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プロフィール
口コミ数 1956
性別 男性
年齢 49歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 ネタバレ 
久し振りにこんなに深い映画と出合ってしまいました。アン・リー監督の、自然の猛威と繊細さを抒情的でエキゾチックな映像美で描き出した、一人の少年と一匹のトラとのシンプルなエンタメ冒険物語だと思いきや、最後の最後でやられました。この映画、凄い作品です。一度目の鑑賞での「果たして動物にも人と同じ心がやどるのだろうか」というテーマが、二度目の鑑賞では「人は何処までケダモノになりえるのだろうか」という全く正反対のテーマへと見事なまでに昇華させた、アン・リー監督のこの手腕にはもう諸手を挙げて賞賛せざるをえません。《以下、激しくネタバレ》沈没する船から母親と共に命からがら逃げ出したパイ。ところが凶悪なコックによって目の前で母親を殺されてしまうと、激高して彼を殺害。ボートにたった独り残されたパイは、コックの死体を喰らい、ひたすら自然の猛威と孤独にさらされ、次第に狂気へと捉われケダモノ一歩寸前へと追い込まれてしまう。そんな彼の最後に残った人間としての理性の砦が作り出した別人格である〝パイ〟。自分の獣性に怯えながらもなんとかそれを飼いならそうともがくなか、ようやくトラを殺すチャンスが巡ってきたというのにそれでも殺せなかった〝パイ〟の姿に、人間心理の深淵を垣間見たような気がします。そして〝パイ〟が嵐の中に見つけた美しい神の幻影をトラに見せようとするが、トラは怯えて逃げ惑うばかり。「神よ!どうしてあなたはこんなにトラを怯えさせようとするんですか!」後で思い返してみると、この言葉は狂気の淵に瀕した、人間の極限の理性が発した魂の叫びだったと分かって、めちゃくちゃ鳥肌が立ってしまいました。どうして人の理性が神を必要とするのか(居るか居ないか、ではありません)、そんな全ての宗教の源泉と呼ぶべきものがここにはある。一人の少年の理性と本能がせめぎ合う観念的な世界を圧倒的な映像美で描き出した、アン・リー監督の今のところ最高傑作だと思います。肉食樹の島のメタファーは、まだ僕の力量では推し量ることが出来ません。これから何度も繰り返し観て、いつか解き明かしてみたいと思わせる、素晴らしい作品でありました。
[DVD(字幕)] 10点(2013-12-13 18:03:21)(良:6票)
2.  火垂るの墓(1988) ネタバレ 
毎年、夏になると全国の小中学生を恐怖のどん底に叩きつける反戦洗脳映画。と、世間では思われている作品だけど、僕はちょっと違う気がします。この作品は単純な反戦映画ではなく、戦争が本当に壊してしまうものを冷徹に見つめた作品だと思います。戦争が本当に壊してしまうもの、それは人間の社会性です。この主人公の少年は、今でいう不良少年なのです。盗んだバイクで走り出す現代の若者となんら変わりない。そんな少年でも、社会性がしっかりしていれば、相応の大人たち(例えば教師や警察や少年院)がちゃんと矯正させて、少なくとも餓死させるということなど絶対にさせない。この世界から戦争がなくなることなど絶対にあり得ないなら、せめてそれが壊してしまうものから目を逸らさず、多くの人たちから残酷で悪趣味だと非難されようとも徹底的に冷徹に描こうというこの監督(および原作者)の勇気には敬服せざるを得ません。そして、今でもアメリカはイラクやアフガンで社会性を壊し続けている。この映画が偽善にまみれた単なる反戦映画と一線を画した普遍性を持っているのは、ますます混迷する現代に通じるテーマを持った作品だからだと思います。
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-20 19:16:45)(良:4票)
3.  9人の翻訳家 囚われたベストセラー ネタバレ 
フランスのとある地方都市に建つ一軒の古い洋館。何処にでもあるようなその大きな建物には、強固なセキュリティに守られた広い地下室が備えられていた。持ち主は、世界的なベストセラーを幾つも手掛けてきた大手出版社のCEO。そこにある日、世界各国から選ばれた九人の男女が集められる。目的はなんと、その出版社が扱う世界的ベストセラー作家の人気シリーズ『テダリュス』の最新刊をこの地下室で約二カ月かけて、集中的に翻訳作業を行うためだった――。事前の情報流出を防ぎつつも世界同時発売を実現するため、期間中彼らは外部との接触は一切禁止、外出することも許されない。作業は一日の初めにちょうど20ページ分の原稿を渡され、翻訳が終わると全て回収される。完璧なシステムのはずだった。だが、翻訳作業が開始された直後、何者かによってネット上にその極秘のはずの原稿の冒頭部が公開されるのだった。しかも犯人はCEOの携帯に直接連絡をよこし、原稿の全文を公開されたくなければ、多額の現金を払えと要求してくる。犯人は確実に、この九人の翻訳家の中の誰か。果たして原稿を盗み、ネット上に公開したのは誰なのか?ベストセラーを翻訳するために集められた、そんな九人の男女に交錯する動揺と疑心暗鬼をスタイリッシュに描いたサスペンス・ミステリー。という、今までありそうでなかった設定に惹かれ、今回鑑賞してみました。なのですが、僕はさっぱり嵌まらなかったですね、これ。とにかく物語の見せ方が恐ろしく稚拙。完全隔離されたこの地下室から誰がどのような方法でこの原稿を流出させたのかというのが物語の焦点となるのですが、ここら辺の詰めが非常に甘く、サスペンスとしていまいち盛り上がらない。もっと脚本を整理してすっきり分かりやすくみせてくださいよ。それに、この九人の翻訳家のキャラの描き分けもイマイチで、誰一人魅力的な人物がいないのも致命傷でした。しかも彼らのうち主人公が誰なのかもかなり曖昧なので、観客が誰に感情移入して観ればいいのか分からないのも難点。唯一盛り上がったのが、中盤の原稿強奪シーン。ここはベタですけど、サスペンスフルでなかなか面白かった。でも、それも最後のオチで全て意味がなかったとする謎の自己破壊(笑)。こうなってくると、この設定を思いついたアイデアのみが唯一の長所かなと思ったら、それもなんとダン・ブラウンのラングドン教授シリーズ出版の際に実際に行われた翻訳手法とのこと。うん、見事に誉めるべきところがなくなっちゃいました(笑)。なんとなく知的でミステリアスな雰囲気に4点。
[DVD(字幕)] 4点(2021-02-08 04:11:20)(笑:1票) (良:2票)
4.  アラジン(2019) ネタバレ 
たまたま時間が空いたので何か映画でも観ようと、たまたまやっていた本作を映画館にて鑑賞。元となったアニメもこれまで観たことなく、有名な曲だけちょろっと知ってる程度、別にウィル・スミスのファンでもなんでもない、そんな期待値ほとんどゼロの状態で観たのですが、これが意外や意外、めっちゃくちゃ面白いじゃないですか!!ウィル・スミス演じる魔人ジーニーも最初こそ違和感バリバリだったけど、それも最初だけ、これが彼のベストワークなんじゃないかってくらいもろ嵌まり役!!最初のミュージカル・シーンでのハチャメチャぶりがとにかくサイコーでした。続く、アリ王子の行進曲なんてもうゴージャスでゴージャスでちょっとやり過ぎなくらい(笑)なんだけど、ここまでやられたら自然とテンション上がっちゃいますわ~。トラや魔法の絨毯といった脇役たちもみんなキャラ立ちまくりで誰も彼も魅力的!権謀術数渦巻く政治劇とアラジンと王女のラブストーリー、手にしたものの願いを叶えるという魔法のランプの奪い合い、そして1万年も孤独に過ごしてきたジーニーとの間に芽生える友情――。これらの要素を絶妙のバランス感覚で配合した脚本も完成度が高く、クライマックスなんて普通に手に汗握っちゃいました。ガイ・リッチー監督の良くも悪くも軽ーいノリのエンタメ路線が今回は見事に嵌まったんじゃないでしょうか。今度、オリジナルのアニメも観てみようと思います。うん、上質の素晴らしいエンタメ映画でありました。映画館補正もあるかも知れないけど、8点!!
[映画館(字幕)] 8点(2019-06-09 23:26:26)(良:3票)
5.  塔の上のラプンツェル ネタバレ 
勤務先のアルバイトの女子高生が「ラプンツェル、あれ、ヤバかったです!もう最初から最後までキュンキュンきちゃいました!」とべた褒めしていたので、「どれ、じゃあ色んな経験をつんで酸いも甘いも噛み分けた中年オヤジであるわしのハートも果たしてキュンキュンさせられるかいのぉ~」と挑戦するかのような心持ちで鑑賞してみました。は、はは、見事に負けちまった…。ベタですけど、中年オヤジであるわしの薄汚れたハートにもちゃんとキュンときたではないか(笑)。確かに、童心に返りたい女子高生のハートを鷲掴みにするようなネタ(ラプンツェルのキューティクル感MAXな長い金髪、キモ可愛い相棒のカメレオン、最強の武器は何故かフライパン、そしてお調子者の泥棒とのちょっぴり切ない恋愛要素…)がてんこ盛り。ガミガミうるさいお母さんにうんざりしてる反抗期の女の子の心情にも憎いくらいに応えてくれてるしね。最後まで飽きさせない練られたストーリー展開、魅力的なキャラクターたち、適度なユーモア、そしてセンス溢れる美しい映像の数々…。こういう観客の求めているものをしっかりと把握して製作されただろうエンタメ映画も素直に素晴らしいと思います。先入観に捉われず、多くのわしのような中年オヤジの皆様にも是非観て貰いたい完成度の高い作品でありました。ラプンツェルのナイスなお転婆感が可愛いっす! でも、その職場の女子高生に「ありがとう、面白かったよ!」と伝える勇気はないけどね(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-18 11:54:13)(笑:1票) (良:2票)
6.  インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 ネタバレ 
まさに小学生のころに観てしまってドハマリしてしまいました。もう、小学生男子の心を鷲掴みにするネタが次から次へとジェットコースターのように展開して、もうたまりません!わー、猿の脳味噌食ってるし!ひぇぇ、虫が大群じゃー!おっさん、心臓ほじくり出してるし!!トロッコだ!洪水だ!吊り橋落としちゃってるし!!!ひぃぃ、も、もう止めてー!!!映画の楽しさをこの作品で初めて教えてもらいました。当時、録画したビデオテープが擦り切れるほど何度も観てしまった思い出の一作。
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-12 13:31:08)(良:3票)
7.  触手 ネタバレ 
日本が世界に誇る変態エロジャンル、その名も「触手モノ」。これまで幾つかの映画の中でちょこちょこっと扱われてきた(僕が知る限りでは、ケビン・ベーコン主演の『スーパー!』やポール・バーホーベン監督の『エル』などでフューチャーされてました)、この変態ジャンルが満を持して海外で実写化されることになりました!最初に断っておきますが、僕はちょっと興味があるってだけでそこまで好きではないですよ、念のため。このジャンルは実写化は金がかかるので、これまで主な表現媒体は漫画やアニメと相場が決まってましたが、今回海外の変態がお金を出し合ってCGで触手を再現!「これで今までハリボテのちゃちい触手を使って女優自らがちまちま動かすだけというイタイ実写版触手モノと違う、本物の映像が見られる!!」と今回鑑賞してみました(もう一度言いますが、僕はそこまでこのジャンルは好きではないですからね!笑)。結果は……、98分あるこの映画の中で肝心の触手が暴れまわるシーンがトータル1~2分だけってありえんだろ!!いつになったら触手が大活躍するんだと我慢に我慢を重ねてずっと、このホモ旦那と欲求不満妻のどーーーでもいい不倫話を延々見せられて、結果がこれってもう怒り狂いそうになっちゃいましたわ!!看板倒れもいいところです。もうこれは日本の本家変態に期待するしかないですね。誰かちゃんとお金を集めて、ハイクオリティなCGを駆使した本物の触手映画を誰か真面目に作ってください(笑)。
[DVD(字幕)] 3点(2019-07-21 20:32:53)(良:3票)
8.  ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 ネタバレ 
悪をもって悪を征す!あの死をも恐れぬ〝超極悪部隊〟が帰って来た!様々なヒーローたちによって刑務所にぶち込まれた、イカレ頭の極悪人たちを寄せ集めて作られた、その名も「決死部隊(スーサイド・スクワッド)」。今回彼らが送り込まれたのは、政情不安に揺れる南米の小さな島国。ここで良からぬことを企んでいる反米政権の野望を阻止せよというのが今回の任務だ。娘のために依頼を引き受けた武器のプロフェッショナル、ブラッドスポート。正義のためなら殺人も辞さない孤高のヒーロー、ピースメイカー。凶悪な人喰いサメ人間であるキングシャーク、ナナウエ。世界中のネズミを自由に操ることが出来るラットマスター、クレオ。全身から七色の水玉を発射できるポルカドットマン、アブナー。そして、次に何をするか全く予想が出来ない危険なギャルビッチ、ハーレイ・クイン。数々の困難を乗り越え、島の中枢へと辿り着いた彼らは、あるマッドサイエンティストの危険な研究に巻き込まれてゆく……。映画としてはポンコツだったものの、ハーレイクインという凄まじくキャラ立ちしたクソビッチ(失礼!)なアンチヒロインを生み出したエンタメ映画の続編。さして期待はしていなかったのですが、世間の評判がすこぶる良かったので今回鑑賞。うん、前評判通りめちゃくちゃ面白かったです!!全くもって華のないメンバーが登場する冒頭、「大丈夫かいな…」という不安も束の間、あっさり彼らが全滅するシーンから掴みはバッチリ。特に手足を取り外せるだけが能力のTDKと変なイタチ男が泳げなくて死ぬところはもう爆笑。そこから本家の主人公が登場してからは怒涛の展開。最後まで息つく暇もないほど楽しませてもらいました~。特に槍を持ったハーレイクインが花びらを巻き散らしながら男どもを薙ぎ倒してゆくところは、最近観た映画の中でも屈指の名シーン。『キックアス』のヒットガールに匹敵するほどで、もうこのシーンだけでご飯何杯でもいけます。そんな彼女に他のキャラが負けているかと言えば全くそんなこともなく、誰もが如何なく自らのキャラを発揮させているのも見事!特に出オチかと思われたキングシャークが、最後まで見ると一番かわいく思えてくるから不思議です。ネズミ女も何気に可愛いし、一番地味な水玉男もその妄想世界で楽しませてくれます(オカンいっぱい!笑)。監督は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を撮ったジェームズ・ガン。なるほど、この全てのキャラクターへの並々ならぬ拘りは、この監督の特性だったのですね。最後、それぞれの能力を駆使したヒトデ怪獣との闘いは最高にテンション上がっちゃいました。むちゃくちゃやっているように見えて、実は細部まで緻密に計算された演出も素晴らしいとしか言いようがない。うん、もう一度言いますが、サイコーに面白かったです。ホント、あのポンコツな前作はなんだったんだ(笑)。
[DVD(字幕)] 9点(2022-08-01 07:44:53)(良:3票)
9.  イット・フォローズ ネタバレ 
ジェイ、こんな酷いことをしてすまない。ただ、君にこれが現実だと知ってほしかったんだ。落ち着いて聞いてくれ。ある〝もの〟がつけてくる。俺が感染したそれをさっき車の中で君に移した。それは様々な人の姿を借りて君についてくる。時にそれは君の愛する人の姿を借りて現れることも…。逃れることは出来ない。だが、それは常に歩いてやってくる。頭はいいが動きは鈍い。逃げ道はいつでも確保しろ。殺されたくなければ、なるべく早く誰かと寝て相手に感染させろ――。ブロンドヘアがキュートなティーンエイジャー、ジェイ。最近できた、優しく格好良い彼氏と車の中で結ばれた彼女だったが、直後に睡眠薬を嗅がされて気を失ってしまう。車椅子に拘束され、何処かの廃ビルの片隅で目覚めたジェイは、豹変した彼氏にとても恐ろしい事実を聞かされる。もちろんすぐには信じられないジェイ。だが、夜の闇から〝それ〟は現れ、ゆっくりとだが確実に彼女に迫ってくるのだった…。とてつもなく怖いと口コミで評判となり、全米で異例のスマッシュヒットとなったホラー作品。なるほど、確かに怖いですわ、これ。低予算ながら、無駄を削ぎ落したシンプルなストーリーで、とにかく観客に怖がってもらおうという監督の意図がばっちり決まってます。半裸の女の子がおしっこ漏らしながら迫ってくるとこなんて、こっちが漏らしそうになったし(笑)。主人公の背後、最初は遠いところにいたそれが徐々に近づいてくるとこなんかもじっとりと怖い。これまでのハリウッドのように恐ろしい怪物がドカーンと襲ってくるんじゃなくて、じわじわと迫ってくるこの怖さはどちらかというと日本的かも。こういうB級ホラーに不可欠なエロ要素も下品になり過ぎないちょうどいい匙加減でした(主人公の下着姿、なかなか健康的なエロ具合で大変グッド笑)。ただ、残念なのはやはり最後のプールの展開かなぁ。もうちょっと盛り上げてくれたら文句なしの傑作だったのにね。でも、独特のカメラワークとか音楽とか独自のセンスをビシバシ感じるし、もしかしたらこの監督将来バケるかも。うん、今から次作が楽しみな才能に出会うことが出来ました。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2017-04-15 14:45:33)(良:2票)
10.  ウルフ・オブ・ウォールストリート ネタバレ 
貧しい母子家庭に育ったものの、持ち前のバイタリティと人を惹きつけるカリスマ性のみを武器に、金とハッタリと欲望だけがものを言う金融取引の世界でただひたすらのし上がってゆき、いつしかウォール街の狼と呼ばれるようになった男、ジョーダン・ベルフォート。だが、その私生活は酒とドラッグとセックスが渦巻く欲望の海にただひたすら溺れていくかのような破天荒なものだった――。栄光と挫折を味わった実在の金融マンがその半生を赤裸々に綴った自伝を元に、巨匠スコセッシが若き盟友ディカプリオと再びタッグを組んで描き出したエネルギッシュなサクセス・ストーリー。いやー、アメリカってホントに法治国家なんですか(笑)。映画が始まって、ただひたすら3時間、金と女とドラッグが乱れ飛ぶ乱痴気騒ぎが延々と繰り広げられて、もうお腹いっぱいっす!彼らに実際に騙されて資産を失った被害者とかがこれを観たら、もう怒りのあまり血管が切れちゃうかもね。それにしても、もう70を越えているはずのスコセッシ御大がこんなにも猥雑で下品で胡散臭くて、それでも生きるエネルギーに満ち溢れたつわもの共の宴を最後までテンションMAXに描き出すその衰えない手腕はやっぱり賞賛に値すると思います。かつて巨匠と呼ばれた監督たちが、最後はその晩節を汚すような作品を遺して逝ったことを思えば、彼のこの無尽蔵のバイタリティはホント凄いですね。そんなスコセッシの要求に、もはや名実共にハリウッドトップクラスの俳優であるディカプリオが見事な熱演でもって応えていて、最後まで充分見応えのある作品に仕上がっておりました。これまでのスコセッシ&ディカプリオコンビの作品の中でベストワークと言えるほどのクオリティを誇っていたと思います。それにしてもこのベルフォートって男はなんと愚かで馬鹿でイヤらしくて最低のゲス野郎なのに、どうしてこんなにも魅力的なのでしょう。この映画で彼の半生を辿ると、人間ってもっと馬鹿で愚かになってもいいんだと何故だか生きるエネルギーを貰えたように感じます。少なくとも、「情熱と努力と奉仕の精神でこんなにも会社を大きくしました。だから、みんなも希望を捨てずに頑張りましょう」という世の多くの会社社長たちの建前だらけの胡散臭い演説よりは彼の言葉の方が信じられるような気がします。…あれ、もしかして自分もいま、騙されかかってる?(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2014-10-30 06:48:13)(良:2票)
11.  ジェーン・ドウの解剖 ネタバレ 
一家惨殺事件が起きた一軒家の地下から発見された一体の遺体。一糸まとわぬその美しい女性の遺体には身元の特定につながるものは一切なく、また外傷さえないため死因の特定すら難しかった――。事件を担当する保安官は、死体の正体を探るため、親子で検死官を務める古くからの友人の元へと送り届けることに。さっそく仕事に取り掛かった親子だが、その美しい〝ジェーン・ドゥ〟の身体を開いてみると驚愕の事実が次々と明らかとなるのだった…。いったい彼女の身に何が起こったのか?謎に満ちた彼女の本当の正体とは?そして、解剖を担当することになった検死官親子は無事に死因を特定することが出来るのか?一体の美しい死体を巡って、死体安置所で繰り広げられるそんな恐怖の一夜を描いた新感覚ミステリー・ホラー。いやー、久々にこんなにも怖くて、しかもちゃんと面白い映画を観てしまいましたわ~。もう最初からどんどんと惹き込まれ、あれよあれよといういう間の充実した80分。物凄く完成度が高いです、これ。何より、物語の重要な要となる〝ジェーン・ドゥ〟の死体が驚くほど美しい!この役を演じた女優さん、ずっと全裸で死体安置所に寝転がってるだけで一切台詞がないのに、この存在感は凄いですね。もう、このお方のフェティッシュかつグロテスクな魅力だけで1点追加ですわ。なんたってヌードどころか身体の中身まで晒しちゃってますからね(笑)。監督は過去に快作『トロール・ハンター』を撮った、アンドレ・ウーヴレダル。その前作もフェイク・ドキュメンタリーという体裁を取りながら、それを逆手に取ったユーモラスな作風でなかなかセンスを感じたけど、こちらもまた違うセンスをビシバシ感じました。うん、今から次作が楽しみな今後大注目の監督の一人となりました。
[DVD(字幕)] 9点(2018-07-21 22:11:51)(良:2票)
12.  シザーハンズ ネタバレ 
思えば、ここからジョニー・デップとティム・バートンの名コンビが始まった記念碑的名作。絵本のようにカラフルな街並みやあり得ないストーリー設定ながら、現実的な社会的弱者への苛烈な差別、そして軋轢を寓意的に描いている。カフカの「変身」のように、両手がハサミという姿をある種の障害と捉えればこの映画は一気に深くなる。そしてそんな不条理な社会に背を向けて、ただ愛する女性のために雪を降らせ続けるエドワードの姿はあまりにも辛く切ない。
[DVD(字幕)] 9点(2012-05-07 07:14:59)(良:2票)
13.  トーク・トゥ・ハー ネタバレ 
まさに変態純愛映画というジャンルを確立した(?)、ワンアンドオンリーな快作。事故により、意識不明の植物人間と化してしまった若く美しい女性を献身的に介護する孤独な看護師の男が、彼女を愛するがあまり一線を越えてしまう……。女性の人間性を徹底的に排除し、ただひたすら女の肉体のみを愛でるという、この川端康成晩年の傑作「眠れる美女」をも髣髴とさせるこの究極のフェティッシュな愛は、恐らく男にしか理解できない世界(いや理解できる男も少ないかもね)。そんな淫靡な世界を妖艶に美しく描き出している。そして、劇中劇として展開される、これまたまさに究極の変態サイレント映画も強烈だわ~。これは円熟期を迎えたころの、スペインが生んだ天才変態映画作家アルモドバルが創出した傑作だろう。もし、日本が世界に誇る変態大作家・谷崎潤一郎が生きていてこの映画を観たとしたら、是非ともその感想が聞いてみたい(笑)。
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-26 15:33:39)(良:2票)
14.  ダンサー・イン・ザ・ダーク ネタバレ 
この映画がどうしてこんなにも人の心を掻き乱し、賛否両論分かれるのか。何度も何度も繰り返し観て(よく自殺しなかったな笑)なんとか自分なりに結論を得ました。この映画は踏み越えてしまっているんです。つまり、主人公セルマは頭のおかしい気の狂ってしまった人間なんです。だから、間違った選択を繰り返し、誰の助けも借りず、最後は息子のためにと幸せに死んでいく。この主人公に「やっぱりお前は馬鹿だ、不幸だ」と誰が言える権利があるでしょうか。そう、この映画のテーマはそこです。人間の幸せは主観的なものであるなら、自分を幸せだと強固に信じる人間を誰も非難できない。つまり、もしかしたら全ての人間の幸せに意味などないのでは、ということです。とても恐ろしい踏み越えてしまったテーマです。この映画が、敢えてその恐ろしい問いに挑戦する武器として、想像力の美しさを選んだことに敬服せざるを得ません。ただ、勝利できたかどうかは観る人の判断ですが。そして、この映画を徹底的に非難するレビューにこそ、僕は感動を覚えます。そこには、全ての人間の幸せには意味があると信じようとする力強さを感じるからです。それこそが人間の想像力の持つ美しさだと思います。敢えて踏み越えてまで、この映画を撮った監督に改めて敬意を表したい。
[DVD(字幕)] 10点(2012-05-14 02:27:21)(良:2票)
15.  リンカーン弁護士 ネタバレ 
刑事事件を専門に扱い、高級車リンカーンをオフィス代わりに超多忙な勝ち組生活を謳歌するエリート弁護士ミック。しかし実体は、犯罪者ばかりを顧客に持ち、金儲けのためならきわどい手法でも躊躇なく使うというダーティーな弁護士だった。ある日、知り合いからの紹介で、ミックはとある金持ちのボンボンが巻き込まれた娼婦暴行事件の弁護を引き受けることに。今回も楽勝で大金が稼げると高をくくっていた彼だったが、裁判が進行していくうちに彼のキャリアを根底から覆すような驚愕の事実が明らかとなってゆく。冒頭こそ、軽佻浮薄な拝金主義者という典型的法匪として観客の前に姿を現すミックだったが、物語の進行とともに、実は彼にもちゃんと弁護士としての譲れない信念があるということが分かってくる。それは「無実の人間は絶対に救うこと」。だからこそ、ミックは弁護士としての職務と人としての正義との狭間で苦悩することになるという展開には見事に惹き込まれました。主人公〝リンカーン弁護士〟の、善人と悪人の両面を併せ持つ一筋縄ではいかない人物造形も見事です。良作。
[DVD(字幕)] 7点(2013-11-06 23:35:20)(良:2票)
16.  横道世之介 ネタバレ 
あのころ、ほんとおれたちってバカだったよなぁ。ただ若いってだけで、頭の中は女のことばっかり、将来のことなんかこれっぽっちも考えてなかったし。そんなおれたちが、いつの間にか大人になってるんだものな。人生って、どうなるか分からないもんだよ、まったく。そう言えば、あいつ元気にしてんのか――。大学進学のために、長崎から上京してきた横道世之介18歳。見るもの聞くもの何もかも新しい世界で、彼は様々な人たちと出会い、年上の格好良い女性と同い年の女の子の間で揺れ動き、色んな現実を目の当たりにして、本人も知らないうちに少しずつ大人になってゆく…。吉田修一の新たな代表作とも言える青春小説を、穏やかで優しい空気の中に描き出す青春物語。普段、こういういかにもテレビドラマの延長のような邦画ってほとんど観ないのだけど、昔から僕がずっと愛読してきた吉田修一の傑作を映画化したということで今回鑑賞してみました。うん、なかなか原作に忠実に作られ、その数々の美点が巧く映像化されていて素直に良かったと思います。世之介役の彼を初めとする、役者陣の抑えたナチュラルな演技も味わい深かったですね(お馬鹿紙一重の世間知らずのお嬢様・祥子という難しいキャラクターを嫌味たらしくならずにちゃんと演じられるのだろうかとちょっと不安でしたが、祥子役の彼女けっこう頑張ってましたね)。いやー、今は反抗期の娘に説教しているお父さんも、昔はみんなこんな感じでふわふわ生きていたんだよね~。この映画を観ると、そんなあのころの自分が懐かしく思い起こされます。そして、あのころのバカだった自分たちでは想像すらしなかった、現在の大人になった自分や友達たちの生活を思うとまた切なさが込み上げてくる。観終わった後、優しさと切なさが良い余韻となって残る優れた青春映画であったと思います。以下余談。今作の原作者である吉田修一氏が僕は昔から凄く好きで、その代表作はほとんど読んでいます(現代の日本の小説家の中では最高に文章が巧い!と勝手に認定してるぐらい笑)。そんな氏の知的でスタイリッシュな筆致が冴え渡っている原作には、映画では語られなかったエピソードの数々が丁寧に書き込まれているので(映画では登場しなかった倉持の成長した娘もちゃんと出てきて良い台詞を残してくれるんだ、これが)、まだ原作を読んでいない方は是非読んでみることをお薦めしときます。
[DVD(字幕)] 7点(2014-09-23 18:16:34)(良:2票)
17.  キャビン ネタバレ 
人里離れた山奥のロッジへとバカンスに訪れた大学生五人組。だが、そこには人智を越えた存在が待ち構えていたのだった。そんなベタベタな展開に、何故か彼らを監視するスタッフと思しき謎の人物たちが絡んでくる。「いったいどういうこっちゃねん!」と思っていたら最後の最後で納得。これっていわゆるメタフィクションだったのですね。主人公たちを監視しストーリーを導いてゆくスタッフたちはまさに映画製作陣、そして太古の神々は僕たち観客ということなのでしょう。「これってどうなるんすか?」「ここでゾンビどもが出てくるんだよ(半漁人でも良いけど)!」「くそー、日本もなかなか良いホラー創ってんじゃねーか」「うん、ここいらでオッパイ出しとかなきゃあかんやろー」とノリノリでストーリーを紡ぎだしてゆく彼らの姿は、若かりし日のサム・ライミをも髣髴とさせます。そして最後に満を持して登場するシガニーウィーバーはまさに映画会社のお偉いさん。いかにベタな内容の映画がウケるかを滔々と解説する彼女の姿には笑っちゃいました。しかし、そんな彼女に反発するかのように映画はまさかのハッピーエンドへと向かい始めます。最後、「結局、清楚なヒロインの女の子はチャラいくせに理屈っぽいサブカル野郎と手に手をとって幸せに死んでいくのかよ!ごるぁ!」とDVDプレーヤーの停止ボタンを押すかの如く出てくる世界を崩壊させる太古の神々の手は、そんな映画を散々観まくってきた監督の魂の叫びですね(基本、映画オタクはリア充嫌いだし笑)。確かに後半のぶっ飛んだ怒涛の展開(映画オタクにはたまらんキャラがいっぱい出てきます笑)には圧倒されましたけど、映画としてさすがにこれは反則だろー。でも一回だけなら許しちゃう。ちきしょー、面白かったじゃん、これ。でも、今回だけだよ、次やったら怒るからね(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2013-12-23 07:24:32)(笑:2票)
18.  ドライブ・マイ・カー ネタバレ 
妻と娘を失い孤独に生きてきた舞台俳優と彼にドライバーとして雇われることになった若い女性。ともに生きづらさを抱えていた2人の交流を終始淡々と描いたヒューマン・ドラマ。原作は泣く子も黙る世界的大作家、村上春樹。基となった短編集はまだ読んでないんですけど、主人公たちが交わすセリフをちょっと聞くだけで「あぁ、これはもう完全に村上春樹だなぁ」と思わせるところが凄い。妻が亡くなる前の長いプロローグとも呼べるシーンで、主人公が妻とセックスしながらひたすら意味不明な会話を交わすところなんてまさにそう。片想い中の女子高生が好きな男の子の家にたびたび空き巣に入って最終的には人を殺す話をしながらエッチするってどんな夫婦やねん(笑)。その後、本編が始まってからも登場人物が交わす会話も全く同じ。よく言えば哲学的で深いのにどこかお洒落、悪く言えば空疎で薄っぺらく全編気持ちの悪いナルシズムに満ちている。やはり村上春樹の小説は映像化には不向きなんじゃないかと思わせたものの、中盤からは不思議とこのわざとらしいセリフ回しに心地良さを感じている自分がいました。それはおそらく、主人公たちが現在取り組んでいる多言語舞台という前衛的な劇中劇が功を奏しているからなんでしょうね。舞台稽古をしている俳優たちがそのまま私生活にまで影響を引きずっているというこのメタ構造が、この不自然なセリフ回しを巧く中和している。なかなか考えられた演出と言っていい。内容の方も、村上文学の主要テーマである喪失感からの再生が多面的に描かれており、深い。前述した、さまざまな言語が入り乱れる演出でチェーホフの戯曲を再演しようという舞台の稽古と、心に傷を負った若いドライバーとの繊細な交流を二重写しのように描いたところは称賛に値すると思います。同じテーマをそれぞれ違うアプローチで描いていたものがラストでぴったり重なったのが感動的ですらありました。喪失感を抱えて生きている自分たちの苦悩がほんの少しだけ浄化された、それだけでこの先も生きていける――。心地良いラストの余韻に自分は観てよかったと思えました。カセットに録音された今は亡き妻ともう不可能となってしまった会話を交わす主人公の声を、ただ静かに聞き続ける若い女性とか、なんて切ない構図なんだろう。ただ、不満点も幾つか。まず冒頭、妻が亡くなるまでのあの長いプロローグは正直いらない。中盤の高槻との会話への伏線として必要だったのでしょうけど、それも回想シーンなりの別の描き方があったはず。あの40分はばっさりカットしても良かったのでは。とは言え、人と人とが永遠に分かり合えないことの切なさを美しく描いた上質の物語でした。
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-10 09:11:19)(良:2票)
19.  L.A. ギャング ストーリー ネタバレ 
1949年、人々の欲望渦巻く大都会LA。暗黒街では、残虐な元ボクサー・コーガンが圧倒的な力でギャングたちを支配していた。警察、判事、保安官らが次々と買収されていくなか、業を煮やした警察署長がある一人の警官に極秘任務を命じる。毒をもって毒を制す!決して悪を許さない熱い男オマラの元に集まった仲間たちは、コーガンの組織をぶっ潰すために孤高の戦いを開始したのだった。絶対に買収されない、まさに〝アンタッチャブル〟な男たちの姿を描いたこてこてのノワール作品。――って、だからこれってもう「アンタッチャブル」じゃん(笑)。さすがにオリジナリティなさ過ぎだって、これ。それにあまりにも行き当たりばったりな作戦の数々が何故か次々成功するのを、ただ運が良いだけで済ませちゃうのもなんだかなー。でもまあ、さくさく進む分かりやすいストーリー展開に男汁120%のダンディな役者陣が織り成すこってり濃厚な映像世界とかはけっこう楽しめました。ということで、不満は多々あれど、ぼちぼち面白かったかな。風呂上りに、ビールと枝豆片手に肩肘張らずに観るには最適な映画だと思いまーす。
[DVD(字幕)] 6点(2013-12-14 09:06:18)(良:2票)
20.  アデル、ブルーは熱い色 ネタバレ 
「ねえ、エマ。初めて味わったのは何歳のとき?」「何を?」「女の子」「女の子?それは私が女の子といつキスしたかってこと?それとも食べたかってこと?」「キスよ、もちろん…。その先のことは後で教えてもらうわ」「14歳のときよ、アデル」「そう…、エマはやっぱり女の方が好き?」「両方試した、男も女も…。それでもやっぱり女の方が好き。アデル、絶対よ」「エマ、私もあなたとキスしたい」――。17歳の女子高生アデルは何処にでも居るような平凡な女の子。毎日バスで学校に通い、退屈な先生の退屈な授業を受け、休み時間は女友達とのどうでもいい恋バナをして、そして家に帰るといつものように家族揃ってご飯を食べて…、という平穏な日々を遣り過ごしている。そんな毎日に物足りなさを覚えたアデルは他の女友達のように彼氏を作ってデートをし、セックスだってしてみるのだけど、それでも心の空白を埋めることが出来ないでいる。「何かが違う」。そう感じたアデルは、彼氏とも別れ、友達に連れてこられたゲイバーで“彼女”に出逢ってしまうのだった。髪の毛を鮮やかなブルーに染めた彼女の名は、エマ。そう、彼女こそアデルが街中で偶然擦れ違ったとき、自分の心の深い部分に火を点けるような衝撃を与えて去っていった女の子だった。偶然の再会に、何か運命的なものを感じたアデルは、そんなエマと何もかもを捨ててもいいほどの情熱的な恋に堕ちてゆく…。自分の殻を破れないでいる平凡な女の子アデルと芸術家肌の奔放なレズビアンの女の子エマとの数年間にわたるそんな濃厚な愛の日々を詩的な美しい映像で綴るカンヌ映画祭パルムドール受賞作。とにかく、この監督は人の顔をアップで撮るのが好きみたいですね~。3時間という長い上映時間のほとんどがこのアデルとエマの顔のどアップで占められておりました。もう冒頭から、主人公アデルのスパゲッティやらケバブやらをくちゃくちゃ食べるシーンが延々と繰り返されるのですが、普通、そんな挑戦的な演出はものの見事に失敗するのだけど、この監督さんの映像センスは素晴らしいですね。このアデルという何処にでもいる平凡な女の子の等身大の魅力を見事に引き出していたと思います。そんな彼女を虜にしてしまう青い髪のボーイッシュな少女エマとの濃密なベッドシーンも全然下品じゃなく、かといって必要以上に綺麗に美化されている訳でもなく、この絶妙なバランス感覚は凄く良かったです。後半、互いの生活のすれ違いから2人は破綻に至るわけですが、そこで描かれるアデルの心理は女と女という狭い枠組みを超えた普遍的なもの。辛い失恋を経験した男女なら誰もが共感できる、切ないものでした。僕もちょっと過去の色んなことを思い出して思わず泣きそうになっちゃいました(笑)。ただ、いかんせん長い!!このストーリーなんてほとんどあって無きが如しお話に3時間弱はさすがに長すぎます。2時間弱くらいに収めてくれたらもっと完成度の高い傑作になり得ただろうに。そこらへんがちょっぴり惜しかったですが、充分見応えのある納得のカンヌ映画祭パルムドール受賞作でした。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-07 02:30:31)(良:2票)
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