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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1874
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  グランド・ピアノ 狙われた黒鍵 《ネタバレ》 
演奏を一音でも間違えたらお前を殺す――。5年前、熟練のピアニストでも弾きこなすのが難しい難曲「ラ・シンケッテ」に果敢に挑んだものの失敗に終わり、以来スランプへと陥っているかつての天才ピアニスト、トム。再起をかけ、彼は今回復活コンサートを開くのだった。満員の聴衆たちや自分を今まで支えてくれた愛する妻らが見守る中、緊張した面持ちでグランドピアノへと向かうトム。ところが楽譜を開いてみると、そこには彼を脅迫する謎のメッセージが……。「少しでも間違えたら僕と妻の命はない?」。狙撃銃の赤外線スコープが冷酷に見つめる中、トムは再び「ラ・シンケッテ」へと挑むことに。果たして犯人の目的とは?そして、彼は無事にコンサートを成功させ再起を図ることが出来るのか?何処にも逃げ場のないコンサート会場で、謎の犯人によって追い詰められていくそんなピアニストの孤高の戦いを描いたサスペンススリラー。これまで色んな場所に主人公を閉じ込めてきたソリッドシチュエーションスリラーも、とうとうここまで来たかって感じっすね(笑)。まあはっきり言って設定にアホほど無理がある(ピアニストが公演中に「ちょっと忘れ物したんで」と何度も楽屋に引っ込むってアリなん?笑)とかはこの際目を瞑るとして、けっこう華やかなコンサート会場で小気味良く展開されるストーリーや、イライジャ・ウッドとジョン・キューザックというそこそこ豪華な役者陣、90分という適度な尺、そして物語を華麗に彩るクラシックの名曲群…、と、肩の凝らないエンタメ映画としてぼちぼち楽しめました。犯人の真の目的が「え、なんやねん、それ?!」とずっこけちゃうくらい変てこりんなのもぎりぎり我慢しましょう。ただね~、それまで潜んでいた犯人が急にステージ上に姿を現しちゃうクライマックスでのこの半端じゃないグダグダ感にはさすがの僕も我慢の限界が……。ここはやはり、「表向きはコンサートは大成功のうちに終わり、その裏で犯人は何だかんだで捕まって、トムは無事に再起を果たすことが出来たのでした。パチパチ」って感じのオチにしてくれんとカタルシスが得られませんて!それに何ですのん、あのへんてこなラストシーンは(笑)。という訳で、そんな普通の人なら「金返せ!」と怒り狂いそうになるだろうトコも笑って観てくれる、大らかな映画愛に満ちたマザーテレサのような映画ファンの方なら充分に楽しめると思います。4点。
[DVD(字幕)] 4点(2024-01-25 13:21:24)
2.  グランド・イリュージョン 《ネタバレ》 
ある日、フードをかぶった謎の人物によって集められた、凄腕のマジシャンやメンタリストたち。1年後のラスベガス、彼ら4人は“フォー・ホースメン”と名乗り満員のドーム会場で華麗なマジックショーを開催していたのだった。その場で、「これから地球の裏側にある銀行を襲い、金庫に保管された金を全額この場に降らせてみせましょう」というあり得ないマジックを宣言。実際に札束の雨を会場へと降らせ拍手喝采を浴びるフォー・ホースメンのメンバーたち。惜しまれつつも舞台から降りると、当然のようにFBIやインターポールの捜査員たちに拘束されてしまう。だが、どんなに捜査しても証拠――マジックのタネや仕掛けは見つからなかった。証拠不十分で釈放されたメンバーは、捜査員たちを嘲笑うかのように第二のショーの開催を高らかに宣言するのだった。マジックの種明かしを専門にする元マジシャンや彼らのスポンサーである大富豪らも巻き込んで、フォー・ホースメンの狂乱の舞台が再び幕を上げる――。豪華絢爛な映像や有無を言わさぬスピーディなストーリー展開で魅せる、マジックを題材にしたエンタメ狂想曲。いやー、率直に言ってかなりの「大味」でしたね、これ。手品やイリュージョンの醍醐味って、「これっていったいどうやってるんだろう?」という知的好奇心をくすぐる華麗なまでの〝騙された感〟にあると僕は思うんですよ。でも、本作での「これっていったいどうやってるんだろう?」の答えが、「はい、いろいろ能書きを垂れてますが、ま、皆さんお気付きの通り全部CGで画像処理してます」ではやっぱり興醒めですって。後で種明かしされる仕掛けも、リアリティ皆無のなんだかこじ付けめいた言い訳がましい代物ばかり…。だいたい、モーガン・フリーマンに言われて「あ、地下にこんな施設があったのか…。全く気付かなかった」ってあの捜査員たち無能すぎるっしょ(笑)。仕掛けに綻びが生じそうになったら、全部催眠術で万事解決って、なめてんのか!おい!それに、作中で散々連呼される“ミスディレクション”ですが、はっきり言ってあのどんでん返しのオチから観客の目を上手く逸らせてるとは到底思えない。う~ん、いくら頭空っぽにして観るべきエンタメ映画とはいえ、これではさすがに観客をナメてるとしか言いようがないっす!監督、CGやゴージャスな画なんかで観客をごまかす前にもっと脚本をしっかり練ってください!
[DVD(字幕)] 4点(2024-01-22 12:43:03)
3.  グッド・ネイバー 《ネタバレ》 
お調子者の目立ちたがり屋でとにかく今が楽しければいいという、今時の若者コンビ、ショーンとイーサン。再生回数を稼ぎたいあまり人に迷惑かけたり嫌がらせしたりする動画を面白おかしく撮ってそれをネットで公開する彼らは、いわゆる〝迷惑系ユーチューバー〟だ。今回彼らが目を付けたのは、向かいの家に独りで暮らす偏屈なお爺さん。町の噂によると、酒を飲んで暴力を振るい奥さんに捨てられたんだとか。しかも犬の散歩をしている人やゴミ出ししている近所の奥さんにことあるごとに暴言を吐いたりと、もはや町の厄介者扱い。こいつになら何をしても大丈夫――。そう確信した彼らは、爺さんが買い物に出ている間に家中にカメラを取り付け、様々ないたずらを仕掛けてはそのリアクションに大笑いするのだった。だが、しばらく見てゆくうちに彼らは言いようのない違和感を覚え始める。急にバッドを持って暴れだしたり、何もないはずの地下室に何時間も閉じこもっていたり……。もしかしてこの爺さんはとんでもないサイコ野郎なんじゃないのか。少しでもフォロワー数を稼ぎたい彼らは、格好のネタに徐々に暴走してゆくのだった。今時の迷惑系ユーチューバーと孤独な老人とのそんな息詰まるような駆け引きをスリリングに描いたスリラー。というお話を聞いて、まず真っ先に思い浮かべるのは、同じくワンアイデアのみで撮られたものの、そのエッジの効いた描写でスマッシュヒットを飛ばした『ドントブリーズ』でしょう。ここで思いっ切りネタバレすると、観客にそう思わせといて、最後の最後にそれを根底からひっくり返すあのオチは確かに秀逸。伏線の張り方も巧いし、裁判のシーンを差し挟むことで観客にミスリードを誘う見せ方もいい。まあそのオチありきの映画なので、問題となるのはそこまでの過程。正直、それが僕にはちょっと微妙に感じてしまいました。主人公の青年とこの爺さんとのやり取りが最後まで地味で一向に盛り上がらない。ここらへん、もっと面白く出来たんじゃないでしょうか。また、奥さんとの過去を描く回想シーンが随所に差し挟まれるのも、この爺さんの得体のしれない不気味な感じを半減させてしまっている。スリラーとして、これでは勿体ないと言わざるをえません。アイデア自体は秀逸だっただけに、何とも惜しい作品でございました。
[DVD(字幕)] 5点(2023-09-16 22:41:53)
4.  クライ・マッチョ 《ネタバレ》 
彼の名は、マイク・マイロ。かつて超一流のロデオ・スターとして一世を風靡したものの、落馬事故をきっかけに引退を余儀なくされた哀しい男だ。以来、酒に溺れて生活は荒廃、家族も次々と離れていき、今や一人切りの孤独な老後を過ごしている。そんな侘しい生活を送っていた彼の元にある日、かつて自分の雇い主だった牧場主が訪ねてくる。「今からメキシコに向かい、元妻のところで暮らしている俺の息子を連れ戻してくれないか?」――。藪から棒にそう告げる牧場主。詳しく話を聞いてみると、13歳の息子は実の母親から虐待を受けていて今すぐにでも連れ戻しに行きたいが、自分がメキシコへと入国すれば逮捕されるらしい。かつてどん底だった自分を救ってくれた恩もあり、マイクは仕方なく依頼を引き受けることに。使い込んだオンボロ車でメキシコ国境を越えたマイク。教えてもらった地で、彼はすぐにスラムで違法な闘鶏賭博に入れ込む息子ラフォと出会う。突然の提案に当初は反発していたラフォだったが、元カウボーイだというマイクの人柄にほだされ、新天地アメリカへと向かうことを決意するのだった。たった一人の相棒である鶏のマッチョとともに……。落ちぶれたロデオスターと孤独な少年、そして一匹の鶏との逃避行を終始淡々と見つめたロードムービー。齢90になる、もはやハリウッドの生ける伝説クリント・イーストウッドの最新作ということで今回鑑賞。これまでの長いキャリアに裏打ちされたであろう熟達の演出はもはや世界遺産クラス。無駄を削ぎ落したシンプルな脚本、ちょっとした登場人物に至るまでちゃんと個性豊かに描き分ける巧みな演出、警察やギャングに追われながら国境を目指す2人の緊迫感溢れる逃走劇。どれもこれも安定の面白さで、最後まで楽しんで観ることが出来ました。メキシコの雄大な大自然の映像も終始美しく、のどかなメキシコの田舎町という雰囲気も渋い。ただ、最大の問題はキャスティング。やはり90歳を過ぎたイーストウッドが主演というのは無理があったのでは。もう歩くのがやっと、話すだけで息が乱れているのが丸わかりで、さすがに見ていて痛々しい。彼がギャングと喧嘩しようとしたり暴れ馬に乗ろうとしたり人妻と一戦交えようとしたりと現役バリバリなことをしようとするところは、違う意味でハラハラさせられちゃいました。特に近年、高齢ドライバーの事故が社会問題となっている日本の感覚で観ると、やはり彼が一人で運転するシーンは普通に観れませんね。とは言え、映画というファンタジーとして観れば、人生の深い哀歓を感じさせる渋味に満ちた本作、長年育ててきたヌカ床で作った漬物をじっくり味わうような気持ちで鑑賞してみるのも良いだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2023-09-02 16:55:54)
5.  グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 《ネタバレ》 
