1. 白い巨塔
TVドラマの唐沢財前版は観てましたので、「本家」のこちらはどの程度ドロドロしてんのか、と大いに興味を抱いての鑑賞です。 映画版はやはりドラマより展開が早い、というか忙しいな。台詞説明も多いし。でも大学病院という高みで展開する権力争いのえげつなさはいかんなく描写され尽くしてて、わかっていても充分げんなりしました・・。 時代が古い分、洗練されることなきむき出しの欲望と言いますか、財前の義父は特に大迫力でしたねえ。 やっぱり古さが感覚に合わない部分もありまして、女優陣の演技やキャラ付け、台詞回しはもう絶滅した仕様のものですね。そして何気にホステスもお嬢様も強烈に毒舌。なんでなの笑。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-12-11 22:52:13) |
2. シェルブールの雨傘
《ネタバレ》 なんと美麗なオープニング。甘やかな音楽と小雨に濡れる石畳を行き交う色とりどりの傘。真上からのショット。完成された美意識にのっけから心を掴まれます。色彩と構図に美的センスが全編にわたって貫かれ、傘店の壁紙とジュヌヴィエーヴとその母の衣装の色合わせには圧倒されました。ピンクの壁とオレンジのスーツ。この色配置が悪趣味にならないところがフランス人、すごい。ジュヌヴィエーヴの花柄(壁もワンピも)も素敵でした。 ということでアートな分野では他の追随を許さぬ完璧な画で押してくる作品なのですが、実をいうと総合点では微妙でして。 台詞がオール歌、という決まり事はともかくも大雑把なあらすじ風メロドラマといった趣のストーリーにはかなり引きました。どんなに美しく悲恋を歌い上げられても、ヒロインのあまりに即物的な薄情さには涙の出ようもありませんでした。帰還した男の荒れようにむしろ私は胸が痛みますね。 そもそも台詞がすべて歌だと細やかな心理描写などできようもないですもん。言いよどんだり、声が上ずったり、人の思いって言葉に出るもの。いきおい宝石商のキャラも大変に浅く、こんな男にあっという間に鞍替えするヒロインもまた共感を得るのが難しくなっちゃうのです。 ミュージカルが苦手な原因が自分でよく分かった映画でありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-08-18 23:40:47)(良:1票) |
3. 女王陛下の007
《ネタバレ》 ボンド俳優にジョージ・レーゼンビーという名前があるのを初めて知りました。他の5名は耳にしていましたが。 本作のみのボンド役、レーゼンビーはまずまず及第点とは思います。スタイルは良いしアクションも動けてるし。しかしいかんせんアクの強いコネリーの後任ではハードルが高過ぎました。獅子奮迅の働きをしてもレーゼンビーではせいぜい総務課長が頑張っている、という印象になってしまうのです。冒頭海から女を助け上げて「やあジェームズ・ボンドだよ」と自己紹介したとき、おそらく世界中が激しく違和感を抱いただろうと推測します。 お話の方は、終盤のコネリー版の能天気な馬鹿っぽさが払拭されてきりっと引き締まりました。吊るされた同僚の姿とか、ラストの非情さは007シリーズの中でも異彩を放つエッジの切れっぷりだと思います。 スキーでの追走劇は素晴らしい撮影技術で、画のブレも無くスピード感も堪能できますし、おそらく007の名を冠していなければレーゼンビーのアクション代表作として彼ももっと評価されたのではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-13 17:14:28) |
4. 情事(1960)
《ネタバレ》 冒頭の、令嬢行方不明事件を追い続けて観ていると酷い目にあいます。私は酷い目にあいました。この作品てミステリーの範疇に入るのか・・。”ミステリー”てそっちか。人の心のわからなさ、を指すのか。 とかく直列思考のワタシにとっては冗長とも感じる長い中盤がなかなかの苦痛でした。モニカ・ヴィッティの絶世の美貌がなければ観続けることができたかどうか。 美術画を思わせるようなカット、奥行きのある構図等、美的偏差値が高いのはわかるんだけども、芸術って飽きちゃうんだよなあ。いやアンナどこ行った。 現恋人の友人に目移りしたり、かと思えばまた別の女に手を出す。いかにもイタリア人気質のこの男の役はマストロヤンニクラスの愛嬌と深みがあってこそ、ラストの女の「しょーがないわねまったく」的な裁量を引き出せるのです。しかしガブリエレ・フェルゼッティではそこまで魅力的ではなかったなあ。にやけた中年オヤジにしか見えなくて。オメーが泣くんじゃないよ。ほんとある意味驚天動地のエンディングでした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-12-08 15:42:46) |
5. ショック集団
《ネタバレ》 うーん、さすがに今の時代に観ると、この垢抜けなさがホラーというよりシュールを醸しちゃっているような。夢の中の恋人を小っちゃくして寝顔の横に置いたり、夢話になるとカラーになったりとか、妙な演出だなあと珍奇なモノを観ている気分になってしまった。鎌倉大仏の出現には不覚にも笑いそうになったし。なぜ大仏様なの。 ストーリーは充分に恐ろしい筋立てなのだけど、入院してからの話に起伏が乏しくてつまんない。ああアレだ、黒人を差別すべし、と声高に叫ぶ黒人の彼、あそこは思い切った脚本だなあと驚いた。度肝を抜かれた、ということであり、”怖い”というのとはちょっと違うのだけど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-06-23 00:05:50) |
6. シシリアン(1969)
仏映画界重鎮のお三方のお陰で画面が締まって、渋さを醸しております。ドロンの移送中脱走劇とか、ハイジャックのスリリング感もなかなかに見応えあり。・・なんですが、前出コメントの皆さんの繰り返しになりますけど、私も言わずにいられない・・この映画演出が所々間違ってるんですな。よりによってJ・ギャバン登場!の場面にかぶる脱力音、ドロンに白ブリーフ、全裸女の岸辺で巨大ウナギ(?)釣り。なぜ~。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-16 23:03:37) |
7. 真実の瞬間(1965)
《ネタバレ》 一攫千金とばかりに闘牛士を夢見た男が見事スター・マタドールに成り上がり、しかし日々命をすり減らすショービジネスに徐々に消耗してゆく・・、と話はややありきたりではあります。でも闘牛のシーンは迫力があり、主人公の彼の牛をかわす身のこなしが流麗でセクシーで見惚れます。闘牛の人気って命がけのハラハラ感のほかに、刹那的な美しさも魅力なのかなあ、と新しい発見でした。マタドールの素敵さはよく分かったんだけども、でも牛が血まみれで絶命するのにやんやと喝采はできないなあ・・ヒト様の文化なので何も言えませんが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-04-19 01:05:06) |
8. シャレード(1963)
サスペンスといってもちょっと軽いタッチをねらったんでしょうな。命狙われてるわりにオードリーけっこう呑気だもん。J・コバーンのマッチ攻めなんてあいつ結構キレててそうとう怖いと思うんだけど。んーそれにオードリー何故にC・グラントにそんなにもご執心?今作でも相手はぐっと年上、父親に見えちゃう。等々、いまいち気持ちが乗れなかったのでした。オードリーのコメディエンヌぶりがなかなか冴えてる葬儀の場面はくすっと笑えましたが。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-02-06 17:51:30) |
9. シシリーの黒い霧
モノクロなのに印象強烈な陽光。影がくっきりと黒く濃く、舞い上がる砂埃に乾いた空気を感じる。映像は鮮烈なのだけど、ではお話はというと人物の見分けにも失敗し、古きイタリア映画特有の寡黙さに忍耐力もぎりぎり、シチリア独立戦争の知識もはなはだ乏しいときて、なんの感想も抱くことできず、つまり完敗した映画でありました。 [ビデオ(字幕)] 4点(2012-08-14 15:01:24) |