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1.  16ブロック
R・ドナーとB・ウイリスとの初のコラボレーションは、二人の新たな代表作と呼べるに相応しい作品となった。共にアクション映画で今の地位を築いてきた二人だけに、その拘りには並々ならぬものを感じさせる。本作は「48時間」や「ミッドナイト・ラン」といった“80年代アクション”の流れを汲むものであり、シチュエーションに至っては、まさに「ガントレット」そのものと言ってもいい。昔から、アクション映画に於ける“コンビものにハズレ無し”と謳われる通り、本作もその例に漏れず見事なコンビネーションぶりを発揮していて、アクロバティックで荒唐無稽さがウケる昨今、確りと地に足が着いた大人のアクション映画として、近年出色の作品だと言える。“僅か2時間足らずの内に人間は変われるか?”という裏テーマが内包されている脚本は、単なる友情や連帯感といったものを超えた、視点の新しさを感じさせ、 それをアクションに絡ませていく語り口の巧さは絶妙であり、またテンポの良さと研ぎ澄まされた編集の見事さなど、まったく無駄と言うものが無い。それに応えるべく、三者三様の役作りの卓抜さは、お見事と言う他ないが、世界一運の悪い男を演らせたら、やはりこの人、B・ウイリス!歩き方からその風体まで、ほとんど特殊メイクと言ってもいい程の凝りようで“決してジョン・マクレーンであってはならない!”と自らを言い聞かせているように見える。しかし充血したその眼がひとたび鋭くなった瞬間の凄みと迫力は、まさしくアクション俳優としての本領発揮の瞬間として、あたかも歌舞伎の大見得を切るようなイメージで迫り、大向こうを唸らされるものがある。相手を出し抜き、次々と難局を切り抜けていく頭脳戦も、かつて敏腕刑事として鳴らした裏付けがあればこその説得力を生み出しているが、同僚でありながら敵役でもあるD・モースは、善人なのか悪人なのか蓋を開けてみないと分らない程、人間味を滲ませながら両極端を演じ分けられる数少ない俳優で、彼なくしてはここまでの濃密なドラマとはならなかったのではないか。執拗に追う者と追われる者とのバランスが程良く描き分けられ、また群集との絡ませ方など、ロケーション効果も実に鮮やかだ。それにしてもR・ドナー、御歳七十を過ぎてまだこれ程の余力(?)が残っていたとは、もはや脱帽せざるを得ない。
[映画館(字幕)] 8点(2007-01-28 16:24:36)(良:1票)
2.  17歳の風景 少年は何を見たのか
常に時代と真正面に対峙してきた孤高の映像作家・若松孝二が実話にヒントを得て、犯罪を犯した少年の心の軌跡に迫った作品である。冒頭からマウンテンバイクをひたすら漕ぎ続ける少年の姿が映し出される。どうやら彼は北へと向かっているらしいが、何故北なのか。そして何処へ行こうとしているのだろうか。やがて彼が母親を殺害したらしい事が暗示される。しかしそこへ至るまでの経緯や動機、あるいは家庭の事情などは一切語られる事が無い。映し出されるのは彼の勉強部屋であり、親に買って貰ったであろうマウンテンバイクが象徴的に示されるだけだ。おそらく何不自由のない生活を送ってきたはずの彼が、何故そのような行動に出たのか。17歳という年齢は、言わば少年から青年への過渡期であり、多感で繊細であり反抗期といった成長過程における難しい年頃であることも事実だ。そしてそれが人を殺すという行為にまで発展してしまう事こそが、まさしく現代社会の歪みであり、時代そのものを象徴している現象だと言える。しかし、映画は敢えてテーマを掘り下げようとはせず、ただ徹底して彼の姿を追い続けていく。次々と変化する周囲の風景。中でも豪雪地帯や荒波の海岸などの厳しい自然描写は、少年の心象風景ともとれるが、装備の整え方から見ても、決して発作的に家を飛び出して逃避しているようには見えない。また苦悶する表情は、あくまでもペダルを漕ぐ辛さからくるものなのだろうし、罪の意識を感じていながらも表情だけはどこまでも冷静であり続ける。そこが彼らの尋常ならざる心理であり、怖いところなのだ。結局、旅は何処まで行っても、もがき苦しむだけで答えは見つからない。最果ての地でマウンテンバイクを谷底へ投げ捨て、叫び声を挙げる少年の姿で映画は終わる。そのとき彼は何かが変わったのか、または何も変わらなかったのか、映画は何も教えてはくれない。本作は、ドラマらしいドラマも無く、単調でありながら多くの事を感じさせるという、映像表現の難しさに果敢に挑戦した気骨のある作品だと言える。それだけに、二人の老人との出会いのエピソードは単なる世の中の恨み節にしか聞こえず、皮肉にも語ることの無意味さを覚えた。
[映画館(字幕)] 7点(2005-08-31 18:41:49)
3.  春夏秋冬そして春
キム・ギドク作品は過去の例をみても分かるように、外界と隔絶された異世界(異空間)を舞台に展開されるということが、まず特徴として挙げられる。そして本作ではそれがより顕著で象徴的な形として綴られていく。それは山奥深い、まるで水墨画のような幽玄の世界。湖上に静かに浮かぶ庵。それらのピンと張りつめた佇まいは、この作品を語る上で、これ以上ない舞台設定だと言える。そして、自然の美しさと造形された美しさとが見事に融和し、鋭く的確に捉えたカメラの素晴らしさを語らずにはいられない。それは決してカラフルなものではなく、むしろ程よく抑制の効いた色彩効果といえるものであり、四季の移ろいを人生訓として特徴づけた撮影技術は本作の功労者だと言える。物語は桃源郷に生まれ育った人間が、外界(俗世間)に触れることにより人間本来の生き方を悟るという、あくまでも寓意に満ちたものである。生まれてから死ぬまで業を背負っているのが人間なら、生きていく上で俗社会に関わっていく事を避けて通れないのも事実。閉ざされた空間から飛び去り、再び舞い戻ったとき、人はそれぞれ何を学びとって来るのであろうか。本作は、そういった人間の一生の在り様の教えと捉えたいが、平易な語り口だけにより深く考えさせられる作品である。天空から下界をそっと見守る菩薩像に 「2001年宇宙の旅」のスター・チャイルドをついついダブらせてしまうが、作品イメージとしては実相時昭雄作品に近いのではないだろうか。
9点(2005-02-12 15:28:06)
4.  白いカラス
いくら四番バッターばかり集めても面白い野球は出来ないと言われているのと同じで、アカデミー賞授賞監督や主演俳優たちが一堂に会したからといって、必ずしも良い映画が生み出されるとは限らないという見本のような作品。そもそも、今どきよくこんなテーマが企画として通ったなぁと感心するぐらいアナクロっぽく、ストーリーラインに至っては新味もなければ捻りもない。今や大メジャーであるN・キッドマンやA・ホプキンスらが、自らトラウマを背負って苦悩し、人生に絶望している人間にはとても見えないことに根本的な欠陥があり、映画をつまらなくしている基本線でもある。確かにR・ベントンの味わいのある演出は健在だし、錚錚たる顔ぶれの演技人ひとりひとりの演技も決して悪くは無いと思う。しかしその一方で、それらの個性のぶつかり合いが微妙な化学変化を生じさせ、かくも中途半端な印象しか残らない作品となってしまった事は実に残念であり、作り手側からしてみてもまったくの想定外だったに違いない。
6点(2005-01-04 16:45:42)
5.  真珠の耳飾りの少女
17世紀のオランダのさり気ない日常を描きつづけた画家フェルメール。寡作家でその大半が室内画であり、また謎の多い人物だったことから、タイトルにもある少女をモデルにした絵が出来るまでを、人間ドラマとして大胆な仮説をもとに綴ったのが本作。作品を魅力的にしているのが、メイドとして雇われた美少女グリートを演じるS・ヨハンソン。  腫れぼったい唇の困惑顔で、いつもどこか不機嫌そうなその表情が男心をくすぐる。C・ファース演じるフェルメールも、彼女をあくまでも絵画の良き理解者という表向きの体裁を繕ってはいるが、彼女の魅力の虜になってしまっているのも事実。この危険な香りを放つ両者の拮抗した演技には魅了されてしまう。二人に果たして男女の関係があったかは、 映画ではついぞ描かれる事はなかったが、耳にピアスの穴を開けるシーンに暗喩としての匂いを嗅ぎとれる。グリートの苦悶の表情のその艶めかしさだけで十分であろう。真実は誰にも分からない事であり、後は個人個人が想いを巡らしてロマンを感じとればいいのである。そしてもう一つの魅力は、フェルメールたちが間違いなく生きていたこの時代を、なんの違和感をも感じさせることなく再現してみせた衣裳と美術そして撮影技術の進歩。湿り気のある空気や柔らかな光と渋めのトーンで統一された色彩処理など、その徹底ぶりには只ならぬものを感じさせ、この作品の雰囲気を余すことなく伝えることに成功している。
9点(2004-09-16 15:38:55)(良:2票)
6.  下妻物語
ロリータ桃子と暴走族イチゴという、まったく相容れない個性のぶつかり合いから生じる、女の子の友情物語。男の友情を描いた作品は数多いが、女のそれはと言うと、すぐには思い出せない。そもそも“女に友情などあり得ない”などといった風説がマコトしやかに流されていた事にも由来するのだけれど、本作がそれをものの見事に覆し実証してみせてくれたのである。それは凝りに凝ったストレートな面白さと表現すればいいのだろうか。現実離れした劇画チックな画面構成と独特の色彩処理で、我々を寓意にみちた世界へと誘う。その摩訶不思議な感覚の心地よさ。そのカラッとした明るさは青春の輝きそのものであり、CM界でその名を馳せた中島哲也の、場面場面の画作りへのこだわりと冴えが大きくモノを言った作品である。そして、ひと癖もふた癖もある登場人物の中でも、とりわけヒロインたちが揃って魅力たっぷりで、しかも嫌味が無いというのも近頃では珍しく、そういう意味においても深田恭子と土屋アンナは絶妙のキャスティングであり瞠目に値するほどだが、その二人も自分の役廻りをよく心得え、体当たりの演技で期待に応えていたと思う。
9点(2004-09-09 18:41:36)
7.  少女ヘジャル
物語の中心となるのは両親と死別し親戚の家へ叔父に連れられてやって来た幼い少女。彼女の名前はヘジャル。クルド人である。その親戚がクルド人分離独立派ということが発覚するや、武装警察の襲撃を受け、唯一生き残った少女はトルコ人の元判事ルファトに匿われる。「グロリア」あるいは「レオン」を彷彿とさせるサスペンスタッチの導入部から始まる本作は、トルコ共和国における国家を持たない民族、いわゆるクルド人の難民問題を扱ってはいるが、決して堅苦しい映画ではなく、あくまでベースに流れるのはヒューマン・ドラマである。少女を不憫に思いながらも困惑を隠せない老人との束の間の共同生活を描いた点で、どうしても「コーリャ/愛のプラハ」を想起してしまう。ここでも問題となるのは“言葉”であるが、言葉が通じないもどかしさを執拗に描くことで、互いに自分の言葉には頑なな姿勢を崩そうとしないという民族意識を感じさせていく。そんな少女をお荷物に感じながらも次第に打ち解けていく様子を描きながら、映画は、やがてルファトが如何に現実に背を向け、物事に無関心でいたかを掘り下げていく。それはクルド人居住区で彼らの問題に直面し衝撃を受けたことだけではなく、身近にいるお手伝いのサキネの素性や、隣人の未亡人のことでさえも。映画はルファトの姿を明らかにトルコになぞらえ、コミュニケーションの欠如が誤解を生み、無理解・無関心を育てていると説く一方で、言葉や文化の違いを超えて心を通い合わすことの難しさをも提示している。
8点(2004-09-07 18:35:22)(良:3票)
8.  シティ・オブ・ゴッド
リオデジャネイロの強烈な気候風土を感じさせる、ひたすら暑くそして熱い作品だ。スラムに生まれたときから宿命のようにストリートギャングとして生きてゆかざるを得ない少年たち。一方、そこから抜け出してジャーナリストとして生きようとする少年。映画は、その生々しい彼らの生態を実録風に活写してゆき、個々の生きざまを通して様々な問題を我々に投げかけてくる。縄張り争いによる団結・裏切り・復讐を繰り返しながら暴徒化する彼らを、スピード感を伴う独特の編集テクニックで見せきる巧みさには感心させられる。また、彼らの中には殺人を強要されるまだ年端も行かない子供も存在するという描写などは、本作の真実味を感じさせる鮮烈なエピソードとしても忘れられない。抗争を繰り広げるセピア調の画面が余計ヒートアップさせてはいるが、この国の物価や賃金のみならず命の値段までが安いと感じさせるほど、そのバイオレンス描写に悲惨さはむしろ希薄で、実にあっけらかんとしているのが本作の特徴であり、唯一の救いでもある。
8点(2004-07-21 15:37:53)
9.  シンジケート
いわゆる、ブロンソン人気のピークの作品であり、M・ウィナー監督とのコンビネーションが最良の形で結実し、自信をもって世に送り出した作品だったと言える。ブロンソンの刑事役というのも案外珍しいが、どちらかと言えば“ガニ股武闘派”の彼にスーツは不似合いで、ここでもハミ出し刑事というより、やはり一匹狼の殺し屋的イメージが強い。一方、マフィアのドンをM・バルサムが重厚かつ貫禄の演技で魅せるが、終盤の家庭での些細なことを教会で懺悔する中、殺戮が次々とカットバックされるといったシーンは、なにやら「ゴッドファーザー」を意識した作りとなっている。が、そんな事など気にもならないくらい、全編ド派手な銃撃戦やカー・チェイスといったポリスムービーのあらゆる要素が詰め込まれ、切れ味鋭いアクション映画としてサービス満点のエンターテイメントに仕上がっている。
8点(2004-07-07 18:10:10)(良:1票)
10.  シャンハイ・ナイト
CGを駆使してドンパチと見た目は派手だが、何とも消化不良の多い昨今のアクション映画の中にあって、J・チェンの作品は決して期待を裏切らない、いや少なくとも、ある一定の水準をキープしつつ我々を楽しませてくれるという、唯一安心して観ていられる点がやはり彼の作品の凄いところ。ジャッキーのハリウッド製のコンビものとしては、個性(アク)の強いC・タッカーよりもO・ウィルソンの方がバランス的には良さそうで、二作目ともなると、益々その迷コンビぶりが板についてきたように感じる。いざアクションになると、そこらにあるモノを手当たり次第武器にするのがジャッキー・アクションの特徴で、骨董品などの重要物でのシーンでは定番ながらソツなく楽しませてくれる。ホテルの回転扉での大騒動から始まって、隠し部屋の回転する壁を利用したアクションや無人で360度回転するマシンガン、ハンドルを回転させることでの逆さづりのウィルソンとのコミカルなシーン、そして針が回転するビッグベンでのスリリングなクライマックスと、今回は回転することの面白さをアクションに取り入れて、その可能性を徹底的に追求した作品だったとも言える。
7点(2003-12-12 00:33:18)(良:2票)
11.  昭和歌謡大全集
本作は或る通り魔殺人に端を発し、その復讐を果たす為、おばさんグループと若者グループとが死闘を繰り広げ、その挙句の果てにアッと驚く結末が用意されているといった、まさに過激で奇想天外な現代の寓話だと言える。とは言うものの、その日常生活は極めて現実的に描写され、再三出てくる食事のシーンなどでは、おばさん対若者といった図式が明確に示されていて面白い。ここに登場する若者たちは、マニアックでオタクっぽく何処にでもいそうなガキとして描かれる一方、おばさんと言っても、樋口可南子を始め彼女たちの何と生き生きとして魅力的なことか。オンナを棄てた女にはとても見えないところがご愛嬌で、キャスティングの巧妙なところ。そして、この両陣営に協力するのが中年オヤジというのが共通項としてあって、この作品のキモでもある。中でも若者に荷担する原田芳雄演じる金物屋のオヤジが傑作。この男、女どもにはさぞや苦々しい思いで生きてきたのであろうか、若者たちにその武器使用の理由を聞くや、嬉々として武器を売りつけるという闇の武器商人といった趣で、中年男性の象徴として強烈な存在感を示している。(核爆弾を“原爆”と言わせるところなど、いかにもタイトルの「昭和」という時代を意識したセリフだ。)さて個々の殺戮シーンには、そのテクニックを強調されはしても思い入れというものは無く、あくまでも直截的であり即物的に描かれていく。特に“♪チャンチキおけさ”のシーンは秀逸で、昭和の流行歌が効果的に使われた一例でもあり、決して刺身の妻などではないのである。それにしても、お互いに絶命するまで限りなく続くこの復讐劇と昭和という時代とに、果たしてどれだけ深い意味合いがあるのだろうか。本作は村上龍が終始描いてきた現代社会の不条理さを映像化し、現実と非現実とが渾然一体となって醸し出され、閉塞感漂う世の中の鬱積したものの吐け口をひとつ間違えると、歯止めが利かないままとんでもない方向へ進んでしまうという事を、見事に提示した実に面白い作品となったわけだが、彼らの悪夢は昭和から平成になって、さらに深刻でより過激になっている事を再認識する必要がある。所詮、寓話などと笑ってはいられない、「今」とはまさにそういう時代なのだ。
9点(2003-11-26 15:38:48)(良:2票)
12.  少女の髪どめ
M・マジディ監督の新作は今までとは趣が違い、貧困に喘ぐアフガン難民の問題に深く切り込んだ作品である。しかしその語り口はあくまでも静謐で詩情溢れるものであり、決して声高に主張したりはしない。いかにもマジディらしい暖かい眼差しを感じさせる作品である。少女へ無償の愛を捧げようとすることに懸命になるラティフ。何かを語るすべも知らぬ少女は、ただ日々生きていく事に懸命であり続ける。彼の一途さに応える気持ちの余裕などあろう筈もない彼女の姿に、ラティフの苦悩もまた深まる一方なのだが、純粋な淡い恋心というよりも、もはやこれは人間愛にまで昇華しているのである。少女との刹那的な出会いと別れ。アフガン難民の象徴が彼女なら、ラティフは監督自身ではないだろうか。「一日も早く平和が訪れますように・・・」 マジディ監督の祈りにも似た切ない願いが心に重く響く秀作。
8点(2003-11-18 00:19:23)(良:1票)
13.  10億分の1の男
タイトル、とくに邦題で作品のイメージを(勝手に)決めつけて鑑賞に臨むと、時として肩透かしを食らった印象を受ける場合がある。本作もその一本で、何やらSFチックな映画を連想してしまいがちだが、極めて狭い範囲の地味でしかも少々マニアックなサスペンス・ドラマだと言える。ストーリーは、世界一運のいい男を決定するゲームに参画した様々な登場人物たちの運命を描いたもので、むしろハリウッドが好みそうなテーマである。それだけにハッタリや大規模な仕掛けといったケレン味など一切排除した作品で、ひたすらクールにそしてスタイリッシュさにこだわってはいるが、起伏に乏しいストーリーに加え画面が単調ということもあって、相当気合を入れて鑑賞しないと、睡魔に襲われることは必至だ。
6点(2003-11-13 15:02:07)
14.  重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス
F・ダントニ初監督作品とは言っても、確かこの一本だけだったように思うが、他は知らない。細かいストーリーは忘れてしまったが、続出する偽装警官によるマフィア幹部誘拐事件を、R・シャイダー率いる特殊チームが捜査するというもの。「ザ・セブン・アップス」とは、刑期が七年以上の重犯罪を専任にしていることから付けられたもので、その行動力や腕は立つが、危険を顧みないという警察上層部を困惑させるような粗暴な性格をも併せ持っている。要ははみだし刑事のハシリと言ってもいいような作品だ。かなり渋めで全編リアリズムで貫かれいて「フレンチ・コネクション」の夢よ再びといった趣があるが、本音はやはりカーアクションを撮りたいが為の作品で、さすがにスタントには力が入っていて迫力十分。歴代のカーアクション映画でも上位にランクされると思う。
7点(2003-10-15 23:57:05)
15.  自由の幻想
公開当時“映像の尻取り遊び”と表現されたL・ブニュエル監督晩年の傑作の一つ。いわゆるオムニバス形式の変種と言ってもいいユニークさで、ひとつのエピソードが終わると、それまで脇を努めていた人物が、次なるエピソードの中心人物となっていくという、幾つかのエピソードがそれぞれ微妙な接点を持ちながら場面転換していく構成となっている。要するに最初から最後まで出ずっぱりの登場人物などいないということでもあるのだけれど、こればっかりはいくら説明しても、実際に映画を観てみないと、良く呑み込めないのではないかと思う。で、内容そのものはと言うと、“もし、こういう世界であったなら・・・”といった、まさしくタイトル通り“自由というものに対する幻想”を描いたもので、真の自由とは何か、世の中で今まかり通っている秩序が本当に正しいものなのか・・と言った問いかけをしながら、戯画化されたブルジョワ社会を皮肉まじりに批判していく。いかにも鬼才ブニュエル作品らしく、逆転の発想のユニークさやそのイメージの奇抜さ奔放さには圧倒されてしまう。
9点(2003-08-15 00:35:06)
16.  シカゴ(2002)
名声を得るならスキャンダルも武器になる、喧騒と退廃漂う大都会。シカゴという都市やその時代背景を知っていれば、この作品の面白さをより深く理解できたかもしれない。しかしそんなことを抜きにしても、ロキシーとヴェルマが激しく火花を散らす、刺激的かつ心地良いこの華麗なる夢の世界に、興奮せずにはいられない。他の出演作では決して見られない彼女たちの生半可でないパワフルでダイナミックな歌と踊りには敬服してしまう。まさにプロの役者としての心意気を見た思いだ。ただ、こういった作品にしては上映時間が少々短く、個々の人物の描き込みが不足気味で、丁々発止なストーリー展開も(とくに終盤)物足らなさを覚える。これは他の人も指摘されているように、やはり舞台と映画との違いにほかならない。惜しむらくはB・フォッシー自身で映画化して欲しかった。
8点(2003-05-05 17:53:53)
17.  ジャスティス(2002・ブルース・ウィリス主演)
第二次大戦での収容所を舞台にした群像劇は久しぶりの感がするが、例えば「大脱走」が“陽”の作品だとしたら、本作は差し詰め“陰”の部類に入るだろうか。「ハーツ・ウォー」の題名で劇場での予告編を初めて見てから、延々待たされること一年近く。もはや、お蔵入りかと思っていたら「ジャスティス」に改題してやっと陽の目を見たという、なにやら紆余曲折のあったいわくつきの作品。B・ウイリス主演だから、派手な戦争アクションを連想しがちだが、実に渋く暗いトーンの作品であることで、公開を渋っていたことに妙に納得。評判はあまり良くなかったみたいだけれど、なかなか緊迫感のある作品で、個人的には十分楽しめた一本。「マーシャル・ロー」の時もそうだったけど、独系のB・ウイリスの軍人姿が案外キマっていて、狂信的な国粋主義者といった役どころは彼のひとつの持ち味となっている。
7点(2003-04-11 22:59:10)
18.  ショウタイム
ハリウッド映画のお家芸でもあるポリス・ムービーの企画も、いよいよ手詰まりになってきた感のある一作。今回はベテラン敏腕刑事と刑事ドラマに憧れる警官とのコンビ。そして、その彼らの活躍ぶりをショーとしてTV放映する点がミソ。が、折角のアイデアもあまり作品に生かされているとは思えない。さらにR・デ・ニーロもE・マーフィーも、彼らのいつも通りのキャラを演じているに過ぎず、このミスマッチな組合せから一歩突き抜けた面白さというものが感じられない。要はすべてが予想通りで、まさしく可も無く不可も無くと言ったところだろうか。エンドロールでのNG集のほうが楽しい・・・な~んて言ってるのはだ~れ?(笑)
5点(2003-03-17 23:36:03)
19.  ジョンQ-最後の決断-
映画としては良く出来ているほうだけど、やはり予定調和・ご都合主義という言葉がちらついてくる。子供を助けたい一心で、人質までとって病院に篭城。挙句の果て自分の命を投げ出そうとする主人公。が、だいたいD・ワシントンの作品ですよ!“とんでもない結末”などあろう筈がないでしょ。そういった観客に気を持たせるような作劇が、なんともあざとく感じられてしかたがない。現在の医療制度の問題や保険システムの矛盾といった社会的側面の描き方も中途半端。
6点(2003-03-17 00:03:55)(良:1票)
20.  至福のとき
チャン・イーモウ作品だからといって身構えて見ると、人によっては案外肩透かしを食らったような印象を受けるかも知れない。意外なほどの軽いタッチに戸惑う人もいるかも知れない。盲目の少女が主人公というだけで、チャップリンの「街の灯」を連想する人もいるようだが、むしろ吉本新喜劇風の人情小噺に近い。近代化が進む都会の片隅で、貧しくとも逞しく明るく生きている人々。その彼らが盲目の少女を励ます為に、ひと芝居打つ姿は実に無邪気であり、愛おしい。設定上どうしても深刻になり勝ちな展開を、努めてコミカルに描こうとする監督の苦心が窺い知れる。ただよく考えてみると、彼らのとった行動は一見美談のようだが、障害者をコケにしていることに何ら変わりがない。盲目でありながら彼らの嘘を簡単に見破ってしまう彼女。障害者が一人で生きていくには、健常者以上に強く逞しくなくてはいけないという事を、改めて思い知らされる。そして新星ドン・ジェが、その強い意志をもった少女を見事に好演している。
7点(2003-03-15 00:08:18)(良:1票)
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