王族との結婚を夢見る人々は、その本当の意味を分かっていない――。ハリウッドで名実ともにトップクラスの人気を誇っていた名女優、グレース・ケリー。モナコ公国の王子と恋に落ちた彼女は、多くのファンから惜しまれつつも引退し、伝統と外聞をもっとも重んじる王族の一員となったのだった。本作は、そんな煌びやかな女優の世界から権謀術数渦巻く政治の世界へと身を投じた彼女の苦難に満ちた半生を描いた伝記映画だ。というわけで、グレース・ケリーというもはや伝説と化した人気女優役をこれまた現代ハリウッドでトップクラスの地位にいる二コール・キッドマンが演じたということもあり、なかなか興味深いものを感じてこの度鑑賞してみました。観想は……、いやー、これがもう見事なまでに底の浅ーーい凡作でありました。駄目な伝記映画の典型的な例が見事なまでに揃っていて、もう目も当てられません。駄目な点①史実として起こったことをただ時系列順に並べただけで映画として観客に伝えたいテーマがまったく絞られていない。グレース・ケリーという一人の女性の人生とはいったいなんであったのか。優れた伝記映画は、彼女の人生の本当の意義を観客に分かりやすく伝えるための明確なテーマが強固としてあるのだけど、本作にはそれがいっさいありませんでした。これじゃ事実を再現しただけの映像を単に羅列しただけに過ぎません。駄目な点②主人公の人生の転機となる重大な選択に説得力がいっさいない。本作でいえば、グレースがヒッチコックの新作映画への主演を諦め公妃としてそして母としてモナコに仕えることを決意するシーンがそれにあたるのですが、それがほとんど葛藤もないままにあっさり心変わりするものだから観客としては「え、そんな簡単に決めちゃうん?」と興醒めすること半端ない。駄目な点③物語のクライマックスとなる主人公の最後の演説の言葉がまったく心に響かない。彼女の苦悩がほとんど描かれていないのに、結論が「愛が私を強くしたのです!」って…。思わずずっこけそうになっちゃいました(笑)。という訳で、どこからどう見ても完全に凡作です。お年を召しても相変わらずお美しいニコール・キッドマンの美貌に免じて+1点。
[DVD(字幕)] 4点(2023-08-31 13:46:56)
6.  クーデター 《ネタバレ》 
外国人は皆殺しだ――。東南アジア某国。転職を機に、愛する妻とまだ幼い2人の娘と共にこの地に赴任してきたジャック。11時間にも及ぶフライトを終え、会社が用意した高級ホテルの一室にチェックインした彼らは、新たな地で人生の再スタートを切るはずだった。だが、翌日、ジャックは街の異変をすぐに感じ取る。中断されたままのテレビ、いつまで経っても接続されないネット、街を忙しなく行き交う軍部隊、不穏な住民たち…。やがて、〝彼ら〟がジャックの目の前に現れるのだった。鉈やピストル、軽機関銃で武装し、外国人抹殺を叫ぶ血走った目の暴徒たちが…。すぐさま家族と共に脱出を図るジャックだったが、街は一夜のうちに彼らに占拠されていた。はたしてジャックたち家族は無事に国外へと脱出できるのか?パッケージやキャスティングからいかにもB級感ぷんぷんのそんな本作なのですが、ピアーズ・ブロズナンが出ているということで今回鑑賞してみました。冒頭こそ、これぞアジアでございと言わんばかりののっぺりとしたカメラワーク、無意味なスローモーションの多用等々先が思いやられていたのですが、暴徒と警官隊が暴動を起こしてからはもう畳み掛けるように続くアクションシーンの連続にけっこう惹き込まれて観ている自分がいました。何をするか分からない残虐非道な暴徒たちが暴れまわる中、幼い2人の娘と共に決死の覚悟で逃げ惑う主人公に素直にハラハラドキドキ。救援に来たと思いきやいきなり銃を乱射してくるヘリコプターの襲撃に始まり、隣のビルに乗り移るために娘を無理やり放り投げたり、家族と一緒に死体に隠れて敵を遣り過ごしたり、変装して小さなバイクに乗り込んだ彼らが群集が暴れまくる夜の街に繰り出したり……。と、なかなかハードなアクションの連続で観客をぐいぐい惹き込む展開はなかなかのもの。「これは思わぬ掘り出し物かも!?」と思いながら観ていたのですが、後半息切れしたのか、アクションが幾分かスケールダウンしてしまったのが残念でした。特に僕は、P・ブロズナン演じるCIA職員ハモンドの薄っぺらさが気になりました。国際政治の裏舞台で常に死と隣り合わせで生きてきたスパイはもっと冷徹であってしかるべき。それが、「俺たちのせいだから君たち家族を全力で助けてやる」と命まで投げ打って主人公家族を救出するというのはさすがに甘すぎやしませんか。このハモンドの行動にもう少し説得力を持たせてほしかった。と、そこらへんが気になりましたが、それでも娯楽作としては充分水準に達していたと思います。第三世界を舞台にした、重厚な軍事アクションとして観て損はないでしょう。
[DVD(字幕)] 6点(2023-06-12 09:43:27)
7.  クリムゾン・ピーク 《ネタバレ》 
いつかその時が来たら、“クリムゾン・ピーク(深紅の丘)”に気をつけなさい――。19世紀末、アメリカ。幼いころに母親を失くし、以来裕福な父親の元で大切に育てられた少女イーディス。幼いころから何不自由なく暮らしてきた彼女は、ちょっぴり世間知らずで夢見がちな女の子だ。年頃の美しき女性へと成長したある日、彼女はイギリスからやってきたトーマスという名の準男爵と出会う。どこか胡散臭い彼に父は警戒心をあらわにするが、何処か影のあるトーマスにイーディスは次第に心惹かれていくのだった。そんな折、父が浴場で謎の死を遂げる。天涯孤独となってしまったイーディスは、トーマスと結婚し彼の故郷であるイギリスへと移り住むことを決意する。子供のころから姉と二人きりで過ごしてきたという彼の館は、寂れた郊外にひっそりと佇み、年代物の家具調度品や古びた芸術品で溢れ返る大豪邸だった。だが、イーディスはまだ知らない。そこが、冬になると真っ赤な赤土が染み出し、降り積もった雪を真紅に染めてしまう禍々しい地であることを……。古びた洋館を舞台に、そんなうら若き女性が迷い込むことになる淫靡で怪しげな世界を妖艶に描いたゴシック・ホラー。僕のこよなく愛するダーク・ファンタジーの傑作『パンズ・ラビリンス』を生み出した鬼才ギレルモ・デル・トロ監督の最新作にして、『パンズ~』の系譜を色濃く受け継いだ本作をもうワクワクしながら鑑賞してみました。いやー、いいですね~、いかにも彼らしいこのおどろおどろしい世界観。蟻が蝶の死骸を食い漁る様をアップで映し出したり、廊下の暗がりから骸骨のような幽霊が迫ってきたり…。ミア・ワシコウスカが身に纏う衣装の美しさも相俟って、そんなモダンで壮麗な世界に僕はもうどっぷりと浸かりきってしまいました。圧巻はやはり、彼女が移り住むことになるシャープ家のその細部まで造り込まれた美術でしょう。何かが潜んでいそうな暗い影がいたる所に存在し、廊下には何処に連れていかれるのか分からない古びたエレベーター、天井に穿たれた大きな穴からは常に埃が雪のように舞い落ちる…。もう見事としかいいようがない。ただ、そのように世界観は確かに素晴らしかったのですが、肝心のストーリーの方がちょっと弱かったのが残念。物語の随所に繰り返される母親の警告がいまいち効果的に使われていないし、幽霊の扱い方もなんとも中途半端。うーん、惜しい!とはいえ、クライマックスでの真紅の血や土がそこかしこに迸る血みどろ展開はまさにデルトロらしい残酷な美しさに満ち満ちていて(頬にナイフとかもう痛々しいったらありゃしない!笑)、そこらへんは大変満足でございました。
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-01 12:40:20)
8.  グッドナイト・マミー(2014) 《ネタバレ》 
オーストリア郊外に建つ一軒の豪華な別荘。社会からほとんど隔離されたこの館には、双子の兄弟ルーカスとエリアスが自由気儘に暮らしていた。顔はもちろん背丈も髪型も体型も着ている服もほとんど同じな彼らは、どこに行くにも一緒の仲良し兄弟だ。そんな彼らが住む館に、手術を終えたばかりの母親が久しぶりに帰ってくる。だが、包帯で顔をぐるぐる巻きにされた彼女は以前とは性格ががらりと変わっていた。常に神経を尖らせ、ちょっとしたことに怒りをあらわにし、あろうことか二人に手を上げるまでになってしまったのだ。「あの人は本当のママじゃない」――。そう確信した兄弟はママの本当の正体を探り始める。そんな2人もとある秘密を抱えていて……。パッケージの感じからもっとB級寄りのハリウッド的エンタメ・ホラーだと思って観てみたら、まさかのヨーロッパ系アート作品でちょっとびっくり。冒頭からBGMや具体的な説明は一切なし、ぶつ切りに編集された静かな映像が淡々と続いていき、気軽な感じで見始めた僕は「あぁ、こっち系の映画かぁ」と頭を切り替えるのがなかなか大変でした。と、最初こそその余りに淡々とした展開に眠気が隠し切れなかったのですが、後半、徐々にこの兄弟の背景と狙いが分かってくるにつれ、この作品に漂う不穏な空気にじんわりと冷や汗が…。いやー、この胸糞悪い感じはいかにもヨーロッパ的ですね。胸糞悪映画の巨峰『ファニー・ゲーム』や『マーターズ』を観た時のことを思い出してしまいました。と、確かに完成度は高かったのですが、その2作品に比べるとあまりにお話がシンプル過ぎてやや深みに欠けたのが残念。ホラーでいくのかアートでいくのか、ちょっと軸が明確でない感じもして、僕はそこまで好きにはなれなかったです。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-17 08:57:42)
9.  クロノス(1992) 《ネタバレ》 
クロノス――。それはかつて、永遠の命と引き換えに悪魔へと魂を売り渡した男が遺した闇の遺産だ。華麗な修飾が施されたその掌に収まるほどの小さな美術品には、人智を越えた力による精緻な細工が施されている。そう、時計仕掛けで動く隠されたその内部には、人の血を何よりも欲する小さな蟲が蠢いているのだ。偶然、それを手に入れてしまった古美術商の老人は、何も知らずそのスイッチを入れてしまう。突然飛び出した、まるで蟲の触手のような謎の部品により、その手を血だらけにされてしまった持ち主の古美術商。以来彼は、他人の血を欲する人ならざる者へと変貌を遂げてしまうのだった。死の病に侵された老人、古美術商の愛する女性、孫である無垢な少女。現代に甦った闇の力は、そんな様々な人々の生活を徐々に侵食してゆく…。鬼才ギレルモ・デル・トロ監督の長編映画デビュー作となる本作は、後に開花する彼の才能の片鱗を窺わせるそんなダーク・ホラーでした。クロノスのその細部にまで拘りぬいた造形美や、生ける屍となった主人公の皮膚がグロテスクに剥がれ落ちたり、瀕死の老人に雇われたロン・パールマン(ヘルボーイ!)のその飄々としたキャラクター造形など、いかにもデルトロらしいこの濃厚な世界観はなかなか興味深く鑑賞させていただきました。男子トイレの床に垂れた血を這いつくばって舐める老人の姿はなかなかシュール(笑)。孤独な世界に生きる、孫娘の可憐な少女像は後の傑作『パンズ・ラビリンス』の原型ですね。ただ、低予算だから仕方ないのかも知れませんが、この全編に漂うあからさまなチープ感は今観るとさすがにちと辛いっす。デル・トロファンは観て損はないけど、それ以外の人にはちょっと……って感じですかね。6点っす。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-14 10:41:23)
10.  クーリエ 最高機密の運び屋 《ネタバレ》 
彼の名は、グレヴィル・ウィン。英国の中堅企業で働くごく普通のセールスマンだ。愛する妻とまだ幼い一人息子に恵まれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしている。東西冷戦が激化し始めていたこの時代、それでも彼は得意の語学力を活かし、東欧諸国にもそのビジネスチャンスを拡げていた。定年後の安らかな老後だけを楽しみに、家族のため日夜仕事に精を出していたある日、彼は政府の役人と名乗る人物から会いたいと打診を受ける。商務庁の人間だと待ち合わせ場所に向かったグレヴィルは、そこで待っていた人物に衝撃を受けるのだった――。彼らはなんとMI6とCIAに所属する、いわゆるスパイだったのだ。「ソ連のある高官が西側に寝返ろうとしている。彼と接触するためにはソ連に怪しまれない人物が必要だ。平凡なビジネスマンであるあなたはまさに適役。どうだ、国に貢献してみないか」。彼らの提案に最初は難色を示すグレヴィルだったが、現実味を帯びる核戦争の危機に触発され、渋々スパイとなることを決意する。モスクワへと赴き、当局の監視の目を搔い潜って情報を持ち帰るグレヴィル。もちろんバレると命の保証はない。何度もソ連へと行き来するうちに彼の神経は徐々に擦り減ってゆき……。キューバ危機に見舞われた東西冷戦期を舞台に、核戦争を回避するためにスパイとなったある平凡なセールスマンを描いたサスペンス。実話を元にしただけあって、この全編に漲る緊張感は凄まじかった。いつどこに監視の目が光っているかも分からず、部屋に一人でいるときも盗聴器の存在を常に意識しなければいけない。それでも国のため家族のために任務を遂行する、もともと普通のセールスマン……。圧し潰されそうな重圧から次第に家族と険悪となってゆくというのは皮肉極まりない。そんな難しい役をリアルに演じたベネディクト・カンバーバッチの熱演が光る。そんな中、同じく世界の未来の為に祖国を裏切るソ連高官との次第に深まってゆく絆。当局から疑いの目を向けられるようになり任務も遂行不可能となったのに、それでも彼を亡命させるためもう一度モスクワへと渡る決心をした主人公の決断は重い。そこからはまさに息詰まるようなシーンの連続で自分も固唾を吞んで見守るしかなかった。ただ、惜しいのは拘束されてからの後半。妻がようやく彼に会いにモスクワへとやってくるところが意外とあっさりで、ここをもっと踏み込んで描いてほしかった。地獄のような収容所生活で彼が正気を失わずにいられたという重要な場面、何ならここをクライマックスにしても良かったのでは。げっそりと痩せてしまったカンバーバッチの演技が見事なだけに、惜しい。誰もが不安を抱えて生きていた当時、核戦争を回避するために自分を犠牲にしてまで動いてくれた人がいた――。その事実に改めて畏敬の念を感じざるを得ない、なかなかの秀作であった。
[DVD(字幕)] 7点(2023-03-13 03:23:09)
11.  グレイマン 《ネタバレ》 
常に死と隣り合わせの危険な任務ばかりを請け負う、CIAの極秘部隊、通称「グレイマン(見えない男)」。その正体はいつでも使い捨てに出来る凶悪な元犯罪者ばかりで構成された部隊だった。CIA高官にスカウトされて獄中生活から抜け出して以来、30年も人知れず活躍しているエージェント、シックスもその一人。今回彼にくだされた任務は裏社会で暗躍する武器商人の暗殺。簡単に終わるミッションのはずだった。だが、標的であるはずの犯罪者は殺される直前、彼にあるものを渡し、衝撃の告白をする。「俺もお前と同じグレイマンだ。CIAは俺たちをハメようとしている。頼む、このデータを公にして組織に復讐してくれ」――。すぐさまCIAの幹部によって、最重要ターゲットにされてしまったシックス。世界中の暗殺者に命を狙われながらも、陰謀を暴くために世界を駆け巡る彼だったが……。巨大な陰謀に巻き込まれた凄腕エージェントの活躍を世界的スケールで描いたエンタメ・アクション。監督はマーブルアベンジャーズシリーズを幾つも手掛け、現代エンタメ映画界を牽引するルッソ兄弟。自分は、アンチアベンジャーズの人間なんでこの監督の名はもちろん知っていたのですが、今回初めて鑑賞してみました。いやはやこれが素晴らしいエンタメ映画に仕上がっていて、めちゃくちゃ面白いじゃないですか!!冒頭から怒涛のように続くアクションシーンが終始キレッキレでサイコーに楽しかったです。「どうやって撮ってんだ、これ」という空間を自由自在に動くカメラワーク、誰がどこで何をしているかがちゃんと分かるように計算されつくした編集、とにかくお金を掛けたであろうゴージャス&スタイリッシュなアクション。もうどれもこれも完璧でした。特にプラハでのカーチェイスは最近観たアクション映画の中では出色の名シーン。世界を救うためとは言え、さすがに破壊しすぎちゃいまっかという突っ込みはナシですね(笑)。まぁストーリーは王道中の王道で驚きなど一切ないベタなものだけど、ライアン・ゴズリングをはじめとする登場人物がみんな魅力的なので最後までワクワクしながら観れちゃいます。あのクリス・エバンス演じる冷酷非道なのに何処かお間抜けな悪役もいい味出してましたね~。ただ、上司が2人も自己犠牲で死んじゃうのはやり過ぎかな。ここは1人で良かったように思う。あと、ペンチで爪を剝がすシーンは痛いから止めて!とは言え、自分は充分大満足。アベンジャーズシリーズも一段落したようだし?ルッソ兄弟、これからはこんな面白い映画をいっぱい撮ってね!
[インターネット(字幕)] 8点(2023-01-26 07:10:33)(良:1票)
12.  クリミナル 2人の記憶を持つ男 《ネタバレ》 
国際的テロリストの大規模なテロ計画を追っていたCIA捜査官ビリー・ホープ。だが、彼は重要な情報を保持したままテロリストに捕まり拷問の末に命を落としてしまうのだった。なんとしてもテロを阻止したい彼の上司は考えた末、ある計画を実行に移す。一人の脳科学者の協力を得て、なんと死んだはずのビリーの記憶を刑務所に収監されていた凶悪な犯罪者の脳に移植しようというのだ――。訳も分からぬまま脳外科手術を受け、ベッドで目を覚ました犯罪者ジェリコ。真相を知った彼は、テロ情報を教える前に隙を突いて逃げ出してしまう。久しぶりに自由の身になったジェリコは、湧き上がってくる暴力衝動の赴くまま危険な街へと繰り出してゆく。だが、次第に甦ってくるビリーという男の記憶が彼の失われた良心を大いに揺さぶり始めるのだった…。今まさにテロを実行しようという危険なテロリスト、テロを阻止するためならどんな犠牲をも厭わないCIA、感情を亡くした狂暴な犯罪者、そして悲嘆に沈む殺された捜査官の家族。死んだはずの一人の男の記憶を巡ってそれぞれの思惑が複雑に交錯する中、テロ予定時刻は着々と迫ってくる…。こういう荒唐無稽なお話を大真面目に描くという試みはなかなか興味深く、冒頭から緊迫感もあって、つかみはばっちりでした。渋めどころの役者陣を揃えたキャスティングも非常に豪華で大変グッド。ケビン・コスナーとトミー・リー・ジョーンズとゲイリー・オールドマンが同じ画面に収まるとそれだけで画力が凄いですね。ただ、それも前半まででした。後半からこの荒唐無稽な設定の無理がたたったのか、明らかに脚本が破綻し始めるのです。特にCIA、このたった一人の犯罪者を簡単に逃がしすぎ!!こんな無能なのにこれでテロリストなんか捕まえられるわけねーって。それに捜査官の奥さん、簡単に犯罪者に侵入されすぎ!!一回目は分かるのだけど、さすがに二回目はセキュリティコードを変更しましょうよ。あとK・コスナー演じる犯罪者、簡単に良心に目覚めすぎ!!金を手に入れたいのか奥さんを慰めたいのか、何がしたいのかさっぱり意味不明。肝心のテロリストたちも存在感なさすぎ!!何のためにテロをするのかもいまいちピンとこないので、この濃い役者陣の中で存在感が薄い薄い。そして、ラストのオチは噴飯ものの酷い代物でした。こんなに部下を殺されてんのにCIA、こいつを雇うんかーい(笑)。ハリウッドのレジェンド俳優たちの豪華共演に+1点。
[DVD(字幕)] 5点(2022-12-22 11:25:44)
13.  グッド・ナース 《ネタバレ》 
彼は本当にいい看護師だった――。ニュージャージーの総合病院で働き始めたエイミーは、女手一つで幼い子供を育てるシングルマザー。自身も心臓の疾患を抱え、経済的な余裕もない彼女は無理をして勤務を続けていた。そんなある日、新たに採用された看護師チャーリーが彼女の同僚として配属される。患者のことを最優先にした勤務態度と真面目な性格、何よりきめ細やかなサポートにエイミーはすぐに彼に親近感を抱くようになるのだった。休日には自宅に招き、娘も含めた家族ぐるみでチャーリーと親しくなってゆくエイミー。自身の病気のことや彼が離婚し子供と離れ離れに暮らしていること、2人はそんなプライベートのことまで話せる間柄になってゆく。そんな折、2人が働く部署である患者が突然死する。容態が安定している中での不意の出来事。病院が調査した結果、ある不穏な事実が明らかとなるのだった。亡くなった患者には大量のインスリンが投与されていた――。いったい誰が患者を故意に死なせたのか。警察の殺人課刑事が捜査に乗り出す中、エイミーはチャーリーのある不審な行動を目にしてしまう……。病院を転々とするある看護士が、行く先々で患者に劇薬を投与し何十人も殺害していたという衝撃的な実話を元に描いたサスペンス・ドラマ。そんなにわかには信じがたい事実を元にしているだけあって、この全体に漲る緊張感はなかなかのものでした。何処かデビッド・フィンチャーを髣髴とさせるしっとりとした映像がこの陰鬱とした物語をより重厚なものへと昇華させている。生活に追われるシングルマザーを演じたジェシカ・チャスティンの抑制の効いた演技もリアリティ抜群。信じていた友人の本当の姿を知って徐々に追い詰められてゆく主人公を淡々と演じていて、観ているこちらまで息苦しくさせるほどでした。対する、殺人容疑を掛けられる同僚看護師役のエディ・レッドメイン。得体のしれない彼の存在感もなんとも不気味で、この二人の静かな腹の探り合いは最後まで気が抜けません。特に娘たちが彼に懐いてしまっているのが観ていて辛い。果たして彼はなぜにこんな冷酷無比な犯行を起こしてしまったのか――。最後まではっきりとした答えを提示しないのも人間心理の深淵を垣間見るようで、なんとも言えない後味を残してくれます。ただ、作品として全体的に冗長な面も否めません。事実を元にしている分、結論は分かっているのでさすがにこのお話で2時間超えは長い。明らかに無駄なシーンや長すぎる場面がちらほら。もう少しコンパクトに纏めてくれたらより完成度の高い作品になっていたであろうに。惜しい。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-11-28 07:07:36)(良:1票)
14.  KUBO/クボ 二本の弦の秘密 《ネタバレ》 
江戸時代の日本を舞台にしたファンタジックなクレイ・アニメ。僕のこよなく愛する『コララインとボタンの魔女』の制作会社が手掛けたということで今回鑑賞してみたのですが、残念ながら僕は全く嵌まらなかったですね、これ。何が駄目かってまずは脚本。例えば登場人物がたくさん出てくるのですが、その誰もがいったい何のために行動しているのかよく分からないのです。主人公クボは三種の武具を手に入れるために冒険の旅に出る。でも、その武具を手にしたらいったいどうなるのかがいまいち分かりづらい。なので物語にうまく入り込めませんでした。対する悪役の月の帝にしても、何故そんなにこの主人公を付け狙うのかもちょっとよく分からない。最後になんか天国に行って不老不死になるとか急に言われても説得力がないですって。あと、主人公クボを含め登場するキャラクターの誰も彼もに魅力が乏しいのもいただけない。サルなんてホントにただのサルだし、クワガタのサムライなんてさしてカッコよくもないしそもそもどうしてクワガタ?最後はまさかの悪役記憶リセットでみんな仲良く仲直りって…。うーん、映像はさすがのクオリティなんで5点ってとこですかね。
[DVD(字幕)] 5点(2022-11-07 08:46:22)
15.  クローブヒッチ・キラー 《ネタバレ》 
惨劇は10年前に終わったはずだった――。アメリカの平凡な田舎町を恐怖に陥れた連続殺人事件。犯人は何の罪もない女性宅に忍び込むと被害者を縛り上げ、激しい暴行を加えた末に首を締めて殺害する。その冷酷な手口と、事件現場に必ず特徴的な縛り方の紐を残してゆくことから、警察は「巻き結び殺人鬼(クローブヒッチ・キラー)」と呼び、懸命に行方を追っていた。だが、慎重な犯人はほとんど証拠を残さず、ただ被害者だけが増えていった。ところがある日を境にぱったりと犯行が止む。犯人は裁きを受けぬまま、それから10年もの月日が流れ、次第に人々の記憶からも薄れていった――。信心深い厳格な両親の元、妹とともに暮らすタイラーは、ボーイスカウトに所属する平凡な男の子。同じくボーイスカウトの指導員を務める堅物の父とそれなりに幸せな日々を過ごしている。そんなる日、タイラーは父親の隠していた荷物の中から、女性を縛る猟奇的なポルノを発見してしまう。そればかりか、10年前の殺人事件の被害者と思しきポラロイド写真を見つけてしまうのだった。「もしかして、父さんが連続殺人鬼なのか?」。そんな疑問を抱いたタイラーは、同じく事件を追う謎めいた少女とともに真相を探り始めるのだが……。平穏な田舎町を舞台に、10年前に住民を震撼させた猟奇殺人鬼の謎を巡り、不信感を深めてゆくある親子を描いたサスペンス・スリラー。家庭的で世間体もいい父親がもしかしたら連続殺人鬼かもしれない。そんな疑念を抱いた主人公が密かに父親の過去を探るシーンは、なかなかにサスペンスフル。家族そろってのディナーの前に必ず神への感謝を捧げる信心深いはずの父が実は病的なサディストだった…というのは、なんともいや~~~な感じですね。息子の疑念に気づいた父が権威を振りかざして説教をするシーンも何だか不気味で、この2人に漂う緊張感はただ事ではない。それまで全幅の信頼を置いていたはずの父の別の面を見てしまうという、思春期にありがちな少年の心理を巧く突いたサスペンスだったんじゃないでしょうか。ただ、残念だったのはことの真相が判明する後半の展開。余りにも捻りがなさすぎるそのまんまな真相は、ちょっと肩透かし感がありました。致命的なのは、クライマックスで何故か時間が遡り、息子の視線で物語が語りなおされるところ。映画として一番盛り上がるシーンで話の腰が折られてしまうので、何だか消化不良感が半端ない。しかもその息子のエピソードもまるっきり予想通りで何も驚きがないし、どうしてこんな演出にしちゃったのかはなはだ疑問。最後のオチも胸糞悪いだけでさして深くもない。ここはスリラーとして、もっと観客を恐怖のどん底に叩き落して欲しかった。前半の展開がすこぶる良かっただけに残念!!
[DVD(字幕)] 6点(2022-11-02 08:08:04)
16.  グリード ファストファッション帝国の真実 《ネタバレ》 
低価格を売りにアパレル業界を席巻したファストファッションブランド、モンダ。その創業者にして一代で巨額の富を築き上げたリチャード・マクリディの半生を、彼を取材するジャーナリストの目線で描いた社会派コメディ。普段私たちが安く買っているTシャツやズボンの裏側には、低賃金で長時間労働を強いられている発展途上国の貧しい人々の犠牲があるという本作の主張は確かに分かります。ますます拡がってゆく富裕層と貧困層との格差がさまざまな悲劇を生み出しているという、現代の社会問題をシニカルに見つめるその抑制の効いた効いたスタンスもいい。ただ、それが映画としての面白さに繋がっているかというと正直微妙。世の不条理に鋭く迫る社会派ドラマなのか、それとも毒気の効いたブラックコメデイなのか、そのどちらにも振り切れていないので、最後までなんとも居心地の悪い鑑賞後感でございました。実在の有名人を幾つも出して混乱と狂騒を極めてゆくパーティーとかももっとやり過ぎなくらい無茶苦茶やってくれても良かったような。最後のライオンのくだりも生々しくていまいち笑えない。ただ、「この笑えない現実はこれからも続いてゆく、私たちが安い服を買い続ける限り」という最後のオチは皮肉が効いていてなかなか良かった。胡散臭い成金経営者を飄々と演じたスティーブ・クーガンもバッチリ嵌まっていて大変グッド。普段私たちが安く買っている様々な商品の裏側を知れるという意味でも観てよかったかな。とは言え、自分は近々、ユニクロに秋服を買いに行く予定なんですけどね(笑)。すんません、安月給なもんで!!
[DVD(字幕)] 6点(2022-10-13 07:33:22)
17.  クライム・ゲーム 《ネタバレ》 
1950年代のデトロイドを舞台に、自動車産業のとある機密情報を記した書類をめぐって暗躍する犯罪者たちを描いたクライム・サスペンス。監督は、この手の分野を得意とするベテラン、スティーブン・ソダーバーグ。ベニチオ・デル・トロをはじめとする豪華なキャスト陣に惹かれ、今回鑑賞してみました。なんですが、最後まで何とも分かりにくいお話でしたね、これ。たくさん出てくる登場人物たちも誰が誰だか分かんないし、彼らがいったい何がしたかったのか最後まで観てもさっぱり分かりませんでした。眠気に負けず頑張って観ましたが、正直観る価値はなかったかな。
[DVD(字幕)] 3点(2022-10-03 05:29:56)
18.  クライシス(2021) 《ネタバレ》 
近年アメリカで社会問題となっている、極めて依存性の強い鎮痛剤オピオイドをテーマにした社会派サスペンス。ゲイリー・オールドマンとアーミー・ハマー共演ということで今回鑑賞してみました。物語は、製薬会社からの依頼で臨床試験に臨みつつも新薬の致命的な欠陥を見つけてしまう大学教授と麻薬組織の壊滅を目論む囮捜査官、そして薬によって大切な一人息子を失くしてしまった母親を相互に描いてゆきます。つまりは、群像劇。利益優先の製薬会社から事実を隠蔽するように求められた大学教授の葛藤や、麻薬組織に潜り込んだ捜査官のいつばれるか分からない緊迫感などはそれぞれよく描けていたと思います。ただ、この三つの物語が有機的に絡み合っておらず、最後まで何ともちぐはぐな印象になってしまうのが本作の弱点。麻薬捜査官と息子を失くした母親の物語は一応最後の方でリンクしますが、大学教授の話は最後まで残りの二つと完全に切り離されています。それに大学教授のエピソード以外は、オピオイド関係ないような気がするんですけど……。きっと元はこのインサイダー告発者となる大学教授のお話だけがあって、でもそれだけじゃ地味だということで後になってこの二つのエピソードを足したんでしょうね。それならそれでもっと脚本を練るべきだったのでは。群像劇としても社会派サスペンスとしても何とも中途半端なお話でございました。
[DVD(字幕)] 5点(2022-08-09 05:00:50)
19.  クワイエット・プレイス 破られた沈黙 《ネタバレ》 
音を出したらすぐ即死!!という極限の恐怖を描いたモンスターパニック第二弾。完全なる出オチ映画だった前作は、設定こそ荒唐無稽で突っ込みどころ満載だったけれど、勢いと見せ方でそこそこ面白かった記憶があります。対して続編となる本作はどうなんでしょうね。アクション、映像、脚本、どれもが前作よりパワーダウンしているような印象を拭えませんでした。もっとラスボス的なやつを登場させるとか、人類が反転攻勢に出られる画期的な武器を手に入れるだとか、そういった新しい要素が欲しかったところ。これじゃ前作の二番煎じにすぎませんやん。ま、前作同様、絶対に音を出せない緊張感というのは充分伝わったし、モンスターのCGとかはそこそこ迫力があってそこらへんは良かったと思います。
[DVD(字幕)] 5点(2022-07-01 06:30:01)
20.  靴職人と魔法のミシン 《ネタバレ》 
彼の名は、マックス・シムキン。何処にでも居るような平凡な靴職人だ。代々受け継いできた街の小さな店舗で馴染みの常連客相手に、細々と営業を続けている。幼いころに家を出て行った父の代わりに、今やすっかり年老いた母親の面倒をずっと見続け、気がつくとけっこうな歳になっていた。今まで一度も結婚したことはなく、もちろん子供もいない。自分の人生にそれなりに満足しているはずだった。そんなある日、彼の愛用しているミシンが急に壊れてしまう。業者に依頼すると、修理に窺えるのは早くても明日の朝になるらしい。「そいつは困った。今日中に直さなけりゃいけない靴があるのに…」。仕方なくマックスは地下室に降りると、古ぼけたミシンを見つけてくる。父の代からあるその年代物のミシンは何とか使えそうだ。だが、彼は知らなかった。そのミシンには謎の力が宿っていて、直した靴を履くと持ち主とすっかり同じ外見になれることを――。ハンサムなプレイボーイ、黒人のチンピラ、移民の中国人、ガタイの良いおかま、さらには腐った死体まで、靴さえ手に入れば誰にでも変身できることに気付いたマックス。以来彼は平凡な日常を抜け出し、赤の他人へのなりすまし生活に嵌まり込んでゆく。そんな折、街の再開発に絡む地上げ屋の不正行為に巻き込まれて…。魔法の力を手に入れた平凡な靴職人が巻き起こすそんな騒動を飄々と描いたファンタジー・コメディ。と言う粗筋を聞いて、もっとディズニーっぽい感じの誰もが楽しめるファミリー的な内容かと思いきや、意外にもこれってブラックなネタ満載の毒気の効いたコメディだったのですね。けっこうな下ネタやグロネタが頻繁に出てきます。例えば、プレイボーイに扮した主人公が美女とシャワーを浴びようとするシーン。早く服を脱ごうと焦るものの、靴を履いたままズボンは脱げないことに気づいちゃうとこは思わず笑っちゃいました。そうかと思うと、今や認知症を患う母のために父が遺した靴を履いて三十年ぶりに夫婦水入らずのディナーを演出すると言う急に切ないエピソードを放り込んでくるのもいいセンスしてます。ただ残念だったのは、脚本の細部に「?」な部分が多いこと。特に主人公の隣人で、親友でもある床屋の存在。彼が非常に重要な秘密を隠していたことが終盤で明らかとなるのですが、肝心のその内容が容易に読める上にいまいち腑に落ちない。今まで主人公にこのことを秘密にしていた理由に全く説得力が感じられないんです。ここらへん、もっと工夫してほしかった。とはいえ、このノスタルジックな雰囲気(孤独な靴職人を演じたアダム・サンドラーがまさに嵌まり役!)も良かったし、ぼちぼち面白かったと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2022-03-28 11:34:40)
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