタだからこその、ハッピーエンドになりきれない切なさが、物語に上手く作用していたように思えます。   たとえ愛を否定されたとしても、それでも求めずにはいられない男の愚かさ、滑稽さを、空に浮かんだ不思議な雲が、優しく見守っている。  この映画に相応しい、惚けた魅力のある終わり方でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-09-14 10:09:36)(良:1票)
10.  ツーリスト 《ネタバレ》 
 こういった旅行気分を味わえる映画って好きですね。  列車に、船に、豪華なホテルと、観ているだけで楽しくなっちゃいます。   男性ならアンジェリーナ・ジョリーと、女性ならジョニー・デップとのロマンスを疑似体験出来るようにも作られており「恋」と「旅」とを求めて観賞するなら、まず満足出来る一品かと。  その一方で、サスペンスとしての魅力は薄めであり、あんまりハラハラドキドキはしなかったのですが、本作の場合、このくらい緩めの緊迫感が丁度良かったように思えますね。  なまじ血が飛び出したり、身の毛もよだつような恐ろしいシーンがあったりしたら、せっかくの「程好いバランス」が崩れてしまっていた気がします。   主人公カップルが出会った際に、ジョニー・デップ側が「ごめんなさい」と謝っており、それが後の伏線になっていたりする辺りも上手い。  所謂「主人公こそが犯人だった」オチな訳ですが、犯人といっても悪党から金を盗んだ義賊に近い立場である為、受け入れ易い形になっているのですよね。  また、アンジェリーナ・ジョリー側も「実は警官だった」という事が中盤にて明らかになる為「一方的に彼女を騙して、酷い男だ」という印象には繋がらず、自然な仕上がりになっていたと思います。   目立った難点としては、数学教師という設定が活かされていない事。  そして、金庫を開けて正体をバラすシーンにて、周りに警官が一人も残っていなかったのが、都合良過ぎるように思えた事でしょうか。  前者に関しては、金庫の暗証番号を数学の知識を駆使して解き明かす(つまりは、ヒロインと警察に最初から暗証番号を知っていた訳ではないと思わせる為に演技する)展開にしても良かったんじゃないか……なんて思いましたね。   この手の騙し騙されモノとしては珍しく、後味爽やかなハッピーエンドであった点については、凄く好み。  緩くて温めなロマンス旅行映画として、しっかり楽しめた一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-04-19 18:55:08)(良:1票)
11.  -less [レス] 《ネタバレ》 
 序盤の時点で「あぁ、これは死後の世界か何かに迷い込んでいるんだな」と気が付かされる訳ですが、そんなネタバレ状態でも楽しめる一品でしたね。   七時半で車内の時計が全て止まっている件などは「つまり、その時刻で事故が起こった訳か」と推測させてくれるし「あの白い服の女性は誰?」(=事故の相手となった車の運転者)など、適度に謎も残してくれているので、一番大事なオチが分かっていても、細かい部分の答え合わせを行えて、退屈しないという形。  ラストにも分かり易く死神風の男が現れるし、日本で言うところの「怪談」映画だったのだなと納得して、モヤモヤを抱えずに観終わる事が出来ました。   とはいえ「怪談だから整合性とか気にしなくても良いんだよ」感が強かった辺りは、難点と言えそう。  登場人物の行動が不自然で、ちょっと感情移入し難いものがあったのですよね。  例えば、主人公のマリオンだけが車を降りて夜道に一人きりになる際に、彼氏も一緒に降りない理由が不可解だし、マリオンの弟が野外で唐突に自慰行為を始めるのも理解不能。  運転手である父親が飲酒したりなど、色々と道徳的、あるいは宗教的なメッセージが込められているのかも知れませんが、それらを読み解く楽しさよりも、置いてけぼりな気持ちの方が強かったです。   そもそも、隠されたテーマが云々と言い出したら「去年は高速道路を使ったので事故を起こさなかった。つまり、この映画には『皆も高速道路を使おう』というメッセージが込められているんだ」と言い張る事だって出来そうな感じなんですよね。  深読みしたら、作中の延々と続く道路同様に、キリが無さそう。   一家全滅ではなく、主人公だけは助かっているので、後味が悪いという訳ではないのですが「最高のおじいちゃんになる」という、もはや叶わぬ願いが書かれたメモが拾い上げられるシークエンスと、実は去年のクリスマスの時点で笑顔だったのは父親と娘だけ(しかも娘の方は作り笑いっぽくて、家族全員が違う方向を見ている)と明らかになる写真を映し出して終わる辺りには「悪趣味だなぁ……」とゲンナリ。  総合的には楽しめた時間の方が長くても、こんな具合にラストが好みでなかったりすると、評価が難しくなってしまいますね。   彼氏が「今夜プロポーズするつもり」と語った途端に、別の場所でマリオンが「彼に別れ話を告げる練習」をしている姿を映す演出は上手いと思ったし、中弛みしそうなところで「目に見えて狂い出す母親」という展開にして、観客の興味を維持させる辺りも、感心させられるものがあります。  「実は両親揃って不倫していた」なんて下世話な真実を明かしてくれるのも、作り手のサービス精神が伝わってきましたね。   観ると幸せな気持ちになれるという類の映画ではありませんが、平均以上の満足感は与えてもらったように思います。
[DVD(字幕)] 6点(2017-02-19 18:24:13)
12.  アンジェラ(2005) 《ネタバレ》 
 純然たる「男にとって都合の良い映画」であり、観ている間ずっと居心地の悪さを感じてしまいましたね。  「お前だって本当は、こういう体験してみたいだろう?」「こんな彼女が欲しいだろう?」と作り手に囁き掛けられているかのようで、天使というよりも悪魔的な印象を受けてしまいます。   だって、この映画の主人公ってば、作中で全く努力しているようにも成長しているようにも思えないんです。  ただ「日頃から嫌いだった奴に不満をぶちまけた」「素敵な彼女が出来たので、彼女に好きだと言った」程度の事で、それだけでさも「勇気を出して、よくやった!」と、難事を成し遂げたかのように作中で肯定されているのだから、違和感が大きかったですね。  特に前者に関しては深刻で、天使の助けを借りているだけなのに、偉そうに上から目線で借金相手と話す主人公を見せられるのだから、たまらない。  そんなダメ男っぷりに母性本能をくすぐられる女性もいるのかも知れませんが、同じ男としては「情けないやっちゃなぁ」と、呆れる思いが強かったです。   作中で常に右手をポケットに隠しているのも「引っ込み思案な気持ちの寓意?」「最後の最後で右手を出してアンジェラを止めるなり、抱き締めるなりする為の伏線?」と思っていたら、単に役者さんの右手が不自由だからそうしていただけというのも、正直ガッカリ。  身体的障害も特徴の一つなのは間違いない訳だし、それならそれで、もっと「ポケットに右手を隠している」という役者さんの特徴を、作中でも活かして欲しかったところですね。  この「最初から最後まで主人公はポケットに手を隠したまま」という現象が「結局、主人公は何も変わっていないし何も成長していない」という印象にも繋がってしまった気がします。   こういう「男に都合の良い映画」は決して嫌いではないのですが、なんというか上手く騙してくれないと「都合良過ぎるだろ!」ってツッコんじゃうのですよね。  甘やかして癒してくれる女性は好きだけど、度が過ぎると「いや、赤ん坊じゃないんだから」と反発してしまうというか……  この辺りは、匙加減が難しいところだと思います。   天使の像とヒロインとを重ね合わせるショットなど、リュック・ベッソン監督のオシャレな映像センスは感じられましたし 「他人に愛されないと、自分を愛するのは難しい」  という台詞などは、魅力的だったと思います。  難しく考えたりせず、モノクロの甘ったるい世界観に身を委ねさえすれば、きっと心地良い思いが出来たのでしょうけれど……  自分としては、どうも馴染めなかった一品でした。
[DVD(吹替)] 3点(2017-02-07 22:55:15)
13.  アタック・ザ・ブロック 《ネタバレ》 
 この手のエイリアン物であれば、モブとして殺されるだけで終わるであろう「不良少年」にスポットを当てたのは新鮮で、面白い発想。  刀を背負った「ニンジャ」スタイルの主人公というのも、如何にも海外の映画オタクの心を掴みそうな感じです。   ただ、冒頭にて「女性を刃物で脅して金品を奪う」という姿が描かれており、そこで(えぇ、こいつらが主役なの?)とドン引きしてしまって、結局最後まで感情移入する事が出来ず、残念でしたね。  そもそも作中の情報から判断する限り、黒いエイリアン達が人々を襲う理由は「白い小さなエイリアンを主人公に殺された復讐」としか思えない訳で、どうにも観ていて居心地が悪い。  そのキッカケとなる「エイリアンの殺害」にしたって「正当防衛」「事故」ではなく、わざわざ逃げたのを追いかけて丁寧に殺しているんだから、情状酌量の余地は無し。  作中でも「こうなったのは俺のせい」と言っているのだから、作り手としても確信犯的にそういった流れにしたのでしょうが、それにしてはラストにて主人公が英雄視されちゃっているし、どうにも不可解なのですよね。  「この主人公も、実は親に愛されない可哀想な子だったんですよ」とばかりに子育てを放棄されていた事が示唆されても、それで悪事が正当化されるとも思えず、何だか中途半端な印象を受けました。   墜落死するかと思われた主人公が、国旗に捕まって助かるというオチからしても「可哀想な不良少年を国が救ってあげるべき」というメッセージが込められているのかも知れませんが、本人が非行を反省する描写も殆どありませんし、押し付けがましいものを感じちゃいましたね。   シンプルな黒いエイリアンの造形は好みでしたし、強力過ぎない武器を用いて、狭い団地内で戦うという内容自体は、とても良かったと思います。  「ロケット花火を用いてのガス爆発」という敵の倒し方も痛快で、観ていて気持ち良い。  それだけに、主人公にとって都合が良過ぎる世界観に付いていけなかった事が、勿体無く思える一品でした。
[DVD(吹替)] 4点(2016-10-24 15:55:22)(良:1票)
14.  ディーバ 《ネタバレ》 
 1981年という制作年度を考慮すれば、非常に御洒落でスタイリッシュな映画なのだと思います。   主人公が暮らしている部屋なんて、如何にもな「秘密基地」テイストが感じられて、憧れるものがありましたね。  コーラの缶にガソリン臭いチューブを差し、それをストロー代わりにして飲んでみる少女のシーンなんかも、妙にお気に入り。   青と赤が巧みに配された画面。  そして、聴くだけで鳥肌が浮かぶような歌声と、視覚的、聴覚的にもセンスの良さを感じさせる本作。   ただ、ちょっと主人公が情けなさ過ぎるというか、変質的なストーカーにしか思えなかったりして、今一つ感情移入出来ないものがありました。  映画序盤における彼の行動はといえば、恋い焦がれる歌姫のコンサートを無断録音したり、衣装を盗んだり、その衣装を売春婦に着てもらってから一夜を共にしたりと、どう考えても単なる変態さんなのです。  にも拘わらず、演じている役者さんが爽やかで繊細な二枚目過ぎるせいで、やたらと嘘くさい。  主演俳優のルックスが優れているに越した事はありませんが、それにしても、本作のような主人公の場合、もう少し粘着質な感じがあった方が、キャラクターにリアリティが生まれたのではないか、と思います。   また、主人公とヒロインの二人が結ばれるまでの過程も、あまり説得力が感じられなかったりして、残念。  海賊版の存在を「泥棒、強姦です」「軽蔑します」と言い放つような歌姫のヒロインと、実は彼女の声を無断録音してしまっている主人公が結ばれるという「意外な結末」ゆえに、観ていて(えっ? 何でくっ付くの?)と思わされてしまった気がしますね。  劇中にて、主人公が目覚ましい活躍をして自信を手に入れるとか、死線を越えて生まれ変わるといった事もなく、映画序盤から特に性格なども変わっていないのだから、序盤の彼の罪の「帳消し」感が生まれてこないのです。  その結果、ヒロイン側の一方的な優しさによって「主人公の過ちを許してくれる」「求愛を受け入れてくれる」という形になっており、ちょっとばかし男性にとって都合の良過ぎる女性像に思えました。  これならば、最初から主人公をもっと誠実で善良な男として描くなり、ヒロインを海賊版には拘らない人物として描くなりしておいた方が、二人が結ばれる結末に対しても、違和感が生まれずに済んだかと。  「本来結ばれるはずのない二人が結ばれるストーリー」という難しい題材にして盛り上げた以上は、ハッピーエンドにする為の難易度も上昇してしまうのだな、と思わされました。   それでも、ラストシーンにて、生まれて初めて客観的に「自分の歌声」を聴く事になるヒロインの姿には、胸を打たれるものがありましたね。  彼女が彼の罪を許し、愛を受け入れた理由は「自分の歌声の素晴らしさを教えてくれたから」なのか、それとも別の理由か……などと考えるだけでも、色々と楽しい映画でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2016-08-18 11:21:35)
15.  恋と愛の測り方 《ネタバレ》 
 明るいラブコメ映画は好きだけど、こういう真面目な恋愛映画は苦手だなぁ……と、自分の嗜好を再確認させられましたね。  丁寧に作られているし、主人公の感情の機微を描いたという意味においては質の高い作品なのでしょうが、どうにも好みの内容とは違っていた為、楽しむ事が出来ませんでした。   男女の浮気の違いを描いている点は興味深いのですが、どうも女性贔屓な目線であるように思えてしまった点も、マイナスポイント。  夫は妻を愛しているのに、一時の欲情に流されて同僚の女性と浮気してしまう。  そして妻の方はといえば、夫と同じくらい愛している元浮気相手の男性と心を通わせ合うも、最後の一線は越えていない。  しかも、夫の浮気相手となる女性には殆ど好意的な描写が無かったのに、妻の浮気相手である男性の方は如何にも同情的に描かれているものだから、やりきれません。  「性欲に駆られた夫の浮気は醜い」「それに比べて妻の浮気は悲劇的で美しい」という対比が窺えてしまい、どうしても賛同する事が出来ませんでした。   観賞後に調べてみたら、監督さんは女性であったらしく、何だか妙に納得。  男性贔屓な内容の映画を観て、女性が呆れてしまうのと同じような現象が、今回我が身に起こってしまったみたいです。   そんな風に、今一つ魅力が分からなかった品なのですが、そんな自分でもハッとさせられる場面も盛り込まれており、作り手の力量を感じさせてくれましたね。  特にラストシーン。外出用のハイヒールが投げ出されているのを映し出し、その後の夫婦の衝突を予感させる終わり方には、素直に「上手いなぁ」と感心。  「あの後、どうなったと思う?」「やっぱり旦那に浮気バレたよね」「最後の吐息からするに、奥さんの方から告白しそうな気がする……」  などといった具合に、観賞後にアレコレ話し合う楽しみも与えてくれる映画でありました。
[DVD(吹替)] 4点(2016-06-17 07:06:09)
16.  ザ・インタープリター 《ネタバレ》 
 ニコール・キッドマンという人は、本当に美しい女優さんだなと、しみじみ実感。   主人公二人が共に悲劇的な過去を背負っている為、互いに慰め合っている内に恋愛感情が芽生えていく流れかな……と予想していたら、それを裏切ってくれたのが気持ち良かったですね。   冒頭のサッカー場での、少年達による銃殺シーンも衝撃的でしたし、中盤に起きるバス爆破シーンの迫力も見事。  実は一連の暗殺事件は、大統領側による狂言だったというオチも面白いと思います。   ただ、そういった要素の一つ一つは魅力的だと思うのですが、映画全体として考えた場合、少し贅沢過ぎたようにも感じました。  それというのも、立て続けにスケールの大きい事件が起こってしまうものだから、何やら置いてけぼり感覚があったのです。  なまじリアルな作風で、主人公達の能力も等身大であるがゆえに 「こんな事件、本当に彼女達で解決出来るの?」  という疑問符が浮かんでしまい、どうも画面に集中する事が出来ませんでした。  ニコール演じるシルヴィアが、大統領に銃を向けるクライマックスに関しても 「ここまで感情移入させて描いてきた主人公に、要人殺害の罪を背負わせたりはするまい」  と、何処か冷めた目で見つめてしまう事になったのが、非常に残念。   ラストにて読み上げられる死亡者リスト。  そして「誰も待っていない、思い出だけが残る故郷」に帰ると告げるシルヴィアの姿は、とても印象的で良かったですね。  自分にとっては、少し歯車が噛み合いませんでしたが、丁寧に作られた真面目な映画だと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2016-05-26 19:17:40)
17.  おとなのけんか 《ネタバレ》 
 色々とスキャンダラスな話題も多い監督さんですが、やはり才能のある人なんだなぁ、と実感させられましたね。  子供が原因で親達が喧嘩するという、それだけの内容で映画を一本撮ってしまうのは凄い事だと思います。   ただ、完成度の高さに唸らされる一方で、どうしても「面白い映画」とは思えず、残念でした。  何せ本当に延々と大人達が喧嘩しているだけですからね、この映画。  子供時代、夫婦喧嘩する両親を目にした時の居心地の悪さを思い出してしまいました。   ポイントとしては、やはり登場人物が男女四人だったのが大きいかなと。  この展開であれば、途中で絶対に夫婦同士の和解、仲直り、相互理解が訪れるはずだと予想していたのですが、それは微妙に外れ。  