1. アップ・ザ・クリーク/激流スーパーアドベンチャー
《ネタバレ》 「ウハウハで行くか」「ザブーンだな」 という意味不明な会話シーンを目当てに、定期的に観返したくなる一本。 劇中の主人公達同様、この映画も「出来が良い」「優秀な作品」ってタイプではなく、むしろ「落ちこぼれの劣等生」って表現が似合いそうなくらいなんですけど……それでも何だか、憎めない魅力があるんですよね。 川下りを題材にしているという、それだけでも自分の好みだし、緩い感じのギャグが各所に散りばめられているから、リラックスして楽しむ事が出来る。 勿論、肝心の川下りシーンに迫力が無いとか「自殺した学長も一人いる」って台詞は流石に笑えないとか、欠点は幾らでもあるんですが、そんな「迫力の無さ」「出鱈目で悪趣味な設定」さえも、本作では何となく「愛嬌」に思えてくるんです。 「テンションが低い観客を盛り上げる為、ブロンド女性が胸をはだけてみせる」という、お色気ギャグなシーンも、妙に好き。 主人公達の愛犬チャックも、仕草や鳴き声が可愛くて、面白くて、良かったですね。 本作のMVPには、この犬を推したいくらいです。 そして何より、クライマックスの「爆発」→「洪水」の流れには、大いに興奮。 このシーン単体で見ると、そこまで凄いって訳じゃないかも知れないけど、それまでのボートレース描写がノンビリしていただけに、ギャップによって盛り上がる形になっているんですよね。 土壇場で逆転負けしたライバルチームが「史上最悪のボートレース!」と叫んだりするのも、下らないと思いつつ、何故だか笑っちゃう。 今回久し振りの観賞だったのですが、やっぱり結構面白かったし、また暫く経ったら、観返したくなるんでしょうね。 中々離れられない、味わい深い映画です。 [地上波(吹替)] 6点(2018-01-11 08:18:10) |
2. アリゲーター(1980)
《ネタバレ》 「元祖ワニ映画」というよりも「ジョーズの便乗映画」という印象の方が強い一本ですね。 襲い掛かる時のBGMまで似ているし「怪物に襲われたと思ったら、人間による悪戯だった」と判明する場面なども踏襲している形。 これだけ書くと、如何にも粗悪な劣化コピーのようにも思えちゃうのですが、然にあらず。 中々面白く、しかも「JAWS/ジョーズ」には無い本作独自の魅力まで感じられたのだから、嬉しかったです。 主人公が頭髪の薄さをネタにされる件なんて、最初はクスリともしなかったのに、その後も繰り返しネタにしてくるもんだから、つい笑っちゃう。 とうとうワニを倒した後のハッピーエンドの場面でさえ「ママもハゲが好きなのよ。家系らしいわ」とヒロインに言わせて終わるんだから、本当に徹底していましたね。 この主人公のキャラ造形って「真面目な刑事」「過去に相棒を死なせたトラウマがある」「動物好きで優しい」といった具合に、かなり王道なもんだから、ともすれば印象が薄くなりそうなものなのに、この「ハゲ」弄り効果によって、色濃く記憶に残ってくれました。 特撮も現代基準だと結構拙いんですが、頑張って巨大に見せようと撮っているのが伝わってくる為、憎めなかったですね。 小さな車や街の模型を作り、そこを普通のワニに歩かせるシーンなんて(あぁ、こういうの好きだなぁ……)と、しみじみ感じちゃったくらい。 ワニの巨大な眼も不気味に描かれていたと思いますし、子供相手でも容赦無く殺す残忍さも良い。 マンホールの下からワニが飛び出し、咆哮するシーンなんかも「怪獣映画かよ!」とツッコませてくれて楽しかったです。 昔の映画らしく、全体的にノンビリした展開なのですが、そんな中「新しい相棒になるかと思われた若い警官」「鳴り物入りで登場したワニ退治の専門家」などの重要キャラが、あっさり殺されるサプライズも用意しており、観客を飽きさせない作りになっているのですよね。 特に後者は、ワニの糞を見つけ「これはでかい」と大喜びするシーンがコミカルで印象深かっただけに(こりゃあ最後まで殺されないで生き残る立ち位置だな)と予想していたところを、裏切られた形。 あえて欠点を挙げるなら、冒頭にて赤ん坊時代の「ラモン」を飼っていた子が成長してヒロインになった訳だから、人を殺しまくっている巨大ワニが「ラモン」であると、彼女が覚るシーンがあっても良かったかも知れませんが、気になったのはそれくらいでした。 クライマックスにて「爆弾のカウントダウン」と「マンホールから脱出する主人公の姿」を一秒毎に交差させつつ描くシーンなんかは、特に素晴らしかったですね。 ここで気分を最高潮に盛り上げてもらい、そのまま爆発によってワニ退治成功→「悲劇は再び繰り返す」な下水道のワニの赤ちゃんを映してエンドロール突入という、実に綺麗な終わり方。 ラスト五分ほどで、一気に作品の印象を良くしてくれた気がします。 正直あまり期待していなかっただけに、意外な掘り出し物でした。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-07 12:25:47)(良:1票) |
3. 赤毛のアン/アンの青春 完全版〈TVM〉
《ネタバレ》 内容としては「教師モノ」に分類されそうな本作。 舞台も田舎から都会へと移り変わり(これは前作とは異なる面白さを与えてくれそうだ……)と期待が膨らんだのですが、終わってみれば、良くも悪くも前作と殆ど変らない品という印象を受けましたね。 主人公のアンが、気難しい老婦人の心を解きほぐして仲良くなる件なんて、特に既視感を覚えます。 新しい要素としては、生徒達との心の触れ合い。 生真面目なオールド・ミスであるブルック先生との友情。 そして「地元の幼馴染」と「都会で出会った紳士」に挟まれたアンの三角関係が挙げられるのですが、こちらは前作で自分が苦手としていた「女性向けの恋愛ドラマ」成分が、より濃くなったように感じられて、少し残念でしたね。 ちょっと意地悪な見方かも知れませんが、作風やら何やらを考えればアンが後者と結ばれる事など有り得ない訳で「どうせ幼馴染のギルバートと結ばれるんでしょう?」と、達観した気持ちになってしまいました。 前作に比べれば出番は短いけれど、マリラおばさんが相変わらず素敵なキャラクターであった事は、嬉しい限り。 終盤、地元に戻ってきたアンを出迎えて、嬉しそうに抱き締める姿を目にすると、何やらこちらの心まで温かになってくるのだから、不思議なものです。 紆余曲折はあったけれど、やっぱり最後にはアンとギルバートが結ばれて、二人が幸せになるという、予定調和な結末。 でも、この作品に関しては「それで良い」「それが良いんだ」と思えましたね。 全編に亘って落ち着いた空気が漂っており、安心して観賞しているこちらの期待を裏切らない、平和な映画でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2016-09-02 10:29:26)(良:1票) |
4. 赤毛のアン/完全版〈TVM〉
《ネタバレ》 こういった映画を鑑賞する際には、主人公の子供側ではなく、保護者である大人側に感情移入する事が多くなったなぁ……などと、しみじみ実感。 とにかくもう、マシューとマリラの老兄妹が素晴らしかったですね。 主人公のアンが、子守の仕事をサボって読書に熱中したり、自分をやたらと「悲劇のヒロイン」アピールしたりする姿に、少々ゲンナリしていたところで、この二人が登場し、大いに和ませてもらったという形。 作中の大人達が、次々にアンを叱ったり、厳しく接したりする中で、マシューおじさんだけが彼女を気に入り、優しく接してくれるのだから、アンだけでなく観客の自分にとっても、彼は本当に癒しの存在という感じなのです。 妹のマリラおばさんのキャラクター性も抜群で「なるほど。ツンデレとは、こういう女性を指すのか」と、思わず感心してしまったくらい。 当初はアンを嫌っていたはずの彼女が、段々と愛情を抱くようになっていく姿が、本当に丁寧に描かれているのですよね。 それだけに、駅でアンの旅立ちを見送る二人の姿と 「あの時(孤児院には男の子を頼んだのに)女の子に間違えてくれて良かったな」 「あれは神の思し召しですよ。ウチには、あの子が必要だった」 という台詞のやり取りには、じんわりと感動。 気が付けば、マシュー以上にマリラの方がアンを可愛がっていて、そんな妹にマシューが少し呆れているような様子も、実にチャーミグでした。 終盤、アンが帰郷した際に、農作業中のマシューが心臓の発作で倒れてしまうのですが、その時の会話も、素晴らしいの一言。 「私が男の子だったら、畑の仕事を手伝えたのに」 「そう思った事は無いよ」「女の子で良かった」「自慢の娘だ」 と、幸せそうに語りながら息を引き取る姿には、思わず落涙。 父娘の絆に、大いに心を揺さ振られました。 そんな具合に、自分としてはマシュー視点の映画として、娘を見守るような気持ちで観賞した本作。 でも、全体の主人公としては、間違いなくアンである訳で、その少女漫画的なストーリー展開には、多少の違和感を覚えたりもしましたね。 ギルバートとの恋愛模様に関しては、特にそれが顕著であり、彼がやたらと都合良くアンの前に現れる事なんて、もしかしてギャグでやっているのだろうかと疑ってしまったくらいです。 ボートが壊れて溺れそうになったアンを助ける姿や、ラストシーンで馬に乗って現れる姿なんて、典型的な「王子様」キャラといった感じ。 この辺りは、やはり女性向けの作品なのかな、と思わされました。 とはいえ、そんな具合に「女性向け」の内容が苦手であるはずの自分さえ、これだけ感動させられたのだから、凄い映画である事は、疑う余地が無いかと。 また何年か経った後に、今度は懐かしさと共に観賞して、穏やかな世界に再び浸ってみたくなる…… そんな一品でありました。 [DVD(吹替)] 7点(2016-09-01 10:37:00)(良:2票) |
5. ア・ホーマンス
《ネタバレ》 今回の松田優作、ターミネーターみたいだなぁ……と思っていたら、本当に正体がロボットだったのには驚きました。 詳しい背景は作中で語られていなかったと思うのですが、一体なんだったのでしょうね、彼。 何処かから脱走してきたか、あるいは彼もまた未来から送り込まれてきた代物なのでしょうか。 そういった部分を秘密のままにする事によって、神秘的な魅力が生まれるパターンもありますが、本作に関しては「結局、何だったの?」という疑問の方が大きく、少し残念でしたね。 監督としての腕前に関しても、才気やら個性やらを感じさせる場面もあるのですが「間が長過ぎる……」と思える部分も多く、どうも褒めるのが難しい映画、という印象。 そんな中で煌めきを感じさせてくれるのが、これが俳優デビュー作である石橋凌と、悪役を演じたポール牧の二人ですね。 どちらも存在感たっぷりで「俳優」としての松田優作と、堂々と渡り合ってくれています。 もしかしたら「監督」最大の功績は、この二人の演技力を引き出してみせた事にあるのかも……なんて考えが頭をよぎってしまう映画でありました。 [DVD(邦画)] 4点(2016-05-22 20:22:49) |