Menu
 > レビュワー
 > なんのかんの さんの口コミ一覧。2ページ目
なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2336
性別

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234
投稿日付順1234
変更日付順1234
>> カレンダー表示
>> 通常表示
21.  インビクタス/負けざる者たち
ここんとこ異人種間の摩擦をしばしばテーマにしてきた監督だから、南アを描くのは不思議でないし、孤軍奮闘する男の話という点でも間違いなくイーストウッド映画のはずなのだが、この質感のあまりの違いは何なんだろう。底にあるのは「スポ根もの」で、終盤、白人黒人のボディーガードが手を取って喜び合う「反撥→和解もの」定番カットがあったりすると、これじゃあまるでハリウッド映画じゃないか、とつい思ってしまい、そうだハリウッド映画だったんだ、と愕然とした。ゴミ拾いの少年と警官が勝利を喜びあうとこ。この少年の、パトカーからのラジオを聞かんがためにうろうろゆっくりゴミ拾いをしているあたりのおかしみ。おもしろいんだけど、でもイーストウッド映画だぜ、これ、とつい補注を付けながら見てしまう。なにしろ死人が出ない。いつもの悲痛さに収斂していくドラマじゃなく、こちらがオロオロしてしまうくらい素直で明るい。しかしその単純明朗を皮肉に冷笑する気分はちっとも生まれず、こちらも素直に観られたのは、題材が一番冷笑と無縁なスポーツだからか。根っからのイーストウッドファンには物足りなかったかもしれないが、私はこの楽しんでハリウッド定番をやってるような彼を、驚きながらもけっこう嬉しく見た。いいじゃない。政治の介入から独立したスポーツの輝き、でなく、政治の道具を自覚したスポーツの・それゆえの輝き、ってテーマも面白い。ヒゲのテレビキャスターがいい味。
[DVD(字幕)] 7点(2011-03-05 12:21:01)
22.  イレイザーヘッド
こういう悪夢ものってのは、非日常の世界に拉致されてそして日常の世界に戻ってきてヤレヤレってなるのが多いと思うんだけど、これ逆ね。日常のほうが悪夢なの。そしてラストで非日常の側に身を投げ出していってしまう。生活・暮らしそのものが悪夢だって言うんだよね。子どもに代表される鬱陶しさ。夜泣き・保護の義務、生活するってことはなんて鬱陶しいことなんだろう、というイメージを繰り返し見せつけてくる。子どもは積極的には主人公を攻めない、ただ弱々しく泣き続けるだけ、これがポイント。『エレファント・マン』でも舞台のイメージを重視していたけど、ここでも理想郷をそれで表現している。非生活の理想郷としての舞台。それと音響効果。スチームの音とか、遠くの工場の音とか、雑音がざわついている。妻がまぶたをグリグリやる音まで聞こえてくる。それとヌルヌルドロドロのイメージ。変な太ったヒルみたいのがピルンピルン動いていく。この人も好きですねえ。首から消しゴムなんて、どういう発想してるのか。コナをさっと払うとこがなんとも残酷・酷薄な感じ。全編を覆ううんざり感はハンパでなかった。D・リンチは日本ではまず『エレファント・マン』のヒューマンな監督として登場したのだが、次にこの処女作が紹介され、すぐに誤解が解けたのだった。
[映画館(字幕)] 7点(2011-02-22 10:16:18)
23.  刺青一代 《ネタバレ》 
河津清三郎邸の平気でリアリズム離れするすごさ。弟が殺されるところの花道的な使い方。長廊下。横移動。斬り込みシーン。雷に映る障子の影。延々と続く襖。待ち構える槍の列。奥の黄色い光。一人ずつ対戦するのも美しさのため。河津がいる部屋も、何か半階上にある抽象的な世界でググッと左に移動して影に入ったりまた戻ったり、と突如真下から見上げるの、エイッと突くとパタッと外は篠突く雨、…まあ見事でした。これ途中でちょっとでも休んじゃダメね、こちらにどうこう客観的に醒めた目で見る時間を与えない。ひとつひとつの安っぽさを塗り重ねていくことで、なんだか知らないけど異様な「たしかな手応え」を生んでしまっている。あと思い出すままに挙げると、野呂圭介が屋根で寝てるとこ、高品格とのけんか、船のあたりでの人の見え隠れとか、ラストの花札パラパラとか。話はけっこう定型踏んでるの。カタギの弟のためだったり、自分はやくざもんだからと和泉雅子の愛を振り切ったり、山内明が逃がしてくれるあたりの男と男の意気など、ごく普通の定型の物語なのに、それを全然定型でない映画に仕立ててしまっている。
[映画館(邦画)] 7点(2011-02-20 11:06:25)(良:1票)
24.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 
ナチと連合軍の争いを描いたハリウッド映画で、「正義」のイデオロギーがまったく感じられないのは珍しい。狂気と復讐の殺戮のみが展開していく。レジスタンスはあっさり密告し、仲間を裏切らないナチはバットであっさり撲殺される。今までのドラマだと助かる立場の人、子どもが生まれた兵や心の呵責を覚える狙撃兵も、仲間を裏切らなかったナチと同じく猶予されない。この「あっさり」感が、この人の持ち味(かつてのタランティーノだと、ブラピも中盤であっさり死ぬ筈なんだけど)。善悪を判断する余地がない狂騒の場に観客は拉致される。多言語が行き交うのも、その善悪が渾然としている状況にふさわしい。言葉のなまりや、映画が通じないことなどが、次に続く殺戮のステップになっている。とりわけいいのは、地下酒場のシーン、ここにこの監督のエッセンスが詰まっていた。作られた笑顔の中でじわじわと高まっていく緊張、殺意と殺意とが寄りかかって固まっている状況。このキングコングを当てるナチ役の俳優もよかった、この映画でおそらくユダヤ・ハンターの次に記憶に残る、笑顔の不気味な二人だろう。ここのところタランティーノ監督、映画中毒者のための映画遊びにのめり込んでいた印象で不満だったんだけど、私でも楽しめる世界へ戻ってきてくれたようだ。
[DVD(字幕)] 7点(2010-08-29 09:45:50)(良:2票)
25.  犬の生活
パントマイム芸が見事。たとえば職安の窓口をすぐ奪われてしまうギャグ。行列の先頭にちゃんと立っていたのに、二つの窓口交互にうろついて、ついに締め切られてしまうまで、同じパターンを繰り返すんじゃなくて、ちゃんとそれらしくやっている。それと店先での盗み食いギャグ。これも至芸。もっていった手をわけもなく払うしぐさしたり、後ろ手でつかんだり。もう一つ、悪漢二人の一方を殴っておいて、二人羽織するギャグも傑作。気を戻しかけたとこを、もう一度相棒が見てない隙に殴ったりしてるの。とまあパントマイムの連続で描かれるものは、社会に対する「要領の悪さ」と、逆に「したたかさ」と言うようなもので、マルクス社会学者が見れば「民衆の底力」ってなことになるのだろう。冒頭の要領の悪さで共感させといて、それに活躍させ、ほどほどの成功へ至る。当時の多くの人々にとってリアリティある夢だったのだな。あの「ほどほど」ってのが大事で、あれぐらいの成功なら俺にだってチャンスがあるかも知れない、って気にさせる。夢と現実の連続感を大事にしている。
[映画館(字幕)] 7点(2010-08-23 09:49:02)
26.  愛しのタチアナ
少年や青年にもっともふさわしかるべき心情を、あえて中年に移して楽しむのが、この監督の趣味。そこから生まれる「照れ」とか、それを隠そうとする「ブッキラボー」が味わいになる。人と視線を合わせられない照れくさがりの純愛を、中年が演じる。侘しいことは侘しいんだけど(だって中年だもん)、でもそういう人生を肯定している。ミシンを踏む中年男の、こうでありたかった自分の妄想かもしれないけど。ホテルやカフェの入口・受付のあたりになると、この監督らしい雰囲気が立ち込めてくるのは何なのか。ブッキラボーだからか。客との応対のように人々のドラマが進行して、そのなかで不意にタチアナが寄り添うからいいのか。やや俯きながら画面に入ってくるとことか。フィンランドの「フィン」て、ハンガリーの「ハン」と同じく、フン族の「フン」から来てるそうで、こちら東洋の流れを汲んでるらしい。こういう「侘しさ」にこだわるとこなんか、同根を感じる。原題は「タチアナ、スカーフに気をつけて」か、そっちのほうがいいじゃないか。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-29 11:57:26)
27.  刺青(1966) 《ネタバレ》 
照明が近いので影が大きくなる。また横向きの場合コントラストが強く、正面の場合ノッペリとする。それでなにか非常に「狭い」感じが出てくる。人物も凝縮していく感じ。あんまり大らかな人物は登場しない話だし。「伝奇もの」でもないんだよなあ。女郎蜘蛛を彫られてから女が変化していく、ってんでもなく、その前からそういう感じで演出してた。だからいくら若尾文子が「だました男に復讐してやるんだ」って言っても、口実みたいになっちゃう。それでいいんだろうね。口実なんだよ。魔性の女には違いないけど、それは彫りもののせいなんかじゃなく、女の本質なんだろう。それを映画は怖がってるだけじゃなく、突き放して笑って見ているところがある、もちろんまわりの男たちも含めて。女がそそのかし、男が「またやってしまった…」と青ざめる繰り返しに、何か、夫婦漫才みたいな感じがチョロッとある。
[映画館(邦画)] 7点(2010-05-05 11:57:23)
28.  居酒屋ゆうれい
京浜急行沿線って、なにかいい意味での場末的な雰囲気を残している。消えていく幽霊はなぜ哀れなのか。幽霊ってのがそもそも、死別を自己完結できないとこから来ているわけで、それを何とか納得させたいときに、哀れに消えていく幽霊が必要になってくるのだろう。生き残ったものの後ろめたさ、ってことが底にありそう。舞台が場末ってことがしっくりくるのだ。死別と生別の二人、死別のほうが優しく、生別のほうが冷たい。女同士のほうがなにやら仲良くなっていってしまう。あの世とこの世のけじめが曖昧になる。のりうつったりもする。男にとって、妻も死者も同じものなのだ。演出はあまり奇をてらわないのがよく、鏡の中に座って映る室井滋、時計の振り子越しに夫婦を眺め下ろしたり、転がるビー玉など。トルコの軍楽隊みたいのも聞こえるが、島倉千代子の「愛のさざなみ」が場末感充溢していて嬉しい。くりかえす~、くりかえす~、さざなみ~の、ように~。
[映画館(邦画)] 7点(2010-03-13 11:58:53)
29.  怒りの葡萄 《ネタバレ》 
ラストの決意がちょっと抽象的に跳びすぎていたように思うんだけど、でもパン買うシーンが(実に具体的で)大好きなので、忘れられない映画です。主人公の一家が旅の途中15セントのパンを10セント分だけ売ってくれって言うと、いいよ全部持っていきな、と店主が言う。老人は乞食じゃないんだと反撥するわけ。そこで店主は古いパンだからと「譲歩」するの。と子どもが飴ほしそうにしていて、これ1本1セントかね、って聞くと、パン売るときはしぶしぶそうだった女店員が、2本1セントです、って答えるの。一家が去ったあと別の客が、1本5セントじゃねえかよ、と笑って、釣りはいらねえぜ、と勘定をすませる。店員が金額を見て、まああの人ったら、というように微笑む。人情ドラマの一景として完璧でしょ。山田洋次が『家族』で笠智衆に似たようなエピソードやらせたのは、これへのオマージュなんじゃないかと思ってる。アメリカ映画って、けっこうウエットなところあるんだよね。ペキンパーなんかにも感じるし。そこらへん太平洋をはさんで日本と共通する感性があるみたい。
[映画館(字幕)] 7点(2010-01-05 12:06:18)(良:1票)
30.  いつか晴れた日に
ジェームズ・アイボリーにしろカズオ・イシグロにしろ、けっこうイギリス的な気分てのは非イギリス人によって継承されていて、台湾の監督がジェーン・オースティン撮ったって不思議はあるまい。クラシック音楽の担い手が西欧に限らなくなっているのと同じことだ。でイギリス的とは何ぞやというと、馬車の似合う風景、婚期を逸した娘、大団円の満足感、といったところか。ささやかな不幸とささやかな幸福の家庭劇、分別過多の娘も多感な娘も、それぞれ幸せを得ましたとさ、って。とかく“いいかげん”と見なされがちなハッピーエンドも、“大団円”としか呼べないようなツボにはまる正確さを伴えば、よしよし、と心が満ちる。一度陰った気持ちが曇りなく晴れ渡る。二度目に大佐に抱かれて雨の中を戻ってくる次女、反復の妙。画面の遠くの庭師たち、あるいは働く下僕らの足音など。もひとつハッとする瞬間がほしいという気もするが、そういうことするとレースの手触りのようなトーンの傷になってしまうのかも知れず、エドワードが女性二人を見るとこなども、実に淡々と、笑いを取ろうとしてないのが、かえって好感。イギリス的だ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-06 11:59:49)(良:1票)
31.  イングリッシュ・ペイシェント
メロドラマの背景は非日常でなければならない、それが探検と戦争と二つもそろえば申し分ない。故郷ハンガリーを離れた主人公は、イギリスにもドイツにも帰属できない存在となり、まさに男として愛のみに生きられる絶好のメロドラマポジションを獲得したわけだ。まだ国籍などというものを持たなかった古代人は、砂漠の中でゆらゆらと自由に泳いでいた。これと対になるのは、空中に吊られたビノシュが中世の壁画を眺めるシーンで、空中を泳ぐ彼女の自由さが中世からさらに古代にも通じていく。映画としてはこのシーンが一番優れていた。あとビノシュがケンパケンパケンケンパする音から、砂漠の民の音楽に移っていったりするあたり。やや文学性に寄った映画だったが、大メロドラマを楽しめた。アタマで双葉機が飛んでたので、あれ? 第一次世界大戦か、と思ったら、やっぱり第二次大戦で、北アフリカではそんな感じだったのか。でも第一次大戦が舞台でもいいような古風な味の映画。
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-20 12:03:40)(良:2票)
32.  田舎司祭の日記 《ネタバレ》 
神に祈れなくなった司祭の苦悩なんて、悪いけどどうでもいいです。こういうこと悩んでる人がいるんだ、という興味以上には突っ込めず、また中途半端に分かったつもりになるのも失礼かと思って、それなりに眺めるように鑑賞した。重要な領主夫人との会話の場、信仰論争の凄味は伝わってきて迫力あるんだけど、語られている言葉が頭の中で整理されないうちに次々進んでしまい、やはり私には消化不良気味。でもこの映画は、世間知らずの若者が社会に出て戸惑う、という普遍的な青春ものの面も持っていて、頭でっかちの青年司祭が、領主夫人が抱く現実のナマな苦悩・悲惨に対してはまったく無力で、ぺちゃんこにされちゃう、という話でもあるわけだ。村人たちが向ける冷たい視線、こいつ司祭やってく能力あるのか、と常に量られているような不安感、少女ですらそういう目で見てくる。そういうところはシミジミ迫ってきて、つまりすごく分かるところとすごく分からないところとが、渾然としている映画だった。オートバイの青年(領主の甥なのか)と出会うとこなんか、やっと主人公が明るい顔になったぞとホッとすると、駅に着いてまた神様の話始めちゃうから暗くなっちゃう。ブレッソンとしては『抵抗』や『バルタザール…』みたいに無条件で感動はできなかったが、スタイルはもう完全に出来上がっていて、きっと見る人が見れば傑作なんだと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2008-09-23 12:17:35)(良:1票)
33.  活きる
前時代の没落を一身に体現するような福貴、賭けに没頭し、しかし影絵をやらせるとけっこう器用、実に非生産的な男。賭けごとは阿片と同じで急にやめると体に悪いんだよ、なんて言ってる(寅さんも「急に地道に変わると体に悪いんだよ、徐々に変わるんだよ」って望郷篇で言ってたなあ)。なんかすごく自己を投影しやすいキャラクターだったが、主人公は彼ではなく、前向きに生きる女の方だった。そうだろうな。大躍進時代の金属供出を取り上げたのは、中国映画で私は初めて見た。さらに文革時代と、悪い時代を描いていく。悪い時代とは子が親に先立つ時代ってこと。未来をふさがれる時代。悪い時代を描いても“いかにも”の悪人は出さない。紅衛兵的な女医たちも、いざとなると糾弾していた老先生に救いを求めておろおろする。悪というより未熟さや愚かさを出している。まあけっきょく、昔は悪かったが今は良いってなるんだけど、振り返るだけいいんじゃないか、日本映画が近代史の暗い面を振り返らなくなって久しい。
[映画館(字幕)] 7点(2008-06-20 12:17:59)
34.  インランド・エンパイア
あ~あ、とうとう行っちゃったなあ、って感じ。この人の映画は、意味が無意味に引きずりこまれかけ、意識が無意識に飲みこまれかけ、それでもかろうじて踏んばってる、っていうスリリングな面白さがあったんだけど、ついに無意味・無意識が勝利をおさめたみたい。最初のうちはなんとか意味を取れないことはないの。久しぶりに大役が回ってきた女優の話ということで、女優の卵で描いた『マルホランド・ドライブ』の逆サイドから,ハリウッドの魔を描く、って意図か、とか。でもそうねえ、女たちが出てくるあたりからか、もう無意識が暴走しちゃって、わけ分かんなくなる。ま、あの女たちだって無理すれば、ヒロインを嘲笑する“若さ”って意味を取れないこともないんだけど、あの東欧(ポーランド?)の部分になるとお手上げ。これはどういう意味だろう、って考えること自体が、もう後半は無意味に思えてくる。ただ名所旧跡を観光で回ってる感じに近い。極端な顔のアップが表情の意味をなくし、グロテスクな物質に還元してしまい、かえって無人の部屋のたたずまいに何やら意味が隠され詰まって感じられた。今ここまで好き勝手させてもらえる監督はそうはなく、思えば3時間、私はこのわけの分からなさ、無意味の国の観光ツアーをけっこう楽しませてもらった。
[DVD(字幕)] 7点(2008-05-09 12:18:48)
35.  イノセント・ボイス 12歳の戦場
エルサルバドルの内戦なんて、ほんと海の遠くの戦争で、実感として身近に想像するのが難しいんだけど、学校にどやどや踏み込んできて「徴兵」していく場の生々しさは怖かった。想像上の象徴のシーンと思いたいが、そうではなく国家の本質が記録されたシーンだと納得される、映画全体の手触りとして。徴兵逃れしようと屋根に横たわる子どもたち、青年にふさわしい「徴兵」という言葉と子どもたちのギャップが、つまり屋根で遊ぶにふさわしい子どもたちが屋根に逃げて隠れるそのギャップがこの映画のカナメ。口紅のつけっこをして遊んで銃弾の嵐をしのぐ。偽の戦死者で銭をつかもうとするおじさんもいる。そういう日常なんだということを言いたいのは分かるが、不意のドンパチで驚かすシーンが多すぎる気もした。ガールフレンドがかわいい。
[DVD(字幕)] 6点(2013-10-02 09:01:25)
36.  インド夜想曲
『マリエンバート』などの線、ヌーボーロマンって言うの? 何が真実か分からず途方に暮れるってのが芸術になる。各国語が交わされる。英仏独印ポルトガル。その迷宮感。舞台がインドで、行方不明になるにはうってつけの国だ。静けさが続いて主人公はぼそぼそとつぶやく。ゆっくりゆっくりネジを巻いていく緊張感。病院のゆっくり回る扇風機。山積みのカルテ。なんか『黒いオルフェ』にこんな雰囲気なかったっけ。バスの待合わせの占いのあたりから、ミステリアスな雰囲気が高まってくる。あなたはここにいない、というお告げ。そしてラストへ向けてだんだん「彼」の気配が濃くなっていくあたりが見どころと言えば見どころ。そして語りの中で彼と僕とが逆転し…。たしかにこういう物語の枠組みの中で、ある種の洗練を続けた作品ではありましょう。でもこういう世界に対する切実さがこっちにあんまりないもんだから、こういう「上品な洗練」をもっとナマのインドとぶつけたほうが面白いんじゃないか、と思ってしまうほうの人間なんで、やや猫に小判。ナマのインドから逃げて小さな世界に閉じてしまったもったいなさのほうが来てしまう。ちょっと面白かった発見は、インドって中世ヨーロッパが残ってるってことか。シューベルトの五重奏がいい感じなのは、やっぱり下地はヨーロッパなんだよな。
[映画館(字幕)] 6点(2013-09-08 09:34:37)
37.  EVE/イヴ 《ネタバレ》 
女ターミネーターってな宣伝してたけど、ジキルとハイドだな。自分の抑圧されてた部分がロボットとなって動き出してしまう。兵器がわりのロボットになんでこんな精密さが必要なのか、と思うけど、派手な衣装で酒場で男を誘うの。後半になると子への妄執が前面に出てきて、子を求めてさすらう生霊ってな感じになっていく。一般人をあれだけ死傷してるんだから、自分の子どもが助かったからって、科学者ラストで笑わないでほしい。音楽フィリップ・サルドがちょっといい。リズムに乗って弦が切れ目を入れる大きな三拍子で、パラパラと木琴が入る。そうか、『最後の晩餐』の人か。
[映画館(字幕)] 6点(2013-02-28 09:42:57)
38.  インディアン・ランナー
冒頭の鹿狩りに黒味を挟んでみたり、バスケットボールと音響とで緊張上げていくとことか、なんかやってはいるんだが、全体としてはちょっと退屈したか。この兄は主役に座るようなキャラクターじゃないんだよね。生活すること・家庭を持つことを怖がるアウトローの話で、兄弟愛は副次的なものにするべきだった。ひげのないチャールズ・ブロンソンは別人のよう。悪魔のような役どころデニス・ホッパーは合ってる。少年の弟が出てきてピストルを構えるところを撮りたかったんだろう。父親の自殺を知らせるまで朝刊が来るのを待っている同僚なんかよかった。もっと絞れば佳作にはなったはず。
[映画館(字幕)] 6点(2012-11-15 09:52:53)
39.  インドシナ 《ネタバレ》 
長い連続ドラマの総集編って感じ。気分がつながらないところ、早回しされてしまったような感じがしばしばあった。ヒロインの気持ちの変化なんかゆっくり見せていくような気配を漂わせといて、あっさりナレーションで跳んだりする。ナレーションはうまく流れを作ってくれれば無駄を省くからやってはダメとは思ってないが、この映画の場合リズムを崩してるんだなあ。見せ場がつながっていってくれない。長編小説の醍醐味のひとつは、忘れていた登場人物が再登場するとこで、ドミニク・ブランは後半の思わぬとこで出てきて大活躍するだろう、と期待してたらただの情婦になっただけでガックリ。インドシナと言っても、「インド」はカンボジアまででベトナムは完全に「シナ」ですな。風景、村芝居のシーンなんか驚くほど日本情緒に近い。というわけで歴史を背景にした大メロドラマですが、興味深い人物に欠けてた。この全体ドローンとしたとこが植民地的なのかも知れない。欧米で植民地ものドラマとなると、近代に疲れた人の逃げ場所として描かれることが多かったが、そうでもなかった。退屈はしませんでしたが。
[映画館(字幕)] 6点(2012-02-13 10:24:56)
40.  いとこのビニー 《ネタバレ》 
前半はあんまり乗れなかったけど、裁判が進んでくるとやはり法廷ものの伝統のあるお国柄、けっこう楽しめた。一番のギャグは官選弁護士のアレでしょうな。ネタとしては別にどうってことはないものだけど。いかにも頼りがいのありそうな冷徹なポーズだったのが、いざ本番になるとアガってしどろもどろになるの。で弁護士席に戻って「しぶとい奴だ」とか言うの。南部ってのはコケにされるのね。早朝起こされる繰り返しのあと、留置場のがやがやの中でぐっすり眠っているジョー・ペシ。彼の衣装がだんだん真っ当になるにつれ、弁護の腕も冴えてくる。裁判長ってのはすべてを分かってて見逃すもんじゃないのか。
[映画館(字幕)] 6点(2012-02-12 10:01:15)
000.00%
100.00%
200.00%
320.09%
4331.41%
52279.72%
691439.13%
773931.64%
834314.68%
9682.91%
10100.43%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS