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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1248
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  哭声/コクソン 《ネタバレ》 
ソウルなどの大都会ではない地方の町や集落、森林や山の風景が美的に映像化されている。場所は実在の全羅南道谷城郡とのことで、郡内に「谷城邑」という町があり、その町の中に谷城警察署(中央路161)や谷城愛病院(谷城路761)というのもある(派出所は不明)。 ホラーとして終始不穏な雰囲気は出ているが、特に前半では娯楽映画に不可欠な?コメディ要素がちゃんとくるめてあるのが可笑しい。登場人物では「目撃者」がなかなかいい感じで、石を投げて来る場面は好きだ。また祈祷師の儀式はダイナミックで迫力があったが、その後のゾンビは出ない方がよかった。  物語としては何が起きていたのかわからない。世評によるとキリスト教の知識がなければ気づかないことが多いようで、基本は間口の狭い映画ということになるか。自分としては手の穴くらいはわかったが、「ヨブ記」についてはアメリカのホラー映画で出ていたにもかかわらず、そこまで頭が回らなかった。 宗教関係には突っ込まないとして、一つ思ったのは一連の事件が登場人物のうちの誰かのせいだと思い込んでいていいのかということだった。王朝時代の宮廷で呪いのかけ合いをしている状況ならともかく、現代の祈祷師でも病気平癒などの祈願をする際に、近隣の誰かが絶対呪いをかけているとまでは思わないのではないか。表面的な事象だけでなく、背景に何らかの動きがあるとすればそれも含めた全体像を捉えなければまともな答えは出ない気がする。 しかし一般論としてはそのように思っても結局何もわからないので、邦画によくあった独りよがりな難解ホラーのようなものと思って投げてしまいたくなる。監督はこの映画が「混沌、混乱、疑惑」を描写していると言ったらしいがそれでわかった気になるわけでもなく、残念ながら個人的には見えないものの多い世界が映されていたと思うしかない。全体的な印象は決して悪くなかったが、結果として好意的な評価はできない映画だった。残念だ。 なお一連の事件を全部キノコのせいだったことにしてしまうと映画にならないわけだが、これが現実世界の話ならそれだけで全部説明がつく(つけられてしまう)とはいえる。この映画に関して、自分は報道だけ見てキノコは危ないと思っていた現実世界の人間の立場だったと思っておく。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-05-20 10:57:06)
2.  52Hzのラヴソング 《ネタバレ》 
ダンスはなく歌が主体のミュージカル映画になっている。主な出演者は役者ではなく歌が本職のようで、台詞よりも歌で語らせて物語を進めていく趣向らしい。視覚効果もあってか色彩豊かでファンタジックな劇中世界ができている。 内容的にはバレンタインデー(2/14)のラブストーリーになっており、全部数えて6組12人の幸せな日を描いている。同性婚の2人が里子を迎えたのは今回のタイミングに合わせた形だったらしい。  基本はラブコメ的に気楽に見ればいいのだろうが、作り物感のせいでいま一つ乗れないでいるうちに、晴れやかなはずの合同結婚式が変に心騒ぐ場面になっていて冷めてしまう。主人公の一人である公務員にとっては落ち込む一方のイベントだったらしく、せめて法的に認められない同性婚を祝福させようとして市長に花束を渡したのかも知れないが、そこで一輪返されたのは、他人より自分を心配しろと言われたようでさらに落ち込んだということか。 多くの登場人物が物語を通じてプラス方向に動くのに対し、この公務員と彼氏の関係は最初からマイナス続きで、最後はもうこれは駄目だと思わせるところまで落ちていく。それでいて最後に逆転する形式だったのは、うまく同調できれば大感動なのだろうが、終盤の展開に納得感が全くないので勝手にしろと突き放したくなった。それ以外はまあお幸せにという気分にはさせられた。  なお合同結婚式で台北市長が、産めよ増やせよ的な発言を平気な顔でしていたのは危なっかしいので気が気でなかった。日本ならこの手の発言をした政治家などメディアに総叩きされるだろうが、ただこの柯文哲市長は実際に自由な発言で失言王のように言われた人物らしく、それを前提にしたブラックジョークのようなものと思えばいいか。 ほか登場人物としては、同じ監督の「海角七号」(2008)の出演者が大挙出ていて見た顔が多い。劇中で最も普通に可愛く見えるのはレストランの若手スタッフだったが、この人が海角のひねくれ少女の成人した姿だったのは感動した(昔から可愛かったが)。また「セデック・バレ」(2011)の主役が渋い顔で出て来て、今回もちゃんと歌を歌っていたのも感動的だった。 ちなみに台北なんてクソ食らえとかギターを叩きつけるぞとかいう脈絡のない台詞は、海角のセルフパロディなので笑った。また花屋の店主(小心花店的老闆娘)が年齢をごまかしていたのも可笑しい。この人が歌ったネコの歌(トゲの歌)は結構よかった。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-04-23 11:47:32)
3.  この街に心揺れて 《ネタバレ》 
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅名は大橋頭駅だが、地名としては河港のある「大稻埕」(だいとうてい)という地域の「迪化街」(てきかがい)とのことで、レトロな洋風建築と近所づきあいの残る古い市街地のようだった。なお邦題は雰囲気で適当に付けてあるので気にしなくて構わない。 物語的にはもう若いともいえなくなってきた男女のラブストーリーだが、特徴的だったのは原題と英題のとおり、恋物語に数学を結びつけたことである。相手の男は数学者だが視野の狭い専門バカでもなく、一見無関係な技術や数理に即して人間界の真理を語る特性というか能力があったらしい。最終的に重要だったのは「オイラーの等式」なるもので、これは文系の立場からすると忌避感を催す言葉だが、要はそれ自体が一見無関係な全く別のものをつないで調和させている点で、「縁」を象徴するものと意味づけたのがこの映画としての工夫らしかった。 ちなみに主要人物のほかに、世間の男女間をやたらに繋ごうとする変な若い男が出ていたが、これはシリーズ全体に関わる存在のようで、今回限りでは意味不明だがとりあえず大目に見ておく。  ところで別に台湾映画に詳しいわけではないが、どうも他の映画で見た要素が多く使われていた気がする。なぜか日本人が出るのは「海角七号」(2008)など、幼時の記憶は「トップガイ」(2014)、外国在住で帰郷を迷うのは「幸福路のチー」(2017)を思わせたが、これはいちいち真似しているというよりも、向こうでよくあるパターンだということか。ラストが空港だったのも、少し前に「風が踊る」(1981)を見たばかりだったのでまたこれかと思わされたが、今回なりの決着の付け方としては悪くなかった。 ほか個別の場面で結構いいところがあり、「女性が不機嫌なときは…」というのは先人の知恵を思わせる(魯肉飯5杯食いたい)。また家系が敵同士?だというのをロメジュリで茶化したのは、些細なことでも創意の働く基礎的なレベルの高さを感じさせる。即興でキラキラ星の変奏を連弾していたところでは、こんな特技があるとは聞いてなかったので反則だと思ったが、このあたりから主人公も可愛く見えて来た。 主人公男女以外では男の叔母が感じのいい人物で、甥が物事を数学で語ろうとするのに対し、歴史を語ることで対抗していたのは笑った。「肝心な時に決断しないと…」というのはその通りだ。向こうの人はちゃんとわかっている。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-08 14:05:59)
4.  幸福路のチー
題名の「幸福路」とは戦後に拡大した台北大都市圏にある通りの名前だそうで、ストリートビューで見てみるとけっこう賑やかな街らしい。 自分としては全体的に「おもひでぽろぽろ」(1991)のイメージかと思ったが、台湾現代史が背景になっているため重みがあり、また「先住民族」(字幕)やアメリカ人とのハーフといった登場人物の多様性も出している。1975年頃は台湾にも米軍がいたということだ。 簡単に海外へ移住するなどは基礎的な行動力が日本人と違うのか、または国境のハードルを低く感じているのかと思ったが、結局最後は主人公も自分の生きるべき国を改めて選ぶ機会が生じたようだった。  物語に関しては、幸福とは何かという問題提起に始まり、当初は食う・寝るだけだったのが時代の変化や主人公の成長で変わっていく。本人としては王子様→悪と戦う→社会正義と発想が展開したらしいが早々に挫折し、苦しまぎれにアメリカに渡ってみたが満足のいく結果でもない。アジア人なら誰でもいいのだろうという発言はかなり攻撃的だったが、これは主人公の方こそ白人なら誰でもいい(王子様だから)と思っていたことの裏返しではないか。意外にも最後まで残ったこだわりが王子様だったようである。 迷っていたが最後には、かつてお姫様のように思っていた親友の現在の姿に感化され、不惑を前にして、自分として最も根源的と思えるものを選んだようだった。離婚したら両親が悲しむと夫には言われたが、実際はそうでもなかったらしく、本人も自分の決断に確信が持てたようなのは他人事ながら嬉しい。 ただしこれは終着点ではなく新たな出発点であって、まだまだ主人公には先がある。ラストは「悲情城市」ほど暗澹とした感じではなかったが(最後は2014年頃)、これから世界がどう動くのかわからない不透明さはやはりある。しかし主人公もその都度自分の目で見て考えて、自分なりの幸福を一生追求し続けろという年長者の教えを自分のものにしていたようだった。  登場人物の中では、洋風美女の親友が和み系の人で好きだ。角を立てずに丸く収めようとする穏やかな人物のようだったが、その娘はあくまで筋を通そうとする強気の人物だったらしい。また幼い息子が姉を描いた絵には笑わされた。 ほかガッチャマンの絵や「永遠的朋友」といった子ども同士の素朴な友情、また家族同士が見せる自然な感情には少し泣かされた。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2021-04-17 08:50:43)(良:1票)
5.  ゴースト・ブライド 《ネタバレ》 
ロシア製のホラー映画で、同じ監督のものとしてはこの後の「黒人魚」(2018)も見たことがある。 まず特徴的なのは、写真を撮ると魂を吸い取られるという昔の俗信を使ったことである。日本でも同じ理由で写真を嫌う人々が昔はいたと思うが、劇中のロシアではこれを使って死者の魂を保存するという、いわばポジティブな発想になっている。その実行過程で、死者のまぶたに瞳を描くのは日本ではギャグにしかならないが、劇中の古そうな写真を見るとたしかに不気味ではある。 最初のうちは期待しながら見ていたが、どうも疑問点が多いのは問題だ。「銀板」に魂を定着させたのは近代科学の成果としても、生きたまま棺に入れるのは科学と無関係な別の伝統的呪法に見える。現代の儀式になるともう写真撮影は不要だったので、発端で保存の機能を果たしただけだったらしい。もともと「古代スラブ民族」の雰囲気を出した土俗ホラーだったところに近代的なネタを組み合わせたが、すり合わせが不十分なようでもあった。 また呪いが現代に伝わった過程について一応説明はあったようだが、個人的には最初の事件(19世紀前半か)と「曽祖父」「お母様」の関係がわかった気がせず、部屋に籠っていた「曾祖母」と出歩いていた白い婆は同じものかもわからなかった。そのほか何かと不明・不可解・不明瞭な点が多く、邦画でよくある独り善がりの難解ホラーのようだった。 そもそもあまり怖くもないが、白い婆の立ち姿などは悪くない。「目を閉じて息を止める」という対処法も悪くないので、そういう怪異との共存を日常的に強いられてきた家族の苦衷がもっとしっかり感じられるとよかった。なお花嫁に性交経験のないのが必須というのでは、現代ではいずれ破綻するのが目に見えていたわけだが、劇中家族の立場としては今回一応の決着がついたということらしい。  登場人物について、新婚の男の名前(Vanya)は字幕でなぜかヴァンヤと書いてあるが、カタカナ表記だとワーニャと書くのが普通である(イワンの愛称)。ちなみにナスチャはアナスタシアの愛称らしい。そのナスチャ役のヴィクトリア・アガラコヴァという人は、前記「黒人魚」でも主演しているが、この映画でも非常に可愛い表情を見せたりして好きになって来た(国内向けの宣伝写真は最悪だが)。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-02-06 11:17:51)
6.  この世界の(さらにいくつもの)片隅に 《ネタバレ》 
原作との関係ではいわば完全版ということになる。主に、前作でほとんど捨象されていたリンさんのエピソードを全面的に加え、夫婦それぞれの過去を見せることで対称性のある物語を再現している。今回はリンドウの青が色彩的に目について、すずさんのタンポポのイメージ(黄色)と対照的に感じられた。またすずさんも今回はより大人の女性としての姿を見せている(こんなにエロいとは思わなかった)。ちなみに、これだけ長尺でもまだ省略されているエピソードがある(ミヨセンセーノハゲアタマなど) 前作を含む映画版の特徴として、原作で読者の読み込みに任せていたところをわかりやすく示すということをしているが、ただこの新作版で伯父夫婦の語った周作の過去などは、適当に想像しておけば済むことなのでやりすぎだ。また原作に出た事物を別のところで出している例もあるが、「愛はいずこにも宿る」(「どこにでも宿る愛」)という言葉に関しては、個人的感覚では結果的に得られた感慨として扱うべきものであり、途中で安手の格言のように語らせたのは残念だ。 その他前作になかった点として、広島に救援活動に行った人々(伯父や知多さん)のその後の健康状態に触れた場面もあった。また「狸御殿」の様子(顔)をいかにもそれらしく描いていたのは笑った。  なお前作と共通だが、原作で終盤にあった「記憶の器」という言葉を、映画では「笑顔の容れ物」に変えていたのに今回気づいた。真意は多分同じと思うが、原作段階では亡くなった人々の記憶を背負って生きる義務を自ら課すという悲壮感のようなものも感じたのに対し、これを変えることで、亡き人々を暗い記憶の中に封じ込めるのでなく、あえてこの世に祝福されていた存在として記憶にとどめようとする意志が明瞭になっていた気がする。残った人々もこれからできる限りの笑顔で生きていこうとするのだろうし、エンディングで水玉模様の服を作る絵からもそのように信じることができた。 現実問題として、みんなが笑って暮らせるわけではないのは当然のことである。しかし時代や場所や境遇の差はあるにせよ、人というのは誰しも常に笑いを求めているのではないかという気もする。日常的な暮らしの中の笑いというのは、いわゆる普通の幸せの実体をなすものではないかという気もして、自分としてもそういうところをないがしろにしてはいないか、と反省されられた(態度を少し改めることにした)。今回は戦争と無関係に個人レベルのことだけ考えてしまったが、そこがこの物語の持つ力ということだ。 完全版とはいえ全面肯定でもないので満点にはしないが、ちなみにコミックレビューの方は10点にしてあるので、それが本来の点数である。
[ブルーレイ(邦画)] 9点(2021-01-02 10:26:08)(良:1票)
7.  コンテイジョン 《ネタバレ》 
何となく始まって何となく終わってしまう映画だった。別にハリウッド的大活劇を期待したわけではないので悪くはないが、正直言って退屈だった。 大筋としては現実味のある展開だったが、現時点で世界的に起きている感染拡大よりさらに深刻な事態ではあったらしい。略奪や暴動が起きるのはアメリカでは普通のこととして、日本人の感覚で完全に予想外だったのは、看護師の組合がストライキをするということだった。また対策に当たる公的機関としては、もはや日本人にも馴染みになったCDCとWHOが出ていたが、うちWHOが製薬会社と癒着していると誹謗されていたのは結局デマだった?ようで、やはり信頼できる国際機関がないと困るということだ。 ほか細かい点としては、妻と話せるかと夫が尋ねた場面は“実感がわかない”ことの表現としてユニークだった(あるいは気が動転して初めから話を聞いていなかったとか?)。また登場人物では、CDCでサルの身代わりになった人が見せた穏やかで愛嬌のある顔が好きだ。父親にとってはさぞ可愛い娘だったろう。  ところで一般庶民のする感染症対策としては、人との接触を避ける、握手しない、病気なら家にいる、頻繁に手を洗うといった常識的なことが語られていた程度だったが、ほかに重要だったのは「テレビやネットの噂」を信じて不安を募らせるなという点かも知れない。利己的な動機で人々の不安を煽る連中はどこにでもいて、やがて死滅するわけでもなく社会に巣食ったまま、ウイルスのように生き延びていくというのが一つの問題提起だったように思われる。 現在の日本でも、情報発信者にどういう思惑があるか(誰の得か)を想像しながら聞くのは必須と思わされる状況だが、加えて、どうもメディアが触れようとしない/逸らす部分があるらしいのは困ったことである。しかしとりあえず一般庶民の立場では、それぞれが感染しない・させない行動を習慣化して、災害だけでなく感染症にも強い社会を作っていくのが大事と思うしかない。日本人にはその素質が備わっている(ブタの血のついた手を服で拭いてから人と握手する調理師は日本にはいない)。その上で、弘化三年に肥後の海辺に出現したという「アマビエ」の絵でも見て和んでいるのがいい。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2020-03-23 20:29:03)(良:1票)
8.  コープスパーティー Book of Shadows 《ネタバレ》 
前回の時点で続編は見ないと宣言しておいてから結局見るのは阿呆というしかない。 内容的には前回の延長戦のようで、仲間を助けに行く話なら少しは人道的になるかと思ったが、死ぬ人間は死ぬと早々に宣告されてしまうのでは来た意味もない。新登場の猟奇殺人者は前回の用務員に相当するものとして、ほかにいわゆるピノコとか魔導書のようなのを動員して無理に話を盛ったようだが、それにしても最後の締めがありきたりで意外性も何も感じない。ちなみにエンドロールの後にも何もない。 友情とか愛情とか「強くなりたい」とか一応の人間ドラマを作ったようでもあるが、どうせ惨殺されて観客を喜ばすためのキャラクターが何をやっても茶番でしかなく、逆にそういう人の心をせせら笑って踏みにじるのが目的に見える。中学生向け映画にまともに物言うのも大人気ないが、もし騒乱や災害などで社会秩序が失われる事態になった場合、劇中の猟奇殺人者のような連中(中高生)がそこら中に湧いて出るだろうから、何より治安維持が最重要だという社会的メッセージを勝手に読み取った。 なお今回もS県A市が撮影協力しているが、この手の俗悪映画で名前を売って観光推進とは恐れ入る(※個人の感想)。「みんな!エスパーだよ!」(2015)くらいならまだしも笑って済ませられたが。  ほかキャストに関して、前田希美さんは引き続きこの人ならではの役を務めているが、その姉役で出た石森虹花(欅坂46)という人が、妹役よりも年下で童顔というのはどういうキャスティングなのか。演者の年齢では前田希美(93)>生駒里奈(95)>石森虹花(97)のはずで、今回最も変だと思ったのはここだった。
[DVD(邦画)] 2点(2020-01-04 09:29:37)
9.  獄門島(2016)<TVM> 《ネタバレ》 
NHK BSプレミアムで放送されたドラマである。冒頭の場面で、これは今までと違う金田一耕助だといきなり宣言したように見える。 ただしその後は意外にも、復員放送とか靴の傷といった原作の要素を細かく拾いながら、ミステリー部分を中心に手際よくまとめたドラマになっている。映像面で美的に感じられる場面も多く、これはこれで悪くないのではと思っていた。 しかし終盤に至るとまた意外にも、それまでおとなしくしていた制作側が態度を一変させたかのように見える。金田一と和尚の対決場面では、原作にある要素をちゃんと使いながら、刺激を何倍にも増幅させて痛快感と説得力を出しており、ここは正直圧倒された。金田一本人が気○がいのように笑うのにつられてこっちも爆笑してしまった。 またここで見せた金田一の隠れた側面が、ラストで出た戦争についての述懐にもつながっていたように思われる。全てを掴み切れた気はしないが、人命の空しさに関わる虚無感のようなものがあったようで、戦争体験が金田一の人物像に大きく影を落としていたらしいのは前の映画にもない独自の趣向に見えた。 原作自体があまり面白い話と思っていなかったので事前の期待との差が著しい。旧作映画のファンには受け入れられない面もあるかも知れないが、何のこだわりもない立場としては、これが原作付きドラマの鑑だと断言してやる。 ちなみに早苗さんへの思いを込めた場面もちゃんとあって切ない。  以下は個別事項として、登場人物では警部が有能そうで威厳のある立派な人で、この人物との関係性が金田一の真価を際立たせている。また鵜飼という男が、最後には金田一の戦友のように見えていたのは意外で面白い。ほか完全に捨象されていたのが「勝野」の存在で、1977年版で都合よく使われたのであえて外したとも取れるが、逆にいえばいなくてもいい人物だったということである(ネコは出ていた)。 キャストについて、仲里依紗嬢は個性的過ぎるので早苗さん役としてはどうかと思ったが、実際見れば可憐で健気な姿を見せており、この人の少女時代を少し思い出した。ほか熟女系の人々は今回あまり目立っておらず、代わりに三人娘が見どころともいえるが出演時間が短い。吉田まどかさん(花子)はまだしも最初の場面でものすごく可愛い顔を見せていたが(死に顔も結構かわいい)、秋月成美さん(雪枝)などどこがこの人なのか全くわからない有様だった。 最後に撮影場所に関しては、どうも瀬戸内海にしては海が広く、また山がちな小島にしては網元屋敷など広々として平たい場所に見える。祈祷師の言った「山が割れ…」の表現ということなのか「道遊の割戸」も映っていたが、見たことのある者からすれば原作と全然違う場所なのが明白であり(佐渡市相川銀山町)、要はエンドクレジットに出ていた佐渡と柏崎で撮影していたわけである。最初と最後で島のように見えていたのは小佐渡山地の北端あたりかと想像しておく。
[DVD(邦画)] 8点(2019-11-23 13:58:39)
10.  黒蝶の秘密 《ネタバレ》 
低予算映画と思われる。題名に「黒蝶」とあるのは昆虫ではなく花のダリアの品種名だそうで、英題のBlack Dahliaと同じ意味らしい。 映画紹介では「ミステリーホラー」とされているがミステリーというほどのものとは思えない。序盤20分くらいのところでもう真相を匂わされるので、本当にそうだとすればかなり陳腐で俗悪な話だと思っていると実際その通りに終わってしまう。またホラーとして見た場合、よくあるヒトコワ系オムニバスの一編を87分に拡張しただけに見えるが、その手のものによくあるように、悲惨な結末にすることだけ考えて現実味や説得力や細部の作り込みを軽視しているのは観客に甘えた印象がある。ちなみに終盤、主人公が錯乱して荒い息の状態が延々と続くのは同じ監督の「デスブログ 劇場版」(2014)にもあり、特に褒める気にはならないが役者の関係で前回よりましになっている。 登場人物としては、主演俳優も見たことがあるがそれはそれとして、実質的には黒ヒロインと白ヒロインの2人が注目のしどころと思われる。個人的には白ヒロインの同僚女子が普通に可愛く見えていたあたりが好きだったので、主人公がいつの間にか黒ヒロインの方に惚れてしまった理由が不明で阿呆に見えたが、しかしここは設定上、「黒蝶」のせいで黒い女の虜になってしまったと理解すべきことらしい。あまり緻密な感じのしない映画でも、その程度の理屈は一応つけていたということである。 それにしても、実際どのくらいの本気度で作ったのかよくわからずに困惑させられる映画ではあった。個人的な相対評価としては、同じく永尾まりや嬢(まりやぎ、元AKB48)の出ている「リアル人狼ゲーム 戦慄のクラッシュ・ルーム」(2014)と同程度ということにしておく。実際は2.5点くらいだが四捨五入ということで。
[インターネット(邦画)] 3点(2019-08-03 08:29:22)
11.  GODZILLA 星を喰う者 《ネタバレ》 
前の2つを見たので一応最後も見たが、延々と宗教談義を聞かされるのであくびが出た。ちなみに劇中の鱗粉少女は人間でいえば中高生くらいに見えるが、客人(まれびと)から子種を採取するなどという風習に何歳頃から従事させられていたのかと呆れる。また生物学者の実況中継は昭和29年のアナウンサーのようでもある。  自分としては主人公の立場がどうなるのかを主に見ていたが、かろうじて終盤の吐露(「獣と一緒だ」)を聞いて、この人物の悲痛な思いを感じ取らなければならない気にはさせられた。カルトの英雄として祀り上げられるのは拒否したが、結局は地球の現実に裏切られて自滅した英雄未満の男の末路ということか。 少なくとも第1部の時点では、「人間としての最低限の誇り」を訴えて人類の存続を図ろうとするのが主人公の意図だったはずだが、最終的には単に個人的なプライドと私怨で勝ち負けを争っただけに見えている。実際そういう面もなくはなかっただろうが、失敗したことでマイナス面ばかりが際立ってしまう理不尽な状態の表現に見えなくはない。この主人公の物語として見た場合、他の例でいえばチャイコフスキーの交響曲第6番の終楽章に似た印象といえなくはないが、それにしても三部作の最初が頂点でその後は低落するばかりという構成には疑問を感じる。  またその一方、この映画から専ら感じられるのは<滅びたくなければ原始時代に返るしかない><人間は余計なプライドを持たずひたすら生殖に励むのが分相応で幸せだ>といった時代がかった悲観主義である。人類の未来がどうなるかなど実際なってみなければわからないものを、自分だけ高次元から見下ろしたように手前勝手に決めつける態度は気に食わない。人類も生物であるから生存が基盤になるのは言うまでもないことだが、それだけではないから人間なのだという主人公の思いをあえて踏みにじるのが制作側の方針なのか。 昭和29年の第1作は人類の存続を願うからこその警鐘であり、また邦画最後の「シン・ゴジラ」は、不安が絶えず先行きの見えない現代でも「まだやれる」との励ましが込められていたと思うが、人類全体の未来を個人的趣味で封じていい気になっているこの映画を、そのような先行作と同列に扱う気には全くならない。壮大なスケールの三部作の割に社会に向けてまともなメッセージを発するでもなく、作り手の一方的な自己表現にしかなっていない独りよがりで傲慢なアニメだった。期待して損した。
[ブルーレイ(邦画)] 3点(2019-06-29 12:57:18)
12.  ごっこ 《ネタバレ》 
出演者のせいでお蔵入りになりかけたのを何とか公開にこぎつけた映画とのことで見たが、宣伝で「最高に泣ける」などと書いてあると要はそれが目的なわけかとかえって印象が悪くなる。ちなみに場所設定としては大阪ということになっているが(大阪市平野区と枚方市)、撮影は群馬県前橋市(千代田町の弁天通商店街)が中心だったのは制作上の事情だろうが少し意外感がある。  主人公の境遇について、孤立的で引きこもり体質というところまでは自分も同じだが、それだけで全面的に共感できるわけでもない。 自分を犠牲にして子どもを助けようとしたのは結構だが、その根底には犯罪で捕まれば自活不要という発想があったはずで、同時に育児放棄という面もあるのでそれほど褒められるものではない。またカレー屋の母親はいいとして(よくはないが)その娘までを結果的に捨て石にしたのはどうなのかということもあるが、これはそれほどまでに自分のところの子をかけがえのない存在と思っていたことの表現か。自分はどうせ駄目だがこの子だけはというつもりで、可能な限りの方法で最も大事なものを守り通したということではあるらしい。 最後の場面は、自分など他人にとっては無に等しい人間だと思っていたところ、実は誰かにとって大きな存在だったことを知らされた時の驚きと困惑と感激ということならわからなくはない。結果として「万引き家族」(2018)などよりは素直に心に響く映画だった。  出演者の関係では、主役の顔と子役の顔がとにかく心に残る。主役についてはラストの強烈に変な顔が目立つが、ほか個人的には普段の顔と、保育園で子役に笑いかけた顔のギャップが印象的だった。また子役の平尾菜々花という人は、別のところで見たときは躁状態でやかましくしゃべる女児だったが(“ここさけ”とNHKの土曜ドラマ)、今回は全くイメージの違う役をきっちりこなしている(目力あり、演技力あり)。優香はミニスカでないポリス役で今回少し色気を抑えていた。 そのほか商店街のおばさん役で鴨鈴女(かも すずめ)という役者が出ており、端役ではあるが顔を知っているのでどうしても目についてしまう。この人も本物の大阪人である。  追記:見たあと原作を読むと、かなりまともにきっちり万人向け映画としてまとめたことがわかる。主人公の人物像がかなり違うが、結末まで含めて現実寄りの映画にするなら最初からこれで正解と思われる。
[DVD(邦画)] 6点(2019-06-14 19:51:35)
13.  恋とオンチの方程式 《ネタバレ》 
香川県さぬき市のご当地映画である。2002年に5町が合併してできた比較的新しい市だが、その中でも旧津田町の海辺にある「津田の松原」が重要ポイント扱いになっている。また「讃岐うどんバーガー」というのも最寄りのサービスエリアで提供されているものらしい。それ以外の場所としては「志度音楽ホール」(旧志度町)というのも使っていた。 監督は香川県の銀行に勤務しながら映画を撮っている香西志帆という人で、この映画は監督第2作ということになると思うが、今回は本広克行氏(香川県丸亀市出身)が関わっているせいか、第1作よりキャストに名の知れた人が多くなっている。また前回は「脚本と監督と撮影と編集」を一人でやっていたが、今回は撮影を別人が担当している。  内容的には「コミカルでキュートなほんわかラブコメ」だそうで、少女マンガ的というかドジな主人公と男2人の三角関係の構図の中に、主人公が生来のオンチ(の前にリズムンチ)を克服する成長ドラマを加えている。男女の物理的なからみが全くない清純派ラブコメなので子どもに見せても全く支障ない。またコメディ色も強いがアホすぎて大笑いというより失笑レベルだが、失笑続きだったので全体的には結構笑ったかも知れない(音響会社の高橋という男が目立っている)。 最終的にどうなるかはほとんど想像がつくわけだが、それまでの途中経過は尋常でない。バスガイドの話かと思うと突然ご当地アイドルの話に移行するので世界観が覆ったような印象があり、また登場人物に関係するサプライズ要素が2つもあって、それで素直に驚かされるというより呆れてしまう。特に終盤は何か食い違ったような展開で、ここは大物歌手の登場をうまく取り込めていないのではという気もしたが、そのせいで最後まで予断を許さない映画だったとはいえる。ただラストの締め方だけは正直呆れた(この顔を見せて終わりなのか)。個人的には「中学三年生」(1973)というのを聞きたかったが。  そういうことで変な映画を見てしまったという思いは残ったが、娯楽と割り切ればそれほど問題ない。見どころかが何かは何とも言えないが、「キュートな」部分といえば40代(1)、30代(1)、20代(2)の女子4人によるアイドルステージということになる。吉田羊さんかわいい!とか言ってみたくなるが、本心では大塚千弘という人が一番可愛いと思った。
[DVD(邦画)] 5点(2019-05-11 11:16:16)
14.  GODZILLA 決戦機動増殖都市 《ネタバレ》 
新作が公開されている時点でやっと前作を見ているのは毎度のことだが、どうせそういう周回遅れの人生だと思って納得するしかない。 前回は主人公の心意気に感じたわけだが、今回は序盤からしていきなり意気消沈させられる。2万年経って、それなりのものが出来上がっているところへ来てみなぶち壊しにするのは本当に正しいのかなどと本人が問うのでは見ている側も困ってしまう。また個人的に期待を寄せていたユウコさんについては、「教えてもらった」というところで少しキュンとして、それから夜景デートで胸をアピール(大きすぎだ)していたあたりまではいいとして、その後は私怨ならぬ嫉妬で心が揺れていたのか、ごつい宇宙人に味方した上に最後はあんな感じになってしまったのは大変遺憾である。主人公が最後まで人の情を失わなかったのはいいにしても、もう次は宗教に頼るしかないのかという敗北感が残る。 怪獣映画としてもわりと単調で、前回とのスケール差がわからないので似たようなことをやっているとしか見えず、せっかくのメカゴジラも新作の人型兵器も大して役に立っていなかった。映像面でも、終わってからもう一度見直したくなる場面がなかったのは残念だ。 まだ2作目なので次を待てということだろうが、ここまで気分が落ち込んでしまっては期待感を維持するのも難しい。期待しなければ落胆もないというのが正しいだろうが、とりあえず今回は昭和ゴジラ並みの点数まで落としておく。
[ブルーレイ(邦画)] 5点(2018-11-20 19:37:49)
15.  恋につきもの 《ネタバレ》 
東京芸大大学院映像研究科の卒業制作とのことで、監督3人が同じ作家のマンガを原作にしたオムニバスになっている。以下[ ]内は点数。  「いばらのばら」 もう少しまともに作ってもらいたい。石はもっとキラキラしていなければならないだろうし紙袋も唐突で、映像に出しておきながら意味不明のまま放置というのは最悪だ。見ている間じゅう原作はどうなっているのか気になって仕方なかった。最後に出たのはサボテンの花か(題名からすると違うだろうが)。[2] 「豆腐の家」 中盤まではかなり怖かったが種明かししてから少し気が抜けた。しかし最後まで少し心に痛みが残る(やはりちゃんと食べた方がいい)。勤め先の対応が良心的なので安心したが、これで本人も若干前に進むことができたと思っていいのかどうか。なお主演女優(谷口蘭)はモデルが本業だそうだがかなりいい雰囲気で、特に泣き声が印象的だった。[6] 「恋につきもの」 心霊ラブストーリー。主演女優(趣里)は水谷豊・伊藤蘭夫妻の娘とのことで個性的な風貌に目を引かれる。この人をずっと見ていたかったが途中であまり顔が出なくなるのは残念だ(男の役者が代わる)。話としては最もストレートで娯楽性が高いが、最後の一言はわざわざ言うほどのことかという感じだった。[6]  以上、最初のだけは呆れたがほかは見られるものになっており、映画独自の雰囲気も出している。(性的な)マイノリティというところが共通のようで、その点で共感できるところはあまりないが、共感できなければ見られないということもない。なお「絶叫学級」(2013)で印象に残る松本花奈という人が出ているが、この映画ではどちらかというと普通に(普通でない)美少女に見える。そのほか最近有名な伊藤沙莉という人も出ているが役として面白くない(前記)。
[DVD(邦画)] 5点(2018-08-11 17:12:38)
16.  恋谷橋 《ネタバレ》 
鳥取県の三朝(みささ)温泉のご当地映画である。島根県の映画は見たことがあるが鳥取県のは初めて見た(というのは間違いで「妖怪大戦争」(2005)は見たことがある)。 題名を見ただけだと「恋空」(2007)とか「君の名は」(1953)とか演歌のカラオケ映像とかを思わせて引いてしまうが、これは現地に実際にある橋だそうで仕方ない。その恋谷橋も映っていなくはないようだが、一番出るのは主人公の実家と温泉本通りの間を結ぶ「三朝橋」で、次が足湯のある「かじか橋」なので題名とはずれがある。 映像的には結構風情があって賑わいもある温泉街のように映っており、ご当地映画らしく見所とか名物も積極的に紹介しているようだが(なぜか「ヌード」が目立つ)、足湯などはいいとして、ちょっとそこまでという感じでいきなり砂丘というのは行きすぎだったかも知れない。なお「山陰KAMIあかり」というのは隣の倉吉市で実際にやっているイベントのようで、劇中でも因州和紙というのが出ていたのでここは因幡でなく伯耆ではないかと思ったが、その点は地元でもあまりこだわりはないらしい。  物語としてはいわゆるメロドラマでもなくさらりとした感じにできており、地方の若い人々に対して一度出てからまた戻れというような、現代の情勢からしてあまり無理のない話になっている(出る気がなくても無理に出していた)。町のためにではなく「自分のために」と言っていたのも人間の行動原理の基本を押さえている。 少し気に入らなかったのは、せっかく若い連中が始めたイベントを喧嘩でぶち壊しにしてしまったことである。その後のストーリー展開につながるのはわかるにしても、見る側としては初回のイベントなので成功してもらいたい/一般のお客を落胆させたくない、という思いがあったわけで、ここは観客の気持ちを無視して制作上の都合を通してしまったように見える(一応のフォローはしていたようだが)。 もう一つ、これは絶対悪いといえるかわからないが、「河原風呂」という周囲から丸見えのような感じの露天風呂で、真昼間に女児と男児が素っ裸で入浴(混浴)している場面があり、子どもとはいえ今どきこんな撮影をしていいのかと動揺してしまって、その場面で出た開湯の由来譚が頭に入らなかった。見ている側が気にしなければそれまでだろうが。 だいたい以上のような感想だが、特に主演女優に思い入れがあるわけでもないので点数はほどほどにしておく。
[DVD(邦画)] 4点(2018-08-11 17:12:36)
17.  GODZILLA 怪獣惑星 《ネタバレ》 
最初に出たのが(よりによって)カマキラスで、次がドゴラだったのは大笑いかつ大感動だった。これはオールドファンを笑い泣きさせるための映画なのか。ちなみに熱核攻撃の場所がアメリカだったのは「シン・ゴジラ」(2016)の被虐嗜好と一線を画している。  内容的にはかなりSFっぽい話で個人的には結構好きだ。序盤は明らかに説明不足だが、恐らく細かい設定ができているのだろうと推定の上でまあいいかと自主的に納得した。それより主人公の提案した作戦が「論外だ」と言われた直後、何の説明もなく提案通りに動き始めていたあたりは迅速で小気味いい展開である。後半に入っても話が聞き取れずに理解度がいま一つだったが、とりあえずこんな感じのことをやっている、という程度の認識で見ても最終的に問題なかった。 映像面でも特に不満はなく、個人的には主人公の両親の乗った車列の動きといった細かいところに感心する。乗り物の噴射がみなピンクだったのは地味な色調の背景に映えていた。また音響面でも結構な迫力を出しており、序盤で発進途中の揚陸艇が攻撃された場面では、腹に響く大音響でビビってしまって見ていた側も絶望感に襲われたが、こういうのも絶望的に強大な破壊者としてのゴジラの表現につながっている。最後に現れた本家ゴジラの咆哮が、まぎれもなく本家のものだったのは慄然とした。 そのほか何より自分が感じ入ったのは、主人公が戦う動機が「人としての尊厳を取り戻すため」だったことである。これは長年続いた惨めな状況に加え、年長の人々が空しく死んでいった事件が強く影響していたと取れる。攻撃前の演説で「かつてこの星に栄えた先人たちのように」という言葉があったが、この主人公ほど誇り高い人類は現代日本などにいるはずもなく、ここは「買いかぶられたもんだな」という台詞を返してやりたくなった。 ちなみに演説で「挨拶は抜き」と言っていたのは、階級が上の人々を差し置いて自分が指揮するなどまことに僭越ではあるがご指名なので務めさせていただく、といった感じのことを省略したのだと思われる。  以上、評判が悪いようなので実は期待していなかったが、結果としてはかつて粗製濫造された怪獣特撮などとは比較にならない出来に思われた。次回にそれほど期待するわけでもないがとりあえず少しいい点を付けておく…すでに二作目が公開中なわけだが見られないのが情けない。 なお今後ともユウコさんの活躍には期待したい(終盤で、先輩!と言って抱きついたのかと思ったが見せなかった)。  [2019/6/29変更] 最初は8点だったが、第3部まで全部見た結果として少し減点する(三部作の平均を5点にする)。 なおこの第1部で主人公が「人間としての最低限の誇り」と言っていたのは、人間関係や病気など、何らかの理由でそれが失われた場合は自死を選ぶしかなくなるという、人間の生存にとって不可欠なものを指しており、その考え方を個人から種全体に拡大適用することで人類の存続を訴えたのだと理解した。プライドという言葉が嫌われる現代日本で、その存在をあえて指摘してみせたのは感動的だとこの時点では思っていた。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-06-24 12:56:26)
18.  こころに剣士を 《ネタバレ》 
戦後にエストニアでフェンシングの指導をした人物の伝記物語のようなもので、年代は終盤の大会の時点で1953/2/25とされている。 フィンランドとエストニアの合作とのことで、監督はフィンランド人だが出演者は基本的にエストニア人らしい。言葉も基本的にはエストニア語で、ロシア人と話すときはロシア語だったように聞こえる。ちなみに言葉が何か聞き取れないかと頑張って聞いていたが、かろうじて“isa”というのがわかった程度だった(フィンランド語が話せればもっとわかるはずだが)。撮影は劇中のハープサルのほか基本的にエストニア国内だったらしい。  映画としては時間が短くシンプルでストレートなお話になっている。特に終盤はかなり都合のいい展開だが、実在の人物の業績を極端に圧縮するとこうなると思うしかない。物語の表現としてもわりと淡々とした感じで、かえって景観映像の方が雄弁に見えるところもあった。 印象的な場面としては、劇中の女性教員がいわば母親の立場だとすると(長い台詞を一気に吐き出していた)主人公がいわば父親の立場として、子どもらにしっかり伝えるべきものがあるという決意を見せたところだった。またラストの駅の場面では、主人公と女性教員を中心とした大きな家族ができていたように見えて和む。 登場人物では主人公の風貌やたたずまいが好印象だった。また補欠の少女の面構えが非常に良好で、基本的に我の強い頑固者のようでいながらいざとなると怖気づいていたのが可笑しい。これが極端に都合のいい展開の中でのささやかな波乱要因になっていた。  ほか余談になるが、屋台で物売りしていたおばちゃんのような人物はなぜかロシア語だったようで、庶民レベルでロシアの影響が浸透していたことの反映かと思われる(現在もロシア人はエストニアに多く住んでいる)。 また主人公の学校が「第2中学」だったのに対してレニングラードが「第148中学」、モスクワが「第117中学」だったのは圧倒的な人口規模の差を示していたようである。最後にうなだれていた少年には悪いが、小国エストニアの小都市ハープサルの弱小チームが大モスクワを下したのは正直痛快だった。ちなみに会場で用具を貸してくれたのは、エストニアとは別の連邦構成共和国であるアルメニアの代表だったようで、ハープサルの勝利を一緒に喜んでくれていた。
[DVD(字幕)] 6点(2018-05-12 10:56:05)
19.  恋と嘘 《ネタバレ》 
原作とアニメは見ていない。もともと少年マンガか少女マンガか判断がつきにくいものらしいが、少なくともこの映画はまるきり少女マンガ原作風で、見るのにかなりの忍耐を強いられる。主な対象層の人々はどう思うかわからないが、個人的には主人公の言動がいちいち気に障り、嘘を表現するわかりやすいサインとか、同性の級友が登場するタイミングまでもが苛立たしく見える。 主演の森川葵という人は本来何でもありの役者と思っていたが、この映画に関しては単に役をこなしているだけのようで面白味が全くない(可愛くも見えない)。いくら演技派若手女優でも、さすがに合う/合わないということはあるのではという気がして来た。脇役だった「先生!…」(2017)の方がよほどこの女優を生かしていた気がする。  かろうじて出発ロビーの場面だけは少し心に訴えるものがあり、ここではヒロインもおバカな女子高生という縛りを外して普通に恋する女性になったように見える。そこから外国のような場所に飛んで、あとはどうなったのかわからないがとりあえず幸せだったというのなら、もう突っ込む余地もなく、それなりのハッピーエンドとして受け取れたところである。 しかしエンドロール後の追加部分がまたよくわからない。選ぶのが下手なヒロインにここで改めて選択を迫ることで、観客にも同じ問いを投げかけようとする意図かも知れないが、それにしても結局2人とも食べちゃいました、という方向へ持っていきそうな感じで釈然としない。誰を喜ばせるための映画か不明だが、とりあえず男は見なくていいとはいえそうである。  ちなみに全くどうでもいいことだが余談として、宣伝上は「恋愛禁止の世界」と書いてあるにもかかわらず、実際は強制ではなく実質的な不利益を被るだけであるから割と現実味のある制度であり、少女マンガ原作風映画にふさわしいソフトな設定といえる。劇中で厚生労働省の役人が責任逃れしていたのを聞くと、一応は当人同士の意思が優先する建前なのがわかる。 高校生の年齢で早目に結婚させるのは、生涯に産む子どもの数を増やす目的だと思われるが、それが経済的な活力の低下に結びつくことはないのかというのが率直な疑問である。しかし社会的な貢献度の高そうな男とそうでない女を組み合わせて、どうせろくに働かないであろう女にはできるだけ多くの子どもを作らせるという意図なら、なかなか考えた制度なのかも知れない。
[DVD(邦画)] 3点(2018-04-21 14:28:16)
20.  コドモ警察 《ネタバレ》 
amazonで視聴、TVドラマの方は見ていない。 この監督の映画に共通のことらしいが、自分としては最初から最後まで大笑いというわけでもなく、微妙にニヤニヤしながら見ていて時々大笑いする場面があるという感じである。この映画では、新聞をたたんでから茶をぶちまけたところは笑った。 刑事ドラマとしては特にどうということもなく、要は年齢のギャップが可笑しいだけである。特にギャップが目立つのがデカ長だろうが、これで石原裕次郎なのか渡哲也なのかはわからない。最年長の刑事は役者も年上でベテランの風格が出ているが、劇中人物としては慎重すぎて詰めが甘くなるのが弱点ということらしい。また女刑事はあまりに美形すぎて笑ってしまった(惚れた)。さすが同級生の児童からも一目置かれていたようである。 そのほか新人刑事を含めて、最後はレギュラーメンバーにけっこう愛着がわいて来る作りだったので、TVシリーズの方はさぞ人気が出ていたのだろうと思っておく。
[インターネット(邦画)] 6点(2017-12-01 19:28:30)
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