1. 恐怖(1961)
《ネタバレ》 全然知らなかった作品なんですが、サスペンスとしての出来の良さにびっくりしました。これがヒッチコックの手によるものだったら、名監督の代表作として不朽の名声を得ていたでありましょう。一体なぜに(ほぼ)無名なのかしら。 S・ストラスバーグの線の細い情緒不安定な演技は、こちらの疑念をかきたてるのにぴったりハマりました。冒頭の伏線も、実に鮮やかにどんでん返しの一助を担ってますし、プロットがとても良くできています。ああそれに窓の外に見える崖っぷちの車椅子。ラストのあの画は怖かった。直後に何が起きるか想像つくからだろうか。こんな風に直接グロい画を見せるのでなく、間接的に観る者の想像を煽るのです。良作です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-06-11 23:53:11) |
2. 黄色いロールスロイス
《ネタバレ》 一台の麗しいロールスロイスがめぐる3パターンのお話。こんな珍しい構成、初めて観ました。 一話目は凡庸な不倫話で、貴族階級の夫婦のごたごたなど興味もわかない。ジャンヌ・モローが若くてびっくりする。やっぱり口の端が下がっている。 二話目はシャーリー・マクレーン(彼女も若い!)が魅力的。どんどん可愛らしく見えてくるのは、ありゃなんのマジックだろうか。軽いチャラ男のアラン・ドロンもハマリ役。軽いけど濃い、日本人にはできない芸当だ。 三話目はきりりと美しいI・バーグマンの独擅場。「サボテンの花」でも披露してますが、彼女はわりとコメディセンスがある女優さんです。強引にまとわり付いてくる活動家のO・シャリフをうるさそーにあしらったり、爆撃ふりそそぐ中、不機嫌に一人夕食を続けたりと、そこはかとなくおかしみを醸しております。若い頃のメロドラマよりこういう作品の方が好きです。 1:2で楽しめる割合の方が多かったので、まあ損はしませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-08-13 00:02:46) |
3. 奇跡の人(1962)
《ネタバレ》 演じる、ということ その真髄に圧倒されるばかりの100分。役者魂がごうごうと焔立っているかのよう。ここにいるのはアン・バンクラフトとパティ・デュークではなくアニー・サリバンとヘレン・ケラーそのもの。演者同士がその魂をぶつけ合う食堂のシーンは息をするのも忘れる。ああこれはリアル「ガラスの仮面」だ。10代の頃、紙面を息を詰めて見守ったあの緊張が画面を観ながら甦った。オーディションの逸話まで残っているP・デュークは天才の仕事をしている。“見えている”のに目の前の足台に突っ込んでいって頭から転倒するなど、並みの役者にできることではないだろうなあ。 ヘレンの物語については断片的に知っていたけど、ケラー家が南部の名家ということや(父親が典型的な権威主義者に描かれているのも興味深い)、サリバン先生が幼少時に劣悪な施設で育ったということ等は初めて知った。まだ社会福祉の考えが育つ前のアメリカ、ヘレンが生きたのはそういう時代だったのですね。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-04-07 23:38:54)(良:1票) |
4. 飢餓海峡
《ネタバレ》 正直もっと重たい作品かと思っていた。戦後、日本の隅々まで貧しかった時代の、貧困と餓えによって引き起こされた犯罪、加えて悲惨な船舶事故、とくれば地を這うが如しの重量感を想像していたのだけど。ところが前半はともかく、中盤以降はまるで火サステイスト。 思うに、左幸子があっけらかんと表情が明るすぎるのでは。娼婦だと判るのにけっこう時間を要したもん。旅館の女中さんかと思ったほど。そして映画全体に流れる飢餓感の少なさ。森林軌道の中で左幸子がおにぎりを食べる場面だけど、後から劇中説明されるところによれば、当時は配給手帳によって米が支給されていたはず。そのわりに大きくてつややかなおにぎりがなんと三つも。そして三国に分け与える時の、全くの躊躇の無さ。包んでいた笹皮をぽい、と車外に放り捨てる気楽さ。序盤のこの描写でこの映画から飢餓感はすでに遠く感じられ、迫力を欠いたと思う。 東京に無秩序に広がる闇市や、焼け野原にぽつりとある娼婦小屋などの風俗描写はリアルだった。だけどどんどん火サスになってゆく。後半は三国の演技が凄いけどオチも読めたし高倉健がうるさい。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2014-05-04 00:36:31) |
5. 昨日・今日・明日
つっこみどころの多すぎな第1話、つっこむ所すら無い第2話、ときて3話目のどたばたが一番面白かった。とにかく3話通してソフィア・ローレンが素晴らしく美しい。この人を美人だと思ったのはこの映画が初めて。感情の起伏激しく、わがままなビーナス。ソフィアを堪能したければおすすめの一品。盟友たる彼女を引き立てるべく、だめだめで阿呆に徹するM・マストロヤンニの懐の深さにも胸が熱くなるわあ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-01 00:21:38) |
6. 気狂いピエロ
まるで美的センスの塊みたいな映画だなあ。冒頭の本屋さんの1ショットからいきなり鮮やかな本の背表紙や店看板がわっと迫ってくる。何者かが死んでいる白い壁の部屋には計算済みな配置の絵と真っ赤なランプシェード。脱帽するほどの色彩の妙だけどもゴダールは好きじゃない。この人のユーモアの無さにはいつも疲れる。自分を笑う勇気の無い人じゃないかと思う(多分)。ゴダールがフェリーニかと言われれば愛嬌のあるフェリーニをとります。比べる意味も特に無いんだけど。どっちもなんか分かりづらい映画、という雑な区分ですが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-07-01 00:42:01) |
7. 去年マリエンバートで
まるでガマン大会のごとき2時間でした。えー、女のひとのイヤリングがきれいだったです。あとお庭も白いお部屋もきれいだったです。私ゃ小学2年生か。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2012-06-24 12:20:40) |