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プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  赤毛 《ネタバレ》 
製作当時はもう五社協定は雲散霧消しているわけですが、こうやって岩下志麻や乙羽信子が東宝映画で三船敏郎と共演しているのが観れるというのは珍しいことです。明治維新のときの赤報隊の史実をもとにしたオリジナル・ストーリーですが、穿った観方かもしれないけど70年安保闘争をカリカチュアしたような脚本であるような気がしてなりませんでした。官軍=佐藤栄作政権という図式で、宿場に突入してきた官軍が村人と対峙する絵面はまるで機動隊と衝突する学生デモ隊が彷彿されます。その村人たちも代官に反抗していたのは女郎屋の女たちと老師に扇動された若者だけで、半分以上の住民がこの騒動を眺めるだけの野次馬だったというのも意味深です。けっきょく赤報隊として官軍に利用されて果てる権三=三船敏郎なのですが、若者たちに詰め寄られて「理想と現実は違うものだ」と逃げを打つ老師=天本英世のセリフを聴くと、70年安保闘争後の無残な学生運動の成れの果てを予言していたようにすら感じます。 前半はとくに岡本喜八節が快調で、岡本映画常連の伊藤雄之助だけでなく三船敏郎までもがコミカルな演技を見せてくれます。権三が吃音気味というキャラ設定のおかげで、三船は普段は聴き取りにくいセリフ回しなんですが切れ切れに喋るおかげでいつもより耳に入りやすかったです。そして全編で効果的に使われるのが“ええじゃないか”節で、あの踊り狂う群衆の迫力は後年の珍作『ジャズ大名』の前振りみたいに感じました、もちろん今村昌平の『ええじゃないか』よりもずっと早いですね。コミカルな前半から打って変わって悲劇的な結末を迎えるわけですが、後半はちょっとテンポがもたつく感はありました。宿場に潜入していた幕府側の遊撃隊のエピソードは、ちょっと詰め込み過ぎた脚本のような感じでもたつきの原因だったと思います。とは言え個人的には珍しい三船敏郎のコメディ演技は堪能できたかなと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-02-11 22:09:40)
2.  ア・フュー・グッドメン 《ネタバレ》 
それにつけても、80年代~90年代のトム・クルーズの目覚ましいキャリアアップには目を見張るものがあります。ポール・ニューマンやダスティン・ホフマンなど大物俳優と共演してはたまたキューブリックの遺作にまで主演、そしてついにと言うかジャック・ニコルソンと堂々と張り合うことに。この頃のトム・クルーズは初期のチンピラ感のあるキャラから独特のオーラを持って演じられる演技力を高めていた時期でもあり、本作でもその力量を示し始めていたんじゃないでしょうか。 お話し自体はハリウッド映画お得意の法廷ドラマという感じでしたが、我々日本人には縁遠い軍事法廷の様子が観れて興味深かったです。ちょっと衝撃だったのは、弁護側と検事が被告人のいない場で、まるでポーカーの駆け引きみたいに取引して判決の落としどころを決めようとするところで、これは民間の裁判でも同じような米国の刑事訴訟の実態なんでしょうね。ボンボン育ちでいい加減な法務士官トム・クルーズがだんだんと真剣になってゆくのは定石通りといったところですけど、さすがにジャック・ニコルソンを証人として出廷させての最終弁論は迫力がありました。被告の二人の兵士が無罪を勝ち取っても海兵隊を不名誉除隊させられるのは、やはり俗に言う“軍の威信”というやつなんでしょう。そこで改めて観る者に「これは軍事法廷だった」と再認識させるわけです。 まあそれなりにカタルシスは与えてくれるストーリーでが、もちろんフィクションなのは承知ですけど、同じ軍事法廷でも『オフィサー・アンド・スパイ』の史実通りのドレフュス裁判とはえらい違いでした。米国では裁判でも、善悪・勝ち負けをはっきり見せるストーリーじゃないとウケないんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-24 23:42:19)
3.  アス 《ネタバレ》 
『ゲット・アウト』は自分としては愉しめたし「おっ、これは新しい俊才が登場したか」とジョーダン・ピールの活躍を期待していたのに、「こいつは実はM・ナイト・シャマランの再来なのかも…」というのが観終わった感想です(笑)。しょうじき、これほど訳が判らないホラーには久しぶりに出会った気がします。だいたいからして全編の三分の二は夜間か照明のない場所の上に主人公の四人家族が黒…(ポリティカルコレクトネスに抵触しそうなので、以下自粛)なので余計に何が起こっているのか判りにくい。たしかに家族のドッペルゲンガーが庭に現れるところは稀に見る不気味なシチュエーションなんですが、その後はキ〇ガイ殺人鬼とのタイマン勝負を延々と見せられただけだった気がします。私は説明のつかない不条理とかはホラーには需要なファクターだと思っているんですけど、せっかく映像的には理解しがたい絵面を所々に挟んでいるのに、ネタばらし(というほどには筋が通っていない)みたいなことを最後に持ってくるから余計に印象が悪くなったんですよ。母親と息子が見つめ合うラストカットには、「オチはそれかい!」と思わず突っ込んでしまいました。 こういう方向に進むのなら、最新作の『NOPE/ノープ』もあまり期待出来ないなぁ…
[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-05-22 21:50:49)
4.  悪魔のような女(1996) 《ネタバレ》 
アンリ=ジョルジョ・クルーゾーの傑作が、40年の時を挟んで無謀にもリメイクされたわけです。シモーヌ・シニョレをシャロン・ストーンにヴェラ・クルーゾーをイザベル・アジャーニというキャスティングは、とくに“悪女=エロ”という路線を疾走していた90年代のシャロンにはドンピシャといえるし、アジャーニだって気弱でメンヘラ気味な元修道女という役柄には適役かと思います。オリジナルの尺を約15%カットしているのでチャズ・パルミンテリが浴槽に沈められるまではサクサクとストーリーが進行しますが、ここから先がストーリーが徐々にオリジナルから乖離してゆき、思わず絶句してしまう最悪のラスト改変になってしまうのです。 クルーゾー版と決定的に違うのは、オリジナルのオカルト的な要素を残したまま“誰かが二人を脅迫しようとしているのでは?”というサスペンス要素を強めてしまった脚本のヘボさにあるでしょう。二人を探る探偵がキャシー・ベイツとなるわけで、オリジナルと違ってこの探偵が活躍するのが余計にサスペンス要素が強く感じてしまうのかな。またシャロンがオリジナルと違って大した悪女ではなかったというオチになり、誰が“悪魔のような”なんだよ誇大広告じゃ!と暴れたくなります(笑)。これはオリジナルから引き継がれているこのストーリーの弱点みたいなものですが、ネタバレが過ぎちゃうんであまり詳しくは言及しませんけど、実は最後になるまで犯罪が成立していないんですよね。どちらもラストで犯罪が成立してそこを探偵が見届けるわけですが、「見てないでお前が止めろよ!」と突っ込みたくなるところが弱点でもあります。まあこのリメイクでは傍観していた探偵に正当防衛という逃げ道を与えているとも言えますが、なんかもうグダグダ感しか残らなかったです。 これはもう、オリジナルを観てなくて予備知識を持たずに鑑賞したとしても、高評価を得るのは難しいでしょう。若き日のまだペーペーだったころのJ・J・エイブラムスが、ビデオカメラマンとして出演しているのは興味深いかな。あとイザベル・アジャーニの惜しげもない脱ぎ(冒頭だけですが)には一点献上いたします、脱ぎおしみしやがったシャロン・ストーンよ、少しは見習え!
[CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-22 23:04:03)
5.  悪魔のような女(1955) 《ネタバレ》 
有名な作品だけどほとんど題名だけしか知らず予備知識なしで観ましたが、これがなんと驚愕レベルの大傑作であることに気づかされました。 小規模なブルジョワ家庭の男児だけを預かる全寮制の私立学校(小学校か)。教師は四人しかいなくて女性教師は二人、そのうち一人(ヴェラ・クルーゾー)は実質学校のオーナーで、そのいけ好かない夫が校長だが彼は実業家タイプで教師ではない。もう一人の有能な女教師(シモーヌ・シニョレ)はなんと校長の愛人、つまり妻妾同居というわけです。生徒はともかく他の男性教師や使用人はその関係を知っているという、実に不思議な空間というか学校なんです。横暴極まりない校長は二人の女性を日常的に虐待していて、二人は共謀して校長殺害を計画して実行する。首尾よく彼を溺死させて水死を装うべく学校のプールに沈めますが、自然に発見されるはずの死体はプールの底から消えてしまった… 心臓病を患っていて終始弱気なヴェラ・クルーゾーと、颯爽とした金髪ボブカットで沈着冷静なシモーヌ・シニョレのキャラ造形の対比が見事です。この映画は死体が消えてしまった後半からの展開は、まさに息も尽かさぬという表現がドンピシャリなんです。「これはサスペンス映画のはずだ」と判っているはずなのに、クリーニング屋や集合写真の背景の窓に映る影の件などが続くと「まさかオカルトもの?」と劇中のヴェラ・クルーゾーと同様に観てるこっちまで疑心が湧いてきてしまいます。このストーリーテリングの特徴は、絶対にこれは伏線だと思うようなシークエンスを散りばめているのに、それがみな観客を惑わす地雷になっているところでしょう。こうなると、騙すテクニックに関してはヒッチコックをクルーゾーが凌駕していると考えざるを得ません。 ラストのどんでん返しの展開も、近頃の映画で観られるしつこい説明過多が無くて余韻が強烈です。それにしてもヴェラ・クルーゾーの死にざまは、実際に自分は見たことはないけど、心臓麻痺で死ぬ人はこんな感じなんだろうな、というリアルさでした。そしてラストシーンの子供の言葉、これはホントにゾッとしますね。このテイストはやっぱヒッチコックには無いものなんだよなあ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-04-19 22:44:53)
