1. すてきな片想い
《ネタバレ》 80年代青春映画の巨匠であるジョン・ヒューズのデビュー作。本作で彼の作品の常連となるモリー・リングウォルドとアンソニー・マイケル・ホールが初めて起用されるが、やはりリングウォルドの発掘は大功績だったと言えるでしょう。たしかに彼女ほど同世代女性ファンから支持された女優は稀有で、ほぼ社会現象と言えるレベルでしたからね。この時彼女は15歳、まあ子役とは言えない年齢ながらも若くして脚光を浴びた俳優は伸び悩むというジンクス通りになってしまったのは、残念ではあります。 この映画は数あるヒューズ作品の中でももっとも下ネタがキツいという指摘は的確だと思います。現在のコンプラやポリティカル・コネクトネスの基準からすると、炎上必至と思われる内容があるのも事実です。一人だけ登場するアジア人キャラの扱いや、パーティでのジェイクの言動がいわゆるデートレイプを容認しているようなところなどです。まあ他愛もないコメディなんで目くじら立てるなとも言えるのですが、確かに中国人留学生の描き方はちょっと度が過ぎているって感じます。だいたいからして、全部観たとは言わないけど、黒人がキャスティングされたりストーリーに絡んだジョン・ヒューズの映画が記憶にないんですよね。アジア系とはいえ有色人種が登場するだけでも珍しいとも言えますかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-12-20 21:39:02) |
2. ストレンジャー・ザン・パラダイス
《ネタバレ》 “オフ・ビートの貴公子”ジム・ジャームッシュ作品の中でも、ジョン・ルーリーやトム・ウェイツが常連だった初期が自分は大好きです。その中でも本作はオフ・ビート感では最高で、短いシークエンスを繋ぐ暗転の多いことと言ったら、いくら5秒ぐらいでもこれだけあると上映時間の3%ぐらいにはなるんじゃないかな。全編モノクロで撮影されていることから来る印象だけでなく、とてもアメリカが舞台とは思えない風景ばかりが映されるところも狙っていますね。NYはともかくとしてもクリーブランドやフロリダにしてもとてもご当地とは思えない風景、「これがエリー湖だよ」とエヴァが案内するシーンがありますが、ただの白い雪原を見せているだけの感じで、「ほんとにエリー湖なの?」と疑いたくもなります。低予算だし、実はNY周辺の“なんちゃってロケ”で済ましてたりね(笑)。三人の登場キャラの会話は少ないまでは言わないにしても一文が極端に短く、この映画でいちばんしゃべってたのは、ハンガリー語しか話さないクリーブランドのおばさんでしょ(笑)。いちおうこの映画は三部構成、“序・破・急”というか三題噺みたいになっていて、とくにラストはまるで落語のオチですよ。だいたいフロリダの田舎空港からブダペストに直行する航空便なんてあるわけないじゃん(笑)。 とくに何も起こらないけど尺も丁度良い感じで不思議と退屈せずに引き込まれてしまいます。ロード・ムーヴィーならぬ“ロード散文詩”という感じでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-15 23:27:20)(良:1票) |
3. スターダスト・メモリー
《ネタバレ》 『81/2』を観たことがあってそれが好きかどうかによって評価が分かれるんでしょうね、もっともウディ・アレン嫌いの人にはとても耐えきれないでしょうけど(笑)。 冒頭の列車のシークエンスなんかは、『81/2』を意識して撮りました、ってのが濃厚に伝わってきます。フェリーニの様に映像に凝りまくるんじゃなくてしゃべくりに凝るアレンですので、『81/2』が好きな私にもちょっとくどいなと感じさせられました。でも映画と現実をごった煮にしたメタフィクションな構成は、本家フェリーニよりも洗練されている気がします。世界の高名な映画作家で“マイ『81/2』”を撮った人は多いけれど、アレンの場合はちょっと撮るには若過ぎたんじゃないでしょうか。 アレンの映画は絢爛たる女優陣の顔ぶれ観るのが愉しみなんですが、シャーロット・ランプリングはやっぱイイですね。友情出演のルイーズ・ラサー以外はみんな唯一のアレン映画出演ですけど、ランプリングが出るアレン映画をもっと観てみたかったです。セリフもないほんのチョイ役でシャロン・ストーンが出てるんですけど、どれが彼女だか判りませんでした(笑)。 [ビデオ(字幕)] 5点(2015-10-07 22:15:45) |
4. スターマン/愛・宇宙はるかに
《ネタバレ》 “愛”とか“ハート・ウォーミング”といったジャンルには縁遠いと思っていたカーペンター親父でも、その気になったら出来るんですよね。もっともこういうテイストの映画をカーペンターが撮ったのはこれだけで、おそらく今後も手がけることはないでしょう。 何と言っても素晴らしいのはジェフ・ブリッジスの演技で、地球人になり変ったスターマンをまるで知的障害者みたいな演技で表現するなんて素晴らしいアイデアです。いつものジェフらしい表情もほとんど見せないので、まるで違う俳優かと思うぐらいです。音楽もいつものようにカーペンター御大の♪ベン・ベン・ベンの重低音サウンドじゃなく、ジャック・ニッチェの美しいスコアを使っているのもグッドです。 ぶった切った様なラストはいかにもカーペンターらしさが出ていましたが、思いもよらずカーペンター映画でホロリとさせられるとこでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-12-16 23:02:16) |
5. スペースバンパイア
《ネタバレ》 懐かしいですね、久しぶりにマチルダ・メイのオッパイを堪能させていただきました。この映画、たしかTVで特番まで流して宣伝にはハンパなくカネ懸けてたと記憶してますが、映画館を後にして「この映画、なんかヘンだよね、なんか勘違いしてるよね」と?で頭がいっぱいになったんですよ。監督はともかくとしても、ダン・オバノンが脚本書いてジョン・ダイクストラが特撮を担当おまけに音楽はヘンリー・マンシーニという超強力スタッフなのに、どうしてこうなっちゃったんでしょうか? その答えはプロデューサーがメナハム・ゴーランとヨーラン・グローバスという“イスラエルの角川春樹”コンビだったからでしょう。『スターウォーズ』や『未知との遭遇』がすでに世に出た後で大作SFをヒットさせるにはどうしたらよいか、それはスピルバーグが決して手を出さないもの、そう“エロとオッパイ”で勝負するしかない! 実に正しい戦略です(笑)。 でもあまりに脚本に彼らは口を出し過ぎましたね、バンパイアやらゾンビやら後半はもう支離滅裂です。串刺しになったカールセン大佐とマチルダ・メイを収容して唐突に去ってゆく宇宙船、阿鼻叫喚のロンドンをたっぷり見せられた後なので観てる方としてもあっけにとられてしまいました。 リメイク・ブームの昨今ですが、さすがにこの映画をリメイクするという企画はないみたいですね。まあ私にとっては狂乱の80年代を象徴する様な一篇です。 [映画館(字幕)] 5点(2014-08-15 18:36:35) |
6. スキャンダル(1989)
《ネタバレ》 「プロヒューモ事件」と言えば英国政界最大のセックス・スキャンダルとして歴史に残っていますが、この映画を観て知ったのですがどうもスパイ事件自体は冤罪だったということです。本作はそこら辺の経緯を忠実に映画化しているみたいですが、はっきり言って全然面白くない。監督が、下手くそなくせに不思議と良い題材を手掛ける運を持っているが、それらをことごとく駄作にしてしまうマイケル・ケイトン=ジョーンズだからしょうがないかな(あの『氷の微笑2』の監督です)。高級娼婦キーラー役のジョアンナ・ウォーリーは妖艶な色気が漂っていて観て得した気分になれるのですが、プロヒューモを演じるイアン・マッケランのキューピーみたいな髪型がどうしても気になってしょうがなかったです(実物もそういう髪型なのでしょうけど)。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2010-10-18 00:48:43) |
7. ストップ・メイキング・センス
《ネタバレ》 80年代を代表するインテリパンクバンド“トーキング・ヘッズ”のコンサートを収録したジョナサン・デミの出世作にして伝説的傑作。内容は、ただただ“トーキング・ヘッズ”のパフォーマンスに密着するだけなのですが、コンサート・ドキュメント映画では最高峰の出来と言っても差し支えなし! “踊るニワトリ男”D・バーンがアコースティック・ギターとリズム用のラジカセを抱えてまだカラッポの舞台に登場し“サイコキラー”をひとりで歌いだす冒頭シーンのカッコイイこと。2曲目からひとりずつ他のメンバーが合流し舞台装置が運び込まれてゆく構成は、能舞台の影響があるみたいです。怪鳥のようなパフォーマンスを見せるD・バーンを緻密に計算されたカメラワークが追い続ける。カメラマンは『ブレード・ランナー』のジョーダン・S・クロネンウェスで、彼のカメラは観客の反応を無視してひたすらアーチストを追いかけてゆきます。コンサートやスポーツ試合はライブで見ていると却って舞台やフィールドで進行していることが判らないものですが、デミの緻密な画面構成はその後のライブ・フィルムに多大な影響を与えていますね。バンド内バンドとして有名な“トムトムクラブ”も登場し、ベースのティナ・ウェイマスのパフォーマンスが楽しめます。バンドって、女性がベースを弾いてると実にカッコイイですね。ちなみに、“米米クラブ”は“トーキング・ヘッズ”(というか“トムトムクラブ”)のパロディなんだなと改めて認識しました。 [ビデオ(字幕)] 9点(2010-06-20 20:20:00)(良:1票) |
8. スパイナル・タップ
《ネタバレ》 大槻ケンヂ大絶賛のカルト・ムーヴィー。架空のロック・バンド『スパイナル・タップ』の全米公演を記録したこれまた架空のドキュメンタリーなのですが、このバンドのキャラがまた良く創り込まれていて実在のバンドとしか思えないリアルさ。実際クリストファー・ゲストらは演奏もできて、フレディー・マーキュリー追悼コンサートにスパイナル・タップとして出演したそうで、もはや『半架空』バンドと言えるのでは。ロック好きならすぐ判るネタが満載ですが、私のようにイマイチその方面に疎い者でも十分楽しめます。冷静に考えれば冗談だと判るネタでも、ドキュメンタリー風に描かれると違和感がないということに驚きました。また演奏される曲の歌詞が下ネタだらけで笑わせてくれます。ただ難点は字幕翻訳で、どう見てもおかしな訳ばかりで何とかしてほしいところです。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-11 15:34:32) |
9. ストリート・オブ・ファイヤー
《ネタバレ》 お話の展開はまるっきり西部劇なんですけど、不思議と引き込まれてしまう迫力があります。特に冒頭15分は映画史に残るカッコよさで、ダイアン・レインのパフォーマンスは今観ても鳥肌ものです。リック・モラニスがあの顔で気障な台詞を連発するのには笑っちゃいます。 [DVD(字幕)] 7点(2009-12-06 18:01:59) |
10. スカーフェイス
《ネタバレ》 デ・パルマの作品としては最高傑作ではないでしょうか。この映画、不思議とデ・パルマ印の華麗な映像カットがないのですが、作品としてのパワーが群を抜いています。アル・パチーノの演技は言うまでもないのですが、このトニー・モンタナに絡む周辺人物たちがギラギラした悪党ばかりで、特にロバート・ロジアは「仁義なき戦い」の金子信雄を彷彿させるキャラで面白かったです。ジョルジオ・モロダーのやる気のなさそうな音楽が不思議とこの映画にはマッチしているんです。妹へのゆがんだ愛情が爆発するところからは、まるでギリシャ悲劇を観ているようなインパクトでラストの大銃撃戦まで一気に突っ走るところは、本当に「映画の神様が降りてきた」ような迫力でした。 [DVD(字幕)] 9点(2009-08-15 01:58:33)(良:1票) |