21. SPL/狼よ静かに死ね
サモ・ハン出演作品を数多く観てきましたが、初めて「泣いた」。"因果応報"をテーマとした香港ノワールのドラマ性とマーシャルアーツが見事に融合、そしてなんといってもクンフーアクション映画ではなおざりになりがちだったディテールへのこだわり、ビシッと決まった構図によって、硬質な緊張感漂う雰囲気作りに成功していて、この辺はハリウッド映画を勉強した新しい世代の監督の為せる業だと思います。/欠点をいえば、最初のフラッシュバックが繰り返されるところはややしつこい。サモ・ハンvsドニーで寝技を取り入れたかったのは分かりますが、ドッタンバッタンと大味になりすぎた感じ。もっと返し返されの応酬、緻密さがあれば良かったかな、と。しかし最近のクンフーアクション作品ではダントツの出来であることには間違いなく、ドニーvsウー・ジンのバトルはあの『ブレード/刀』のラストバトルに匹敵する魂を感じます。エンディングへの静かな終わり方、エンドロールの演出と曲も秀逸。/DVDには吹き替えも入っていてサモ・ハンはもちろん水島裕なんですが、あの甲高い声質はコメディだからこそ活きるんですね。シリアスな作品でしかもサモ・ハン自身が歳を取っていることもあり、ちょっと違和感を感じるところあり。 [DVD(字幕)] 9点(2006-06-26 03:45:17)(良:1票) |
22. バタリアン2
前作は、人物のドタバタっぷりが怖さと笑いの絶妙なバランスを醸し出していたのに対し、この『2』は「さぁ笑うシーンですよ」とばかりにゾンビ共がしょーもないジョークを撒き散らす。ゾンビ達の悪ノリと、登場人物の笑わせるためのオーバーな演技とバカ騒ぎには失笑せざるをえません。ガスの広がり方も実に単純。/ファミリー向けに、機転の利くキッズが活躍するただのモンスター映画にした代わりに、前作の巧妙なギミックを全部白紙に戻しちゃった駄作。 [DVD(字幕)] 3点(2005-10-14 01:36:48)(良:1票) |
23. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 やはり最後にロビーが出てくるとこで「えーー!?」となる。親父に反発する年頃の少年が、自我を支えるものとしての愛国心への憧れみたいなのを、スピルバーグは肯定的に描きたかったのか否定的に描きたかったのか、ラストで何事もなく(いや家に戻るまでの苦難はあったのだろうけど)出てくることで「丘であんなにゴネたのは結局なんだったわけ?」と思ってしまう。何の教訓も示唆も汲み取れない。まさになし崩し的ハッピーエンド。/突然の偵察マシンとの遭遇で娘が錯乱して家から飛び出し(なぜ宇宙人(トライポッド)がうじゃうじゃしている外へ?!)、親父が辺りを捜索するも返事なく(そんなに広い場所じゃないだろ!)、親父がピンチに陥った頃に宇宙人の前にぽつねんと娘が登場して「キャーー!パパー」・・・もう伝統芸ですね。/「大阪で何機倒した」とかいうセリフも、昨今のハリウッドのアジアへの擦り寄りっぷりから考えて、日本人の自尊心をくすぐるリップサービスに過ぎず興ざめしてしまう。/褒められるところは、宇宙人にとっ捕まったら何されるんだろう─という為す術もない恐怖感がうまく表現されていたことでしょうか。同じリメイクでも、これより9年も前に発表された『インデペンデンス・デイ』の方が娯楽に徹していて面白いです。 [DVD(吹替)] 4点(2006-07-13 04:31:29)(良:1票) |
24. デッド・フライト
《ネタバレ》 何せ旅客機ゆえ逃げ場がないので大変なことになります。事が起こるまでやや長く感じますが、どんどん被害が拡大していく様は見事。後半はこのゾンビ映画史上最も狭い空間でこれからどうなっていくのかハラハラしっぱなし。シートベルトを外す知能を失って縛られたままの日本人指揮者風ゾンビがただの笑いだけで終わらなかったところもウマイ。/ゾンビがかなり俊敏な「28日後」系で精力的にダクトを這っていくシーンが笑えます。ただ銃一発で活動停止するのがいるのに、下半身失っても生きてる奴もいてかなりいい加減(感染して生き返っても耐久性はバラバラという設定なのだろうか?)。ラストはゾンビ映画の定番「脅威は終わらない」的終わり方だけど、この耐久性に乏しいゾンビでは町についたとしてもすぐ鎮圧されそう。/「オブ・ザ・デッド」とつけただけの詐欺的作品が多いなか、これは掘り出し物。 [DVD(字幕)] 8点(2007-07-04 22:16:55)(良:1票) |
25. ダニー・ザ・ドッグ
一時期しょーもないCG多用の作品が続いてたので「テレビでやってたら観よう」くらいに思ってたのですが、意外と面白かった。サムがダニーのことを最初から分かってるかのように勝手にしゃべりまくってストーリーがどんどん進むところや、敵対勢力に襲われるシーンで死亡も確認せずに退散するところなど、やや都合良すぎな気がしますが。ヒロインは最初すごく老けて見え、サムのちょっと若い奥さんかと思いました。/ボスのバートは、こいつほんっとに憎たらしいわ~と思わせる演技ですね。リーの方も、ここまで演技力を問われる作品はあまり無かったんじゃないでしょうか。闘技場みたいなところで最後にハンマー振り下ろしたシーンの殺気溢れる表情がスゴかった。アクション面もバカみたいなCG演出がなくてよかったです。/あとラストの方、サムがバートを殺したと思ってる方がいるみたいですが、気絶させたんでしょ?前後のセリフとサムが捕まってないことからも明らかかと。 [地上波(吹替)] 7点(2007-07-14 01:04:50)(良:1票) |
26. マッドマックス2
《ネタバレ》 こういった強烈描写で一点突破的な映画が私の大好物なんですが、その中でも最高峰に位置する作品。/いまやすっかり話にも聞かれなくなったノストラダムスですが、当時の予言ブームと相まって、1999年が訪れた時こういう世界が到来するのを恐れおののきながら過ごした小学生がどれだけいたことか。その影響力を考えると10点差し上げずにはいられません。/ラストのカーチェイスで、最後尾にフックをひっかけたもののバランス崩してゴロンゴロン引っ張られるシーン、マックスが運転手を射殺していうことを聞かなくなる車の描写は最高です。/後ろの車から手で投げた槍が前方の車の運転手の背中に刺さる(何の役にも立たずに死ぬパッパガーロ)とか、運転席むき出しの車でマックスが乗るトレーラーとガチの勝負(なのか?)に出るヒューマンガスの謎の行動など粗はありますが、そんなの気にしない! [DVD(字幕)] 10点(2005-10-08 01:11:25)(良:1票) |
27. 300 <スリーハンドレッド>
レオニダスが死ぬとこまではそこそこ面白かった。エンターテインメントなんだから史実とかリアルどうこうじゃなくて、勢いが大事。だから忍者みたいのも出てきちゃうし、サイやゾウもまるで異界のモンスターのように描いちゃうし、クセルクセスもこの世に君臨する神のように描いちゃう。そういった部分は「そんなわけねー」などと無粋にツッコむことなく普通に飲み込めるんですが、ザック・スナイダーという人は映像センスはあるのに、「自由と平和にために今こそ立ち上がるのだー!」的な最近のアメリカ映画の最もクサい部分を最後に持ってくることには抵抗は無いんですかね?/レオニダスが「自由と平和を守る」ために戦ってるというのはそれまでの内容で充分伝わるんだから、あんなつまらない締めはいらないんですよ。自分としては死屍累々の中でレオニダスも力尽きて、カメラが遠ざかっていくところまでで止めてくれた方が余韻があっていい。 [DVD(字幕)] 5点(2007-12-13 13:29:17)(良:1票) |
28. イップ・マン 葉問
《ネタバレ》 「序章」同様、これも近代の実在格闘家モノの王道ストーリーですが、「もういいよ」とならないのはやはりしっかり丁寧に作られていることと、アクションシーン多めで飽きさせないからでしょうか。しかし素朴で家族や弟子を大切にする葉問にホッコリする反面、色々な苦難に遭っている割に生きていく中での苦悩というものが語られず、物語も平板になりがちで観た後は特に何も残りません。(それが葉問の平凡な佇まいを表現する監督の狙いなのかもしれませんが)/最後のリー少年は、物語の最後に一発ギャグかましてチャンチャン♪という受け取り方が正解だと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2012-02-17 14:29:22)(良:1票) |