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1.  エイリアン
デビュー作「デュエリスト/決闘者」でもキューブリックの「バリー・リンドン」を意識していたCM出身のリドリー・スコットは、「エイリアン」では同じく彼の「2001年宇宙の旅」の洗練された映像を手本としたが(これは「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスも同じで、ルーカスが2年先んじた)、スコットは彼ほど屈折してはいないし「エイリアン」のプロットはシンプルでストレートなものだけれど、特筆すべきはその感覚。 ホラーは特別好まない自分が惹かれるのもそのセンスによる部分が大きい。 スモークやライティングによる効果に加え、ブレットの顔に滴り落ちる水滴やエイリアンの口より流れる水(粘液だけではない)、リプリーの肌に光る汗、脱出艇のジェット噴射などいたる所に水が使われ、有機的な湿った空気が非現実的な世界にリアリティをもたらす。 その中に潜む異生物もまたオーガニック。 悪魔的な画風のH.R.ギーガーが原案者オバノンに送った画集「ネクロノミコン」にあった悪鬼のごときネクロノームⅣをスコットが気に入り、中に人が入れるようリデザインされたものがエイリアンの原型となり(今でもおびただしい数のソフトのジャケットを飾る)、2mのスリムな若者が入った成体は恐ろしくも美しいがわずかしか姿を見せず恐怖を煽る。 7人のクルーを演じる米英混交の俳優もスターはいないがいい役者ばかり、ランバートの場面が削られ魅力的な女性ヒーロー、リプリー(シガーニー・ウィーバー)が際立つことに。 末期のアッシュ(イアン・ホルム)は種保存のためだけに活動するエイリアンの純粋さを称え、怖いのはむしろ彼を送りこんだ企業(=人間)ではと思わせる。 美術や音楽もすばらしく、衝撃的な要素を含みながら優雅でクールな空間に魅了される、監督の「ブレードランナー」とならぶアーティスティックな作品。 「5」を作る予定もあったスコットは、シリーズの「0」にあたる「プロメテウス」を撮り今夏公開する。
[映画館(字幕)] 10点(2012-03-10 07:00:11)(良:5票)
2.  プラダを着た悪魔 《ネタバレ》 
たかがファッション、されどファッション。 またまたアン・ハサウェイが大変身! これと「プリティ・プリンセス」で00年代のジュリア・ロバーツ的だった彼女は華麗に変身するがんばりヒロインとして十分に機能しているけれど、BFや友人はいないと不自然だから入れてるような感じでそれほど重要とも思えず、原作者が自分をモデルにした女の子の業界体験記のようでもあり、見ていて面白いのはメリル・ストリープ、スタンリー・トゥッチ、エミリー・ブラントらが演じる業界人たち。 トゥッチが「バーレスク」でも似た役がきたのは新旧の女を描く同じタイプの映画だからだろうし、引き立て役のブラントはヒロインより印象に残り、助演ながら彼女のキャリアの中で一番光ってるかも。 トンプソンは鼻持ちならない役かもしれないけど、俳優さんのせいか嫌味は少なし。 オニ編集長ミランダを超ワンマンな人物と認識しつつ観客が嫌うことができないのは、ストリープが男性をイメージして演じた役が、仕事には真剣で女の嫌らしさも少ないからか。 口より目がモノをいうミランダのセルリアンに関する弁舌は、「何もわからないアナタに軽口たたいてもらいたくないのよね」が言外にありそうで、でもそこまでは口にしない。 この瞬間はアンディを憎んでたと思うけど、根に持つような人じゃないのが男っぽい。 人に好かれようとしていない彼女が、唯一愛されたい人からは拒絶される皮肉な面も。 終盤の「失望」はそれまでの失望とは意味がちがって、I MISS HER ということ、最後の笑みがいい余韻を残してくれる。 ニューヨーカーやヴァニティ・フェアの記者志望で、(ヴォーグを模した)ランウェイを経て、NYミラー(英デイリー・ミラーのような新聞社?)に新たな場を見いだすアンディの衣装も3パターンに分かれ、最後の服は地味だけどシックで、ブーツのピンヒールがミランダから学んだプロ意識が彼女の中に残っているのを象徴しているよう。 マドンナの「ヴォーグ」は流行って意味なので使われてもおかしくはないけれど、くすぐりも入っていそう、光輝くパリの夜景にはU2の「目もくらむ光の街」、こちらもぴったり♪
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-05-02 07:00:01)(良:4票)
3.  小さな恋のメロディ 《ネタバレ》 
1年だけ通った学校では毎朝"IN THE MORNING"が流れた。 だからあのメロディはしっかり頭にしみついている。 ビージーズの曲のイメージに合わせて撮られた美しい映像は監督ワリス・フセインのものだけど、脚本を書いたアラン・パーカーの映画でもある。 この作品のいいところは子供に理解のある大人なんて出てこないこと。 それも冷徹な描き方じゃなくコミカルに誇張されていて、ダニーのママとかラテン語の先生とかいいネ。 終盤のメロディの家庭は比較的真っ当な描写でしんみりとさせたりもするものの、基本的には子供の世界と大人の世界をわけてある。 マーク・レスターとジャック・ワイルドが「オリバー!」からスライドしてきたのを知ったのはずっと後になってで、気弱&悪ガキの元祖? ダニーよりトムが好きな人が多いかもしれないし、メロディ(トレーシー・ハイド)をいれたトリオの話になってる。 他の2人より年上のジャックは演技もうまくて、トムだけ自宅の場面が一人芝居、欠けたカップに生活感がにじみ出る。 ダニーはヌードの絵を描いてママをあわてさせ、ギンガムチェックの制服がかわいいメロディは一見優等生のようだけど、ママの服と交換して金魚を手に入れる大胆さもある女の子。 "MELODY FAIR"は音と映像がマッチして一番素敵かも、音楽映画といってもいいくらい。 ロウアー・ミドル・クラスのダニーとワーキング・クラスとおぼしきトムやメロディの階級の違いもそこはかとなく出ているけれど、彼らのつながりには意味をなさない。 音楽室、墓地、メロディの家でのティー・タイムなど好きなシーンがいっぱいある映画。 彼らが走りだしたのは何十年も前のこと、映画の中ではあのトロッコは終着点もなく自由めざして走り続けるんだろうと思う。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-01-10 07:00:00)(良:3票)
4.  シラノ・ド・ベルジュラック(1990) 《ネタバレ》 
実在のシラノよりロスタンの戯曲の彼の方が、遥かに人間味をもって迫ってくる。 自分の容貌に自信がなく思う相手に告白できないというのは、人間だけが持ちうる繊細な感情であろう。 本能的に秀でたものを求める生物の一員でもあるが故に、外見と内面の狭間で揺れ動くのもまた人間。 美しく生まれながら才の無さを嘆くのも人間なればこそ。 三人三様の思いがロマンを呼び、自分に赦された領分でロクサーヌに愛の花を降らせるシラノには心うたれる。 気風よく剣の腕前に優れ、類まれな詩心を持ちながら小心ともいえるシラノを、巨漢ドパルデューが演じているのがまたよい。 容姿ゆえ母親からも疎まれたシラノの、幼少よりただ一人の女友達であった従姉妹ロクサーヌ。 彼女が美男子クリスチャンに惹かれながらも、シラノの言葉にこめられた心を解する女でもあったために、最後の最後で彼の思いが報われたことは喜びたい。「さらば ゆかしき君 懐かしき君 無二の君」
[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-06-16 02:55:16)(良:3票)
5.  スター・ウォーズ/帝国の逆襲
