1. 戦場でワルツを
《ネタバレ》 アニメーションの可能性を広げた画期的な傑作、と言っても過言では無いかと思います。恐ろしくも、素晴らしい。 まず恐ろしいのは、作中で語られるレバノン紛争に関するインタビューにおいて、証言者たちの戦争に参加している“動機”がスッポリと抜け落ちていること。少なくとも劇中では「何故彼らは戦争に参加していたのか?」は語られない。大義なき闘争・戦争、これは怖い。それは主人公も同様です。するとどうなるかというと、主人公はその記憶を失う。証言者たちは淡々と記憶を語るが、その様子はまるで劇中でPTSDの心理学者が語る「カメラのレンズごしに見ている」状況に他ならない。彼らは現実に触れていないのです。 さて、現実に触れていないのは観客も同じです。たとえどんなに臨場感に溢れた戦争映画『プライベート・ライアン』だろうが、『ブラックホーク・ダウン』だろうが、『プラトーン』だろうが、我々はレンズ越しにその戦場を傍観している意識をどこかで持っている。しかしアニメーションというのは不思議なもので、実写ではないアニメという手法で語られることで格段にその戦場の風景は現実味を帯びる様になる。少なくとも私はそう感じました。イメージとしてはノンフィクション・ノベルを読む時に実際の映像を想像してしまう感覚に近いかと思います。 ただ、そうは言ってもアニメーションもレンズ越しに創造した映像であることに変わりはない。……が、最後にアニメーションの映像と実際の映像がオーバーラップする。サブラ・シャティーラの虐殺によって、居場所を失い廃墟の前で泣き叫ぶ女性、道端に山の様に積まれ転がっている死体の数々、そして頭部と手だけ瓦礫から覗かせている少女の遺体。そこで唐突に映画は終わる。正に観客は最後に現実に触れてしまった。これは地獄だ。 普通はFLASHアニメーションというと、最早時代に逆行した手法の様に感じますが、本作の様に淡々と戦場の様子を語ることが必須の作品においては実に効果的であると思いました。 [DVD(字幕)] 9点(2014-08-23 07:04:26)(良:1票) |
2. 精神
月並みな言い方ですが、映画全体が優しさで満ちていました。想田監督のいう所謂、"カーテン"の向こう側をありのままに映しただけで価値があると思います。この映画を観た人によって、その感想は異なるかもしれませんが(そういう撮り方をしているので)、精神病にかかっている人の"そのまま"を観たという事には違いない。精神病患者を知るという意味で、この映画を観たことは無駄にはならないと思います。 ただ個人的にはいらないと感じたカットが多々あったのが惜しいです。(女子高生とか、女子高生とか、女子高生とか……) [映画館(邦画)] 8点(2009-09-23 23:36:06) |
3. 千と千尋の神隠し
アニメーションとしては凄く映像は綺麗だし、話もしっかりしている、あとテーマもまあ良く観てると自然に伝わってくる。でもこの映画はどうも好きになれません。宮崎監督がある映画雑誌で「この映画は現代の援助交際などの性風俗を扱っている」といった事をインタビューで答えていたのを読んだのですが、そこまで性風俗について若い女性に警鐘を鳴らしたいならもっと直接的に訴えても良かったのでは?この映画で湯屋が舞台というだけで、それを読み取れる女性は非常に少ないでしょうし。ジブリが子ども向けアニメを作り続ける必要なんて別にないのですし(実際、前作のもののけ姫は子ども向けとは言えない)やるなら徹底的にやって欲しかったです。 [DVD(邦画)] 6点(2008-10-02 10:13:04) |
4. 戦場のピアニスト
かなり冗長な様に感じました。最後のシーンに至るまでに、戦争の内容を事細かに描くのは別に構わないのですが、あまりにもそれが多く主人公が只逃げ惑う映画といった印象を受けてしまいました。つまりピアニストじゃないじゃんって思ってしまいました。 [地上波(吹替)] 6点(2008-08-12 00:03:49) |
5. セルラー
《ネタバレ》 脚本の勝利と云うべき作品。良く練られているなぁと関心しました。携帯一つであそこまで盛り上げる作り手の手腕は素晴らしいです。携帯電話が壊れた時はホントにこっちまで焦っちゃいました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-31 10:00:05)(良:1票) |
6. ぜんぶ、フィデルのせい
アンナ役の子役の女の子の演技力が物凄いです。あの歳ですごいなぁ。 結構難しい社会体制の上に物語を置いているので、日本人は少し理解しにくいかも。一般人にオススメは出来ませんが、時代背景が好きなら一見の価値ありだと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2008-07-30 14:57:16) |
7. ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
個人的にここ数年の文芸映画の中ではダントツで一番です。ここまで宗教をネガティブに、否定的に描いた映画も少ないでしょう。こういう映画がキリスト教が盛んなアメリカで造られたのには素直に関心します。普通、批判が怖くて出来ませんよ。 そんな重苦しいテーマにも関わらず、結構エンターテイメントにも寄っている気がするし、そこら辺の配分も上手だなぁと。特にラストシーン、ダニエル・デイ・ルイスの気が狂った様な暴れっぷりは一見の価値あり。 [映画館(字幕)] 10点(2008-07-29 00:02:54) |