6.  悪魔のシスター 《ネタバレ》 
ほとんど実績のなかった若造のデ・パルマに、彼のヒッチコック趣味全開の作品を撮らせたプロデューサーには敬意を表したくなります。なんせ音楽はバーナード・ハーマンですからねえ。ヒッチコックじゃないけど「凶器はナイフがいちばん!」という拘りの殺人シーンはかなりの生々しさです。そして『ファントム・オブ・パラダイス』の“ウィンスロー”ウィリアム・フィンレイの怪演というかその気持ち悪さ、この映画のヤバさのかなりの部分を彼が持って行ってくれました。スプリット・スクリーンの使い方もセンスの良さが感じられます。でも正直言って精神病院にヒロインが忍び込んでからのラストまでの二十分間の展開を理解するのは、自分には無理でした。特にあのラスト・シーンは、主演のジェニファー・ソルトですら「私には理解不能」とインタヴューに応えているぐらいですから。それでもヒロインが見る悪夢のシークエンスは、『ローズマリーの赤ちゃん』を思い出す不気味さ、ブニュエルの映画のワン・シーンみたいな感すらあります。 死体を隠した長椅子に血が染み出ているカットは普通は伏線のはずなのに放置されて終わったのは「なんじゃ、こりゃ?」感が拭えませんが、本当は長椅子の周りでもっとしつこく捜索するところを撮ったけど、尺の都合で切られてあのカットだけが残ったということらしいです。とすれば、かなり雑な仕事だよなあ、まあこの頃のデ・パルマにはそこまでプロデューサーに歯向かう権限はなかったでしょうけど…
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-04-16 22:55:56)
7.  アメリカン・ヒストリーX 《ネタバレ》 
恐ろしく重いテーマで、考えさせられることの多い作品でした。28年も前の映画なのに、まるで現在のアメリカ合衆国の社会状況が描かれている感すらあります。これは米国社会が進歩していないのではなく、白人至上主義が実は建国以来綿々と引き継がれている裏の国是というか宿痾だからなんでしょう、残念ながら形を変えようとも今後も続いていくだろうと思います。考えてみればナチス・ドイツや南アフリカのアパルトヘイト政策が誕生する20世紀中盤までは、米国が世界最悪の人種差別国家だったんですからねえ。 言うまでもなくエドワード・ノートンの演技は、彼の今までのフィルモグラフィ中で最高の演技であると確信いたします。いつもは知的な優男チックなキャラを演じている彼が、タトゥーだらけの暴力的なスキンヘッド男を演じていることことからして驚き。でもやっぱり刑務所のヤカラみたいな囚人たちと較べると、線の細さを感じてしまうのは止むを得ないところでしょう。だけど彼の演技の真骨頂はネオナチ集団をアジる弁舌の凄い切れ味、こりゃあちょっとおつむの弱い輩なら簡単に洗脳されるのはムリ無いかもという説得力です。また出所後の髪を伸ばしたいつものノートン・キャラとの演じ分けも見事です。 脚本も秀逸で、ノートンに係る二人の教師の対比も印象深いところです。エリオット・グールドが演じるユダヤ系の教師にはやはりあのネオナチ思想を持つ人間は受け入れることが出来なかったけど、黒人の校長には白人vs有色人種という対立構造を何とかしたいという思いで彼を受け入れていこうという姿勢が見えます。もっとも利用というかノートンのまだ持っているカリスマ性を頼りに説得させて抗争を鎮めようとするのが本音だったかもしれませんが。「いや、君が蒔いたタネだ 逃げてるだけじゃ本当の平和は来ないぞ」と迫るこの校長は、本当はノートンを許していないのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-03-22 23:30:30)
8.  アングスト/不安 《ネタバレ》 
これって、ワイドショーなんかで見かける犯罪再現フィルムを映画にしたような代物で、そこに脚本家が妄想した犯人の心象モノローグと精神鑑定医(らしき人物)の分析を被らせただけです。「モノローグを聞いているとこの男が犯行に至った気持ちが理解できるようになる」なんて解説がありましたが、こっちとしては悪いけど一ミリも理解も共感もできませんでした、ただ不快なだけです。この映画のキモであるキチ〇イ犯人が家宅侵入してからは無意味じゃないかと思うぐらいの長回しが多く、普通に編集したら三分の二ヘタしたら半分ぐらいの尺で済んだんじゃないですかね。極端なほどのローアングルと今ではドローンを使うだろうというぐらいの高さからのクレーン撮影には確かに禍々しさを感じさせてくれますけど、肝心の内容がここまで胸くそ悪いと全く無意味でしょう。犯人のキチ〇イ役の俳優は見覚えある顔立ちだと思いましたら、『Uボート』で“幽霊のヨハン”と仲間から呼ばれていた印象深い機関員、アーウィン・レダーでした。あんな超大作で爪あとを残したのにその直後にこんな自主映画みたいな作品でキチ〇イを演じるなんて、本人はけっこう乗り気でオファーを受けたらしいですけど、ヘンな風に意識が高いタイプの役者みたいですね。監督は本作で多額の負債を背負ってその後は一本も商業映画を撮れていないそうですが、当然の報いです(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2023-01-10 19:06:29)
9.  アクト・オブ・キリング 《ネタバレ》 
インドネシアのコイサンマンと言った風情のギャングの親分アンワルと、インドネシアの安岡力也みたいな風貌の側近ヘルマン、この二人のコンビが放つ禍々しさは強烈。彼らは民兵団の一員として、スカルノ大統領失脚の一因となったクーデター未遂事件の後に共産党員やその華僑を一説では100万人以上殺害した事件に参加して殺しまくったわけです。彼らは別に狂信的な国粋主義者というわけじゃなく単なるヤクザかチンピラの類で利益のため愉しんで殺戮を繰り広げたわけですが、その民兵組織が未だに一大勢力として政界に影響力を持っているということにインドネシアという国の闇の深さが窺えます。 この映画に限らずドキュメンタリー映画に付きまとうのは、「どこまでが素でどこが演技か?」という拭い難い疑問です。私が疑問に思ったのは当初はまるで子供のときの悪戯を回想するかのように自身が犯した殺人について笑みを浮かべて語っていたアンワルが、後半になって妙に哲学的ともとれる自省を口にするようになってくるところです。どう見てもこの人は粗野の極致でそんな教養的な思考ができるとは思えないんですけどね。したがって私はここらあたりとラストのゲロ吐きは台本にしたがった演技だと解します。 しょうじき言って私がこの虐殺よりも衝撃だったのは、庶民を含めた現代のインドネシア社会の実情でした。中央の大臣も地方知事も完全にごろつきの集団である民兵組織とズブズブの関係。側近ヘルマンがさらなる利権を獲得すべく選挙に立候補したこと自体がもう冗談かと思いましたが、選挙運動すると住民たちは悪びれもせずにカネを要求してくる。もっと驚かされたのはアンワルたちが公共放送にTV出演して当時の虐殺をまるで武勇伝みたいに自慢げに語るところ、それを女性キャスターが笑いながら聞いている。もっともこの虐殺事件はインドネシアでもタブーとされているそうだし、いくらなんでもTVで取り上げられるというのはあり得ない気もしますので、これはフェイクだったのかもしれません。そうなるとどこまでが“実”でどこからが“虚”なのか悩まされてしまいます。 『ゆきゆきて神軍』ほどではないにしろ、かなり後味の悪い映画であることは確かです。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-09-27 22:34:09)
10.  アウトロー(2012) 《ネタバレ》 
今やトム・クルーズとタッグを組んでヒット作を連発しているクリストファー・マッカリー、これが監督としてトムとコンビを初めて組んだ作品です。映画化時点ですでに17作も刊行されていた『ジャック・リーチャー』シリーズのなんで9作目を選んだのか解せませんが、きっと小説としての出来が良かったんでしょう。たしかに元が推理小説だけあって、前半の謎ときは真犯人がジェームズ・バーではないと判っていてもミステリーとしての盛り上がりはさすがクリストファー・マッカリーですね。トムが演じるジャック・リーチャーというキャラは、要は元陸軍のMP将校で凄いキャリアの持ち主だけど、現在は車も持っていなくて移動は常に乗合バスか他人の車を無断拝借という風来坊だとしか情報が入ってこない。劇中まったく笑顔を見せなくて頭はキレるけどいかつい男というキャラなんですが、イーサン・ハントの様な洒落っ気が皆無なんでどうしても「これって、ミス・キャストなんじゃね?」って感は否めませんでした。ヒロインの弁護士も演じるのがロザムンド・パイクなんでどうしても「なんかこの女、裏があるんじゃね?」と疑いの眼になっちゃいましたが、珍しくまっとうなキャラでした(笑)。それにしても彼女の衣装、胸元が大きく開きやたら巨乳を強調していて、気になって仕方がありませんでした(笑)。 快調に進行していたストーリーも、ロバート・デュヴァルが登場してくるあたりから顕著に失速してしまいます。大物ぶって銃を構えるデュヴァルですけど肝心のところで全然敵に命中しない、まあそれはイイとしてもトムが銃を捨てて敵キャラとタイマン勝負を始めるので、これはてっきりギャグだと思いましたよ。そして無抵抗のラスボスを警察が来る前にいとも簡単に射殺しちゃうのは意表を突かれました。このラスボスを演じるのがヴェルナー・ヘルツォーク、全盛期のクラウス・キンスキーを彷彿させるような迫力、クラキンに負けない怪優になれましたね。でもこのラスボスは一応実業家、いくら金儲けのためといっても無関係の人間を四人も計画的に殺すなんてあり得ますかね?まあヘルツォークならやりかねないか(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-09-24 23:03:40)(良:1票)
11.  アレキサンダー大王 《ネタバレ》 
項羽やリチャード獅子心王やナポレオンと並ぶ人類史上に於いて理屈抜きに戦に強かった最強の男の筆頭、アレキサンダー大王。オリヴァー・ストーンの『アレキサンダー』と本作しか彼のことを真正面から描いた映画を私は知らないけど、かなりハードルが高い題材なのは確かです。 50年代半ば、強いドルを背景にしてイタリアやスペインでハリウッド大作が撮られていたころの製作です。なぜか監督が『ハスラー』や『オール・ザ・キングスメン』のロバート・ロッセンというのが私には最大の?で、フィルム・ノワールっぽい小品が得意ジャンルの感じの人で、こういう歴史大作を手掛けたというのは意外。案の定この映画の弱点は彼の起用だった感じが濃厚で、いっそのこと後に途中まで『スパルタカス』を撮ったアンソニー・マンなんかの方が適役だったんじゃないかな。主演はリチャード・バートン、アレキサンダー大王を演じるにはちょっと老けてるんじゃないかという気もするし、それっぽく見せるためのアレキサンダー大王トレードマークの髪形がまた似合ってないんだなあ。この映画の最大の失敗は、シェイクスピア劇のような感覚で書かれた脚本でもともとその分野が出身のバートンには合っていたかもしれないが、観客が求めているのはそういう映画じゃなかったと思うんです。父王ピリッポスが暗殺されて後を継ぐまでの尺が一時間強、それまで延々と父子の葛藤を見せられるわけです。肝心のアジア遠征に出征してペルシャのダレイオス王を滅ぼすまでは、駆け足状態。見せ場のイッソスの合戦も思ったより小スケールで、やはりロッセンはアクション・シーンの演出には向いていなかったと思います。美術や衣装にはそれなりに力を入れているのは判るけど、バビロンの宮殿などはいかにも野原に最低限のセットを組みましたという感じで、奥行きが全然ないのは痛い。 オリヴァー・ストーンの『アレキサンダー』では母親オリュンピアスとの関係が縦軸だったけど、本作ではオリュンピアスの存在感は希薄で父王ピリッポスとの確執がメイン・テーマであるところが特徴です。ここら辺には製作時代の違いを感じてしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-07-14 22:12:03)
12.  愛の亡霊 《ネタバレ》 
『愛のコリーダ』に続いてフランス資本が主導で撮られた一編、仏語原題と邦題の『コリーダ』との類似性から未だにハードコア作品と誤解されている節があるのはちょっと残念です。自分は『愛のコリーダ』は一種のゲテモノ映画だと思っているので、物語として何の繋がりもない本作の方が評価されるべきじゃないかと思っています。 茨城県で実際に起こった事件を基にした脚本だそうですが、大島渚映画の中でもピカイチと言えるぐらい映像が美しい。それもそのはず、撮影の宮島義勇を始め主要スタッフが小林正樹の『怪談』を製作した人たちなんですから。武満徹の音楽がまた絵も言えぬ独特の雰囲気を出しています。お話しは吉行和子と愛人の藤竜也が夫の田村高廣を殺して古井戸に隠すけど、その後田村の幽霊に悩まされるという割と単純なものです。前半では藤と吉行が田村を殺すに至る経緯があまりに雑なのが気にかかります、殺人から三年たっても二人の関係が変わらないというかかえって疎遠になった様な感じで、これじゃなんで夫殺しに走ったのか?って言いたくなるけど、実話って案外と雑なことが多いんですよね、まあ生身の人間のすることですから。でもそれから田村の亡霊が出現するようになってからは、俄然見どころが多くなってきます。この亡霊は自分を殺した妻の前にだけ現れるのですが、彼女を恨む様子はまったくないんです。そりゃ女房の方は恐怖のどん底ですけど、彼女の注ぐ酒は飲むし勧められれば芋は食べるしでで、こんな人の良い亡霊は珍しいです。だいたい幽霊が現生のものを飲み食いするのは初めて観た気がします。でもこの幽霊・田村はいつも寂しそうに出現するけど不気味さは高レベルで、生前は車引きだった彼が吉行を人力車に乗せて走るところなんかゾクッとさせられますよ。粗野で自分勝手な男としか見えなかった藤も、後半になると亡霊に悩まされて半狂乱になる吉行と供に苦しむようになる演技には胸を突かれました。 斜に構えたような映画を撮っていた大島渚ですが、本作はそんな彼の残した珍しい正統派の映画だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-04-23 22:37:50)
13.  アフリカの女王 《ネタバレ》 
今観ても、アフリカ・ロケの映像は一見の価値ありです。何度も急流に翻弄されるアフリカの女王号はホントに船を流してなかなかの迫力ある映像ですが、もちろんボギーやヘプバーンはもちろんスタントも乗っていない無人船なのはミエミエです。これらは名カメラマンであるジャック・サーティースの匠の技なんですが、肝心のジョン・ヒューストンは現場をほったらかしてハンティング三昧のご乱交、つまりこれがイーストウッドの『ホワイトハンター ブラックハート』の元ネタというわけです。 序盤は割とシリアスに始まるけど、ボギーとヘプバーンの女王号での河下りが始まるとたちまち大人のラブコメになっちゃうのが面白い。ボギーは本作でオスカー受賞したわけですが、やはり彼は『カサブランカ』みたいな気障なキャラより粗野で豪快だけど気の良い漢を演じた方が合っています。でも彼のフィルモグラフィには、このパターンの役を演じた例は意外と少ないんです、まさに本作でのアフリカの女王号船長こそが彼のベスト・アクトだったのかもしれません。ヘプバーンも宣教師の器量の悪い妹というのは、彼女にはうってつけだったんじゃないでしょうか。でも気位の高い英国女がボギーのような酒浸りの男に惚れちゃうのはまあイイとしても、ほとんど揉めることもなくまるでJKのラブコメみたいにラストまでイチャイチャするというのは、なんか甘い脚本のような気もします。まあ原作が、ホーンブロワー・シリーズで有名なセシル・スコット・フォレスターの小説だというところも驚きですがね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-11 20:46:31)
14.  アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ 《ネタバレ》 
上映禁止とまではいかなかったけど、日本ではポルノ映画なみの扱いで公開された伝説のクソ映画『発情アニマル』のリメイク。オリジナル版の監督メイル・ザルチが製作総指揮だけど、30年たって『ソウ』シリーズがヒットして悪趣味なゴア描写に対する世間の寛容度が緩くなってきたので、「現代のエグさでリメイクしたら受けるんじゃね?」とビジネスチャンスを発見したってのが製作経緯だと思う、たぶん。たしかに本作はシリーズ化されたぐらいだからそこそこヒットしたみたいで、ザルチの思惑は見事に的中したみたいですね。 自分は未見ですけど、『発情アニマル』とは逆でレイプ・シーンよりも殺害・拷問シーンの方に比重が明らかに置かれています。というか、やはり『ソウ』シリーズの影響が強いみたいです。極悪非道なシェリフはオリジナルにはいないキャラみたいで、犯人5人の中で唯一の家族持ちで失うものが大きい存在だからストーリーの盛り上げには一役買っていたと思います。そして彼の衝撃の最期、『ソウ』でも滅多に観れないエグさです。シェリフのシークエンス以外はほぼオリジナル通りみたいですけど、一応普通レベルの監督・スタッフが関与しているのでそこそこの水準には達しているかな。と言っても真面目に撮れば撮るほど陰湿なカタルシスしか残らず、これは元ネタがあれだけに致し方ないって感じでしょうか。主演女優に、いろんな面で魅力が乏しかったのも難点でした。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-03-16 22:05:52)
15.  ある愛のすべて 《ネタバレ》 
『ある愛のすべて』、まず邦題からして如何なもんでしょうか。これは言わずと知れた70年の『ある愛の詩』のパクり、まあこの大ヒット映画とは似ても似つかないグチャグチャの三角関係の愛憎劇なんですからねえ。 セレブな建築家のマイケル・ケイン、その有閑マダムを絵に描いたような豊満な妻がエリザベス・テイラー、ケインが浮気のつもりで手を出したがだんだんマジになってゆくブティック・オーナーがスザンナ・ヨーク、というのが基本的な登場人物、というかこの三人だけで進行するストーリーです。この頃のケインは男の色気が絞ったら滴りそうな絶頂期、そのキャラ付けは60年代の出世作『アルフィー』の主人公がセレブに成り上がったという感じ。そのケインとリズの夫婦喧嘩が凄まじく、これを延々と見せられる前半はほんとうんざりさせられます。リズは『バージニア・ウルフなんかこわくない』を彷彿させる役柄、仲の悪い夫婦の悪妻はもはや彼女の十八番と言えそうな域に達しています。浮気相手のヨークにも面と向かって悪態をつくし、素のリズも口が悪いことでハリウッドでは有名だったので、けっこう本人も愉しんでいたんじゃないかな。でもそれを見せられる方としては愉しめるかと言うと、そんなわけないですよね。ケインもロールスロイスを乗り回す身分ながらリズのクリーニング代金にも文句をつけるケチ臭い男、小物感は否めません。 大喧嘩を繰り返した挙句ヨークとアパートを借りてリズと離婚するという展開なのに、リズがケインには未練たっぷりでお話しはすんなり進行せず行きつ戻りつ状態、挙句の果てにはリズがリストカットして自殺未遂という波乱のストーリー。「こりゃ、いったいどういうオチになるの?」と呆れているとヨークがリズに打ち明けたある秘密から予想外の展開になり、ラストカットのケインの表情と同じく観ている方も啞然茫然となる幕の閉じ方でした。 けっきょく誰にも感情移入できず、大人の恋愛というレベルのお話しにも達していない。三人ともキャリアに脂がのりきった時期の作品なのになんでこんなに埋もれた映画になってしまったのか、そりゃ観れば納得できますよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2022-02-19 21:51:31)
16.  アレキサンダー 《ネタバレ》 
人類史上で最大の偉業を成し遂げたアレキサンダー大王、子どもの頃にこの話を知った時にはあまりに凄くて神話のお話しかと思ったぐらいです。実は他の歴史上の英雄たちと違って、本作の前に彼の生涯が映画化されたのは、リチャード・バートンがアレキサンダーを演じた56年製作の『アレキサンダー大王』しかないんですね。そんな難易度の高い題材にチャレンジしたのが、21世紀に入って誇大妄想気味になってきたオリヴァー・ストーンです。 物語はアレキサンダーの死から40年後、プトレマイオス朝のファラオに収まっているかつての部下プトレマイオスの回想という形式で進行します。家庭教師アリストテレスとのエピソードなど順当なストーリーテリングで始まったと思いきや、プトレマイオス=アンソニー・ホプキンスのいわゆる“ナレ死”だけで父王フィリッポスからアレキサンダーに代替わり、アジア遠征に乗り出しエジプトを征服しペルシャに攻め入りガウガメラの決戦までナレーションだけで進行するので、これは総集編かよ、ってツッコんでしまいました。でも中盤以降になってフラッシュ・バックしてフィリッポス暗殺とアレキサンダー即位をシークエンスとしてきっちり見せてくれ、けっこう巧みな脚本なのかなと感じます。ガウガメラの決戦・バビロン入城・インド侵入と象軍団との死闘、というところが大きな見せ場・スペクタクルとなりますが、やはりガウガメラは力の入った入魂のシークエンスで凄いスペクタクルです。個人的にはインドでの戦象との闘いには強烈な印象を受け、象がこんなに恐ろしい兵器になるとは驚きしかありません。初めて英軍のタンクに攻め込まれたWW1のドイツ兵もこんな感じだったんでしょうね。あとアレキサンダーたちが初めて猿と遭遇して(ギリシャには猿はいなかったみたいですね)、人間の言葉を喋らない小人の軍団だと驚くところが面白かったです。書物を読んだだけでは到底実感できないアレキサンダーの偉業も、こうやって映像で見せられるとイメージし易くなるもんですね。 ストーリー展開の背景では、妖しい母親アンジェリーナ・ジョリーの野望が隠し味となっています。まるでフランス革命の理想を語っているようなアレキサンダー=コリン・ファレルはいかにも現代的なのキャラクターですけど、マザコン的・BL的なキャラとしては最適な彼が大王らしいかというと首を捻るところです。あと驚かされたのは、アレキサンダーの死が側近将軍たちの毒殺という解釈が採られているところで、さすが『JFK』でケネディ大統領暗殺陰謀説の教祖となったオリヴァー・ストーンらしいですね。ということは、彼が主張したかったのはアレキサンダーが古代のJFKだったということか?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-25 22:54:00)
17.  アップグレード 《ネタバレ》 
よく考えたらツッコミどころに事欠きませんが、才人リー・ワネル手にかかるとそんなことは気にならず観る者をグイグイ引き込むお話しになっちゃうんだからさすがです。言ってみれば人間とAIのバディムービーみたいな要素が濃厚なんですね、その主人公がジェラルド・バトラーみたいな髭面の一見マッチョ・キャラですが、意外と真面目な常識人で敵を殺すと激しく動揺するのは捻った設定です。妻を殺されたことに対する割と単純な復讐劇思いきや、ラストは予想を超えるダークな展開、イイ脚本じゃないですか。あの一瞬夢オチかと思わせるバッド・エンドは、『エンジェル・ウォーズ』を思い出してしまいました。そしてまるで『オーメン』を彷彿させるようなラストでもあり、これからは悪魔に代わってAIがオカルト・ホラーの悪役になってくるような予感がします。 考えると、ここ10年は豪州出身の映画人が絡むSFやホラーの秀作が目立ちますね。これからは韓流じゃなくてオージー流なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-04 22:35:31)(良:1票)
18.  アルキメデスの大戦 《ネタバレ》 
これは誰もが認めるところでしょうが、冒頭の大和撃沈のシークエンスはまさに“和製プライベート・ライアン”的な壮絶な映像。攻撃する米軍機もとうぜんCGながらもそのマーキングや機動などは実感あふれています。大和自体や後に登場する長門も含めて緻密な再現は山崎貴の本領発揮、まさに“神は細部に宿る”です。 この大和沈没が鮮烈過ぎて出落ち感すらあるストーリー展開ですが、まあこれはフィクションですから良いでしょう。櫂直などフィクショナルなキャラはともかくとして、実在の人物やモデルにされた人物が明らかに判るキャラにはちょっと?となる部分が無きにしも非ずです。舘ひろしの山本五十六は、自分としては歴代五十六の中でもっともイメージが合った良いキャスティングだったと思います。平山造船中将は平賀譲、藤岡造船少将は藤本喜久雄という有名な造船官がモデルなのは明白です。でも実際の大和建造計画策定時には藤本は死去していたのですが、まあここはフィクションなので五月蠅く言わないことにします。でも違和感がどうしても拭えなかったのは(これを言っちゃうと原作コミック自体の否定に成りかねないですが)、超秘密主義だった帝国海軍にいくら山本五十六の後押しがあったといっても、帝大を中退したばかりの民間人を少佐として迎え入れるという設定自体が絶対あり得ない。あと、天才的な数学才能がどうして一晩で造艦設計図面を書き上げる能力に繋がるのかが、理解しにくい。使用鉄量から造艦経費を導き出す方程式を創出するのは確かに数学的才能ですが、設計自体はデザイン的な能力だと思うんですけどねえ、まったく“数学万能”かよ(笑)。 冒頭で大和が建造されることはいわばネタバレしているのでこの広げた大風呂敷をどういう風に閉じるのかと楽しみにしてましたが、櫂と平山のラストの対決はなかなか見応えがありました。けっきょく櫂は平山造船中将に負けたというか説き伏せられた感じですけど、演じているのが田中泯ですからその結末も納得です。やっぱ本作では彼がいちばん光ってましたね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-13 22:34:19)
19.  アメリカを売った男 《ネタバレ》 
ジェームズ・ボンドものとは違い、実話をもとにしたスパイ映画はホントに暗いお話しが多いですね。“名が知られたスパイは、失敗したスパイだ(もちろん例外もあるけどね)”という名言もあるくらいですけど、クリス・クーパーが演じるロバート・ハンセンは私が今まで観たスパイ映画のキャラでもっとも闇落ちした人物です。決して善人役が回ってきそうもないご面相なのに、まるで爬虫類が人間に化けたような顔つきでしかも熱心なカトリック信者、そしてド変態ですからねえ。でもこれこそ彼にしか演じられない当たり役だったんじゃないでしょうか。ラスト、エレベーターのドアが開いたらいきなりライアン・フィリップとクーパーが鉢合わせする場面、「私のために祈ってくれ」と呻いて暗転する幕の閉じ方は鳥肌ものでした。ライアン・フィリップが演じるFBI職員のキャラは実在人物なのか架空のキャラなのかは判りませんが、知らないうちにスパイ容疑者の監視役を命じられ真相を知って苦悩が深まる過程はリアルでした。でも左遷されて“窓のない部屋”に押し込められて新しい助手があてがわれてきたら、「こいつは俺の監視役だ」と普通は迷わず確信すると思いますけどね。まあフィリップのモデルがいたとしてもかなり脚色されているはず、でも彼が置かれるシチュエーソンがハラハラ・ドキドキを盛り上げてくれるので良い脚本かと思います。ハンセンがスパイに走ったのは、共産主義イデオロギーへの共鳴ではなく自分の能力が評価されないことへのルサンチマンが主たる動機だったみたいです。でもこの映画ではそれに付け加えるように彼のカトリック信仰が強調されていますが、信仰自体はスパイ行為とは関係ないと思います。熱心なカトリック信者が無神論の共産主義国に協力しますかね?人間の内面はそう簡単に割り切れるものじゃないのも確かですが、プロテスタントが主流のアメリカですから、ハリウッドはカトリックをなんか眼の敵にしているような気がしてならないんですけど。そうは言っても、上司がいきなり夫婦で自宅に押しかけてきて宗教勧誘してきたら、そりゃ堪りませんけどね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-27 23:18:35)
20.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
その昔、明石家さんまがトレンディドラマに出ていたころ、有名な“テニスラケットを使ったパスタ水切り”をそっくり再現というかパクっていました。名優ジャック・レモンの伝説的なパフォーマンスをパロっちゃうとは、さんまというか演出家はいい度胸してるなと感心した思い出があります。 初めて観たとき、「NYってラブホが無いのかよ?」というのが強烈な違和感だった記憶があります。いくら一等地にある部屋だといっても、知り合いが住んでいる部屋に女の子を連れ込みますかね、それも急にムラムラしてきたってわけじゃなく一週間以上前から予約しておくなんてねえ。まあそれを言っちゃあ話が進まないので深くは掘りませんけど、貸しているジャック・レモンも出世のための苦行だと割り切っている俗物キャラなのがイイですね。シャーリー・マクレーンの演じるフラン(ファミリーネームがキューブリックというのが凄い)に関しては、“純情そうに見えるけどヤルことはヤッテいる女”という感じがするし、ほとんど極悪非道といっていい人格の部長に離婚させて後釜に収まろうとするちょっと嫌な女。でも最後の最後で突然目覚めてレモンのもとに飛び込んでゆくラストは、それまでほとんど彼女に感情移入できなかっただけに鮮やかな脚本だと感心します。 言ってみればこのお話しは典型的なシチュエーションコメディなわけですが、そこに微妙なさじ加減でペーソスが味付けされている、まさにジーン・ワイルダーじゃなきゃ撮れないラブコメだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-27 22:14:14)(良:1票)
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