Menu
 > レビュワー
 > エスねこ さんのレビュー一覧。6ページ目
エスねこさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 644
性別
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23593/
ホームページ http://kine.matrix.jp/
自己紹介 [2010年8月23日]
か…かわも…

(゚Д゚;)ノ

…映画界は今日終わった…。


[2017年7月16日]
猛暑の夜、amazonで映画ではなく『幼女戦記』を寝ないで通し鑑賞。
大局的な戦略から入って行くという、かつてない架空戦記アニメでありながら、その悪夢性を出し切った感がすごかった。
最終話はテーマ的にポエニ戦争から対テロ戦争まで、膨大な戦争のイメージを深く広く全面爆撃して吹っ切れる展開に。
スピルバーグの『宇宙戦争』はバクテリアに仮託してその地獄自体を救いと説いたわけだけど、このアニメはそんな所まで引いて俯瞰する気がサラサラないってのがスゴイです。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011
>> 通常表示
101.  かもめ食堂
鮭の切り身に塩をふって、焼き網の上に乗せる。熱源はガスのようだ。当然、油がポタポタ落ちてキッチンはベトベト、換気扇のないらしいキッチンは食堂内と仕切られてないので、店内は場末のホルモン屋のように煤と油が染みついて、そこにはマジックで書かれた「ホッピー」という張り紙が黄ばんで…ないんだな、コレが。 映画のマジックなワケだけど、何となくそこんとこのリアリティのなさだけが気になり、そして悲しかった。言ってみればこの店内、サチエの内面みたいなもんだ。スッキリと美しく、塵ひとつない空間。そこで魚を焼く事は、絶対できない場所。 じゃあキッチンは別の部屋になってた方がよかったのか…? もちろん画面的にはそんな事はないワケで、キッチン・食堂・表通りが素通しで見渡せる店の構造は、(ガラスへの映り込みも含めて)映画中でいろいろな画面の遊びに使用されていて、観飽きる事がない。オイラ的な結論としては、この店はコーヒーとオニギリ以外は出しちゃいけないんじゃないかって気がした。 あと、だれ一人困らずにワリバシを使いこなしてるフィンランド人たちってどうよ。  ま、ゴチャゴチャ突っ込む割に、きっとまた観に行くだろうけど…。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-21 19:06:08)(良:1票)
102.  グラディエーター 《ネタバレ》 
ちゅーわけで(?)この時代に興味のあるオイラなんですが、意味が深~くわかったせいで、元々好きじゃなかったリドリー・スコットを「大嫌いなヤツ」と明言できる決定打になった作品です。で、少しウンチク。この時代ってのは、  1)ローマ帝国が繁栄した最末期:コモドゥス帝は実在人物で、実際に暗殺されました。ローマの版図はイギリス付近まで拡大(映画冒頭の戦闘)。 2)膿んだ政治体制:ローマのご意見番・元老院の力は既に弱くなり(今の社民党みたいなもんだ)、皇帝が帝国を仕切っていた。当然無謀な政策が多くなった。 3)爛れた市民文化:民衆を沸かせるための剣闘は映画の通り。史上初と思われる萌系恋愛小説『ダフニスとクロエ』もこの時代。 4)皇帝暗殺後にローマ帝国が崩壊:皇帝が立った途端に(各属州の軍団に)暗殺される風潮になる。政治活動が実質的に消滅。  …一言で言うと、あの映画は「90年代のアメリカ」そのままだったわけです。ローマ衰亡の転換期に起こった最悪の暗殺事件を描く事で、ITバブルに沸いていた末期的なアメリカを斬っているわけですね(実際には今のブッシュの方がクリントンよりコモドゥスっぽいけどね…イラク戦争を『剣闘』と見ると、なおさら怖いか)。 んで、リドリー・スコットのどこが嫌いなのかっちゅーと、主人公は皇帝を殺しちゃった後、各州の軍団にローマの未来を託すから。『エイリアン』でも『GIジェーン』でも『ブラックホークダウン』でもそうだけど、結局はパワーで解決なのかいっ! ていうかマキシマスあんたそれ、テロ以外の何物でもないやろー! ってとこがモーレツに嫌。 ローマが滅びたのは、そういう時期だったからだよ。満ちたる月は、いずれ欠けるものなの。あれだけ素晴らしい映像を造りながら、青臭くて暴力的な夢を語るだけの彼に、疲れと憐れみを憶えた作品なのでした。   《8年後の追記》 いまウィキペディアでコモドゥス帝の記事を読んでて、驚愕の事実を知る。こいつ、ホントに闘技場に出て戦ってたんだ…納得のバカ皇帝だぜ…。
[DVD(字幕)] 3点(2004-07-06 03:36:38)(良:1票)
103.  日本以外全部沈没
バカ映画を新たな高みに押し上げたその功績に、10点。 この映画の予告編を見た時には、歌唱力も演技力もないアイドルが「私、脱ぎます!」と言った瞬間を思い出しました。そして本編を実際に見終わった今では、スポーツ紙風の「巨乳解禁! いままで着ヤセだった? 衝撃のスーパーボディ」という見出しが脳内で踊っております。 断言しますが、昨日までは河崎実はオイラ的映画界で無価値だった。今日からは違います。 そのバカ度が、ハリウッド映画の歴史に刻まれる(か、完全黙殺される)ほどの凄い高みにまで達しているからです。  あまりに危険…いやバカすぎて、上映したのと同じ内容でDVD化される保障はありません。今のうち映画館で見ておく事をオススメします。  ●追記:この映画でこそルー大柴の濃い演技(主人公の職場の編集長希望)が光ったと思うんだけど…彼が出なかったのだけが残念だなあ。
[映画館(邦画)] 10点(2006-09-26 19:14:10)(良:1票)
104.  魔の家
これは歴史上、極めて珍しい希少品映画だ。以下うんちく。この世にミステリーとSFが生まれる前の事。この世の大衆小説ジャンルはロマンス(恋愛物ではない。『宝島』『岩窟王』なんか)と、ゴシックロマンスに分かれていた。要するに冒険小説か怪奇小説か、である。ロマンスは19世紀末に歴史・戦記・冒険などへと専門ジャンル化していく。他方、ゴシックロマンスが生み出したのはミステリ・SF・ファンタジー・ホラーなど。本作はこの進化する前の原始ゴシックロマンス映画と言ってよく、明確なジャンル意識がない(ホエールの前作『フランケンシュタイン』もそう)。したがって、時々怖いんだか可笑しいんだかよくわからないシーンが出て来て、現代の観客を戸惑わせる。また、表面上語られるよりも明らかに深いドラマが、この家の過去にあったはずなのだが、観客へはいろいろな手がかりを提示するだけで種明かしは行われない。そしてこういう不条理な状況下で自分自身を見つめ直すという、教養小説的な展開まで見せるのである。かくしてホエールは19世紀中期のイギリス小説の風味を映像に移植するのに成功したが、以後このスタイルを真似する映画は出なかったように思う(一部を切り取ってパクったというのはあるが)。知る限り唯一の、正統派ゴシック・ロマンス映画。見るほどに理解が深くなる、スルメ的逸品。
[DVD(字幕)] 7点(2005-05-14 17:22:40)(良:1票)
105.  ヒストリー・オブ・バイオレンス
食前酒は深紅のネグローニ。カンパリ特有のピリッとした苦味が舌を刺す。それからうって変わってまったりとしたニョッキのポタージュがやってきた。食べごたえ十分の、ホッとする家庭的な味。だが一緒に出てきたビーツと赤ピーマンのサラダが、熾火のような紅をチラチラと自己主張して目に痛い。その後に巨大な巨大なステーキが来た。席に着く前からレアステーキだとはわかっていたが、これが実際に目の前に置かれると途方もないコッテリ感だ。ふうふう言いながら食べ終わるが、これでメインディッシュは終わりではない。仔牛のテールシチューがやってきた。デミグラスソースの複雑な香りに、ひとつまみ置かれた血のようなパプリカ。ひとさじ口へ運ぶと濃厚な酸味が食欲を奮い立たせる。もうこれ以上こってり系は食べられない。もう無理だ。絶対に食えないよ…などと思いつつ、気がつくと平らげていた。何という恐ろしいシェフだ。容赦なく客を肉責めにするとは…そう思っているうちにやってきたデザートの抹茶アイス。甘みを抑えた脂肪たっぷりのアイスクリームに、手摘みの玉露を挽いた抹茶の苦味が加わって、それまでの胸焼けが消えていく。決して爽やかな後味ではないのに、味わうほどに奥深い甘みを感じる。食べながらいつの間にか泣いていた。周囲の席でもかなりの人が泣いていた。いまこれを打ちながら、舌に残っているのは最後のデザートの心地よさだけだ。ここのシェフは普段ゲテモノばっかり出してくるが、ちゃんとしたディナーを作るとそこらのレストランでは太刀打ちできないモノを出してくるのが、自分が通い続けている理由だろう…でも今晩はもう、お腹いっぱいです。しばらく肉はいらないや。
[映画館(字幕)] 9点(2006-04-28 21:10:09)(良:1票)
106.  フォーン・ブース
映画としてはたいしたコトなくても、エスねこ的には高い点をつけなきゃならん作品というのがありまして、これなんかはそう、ド真ん中ストレートな「変格」映画ですな。なんかポール・オースターのスッカスカな純文小説をアクション満載で映画化したみたいな感じ。コリン・眉毛・ファレルの演技力で80分保たせ続けるのはチト厳しかったとは思うけれど、フォレスト・お人好し・ウィテカーの演技もいつも通りで飽きるんだけど、そのあたりは監督も犯人も先刻ご承知、いろいろ先手を打ってオイラをハラハラさせ続けてくれました。 この映画は(売り文句とは違って)各キャラのパワーバランスを楽しむ群像劇なので、演技はスタニスラフスキー・システムがよく似合う。役作りが全てと言っていいかも。その意味での本作の見所はエキストラの表情です。普通はエキストラって、ただ引っ張ってこられてバックで歩いてるだけの群衆なワケですけど、この映画での群集は完全に事件にのめり込んでいる。メイキングを見て納得しましたが、コレってある種の擬似イベントとして撮影してるんですね。エキストラは当日撮影分のシナリオしか渡されず、しかも時間順に撮影されたため、全員が事件を実体験してるような一体感があります。観客の代わりにスクリーンに入り込み、事件の展開に呆然とする顔・顔・顔…。これに勝る画は滅多にありやせんぜ。映画好きより演劇好きの方が楽しめるような気がする、B級実験ムービーだったと思うのです。
[DVD(吹替)] 8点(2006-03-15 19:14:24)(良:1票)
107.  ザ・ファーム/法律事務所 《ネタバレ》 
法律事務所が相談料取り過ぎてるだぁ? なんかセコくて…主人公のやりクチが。映画館で見て、途中までは良かったのにラストでいきなりガッカリした記憶が強いなあ。とりあえず「合法的・合理的に解決できればそれでいいんかい」って言っておくか。ドラマチックなモノ、なにもなし。観客は無理を承知で、その先にあるものを見ようとして映画館に足を運ぶんだと思うぞ。ジーン・ハックマンを配した時点で、敵が手ごわいのもわかっちゃいるけど。
2点(2004-03-15 04:54:26)(良:1票)
108.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
去年から待ちこがれていた超・期待ファンタジー。 予告や洩れ聞こえて来る情報からは、『ミツバチのささやき』の新解釈リメイクとしか考えられなかったんだけど、まぎれもなくそういう作品です。本作の凄い点は、 (詳細はブログにて)
[映画館(字幕)] 9点(2007-10-14 21:40:36)(良:1票)
109.  麦の穂をゆらす風 《ネタバレ》 
イギリスのジョークで「英国人は座って考える。フランス人は立って、アメリカ人は歩きながら、アイルランド人は後から」というのがある。そういうアイルランドの国民性は随所にあったと思う。  んが、ほぼ終わりの方まで「こりゃ4点だね4点」と思いながら観てた。 歴史のお勉強に近いし、このあたりはとりあえず高校の授業でもやってる内容。むしろ第一次大戦に勝ったのに敗戦に近いダメージを被った英軍の兵士とか、そういう「敵」の顔が見えないのが嫌だったかな。 石壁を背に若者を立たせ、見せしめでその中の数人を殺しておく「間引き」なんかは小説にはよく出てくる光景。街区でのお隣さん同士の銃撃戦も、アイルランドのトレードマーク。これに黒ビールと長い議論が加わればほら! IRA歴史映画の出来上がりじゃん! …そんな感じがするんですよね。後の北アイルランド解放テロに結びついていく「頑固なアイリッシュ魂」は感じた。  ところが、終わり近くでダミアンを説得する兄の言葉から、それまでの思考の流れが見えてきて、ビデオを巻き戻すみたいにガーッと兄テディの主要シーンが蘇ってきた。弟がロンドンに行く時、一人止めなかったテディ。弟がレジスタンスに加わった時、一人黙って臍を噛み続けたテディ。拷問の痛みに耐え、それから言動が変化していくテディ。 痛みを知った者と、知らない者の差がこれほどまで大きいのは…当然かな。オイラは兄貴に感情移入せざるを得ない。嫌な奴だが、それが人間だ。 「兄弟の相克」という内容から、『ケス』のテーマの発展形だとも言える。そういう観方でも、充実した面白いものがあったと思う。歴史映画としては平凡だと思うけどね。  ●追記: ウィキペディアで調べて、テディの顔がマイケル・コリンズにソックリだったのを知る。なるほどね! 他のキャラもモデルがいるんだろうな…。
[映画館(字幕)] 7点(2007-05-10 22:11:01)(良:1票)
110.  酔っぱらった馬の時間 《ネタバレ》 
古来から南米の山岳民族は、土地の生産性が低い割にピラミッドなんか作ったりしちゃって重労働を課せられて来た民族だ。重い荷物を背負って山を越えるシェルパは、出発の前にコカの葉を一枚、口に含むんだそうだ。麻痺した肉体は、耐えられないような辛い仕事にも耐えてくれる。そうして麻薬大国コロンビアは誕生した…以上は枕でした。  本作では、イラクに向けて出発する密輸キャラバンが、厳寒の山越えに耐えられるようロバに酒を飲ませる。キャラバンが進み始めると、そこで映画開始後30分にして始めての劇伴が入る。このルールは全編に渡って適用され、馬が酔っ払っている時間にしか音楽はかからない。まさに南米を舞台にした『アギーレ/神の怒り』の冒頭と同じ音楽原理。 長い人類の歴史で、とても耐えられないような辛い仕事を耐えられるようにしてきたのが音楽の力だから。音楽は人間の営みのエッセンスだから。無限の繰り返しによる「麻痺」という快楽が、音楽の原理であり、オシゴトの原理でもあり、そもそも人生の原理でもあるだろう。BGMではないけれど、序盤に子供たちが唱う歌が、それを率直に表している。 人生は辛い。人生は酷い。人生に希望はない…それを言い続けて、言い続けて、みんな麻痺して行く。感じなくなって行く。 そんな中で、決して良心を捨てようとしない主人公たち兄弟。弱者を見捨てようとせず、その態度に疑問すら持っていない、偉い事とか良い事とかも感じていない、とてもストレートな主人公たち。劇中、彼らだけは麻痺を拒絶して醒めて続けている。彼らだけが現実を直視している。ポスターを買ってくる兄の姿に、麻痺の兆候が見えてはいるが。まだ彼らは大事な何かを失わずにいる。  …もしこれがテーマだとすると、エンディングのカットタイミング、そこへエンドロールと共に流れてくる音楽は絶妙で、恐ろしい。音楽は、人の中の何かを奮い立たせ、同時に何かを失わせる。本作の劇伴ルールの厳密さから考えて、エンディングに流れる音楽は悲劇の暗示だと推測した。 地雷にやられたのかもしれない。兄を見捨てたのかもしれない。ロバが売れなかったのかもしれない。手術が失敗したのかもしれない…その全ての可能性と、結果として訪れる心の境地を、あの音楽が癒してくれている。 この映画自体も、観客の心へ失った何かを取り戻させてくれて、また奪い去って行く。映画もある種の麻薬だと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2007-04-14 09:15:41)(良:1票)
111.  月世界旅行
この春、19世紀末ロンドンの大衆演劇界を描いたピーター・アクロイド作『切り裂き魔ゴーレム』を読んだんですが、それ以降、これまでボンヤリと感じていた欧州演劇史に対する考えが明確になりつつあるところ。乱暴を承知で言ってしまえば「19世紀末の演劇界は現在信じられているよりもビジネスとして/メディアとして/芸術として遥かに成熟していた」ってコトですね。 特にギミック演劇に関しては、現代の特撮なんかよりずっと自由度のある表現がされていたんじゃないかと思います。演劇であっても、操演もあったし火薬も使った。大道具職人たちの描いた精密な背景は巨大セットにもCGにも匹敵した。脚本は天界だろうが地底だろうがどこにでも行けたし、そこではスターたちが歌って踊って、恋と殺しに明け暮れて…。  だから、本作が上映される前にメリエス(でなければ他の興行師)がヴェルヌの『月世界旅行』を舞台化しなかったとは到底思えないんです(そして本作以上に有名となった「砲弾の射ち込まれた月の顔」は、必ずや吊りギミックとして舞台に下りてきた…んだと妄想)。いずれ調査してここに追記するつもりですが、いまのところ本作を、爛熟期にあった大衆演劇をリアルタイムに写し取った“ドキュメンタリー”として評価するコトにします。ま、このままの展開で、派手なギミックに置き換えてミュージカルにしたら、ひょっとすると現代でも通用するかもね。
[インターネット(字幕)] 5点(2006-07-15 19:19:54)(良:1票)
112.  原子怪獣現わる
7点にしちゃうけど、物語史を考える上では重要な作品だと思う。今日に至るまで見てなかったというのを恥じた逸品でした。  (詳細はブログにて)
[DVD(字幕)] 7点(2008-12-21 01:22:55)(良:1票)
113.  ハンバーガー・ヒル
『プラトーン』より『フルメタル・ジャケット』より『地獄の黙視録』より、『ハンバーガー・ヒル』だなあ。戦争映画なのかスプラッタ映画なのかわからなくなって来るくらい、ショッキングだった。あまりに無謀な命令、死ぬとわかっていても攻めに行かにゃならん兵隊さんたち。観客も彼らに付き合わされて地獄めぐりをするうち、後半で手足が吹っ飛ぶくらいじゃ神経に響かなくなってる。そしてエンディングで出る「その後」の字幕には唖然として、かつ不快な疲労を憶えます。そのメッセージはいやと言うほど伝わった。ただ、多くのベトナム帰還兵と同じように記憶の奥底に沈めてしまって、この映画を「なかった事」にしているわけだが…。
7点(2004-03-08 05:07:07)(良:1票)
114.  アリス(1988)
日本での封切り時に見に行きました。レイトショーオンリーの興行だったけど4回行った…とりあえず靴下芋虫が最高(笑)。この監督特有の手法だけど、冒頭の子供部屋にはその後の登場人物が全て隠れています。騙し絵のように。でも、ウサギだけがいない…。
9点(2003-01-13 15:50:51)(良:1票)
115.  幻遊伝
あれ? この作品の鑑賞環境って「映画館(邦画)」? 「映画館(字幕)」? 悩ましいモン作りやがったなあ…。  さて。この映画は子供向けだし、シナリオ破綻してるし、「時間旅行」ではなく「前世に送られた」という民俗学的設定なので、突っ込む気がなくなるほど大陸的で大味でした。オイラがこの映画を評価するのは「田中麗奈」。この一点のみ。 そもそも彼女が第一目的で観に行ったワケですから…でも冒頭はしっかり裏切られた気分になりました。ま~~ったく可愛くない。演技もかなり大味。対する父親の大杉漣もゆっくり喋るもんだから間が悪いのなんの。心中「絶対3点つけちゃる!」と拳を握り締めたのはまあいいとしまして…複数の主要人物がひとつ屋根の下に集合するまで、失望感でガックリ来ていたのは間違いありません。 でもそこからが違った。いや最初から日→日中バイリンガル→完全中国語…と少しづつ言語面の変化は訪れていたのですが、主人公・小蝶が当時の服装に着替えてから、ガラリと変わりました。 演技が、完全に中華活劇のアレなんです。カンフー映画のヒロイン。口を大きく開けてカツゼツはハッキリ、演技も大振りで、表情に至っては日本人と思えないほどクルクル変わる。そこでやっと冒頭のヘボい演技が「中華活劇の中で描かれる日本人」を演じていたんだ、というのが理解できた次第。  日本の演技メソッドと中華圏の演技メソッドを、一作の中でここまで自在に使い分けた女優は寡聞にして知りません。身振りや顔つきまで中国人になった田中麗奈は、日本的美を離れて、華人として美しい。しかも台湾生まれ台湾育ちの小蝶は「中華~日本の間にあるグレーゾーン」の住人であって、2民族の間に様々な中間点がある事を演技で示してくれている。これでシナリオが大人向けだったら、素晴らしい国際色を出していたと思います…残念ながらコレはキョンシー映画でしたがネ。 田中麗奈なら将来、今までにない劇的な解釈の李香蘭を演れる(断言)。そして彼女を三娘役に迎えれば『一輝まんだら』の実写化だって不可能じゃない(まあ脱ぐ気があれば、ですけど…)。 ふたつの文化に根ざした、ふたつの美学。それを「ふたつ」と見ずに、両極・中間を自由自在に飛び回る彼女の姿こそ、名前通りの小蝶でした。どこまでも自然体で、因習に澱まず、美しかった。次の大きな何かへの予告編でした。
[映画館(邦画)] 7点(2006-09-04 01:30:06)(良:1票)
116.  プルガサリ/伝説の大怪獣
初めて買ったDVDは『青の6号』と『プルガサリ』でした。今思えばこの2本うまくバランス取れてるな、色々な意味で(笑)。しっかし、北朝鮮は何考えてこんな企画を通したんだろう…しかも日本の特撮スタッフまで招いて…でも高得点つけておくよ。『大魔神』と共に「こうあってほしい怪獣映画」の代表格。やっぱり怪獣ってのは悪い奴を踏んづけるのが仕事だよ。スカッとする。心温まる。で、最後は泣ける。
[DVD(字幕)] 8点(2004-05-27 23:18:25)(笑:1票)
117.  うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 《ネタバレ》 
押井を語るならこの作品が適当かな(天卵という手もあるが…あれは容易に点数つけれんしなー)。自分の中では、常に0点と3点の間を揺れ動く監督。地べたに這ってピョンピョン飛び跳ねながら天界を目指すのだが、跳躍力が足りず落ちてきちゃうって感じ。だが職人アニメーターとしては最低でも7点以上だ。おそらく常人の域を超える集中力を武器にした完成度至上主義(あくまで想像)も、職人アニメーターとして誇るべきもの。それが後の『アヴァロン』の驚異的なポストプロダクション(死ぬほど面倒くさい作業だっただろう)をやり遂げさせるわけだが…この人、才能の使い方を絶対間違えてると思う。世界がカメの背に乗ってるだなんていう明快な図式をやるなら、あそこまで書き込む必要ないじゃん。書き込みすぎたから、カメ自体が作り物っぽくなっちゃったよ。素人目で見たって、あの構図が活きるのはもっとラフで、パワーのあるマンガっぽいタッチでこそだと思うよ。「全世界を明快なカリカチュアに放り込む」事ができる、欧州の歴代アニメーターに匹敵する才能(この部分では絶対手塚治虫を超えてる)に恵まれたのに、大友克洋・士郎正宗と同じ路線にしがみついてる妄執の人にしか見えない。惜しい。惜しすぎる。ちなみに当時から『うる星』ファンじゃなかったので、点のオマケはないす。あしからず。
2点(2004-08-15 16:26:16)(笑:1票)
118.  こま撮りえいが こまねこ
罪多きアルバトロス配給作品にも、たまに本気の映画があったりするのは御承知の通り。『こまねこ』はそういう真顔モードのアルバトロス配給作品なのだが…何というかね、「これ、アホヲドリ配給だから」って脳裏に擦り込まれちゃって、必死にバカ映画なワライドコロを探す虚しい自分がおりました。  こまちゃんという子猫を主人公にした、全部で5話の短篇集です。が、全体的にノンビリ感が漂っていて短篇といえども詰め込んだような感じはありません。技術的にもチェコ水準。トルンカの霊が憑いてそうなくらい、人形が活きてます。まあライティングとかジオラマとかまでトータルに見ると、チト厳しいモノがありますけどね…。 でもね、子ども向け人形アニメに徹して、ここまで王道を進んでくれた作品は近年なかなか見ません。 映像作品の多くが技術の無駄使いに走る中、本作は「手作り」「アナログ」「愛情」という記号をふんだんに散りばめ、時代に流されずにふん張っている頑固な職人映画でもあるのですナ。CG&合成に頼っている部分ももちろんあるんですが、場面的には極小だし、非常に品のいい使われ方をしていました。 この年末年始に、ハリウッドで汚れちゃった自分の感性を洗濯するのにいい機会かもしれませんですよん。もちろん「アホヲドリ配給」というのは忘れた上でネ!
[映画館(邦画)] 7点(2006-11-29 00:00:56)(良:1票)
119.  トータル・リコール(1990) 《ネタバレ》 
『ブレード・ランナー』フリークがよく「ビデオで百回は見た」と豪語するけど、オイラ的にはこの映画がソレ。百回は見てるはずだ。出張に行く時もDVD持参で、ノートPCで見る。あーそーだよ、ブレランなんかよりコッチの方が4096万倍くらい好きだよ! 悪趣味とか言われるけどさ! SFマニアなら40分目に出てくるリクターとコーヘーゲン総督の時差なし会話で「あれ?」と思うだろう。火星と地球の通信は、大接近の時だって5分以上はかかる。明らかに天文学上の設定ミスなんだけど、「もしや全部夢なんじゃ…」という予感が、コレに気付いた瞬間から確信に変る(ヘボSFならコレぐらいのミスは平然とやってるから、この時点じゃ執行猶予つきだが)。この手の、SFファンとのさりげない駆け引きが満載されている作品なのだ。まーね、ラストで風速四十米が襲うあたりじゃ「もーどーにでもしてくれ~っ!」って感じで、毎度ボコボコに殴られっ放しだけどさー。だけどバーホーベンつうオッサンは物理学博士号も持ってる侮れないジジイだから、いたる所に張り巡らされた罠をコレクターのように拾い集める楽しさに満ち満ちて、見終わった時には至福の快感が訪れるのだ…あくまで、マニアにはね。そして、そういう他愛もない空想にマジメにのめり込む事の怖さを警告してくれる作品でもある。もちろんそんな警告聞きゃしませんぜ。映画館で見た日から、この映画にずっとついてくって決めたんだよ。オイラはいつまでも、《夢》と《現実》という不確定性を観測する観客でいますとも。ええ。
[映画館(字幕)] 10点(2004-12-04 01:12:47)(良:1票)
120.  バッファロー'66 《ネタバレ》 
おいっ、あれでオチたと思ってんのかよ監督! 2時間半かけた短編映画かよ! 想像上のオチと実際のオチが逆だろ! せめてタランティーノみたいに出所編・実家編・ボーリング編…と章立てするくらいの芸は仕込まんかい! 絶対100分以内に納める事ができると思う(し、その方が後味が良くなると思う)ので、評価は高くできませんナ。ただ、人物描写とカメラワークとカラーリングは評価します。主人公の人物像は十分練り込まれていて、イケてます。最初のトイレ探しのシーンで心中ひそかに「そこで立ちションしちゃえって!」と突っ込んでたのが、後半でキレイにフォローアップされたのが楽しいし、他人事のようにドライに立ち回るカメラも楽しい。トータルではまあ習作って感じですか。問題は、こんなのを定価(税抜き4700円)で買っちゃったオレの方にあるんだよなあ…自己嫌悪…今月はDVD買えません…。●追記:ちょっと落ち着いたので補足をば。キーカラーとして赤と青が対比されて使われるこの映画。主人公が改心して以後は、ラストは絶対クリスティーナ・リッチがバスルームで自殺してるカットで締めると確信してました(バスタブを染める赤い血…という趣向)。画面の前で身構えちゃって、拳を握り締めてましたよもー。だからあの終わり方、非常に締まりがないつうか、夢オチに匹敵するくらいの拍子抜けだったんすっ。
[DVD(字幕)] 1点(2005-06-03 23:44:30)(笑:1票)

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS