1. ミスト
ネタバレ 他レビュアー諸氏の辛口批評を確認すべく気合を入れて鑑賞。 確かに怪物達の描写はイマイチ、無闇に不安感を煽る宗教オバサンの存在にもイラついた。でも、何だかんだ言ってもキリスト教が最大勢力の国で作られた映画なのだ。宗教観バリバリの描写は止むを得ないだろう。 終幕近くの巨大な怪物の描写には荘厳な感覚を覚えたのも事実。最後の最後、宗教とか一切関係なく純粋に子供に会いたいと願い、皆の制止を振り切って一人霧の中に出た女性が生き残る(ご丁寧に「地獄へ落ちろ」とまで言い残して)描写も、何かを暗示している様で興味深かった。 ここまでなら7点は献上しても良いと思う。だがしかし、しかし!! 自分の子供を自ら殺める描写だけはどうしても勘弁ならない。確かにあれだけの壮絶な状況を経験したのだ、どうしようも無く絶望的な状況で「あれ」は取るべき唯一の手段なのかも知れない。だが、結局最後は死んでしまうとしても親というものは自分の子供を自ら殺めてはならない。 最後の最後まで、例え僅かな希望しか無くとも、自分を犠牲にしてでも息子を生き永らえさせる行動に出るのが親なのでは? 本作はハリウッドのメジャー企業が大金を投じて作成した映画だ。 なのでその描写には少なからず社会的な責任が生じると私は思う。この点から、こうした映画にしてしまった製作者側への抗議を込めて0点とさせて頂く。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2009-05-06 12:57:58)(良:6票) |
2. シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
ネタバレ 平均的を下げてしまい、申し訳ありません。 結論から書くと、私に取ってはとんでもない駄作です。 26年もの歳月と莫大な費用を掛けて、あの滅茶苦茶な TVシリーズ最終回をそのまま作り直しただけとしか私には思えませんでした。 お断りしておきますが、私は一連のエヴァシリーズのコアなファンでは有りません。 TVシリーズを観て、途中迄は表現するのが難しい位の高揚感を感じました。 「これはとんでも無い展開になる、どの様な幕引きをするのか?」と。 ...見事に裏切られました。 新たに劇場版として新作が制作される、今回はキチンと幕引きする様だ、と言う話を聞き期待して見た新劇場版。 あのTVシリーズ途中までに感じた高揚感にケジメを付けてくれるのか? その思いは前作「Q」でものの見事に裏切られました。 それでも私は、本作に僅かでも期待していたのですが… 理解出来ない、整理が付かない事ばかりです。 意味が判らない台詞・専門用語のオンパレード。 まるで仮想世界で繰り広げられているかの様な戦闘シーン。 前作までの戦闘シーンは一体何だったのか? 何故、何処かの撮影スタジオで戦う? 何故、教室やアパートの一室で戦う? 全ては主人公の脳内妄想なのか? ニアサードインパクトって本当に起こった事なのか? 百歩譲って終盤一連の戦闘シーンが異次元か何処かで繰り広げられていたとして、 最後の戦いが終わり、あの村の人々はどうなったのか? 何故、前作や本作の途中で絶命した人達が何も無かったかの様に駅のホームで談笑しているのか? 主人公は声変わりしてスーツにネクタイ、駅前のロータリーを楽しげに走り去って行くが、 何がどうしてこの様な展開になったのか? 仮に、終盤に主人公が口にする「Neon Genesis」が具現化したのだとしても、全てが余りにも説明不足過ぎる。 また、人智を超えた存在が人類を巻き込み戦わせ、最終的に新たな生命・世界創造の起源となる、 即ち、人類補完計画の原案はイデオンで既に見させて貰っています。 アプローチは違えど、「2001年宇宙の旅」「2010年」もエヴァンゲリオン=モノリスと捉えれば、同じ類の作品だと思えます。 私の様な一般の映画ファンに取っては、大変申し訳無いのですがこの点数です。 [映画館(邦画)] 0点(2021-03-14 23:04:46)(良:5票) |
3. ゴジラ-1.0
ネタバレ 【2024/3/11追記】 アカデミー賞視覚効果賞受賞、本当に、本当におめでとう! やった! 快挙だ!! 【以下オリジナル】 IMAXで鑑賞、大正解でした。 「シン・ゴジラ」が傑作なら、私に取って本作は大傑作です。 やはりゴジラには人類の味方など似合わない。徹頭徹尾悪役に徹すべき。 戦後復興した東京の街が思いっ切り再破壊される描写は、それがフィクションだと判っていても 東日本大震災やウクライナそしてイスラエルでの悲惨極まりない実際の光景を報道で目にして来た身としてはやはり胸が痛む。 神木隆之介の演技を観るのは本作が実質初めて、とても良い演技をしていた様に思う。 彼の事を良くご存知の方には「今更」ながら、今後注目したい。 そして山崎貴。 彼ほど賛否両論がハッキリ別れる映像作家も珍しいと思う。 私は肯定派で、今の日本で彼の様に終始一貫した作風を貫くのは稀有で良い事だと思っている。 次作が有る様だが、主旨替えなどせずこのまま突っ走って頂きたい。 ゴジラは日本が/世界が乗り越えるべき『業』を具現化した存在。 それを如何に乗り越えるかに感動が有る。 追伸 戦時下の日本を礼賛する気は皆目無いのだが、本作で大活躍した旧日本海軍の極地戦闘機「震電」の勇姿には胸が熱くなった。 その独特のフォルムにはあの時代だからこそ成し得た寂寥感に近い何とも表現し難い魅力が有り、 CGとは言え実際に飛ぶ姿に感無量になった次第。 [映画館(字幕)] 10点(2023-11-06 17:51:33)(良:4票) |
4. マイケル・ジャクソン/THIS IS IT
ネタバレ 本作を観て、マスコミの垂れ流す風評が如何にいい加減なものなのか、先入観は持つべきでは無いと言う事を改めて思い知らされた。 正直な所、私はマイケルが久々のライブを演ると聞いた時、「ホントに出来るのか?」と疑問を持ったし、亡くなられた時も本作を観た後では失礼極まりない考えとしか思えないが、「土壇場で追い詰められたが故の自殺か?」と思った。 でも、本作を観てそんな思いは全て吹っ飛んでしまった。 齢50を迎えても衰えぬ彼の体のキレと歌唱力、そして周辺の人々をポジティブにインボルブする事の出来るカリスマ性・・・ 映し出される映像の全てが、King of Popと呼ばれた彼の人となりを反映している様で、彼の奇行を面白おかしく騒ぎ立てるマスコミに踊らされていた自分が恥ずかしくなった。 もし、彼が亡くならなければ、今回の公演は間違い無く後世に語り継がれるものになっていただろう。 目を輝かせて彼と同じステージに立つ事を誇らしげに語るダンサー達、ミュージシャン達の無念さは察するに余り有る。 改めて彼の冥福を祈りたい。 [映画館(字幕)] 8点(2009-11-16 08:44:39)(良:4票) |
5. ファーザー
ネタバレ アンソニー・ホプキンスのアカデミー主演男優賞獲得も納得の重厚な傑作である。 以下、私のプライベートな事を記述する事をお許し頂きたい。 私が本サイトにレビュアーとして登録したのは2008年、実に13年も前の事だ。 時間だけは万物に平等なので、私自身の生活・環境も相応に変化している。 所謂、「人生の荒波に揉まれた」と言う事なのだろう。 私の父は私が4歳の時に病死した。 以来、独り立ちする22歳までは母親が私も含む子供3人を女手一つで育て、大学まで行かせてくれた。 私自身も社会人となり、金を稼ぐ事の大変さを身を持って知って以来、母には感謝しか無い。 そんな母は3年前から認知症を患っている。 子供に取ってある意味親は絶対的な存在だ。 今も思い出すのは、夜遅くまで内職していた姿。 いつも気を張り頑張っていた姿。 そんな母が認知症を患い、元気だった頃には想像もしなかった姿を目の当たりにするのは、人生観が変わる出来事だった。 私は常々、何故母はこんな言動をするのだろうか?と思いながら接しているのだが、 本作のアンソニー・ホプキンスは認知症を患った側の立場を、半ば恐ろしさを感じさせる程の演技で擬似体験させてくれる。 本作で表現された事が認知症患者の全てを語っている訳では決して無く、まだまだ甘いと思われる方も大勢いるだろう。 でも私は、今正に身内が認知症で色々な思いを抱えながら日々を生きている方々は勿論、 まだ実親が高齢では無い年代の方々にも本作を是非とも観て頂きたいと心から願う。 ハッキリ言って救いは無い物語だ。 でも、人間としてこの世に生を受け生活しているならば、決して目を背けてはならない世界が本作には有る。 [映画館(字幕)] 9点(2021-05-15 16:55:17)(良:4票) |
