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1.  スパルタカス(1960) 《ネタバレ》 
冒頭から剣闘士が反乱を起こす場面まではまことに調子良く物語が進み、興趣をわかせる。死ぬまで苛酷な労働を強いられる鉱山奴隷の愍然たる実態、峻烈極まる剣闘士の訓練風景、命ぜられるままに剣闘士の慰みの相手をさせられる女奴隷の悲哀、会話を交わすことも叶わぬ奴隷同士の悲恋、気まぐれと好奇心だけで剣闘士の真剣試合を望む二人の女性の残酷さ、現代の価値では推し量れぬ古代ローマの側面をまのあたりにするようで、惻惻として胸を打つものがあった。古代のこととはいえ、理不尽に人権と自由を奪われた者の気持ちは想像に余りある。しかし、反乱が起ってからは調子がおかしくなる。反乱軍がスパルタカスを頭目に戴くようになる過程や彼のカリスマ性等が十分に描かれない。とりわけ軍の知識もないのにどうして正規軍を破るほどの軍事力を持ちえたか、どうして短期間で能率的な軍事訓練が可能だったか、数万人規模の寄せ集めに過ぎないのにどうして規律が保てているのか等、疑問に思うところが多い。「奴隷から開放されたい」という思いで一致しているのはわかると、思いと規律とは一致しないものだ。戦闘は何度も繰り広げられているのに二度しか描かれていないのは遺憾だ。スパルタカス軍が諸処の戦いに勝利しながら、各地の奴隷を吸収して勢力を膨らませていく過程で、彼の人となりやカリスマ性を描く、というのが常道ではなかろうか。彼の内面に迫る演出が欲しい。本作品の本質は、スパルタカスという人物を描くことだからだ。だが、それらの描写は簡略され、彼とバリニアの恋愛面が強調されている。最後に彼が処刑されても子供は残るという「希望」を描きたかったのは分るが、均衡を欠く。敵将のクラッサスがバリニアに異常に執着したり、元老院のグラッカスがバリニアを救出して自由の身分を与えてから自死するなど、不自然な展開で、どんどん興が削がれていく。彼女にそれほどの魅力を感じない。詩を吟じるアントナイナスの存在は無くてもよろしい。特に風呂場でのクラッサスとの妙な場面は意味不明だ。群集場面で奴隷の行進や生活の様子が幾度となく映し出されるが、それだけで感情移入するわけではない。映像だけでは不十分で、やはりきちんと群像劇として描く必要がある。剣闘士の試合をもっと見せるとか、残忍な二人の女性のその後を描くとか、クラッサスが復活させた十分の一刑を描くとか、盛り上がる方法があったろうと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2014-09-02 12:15:39)(良:2票)
2.  SUPER8/スーパーエイト(2011) 《ネタバレ》 
映画作成に熱中する子供達が経験したひと夏の冒険と初恋物語、そしてエイリアンとの遭遇、そして家族との和解。いろんな要素が混合され主題が曖昧になっている。監督の意図としては、全ての要素を繋ぎ合わせるのが8㎜フィルムということ。映画作りで仲間が集まり、偶然謎の生命体を撮影して軍の謀略に巻き込まれ、少年の母親の映像で少年と少女が心を通わせ、軍の極秘フィルムでエイリアンの秘密を知り、最後は映画を完成させる。だが、求心力が足りず、各要素の繋がりが弱い。 演出は巧いと思う。工場の無事故掲示板を取り外すことで事故を示唆。少年の父が同僚と会話する姿が影絵になる。円盤の門出の祝福として給水塔の大噴射。才能を感じる。 エイリアンには破壊者と友人と両方の面がある。暴力行為を最小限に留め、少年達との友情を前面に押し出せば、ラストの感動が深まっただろう。現状ではエイリアンが少年のペンダントを欲した理由がわかりにくい。友情を交す相手としてエイリアンは巨大すぎるし、エイリアンが人間を食べる設定は論外だ。それに、ただエイリアンに触れただけで感情が通じるのであれば、科学者達もコミュニケーションがとれたのではないか?ちなみに逆さ吊りにされた人間は脳圧が上昇し、数時間で意識を失い、やがて死ぬ。少女が「エイリアンに助けてもらった」と話すが説得力が無い。 理科教師の行動が不可解だ。エイリアンを助けるためとはいえ、トラックで貨車と正面衝突するのは常軌を逸している。生徒らを逃がす為とはいえ、銃を向けるのはいただけない。尊敬される先生像でないと後に続かない。 少年と父、少女の父の和解が描かれる。少女の父の過失で少年の母が事故死したという設定は両者の関係に緊張感を生み、いい効果を与えている。しかし具体的な事故の説明は無く、不満が残る。不仲だった二人の父同士が和解して、共に我が子の救出に向い、探し出して和解する。感動の場面だが、父達と少年少女達の行動が別々ということに問題がある。再会したとき、お互いの行動を全く知らないのだから、深く共感しあえる理由もなく、和解も表層的なものだろう。ここはやはり、両者が情報を共有し、共に行動して目的を果たすということにしないと感動には結びつかない。両者が軍隊の裏をかいて、エイリアンの帰還を助けるような設定にすれば、一本筋が通る。脚本を少し変えれば名作になった。惜しい作品である。
[DVD(字幕)] 7点(2014-04-22 11:36:17)(良:1票)
3.  スター・トレック/イントゥ・ダークネス 《ネタバレ》 
旧作は内容が哲学的で退屈するところがあった。新シリーズはアクションと男の友情に重点を置き、息をつかせぬ展開で、清新躍如たるものがある。CG特撮が精彩を放ち、エンタープライズ号が海底から飛び出す場面や雲海から浮上する場面など壮麗で観ていて飽きない。手抜きの無い未来都市の様子、未来テクノロジーの描写など、それだけでも見る価値がある。見所たっぷり。とりわけ、前半が極上だ。いきなり未開惑星で、未開人に追いかけられるカークらと火山爆発という二つの危機が提示される導入部分。未開人から逃れられたと思ったら、スポックが火口に取り残されるという新たな危機。間一髪のところでスポックは救出され、火山活動は新テクノロジーで抑止される。場面転じて、地球。難病の娘を抱えた父親に見知らぬ男Aが声を掛け、娘を救えるという。父親はAの血を娘に輸血すると、所属の軍事基地に入り、躊躇せず爆弾を起爆させる。その対策ため緊急召集のかかった連合本部がヘリに乗ったAに急襲され、カークの上司パイクが死ぬ。Aは地球連合と敵対するクリンゴン帝国の惑星に逃げ込む。カークは提督から新兵器光子魚雷を撃ちこんでAを抹殺せよとの命令を受け、惑星に乗り込む。運悪くクリンゴン人に包囲され、交戦状態になるが、Aが現れ、瞬く間にクリンゴン人をなぎ倒す。そしてカークに魚雷の数を訊ね、72と聞くと、即時に降伏する。謎が謎を呼ぶ展開で、画面に釘付けだ。後半は更にアクション色が強くなり、山場に継ぐ山場で退屈はしないが、ちりばめられた謎は万人が納得できるように回収できていない。Aはカーンという名の、遺伝子操作によって造られた優等人間で、事情により300年間冷凍睡眠していたが、マーカス提督によって目覚めさせられ、残りのクルーを人質に、光子魚雷の開発に従事させられていたが、魚雷に仲間を隠し、一人逃げ出した。マーカスの目的はクリンゴンとの戦争だという。このあたりの事情がすっきりしない。カーンとマーカスの動機が読めないのだ。カーンは仲間のためには涙を流すが、他人には残虐だ。スポックは論理と規則を重んじ沈着冷静だが、感情が高ぶることがある。カークは友情を重んじる熱血漢だが、時折愚かな行動をし、艦長らしくない。人物の描き方に統一を持たせた方が良いのではないか。悪は悪らしく、知は知らしく、艦長は艦長らしく。ところで、カーンの命の血を人類の為に役立たせないの?
[DVD(字幕)] 8点(2014-04-19 22:14:52)
4.  スピード2 《ネタバレ》 
ある意味お手本となる映画。反面教師として良い教材だ。前作はノンストップ・アクションの傑作。同じ監督の続編で、巨大な制作費、巨大セット、派手な爆発。なのにどうして?まず主人公の変更が大きい。アクションはこなすが、華がなく、表情に乏しい。恋愛ものとしてみると、ドラマ描写が不足だ。女はある程度描かれるが、男はよくわからない。SWAT隊員で危険な業務をこなし、クレイジーの綽名なのに妙に気弱で、手話が出来たりと、ちぐはぐ。二人のドラマを丁寧に描くべき。コメディ要素が強過ぎる。これが最大の欠陥だ。大勢の人命に関わるのだから。少女との淡い恋で「ロリータ」、タンカーとの衝突で「眼下の敵」を出すなど安易だ。客船が陸に暴走して、ようやく止まった場面で舳が鐘を突いたり、水上飛行機がタンカーのポールに都合よくひっかかるなど冗談の度が過ぎている。客船の暴走場面は映画史上に残るスペクタクルになれたはずだ。序章と終章で女の車免許試験場面をおくが、これがコミカル路線を印象づけてしまっている。最後は「感動」で終るべきだ。人命が救え、悪は滅び、愛は成就し、人々は二人に感謝する。それが最大の見せ場になるはず。見せ場を履き違えている。次々危機が訪れ、スピード感のある映像を撮り、派手な爆発があれば観客は満足すると勘違いしている。アクションが凄くても感動がなければ佳作にはならない。敵役にも問題が多い。開発した船管理システムを会社に横取りされ、病気になったら首、だけでは動機が弱い。ルームサービス係を殺さなかったり、乗客を下船させてから船の爆破を計画するなど、「悪」として中途半端。ヒルによる排毒療法は観客が同情してしまう。単独犯では役不足だ。ダイヤと船爆破が目的なのに、人質の女ににこだわるなど不自然な行動が目立つ。謎がほとんど無いのも欠点。犯人の行動をあますなく映し、犯行動機も早い段階で説明してしまう。興味が激減だ。どんな人物、どんな動機、どんな計画かは可能な限り隠しておこう。挿話のつながりも薄い。聾唖の少女、饒舌な写真係、ユーモラスなルームサービス係、太った夫婦など魅力的な人物が登場するが、伏線が回収されず、流れが断ち切れている。彼らに思わぬ活躍、思わぬ勇気、思わぬ知恵を出させることで各挿話のつながりが出来、一つの物語として完結する。尚、船が暴走した場合は機関室でエンジンを手動停止させればよい。
[DVD(字幕)] 6点(2013-08-02 18:54:35)
5.  スリ(1959) 《ネタバレ》 
 不思議な映画だ。スリの道に足を踏み入れてしまった青年の転落人生物語と思いながら鑑賞していたら、最後は恋愛落ちになっていた。青年とあの娘が愛し合っているとは思わなかった。何故二人の愛が伝わらなかったのだろうか?文化の違い、時代の違いがあるだろうが、最大の原因は役者の演技力不足だろう。あの二人は典型的な大根役者だ。繊細な演技ができないのだ。特に目の演技。二人はいつも同じ目付きをしている。これでは伝わる道理がない。 ◆青年の持論は天才超法論。天才で且つ社会で必要な人間ならば、法律を犯しても良いという考え。その方が社会に有益な場合もあるという。うぬぼれ屋の独りよがりな理論だが、彼も心底信じているわけではなく、単に自分の犯罪を糊塗する手段に過ぎないことは薄々気づいている。それが証拠に彼がスリで実績を重ねても、精神の高揚を得ることはできなかった。彼は優しい人間に囲まれている。友人のジャックは大切な相談相手で、何時も青年を気遣ってくれる。刑事は青年の人間性を見抜き、更生の道を説く。母親は、盗難に遭ったとき、身内の犯行かも知れないと告訴を取り下げる。固より息子を愛している。母の隣人の娘ジャンヌは、青年の病気の母親の面倒をみていてくれていた。青年の悩みは何か?「逆さの世の中を元に戻す」発言からすると、世の中に反感を持っていることは間違いない。まともな仕事がないか、真面目に働いてもやっと生活するだけの額しか稼げない事に不満を抱いているのだろう。スリ仲間が捕まり、周囲から疑惑の目が向けられると、青年は逃げるように旅に出た。不毛の海外旅行から戻った青年はジャンヌと再会。彼女はジャックと愛し合い、赤子を授かったが、結婚はせず、ジャックは雲隠れしてしまったという。青年はジャックの責任を肩代わりし、子供も引き受けるという。だが、どんなスリの名人も続けていれば、いつかは捕まる。青年も捕まり、生きる希望を失くす。そんなとき、面会に来てくれたのがジャンヌ。気まずい二人だったが、ジャンヌが面会に来なくなって青年は彼女を愛していることを知る。再び娘が面会に来て、二人は愛を確かめる。魂の救済の物語だが、演出と演技に難点があるため、カタルシスは得られない。青年の成長ぶりよりも、華麗なスリの手練、手管の方に目がいってしまう。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-10 23:53:02)(良:1票)
6.  スノーマン<TVM> 《ネタバレ》 
子供たちに愛される要素がいっぱい詰まったアニメ。スノーマンというユーモラスなキャラ。これが主人公の男の子に負けないいたずら好きで、見ていて楽しく、ほほえましい。これだけで成功の半分は約束されたようなもの。このスノーマン、重そうなのですが、意外にも空を飛んで男の子を雪の国に連れてってくれます。そのときに流れる曲は名曲、感動的です。男の子を待っていたのはスノーマンの仲間とサンタクロースでした。クリスマス・イブだったのですね。そして贈り物のマフラーをもらって帰ってくる。翌朝、ちょっぴりほろ苦い別れがあるが、贈り物は現実のもので、夢ではなかった。話の骨子はセンダックの「かいじゅうたちのいるところ」と同じ。母親に叱られ、ちょっぴり孤独を感じる少年。そこへ想像の翼がふくらみ、冒険の旅にでる。冒険を十分堪能すると家が恋しくなり帰宅。「かいじゅうたち」の場合は、あたたかい母親の食事が待っていました。本作の場合はサンタの贈り物のマフラー。このマフラーは両親の贈り物であった可能性がある。両親の子供を思う気持ちに男の子の精神が感応して、スノーマンとマフラーの夢を見させたという解釈。どっちにとっても夢のあるお話。「別れ=自立」で、男の子は一歩成長しました。さらに掘り下げると、このスノーマンは男の子が丹精込めて造ったもの。途中スノーマンのモデルの人形が出てきますが、男の子は普段からこの人形を好きだったのでしょう。だからその姿をまねて雪だるまを造った。それも自分の背丈をはるかに超えるビッグサイズ。途中で夕食を挟んでおり、造るのにかなりの時間と労力を要したことが分ります。これが重要で、簡単に手に入っては愛着も薄くなる。少年はちゃんと夢の代償を払っており、観ている方も、スノーマン=かけがえのない友達と無理なく思えます。男の子が雪だるまにマフラーと帽子をあげたのは笠地蔵と同じ気持ちでしょう。それだからこそ別れの場面で涙がでてくる。名作です。
[インターネット(字幕)] 8点(2012-07-15 19:43:17)
7.  醜聞(1950) 《ネタバレ》 
画家と声楽家が恋人同士であり、旅館に同泊したなどと、でっちあげ記事を雑誌に書かれる。雑誌社にしてみれば、真実かどうかは重要ではなく、売れればよいわけで、二人の談笑写真があるのが強みだった。画家は正義感が強く、泣き寝入りはせず、雑誌社を告訴する。声楽家は最初は消極的だったが、心なきファンレターがを受け取った事と、画家の熱意にほだされ、告訴に同意。ここから法廷対決のはずが…、話は卑劣弁護士の改心譚に転調する。弁護士は雑誌社に金で抱きこまれ、会社側に有利になるように仕組む。弁護士はうだつが上がらず、寝たきりの娘を抱えて経済的に困窮している。画家と声楽家は弁護士の娘に会い、その清らかな心に触れ、その父親の誠心を信じた。裁判は雑誌社優位に進んだが、最終的に弁護士が自らの買収を暴露する事により二人の勝利となる。二人にとって裁判の勝利より、弁護士が改心し、真人間になった事の方が嬉しかった。 ◆脚本に一貫性がない。無責任な雑誌記事により「醜聞」に曝された被害者の憤慨と苦悶、どうやって「醜聞」に対抗するかという問題が、後半になると「醜聞」はどうでもよくなっている。又二人の「醜聞」なのに声楽家の扱いが等閑なのが奇妙だ。後半になると会話はほどんどなく、裁判でも一切発言しない。刺身のツマ扱いだ。二人が協力しあい、その過程で恋愛も芽生えるというのが自然の流れだろう。協力の結果、裁判に勝ち、弁護士も改心し、恋愛も進展することでカタリシスが得られた筈だ。 ◆弁護士が改心した理由だが、これは本人が何かを経験したとか、誰かに影響を受けたという事ではなく、ただ最愛の娘を失くした事が契機となっている。問題の解決策としては、実に安直である。 ◆この映画は当然描くべきことを描いていない。第一に娘の死ぬ場面だ。最大の泣かせ場であり、弁護士がどれほどショックを受けたを示す絶好の機会なのに。「いきなり死にました」では観客もどん引きである。その伏線があってしかるべきである。 次に告訴を逡巡していた声楽家が告訴を決意する場面。心の推移を見せてこそ感情移入できるというもの。弁護士が酒場で皆と「蛍の光」を合唱する場面がある。正しいことをしようと心に念じているが、それがなかなか実行できないもどかしい心情を巧に演出していて見事である。このような演出を声楽家にもすべきだった。バランスが悪いのである。法廷闘争も緩くて魅力薄。
[ビデオ(邦画)] 6点(2011-10-11 20:43:44)
8.  素晴らしき日曜日 《ネタバレ》 
あまりに貧しく、惨めな境遇のため夢を失いかけていた男が、恋人の一途な愛と励ましを受け、本来の自分の姿と夢を取り戻す話。男の心の再生譚である。お金はないけど、精一杯休日を楽しもうとする二人に惨めなことが起る。貸室を見に行くが家賃が高すぎる、草野球でホームランを打って饅頭代を弁償、友人(キャバレー社長)を訪ねるとタカリ扱い、戦争孤児に現実を見せつけられる、雨になる。名曲公演に行くが切符がダフ屋に買占められる、文句をつけたら暴行を受ける、恋人を下宿に連れこむが逃げられる。恋人と仲直りして喫茶店に入るがぼったくられ、お金が不足。だがここで不思議が起きる。あまりに惨めな体験と酷い珈琲を飲まされたおかげで、男は二人で喫茶店を開くという夢を思い出し、意地でも実現させる気になったのだ。落ちるとこまで落ちて上昇に転じたわけである。ふっきれた男は今日の埋め合わせをしようとする。聞けなかった公演の「未完成を」想像で聞こうというのだ。男がタクトを振ると二人の心の中に確かに音楽が流れだした。奇跡が起きたのだ。 ◆男がどんなに惨めな生活をしているのかは言葉で語られるだけで実感が湧かない。最低でも職場の場面が必要。冷静に考えれば、仕事はあるし、友達はいるし、恋人はいるしで、戦争孤児の何倍も恵まれている。戦争孤児は家もないのだ。男が唐突に指揮者のまねをするが、クラッシック好きだとか、元音楽家等の伏線が必要。未完成の場面は音を消しても楽しめる。 ◆ヒューマニスト黒澤は、社会の底辺でもがく庶民の姿を繰り返し描くが、これはその最初。悲惨な環境から善の道、悪の道どちらにも進むのが人間。黒澤は常に暖かい目線で彼らを見守り、どうすれば善の道へ進めるのかを考えさせる。社会の底辺を描いた作品が「酔いどれ天使」「どん底」「赤ひげ」「どですかでん」、そこから派生した善と悪の対照を描いたのが「野良犬」「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」 【告白】この映画を見て素直に感動できる人を尊敬します。間違いなく心がきれいな人です。数多ある恋愛映画の中で最も魅力に乏しいヒロイン。男があの女に欲情し、接吻や貞操を奪ったりしようとするのを見て、本当に男が惨めに思いました。別れた方が幸福なのでは?こんなひどい事を思ってしまった私にはこの映画を語る資格などないのだと思います。私の心は未完成そのものです。
[地上波(邦画)] 5点(2011-10-03 22:44:11)
9.  スモーク(1995) 《ネタバレ》 
生きるということはタフなこと。若い頃は無茶もするし、心に傷を負い、大切なものを失うこともある。片目や片腕は人生で喪失したものの象徴だ。四千枚もの街角の定点写真は時間の象徴であり、あっという間に過ぎていったと感じられるものだが、じっくりと見返せば見えてくるものがある。人生をそんなに急がないで、時には煙草一服くゆらしながら、休憩してゆきなさい、という趣旨の映画。◆完璧な人生など無い。作家は最愛の妻を失っているし、黒人少年には両親がいないし、煙草屋は恋人と別れた心の傷を持つ。正直だけで生きられたら良いが、実際の人生はそうはいかず、時には嘘をついて相手を煙に巻くことも必要だ。嘘にも種類がある。自分の利益のために相手を騙す嘘、世間を乗り切るための処世術としての嘘、相手を思いやっての優しい嘘。害にもなれば薬にもなる。煙草も似たようなものだろうか。◆作家は生きる気力を失くしていたが、少年との関わり合いで世間との関わりを持つようになり、煙草屋の体験談を元に、作家として復帰する。少年は嘘の名人だったが、作家と出会い、作家に父のような感情を持ち、まじめに働くようになり、遂には実父との再会を果たす。煙草屋は、元恋人と再会し、実の?娘と会い、過去のわだかまりを捨てて、お金を渡す。が、小説のようにうまく収まったわけではない。作家の妻の喪失感は消えることは無いだろうし、少年と実父との関係もぎくしゃくしたままで、煙草屋の娘は悲惨な運命が待っていることが予想される。それでも一歩一歩、毎日を刻んでゆかなければならない。お互いに心を開けば、街角の交差点にように人生が交差し、物語が生まれる。素晴らしいことだ。◆最後のモノクロ場面は、作家の書いたクリスマス・ストーリーの映像化であり、回顧場面では無い。作家は煙草屋の語りがあまりに出来過ぎていたので、嘘と断じたようだが、真相は不明だ。煙草屋の「秘密を分かち合えないで友達とは言えない」の科白から推せば、真実と思われるが、何が真実かは重要では無い。真実と嘘の間には少しの違いしか無い。人生は重いが、同時に煙草の煙のように軽い。長く生きているとそういうことも分ってくる。そういうことをしみじみと感じさせてくれる大人の映画である。◆全員が煙草を吸うのは演出過多。自動車工が高価な葉巻を吸うだろうか?17歳に煙草を吸わせるのも疑問。娘に救いが無さすぎる。
[DVD(字幕)] 8点(2010-12-10 18:45:13)
10.  スティーブン・キング/ランゴリアーズ<TVM> 《ネタバレ》 
◆飛行機がタイムスリップする。寝ていた人は助かり、起きていた人は消失。消失した人はどうなったのか?しかも肉体と服が無くなっているという不思議さ。服の中身、歯の矯正器、ペースメーカーは残されたまま。この謎は謎のまま。S・キングに細かいことを望んでも仕方がありません。でもこの作品は整合性が取れている方です。 ◆過去は過去のまま取り残されて存在する。その取り残された過去の時空をバクテリアのように食べ尽くすのが無数のランゴリアー。歯と毛だけの外見。イメージが膨らみますが、CGがしょぼいのでがっかり。全然怖くないのです。 ◆時空の裂け目を通って、未来に戻ることが出来た。だがそこは無人の世界だった。そこへ時間が未来に追いつくというアイデアは秀逸。感心しました。飛行機は無事生還したが、消失した人々は戻って来ないと解釈しました。  ◆登場人物はほぼセオリー通り。自己犠牲で英雄となる特殊工作員、状況を素早く理解する推理小説家、盲目の超能力少女、心に傷をもつパイロット、そして最重要人物がイカレたビジネスマンのトゥーミー。父親から精神的虐待を受け、「大物になれなければ、怠け者としてランゴリアーに喰われてしまう」という強迫観念に取りつかれている。彼の存在がランゴリアーを引き寄せ、飛行機をタイムスリップさせたのかは不明だが、彼が偶然に乗り合わせていたのではないことは確か。作者は「心の傷」と「取り残された過去」を対比して提示している。「取り残された過去」は各人の「心の傷」でもあるのだろう。心の傷が妄想を生み、時には時空の裂け目も作り出していますのだろう。 ◆トゥーミーは錯乱して少女を刺す。少女はトゥーミーを囮として利用。このあたりの展開はスリリング。でも少女は助からなかった。少女は自分は助からないと知りながら、皆のためにトゥーミーを操ったのですね。そして生還のためには、更なる自己犠牲が必要だった。眠りについた皆を起こす役目の人は消失する運命。それは暗殺者でもある工作員の過去の罪の贖罪でもあった。芽生えはじめた恋も儚く消える。ソツのない展開ですが、感情移入するほど深くは描かれてはいません。監督の技量不足でしょう。才能のある監督がリメイクすれば名作になる可能性があります。
[DVD(字幕)] 6点(2010-07-19 23:20:40)
11.  スパイダー パニック! 《ネタバレ》 
この手の映画にコメディテイストはいらないのではないだろうか。息抜き程度のものならいいが、おちゃらけすぎるとシラけてしまう。不要の最たるものはイカレDJ。蜘蛛が巨大化したのは有害廃棄物の所為とするが、安易すぎる。理由を明確に説明する必要はない。ひたすら恐がらせればいい。ジョーズ、エイリアン、ジュラシックパーク、ザ・フォッグなどのシリアス路線をとればいいのにと思う。テンポもよくない。最初に子供が大グモを発見するが、みんなに認知されるまでに時間がかかりすぎる。悪徳市長の息子もバイクで逃げてから、次に登場するまでに時間がありすぎる。主人公のクリスはもっと強く、リーダーシップがあり、知恵が回る人物にすべきだろう。町を出た経緯、戻ってきた理由もよりシリアスにした方がよい。クモも一匹を丁寧に描写した方がよかった。最初から沢山出すぎである。また弱すぎる。銃で撃たれるとすぐに死んでしまうので恐くない。もっとしぶとい生命力があるはずである。子供がクモのことをよく知っており、静かにすることや香水などのアイデアを出す。これはよかった。そもそもの原因は有害物質を秘密裏に埋め立てていた市長の所為なのだが、それが罰せられず生き残るのはいかがなものか。出口に鍵をかけ、一人だけ逃げ出したという卑劣な人間でもある。また爆発した所有鉱山も保険が出るという。バカ息子も生き残る。悪者が殺されてこそカタルシスが得られるのだ。煙草おばさんが金鉱脈を発見するが、あんなわかりやすいところにあるのなら、誰も気づくはずである。クリスが保安官に何度も言おうとして言えなかったことも肩透かし。たわなさすぎる。誤解を解いて、愛を告白して結ばれる展開などにすべきだったろう。メタンガスのアイデアはよかった。
[DVD(字幕)] 4点(2010-05-09 08:54:48)
12.  スター・ウォーズ<特別篇> 《ネタバレ》 
現代の神話「スター・ウォーズ」の始まり。スペース・オペラという言葉もこの作品で普及した。リメイクされて、CG部分が追加されたが、ほとんど変わっていません。最も感動的なのは、R2-D2のけなげな献身ぶり。翻訳ロボットとのコミカルなやりとりも楽しい。次はハンソロ・カムバックによる逆転勝利。息づまる空中戦も見ものです。スター・ウォーズの魅力はこのような脇役キャラの種類が多く、充実しているということ。ちょっとした役のキャラでも表情豊かなんですね。昔の西部劇などでは考えられない演出スタイル。一つ一つのシーンにサプライズが詰まっている。大作感があり、飽きません。ストーリーは単純明快で説明の必要もないのですが、わからないのがオビワンでしょうね。わざとダース・ベイダーに負けて、肉体が消滅してしまう。そして声だけの存在となり、ルークに指示を送る。この部分だけ説明不足。さほど偉大な人物に感じられなかったのは残念。雑兵相手に人間離れした戦闘能力などを披露してほしかったです。続編が作られるにつれ、ルークとレイラ姫が双子だったり、ダース・ベイダーが二人の父親だったりという暗黒部分が露呈します。人間の心の弱さに焦点が当てられるという不意を突く展開で、子供が観て夢中になれるようなものとはかけ離れてゆきます。もっとあっけらかんとした明るい宇宙戦記として期待していので、不満があります。
[DVD(字幕)] 8点(2009-10-24 00:04:00)
13.  砂の器 《ネタバレ》 
◆癩病を発症したら「らい予防法」により療養所に強制収用となる。それがいやなら、妻と子を残し、自分が巡礼の旅に出ればいい。その前に妻はどうして子供を残して出て行ったのか?◆癩病といいながら、その症状がない。◆英良は小学校にも行かず。流れ流れて自転車屋の丁稚奉公。それが大学出て、クラッシックの天才作曲家、ピアニスト、指揮者。絶対無理!◆英良は育ての親なしで、大学まで出たの?◆子供の英良は何故父の元を訪ねなかったのか?療養所はすぐわかる。◆元巡査の三木は英良の子供時代しか知らないのに、成長した英良の写真を見ても何故本人とわかった?◆英良は三木から連絡があったとき、「人違い」と何故言わなかった。◆三木の手紙では、千代吉は子供に会いたい一心で生きてきた。なのに刑事が写真を見せても、知らないふりをするのは何故?殺人事件の容疑者とは知らない筈。◆殺人が無計画すぎ。急に殺意が芽生えたので、石で殺して、礫死にみせかける。殺人は計画的に。◆動機が薄い。父親に電話一本でもかけて事情を説明すればいいものを。◆英良の恋人の理恵子は、刑事が「電車からシャツを捨てた話」を聞きにきただけで、何故逃げたの?「人違い」で済む話。◆理恵子は血染めのシャツを何故電車から捨てた?◆理恵子は英良が人殺しであることを知っていたのか?◆英良のコンサートを聴いて「彼は今父親と会っている」と刑事が言うが、何故そんなことがわかる?◆英良は父が癩病患者であることを世間に知られるのを死ぬほど恐れたため、別人になった。殺人をしてまで秘密を守ろうとした。そこが伝わらない。砂の器のような殺害動機だ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-10-23 03:48:40)
14.  スミス都へ行く 《ネタバレ》 
ジェームズ・スチュワートが若いのに驚きました!古い映画なので、よくわからないところがありますね。子供が議事堂で働いていたり、上院議員の秘書が一人だけだったり、議員が記者を殴っても問題にならなかったり、テイラーという一人の人間が全国のマスコミを牛耳れるのかとか、失われた大儀とは何とか。ラジオはそれなりに事実を放送していたようですが…。最初知事が上院議員後任にミラーの名前を出すと委員たちはテイラーの手下はだめだと猛反対する場面がありましたね。テイラーに反対する勢力も相当あるわけです。ところが後半では全員がテイラーの味方で、全然整合性がとれてない気がします。そもそも不正の内容がはっきりしない。建築予定のダム周辺の土地を買収しているのですが、それだけ?地味ですね。ダムは必要なものなの?テイラーの会社がダム建設を請け負うの?スミスの提案したキャンプ場とダムの土地がバッティングすることで事が動き出すのですが、キャンプ場の場所を変えればいいだけでは?ダム法案の審議はほぼ終了しているので、スミスもそれに反対はしないでしょう。反対しても多数決で押せるはずです。テイラーが何を慌てたのか、スミスを呼びつけて、子飼いにしようとするからややこしくなりました。スミスの汚職のでっちですが、あれは無理。買ってもない土地を買ったことにするのは無茶です。土地売買の日のスミスのアリバイはすぐ証明されるでしょう。大金ですから、お金のないスミスには無理ですね。あと細かいことですが、議会を放り出して、デート優先というのもどうかと。「純朴な青年が政治の不正を暴く」という構図はいいのですが、詰めが甘い印象です。 また自分で不正を見つけたり、闘争方法を考えるのではなく、すべて秘書に依存しきっているところが減点。演説がうまいだけじゃ、物足りません。知恵を見せて欲しかったです。鳩が出てきたとき、ぜったいに何かの伏線だと予想したのですがね。
[DVD(字幕)] 6点(2009-10-06 22:12:07)
15.  スティング 《ネタバレ》 
面白い映画ですね!さあお芝居の、はじまり、はじまり。紙芝居形式で、章ごとにイラストを配す。一見邪魔に見えるけど、肩を張らないで観てくださいという意味でしょう。軽妙な音楽をあいまって小粋な演出です。トランプ詐欺のオチは全すり替えという低レベルのものですが、その前にコンドーフがトランプの腕を披露しているので見事は手腕に見えるわけです。また披露の最後に少し失敗しますね。それも見てるので、最後までハラハラするわけです。このように伏線が効いてます。競馬詐欺でも、アナウンサー役が「いいのがない」とぎりぎりまで捜していたり、電信屋のオフィスを作るときもぎりぎりセーフというタイミング。演出がうまいですよ。フッカーは大金を得てもギャンブルですってしまうような子供だったが、最後は報酬を受け取らないほどに成長。彼の成長物語としても観れます。演技で光るのがニューマン。トランプ詐欺のときの演技は神がかりと思えるほど。堕落した詐欺師からボスへの変身ぶりは見事。ロネガンやヘン顔の手下など脇役の演技もうまい。愛を込めてアラを捜すと。最初の路上詐欺は三人組なのに、二人組とされているのはどうして?黒人差別の色濃い時代にルーサーが黒人で、黒人のための白人が復讐?復讐というが、路上詐欺にあった男はそのせいで殺されている。この男の死に責任があるはず。フッカーとコンドーフは女の趣味が悪すぎ。サリーノ(女殺し屋)はどうやってあの店の店員になれたのか?目撃者など気にせず殺して逃げればいいのに。詐欺師の同業者名簿って何?FBIの事務所オンボロすぎ。最上の詐欺は騙されたことにも気づかせないことだそうが、電信詐欺はそのうちバレそう。敵ボスの損失が50万ドルでは、破産に持ち込めない。敵ボスは足が不自由なので同情してしまう。敵ボスはもっとクールで冷酷な自分津にしたほうがよかった。ポーカーであんなに熱くなるのではたいした奴じゃない。敵が強くて大きいほど詐欺が成功したときのカタルシスが得られるのだから。とはいえ、一度観れば一生心にスティング(突き刺さる)する映画です。
[DVD(吹替)] 9点(2009-09-19 20:40:13)(良:2票)
16.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 
宇宙オペラものとしては十分合格でしょう。とにかくデザインが美しいですね。敵役ロミシュラン人の宇宙船の造形がよかった。ただ船内はゴミ捨て場みたいだったが。ブラックホール爆弾で星が消滅するというスケールの大きさにびっくり。CGには魅せられました。未来人からの攻撃というタイムトラベルものでもある。それでいて物語の中心はカークとスポックの成長物語プラス友情物語。恋愛もあり。詰め込むだけ詰め込んで、うまくまとめたと思います。気になったところ。少年カークはぶっとびすぎ。お母さんはどうなったの?試験問題はズルしたの?未来のスポックはどうしてあそこにいたのかな?偶然すぎる。ミシュラン人はスキンヘッドにタトゥーつけただけなのが悲しかった。彼たちは星を消滅させられて、復讐に25年間も待っていたんだよな。考えさせられます。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-06 01:22:06)
17.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
最初に謎が提示されます。スラム育ちで無学のジャマールがクイズで高額賞金を獲得できたのは何故か?刑事から拷問に近い取調べ(大げさすぎて苦笑)を受けますが、心証は白。答えは偶然知っていたのでした。その知識を得た場面を、彼の人生を辿ってゆくことで再現してゆきます。その人生が過酷すぎるほど過酷であり、彼がクイズに出た真の目的が恋人ラティカに会う為(純愛)とわかるとどうしても応援したくなります。必然的に映画にのめり込むわけで、巧みな構成といえます。彼が子供の頃、肥溜めに入ってまでもスターのサインを入手した場面で、一旦決めたことは最後までやり抜く性格が強調されており、この伏線が最後まで効いています。一方でラティカの人生はもっと過酷です。孤児で、引き取られた中ボスに乞食をさせられ、ジャマールの兄に強姦され、大ボスの愛人となり暴行を受ける毎日。現実にこのような女性と恋人関係になるのは稀でしょうが、そこは映画、美女でカバーしてます。兄は悪キャラです。ジャマールから「一生許さない」と宣言されます。中ボスを殺し、大ボスにヒットマンとして雇われます。闇の住人です。その兄が最後、ラティカを逃がし、大ボスを殺し、自分も殺される選択をします。どうしてこのような行動に出たのでしょうか?ジャマールの「奇跡の回答」に、愛の強さと運命を感じたからでしょう。二人は愛で結びつく運命であり、自分は過去の贖罪のために死ぬ運命であると悟ったのです。お金のバスタブでの死を選んだのは、彼は愛を信じず、お金を信じて生きてきたので、自分にふさわしい死に方と考えたからでしょう。自分を罰しているわけです。クイズですが、司会者の演技が秀逸ですね。すばらしい。ラティカが電話に出て、答えは知らないといったときには、正直ずっこけました。あれだけ溜めた演出だったのに…。クイズに出た真の目的がラティカに会うためですから、クイズはどうでいいのでしょうが。怒涛の感動場面を逃した感があります。スラムの生活の悲惨さはよく伝わりました。の闇の仕事や心の闇が描かれていれば、傑作になっていたでしょう。エンドロールの踊りは不要です。
[映画館(字幕)] 8点(2009-04-29 21:41:52)
18.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
2500年ほど前のスパルタを中心とするギリシア軍とペルシアの遠征軍の間で行われた「テルモピュライの戦い」とそれに続く「プラタイアの戦い」を題材にしている。真面目に史実を描いているのだなと思っていたら、途中でクリーチャーのような巨大戦士が出てきて方向転換。うーん、そういう映画だったのか。「北斗の拳」の実写版と思えばいいのです。化け物のような処刑者はインパクトありましたね。1シーンだけでは惜しいです。ゾウとサイ、弱すぎです。えっ、火薬もあったことになってる。スクリームのような仮面部隊出すなら、いっそジェーソンも出してほしかった。所詮は原作がアメコミでした。とにかく凄まじい戦闘シーンのオンパレード。ここぞというときに必ずスローになり、悲壮感のある音楽とあいまって美しい舞踏のように描かれています。(本来重兵装部隊なのですが、上半身裸でがんばってます。筋肉のCG疑惑あり)でもすぐに飽きました。そればっかりなんで。300人(史実ではテスピアイ 、テバイ軍も一緒ですが、省略です)対数万の戦いなら、孔明、義経、高杉晋作などのように知力で勝負すればいいものを肉弾戦という無謀さ。「自由」「祖国」などと叫んでも、感情移入できず。ペルシャ軍に対するリスペクトがなく、子孫のイラク人が激怒したのもわかります。新たな紛争の火種にならなければいいのですが。ただペルシャ軍の使者はそこそこかっこよかったし、軍隊のデザインなども中々のものでしたよ。美的センスは認めますが、スローの多用はくどいです。ヴァイオレンスはもっと控えめに。
[DVD(字幕)] 6点(2009-04-06 15:04:57)(良:1票)
19.  スウィングガールズ 《ネタバレ》 
全編ギャグ満載で、コメディ映画として成功していると思います。ただ芝居はうまくないですね。棒読みが多いです。ハリウッドでは子役でもおどろくほど自然な演技をするのですが、日本だと高校生でもこんなレベルなんですね。演奏をほめている方が多いですが、普通の素人のへたな演奏としか聴こえませんでした。映像を一緒に見るから音楽に乗れるんでしょうね。ただへただとしても、元々素人の高校生の演奏という設定なので問題はなく、そのほうが自然です。人に聴かせるレベルには達しています。彼女達がジャズをやるきっかけとなる「お弁当事件」ですが、ちょっと強引すぎますね。お弁当がバスに遅れる→補修の生徒が届ける→一個食う→駅を乗り越す→炎天を歩く→弁当腐る→食中毒で吹奏部休む→責任を取って応援演奏。いやいや始めたジャズが、のめり込むまでに好きになる経緯をきちんと描いていれば、もっと感動できる映画になったと思います。途中で演奏に挫折したりする「根性ものの演出」にしなかったのはコメディに徹したかったからでしょう。「応募テープ出し忘れ事件」も強引ですね。ありえないです。でもありえないことが連続するとコメディになります。テープ出し忘れる→出場不可の手紙来る→皆に言えない→電車で会場まで→電車が雪でストップ→出場辞退が出て奇跡的に出場。演奏会には小澤先先(竹中直人)を参加させたほうがよかったですね(奇跡的な方法で)。全員揃ってこそのビックバンドですから。ハーゲンダーツの大箱一気食いの荒わざには驚きましたが、その子のスカートが落ちるのをみて驚いた人が自転車ごと坂を転げ落ちるシーンがあり、すぐに起き上がって何ごとも無かったかのように自転車をこいでゆくという三段構えのギャグがよかったです。スプリンクラーを誤動作させてスーパーをくびになるギャグもよかったです。
[DVD(邦画)] 6点(2009-04-05 20:12:10)
20.  スパイダーウィックの謎 《ネタバレ》 
妖精もののファンタジー冒険映画。CGは合格点です。スプライト(花の精)はかわいいですね。このキャラが全くストーリーとは関わっていないのは残念です。逆にルシンダ叔母の顔は妖精のようでしたね(特殊メイク?)。80年前にスパイダーウィックが書いた「妖精図鑑」を巡ってのお話。この本には妖精の生態が書かれており、悪い妖精オーガ・マルガラスが入手すると全世界を支配する力を得、妖精どころか人間までも絶滅させてしまうという。ここが説明不足かつ風呂敷をひろげすぎでしょう。あくまでも妖精の世界だけの事にしておけばよかったのです。妖精王国がゴブリン族に滅ぼされるのを防ぐために子供が冒険して闘うとか。子供達は本からの知識でゴブリンと闘います。が、それはトマトケチャップと酢の爆弾と塩とグリフィン(大鳥)を呼ぶくらいなもの。この部分をもっと増やせばずっと面白くなったでしょう。魔法合戦のようにすればよかったのです。あるいは妖精たちと一緒になって戦う物語にするとか。フェンシングや刃物で撫で斬り、血がほとばしるのはファンタジーにそぐいません。子供は死に物狂いでルシンダ叔母に会いにいったのですが、ほとんど役に立ちませんでした。世界が滅ぶ危機ですから、知識を駆使して一緒に戦うのが筋でしょう。また、さらに苦労してスパイダーウィックにも会いに行きますが、こちらも大して役に立ちません。それどころか、本を処分するのを拒否する体たらくです。また母親がやっと事態を理解しても何の役にも立ちません。これらが物語が「さあ盛り上がるぞ」というところで失速している原因です。流れに逆らっているんですね。ホグスクィル(ブタ?)が、鴉に変身した大ボスを食べて終るのはいいでしょう。伏線が効いています。ルシンダが少女となって父親の元に行くのもいいでしょう。彼女はもう死期を知っているのでしょう。ただ、現実の世界で離婚した家の子供の苦悩を取り入れるのはやめたほうがよかったでしょう。ファンタジーの世界にのめり込めないからです。
[DVD(吹替)] 6点(2009-04-05 09:52:31)
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