前作の大ヒットで続編の資金を得たルーカスからメガホンを渡されたアービン・カーシュナーは、同じ続編でも「ロボコップ2」(90)は感心しませんでしたが、こちらはよくできた作品だったと思います。 「新たなる希望」のような整合感はないかわり贅沢な時間の使い方をし、オプティミスティックな明るさも残しつつドラマティックで内省的になりました。 ILMの特殊効果も進歩して、ミレニアム・ファルコンがスリリングな軌跡を描いて帝国船団の懐をかいくぐり飛び、ドラマのクライマックスが終盤にあるので特撮のハイライトは前半におかれ、氷の惑星ホスでの帝国軍の戦車スノーウォーカーのシーンは芸術的。 ランド・カルリシアンの統治する雲の惑星べスピンの光景や、ヨーダの住む惑星ダゴバの霊的でダークな雰囲気もよかった。 マーク・ハミルは前作撮了間際の交通事故でルックスが変わってしまいましたが、ルークの演技は今作以降の方が気合が入っている感じ。 三つ編みレイアとジャケットに衣替えしたハン・ソロの関係の進展も見どころ、ハリソン・フォードが考えたセリフ「わかってる(I KNOW)」も粋でした。 ロボットたちやチューバッカが前作より重い作品を楽しいものにもしていましたが、何といっても極めつけはダース・ベイダーとルークのアレかな? 失策を演じた部下を情け容赦なく始末していたベイダーが、それも忘れるほど沈思黙考するのも人間味を出そうとしてのことか。 「スター・ウォーズ」が今でも人気があるのはこの作品があるからだと思います。 「特別篇」以降の修正は少ないものの、皇帝の謁見シーンはマクダーミドに差しかえられ統一されました。
[映画館(字幕)] 9点(2012-03-05 07:00:01)(良:3票)
6.  火垂るの墓(1988)
ラース・フォン・トリアーの悪意に満ちた「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と同じぐらい自分には合わない。反戦を隠れ蓑にしたような哀れっぽく執拗な描写に憔悴するだけ。ジブリ印で国民的映画のような扱いなのも妙だ。
[地上波(邦画)] 3点(2010-03-06 06:37:54)(良:3票)
7.  ミッドナイト・イン・パリ 《ネタバレ》 
今度はオーウェン・ウィルソンにウディ・アレンがのりうつって、パリの真夜中の夢の時間。 題材的にも恋愛だけじゃないので他のアレン作品より間口が広く、本・音楽・美術・写真といった時代を彩った芸術に興味のある方はより楽しめそうで、著名なアーティストたちを数多く登場させ、それを演じる俳優たちもまた楽しそう。(特にサルバドール・ダリのエイドリアン・ブロディ) 「失われた世代」の20年代に加え、終盤ではベル・エポックも垣間見られる贅沢な映画(ポスターの空はゴッホ風)は、一度ではもったいなく再見したくなる。 マリオン・コティヤールがこの時代のエレガントな美女として主人公を魅了し、レイチェル・マクアダムスは性格的にあわなそうな現代のフィアンセ。(主演級の彼女がこの役なのは意外な感じですが、きっとアレンのファンなんでしょうね) ギルが「人は自分の時代ではない時代に憧れる」から一応は脱却しても、「時代」を「人」に入れかえれば、(この作品に限らず)気が多いアレンのキャラクターそのものではないかと思え、最終的にギルがたどりついたのが2人のどちらでもないのにもそれはあらわれているようで、アレンとしては自分の作品は移り気ではなく、真実の相手を探す旅だと思っているのかも。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-05-05 07:05:00)(良:3票)
8.  ハイジ(2005) 《ネタバレ》 
アルムのおじさん! 「エクソシスト」の時にもおじいさん役だったから、ぜんぜんトシとってないみたいに見えるわね! 今までこの役はことわってきたってきいたけど、あなたがもどってきたハイジをすぐには受けいれないのが、今までのとちがうとこですってね! あの茶髪の子がハイジ? ちっちゃくてかわいいけど、アタシは黒髪がイイのよ! 犬のヨーゼフがいないと思う人もいるかもね! ペーター、あんたはアニメとちがって暗くていいんだけど、この映画ではちゃんとクララの車椅子を谷底につきおとすのね、えらいわ! そうじゃないと「ペーターのクララに対する憎悪が皮肉にも彼女の運命を救った」ってことにはならないもの。 クララ、あなたはもうちょっと……いえ、なんでもないわ! ゼーゼマンさん、あなたが歩けるようになったクララをだいてクルクルまわすのはお約束ってかんじだわね! セバスチャン、ずいぶん若いけどチネッテにあわせたのかしら? チネッテはチネッテって感じよね! チャップリンの娘さんがロッテンマイヤーさんていうのはハクがついていいわ! それにあなたがキャスティングされたおかげで他の人もスムーズに決まったっていうじゃない? 感謝しなくちゃね! 馬車からおりてらしたのはどなた? あなたジェームズ・ボンドの花嫁だった人よね! それがクララのおばあさまって! いえ、気品があってすてきなおばあさまよ、でもね、ちょっとショックなの…
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-20 00:38:20)(笑:3票)
9.  ローマの休日
アンは生まれながらに望みもしないのに美しく飾られた牢獄にいるようなもの。彼女の望みが贅沢とは思われない。(ダルトン・トランボは、後年の「ジョニーは戦場へ行った」とは全く違う形で自由から隔てられた若者の物語を書いた)後半が切ないのは楽しい前半からの転調が十分に効いているからだが、この構成は見事だと思う。ジョー・ブラッドレーが金欠の新聞記者というのもこれ以上ない設定だし、友人のカメラマン、アーヴィングも最高である。アーニャはヘアカットとともに袖を巻き上げスカーフを巻くだけでイメージを一新し、美容師マリオ・デ・ラーニ役のパオロ・カルリーニが明るいイタリアンな情緒を添える。「仕方なくしていることだってあるんだよ」とのジョーの言葉は作品の底辺に諦念が流れているのを感じさせるが、ラストは言葉にたよらず感情を細やかに伝えてみせる。たった一日、しかしかけがえのない一日が小国の王女を大きく変えた。そしてまたジョーも。オードリーの笑顔と涙はこれからも観客を魅了し続けるのだろう。
[映画館(字幕)] 9点(2009-08-31 01:33:44)(良:3票)
10.  パピヨン(1973) 《ネタバレ》 
独房のシーンのコントラストのきいた映像は、絵画的な芸術性でもってパピヨン(スティーブ・マックィーン)の生への執念を見せ、ドガ(ダスティン・ホフマン)との長きにわたる友情もよい。 パピヨンが金庫破りではあっても、殺人犯は冤罪であるという複雑な立場も一筋縄ではいかない人間味。 が、一番心に残るのはハンセン病の首領との関わり。 最初は彼の姿をはっきりとは見せず、徐々に観客に慣らしていく。 慣れてしまえばどうということはない。 自分が病から逃れられないのを知っていて、カンパの缶をパピヨンに渡す彼には「せめてお前だけでも自由に」との思いがあったろう。 その気持ちを缶と一緒に受けとったパピヨンは彼の腕をしっかりと握り締める。 首領は他人が感染しないのはわかっていても、積極的には自分に触れたがらないのを知っているだろうから驚いたはず。 そしてパピヨンの体温とともに、久々に病をわすれて人間らしい気分を味わえたはず。 彼がパピヨンに思いやりを示したからこそ得られた、この触れあいの瞬間はとても尊いと思う。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-03-10 07:00:09)(良:3票)
11.  アレクサンドリア 《ネタバレ》 
アレクサンダー大王の命により建設された古代都市アレクサンドリアを舞台に、アレハンドロ・アメナーバルが描く宗教戦争と学問に身を捧げた女性ヒュパティア(ハイパシア)。 無垢な美しさを失わないレイチェル・ワイズが美女と伝えられる女性学者に扮し、1200年後のケプラーの発見をヒュパティアが先んじてしたことになっているのは、天文ファンの心をくすぐる愉しき趣向。 彼女の元生徒だった長官オレステスと元奴隷だった修道兵士ダオスがそれぞれに彼女を慕い見守り続けるのですが。 やさしく触れるオレステスの手をすり抜けて、ヒュパティアの指は天を指す。 このシーンは非常にシンボリックに、人の愛よりも宇宙の真理を求めた彼女のキャラクターをあらわしていました。 オスカー・アイザックは「ロビン・フッド」では非人間的なジョン王でしたが、やはり役柄によって全然イメージが違い、ダオス役の若いマックス・ミンゲラも台詞の少ない難しい役、現実にはもっと悲惨だった彼女の最期にドラマティックな趣きを添えていました。 娘が男であったらと願う図書館長の父テオンのマイケル・ロンズデールも懐かしいお姿。 焚書の憂き目にあうアレクサンドリア図書館の蔵書は膨大なパピルスの巻物、盲信によりどれほどの英知が失われたのかと惜しまれます。 本国スペイン以外ではあまりヒットせず、建物をすべて建造した巨額の製作費の半分しか回収できなかったというのはわからないでもない。 娯楽性には乏しく生真面目で、キリスト教批判も手厳しい。 されど宙(そら)に恋するヒロインは珍しく、人の心を支配してしまう宗教には懐疑的で天文や古代史に関心があり、圧力に屈しない古の魂に共鳴される方には、希少な魅力をもつ作品と映るのではないでしょうか。
[DVD(字幕)] 8点(2011-09-30 07:00:01)(良:3票)
12.  扉をたたく人 《ネタバレ》 
アメリカ移民問題を背景に、映画としても見応え。 ウォルターとタレクの楽器ジャンべによる音楽を仲立ちとした友情がメインかと思いきや、後半タレクの母親モーナとの関わりにシフトしていく構成に奥行き。 リチャード・ジェンキンズの抑え目で渋い演技に加え、「画家と庭師とカンパーニュ」にも出ていたモーナ役のヒアム・アッバスがとても魅力的、妻を亡くして心が干からびていたウォルターの心をうるおし、寡婦モーナがウォルターに親しんでいくのも自然。 「オペラ座の怪人」のエピソードが素敵で、異邦人同士のつつましい恋は「ターミナル」を思わせる。 自分の国を抜け出してよその国に住まなければ不幸、という状況そのものが哀しいことだけれど、タレクが米国に来なかったらウォルターがモーナと出会うこともなかった。 主要人物が4人だけで、タレクの恋人ゼイナブがウォルターを警戒するのにリアリティがあり、彼女はとっつきにくいが作品は可愛らしい。 ウォルターとモーナが一緒にならなかったのは、あのラストシーンにしたかったからなのだろう。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-05-08 07:00:02)(良:2票)
13.  新しい人生のはじめかた
ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソンのラスト?ラブ。 秋のロンドンが舞台のアメリカ映画、監督・脚本はイギリス。 一度共演ずみでエマの方から声をかけたそうで息もあっているよう、目を見はるような才気走ったところはなくても丁寧な作りは好み。 ハーヴェイ(脂の抜け具合がよろし~意外とコートが似合う)とケイト(少し太っちゃったね!)の半分アキラメの人生。 元気のない2人が出会った効用は大きくて、ハーヴェイの娘の披露宴スピーチでは継父(ジェームズ・ブローリン)にも花を持たせる心ばせが場をなごませ、ピアノのシーンもしっとりと。 エマの方が背が高い・・・と思っていたら、ラストシーンのためだったんだ。 助演女優もキャシー・ベイカー(米)、ブロナー・ギャラガー(英)と好きな人たち。 デーム演じる被害妄想ママも進展があってお守役を卒業できそうな気配。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-06-02 07:00:00)(良:2票)
14.  ロボッツ
劇中でフェンダーが痛烈に皮肉るように、「アニメのように大きな目」はここにはない。離れた2つの目、小さめの瞳。可愛くアピールする常套手段をあえて捨てたブルースカイの小さな自己主張。このスタジオは「アイスエイジ」もそうだけれど技術力は十分あるのにあまり派手じゃないところが好き。クラフトマンワークの魅力というか、色も形も好ましい。映画のパロディも控えめ。(SHAKE‘N’NOT STIR’だって?)声優陣ではR・ウィリアムスのはまりっぷりと懐かしいM・ブルックスかな。定番のストーリーも奇をてらうより、大事なことを新しい世代に伝えていきたい真面目な姿勢からのように思える。以前TVの修理に来てもらった時にエンジニアの人が「TVがつかなくなると「壊れた」ってすぐ捨てちゃうけど、部品を取り替えればずっと使えるんですよね」とポツリと語っていたのを思い出す。今はさらに進んで何でもアップ・グレードの時代。モノを大切にする気持ちは忘れたくない。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-09-17 11:16:25)(良:2票)
15.  女王陛下の007
ボンドの結婚式で涙にくれる「心の恋人」マネーペニー。心中を気遣うMやQに健気に微笑む彼女にボンドが投げ与えるシルクハットが心憎い。彼が幾多の美女たちを摘み、愛し、失い、あるいは捨てても、変わらずボンドと共に在るのは彼女である。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-30 19:29:43)(良:2票)
16.  テス 《ネタバレ》 
トーマス・ハーディのもう一つの厭世的な作品「ジュード」(「日陰のふたり」)と同様に悲劇的内容ながら、ナスターシャ・キンスキーのあでやかな美しさとドーセット地方の緑ゆたかな田園風景が淀んだ水の中の白い石のごとく光を放つ。 天井より滴り落つ血は運命に翻弄され続けたテスが一矢報いたと言うべきか。 されど断罪さるべきは粗暴な支配者アレックよりも天使の名をもちながら身勝手な理想主義者であったエンジェルかもしれず、されば彼がテスとともに罪人として牽かれてゆく結尾には納得がいき、原著のテスの妹の存在を抹消したのは頷ける。(テスの望みとはいえ彼女の処刑後に彼がその妹と添うのは如何なものか) 朝霧流れるストーンヘンジの岩に身を横たえるテレザ・ダーヴィフィールドは、その呪わしき名と共に自分を苛んだこの世から消え去る時を静かに待っているかに見える。
[映画館(字幕)] 8点(2010-07-09 23:59:59)(良:2票)
17.  刑事ジョン・ブック/目撃者
SWとIJシリーズ、そしてBRを除けば、ハリソン・フォードの最も重要な作品、ピーター・ウィアーの品のいい演出が冴える。 サスペンス部分は映画としての体裁と米国人のブックを特殊な世界に投入するための道具立てにすぎないのだろうが、そこもよく出来ている。 見所はなんとも牧歌的で質素なアーミッシュの生活と、その中で移りゆくブックとレイチェル、村人の感情。 殺伐とした外界から隔絶され自然に即した村の17世紀さながらの世界にしばし憩う。 多かれ少なかれ人工的な環境の中にいる現代人が、彼らのプレーンな暮らしぶりに憧れを抱いても不思議ではないだろう。 村人総出の納屋の建設、カーラジオの音楽に誘われてのダンスも魅力的な場面。 洗練されすぎておらず大工の腕もあるフォードはこの世界に違和感なくなじみ、ケリー・マクギリスも通常の美人タイプでないのがよく寡黙でも目で語る。 やりすぎるということをしないウィアーが彼らが結ばれるシーンをカットしたのは正解な気がする、道で抱擁する場面だけで十分だからだ。 子役には興味が少ないがこのルーカス・ハースは静謐な面持ちがよかったし、アカツメクサが咲き匂う中での少年との無言の別れは静かに心にしみ、老人が仲間としておくる言葉に笑みがこぼれる。 寂しさが残る別れだが抜かりなくフォローがされ、時がたてば彼女はダニエルを受け入れるのだろう、ブックのことは忘れずとも、ということがわかるのだ。 モーリス・ジャールの澄みわたるシンセも映画を忘れがたいものにする。
[映画館(字幕)] 9点(2010-07-06 00:10:16)(良:2票)
18.  ストレイト・ストーリー 《ネタバレ》 
異色映像派監督の「らしくない作品」って必ずといっていいほどあり、スコットしかりバートンしかりギリアムしかり。 リンチにとってはこれ。 普段プライドがじゃまして出せないような作品を愛情をこめて作っていたりすると、人間のアザーサイドを知らされる気もする。 緑色のトラクターがゆっくりと進むさまは亀を思わせるノンビリ加減。けど車や自転車では早すぎて目にとまらないような景色をゆったりと眺められることでもある。 ファーンズワースは「赤毛のアン」の優しいマシューで、あの時よりお年を召していた。 ヒッチハイクの家出娘には毛利元就の束ねた矢に似た話をして家族の元に帰し、同年輩の戦争体験者にはそれまで人に言えなかった兵士時代の辛く苦しい思い出も口をついて出る、癒し癒されの道行き。 「老人になって一番悪いことは」 真実かもしれないけれど哀しい言葉だね。 ロードムービーってことでハリー・ディーン・スタントンも拝める。 2人で星空語りをしたら、また苦労しながら娘シシー・スペイセクが待ってる家まで帰るのかなあ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-03-04 01:35:37)(良:2票)
19.  ジュリエットからの手紙 《ネタバレ》 
「ロミ&ジュリ」の舞台ヴェローナから、ジュリエットへの半世紀前の手紙(邦題が「への」ではなく「からの」になったのは、その方が字面がよいからでしょう)がもたらしたイタリア・シエナへの旅。 アマンダ・サイフリッドは「マンマ・ミーア!」と同じソフィという名で、明るい南国の光の中にいるのが似合います。 2人の男性のうち婚約者の方が名の知れた俳優で、最初感じわるい英国人チャーリー(おっきな瞳のソフィと一緒にいると目が小さく見える~)は伏兵にしたいようですが、ソフィの心移りも自然に感じるほど後半の彼の軟化は好ましい。 「ロミ&ジュリ」のような一目ボレとちがい、当初イガみあっていたのが友人となり、そして…という彼らの時間をかけた関係は信頼ぬきでは成り立たない友情で裏打ちされ、婚約者との情熱だけの関係より確かなものに。 もう一人のヒロイン、クレアの恋の方が「ロミ&ジュリ」的ですが、彼らの関係は時間に侵食されなかったよう。 ヴァネッサ・レッドグレーヴは、娘の一人ナターシャ・リチャードソン(リーアム・ニーソン夫人)を亡くした直後とは思えないほど明るく穏やかな表情が魅力的ですが、持ち前の気丈さに加え仕事にうちこんだ方が悲しみを忘れられると思ったのでしょうか。 イタリアの輝く黄金色の陽光を存分に浴び、若い俳優からエネルギーをもらい、イタリア人パートナー(白馬の王子様はあの人!)とも共演できて、無理を押して今作に出たことでレッドグレーヴ自身も大きな力を与えられたのかもしれません。 見た人を幸せな気持ちにし、観客だけでなく演じる人たちも同じように至福だったのでは、と思える作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-08-02 07:00:04)(良:2票)
20.  奇跡の海
ラース・フォン・トリアーってワザと人の嫌がるような映画を作ってほくそえんでる人。 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のセルマやこのべスみたいに、卑屈な犠牲的精神とそれによってもたらされる陶酔感に酔い痴れる精神の薄弱な女性をいたぶった映画を撮ればカンヌなどで目立つことはできるでしょうけど、それ以上の意味はないよね。 あのお医者さんも他の映画なら「いい人」と思うかもだけど、べスの愚直さを際立たせるために置かれたお飾りキャラ。 無駄に長くてトリアーのおふざけにつきあわされてる気しかしない。 孤高のアーティストを気どる下劣な輩じゃないでしょうか。 (「青い影」なんて使うなぁ!)
[CS・衛星(字幕)] 3点(2011-03-05 00:00:07)(良:2票)

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