互いに理解し合うキッカケが掴めたかと思われた矢先に、結局はその二人で結託して、他の二人を攻撃するという、男二人VS女二人の構図となってしまう訳です。  その変化が面白いとか、国家間の争いにも通じる皮肉になっているとか、そういった解釈で楽しむ事も出来たのでしょうが、自分としては「まだやるのかよ!」と呆れてしまう気持ちが強かったですね。   そんな中で、子供達はとっくに仲直りしている事、安否が気遣われたハムスターも元気である事が分かるエンディングに着地する辺りは、お見事。  それでも、肝心の大人達は罵り合ったままで終わった以上、どうにもスッキリしない後味となってしまいました。  「戦争映画を愉快痛快な内容に仕上げるのは間違っている」という主張が存在しますが、この映画に関しても「戦争もとい喧嘩を描いた映画なのだから、観ていて不愉快なのは当たり前」という事なのかも知れませんね。  映画が終わった後の世界では、子供達と同様に親達も仲直り出来たと思いたいところです。
[DVD(字幕)] 4点(2016-05-16 05:26:41)(良:1票)
18.  あるいは裏切りという名の犬 《ネタバレ》 
 ダニエル・オートゥイユといえば「メルシィ!人生」などのコメディ映画の印象が強かっただけに、今作には衝撃を受けました。  とてもシリアスであり、それ以上にシンプルな力強さを備えた刑事ドラマ兼犯罪ドラマであったと思います。   邦題は格好良いけれど、そこまで「裏切り」に重点が置かれた映画とも思えなかったので、観賞後には少し違和感を覚えましたね。  けれど自分のように、このタイトルのお蔭で興味を持つ方も多いでしょうし、プラマイゼロ、あるいはプラスの方が上、といった感じでしょうか。   主人公レオの存在感も素晴らしかったのですが、個人的に圧倒される思いがしたのは、悪役であるクランの方。  このキャラクターは、一概に「悪役」とは言い切れないくらいの深みがあるんですよね。  元々は主人公の親友だったのに敵対してしまう事になるとか、主人公の妻も交えた三角関係だとか、よくよく考えてみれば王道で、ありがちな設定ばかりなのだけど、観ている間は凄く新鮮な気持ちを味わえました。  理由を分析してみるに、恐らくは演じている役者さんの「うわぁ、こいつぁ如何にも悪そうだ!」という風貌と立ち振る舞いに、単純な「嫌な奴」であると思い込んでいたところで、少しずつ「善人」の名残を見せてくれるというギャップに、すっかり参ってしまったのでしょうね。   特に唸らされたのが、囚人となった主人公が娘を抱きしめられるように、そっと手錠を外してみせる場面。  そこには確かに善意や友情を感じられる一方で、同時に主人公の怒りを和らげるのが目的の罪滅ぼし、醜い誤魔化しといった負の感情も伝わってきて、非常に味わい深いものとなっています。  この映画で、最も印象に残るシークエンスでしたね。  こういった物語では、単なる背景設定だけで終わってしまう事も珍しくない「今は争っている二人だが、元々は親友でありパートナーであった」という要素を、実に上手く活用していたと思います。   そして出所した主人公が裏切り者に制裁を加えるべく動き出す終盤で、映画は最高の盛り上がりを見せる……と言いたいところなのですが、あまりにも展開が早過ぎて、あっさりと決着を付けた印象があり、少々残念でした。  確認してみたら、映画が始まって「主人公の逮捕」に至るまでが約一時間。  そこから二十分ほどで「主人公の出所」。  そして残り二十分で結末まで辿り着く訳だから、どうしても後半が駆け足に感じられます。  もう少し、主人公が刑務所に入る前と後のバランスを考慮して、多少上映時間が伸びるのを覚悟の上で前後の尺を同じくらいにしても良かったんじゃないかな、と思う次第。   ラストシーンに関しては「これって主人公も死ぬんじゃない?」と予想していた中で、娘と共に和やかなハッピーエンドを迎えてくれて、嬉しかったですね。  あぁ、そうか、だから主人公に復讐の引鉄をひかせなかったのか……と、しみじみ納得させられました。  亡き妻の仇に対して、自ら手を下す姿だって、そりゃあ絵になるかも知れませんが、残された娘の事を思えば、やはり主人公の決断は正しかったのでしょう。   静かなエンディング曲も相まって、ノワール映画とは思えぬほどに、優しい余韻を与えてくれる映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2016-04-25 21:34:13)
19.  ニルヴァーナ 《ネタバレ》 
「私達は水槽の金魚さ。水槽を海だと思い込まされている」 「そこも現実っていうゲームの世界じゃないの?」   などなどの台詞に痺れてしまう身としては、観賞中、とても楽しい時間を過ごせました。  現実と虚構の境界線が曖昧になってしまう作風はフィリップ・K・ディックの面影を感じさせる一方で、後代のサイバーパンク映画に与えた影響も大きいように思えますね。   モノクロ世界の中で一部だけカラーを用いて、その存在を際立たせる手法については、幾つかの映画で目にしてきましたが、この作品は、その使い方が凄く好みなんです。  特に、色が流動的に変化する口紅とドレスの演出などは、全体に漂うオリエントな猥雑さと、それに伴う色っぽさを引き立ててくれていましたね。  湯気を浴びただけで、すぐに曇って調子が悪くなってしまうカメラアイなんかも、妙に説得力があるというか「本当にそんな機械が存在しそう」というSFマインドを、大いに刺激してくれます。  主人公を手助けしてくれる仲間のジョイスティック、ヒロイン格のナイマも魅力的なキャラクターで、三人でハッキングを行うシーンには、実にワクワクさせられるものがありました。   はてさて、こんな映画を撮ったのは一体誰なんだ? と調べてみたら「ぼくは怖くない 」と同じ監督さんだと分かって、大いに納得。  あちらも素晴らしい傑作でしたからね。   上述の通り、全体的に好印象の映画なのですが、気になる点としては、もう一人の主人公とも呼ぶべき存在であろうソロが、作中であまり活躍してくれなかった事が挙げられそう。  彼は仮想世界にいる「囚われのお姫様」ポジションであるのだから、現実世界の主人公ジミーの行動原理でさえあれば良いのだ、という解釈も可能でしょう。  ただ、それにしてはラストシーンにて 「私達は勝ったのか?」 「あぁ、勝ったよ」  という小粋なやり取りを交わす件など、まるで二人が共に戦った相棒であるかのように描かれているのが、少し不自然に感じられたのですよね。  それならば、終盤にてソロも「ニルヴァーナ」の消滅に役立つような見せ場が欲しかったな、と思ってしまいます。   ソロと別れを交わした後、ジミーがドアに向かって発砲した後のシークエンスに関しては、色々と解釈の分かれるところでしょうね。  自分としては「ジミーの死後、ナイマの中に挿入された記憶チップという形で、二人は一つになれた」という一種のハッピーエンドなのだと考える次第。  その方が、勝者となった主人公には相応しい顛末かと。   劇中にて印象的に語られていた「降りながら消える雪の一片」が、スタッフロールにて描かれる終わり方なども、とても良いですね。  こういったビジュアルセンスって、凄く好き。   素敵な余韻を与えてくれる映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2016-04-14 12:23:01)
20.  トランスポーター 《ネタバレ》 
 これは度胆を抜かれた映画ですね。   「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」でお馴染みの顔だったジェイソン・ステイサム。  彼が主演の映画という事で、軽い気持ちで観賞してみたら、予想を遥かに上回るアクション濃度。  特に終盤の上半身裸になっての格闘シーンは圧巻で 「えっ? この人こんなに強かったの!?」  と、画面の中で躍動する彼の姿に、呆気に取られ、次いで笑みが込み上げてきたのを覚えています。   序盤に繰り広げられるストーリーや、主人公とヒロインの設定に関しては 「あぁ、リュック・ベッソンだなぁ……」  としか思えず、完全に油断していただけに、今作で明かされた「強さ」というステイサムの強烈な個性に、痺れてしまいました。   今は日本でも気軽に購入出来るようになったジュースのオレンジーナを、作中でヒロインに飲ませてあげるシーンなんかも印象深いですね。  ラストも囚われの人々を開放するのと同時に、スパっと切れ味良く終わるのも好印象。  エンディング曲も好みでしたし、気持ちの良い時間を過ごせた一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2016-04-12 08:04:04)(良:1票)
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