Menu
 > レビュワー
 > S&S さんのレビュー一覧
S&Sさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122
>> 通常表示
1.  セッション 《ネタバレ》 
ジャズってなんかプレイヤーたちが感性に導かれるままにフリーダムに演奏するものだと思っていましたら、ビッグバンドになるとまるで交響楽団みたいにガチガチの指揮になるんですね、ほんと知らなかった。このフレッチャーという男は鬼教師なんて次元を超越してエゴの塊みたいな悪漢というレベルです。指揮者や映画監督などの巨匠たちは、黒澤明や溝口健二の例を出すまでもなく自分が芸術と信じるものに対しては絶対妥協しないものですが、この映画でのフレッチャーにはストイックさと同時に人間としての嫌らしさが前面に出ていて実にリアルなキャラです。ニーマンを三時間も早く呼びだすなんてもう単なるイジワルとしか思えないし、教え子の死を伝えるにしても自分に都合が悪いとなると自殺を交通事故だと偽るし、実際こういう人よくいるんですよ。この二人は、良く考えると物語の中盤からはもはや師弟ですら無くなってるんです。フレッチャーは復讐のためにニーマンをフェスに呼ぶし、ニーマンの方はもはやスカウトされるという目的などどっかに吹っ飛ばしてフレッチャーにひと泡吹かせるためだけにドラムリズムを機関銃みたいに浴びせかける。これほどムダを削ぎ落して男同士の対決というかケンカを見せてくれる映画というのも珍しいです。ニーマンという男の描き方も、自意識過剰だし酷い仕打ちをした元カノに自分が苦境に落ちるとすり寄ったり、この平凡な弱さがとてもリアルです。 そして何よりも気に入ったのが、観客の総立ち喝采なんてクサイものをいっさい見せずあのタイミングで暗転させる閉め方です。なにも語ってはいないけど、きっと元カノは観に来なかったろうし二人は決して和解はしなかったんだろうと確信しています。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2016-03-15 23:18:04)(良:4票)
2.  英国王のスピーチ 《ネタバレ》 
「オスカー獲るほどの映画か?『ソーシャル・ネットワーク』の方がいいじゃん」という批判があったことは承知してますけど、まあこれはこれで良かったんじゃないですか。作品賞はともかくとしても、演技賞は三人とも受賞すべきだったのは間違いなしです。とくにジェフリー・ラッシュ、なんか怪しげなところもあるライオネル・ローグを絶妙な演技で表現していて、脱帽です。コリン・ファースが手に汗握るスピーチをしている前で、始めはまるでオーケストラの指揮者の様に奮闘していたラッシュが、最後には王の言葉に打たれて畏敬の念を示してゆくのはホント名シーンでした。そしてバックにベートーベンの交響曲七番第二楽章を流されては、もう泣くしかありませんでした。 余談ですが本作の日本版予告編は予告編史上に残る大傑作だと思います、これだけで泣けます。
[DVD(字幕)] 8点(2011-11-16 20:54:41)(良:4票)
3.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
そうだったんです、ゴジラをリブートする映画作家は日本では庵野秀明しかいなかったんですよ。庵野にゴジラを撮らせる決断を下した東宝には、最大級の賛辞を贈りたいです。そしてたった15億円でこんだけの作品が製作できたってことも、ある意味で日本映画界の偉業だと思います。だって15億なんておカネは、ハリウッドではブラピやトム・クルーズなんかの一人かせいぜい二人分のギャラに過ぎないんですよ。ハリウッドでこれだけの大作を撮ったら、100億円単位の予算になることは必定です。エンドタイトルに延々と流れる俳優たちの名前を観ていると、この人たちのギャラははハリウッドの何分の一なんだろう、と製作費から逆算したらなんか可哀想になってきました。 平成の世にゴジラを蘇らせたらゴジラは何を暗喩する存在になるだろうかと夢想したことがありましたが、この庵野ゴジラはわたくしのイメージを超えるメタファーとして登場したと思います。原発事故や自然災害の象徴とは誰しも考えることですが、このゴジラは日本という国が身をさらす国際情勢をも象徴していた気がします。そういう意味ではまさに究極のシミュレーション映画だとも感じました。ただひとつ不満だったのは、この災害が引き起こした人的損害については映像でもセリフにも言及がなかったことで、どれだけの人命が犠牲になるのかもシミュレートしてほしかったところです。でもいくら庵野にまかせたといってもさすがに東宝もそれはあまりに生々しすぎて、譲れなかったのかもしれません。 「怪獣は皇居を破壊しない」という有名な不文律通り、今回もゴジラは東京駅八重洲口どまりで皇居のある丸の内側には足を踏み入れませんでした。「皇室のことに触れないのではシミュレーションにならない」という意見もあるみたいですけど、私はこれは日本の怪獣映画の文化だし構わないと思っています。それよりも心配(?)なのは独特な日本の政治意思決定がこれでもかと描かれているので、はたして海外の観客に理解されるんだろうかということです。海外上映では字幕付きか吹き替えでしょうけど、あの登場人物たちの緊迫した状況での猛烈に早口なセリフの洪水は、日本人でも圧倒されてしまいます。でもこの監督独特のブラックなユーモアは私にはツボで、途中から表舞台に登場する羽目になった農林水産大臣はおかしくてしょうがなかったです。邦画の大作や特撮映画にはこのユーモアのセンスが欠落していることが常々不満だったので、ここは大変満足でした。 正直これからまたシリーズ化することにはすごく抵抗がありますけど、これで日本の特撮映画に新たな地平が拓けたことは間違いないでしょう。自分でもなんかヘンなんですけど、ゴジラが放射能を初めてまき散らすシーンではあまりの荘厳さに涙がこぼれてしまいました。
[映画館(邦画)] 9点(2016-09-01 20:58:45)(良:3票)
4.  10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス 《ネタバレ》 
『イデアの森』よりも馴染みが深い監督の顔ぶれですが、さてどうでしょうか。①カウリスマキ カウリスマキの作風は短編に向いているというか、普通に撮った長編から任意に10分間だけ切り取ったみたいな不思議な感じ。6点②ヴィクトル・エリセ ごめんなさい!今までエリセって聞くと「長―い、眠―い」という一部の世評を聞いて敬遠していましたが、本作を観て打ちのめされました。この詩情あふれる10分はまさに至福です。優れた映画作家は時の流れの質感を自由にコントロールできるんだと初めて知りました。10点③ヘルツォーク この人ほんと辺境ものが好きですねー。テーマはいいんだけど、「これってフェイクだよね?」ってことがずっと気になっちゃってマイナスでした。5点④ジャームッシュ やっぱこの人は短編の名手ですね、トレーラー・ハウスという狭い空間を使って一人の女優を赤裸々に見せてくれます。9点⑤ヴェンダース これも一種のロード・ムーヴィーですよね、とてつもないバッド・トリップですけど。このエピソードが本作中でいちばん濃かったんじゃないでしょうか。可愛いオチもちゃんとあって感心しました。8点⑥スパイク・リー このゴアvsブッシュの大統領選については『リカウント』という長編が詳しいのですが、あの内容を10分でまとめたってのはある意味すごいことです。ただねえ、本作のエピソードとしてふさわしいかと言うと、それはまた別のお話し。『イデアの森』のゴダールといい勝負のやりたい放題でした。5点⑦チェン・カイコー 東洋代表カイコーは怪談風味で勝負ですか。この『聊斎志異』チックなエピソードにラストあのアニメーションを持ってくるセンスは気に入りました。それに“エアー引っ越し”は思わず爆笑でした。7点  それぞれの監督が個性というか得意技を見せてくれて満足できました、平均をとって7点。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-08-08 01:14:48)(良:3票)
5.  ヒドゥン(1987) 《ネタバレ》 
まず邦題、“Hidden”をそのままカタカナにしたのがナイスです。ほとんどの日本人には通じない単語だけど、“ヒドゥン”と表記されるとなにか怪しく禍々しい雰囲気が伝わってくるから不思議なものです。 アクション映画は星の数ほどあるが、これほどのスピード感が持続する映画は滅多にあるもんじゃない。この映画はもちろんSF・アクションだが、バディ・ムーヴィーとしてもいい味出しています。ギャラガーとベック刑事の掛け合いはテンポが良くて、ラストには思わずホロリとさせられます。善玉も悪玉も、なぜかエイリアンはフェラーリやポルシェみたいなスポーツ・カーがお好きみたいなのも、可笑しい。 色んな過去の映画からの影響が感じられますけど、個人的にはこの映画は『ウルトラマン』の第一話にインスパイアされたのではないかと思います。ベムラーを追っかけて地球まで来たウルトラマンが瀕死のハヤタ隊員に乗り移る、あのプロットですよ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2012-07-22 21:43:02)(良:3票)
6.  キングコング対ゴジラ 《ネタバレ》 
東宝創立30周年記念映画として7年の眠りについていたゴジラを引っ張り出し、なんとキングコングをぶつけるという高度成長期に入った世相に相応しい作品で、いまで言うと『エイリアンvsプレデター』『ジェイソンvsフレディー』といった感じでしょうか。ユニヴァーサルからキングコングの版権をとるのに苦労したそうですが、この映画のキングコングの不細工さは東宝特撮の中でも最悪の部類です、ユニヴァーサルから文句が来なかったんですかね? 対するゴジラは逆三角形の体型であるコングと対照する意図もあって頭が小さく下半身がどっしりしたスタイルで、ファンからは“キンゴジ”と呼ばれ数あるゴジラ・スーツの中でも人気NO.1を誇っています。また本作からゴジラ映画もカラー化されてこの映画の色合いが後の作品にも引き継がれてゆきます。■実は本作は「怪獣ブラック・コメディ」というジャンルを開拓した偉大な功績があるんです。軽い作風の関沢新一の脚本の中でも屈指の面白さで、それが重厚な本田猪四郎の撮り方と見事にマッチングしています。まだTV放送が始まったばかりの時代に、TVとその本質であるコマーシャリズムのえげつなさをブラックな笑いに昇華させてるからもう脱帽するしかありません。有島一郎の宣伝部長の抱腹絶倒ぶりは、同じ東宝の『社長シリーズ』なんか目じゃありません。ゴジラもコングも彼の商魂に乗せられてプロレスしてる様なもので、ラストで観光施設として建てられた熱海城を仲良くぶっ壊すところなんか痛烈な皮肉になってます。■コングが東京に侵入するシークエンスは、オリジナルへのオマージュが感じられます。浜美枝のスクリーミング・クィーンぶりも堂々たるもので、彼女の悲鳴はほとんど泣き声に近く真に迫ってました(吹き替えじゃないと思いますが)。ただエンパイア・ステート・ビルのオマージュとして国会議事堂に登らせるとは、ちょっとみみっち過ぎました。なんで東京タワーにしなかったんでしょうかね、前年に『モスラ』でぶっ壊しちゃったからかな(笑)。
[映画館(邦画)] 8点(2014-03-22 20:07:06)(良:3票)
7.  赤い闇 スターリンの冷たい大地で 《ネタバレ》 
時は1930年代前半、英国元首相ロイド・ジョージの外交顧問であったジャーナリストのガレス・ジョーンズは、ドイツでついに政権を握ったナチ・ドイツに対抗するために第一次五か年計画が成功して飛躍的に国力が増大したと喧伝されているソ連と同盟してヒトラーに対抗するべきだと主張します。しかしソ連の発表した数値に矛盾を見つけたジョーンズは、実態を調査してスターリンにインタビューしたいと熱望して単身ソ連に入国します。「この国はなんかおかしい…」と疑問を感じながらヨーロッパ随一の穀倉地帯であるウクライナに潜入した彼は、そこで恐るべき真実に気づいてしまうのでした。 ソ連74年の歴史でボリシェヴィキ=共産党が犯したもっとも犯罪的な政策であるホロドモール=ウクライナ大飢饉を真正面から描いています。これは簡単に言うと、スターリンがウクライナで収穫される穀物・家畜を五か年計画達成に必要な外貨を稼ぐためにすべて輸出に回し、その結果一説には1000万人以上のウクライナ人が餓死したという史実です。 ウクライナと並んでスターリンにはひどい目に遭わされたポーランド人の監督ですから、その告発の視点には鋭いところがあります。主人公のジョーンズを演じるのは、次期ジェームズ・ボンド候補とも噂されるジェームズ・ノートン。彼がウクライナに潜入して見る地獄絵図が本作のテーマのはずなんですが、そのシークエンスの尺が意外と短いのがちょっと解せないところです。実はベルリン国際映画祭で上映されたバージョンはランタイムが20分以上長く、カットされたところはウクライナでのストーリーが多かったんじゃないかと推測いたします。それでも迷い込んだ農家で振舞われたのが実は人肉だったエピソードには、もう戦慄するしかありません。この映画の演出で興味深いところは、登場人物がものを食べるシーンで咀嚼する音が強調されるところで、まさにASMR効果を狙っている感じです。 ソ連側の登場人物は下っ端ばかりでスターリンはおろか外務大臣リトヴィノフぐらいしか大物は登場しませんが、スターリンに媚びへつらう英米の著名人たちの醜悪な姿はこれでもかと見せつけてくれます。中でもピーター・サースガード演じるウォルター・デュランティの邪悪さは強烈です。彼は五か年計画を礼賛したNYタイムズの記事でピュリッツアー賞を獲得しましたが、本質はフェイク・ニュースなので受賞取り消し運動が21世紀になるまで続いたそうです。NYタイムズというメディアは、友好関係にある我が国の某新聞とよく似た体質があるみたいですね。実はこの映画で最初に登場するのはジョージ・オーウェルで、『動物農場』を執筆する姿が所々に挿入されて狂言回し的な役割を果たします。でも彼はソ連に渡航したことはないし、劇中でジョーンズと出会うシーンもありますがこれはフィクションでしょうし、オーウェルをこの映画に登場させる意義はイマイチ理解できませんでした。ジョーンズのデュランティへの反論記事を掲載させたのが、唯一ランドルフ・ハースト系の新聞だったというのは面白いところ、『市民ケーン』じゃないけど映画では怪物的人物で悪役が定番の人ですからねえ。ハーストにとってピュリッツアーはかつての商売敵、彼が創設した賞の受賞者を叩くことに血が騒いだのかもしれません。 観終わっても気分が上がるような要素は一つもないことはご警告させて頂きます。でもこれが史実なんだということは重く受け止めるべき、そして「大義のために人命が犠牲になるのはやむを得ない」というテーゼの恐ろしさを今一度考えてみるべきでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-07 22:17:16)(良:3票)
8.  ミスティック・リバー 《ネタバレ》 
私の中で、イーストウッドという映画作家の評価に大疑問符がついてしまった作品です。イーストウッドは基本的には脚本を書かない人なので、まず原作があっての本作なのでしょうが、このいかにもアメリカ的なリンチが正当化される世界観はどうしても受け入れられない。ラストのショーン・ペンとローラ・リニーの会話、「パパは王様、王様はすべきことを行う」「皆、弱いからよ私たち以外は。私たちは決して弱くならない」、これは「パパ」「私たち」を「アメリカ」に言い換えてもしっくりする嫌なフレーズではありませんか。ティム・ロビンスに疑惑を抱いたマーシャ・ゲイ・ハーデンの描き方も、ラストではまるでイエスを売ったユダの様で、ショーン・ペンが犯した大罪を免罪するかの様な印象まで与えるのがはっきり言って不快です。カトリック教徒のコミュニティーが舞台で、ショーン・ペンの背中には十字架のでっかいタトゥーが彫られているなど、イーストウッドよりスコセッシの方が監督にふさわしい題材のような気がします。イーストウッドはスコセッシの様に、宗教的にテーマを掘り下げる感性は持ち合わせていないと感じました。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2010-05-16 00:02:09)(良:3票)
9.  ノーバディーズ・フール 《ネタバレ》 
正直あまり期待しないで観たのですが、これが予想をはるかに上回る良作だったので嬉しかったです。この映画のポール・ニューマンの演技は、彼の晩年でもっとも素晴らしいものだと私は思います。これでオスカー獲っててもおかしくなかったし、『ハスラー2』なんかより全然いい! こういう静かなほのぼのとした小品を撮らせると、ロバート・ベントンはホントに上手い人です。メラニー・グリフィスもなかなか魅力的な役柄でしたが、ほんの一瞬オッパイを見せる瞬間芸は笑わせていただきました。あれは、彼女のアドリブだったんじゃないでしょうか。ジェシカ・タンディもニューマンや他の共演者の素晴らしい演技に見送られる様に逝けて幸せだったのでは。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-04 00:32:30)(良:3票)
10.  禁断の惑星 《ネタバレ》 
製作されたのが昭和31年だと思うと、そのセンス・オブ・ワンダーのレベルの高さにはただ驚くばかりです。確かに映像はそれなりで今の視点で観ればショボいのですが、科学的な設定やディティールは当時ハリウッドで量産されていた他のSF映画とのレベルの違いは、ほとんどオーパーツ並みです。ただ宇宙船がモロ円盤なのはさすがに「?」ですが…。 まあそれ以上にびっくりしたのは、紅一点アン・フランシスの着ている衣装のスカート丈の短いこと! 生まれてから父親の博士しか人間を知らない彼女を乗組員のスケベ男たちがキスから始めて“女の歓び”を教えようとするのには笑ってしまいます(お父さん、ちゃんと性教育してください!)なるほど、これぞ“禁断の惑星”というわけですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-08-15 23:44:29)(良:3票)
11.  日本のいちばん長い日(2015) 《ネタバレ》 
映画監督としての原田眞人という人を全く評価していない自分としては、この歴史的傑作のリメイクに彼だけは起用して欲しくなかったんですけど、製作委員会という腐った制度が罷り通る日本映画界ではこうなるのは必然だったんでしょうね。■これで役所は三船敏郎に次いで山本五十六と阿南惟幾の両方を演じた二人目の俳優という栄誉を得ました。でもねえ、三船敏郎とは貫禄が大違いで一緒に並べたらそれこそ三船に失礼というものです。役所は阿南よりも山本五十六の方が雰囲気としてはマッチしていた様な感じで、そこは三船とは逆ですね。その役所に合わせたのか、妙に気さくで軽い阿南像という新解釈(?)を見せられることになります。終戦クーデター未遂における阿南善玉説には昔から個人的には疑問に思ってましたが(クーデターが陸軍省の佐官級が主謀で、梅津美治郎が統率する参謀本部には全く動きが無かった)、岡本喜八版から五十年経ってもその流れは変わっていないみたいです。これは原作自体が竹下や井田といった阿南周辺の生き残りたちの証言を採用しているので止むを得ないんですけど、この謎はこれからも解き明かされることはないでしょう。■対する鈴木貫太郎は、忠義一筋の朴訥ではなくいろいろ寝技も使う策士として描かれているのは目新しいかなと思います。これは演じる山崎勉の演技パターンにもマッチしていて、これは良かったかと思います。本木雅弘の昭和天皇は確かに雰囲気は出てましたけど、喋りが全然君主らしくなくてダメですね。これは脚本書いた監督の責任ではありますが、おそらく彼には昭和天皇がどういう話し方をしていたのかということを思案する想像力が欠如してるんでしょうね。でもいちばん驚愕したのは「…と陛下は申された」という阿南陸相のセリフがあったことで、あまりの日本語に対する無知には呆れるばかりです。いくら監督がバカでも、セリフを言う役所や周りのスタッフが誰か気がつかなかったんですかね?■“群像劇なのか阿南惟幾に焦点を当てた物語なのか判りにくい”という批評も有りますが、私は監督はこの映画をオーソドックスに群像劇として撮りたかったけど失敗したんだと解釈してます。群像劇を撮るには高度な力量が必要で、この監督にはそれはムリだったということです。そこは岡本版と較べてみればよく判ります。そして歴史的に重要な人物も多々登場するので、せめて人名テロップぐらいは付けて欲しかったですね。横浜警備隊の佐々木の首相官邸襲撃なんて、ほとんどの人がこれはどういう人物で何でこうなるのかということが理解不能ですよ。■岡本喜八版は市井の人々の視線を交えながらも大日本帝国のいわば葬式をきっちり見せてくれましたが、このリメイクでは歴史のゴタゴタを背景にして阿南惟幾の葬式を描きたかったのかと思わざるを得ません。岡本版にあった終戦前夜の特攻出撃のような心を揺さぶられる様なシークエンスが、この映画には皆無です。その代わりに阿南の娘の結婚やらホームドラマ的な要素が盛り込まれています。阿南の息子がどういう状況で戦死したかなんて妻に語らせてエンドですけど、ほんとそんなことはどうでも宜しい。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2016-07-06 21:25:08)(良:3票)
12.  何がジェーンに起ったか? 《ネタバレ》 
映画史上に残るベティ・デイビスの怪演に圧倒されますが、ベイビー・ジェーンの心理が細やかに描かれていて、上質な心理劇を見させていただきました。ジェーンのメイクや髪形はベティ・デイビスが自ら提案したものだそうで、彼女の女優根性には頭がさがります。ラスト海岸でジョーン・クロフォードから事故の真相を聞かされてからは憑きものがとれたように落ち着き、なんか美しく見えてくるから不思議です。そして映画の展開からは予想もしなかったあの哀しいラストシーンでした、それにしても、あのメインディッシュがネズミのシーンは強烈でした。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-03 22:26:08)(良:3票)
13.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
ここ10年ぐらいブラピの映画にははずれがないと信頼していましたが、今回は期待を裏切られてしまいました。 まず、フューリー号の乗員を始めとする戦車兵がなんかとても薄汚い感じがします。イケメンのブラピですらとてもヘンな髪形で、シャバにいたときはブルーカラーかド田舎の百姓の兄ちゃんみたいなとても粗野なキャラが最後まで馴染めませんでした。『イングロリアス・バスターズ』のアルド・レイン中尉が戦車兵になった様な感じかと思っても、彼の行動にはユーモアのかけらもないんでつまらない、そう言えばこの映画には全篇を通じてもユーモアが皆無なんですよね。彼のキャラに古参の乗員たちがなんで敬服するのかも判らなかったですよね。すでにご指摘がありましたが、この映画は『プライベート・ライアン』の縮小バージョンみたいな脚本構成なんですよ。ブラピがトム・ハンクスのミラー大尉みたいな説得力ある演技が出来なかったのがこの映画の失敗でしょう。 確か世界で一輛しかない可動する本物ティーガー戦車を撮影に使えたことは、マニアにとっては眼福としか言いようのない感激でした。敵味方とも本物の戦車を使った欧州戦の映画となると、ルネ・クレマンの『鉄路の闘い』以来の快挙になるんじゃないでしょうか。米独両軍とも軍服や徽章にまで凝りまくっていましたからね。ただ両軍の機関銃が撃ち出す曳光弾はCGを使っているんでしょうけど映像的には強調し過ぎ、あれじゃあまるでスター・ウォーズです。 兵器考証については完璧なんですけど、プロットはどうもムリがあり過ぎです。だいたい45年4月というソ連軍がベルリンに突入しようかという時期に、いくら武装SSとはいえ軍歌を歌いながら意気揚々と行軍してくるなんてちょっとあり得ないでしょう。つまりドイツ軍があまりに戦意があり過ぎで、こういう展開にするならちょっと前のバルジの戦いあたりのストーリーにしたら良かったんでしょうね。それを言ったらもっとおかしいのは米軍の方で、史実では4月にはドイツの敗北は決定的なのでお偉いさんも下っ端の実戦部隊もいかにムダな損害を出さずにドイツ国内を進撃するかが最大の関心事だったのです。悲壮感を出したかったのは判りますけど、あれじゃみんなムダ死にですよ。
[DVD(字幕)] 4点(2015-05-12 23:15:01)(良:3票)
14.  インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 《ネタバレ》 
インディ・ジョーンズ、19年ぶりまさかの復活、ルーカス&スピルバーグのコンビにも大人の事情があったんでしょうね。 舞台は50年代でインディがネヴァダの実験場で核爆発に巻き込まれる衝撃の絵面と敵役はソ連ということで、新しい展開を期待していました。実はこれはプロローグで、その後の展開は前三部作からスリル・シークエンスの寄せ集めをみせられた感じでした。インディの「むかしパンチョ・ビラに誘拐された」というセリフからすると劇中の年齢は60歳を優に越えているわけで、ハリソン・フォードの実年齢とはシンクロしています。前シリーズは1930年代の設定、第二次世界大戦の間にインディ・ジョーンズは大学教授ながらもOSS(CIAの前身)の工作員として活躍し、冷戦時代はソ連と闘う反共の闘士というアメコミのヒーロー顔負けの設定。おまけに第一作目のマリオンまで久々の登場、そしてインディの息子までも…『ダイ・ハード』もですが、長寿のシリーズになると息子が出てくるというのがトレンドというか一つのパターンになってきているのでしょうか。ストーリー展開はプロローグのロズウェル・ネタから始まって古代マヤ文明と繋げてもうテンコ盛り状態、もう歳で体もあまり動かなくなっちゃってるハリソン・フォードを活かすかたちでのCG映像という感じもします。ハリソンは『最後の聖戦』のころとはあまり変わってないところは、メイクがいい仕事をしています。 まあハッピーエンドの閉め方は、第一作のラスト・シーンにつながるもので、スピルバーグはこれでインディ・ジョーンズは打ち止めにするつもりでしょう(そう思いたい)。印象深かったのはラスト・シーン、風に吹かれて飛んできたきたインディ・ジョーンズのシンボルであるハットを息子が拾おうとするのを、インディが先に取り上げるところ。ハットを頭にのせて悠々と教会から出てゆくハリソン・フォードの姿には「インディ・ジョーンズはハリソン・フォードだけのもの、彼とともに消えてゆくのさ」というスピルバーグの心の叫びが聞こえてたような気がしました。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2020-01-14 22:38:27)(良:3票)
15.  帰ってきたヒトラー
このヒトラー役のオリヴァー・マスッチという俳優は、わかる人にはわかるんだけど生前のヒトラーの所作をよく研究していると感心しました。『最期の12日間』のブルーノ・ガンツよりもはるかにリアルだと思います。でもこれほど可笑しいけどだんだん笑えなくなってくる風刺映画には久しぶりに出会った気がします。『博士の異常な愛情』を初めて観たとき以来の衝撃かもしれません。あの女性局長は、ゲッベルスとレニ・リーフェンシュタールを合体させたようなキャラですね。こういうわき役たちもけっこう面白いけど、実はこの映画で最もキャラが立っているのは、ドキュメンタリー風に画面に登場してくる現代ドイツの大衆たちなんですよ。ヒトラーの「私を選んだのはお前たちだ」というセリフがこの映画の究極のテーマを判りやすく説明しているんじゃないでしょうか。この史実こそがドイツ人には耳が痛く、そして都合よく忘れようとしてきたことなんです。そういう視点で観ると、ヒトラー後のドイツ人の偽善をこれほど赤裸々に揶揄した映画はなかったんじゃないでしょうか。そう考えると、冷戦があったとはいえ戦後のドイツは狡猾に国際社会で立ち回ってきたものだと思います。組織の末端だったとは言っても東独の共産党政府の一員だった女性が、今や宰相として君臨して欧州の女帝とまで言われているんですからねえ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-07-13 23:15:44)(良:2票)
16.  ある日どこかで 《ネタバレ》 
原作小説は、世界幻想文学大賞に輝くリチャード・マシスンの名作です。この映画は必ずしも原作と比べると映画化に成功したとは言えないのですが、キャスティングのアンサンブルが絶妙で、しかもJ・バリーが映画音楽史に残る名曲を提供してくれたので奇跡のような作品となりました。実は、原作では主人公コリアーはガンで余命数カ月と宣告されているのですが、その設定は映画では無しになっています。あの哀しいラストは、原作を改変したおかげで一層素晴らしくなったのではと思います。C・リーブを見舞った悲しい運命がオーヴァーラップするので、ほんと泣けますね、あのラストシーンは。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-04-15 01:13:23)(良:2票)
17.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
“怪しいセールス・マン”はやっぱり悪い奴だった、というオチがどーも昔から気に喰わないのです。実は新婚カップルの方がずっと深刻で、あの部屋で恐ろしいことが起こっていたという展開にした方がずっと面白いのにと観るたびに感じるんです。ヒッチコック先生もでかいセットを作ってもらえたので、ちょっとカメラの技巧に凝り過ぎちゃったのかな。 この時のグレース・ケリーは、その美しさと優雅さは間違いなく頂点に達していたと断言しちゃいます。やっぱグレース・ケリーとジェームズ・スチュアートのカップリングは最高です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-06-30 00:10:08)(良:2票)
18.  ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ 《ネタバレ》 
このサイトでは意外にも点数辛いですが、私にはツボにど真ん中直球ストレート、と言う感じでした。まずホフマン、明らかに伝説のプロデューサーであるロバート・エヴァンスがモデルで、彼の親友でもあるホフマンが嬉々として演じているのが観てて楽しい。何かと胡散臭くみられがちなプロデューサー業のペーソスが漂っていました。そしてデ・ニーロ、この髭ずらの謎の男は『エンゼルハート』の悪魔ルシファーのセルフコメディではないでしょうか。本作では一応人間なので魔力はみせませんが、CIAの追及をかわすシーンでは「悪魔の様な弁舌」を披露してくれます。 ブラックユーモアと痛烈な皮肉が利きすぎているところもありますが、9.11やイラク戦争のはるか以前に製作されていることは驚きです。
[ビデオ(字幕)] 9点(2010-11-03 21:56:27)(良:2票)
19.  フォー・ザ・ボーイズ 《ネタバレ》 
自らプロデューサーも兼ねて気合が入っているだけに、ベット・ミドラーのパフォーマンスは一見の価値あり、観て損はしないでしょう。ただあの老けメイクはちょっと凄かった、思わず淡谷のり子を思いだしてしまいました。ということは、淡谷のり子は若いころはベット・ミドラーみたいだったということでしょうか(笑)。そしてジェームズ・カーン、本作を観て彼ほど過小評価されている名優はいないとつくづく思いましたよ。この二人の掛け合いは、まるで本当にコンビを組んでるみたいに息が合っていました。ベット・ミドラーの歌う『イン・マイ・ライフ』はもう絶品です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-04-29 02:14:34)(良:2票)
20.  回転 《ネタバレ》 
子供のころTV放映で観たときはスッゲー怖かった記憶がありますが、改めて見直してみますと違った意味でこれは怖い映画だなとしみじみと感じました。とにかくデボラ・カーの恐怖に取りつかれてゆく演技が凄すぎ、『シャイニング』のジャック・ニコルソンに匹敵するという意見には全面的に賛成です。後半、自分だけに見えている霊と対決するうちにエクソシストと化してゆく過程は迫力あります。この演技が、オスカー演技賞にノミネートすらされなかったというのはちょっと信じがたいです。またマイルスとフローラの二人の子供が全然かわいらしくないところもよく練られています。フローラ役のパメラ・フランクリンなんて後年の面影(ちょっと変な表現かな)が微塵も見られず、女子ってホントに変わってゆくものなんですね。屋敷にまた独特な雰囲気があって、だいたいあの庭は石像がありすぎでしょう、それだけで怖いです。 英文学の歴史では心理小説の金字塔である『ねじの回転』ですが、それに真っ向から取り組んだトルーマン・カポーティの脚本とジャック・クレイトンの演出は評価されるべきでしょうね。ラストのデボラ・カーとマイルスとの対決で、二人の顔に汗がだんだん滲んできます。これは温室の中でのシーンだというわけですが、緊張感が高まる効果的な演出です。ラストがハッピー・エンドかと思わせておいての絶望感、これは渋い終わり方だと思います。 最近はグロい・イタいホラーが全盛ですがこういう渋い心理ホラーもいいもんです。
[DVD(字幕)] 8点(2016-11-04 23:54:21)(良:2票)

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS