1. カトマンズの男
半世紀前のフランス映画にこんなに力いっぱい振り切れたギャグシネマがあったとは。なんというか開いた口がふさがらないほどのはっちゃけぶり。海に落ちたベルモンド、なぜかクレーンで吊り上げられたと思ったら船の排気筒に突っ込まれて真っ黒け。コロコロコミックみたいだ。 そんな程度(失礼)のずっこけを撮りに本当にわざわざカトマンズへロケしに行く、その熱量には畏れ入ります。カトマンズはタイトルにあるけれどほんの少しの滞在のみ。むしろ香港の濃ゆい街が目に刺さって金と赤のハレーションを起こしそうです。 ウルスラ・アンドレス、当代きっての人気女優もよく走ってお馬鹿映画を盛り立てています。大笑いはできなかったけど、制作の熱さがひしひし伝わる映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-18 16:23:55) |
2. かくも長き不在
《ネタバレ》 静かな映画である。1960年、パリ。スマホはおろかFAXだって無い、今よりずっと社会全体がゆっくりだった時代。さらに季節はバカンスを迎えて通りに人がいなくなり、静まり返った日常にふいと現われた行方不明の夫。 妻は一人必死に記憶を呼び覚まそうと奮闘する。性急にならぬよう、自制しながら。レコード音楽がゆるゆると流れ、妻の激しい一念とは裏腹に、何もかもがスローにおっとりと描写される。1カット固定でじっとしているシーンも多いし、オペラを一曲聴かされるのも退屈で苦痛に感じる人もいるだろう。 だけど、それまでのどっちつかずのもやっとした空気がラストシーンで一変するのだ。妻の努力が、周囲の気遣いが無に帰すあの瞬間。どんなに必死に思いをかけても、彼の脳裏に甦るのは収容所での苛酷な記憶なのだ。 かくもかくも、その不在の長きことに胸を衝かれる、非情のラストなのでありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-18 23:45:52) |
3. 鑑定士と顔のない依頼人
《ネタバレ》 この監督とソリが合わないのはなぜか、この映画を観てわかった。この人の恐るべきユーモアの感性の無さだ。いつでも質感のしっとりとした小道具と背景で画を美しく撮り、芝居のしっかりしてる役者を使って雰囲気は極上だ。だけど、詐欺サスペンスの話で、してやったりやられたりといった爽快感が無くてどうするんだ。年寄りをマジ破滅に追い込んでどうする。 大問題なのは、オールドマンの財産だけでなく真心まで粉砕したってことだよ。押し込み強盗で絵画だけごっそり盗られた方が全然ましだ。 贋物の中にも本物がある=偽の愛でも真実かもしれないと心のどこかでクレアを待ち続けるオールドマン。でも来訪するのはかつての秘書のおじさんのみ。落胆のような絶望のようなオールドマンの表情。 一体どうしてくれるのか。ドレスや宝石をみつくろい、嬉々として自宅へ帰るオールドマンの姿を思い出すと私はこの上なく辛い気持ちになるんだが。 映画を観終わって、苦い感想を抱くものがあってもいい。けれど人の心の弱くて優しい部分を踏みつけにして可とする脚本などセンスが良いものではないと思う。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-10-19 00:13:29)(良:3票) |
4. 隠された記憶
《ネタバレ》 うわー、出たーハネケ節。ヒトの心の暗部を突いてくるのが得意な監督だ。観てるこっちもすっかり気分が沈む。すっきり答えを出したりしない監督だと判って観ないと、「で、何!?」と憤慨すること必至。劇場用予告版とかああいう編集はどうなんだろう。 昔の行為の負い目にとらわれて、一人でパニックになって結果無用に人一人を死に至らしめた男。子供の頃にした自己中行為によって派生した罪を一生抱えていくはめになるわけで、監督はものすごく性格暗いと思う。猟奇ホラーかとも思わせる雰囲気を纏っていて、物語の吸引力はハンパない。でもでも、実はそんなんじゃないんだ。ラストカットで現われるあっけない真実。・・監督性格暗いよ。 [DVD(字幕)] 7点(2014-01-20 22:39:52)(良:1票) |
5. カットスロート・アイランド
やたら火を噴く火薬がラスベガスの海賊ショーみたい。せーの、でジャンプしてスイッチON、どかーん、みたいな。敵味方入り乱れて剣で戦うシーンのキレの無さにはいらっとする。JACから借りてこい。なにもジーナがこんな女マッチョみたいな役やんなくてもさ。この監督と結婚してから服のセンスもなんかおかしいぞ、と思ってたのだけど、この作品直後に離婚したと聞いて他人事ながら納得。 [地上波(吹替)] 4点(2011-11-27 14:59:32) |