6. ジュラシック・パーク
ネタバレ まだ「シネコン」なんて言葉が無かった時、有楽町まで馳せ参じて先々行オールナイトを長時間並んで観ました。もう15年も前になるのですね。 一緒に鑑賞している他のお客さんとの一体感という意味では、この作品は私のベスト3に入ります。 ブラキオサウルスが登場するシーンで皆一斉に「お~っ」とざわめいた時、何だか映画っていいな~と素直に思えた私はまだ若かった・・・ オッサンになった今も積極的に劇場で映画を観る理由の一つは、この一体感を味わいたいからなのかも知れません。 [映画館(字幕)] 7点(2008-06-30 19:42:31)(良:3票) |
7. コーダ あいのうた
ネタバレ 2022/3/28追記 祝!! トロイ・コッツァー、アカデミー賞最優秀助演男優賞受賞!! それだけじゃなくて作品賞も受賞だ!! 気分いいぞ!! -------------------------------------- 2022/2/9追記 祝! トロイ・コッツァー、アカデミー賞助演男優賞ノミネート!! -------------------------------------- 素直に10点献上します。 素晴らしい映画です。 何だかんだと言い合い(手話で)ながらも、お互いを気遣い健気に生活している家族。 この設定だけで私もう駄目でした。 ・「家族の犠牲になるな!」必死に感情を込めて訴える兄貴、なんていい奴なんだ! ・耳が聞こえる娘が生まれた時の複雑な気持ちを偽りなく話す母、あのシーンはお涙頂戴的に 「耳が聞こえる娘が生まれてきて嬉しかった」と言わせる事も出来たはず。 でもそうしなかった事にこの作品の真価の一つが有る。 ・「もうベイビーじゃない!」「もう一度、ここで歌ってくれないか?」娘の喉に優しく手を当て、 伝わってくる振動から娘の本気・熱い思いを感じ取る父、ああ、なん良いシーンなんだ。 ・このシーンを経ての音楽大学入試のシーン、家族がいる事を知った娘が手話を交えて実に情感豊かに歌う。 はい、もう私涙腺崩壊で顔グチャグチャでした。 この一家は娘さんが家を出た後は、兄貴の彼女が手話を覚えて家族となり、他の働き手も加えながら堅実に でも賑やかにこれからも生活していくのだろう。だから娘さん、家族の事は兄貴に任せて歌に集中して下さいね。 予定調和? ご都合主義? 話が上手く運びすぎ? 黙らっしゃい!! 最後に一言、V先生、あんた最高だよ。 [映画館(字幕)] 10点(2022-02-03 15:56:07)(笑:1票) (良:2票) |
8. THE FIRST SLAM DUNK
ネタバレ もしかしたら本作を観る客層の中では珍しいのかも知れないが、私は「スラムダンク」と言う作品に関する予備知識は皆無だ。 原作漫画未読、TVアニメ未見、知っているのは主人公の名前が桜木花道とか言う三流演歌歌手の様な名前、と言う位。 その様なAway感満載で臨んだ本作、何とまあ物凄く面白かったのである。 まず、そのオープニングからしてカッコいい。 ビートの効いた音楽に合わせて始まる鉛筆画によるアニメ―ション。 聞く所によると原作者兼本作監督の自筆らしいが、この様な勢いを感じつつ丁寧なオープニングの作品は 実写・アニメを問わず傑作の匂いがプンプン。 コアな原作ファンの間で賛否両論らしい、別の主人公を据えた設定や時系列を入れ替えた構成も予備知識ゼロで有る事が幸いし全く違和感を感じなかった。 映像を目で追いながら自分の頭の中で辻褄を合わせるスリリングな映画体験、私大好きなんです。 実際にバスケをやっていた人に言わせると荒唐無稽な試合展開だそうだが、大差を付けられ~追いつき~追いつかれ~最後の最後で逆転勝利と言う王道な展開もベタ過ぎて心地良い。 予備知識なしで臨む映画鑑賞の醍醐味を堪能した次第。 可能ならもう一回観たい。 蛇足...宮城リョータの母上、宮城カオルさん。私のタイプです(真面目なファンの皆様ごめんなさい爆)。 [映画館(邦画)] 9点(2023-01-09 16:16:32)(良:3票) |
9. トロン:レガシー
ネタバレ CG映像の先駆けたる前作は、現在の映像と比較するまでも無いが当時の私には「映像革命」以外の何物でも無かった。 私は主人公がライトサイクルにトランスフォームするシーン(だけ)観たさに映画館に一日中居たりした、時間だけは有ったのだ。 翻って本作。私は「トロン」という作品に難しい親子関係の描写など全く期待してしない。 望んでいたのは「次の新しい革命も我々が起こす」と言わんばかりの、最初から最後まで頭痛がする程に怒涛の如く展開される最新CG+3D映像のオンパレード。 だが、残念ながら実際は想像していたよりも遥かに地味な内容、CG+3Dも期待以下で有った。 恐らく製作陣は前作と同様に主人公がゲームの世界で能天気に一喜一憂する展開では余りにも薄っぺらい内容になってしまうと判断したのだろう。 それが正解か否か? 世間が本作に求めているものからすると「否」だと私は思う。 私はCG映像はLOTRシリーズとアバターで一つの頂点を迎えたと思っている。 では今後求められているものは何か? やはり、最先端の映像を使い切り、且つ観客を唸らせるだけの優れた「脚本」なのでは無いだろうか? 映像だけで観客を喜ばせる事は既に限界が見え始めている・・・ と私は思う。 [映画館(字幕)] 5点(2011-01-10 13:12:30)(良:3票) |
10. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
ネタバレ ブルーレイにて再観賞。結論としては0点に変更。 説明・描写不足の部分を観客の想像・推測・議論で補わせる手法はTV版だけで終わりにして欲しい。 完結となる(予定?)次作で挽回するのは不可能では無いかと思える程の観客の突き放し方は余りにも酷すぎる。 「こんな事で怒っている様じゃあ、エヴァを観る資格無し」と言われそうだが、私は単なる一般客でコアなファンでも何でも無い。 何よりも、製作陣が私が書いたこの様な評価を見る事で「こいつも俺達の術中にハマった・・・」とほくそ笑んでいるであろう事を想像するのが一番胸糞悪い。 [映画館(邦画)] 0点(2012-11-19 09:12:31)(良:3票) |
11. SPACE BATTLESHIP ヤマト
ネタバレ 他レビュアー諸氏の感想を読み、本作に対する感想は世代を問わず共通なのだと判り嬉しく思っている。 今、私は「良い映画を観た」という感慨深い気持ちで一杯だ。 私はバリバリのヤマト世代、TV再放送・映画版含め殆ど制覇しており「オリジナル」への思い入れも多少は有る。 そんな私でも本作は充分以上に『有り』だと思った。 何よりも、日本人が自分達で本作を作成した事が嬉しい。下手なハリウッドリメイクの餌食にならず本当に良かった。 そして、本作を世に送り出した監督・スタッフ・キャストの皆さんに拍手を送りたい。30年以上も前の作品に現代の解釈を上手く調合し、オリジナルの世界観を壊す事なく沢山有るエピソードを絶妙に足し引きしつつ見事に最新の映画として完成させた事は本当に素晴らしいと思う。 (イスカンダルとガミラスの新解釈は特に素晴らしい) 日本のSF映画は、なぜか自虐的にハリウッド映画と比較されあれこれ言われてしまう傾向が非常に強いが、本作はその「壁」を自ら壊す事に成功したのでは無いか。 ここは10点差し上げたい所だが、最後はああするしかなかったとしても、特攻礼賛と受け止められかねないラストの描写にマイナス2点で合計8点献上させて頂きます。 最後に、他レビュアーの方も書いておられるが森雪が某スキャンダル女優では無くて 本~当に良かった(笑) もう一点追記 緒方直人に個人的な熱演賞を差し上げたい。彼を見直しました!良い演技だった!! [映画館(邦画)] 8点(2010-12-06 11:57:53)(良:3票) |
12. ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
ネタバレ 新作が観られたのは嬉しいが、頭の中では終始「違うんだよなぁ、これじゃないんだよなぁ」と言う思いが渦巻いていた。 思えば1年程前だったろうか、今も動画サイトで観る事が出来るが本作のプレ予告は人間が一切登場しない、ジュラ紀か白亜紀の恐竜の様子が延々と続く、それはもう新作に向ける期待を煽る素晴らしい内容だった。 私が本シリーズに期待しているのは、とにかくスクリーン狭しと恐竜たちが縦横無尽に暴れまわる映像で、何処かで観た様なスパイ映画 の一部をコピーした様な映像等では絶対に無い。 新旧3部作の俳優陣総出演は本シリーズのフィナーレに相応しいのかと思うが、総じて期待以下だったと言うのが正直な所。 いっその事、御大フィル・ティペット氏にここは奮起頂き、改めてCGでは無くコマ撮りアニメで恐竜だけ(人間など要らん)が大挙出演しスクリーンで暴れまわる「シン・ジュラシックワールド」を15分の短編でも良いから作成して頂きたいと思ってしまった。 最後に、恐竜を世に放ち世界中を混乱に陥れた張本人が刑務所に入る訳でも無くのほほんと山奥で暮らしているのは、絶対におかしいと思うぞ。 [映画館(字幕)] 3点(2022-08-24 16:39:54)(良:3票) |
13. 009 RE:CYBORG
ネタバレ ①「俺だったらこういう映像にする!」溢れ出る製作陣の熱い思い +100点 ②これぞ真打、009の加速装置の映像化とはこういう事だ! +100点 ③生きているジェット戦闘機、002の爽快感溢れるカッコ良すぎる描写 +100点 ④大人の鑑賞に堪える、無駄にエロい003 +1000点 ⑤訳の判らないストーリー、もっと訳の判らない幕の引き方 -1299点 上記合計して1点。 以上! [CS・衛星(邦画)] 1点(2019-03-04 16:16:03)(笑:3票) |
14. ゾンビ/ディレクターズカット完全版
ネタバレ 今更ながらレビューしていない事に気が付いた。 【以下、長すぎる前書き】 私が小学校高学年位の時は、詳しい背景は知らないがTVで劇場公開作の宣伝番組を今以上に沢山放送していた様な気がする。 色々なジャンルの作品が取り上げられていたけれど、「あなたの知らない世界」等のワイドショーをおっかなびっくり観ていた私に取って、 ホラー映画(後に「スプラッター・ムービー」)は一番楽しみにしていた番組だった。 その中でも何故か、この『ゾンビ』はエレベーターに乱入してくるゾンビ達のビジュアル含め、私の記憶に強く刻み付けられた。 残念ながら初回公開時に劇場で鑑賞する事は適わなかったが、時は流れて1985年、18歳の私は日芸映画学科に入学した姉の影響も有り、 単なる時間潰しでは無く、意識して映画館に足を運び、レンタルビデオ屋にも足しげく通ういっぱしの映画青年になっていた。 そんな中で開催された第一回東京国際映画祭、中でも目玉企画の一つであった東京国際ファンタスティック映画祭の開催は、 日本に於いてホラー映画が初めて正式に認知された記念すべき出来事で有り、私はなけなしのバイト代でチケットを買い、 連日の様に今はもう無い渋谷パンテオンに通い詰めていた。 この流れで過去のホラー映画にも再び焦点が当たり始め、ゾンビのリバイバル公開と言うこれまた記念すべき出来事に至る。 当時、満席(!)のオールナイト上映で本作を3回連続で観たのも、今となっては良い思い出だ。 【やっと本題】 小学校高学年の時にTVで刷り込まれた印象が強すぎたのか、劇場初見時の印象は実は余り良くない。 もっと派手にゾンビ達を狩るシーンや、人間達が食われている描写のオンパレードかと思いきや、どちらかと言うと冗長な、 悪く言うと眠くなりそうな雰囲気の中で物語は進行していく。 これこそがいわゆる「ロメロ節」の一つなのだが、まだ20歳前の私には理解が出来なかった様だ。 更に時は流れ、ホラー映画が映画のジャンルの一つとして成立し、特殊メイク技術の発達に伴い雨後の筍の如くゾンビ映画が 巷に溢れる様になった今、敢えて本作を見返すと、いまこの年代だからこそ判る表現・描写が多い事に今更ながら唸らされる。 本作を評するのに既に使い古されたフレーズだが、本作はそのまま人間社会の縮図であると言える。 表面的に映像を追いかけるのでは無く、このシーン・この台詞にはどの様な意図が盛り込まれているのか?と考えながら 映画を観る様になったのも、私の場合は他でもないこの「ゾンビ」からなのだ。 家族みんなでワイワイ観る映画では無い、馬鹿笑いしたいなら、CGテンコ盛りの走り回るゾンビが大挙して出てくる作品を観れば良い。 本作は、夜一人で酒でも飲みながらじっくりと観たい。そう思える作品なのだ。 自分自身の映画鑑賞史に於ける本作の大きさ、後世の数多の作品に与えた影響を称え、満点献上します。 [映画館(字幕)] 10点(2016-08-05 13:50:02)(良:3票) |
15. マン・オブ・スティール
ネタバレ アメリカが世界に誇るスーパーヒーローをまたしても映画化。 技術の進歩に伴い「今の技術でこれ映像化したら凄くね?」と思う気持ちは良く判る。 半端な作品は世に出せない覚悟の表れなのか、製作陣&俳優陣は超豪華。 これで期待するなというのは無理な話で、敷居は自ずとかなり高くなる。 結論から言うと満点では無いが、本作は大画面の映画館で観賞して初めてその価値と面白さが理解出来る作品。 脚本は前半は二重丸。 お約束の赤ん坊を乗せた宇宙船が農場に墜落するシーンから幼少期~青年期の主人公の成長に移行する流れを変えたのは成功だったと思うが、後半の怒涛の如く展開する戦闘シーンは長すぎるし、破壊しすぎ。 他レビュアー諸氏も記載されている様に、「地球一強い男は、地球一迷惑な奴だった」と言われても仕方の無い話。 あれだけの破壊(殺戮)の発端だった男が、社会的にどの様にけじめを付けたのか、破壊の限りを尽くされたメトロポリスがどの様にして復興したのか全く描写されていないのも少々引っかかる。なので、能天気に「世界の情報が一番最初に集まる場所だから」と伊達メガネを新調して新聞社に就職している場合ではないだろう。 という余計な突っ込みを入れたくなる。 色々と書いたが、製作陣の気合は充分に感じられたし、出番は短いながらもケビン・コスナーの枯れた名演技(本作ではこれが一番の収穫かも)も堪能出来たので良しとする。 観賞するならIMAX3D字幕版がベスト。 [映画館(字幕)] 7点(2013-09-17 13:35:30)(良:3票) |
16. スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
ネタバレ 10点満点は大甘のご祝儀として。 シリーズ史上最悪のつまらなさだった前作から、力技多発ながらよくぞここまで纏めきったと思う。 JJご苦労様。 私がレビューしたかった事は他の皆様が殆どUPされているので、重複感満載なれど以下にてレビューします。 1.ハックス将軍、憐れ也。 前作まではファースト・オーダーの二大巨頭をカイロ・レンと張っていた筈ながら、数多の失敗が影響したのか本作では中間管理職の様な扱いに。 言いたい事も言えずスパイまでしていたのに最期はあっけなく射殺って・・・ 新3部作で最も存在がコントの様な方でした。 2.まさかのウェッジ・アンティリーズ登場 銀河一の戦闘機乗り、コレリアンの生ける伝説。久々にお会いできました。 3.A-Wingファイター、大活躍 個人的にSTAR WARSの世界で最もカッコいい戦闘機だと思ってます。 4.反則のラストシーン ジェダイとシスにバランスをもたらしたのがパルパティーンの孫で有っても私は構いません。 エピソード4初見時、そう私は小学校5年生でした。 「スカイウォーカー」の意味を辞書で引き、「なんていい名前なんだ!」と感動しました。 この名前がこれからも受け継いでいかれるなら私には文句はありません。 ここはエピソード3「シスの復讐」観賞時に当サイトに記載したレビューをそのまま抜粋して引用すべきでしょう。 『ラストの二つの太陽。あのシーンで全てが昇華する。私は初めてスターウォーズを鑑賞した11歳に戻り、 映画という素晴らしい世界を初めて体験した感動の原点を思い出す。これぞ映画の醍醐味。』 約40年に渡る本作への思いがこのシーンに凝縮されています。 そう、これで良かったんでしょう。 [映画館(字幕)] 10点(2019-12-23 11:53:39)(良:2票) |
17. ボヘミアン・ラプソディ
ネタバレ 素晴らしい。 この企画が製作会社の審査を通り予算を得て、こうして世に出てくると言う正に奇跡と言える出来事にまず感謝したい。 ほんの数年前まで、まさかQueenが題材の映画がドキュメンタリーでは無く生身の俳優による演技で製作されるとは夢にも思わなかった。 私は30年超の自称「筋金入り」のQueenファンだ。なので以下レビューには思い入れが大量に盛られている事をご了承頂きたい。 Quennの魅力は本当に沢山ある。代表的なものは煌びやかなメロディ・音飾による世界観や、フレディ・ブライアン・ロジャー・ジョーンと言う 個性的且つ才能溢れるメンバーの集合体である事だろうか。 本作を観て、私は改めてQueenの楽曲に込められた詩のもつ意味・そして素晴らしさを再認識した。 全ての楽曲には生み出された当時の各メンバー達の境遇や思いが色濃く反映されているのは当然だが、 本作を観て私は彼らが送り出している曲は、市井の人々への普遍的な応援歌なのだ言う思いを新たにした。 共感出来る所が沢山あるからこそ、国境や言葉の違いを超えてQueenの楽曲は拡がり続け、言語は違ってもコンサートで皆が大合唱し、 沢山の楽曲が今も尚世界中で聞かれ続けている。 見事なまでに再現されたLive Aidの一幕、We are the Championsを泣きながら嬉しそうに歌う会場の人たち、 楽しそうに観客と呼びかけ合うフレディの表情、そしてフレディを見守る(そう、まさにQueenとは他3人のメンバーがフレディを見守る事で 成り立っていたバンドなのだと私は今でも信じている)メンバーの優しい表情、的確な歌詞の翻訳も有り、涙腺崩壊とはまさにこの事だ!! 一番好きな曲であるRadio Ga Gaが取り上げられた事も嬉しい。 次回は一番後ろの席で観て、他の皆さんに迷惑を掛けぬ様にQueenやウェンブリーに集った観客と一緒に両手を高く掲げたいと思う。 最後に、本作を鑑賞される方は言うまでも無くLive Aidの再鑑賞と、可能ならばアメリカのTVドラマ「The Pacific」の鑑賞を強くお勧めしたい。 フレディを演じたラミ・マレックとジョーンを演じたジョー・マッゼロが競演しており、特にラミ・マレックは観る側に強烈な印象を残す役柄を 熱演している。 個人的には二人の再共演も嬉しいサプライズだった。 [映画館(字幕)] 10点(2018-11-16 13:12:12)(良:2票) |
18. ボビーに首ったけ
ネタバレ オートバイの危険性『だけ』を何の主張も無く世間に垂れ流し、誤解を広めた悪しき作品。実際はこんな薄っぺらいもんじゃ無い。絶対に無い。 [ビデオ(邦画)] 0点(2011-06-28 16:34:15)(笑:2票) |
19. パラサイト 半地下の家族
ネタバレ 語り口は巧妙、物語は絶妙な緩急を付けながら進んでいく。 ポン・ジュノ監督の特色である「あざとさ」も今回は程々に、「これからどうなるのか?」と観る側に期待させつつラストは怒涛の展開へ。 うむ、良く出来た面白い映画だと思う。 でも、果たして本作がアカデミー作品賞に相応しいかどうか?は、決して負け惜しみでは無く甚だ疑問だ。 穿った見方をすれば、今回の作品賞受賞は受賞に必要な様々な要素が正にドンピシャのタイミングで揃っただけの様に思える。 人種差別に辟易しているアメリカ、そんな中で映画界はSNSの影響でイベントの司会者を選ぶのも一苦労。 色々なしがらみや制約にがんじがらめになり息切れ寸前だったアメリカ映画界には、風穴を開けてくれる「何か」が必要だった。 本作は文字通りその「何か」だったのでは無いか。 今の世の中で万人が納得し、世界に新鮮味を与える事が可能な結果として導き出されたのが本作への作品賞授与なのでは。 見方を変えれば、自国の映画を積極的に海外に宣伝する韓国映画産業の勝利とも言える。 良し悪し・好き嫌いは別にして、売り込まなければ受賞の機会は巡って来ないし、駄作ならば審査に通らない。 長編外国映画部門と長編アニメーション部門の選考に残っただけで大喜びしている日本の映画界に取っては、 これ以上ない自らを省みるべき事件だと私は思う。これで目覚めなければどうしようもない。 本作の語り部である長男はおそらく財を成す事は叶わず、父親との豪邸での感動の再開は叶わないだろう。 父親があのまま地下室で朽ち果てるとも思えないが、観る側に束の間の安堵感を与えながらのあの少々ほろ苦い幕の引き方、 上手いと思う。 蛇足 ・あのラーメンは絶対に味が濃すぎると思う。 ・長男が最後まで松田龍平に見えて仕方がなかった。 [映画館(字幕)] 6点(2020-02-18 14:31:35)(良:2票) |
20. ヴィデオドローム
ネタバレ 【今回も長すぎる前書き】 映画評論家:町山智浩氏の著作を読んだ事がきっかけとなり、久々に鑑賞した。 初見は大学2年生、今から何と30年も前の事になる。 時の流れの速さには驚くばかりだが、それ以上に本作が未だに公開当時の謎めいた雰囲気を維持している事に驚愕した。 事の起こりは高校生の時。 「STARLOG」「FANGOLIA」等の洋物映画情報誌の日本版が発売されていた幸せな時代。 おどろおどろしい写真と共に紹介されていたVideodromeの紹介記事に私は釘付けとなった。 海賊盤(死語)が出回っているとの噂も聞いたが、世はまだレンタルビデオが流行し始めた黎明期。 どこで手に入るかも判らぬ謎の本作は、例え様も無い魅力的な作品として私の心の片隅にずっとこびりついていた。 時は流れて(確か)1988年、東京国際映画祭に於けるファンタスティック映画祭の成功が影響し日本で開催された「SFXアカデミー」、 本作の特殊メイクを担当したリック・ベイカーが来日し講演すると聞き、チケットを探し回ったが時既に遅く全席売り切れ。 落胆していた私に、当時日芸映画学科に在席していた姉がどこで仕入れたのか判らないがチケットを準備してくれた! 姉には本当に感謝あるのみ。 講演の内容は今でも鮮明に覚えている。 ベイカー氏本人が自ら"Do you like this film?"とVideodromeに関して質問、 それに対して大勢の聴衆が一斉に挙手!(今みたいに”Yes”とは誰も言わなかった様な)それを見たベイカー氏は 悪戯っぽい顔でニヤリと笑いながら”Sick People...(みんなビョーキだね笑)"と返す。 幸せな時間でした。 【やっと本文】 本作ほど、観る度に謎が謎を呼ぶ作品は無いだろう。 後の多チャンネル化、暴力コンテンツの隆盛と衰退を予見したかの様な世界観。 製作年度が旧いが故の、画面の微妙な粗さが本作のいかがわしさにブーストを掛ける。 皆がメディアに取り付かれ・メディア無しでは生きていけず、メディア内の出来事に一喜一憂し、 時には自らの命をも絶ってしまう・・・ 拳銃と有機的に絡みあい、妄想と現実の中でのたうち回るマックスの姿は、紛う事無くスマホに心身ともに蹂躪され、 それを自覚していながら抜け出す事が出来ない現在の私たちそのものだと思う。 マックスは自らの命を絶つことで新しい次元=精神の開放を果たした。 それは果たして本当に幸せな結末だったのだろうか。 翻って私たちはどうすれば良いのか? 初鑑賞時は特殊メイクを目で追う事に終始し、ストーリーは二の次だった。 社会人になってからは本作の内面に秘められた作者のメッセージを何とか読み取ろうともがいた。 齢50を超え、ようやく本作の意図が客観的に俯瞰出来る様になったのかと思う。 鑑賞する年齢で作品への印象が劇的に変わる、「映画の魅力」をまたもや再認識させられた。 (注)本作は冗談抜きで万人向きの映画では決してありません。 鑑賞する際は十分にご注意の程。 [ビデオ(字幕)] 8点(2017-11-28 17:34:28)(良:2票) |