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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 823
性別 男性

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1.  攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society〈TVM〉 《ネタバレ》 
3D劇場版を鑑賞。 「攻殻機動隊」については熱狂的なファンというわけではない。 「GHOST IN THE SHELL」「イノセンス」を1度見て、深夜のアニメを数回見た程度であり、細かい設定などはよく分からない。 本作に関しては、熱狂的なファンではなくても付いていけないレベルではなく、それなりに楽しめたという印象。 何よりも、3D化によって、電脳的な世界を体験することができることが一番のセールスポイントだろう。 本シリーズのファンを重視したためか、少佐、バトー、トグサ、荒巻、イシカワ、サイトー、タチコマなど、それぞれのキャラクターにそれぞれきちんと光をあてられているため、逆にストーリーの核となる主人公が不在ともいえる状態にもなっている。 その辺りが気になるといえるかもしれないが、それぞれのキャラクター“らしさ”はきちんと発揮されているのは嬉しいところ。 また、事件の犯人や核心がストーリー上ボヤけざるを得ないので、事件を解決したり、犯人を追い詰めていくような感覚には欠けてしまうが、そのようなことがメインの作品ではないので、この点も気にする必要はないだろう。 組織から離れた少佐の亡霊のような存在が高い理想と高い知能ゆえに、法律や倫理を超えて暴走するということは面白い展開。 老人問題や児童虐待問題などの解決策としては傀儡廻が考えたシステムはベストといえる選択肢なのかもしれないが、簡単に切ることの出来ない家族の絆などは、少佐やバトー、傀儡廻には理解できない感情やネットの世界だけでは築けない世界があるということだろうか。 それらを象徴的に描くために、自己を犠牲して娘を守ろうとするトグサが印象的に仕上げている。 矛盾するようだが、そのような親心を利用しようとする傀儡廻やSOLID STATEには、そのような親心を理解しているということもいえるのか。 いずれにせよ、3Dアニメとしては十分楽しめるレベルに仕上がっている。 画面を楽しめるだけではなくて、複雑な社会問題や、組織と個人、理想と現実、政治と行政などがきちんと盛り込まれており、そのような観点からも楽しむことができるといえる。 これらに対する答えはさすがに本作では明らかにすることはできない。 行き詰まっているような絶望的ともいえる世の中かもしれないが、困難を克服してくれることを子ども達へ託す“希望”のようなメッセージもきちんと込められている。
[映画館(字幕)] 7点(2011-04-16 14:36:48)
2.  告白(2010) 《ネタバレ》 
本屋大賞を受賞した原作は未読。本作について“語る”のは非常に難しい作品である。「とりあえず観てみろ」という言葉しか出てこない作品だ。 観る者によって感想はマチマチだろう。「人間の命の重さを説いたヒューマンドラマ」と捉えることもできる、「ガキたちに復讐する爽快なエンターテイメント作品」と捉えることもできる。解釈度が“自由”であり、観る人それぞれの心に何かを刻み付けた中島哲也監督の自在な手腕が発揮された傑作といえる。 「人間の命は脆くて軽いが非常に重いもの」「人を殺す際には、その人を愛する誰かがいることを考えてみろ」ということを教えるための森口先生による授業だったのではないかと感じたが、『なんてね』という言葉一つで引っくり返している。 結局「ガキたちと同類ではないか」とも感じてしまう一言だ。 確かに大人だろうが、子どもだろうが、人間である以上、変わりはないのかもしれない。クラスメートでも恋人でも母親でも誰かに自分を認めて欲しいという衝動、暇つぶしに誰かを傷つけたくなる衝動、復讐なんてしたくないけど復讐せざるを得ないという衝動、そういう短絡的で自己中心的な感情に支配され、人間は愚かな行動を走ってしまうものかもしれない。人間はバカで単純で弱くて脆いもの、悲しいけどそれが人間ということをも感じさせてくれる。人間というものの本質を感じさせてくれる点を評価したい。しかし、松たか子が泣くシーンを描くことで、罪の意識を感じ、人の心の痛みを知らないガキとは根本的に違うということだけは分かるようになっている。それでも溢れる感情を止めることはできないのだろう。 「パコと~」の際には、各キャラクターに感情移入できない点が気に入らなかった。本作も同様に感情移入することはできないが、感情移入できないことにより、本作には面白い効果を生んでいると思う。得たいの知れないという不気味な恐怖を感じるとともに、客観的な傍観者としてこの復讐劇をエンターテイメント感覚で楽しむことができる。中島監督が計算したかどうかは分からないが、非常に巧妙な仕掛けとなっている。 本作は問題作ではあるが、“人間の命の重さ”を真正面から捉えるよりも、本作のような切り口で語った方が反面教師的な役割を担えると思われる。R15指定作品だが、逆に子どもたちに見せてもよいのではないか。“何か”を感じ取ってくれることへの期待や希望はあるはずだ。
[映画館(邦画)] 9点(2010-06-07 22:52:29)(良:1票)
3.  恋するベーカリー 《ネタバレ》 
ナンシー・マイヤーズはそれなりに評価をしていたが、本作ははっきり言って全く合わず、冗長という印象。ユニークかつ個性豊かに演じられていたものの、いかなるキャラクターにも感情移入させられなかった。自分の年齢が本作のキャラクターほど高くはないので、仕方がないのかもしれないが、何をやりたいのか、何を描きたいのかが見えてこず、全体的にまとまりを失い、ぼんやりと手探り状態で進んでいるイメージ。過去の作品とは異なる新しいことを模索したが、やろうとしたことが難しすぎて上手くいかなかったのだろうか。笑えるシーン(少々反則気味)もあるが、コメディパートも全体的にノリ切れない。ラリったシーンも、娘の婚約者の存在も悪くはないものの、上手く活かし切れているとは思えない。 きちんと見なかったのかもしれないが、メリルとアレックがよく分からない理由で再び別れたような印象。デートを一度すっぽかされただけで、一気に関係が冷えてしまった。別れる理由に明確な理由は必要ないかもしれないが、もう少しきちんとまとめて欲しいところだ。メリルが「離婚の原因は自分にもある」というようなことを言っていたと思うが、結婚というものは“愛している愛していない”という単純なものではなくて、原題のタイトルどおりに複雑でデリケートなものであろうと思われる。 同じ道を歩んでいた二人が別の道を選んでしまった結果、もう同じ道は歩むことはできないということを描き、終わってしまったものはやはり元に戻らないということを少々切なめに仕上げて欲しかった。子どもが独立した妻は寂しさから、夫は自宅に居場所がないから、逃げ場所が欲しかっただけであり、過去にあった“愛情”とはやや別のカタチだったということでもよかったのではないか。子持ちの若い奥さんもアレックとの子どもを欲していたり、建築家と踊る元妻を悲しそうに見つめるアレックを寂しそうに見つめるシーンを見る限りでは、若い奥さんは夫に対して、愛情があるのだろう。アレックが若い妻からの愛情に気付いたり、ベタかもしれないが彼女が妊娠したりと状況をもっと“複雑化”させて、メリルとアレックの夫婦が上手くいかないように進めてもよかった。子ども達もほとんど“飾り”という存在でしかないのも寂しく、この辺りも上手くまとまっている感がない。 笑えて、泣けるというナンシー・マイヤーズという特徴が全体的に感じられなかった。
[映画館(字幕)] 3点(2010-03-13 10:39:57)
4.  コララインとボタンの魔女 《ネタバレ》 
満点にしてもいいくらいの作品。子どもだましのアニメ作品とは一線を画す芸術的ともいえる高レベルのものに仕上がっている。「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の監督ということしか知らなかったが、優れた才能にはただただ圧倒されるだけだ。個人的には「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」よりも本作の方が好みかもしれない。 誇張なしにして、まさに幻想的かつ魅惑的な世界に放り込まされるような感覚に陥る。 現実世界ともう一つの世界を繋ぐ通路の“ぐにょぐにょ”した感じが非常に心地よい。 アニメはそれほど好きではないが、実写とは異なる独特の世界観を構築できるので、アニメ作品の可能性は改めて広いとも感じられた。 また、恐らく3Dでなくとも素晴らしい作品だと思うが、3Dの利点を活かされた作品ともいえる。昨今は何でも3D作品にしていく傾向がみられるが、他の作品は本作を見習って欲しいものだ。 さらに自由自在に描くことができるCG作品(本作も一部使用しているが)とは異なり、制約のかかるストップモーション作品であることをまるで感じさせないほどの手間の掛け方にはただただアタマが下がる想いだ。 大したストーリーがなく、非常に狭い世界を描いているにも関わらず、ほとんど飽きることがないというのは世界観や各キャラクターにそれだけ魅了されたということだろう。ストップモーション作品であるにも関わらず、各キャラクターの豊かな表情には驚かされるばかりだ。 「閉じ込められた親を助ける」「幽霊たちの眼を探す」「魔女を倒す」といったメインストーリーもあり、この辺りの展開については多少中途半端かつあっさりした感じもあるが、そういったことにはほとんど気にならないほどの仕上がりとなっている。ストーリーには多少物足りなさがあるが、“親に甘えたくても、素直に甘えられない少女の気持ち(一人寂しくてベッドで涙するシーンが良い)”“少年や猫や隣人たちとの友情”といった要素もみられる。“最後まで諦めない気持ち”や“勇気”や“少女の成長”辺りの要素ももっと加えて欲しいところだが、世界観で圧倒しているので、過大な要求をすべきではないか。 字幕版を鑑賞することとなったが、ダコタ・ファニングのノリがなかなか良く、コララインというアメリカ人らしい少女に生命感を与えている。 ストップモーション作品であることに、違和感を覚えさせないほどマッチしていた。
[映画館(字幕)] 9点(2010-03-08 22:31:03)(良:1票)
5.  ゴールデンスランバー(2009) 《ネタバレ》 
原作未読。原作は面白いと聞いており、ストーリーは面白いと言わざるを得ない。特徴のあるキャラクターが多数おり、それぞれが活きたキャラクターとなっている点も評価したい。しかし、本作中にあるような「たいへんよくできました」という評価はしにくく、「よくがんばりました」というところか。 冒頭の首相暗殺及び警官の突然発砲からグイグイストーリーに引き込まされるが、肝心の終盤に従い、だんだんと失速していったような気がする。いつ捕まってもおかしくない、いつ殺されてもおかしくないという緊張感や、這いつくばっても逃げてやるという気迫、真相はいったい何なんだというような不気味さが若干薄れており、少々ヌルい空気感も漂っていたところがマイナスというところか(監督のテイストなのでこの点を評価する者もいるとは思うが)。 やや現実離れした部分に関しては許容できるレベル。本作のリアリティと非リアリティのバランスはそれほど問題なく感じられるのではないか。訳の分からないキャラクターの登場や訳の分からない展開になっても、クエスチョンマークが付くようなことにはならず、あれはあれで比較的良い味付けになったと思われる。 ただ、本作にとって必要不可欠な“大学時代の回想シーン”だが、そのウエイトがやや重すぎたかもしれない。もちろん、青柳の一人のチカラで逃げ切れるわけではなくて、3人の助けや彼を“信頼”してくれた者たちのおかげである。“花火”“壊れかけのクルマ”“大外刈り”といった青春時代の思い出によって彼は救われる結果になり、それらを有効に描くためには“大学時代の回想シーン”をじっくり描き込む必要があるという流れは分かる。 時間を掛けて、“大学時代の回想シーン”を一生懸命に描いているが、結局のところ現代版に対する“伏線”に用いられているだけのような気がしてならない。 そのようなことをぐだぐだと描くよりも、4人が繋いで渡したビートルズの“ゴールデンスランバー”が入ったIpodというキーアイテムが彼の命を救ったということをもっと印象的に描いた方がよかったような気がする。 ビートルズの“ゴールデンスランバー”という曲が4人にとっての“絆”のような存在ならば、その“絆”が深く響くように端的な仕上がりにした方がよいか。 “友情”を描いておきながら、“友情”がガチッと描かれた仕上がりにできていないところがもったいない。
[映画館(邦画)] 7点(2010-01-31 20:57:04)(良:2票)
6.  (500)日のサマー 《ネタバレ》 
監督のマーク・ウェブは「スパイダーマン」の新シリーズの監督に抜擢されるだけのことはある。既存のルールや公式には従わずに、自由自在・変幻自在に演出を試みて、自らの豊かな才能を発揮させている。いったり来たりと目まぐるしいのは男女の関係でもよくあることであり、カレンダーどおりにストーリーを展開させない演出は上手い。 ストーリーは多くの人が経験あるような事柄が描かれており、共感を得られることだろう。 なんだかんだで最後は二人が結ばれるというカードの偽善的な言葉のような結果にはならず、“現実”がきちんと描かれているのは評価したいところ。自分の中ではこれこそ最高のハッピーエンドだった。自分も若かりし頃に一目見ただけで“運命の女性”だと信じて、無謀とも思える戦いを挑んだことがあったのを思い出した。二人で食事をしたり、映画を見たり、ドライブしたり、旅行したりできるまで関係を膨らませることはできるけど、どうしても“友達”という一線を相手は超えさせようとはさせなかった。自分自身が大したことがないということが大きな理由だが、本作を見ると「それだけではないのかな」という気がする。『運命ではなかった』という言葉の重みが自分にはずしりと響いた。 鑑賞後、「面白かったけど、そんな運命の出会いなんてないよな」といったことを思いながら席を立とうとしたら、すぐ傍に若い女性モノの定期入れが落ちているのを発見した。「しばらく待っていたら本人が戻ってくるんじゃねえの?ひょっとしてこれが運命の出会いか」というようなことをリアルに一瞬思ったけど、面倒くさいので係員に渡して帰った。この辺りが“現実”と“映画の中の世界”が違うところ。しかし、実際の出会いはなかったけど、現実でもこういう偶然や奇跡のような出会いのようなものが溢れているのかもしれないと、ふと感じられた。“現実”と“映画の中の世界”の違いは、実際に一歩踏み出すかどうかの違いなのかもしれない。本作のラストにおいても、いったんは何のアクションもせずに面接に向かおうとするところを主人公は立ち止まっていた。一方、女性の側もいったんは誘いを断ろうとしていた。躊躇してしまうというのは実際にもよくあることであり、躊躇いながらも一歩踏み出そうとしている点は、現実に即しながらもキレイにまとめあげている。自分も一歩踏み出してもいいかなと思える非常に好感のもてるラストだった。
[映画館(字幕)] 9点(2010-01-23 12:56:22)(良:1票)
7.  ココ・シャネル(2008) 《ネタバレ》 
「アヴァン」と併せてみると、シャネルの人生・生き様がより理解できる。本作はココ・シャネルの歴史を描き、「アヴァン」はシャネルとして成功するまでの内面が描かれている。「アヴァン」が“陰のシャネル”とすれば、本作は“陽のシャネル”といえるかもしれない。数多くの苦労や失敗は描かれているものの、基本的にはいずれも好意的に解釈されており、美化されているように思われた。内容面については同じことを描いているが、同じ人間を描いたとは思えないほど、この2作の内容は異なっているようにも感じられる。 しかし、波乱に満ちた一人の人生を2時間程度で描き切ることはできないのも事実。どちらもが本当のシャネルでもあり、どちらもが本当のシャネルではないのかもしれない。「アヴァン」はそれほど面白いとは思わなかったが、個人的には「アヴァン」の方が好みだったようだ。映画としての質は「アヴァン」の方が数段優れている(もっとも本作はテレビ用として製作されたようなので比べようもないが)。「アヴァン」を観なければ、本作をもうちょっと高く評価したかもしれない。 ただ、ココ・シャネルという生き方を理解しやすいのは文句なく本作の方だ。ココ・シャネルという人間を全く知らない人にはこちらを薦めて、ココ・シャネルの生き様をよく分かっている人には「アヴァン」を薦めたい。 ココ・シャネルという人物の歴史を知るには、本作の方が適しているが、その描き方はどこか表層的だ。バルザンやカペルとの愛情、親友やマルコムが演じた男との友情といった人間関係に深みがない。カペルとの関係は「アヴァン」よりも時間が割かれており、よりよく理解できるが、「結婚する」「別れる」といった二面でしか捉えられていないので、やはり「アヴァン」の方が深いといえる。突然、復縁を申し出る辺りも“映画の流れ”の上でスムーズとは思えない。事実通りに継ぎ接ぎをしていっているようなので、その辺りに歪みが生じている部分があるようにも思える。 マクレーンは文句のない迫力・存在感を発揮している。カペルとともに作り上げた“シャネル”というブランド及び服飾に対する情熱、自分自身に対する自信が感じられる。しかし、若き日のシャネルを演じた女優はオドレイほど深みのある演技をみせることはできていない。オドレイやマクレーンと比較さえしなければ、文句のない演技なのだが、相手が悪すぎたようだ。
[映画館(字幕)] 5点(2009-10-24 22:04:36)
8.  ココ・アヴァン・シャネル 《ネタバレ》 
シャネルの生き様や彼女のファッションに関しては、ほとんど前知識なし。フランス語はよく分からないが、“アヴァン”は“前”という意味があるようであり、“シャネルになる前のココ”というタイトルになるようだ。自分はデザイナーとしてのシャネルに関心があったので、一人の女性としてのココ・シャネルにはそれほど関心がなく、大きな感銘を受けるほどのものはなかった。 あまり面白みはない作品ではあるが、オドレイ・トトゥの表情が非常に印象的に描かれている。冒頭から憂鬱そうな表情を浮かべている。「退屈だと老けてみえる」というようなセリフがあったと思うが、まさにその通りである。裕福なバルザンの家に転がり込んでも、浮かない表情はそのままだった。しかし、“ボーイ”カペルとの2日間の小旅行ではその表情が一変している。生気のない表情から生き生きした若々しい表情へと変化している。“ボーイ”カペルとの別れや死で再びその表情も曇ってしまうが、最後のコレクション時の表情もまた印象的なものとなっている。“ボーイ”カペルと過ごした際の幸せそうな表情とは異なるものの、新たな生きがいを見つけたようなこれまで見せたことのない不思議な表情を浮かべている。オドレイ・トトゥの表情を見ているだけで、色々なことが伝わってくるような気がした。表情だけで内面を描き出すという演技は評価したいところだ。 本作は「愛している」「愛していない」、「結婚する」「別れる」というような単純な二面で割り切れるようには描かれていないのも特徴。人間の感情などは複雑極まりないものだ。映画においてはその複雑性を描くことは本来難しいものだが、本作においてはそれがきちんと描かれているようには感じられた。女性監督だからか、繊細なあやふやさがいい効果として発揮されている。 また、実際はよく分からないが、本作の中のココ・シャネルは「結婚」や「家庭」について嫌悪するのとともに大きな憧れを抱いていたようにも思われる。 苦しむ母親の姿を見て育ったものの、冒頭の孤児院において父親を待っている姿を振るかえると、いっそうそう感じざるを得ない。 “ボーイ”カペルとの結婚を心から望んでいたと思われるうえに、彼が生きていれば、彼女の人生も大きく変わったかもしれないとも感じられた。 そういう屈折した想いが深く描かれていれば、観客はより感情移入しやすい映画になったのではないか。
[映画館(字幕)] 6点(2009-10-17 23:10:41)
9.  ゴーン・ベイビー・ゴーン 《ネタバレ》 
アメリカで評価されていた通りの良作に仕上がっている。題材の良さを活かしており、監督・脚本家として才能の高さを示したといえる。事件モノ、ミステリー、ヒューマンドラマ、社会派映画といった複雑な顔を持ち、見ている者に色々と考えさせられる深い映画に仕上がっている点は評価できる。「何が正しくて、何が間違っているのか」が見えてこない難しいテーマに対して、スムーズな問題提起がなされている。主人公が果たして正しいことをしたのかどうかを考えざるを得ないだろう。主人公が行った「7歳の男の子を殺した犯人のアタマをぶち抜いたこと」と彼らが行った「少女の将来のために誘拐すること」は果たしてどちらが正義でどちらが悪なのかが分からない。ラストの選択については、人の親でもなく、女性でもない主人公だからこそ、あのような行動を取ることができたのではないか。娘が大切にしている人形の名前を間違えるような母親でもアマンダにとっては幸せなのかもしれないと考えたくなる気持ちも分かる。 一方、「実の娘を亡くした者」「不妊症に悩む妻を持つ者」「子どもが犠牲者になる姿を見たくないパートナー」、どのキャラクターも子どもに対して深い思い入れを抱える者である。子どもの明るい将来のため、子どもが確実に不幸せにならないために、法律を超えた行動を取ろうとする気持ちがよく伝わってくる。どちらの考えもよく分かり、この問いに対する明確な“答え”は存在しないだろう。 エンディングシーンも心に響くような仕上がりとなっている。 娘が実の母親の元に戻ったのだから、形式上はハッピーエンドであるのは間違いない。 しかし、これほど素直に喜べないハッピーエンドで締めくくったアフレックは凄い。 バッドエンドと考える者もいるだろう。 冒頭にも触れられていた「街」というキーワードも大事にされていたと思う。車の運転中に飛び出してきた子どもから暴言を吐かれるような「街」の姿が描かれている。子ども達が悪いのではなくて、そういう「街」で育ったことが起因となっているだろう。暴力や銃やドラッグが溢れていれば、大人たちがおかしくなり、子どもも徐々に汚染されていく。そういう子どもが大人になり、親となれば、彼らの子どももまた不幸になる。 そういった連鎖を断ち切らなくてはいけないということを「街」というキーワードを用いて、アフレックは一応の「答え」としているのではないか。
[DVD(字幕)] 8点(2009-06-28 11:24:04)(良:2票)
10.  GOEMON 《ネタバレ》 
キリヤについては好印象をもっており、今回も「よく頑張ったな」とは思ったが、お世辞にも「面白かった」とは素直に思えなかった。キリヤワールドを堪能することができてよかったとは思うが、「CASSHERN」ほどの衝撃は感じられない。 “万人向けのエンターテイメント作品”と“メッセージ性ある作品”との両立を目指そうと努力したが、監督の狙い通りには仕上がらなかったというところか。 歴史の改造については、むしろ好意的に感じる。ここまで思い切って脚色を加えることができるのは流石であり、原作や歴史の改造という部分にかけては才能を感じる。 CGアクションについては、かなりの粗さ、安っぽさ、ムチャクチャさがあるが、予算の制約等を考えれば、精緻なものを求めるのは酷な話である。むしろその粗さを利用して、大胆に仕上げており、なかなかの才能を感じる。 メッセージ性に関しては、前作に近い反戦的なものを描きこんでいる。あまり深くは考えなかったが、「争いのない平和な世の中を望むのならば、無関心でいるべきではない」ということだろうか。徳川家康に最後に斬り込んでいった姿からは、そのように感じられた。あれが、GOEMONの戦いであり、運命であり、責務だったのだろう。 豊臣秀吉に関しては、奥田が好演しており、尽きることのない欲求に飢える人間の浅ましさが感じられるようになっているが、“秀吉”以外の無駄に多数登場するキャラクターのほとんどを活かし切れてはいないのが勿体ない。 特に“佐助”がもったいなかったという印象が強い。監督の狙いは痛いほど理解できる。“効果”を相当に発揮できるキャラクターになるはずだったが、完全に空回りしてしまっている。“佐助”の描き方がパーフェクトに仕上がれば、本作のデキも変わっただろう。 本作においては、織田信長を理想化し、秀吉を邪悪化している。戦争を好む秀吉の姿は“争いのない平和”との対比と捉えることはできるが、信長の“理想”があまり見えてこなかった。信長が目指した“平和な世界”をもうちょっと描きこめば、信長と秀吉がいい対比関係になり、観客も理解しやすかったのではないか。 長所も短所もあり、ジャッジしにくい作品であるが、やはりキリヤという映画監督は今の日本においては貴重な存在だ。美的センスには優れており、チャレンジスピリットやパッションにも溢れている。次回作も期待したいところだ。
[映画館(邦画)] 6点(2009-06-06 13:12:58)(良:1票)
11.  告発のとき 《ネタバレ》 
鑑賞中は「つまらない映画」と思っていたが、鑑賞後は「素晴らしい映画」と感想ががらりと変わった。 「アメリカがイラクで行った暴虐に対して告発する」という大きなテーマを描くのかと思って見てみたら、大間違いだ。 見終わった後は、それよりももっと大きく深いテーマを扱っていると気付くだろう。 “戦争が人間性を崩壊させる”というテーマを、感傷的にもヒステリックにもならずに、静かに怒りを込めつつ冷静に告発している。 見終わってから全てがみえてくるというポール・ハギスの計算された作風が見事だ。 息子を殺された父親と、その息子を殺した加害者が「パンスト話」で笑い合ったり、酒を飲んだりするというシーンの恐ろしさは、最後まで見ないと分からない。 息子を殺された父親に対して、ともに戦った戦友の殺害を冷静に罪悪感もなく語るシーン、戦友を殺して切り刻んで燃やしたあとに腹が減ってきたのでチキンを食べたと語るシーンには、言葉も出ない。 この“異常性”こそが本作の真相であり、その“異常性”を見事に描き切った。 戦争によって“異常”な人間になってしまったが、父親に対して送ったメッセージ、父親に対して贈った写真と国旗には、元の“正常”な心は完全に失われていないことも伝えている。 ポール・ハギスは、アメリカが異常な国になってしまったと告発しているが、正常な国に戻れるはずだという想いも込めたのだろう。 ラストに登場する青年兵士の姿、そして逆さにした国旗に込めた想い、どれもこれも深くて熱い。 原題のタイトルの由来となっている「ダビデとゴリアテ」の話が恥ずかしながらよく分からなかった。 「ダビデ」はシャーリーズ・セロンの息子の名前の由来なので、アメリカの若い兵隊を言い表しているのだろう。ダビデ(若い兵士)はパチンコ(現代に置き換えれば銃)をもって、巨人「ゴリアテ」に立ち向かう。 巨人「ゴリアテ」は、イラクを指しているのかもしれないが、この場合“戦争”そのものを指しているのかもしれない。 結果的には、ダビデ(アメリカの若い兵)は巨人との戦いには勝つことができた。 しかし、ポイントは小人が巨人に勝つことではなく、なぜそもそも小人のダビデが巨人と戦わなければいけないのかが問題ということなのだろう。 勝ち負けの問題ではなく、アメリカの希望ある若い兵隊が戦争に赴くことに対する問題とその矛盾を示したという解釈をしたい。
[映画館(字幕)] 8点(2008-07-16 20:13:10)(良:5票)
12.  恋人たちの食卓 《ネタバレ》 
メロドラマ風な安っぽさも感じるが、それぞれのエピソードが意外ときちんと有機的に機能しており、優れた映画として評価できる。 「親の気持ち子知らず」、「子の気持ち親知らず」というテーマがきちんと描かれていたのではないか。 父親としては、それぞれの娘に早く自立してもらいたかったのかもしれない。そうでなければ、三人の娘全員を大学に通わせたりはしないだろう。 二人が結婚し、もう一人も自立の目途が立ったので、ようやく行動に出たのではないか。 娘たちに自立してもらいたいが、娘たちに対する「愛情」も持ち合わせている。 日曜日の晩餐はその不器用な「愛情」の表れだろう。 しかし、父親のそんな気持ちを知らずに、長女と次女は父親の世話を重荷に感じながら、気まずい関係に陥っているのが、映画にとっていい味にもなっている。 長女の大学時代の失恋話も、次女(と自分自身)を納得させるだけの口実に過ぎなかったのかもしれない。 一番早くに実家を出たかった次女が、結果的に三女、長女、さらに父親よりも遅くまで実家に残るという構造が見事だ。 ラストも実に秀逸だ。「親の気持ち子知らず」、「子の気持ち親知らず」というテーマが見事に昇華されている。味覚を取り戻し、次女のスープの味が分かることで、「子が父を思う気持ちに、父が気付いたのではないか」と感じさせるものとなっている。 本当に美しいラストである。 やはり、アン・リー監督はアカデミー賞を受賞できるほどの才能を持ち合わせていると感じることができる。 撮影方法に関してもセンスの良さが随所に感じられる。 よくありがちな手法だが、レストラン内の撮影も見応えがあり、料理も非常に美味しそうに撮れている。
[DVD(字幕)] 7点(2008-02-11 01:59:43)(良:1票)
13.  コックと泥棒、その妻と愛人
ピーター・グリーナウェイ監督作品は初見。恥ずかしながら、今まで名前すら聞いたことがなかった。この度「レンブラント」の生涯を描いた新作が公開されると聞いて、監督のことを知り、監督の代表作である本作を見ることにした。本作については何の情報も持ち得てなく、タイトルからコメディ的な軽いものを想像していたが、見事に裏切られることとなった。 確かに、この才能は凄いと思う。 同じようなものを作れと言われても誰も真似できないだろうし、独特の世界観を構築できる能力は賞賛されるべきだ。 リアルの世界でもなければ、虚構の作り物のような世界でもない、白でも黒でもないグレイともいえる別次元の世界が存在している。 また、部屋のイメージの印象を濃くする「黒に近い青」「赤」「白」の色彩感覚に優れており、横に流れていく撮影方法も特殊であり、その撮影方法を取ることで色彩効果をより高めている。 現在「エルメス」のデザイナーでもあるジャン=ポール・ゴルチエが手掛ける衣装も素晴らしく、本作の世界観を深めている。 彼が手掛けた「フィフス・エレメント」よりもゴルチエらしさが発揮されているのではないか。 しかし、「面白いか」と問われた場合、「イエス」とは言いがたい作品だ。 エロ・グロには自分には一応耐性があるので、まったく苦には感じなかったが、“何か”を感じ取ることができなかった。 監督が想いを込めたと思われる人間の本能である“食”に対する美醜を上手く感じ取れなかった。醜さの中に潜む“美しさ”、美しさの中に潜む“醜さ”が自分にはピンとこない。 映画の“良し悪し”という判断というよりも、監督の感性に共感できるか、できないかの差なのではないか。 ピカソの絵を見て、素晴らしいと評価できる者がいる一方、子どもが描いたような絵だと酷評する者がいるようなものだ。 面白さは理解できず、この世界にどっぷりとハマり込むことができなかったものの、監督の才能を理解し、美しくも醜い世界観を構築したことを評価して、5点としたい。 本来ならば、0点か、10点かという作品なのかもしれないが。 マイケル・ガンボン、ヘレン・ミレンの演技に圧倒されたことも低評価できない理由だ。この二人の役柄を彼らほど上手く演じられる者はそうそうおるまい。 特にガンボンが凄い。彼のイヤラシイ演技がなければ、本作の評価は高まることはなかっただろう。
[DVD(字幕)] 5点(2008-01-12 00:51:33)
14.  殺しのドレス 《ネタバレ》 
「殺人」+「目撃」+「追いかけっこ」+「エロ」+「二重人格」+「夢オチ」=「ブライアンデパルマの極上のサスペンス」の出来上がり。 まさにブライアンデパルマのフルコースをお腹いっぱいに食したという印象。デパルマが好きな人ならば、絶対に満足ができるだろう。 なんていっても「カメラワーク」の素晴らしさには、惚れ惚れとする。 クネクネと動いたり、寄ったり引いたりと「どうやったらこんな動きを思いつけるのか」と感心せざるを得ない。独特のカメラワークの動きを存分に楽しんでいただきたい。 「犯人は誰か?」とか「これパクリじゃねぇ?」とかつまらないことは気にせずに、オープニングクレジット明けの30秒ほどでいきなり女性の裸が登場する「デパルマワールド」を存分に堪能するのが、本作に適した鑑賞方法でしょう。 デパルマには、「アンタッチャブル」や「ミッションインポッシブル」といったヒット作があり、本作よりも質の高い作品(ミッドナイトクロス、カジュアリティーズ)も多数あるけれども、「彼の代表作とは何か?」を問われれば、自分は間違いなく本作を挙げるだろう。 バレバレの犯人、あっけない幕切れ、メチャクチャなストーリー、力の入れ方が間違っているだろうと突っ込みたいほど熱を入れた美術館のシーン(音を一切使っていないシーンもあり)、自分の嫁の使い方など、あらゆる点において、ブライアンデパルマが極めた己の頂点の作品といってよいだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2006-09-29 00:03:03)(良:1票)
15.  コレリ大尉のマンドリン
テーマは深そうだけど、映画自体は正直言って全くつまらないものに仕上っている。 全体としてみると散漫かつ説明不足ではないだろうか。このテーマならば、もっとペネロペとニコラスの関係は深めに描かないといけないと思う。この内容では親父さんの言う「恋と愛」の違いを具現化したものにはなっていないのではないか。もっと「音楽」を絡めて二人の関係が「愛」に高まるまでを描くべきだろう。 この映画を観る限り最終的には、むしろニコラスの関係が「恋」で、クリスチャンベールの関係を「愛」として描いてもよかったのかもしれない。それだけペネロペとニコラスの二人の関係は希薄なものと感じたし、ベールには真実の愛に気づいたという流れと感じた。 また、ベール自身や、ドイツ人大尉とニコラス、かばって死んだ軍人とニコラスとの関係があまり見えてこないので、やはり物足りないと感じた。 しかしながら、戦争の中で「音楽」や「愛」を描いており、あの陽気な世界には「争い」とは真逆の想いが感じられる。充分「反戦」に対する気持ちが伝わってくるが、やはりこれでは何もかも描き方が不充分すぎると思う。 映画自体は全く異なるが、「パールハーバー」と似たり寄ったりといっても言いすぎではないだろう。むしろ、あちらはアクションが優れているので、まだ見れる気もする。
[DVD(字幕)] 4点(2006-01-10 00:02:20)
16.  go(1999) 《ネタバレ》 
なかなか面白い映画だと思う。有名監督の作品でそこそこ有名な女優たちもでており、DVD化もされているのにこれほどレビューが少ないのはどういう訳だろうか。 総論としては、全体のストーリーの繋ぎや前振りがなかなかよいと思う。とくに黒人の黄色ジャケットはトイレで一振りさせておいて、クルマに繋ぐのはなかなか上手い。しかし、全体的にそれぞれのエピソードのオチが弱いかなという印象。ストーリーに一本筋が入った「核」がないため、どれもこれも小さい花火みたいな仕上がりになっている。 各論としては、ロナ編やサイモン編はなかなかの良作。アダムとザック編はちょっとイマイチかな。 欲をいえば、ロナのクルマ事故はたんなる事故という描き方になってしまったのがちょっと残念。「駐車場で迷ってどうする」位の話で、事故を起こすというよりも、もうちょっとアダムとザックが誰かに追われるといったストーリーや因果関係を入れこまないとストーリーが深まらない。 その他にもクスリを2錠飲んだマーニー、マルチ商法の夫婦にもストーリーにやや広がりを欠いているし、アダムとザックも救急車呼んでもらって御仕舞という感じで、オチていない。各ストーリーにもうちっと「毒」を入れこめばもうちょっと締まった感じになるかもしれない。ストーリーが意外と綺麗すぎるのが難点かな。 そうはいっても、それぞれのキャラクターとストーリーが微妙に交差しながら進む、中々面白い映画であることは間違いない。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-23 23:59:50)
17.  コクーン
自分はまだ若いので、この「老い」というテーマを身近に感じられるわけではない。恐らく70、80歳になって、ようやく「老い」に対する自分なりの答えを出せるかもしれないが、現在の年齢でこの映画を観て、この映画に対する自分なりの'甘い'感想を述べたい。 他の人も言っているように銀河鉄道的発想でもあるが、人生や時間というのは限りがあるから、素晴らしいのではないかという根本的な発想が自分にはある。例え、永遠に生きられるとすれば、何もかも後回しになり、逆に何もしたくなくなるような気がする。 また、いかに自分の人生に満足できるように過ごせるかは、'若さ'というフィジカルな問題ではなく、時間や人生に対する考え方に問題にあるのではないか。それを'永遠の命'に回答を求めたところに、思想というか哲学の違いがある。 この映画を観て、老人たちが結局宇宙に行ってしまったのは、個人的には残念に思った。それが果たして本当の幸せを掴む方法なのかと疑問に思った。自分に残された人生を、娘や孫たちと過ごす数年と、娘や孫たちがいない一生を天秤にかけて、後者を選択することが果たして本当の幸せなのだろうか。 あの宇宙人たちも初めて仲間との死別という別れを経験し、恐らく初めて流したであろう涙や初めて感じたであろう別れの悲しみから、何を学んだのかということを問いてみたい。 したがって、宇宙に行くのは、奥さんを亡くし地球への未練を亡くしたバーニー(見送りに来た老人)と、宇宙人を愛してしまい別れたくないはずの船の操縦員と思われるが、全くの真逆の展開になったのは、ある意味でここまで感覚が異なるものかと、非常に面白いと感じた。 ラスト辺りで、必至に追いかけてくる孫の姿を見て、宇宙人なり、老人たちが真の生き方に気づくという展開の方が良かったのではないか。なぜ孫が追いかけてくるシーンを描いたのか。あそこまで必至になって慕ってくれる孫がいるのになぜ宇宙に向かうのかは分からない。やはり'その時'が来ないと答えは出ないかもしれない。自分はこの映画を反面教師として、高齢化社会に伴い、老人が老人として生きがいの持てるような社会を創ることこそが必要なのではないかと考えてみた。
[DVD(字幕)] 4点(2005-08-22 22:08:49)
18.  ゴッド・アンド・モンスター 《ネタバレ》 
観終わったあと何とも言い知れぬ感情を覚えた。ありふれた感動とも異なる表現しにくい感情を覚えた。この映画の本質を捉えるのは難しいかもしれないが、非常に「味」のある映画ではないだろうか。 解釈は人によって異なるとは思うが、自分が感じたことを色々と書きたい。 まず、なぜジミーは自殺したのかという点。 「ジミーは脳に障害を持ち正気を保てなくなる前に死を望んだ」という動機は誰でも理解できる。ただ、なぜ睡眠薬一気飲みをためらったのにプールで水死したのか。 それはジミーが「孤独な怪物」のままで死にたくなかったのではないかという気がする。クレイとのやり取りの仲で芽生えた「友情」と言ってよいのか分からない「二人の奇妙な関係」があり、また、自分のために裸になってくれる友、自分のために服を脱がせてくれる友ができ、「孤独な怪物」では「一人の人間」として死ねるからこそ、「死」という選択ができたのではないか。クレイが第一ボタンを外したあとのセリフ「あとは自分でやる」というのは、残りのボタンのことではなく「死」に関してのセリフと受け取った。 また、プールには色々と思い出が詰まっていたからなのだろう。 そしてジミーとクレイの関係。 個人的には、ジミーもクレイも「孤独な怪物」と感じた。その「孤独な怪物」を救ったのもクレイとジミーという「人間」だったようにも映った。孤独な人生から、死という救いへ導いたのはクレイであり、真っ当な人生を送れるように家族を作ろうという気にさせたのはジミーである。二人は互いに互いの人生を変えることができた。映画での二人の関係は非常に興味深い描き方がされている。 この映画の勿体無いところは、「同性愛」という面が目立ってしまうためにやや本質が捉えにくいのかもしれない。テーマとしては、友情、家族、反戦、尊厳死、人生、生き方など実に多くのことを詰め込まれた深い映画だと思う。 ジミーを演じるイアンマッケランがガチンコの同性愛者であり、それゆえ演技が抜群であることが映画に微妙な効果を与えている。 演出も相当に凝っており、他の役者の細かい演技や細かい部分(クレイには本当に盲腸らしき後がある)、音楽も素晴らしい。まさにプロの仕事だと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2005-08-20 12:36:04)
19.  コンスタンティン 《ネタバレ》 
正直8点というのは評価がちょっと高すぎるような気がする。恐らく7点くらいだとは思う。しかし評価できる点としては、原作がアニメコミックのためか、ヴィジョン・世界観が曖昧にならずはっきりしたものを持っている点。その世界観を独特で斬新な映像・撮り方でしっかりと描けている点。この2点はとにかく評価したい。 ストーリー的には、悪魔、天使、ルシファー、ガブリエル、聖書がどうのこうのと分かる人には分かる、好きな人なら好きという感じなので日本人は置いてけぼりを食らう人もいるかもしれないと思う。しかし、それほど難解なことは言っていないし、描くつもりもなさそうなので良く分からないところは適当に聞き流せば良いと思う。 個人的にはルシファーとコンスタンティンとのやり取りがもう一つ評価できるポイント。場面が変わってコンスタンティンの変わりようもまた、いかしている。 大体予告編で分かっていたことだが、悪魔側とコンスタンティンのバトルのようなものがないのは多少不満かな。序盤のエクソシスト、中盤の雑魚の大群や「虫や蟹」の化け物、バルサザールがほぼ瞬殺気味で終わっていたのがちと不満。趣旨が変わるかもしれないが、もうちょっとじっくりと描いても良かったと思う。特にバルサザールは中ボスだろうに。 2時間あまりで色々なことを描こうとしているためか、それぞれのエピソードや登場人物(チャズ、ミッドナイト、バルサザール、神父、バルサザールに殺されたボウリング裏の人)が多少描き足りていないとは感じる。 肝心のラスト後のおまけだが、チャズは元々ハーフブリードなのか、死んでハーフブリードになったのかが議論になるだろう。 答えは知らないし、「元々ハーフブリード説」が多数説のような気がするが、個人的には死んだ後にハーフブリードに転生したと思っている。 自分の考え方としては、①ミッドナイトのクラブに入れていない。②あまりにも弱すぎる。③後半やけに詳しいのは色々と勉強したためで、その労が神に認められた。④最後のキアヌの笑顔はチャズに対して「あの野郎、素性隠してやがったな」という笑みよりも、神に対して「なかなか、味な真似するじゃないか」という解釈を自分は取った。とにかく結論はどちらなんでしょうね。
[映画館(字幕)] 8点(2005-04-17 02:01:35)
20.  恋人までの距離(ディスタンス) 《ネタバレ》 
非常に上手いなと唸らされる映画。 出会いから別れまでを1日程度で無理なく描けている点が見事だ。 国籍も違う見知らぬ旅人同士が、二人にとって見知らぬ地ウィーンで、徐々に惹かれあう過程(視聴室での二人、観覧車の二人は見事)、本音をぶつけあう姿(ピンボールを交互にプレイする二人、親友への擬似電話を掛ける二人は見事)、そして別れをじっくりと堪能できる。彼らの約束と別れたあとの二人の表情が余韻を引きずる。花火のようにパッと燃え上がった恋が、一瞬で静まり返って、お互いが冷静に振り返るいくばくかの時間と二人が過ごした場所が静かに映し出される点がとても印象的だ。 恐らくジェシーはこのままアメリカに帰ってもこの出会いを引きずるだろうと思われる(一度スペインとの遠距離恋愛で失敗しているのに、再び失敗を繰り返すのが男の悪くもあり、良いところだ)。 一方、セリーヌも最初は渋い表情をしているが、徐々に笑顔を取り戻している。彼女の中で、別れの苦しみというよりも美しい思い出として記憶されたのではないか。やはり、女性の方が切り替えはかなり早いようだ。 また、この二人が再開するかどうかの余地が残されている点はたいへん面白い。鑑賞者の恋愛感によって、又は性別によって、二人が再開するかの考え方は異なるだろう。続編を無視して、自分の目線で判断すると、男はまた必死に旅費を貯めて、半年後ウィーンに戻ってくるだろうなと思われる。女はどうだろうか、一概に判断はつかない。恐らく直前まで悩むのではないか。戻ってくるかもしれないし、戻らないかもしれないという女性ならではの不可思議さが描かれていると思う。 さらに、男と女が対比的に描かれている点も面白い。男はやはり子どもっぽさがあるし、ヤリたがる。また、見栄を張ったり、つまらないことに腹を立てる一方で、とても現実的な点がある(ミルクセーキの「詩」は最初からできていたのではないかと夢のないことを言ったりもする)。 女は幸せな環境に育ったとしても、何かに怯え、どこか満たされない想いを抱え、その不安をなんとか埋めたい、人生を実りあるものにしたいとと願っている。やはり、現実的な考えよりも、ロマンティックな考えを優先している。 考え方や性格も異なる二人だけれども、惹かれあわずにいられない男と女の関係の不可思議さを感じられる素晴らしい作品だ。
[DVD(字幕)] 8点(2005-02-21 01:23:10)(良:1票)
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