61. 死刑執行人もまた死す
死刑執行人の異名を持つナチスの総統が暗殺された。ゲシュタポによる暗殺者捜しは、事件に関係ないものまで逮捕し拷問するという冷酷さだが、逮捕者を人質として暗殺者が見つかるまで処刑を続けることに大変な戦慄を覚える。映画は中盤までゲシュタポと地下組織の闘いや関係者の動揺や不安心理を描いておもしろい。だが終盤はどうも勧善懲悪の美談の匂いが強すぎて好きになれない。密告者が出るのが真実の姿であり、密告者=悪人という図式はしてほしくなかった。 [DVD(字幕)] 7点(2013-10-11 06:25:11) |
62. 自由を我等に
サイレント映画風のコメディかと思いきや要所で台詞が入るしオペレッタ風にもなる。結局はチャップリンとは違うスパイスのきいたコメディなのだろうか。お金や地位よりも恋愛よりも自由が一番とは・・・。脱獄してからとんとん拍子に社長とはあんまりという気もするが、風刺劇とみれば何のことはない。 [DVD(字幕)] 7点(2013-08-18 19:23:47) |
63. しゃべれども しゃべれども
十河のムスッとした顔が饅頭よりこわかったけど、落語の世界がよくわかっておもしろかった。点数は少々甘いが、村林に免じて7点。 [DVD(邦画)] 7点(2013-03-25 08:58:06) |
64. しとやかな獣
まさに舞台劇風の映画であり、会話のやりとりは演劇そのもの。それを舞台劇の一視点ではなく、あらゆる角度の映像で映し出すことによって映画の利点を最大限に発揮していると思う。新藤兼人の原作脚本と川島雄三の卓越した映画感覚、それに伊藤雄之助を初めとする役者陣が揃ってこそ可能だった映画に違いない。見事と言う他はないが、私にはまだコメントできる能力がない。またブラックユーモアにしても何処がどういう風にまではわからないので、おもしろさだけの点数かも。 [DVD(邦画)] 7点(2013-03-17 16:40:16) |
65. 小説吉田学校
鳩山一郎から岸、池田、佐藤、田中角栄と歴代首相らが次々と出てくるのは当然のことかもしれないが、それらが皆大物スターばかり。いや違ったロッキード事件で有名な田中角栄演じる西郷輝彦は私と同年代の人気歌手で、角栄がこんなにハンサムだったはずあるものかと思いつつ見ていた。しかし何せ大勢の登場人物だから、役者は顔なじみ、政治家も知っている者多数でも、誰が誰だったか混乱してしまう。映画を見る前に配役を確認しておくべきだったとつくづく反省。それに三木武吉と三木武夫が親子だと誤解していたこと、この映画を見るには、戦後史の下調べが必要だ。私が物心ついたときの総理はすでに鳩山一郎であり、政治家吉田茂については教科書で習う知識以外はほとんど知らなかった。自民党の政治家たちが大勢「大磯参り」をしていたことだけは覚えていたが・・・。 [映画館(邦画)] 7点(2013-01-06 19:47:23) |
66. 終着駅
《ネタバレ》 7時の列車から8時30分の発車まで90分、そして映画上映時間が約90分(ただしオリジナル)だからまさにリアルタイムで撮ったものだ。しかし米国版では63分(DVDも)になっていて大幅なカットになっている。気になったので比較してみたが、男宛の手紙を書くシーンや公衆電話で小銭をくれた男のシーンなど細かな部分が少しずつ省略されているようだ。ネオレアリズモや情感を大切にするならカットしてほしくないところだが、セルズニック自身が米国風?に再編集したらしい。そのとき題も"Indiscretion of an American Wife"に変わったわけで、これは「アメリカ人妻の無分別な行為」という意味でありまったくふさわしくないと思う。 [地上波(字幕)] 7点(2013-01-04 10:19:41) |
67. 新諸国物語 笛吹童子 第二部 妖術の闘争
かたや大江山の霧の小次郎、こなた黒髪山の堤婆、両方の妖術の世界となり、新諸国物語らしいおもしろさとなる。 胡蝶尼の高千穂ひづるは宝塚出身なのか、なるほど。 [DVD(邦画)] 7点(2012-11-01 23:59:30) |
68. 白と黒のナイフ
《ネタバレ》 見ている途中までは、依頼人と弁護士のロマンスが嫌だった。こんなものはいらないし、女性が(男も)安っぽくなってしまうのにと思っていた。しかし最後まで見てやっばり男が犯人だったの映画ではないことがわかる。「愛していたのに・・・」が生きてくるのだ。ネタバレと個人的見解で少々書きづらいが、女は男が入ってくるのを予想して拳銃を用意していた。そして自分を守るためだけでなく、とどめさすまでぶっ放した。裏切られたからの復讐、りっぱな犯罪だと思う。罪には問われないと思うが・・・。 映画としてはおもしろいが、陪審員制度の怖さ、状況証拠によって右にも左にも動く怖さを感じる。 [DVD(字幕)] 7点(2012-09-28 00:52:26)(良:2票) |
69. しいのみ学園
《ネタバレ》 日の当たらない名作の名にふさわしい良い映画だった。先祖代々の家屋敷を売り払い、私財をなげうって建てられた「しいのみ学園」その設立はどれほど大変なものだったろう。しかし映画はその大変さはおくびにも出さず、至ってシンプルに作為なく淡々と描かれている。つたない演技は子どもが中心だから仕方ないものの、それが却って素朴な味わいを感じさせるほどだ。 「科学に限界があっても、愛情に限界はない」という言葉が胸を打つし、「ぼくらはしいのみ・・・」と歌う歌も印象深い。私の子どもの頃はポリオの予防接種などなく、小児麻痺になる子どもも決して珍しくなかった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-09-25 21:42:36) |
70. 情事 an affair(1998)
決して許されない恋で、正真正銘の不倫ものだが、純粋なラブストーリーだとも思う。夫ある身で、妹の婚約者と恋に落ちる。常識では考えられないことだが、そういう起こりえないことが起こるのが本物の恋とも言えるのかもしれない。 この映画のジャンルは、ドラマ・ロマンス・エロティックだが、願わくばドラマ・ラブストーリーにしてはどうだろうか。バックに流れる Manhã de Carnaval(黒いオルフェ、カーニヴァルの朝)が美しく切ない。 [DVD(字幕)] 7点(2012-08-25 16:13:20) |
71. シルヴィア
芸術家であればあるほど、神経は繊細で感情は激しいものらしい。ましてや詩人となるとそれがもっと顕著に現れるのではなかろうか。自分自身が何者かを自ら問い、絶望のどん底に自らを突き落とす、そういう芸術家も過去にたくさんいたことだろう。 詩人シルヴィア・プラスもまたそういう芸術家を思わせる。映画の中の作品評でも、すばらしいと恐ろしいが一体となっていた。彼女がなぜ自殺に至ったかは私みたいな凡人には到底理解はできないが、激しく生きた人だったに違いないと思う。 映画の中のグウィネス・パルトロウは、そのシルヴィアになりきっていたといって過言ではないだろう。見事なまでの演技だと思う。 ところでシルヴィアの母親役のブライス・ダナーだがグウィネスと目のあたりがよく似ていると思ったら、本当の親子だったとは・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2012-08-08 16:41:21) |
72. しびれくらげ
どうも見てもエロティックな映画というより、ヤクザ映画という印象が強い。もともとヤクザ映画は嫌いだし、暴力をふるう映画だとなおさらなのだが、幸か不幸か見るまではヤクザが絡んでくるとは思わなかった。 しかしヤクザが出てきて暴力をふるう映画なのだが、見ているときはそんなに嫌ではなかった。みどりや健次など登場人物の個性が強いし、見る者を引きつける。みどりのダメ親父など最高である。 このダメ親父を演じている玉川良一だが、前作でんきくらげではただのスケベ親父だったがこの映画ではまさにキーマン。この人はもともと浪曲師で当時はコメディアンとしてテレビで活躍していた。その印象とまったく同じななのだが、妙に愛着がある。 そして主役の渥美マリ、この人の演技は一本調子で決して上手とは言えないのだが、こういう役にはぴったりという感がある。 [映画館(邦画)] 7点(2012-07-28 19:12:53) |
73. シムソンズ
映画も良かったけど、カーリングのおもしろさやチームワークの大切さも改めて教えられた。カーリング日本女子チームがんばれと応援したい。 [DVD(邦画)] 7点(2012-07-13 22:27:31) |
74. 七年目の浮気
マリリン・モンローの映画の中で、この映画が一番彼女らしいと思う。魅力たっぷりの映画だ。だがこの映画は元々舞台劇、モンローでなくてもきっとおもしろいお芝居に違いない。だが、お芝居の台詞も倫理審査でずいぶんカットされ、舞台劇のおもしろさを失うところだった。それを救ったのがマリリンの魅力ということらしい。 事実この映画は、スカートがまくれあがるあの有名なシーン(画像)が、看板やポスターになり否が応でも人気を呼び込んだことか。だがスクリーン内では、えっこんなもの? この映画では、カヌーのかいから始まり、ラフマニノフのピアノコンチェルト、ジンのカクテル、チョップスティックなど教養ある題材多し。 DVDで改めて見たが、映像がきれいになっている。感激。やっぱりB・ワイルダーの映画って好き。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-07-02 22:55:05) |
75. 幸せへのキセキ
実話に基づく映画らしいが、動物園のオーナーになるというのはもっともっと大変だったろうと思われる。映画はその大変さが余り伝わってこないのが不満。しかし人と人との結びつきや暖かさはよく出ていたと思う。そっちの方を主眼として見れば問題なしか。 エル・ファニングもちょっと見ないうちに大きくなった。変わってロージーを演じたマギー・エリザベス・ジョーンズが立派に子役を果たしている。 [映画館(字幕)] 7点(2012-06-23 14:42:20) |
76. 縮図
《ネタバレ》 大映の看板スターとなった乙羽信子が大映を退団し、新藤の設立する近代映画協会に飛び込む。そして宝塚歌劇団出身清純派、お嬢様女優のイメージから一転して、芸者という汚れ役に挑戦した映画だ。 新藤を師として尊敬する音羽、その乙羽の魅力を精一杯引き出そうとする新藤、その二人の熱い思いが伝わってくる。 この映画は徳田秋声の小説を映画化して、薄幸の芸者銀子の半生を描く、見応えのある映画だ。暗い悲しい芸者生活の中で、音羽の歌い踊るそして、芸者遊びを演じる音羽の輝かしいばかりの笑顔は忘れられない。 [DVD(邦画)] 7点(2012-06-13 15:49:51) |
77. ジキル博士とハイド氏(1931)
《ネタバレ》 原作はスティーヴンソンの名作「ジキル博士とハイド氏」、ジキル博士とハイド氏の違った人格の二重生活を扱ったものだが、私にはいまいち内容がピンとこなかった。しかし、この映画は実にわかりやすくコンパクトに描いていると思う。 昔はジキル=善、ハイド=悪というとらえ方が一般的で、ジキル=偽善、ハイド=正直や、ジキル=紳士、ハイド=野獣にもなった。それが淀川さんの解説(全面ネタバレに近い)によって、人間そのものが善良で抑制心を持つ面と本能のままに自由に生きたいという面の二面性を持つものであり、その悲劇を主題にした映画だった。 この名作は数多くの映画や舞台劇、ミュージカルから少年少女向けのお話まで、数多くリメイクを生んできた。映画に限っても、フレデリック・マーチだけでなく数多くの名優が演じてきたが、さすがに彼は主演男優賞をとるだけあってすばらしいし、映画も大変わかりやすい。 ところでこの映画見るとどうしても「フランケンシュタイン」を思い出してしまうのは私だけかな。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-30 01:28:44) |
78. 上海の伯爵夫人
代表作「日の名残り」を初め数々の賞に輝いたカズオ・イシグロ氏の脚本だけあって、実に見応えのある映画だ。上海事変という日本軍の中国侵略を背景に、地元中国の人のみならず、上海に難を逃れて人たちの運命をも描いているが、歴史劇とロマンスのバランスもとれている。 盲目になったジャクソンが戦乱の街をさまようなどやや無謀とも思われる筋書きもあるが、ドラマだから許そう。しかし中国が舞台なのだからもっと中国人を活躍させて良かったのでは・・・。映画ではその他大勢に扱われいる。 この映画はロシア風、中国風、欧州風と音楽や舞踏など、いろいろな文化が入り交じり、混乱の中国をうまく描いていて、もっと評価されてよい映画だと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-27 22:03:47) |
79. 仕立て屋の恋
《ネタバレ》 最初は変態じみた主人公が好きでなかったけど、こうも一途に愛する姿を見ていると気持ちも揺らいでくる。女の方は犯罪を起こした婚約者をいつまでも思っているのに、それどころか男に罪をなすりつけようとしたのに・・・。最後はとても・・・ ところで、彼が彼女の部屋を覗くときいつも流れる曲、あれはブラームスのピアノ四重奏曲だと思うのだけど、第4楽章のしかも途中の部分なんだよね。レコードの針を落として同じ所から聴けるのは神業なのだけど・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-06 22:27:11) |
80. 地獄に堕ちた勇者ども
ナチス内部の突撃隊と親衛隊の権力争いもすさまじいが、それをバックに描かれる鉄鋼王一家の権力争いもまたすさまじい。親戚親子の関係でありながら、愛欲と憎悪、倒錯と陰謀が入り交じり、後半に至っては理解しがたい展開となる。それを赤裸々に描いたヴィスコンティは鬼才と言えよう。 個人教授で一躍脚光を浴びたルノー・ヴェルレーは馴染みの顔だったが、若きシャーロット・ランプリングはこのときは名前すら知らなかった。印象に強烈に残る美しき女優だったのに・・・。 [映画館(字幕)] 7点(2012-04-18 12:30:58) |