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1.   《ネタバレ》 
今ではすたれてしまった、南部曲家で馬と共に暮らす農民の厳しい生活ぶりを、四季折々の農村風習と峻厳な自然風景を織り交ぜながら、詩情豊かに描いた名作。民俗資料としての価値が高い。馬好きの娘イネが、艱難にめげずに母馬と仔馬を愛育していく過程が軸となって展開する。「最後は売られていく」という結末が容易に予想されるので、鑑賞中、随所に哀愁を感じることになる。艱難としては、借金で馬が買えない、父親が馬に蹴られて負傷して借金が膨らむ、母親が馬を厄病神扱いする、馬が病気になるが金欠で医者にかかれない、借金延滞で仔馬が売られる、仔馬を探そうと母馬が逃奔する、などがある。これらを毅然と跳ね返す、イネの土性骨の据わった強情っ子ぶりが最大の見所だ。しかし、それと同等かそれ以上に、イネと母親の、一見反発しあう二人だが、心の底で強い絆で結ばれている関係が描かれる。イネは馬に夢中で、馬のことしか見えない。母は、そんなイネを親不孝者となじり、馬を軽んじる。だが、イネが病気の馬のために、遠隔の温泉地まで雪を踏んで青草を採り、夜間に凍えながら帰ってくると、二人の感情が堰を切ったように爆発する。劇的な場面だ。仔馬が生まれると、母親は自分がイネを産んだときを思い出して、馬にも情が移る。祖母は、母親を補完する役割をしている。母親には無い、柔和で優しい母性を示す。祖母の母性がよく出ているのが、紡績工場へ出発するイネに寒餅を与える場面だ。「これを食えば水中りしねえぞ。来年の盆には馬っこに乗って迎えにいくから」と元気づけるが、一分間ほどの歳月経過風景描写を挟んで位牌姿となって登場する。これぞ熟練の演出で、泣かせる。才能の冴えだ。ひるがえって、父親の影は薄い。母と子の関係に焦点を絞りたかったのだろう。母、イネ、母馬と、母性を描いた映画ともいえる。夜になれば照明は裸電球一つだけの、暗い当時の農家の様子が忍ばれ、又、馬市、かまくら、なもみ、わらべ歌、雪下ろし、馬の代掻き、村祭、などの東北の土俗が丹念に描かれていて飽きない。尚、弟の見送りで、汽車と並走しながら馬上颯爽と尾根を駈け抜けるのは代役の老翁だ。この一場は作品中最も美しいと思う。当時、馬は容易には運べず、野外撮影地毎に別の馬が演じ、のべ総十五、六頭で演じているという。残念な点。病気の馬が洟汁を流す様子、イネが雪中の青草を採る様子、出産の様子が省略されている。
[ビデオ(邦画)] 8点(2015-02-19 16:55:06)
2.  噂の女 《ネタバレ》 
売春防止法が施行される以前の京都の色街の老舗置屋を舞台に、三つの視点から描かれる。 芸者が芸と売春で接待するという伝統的風俗の楽屋裏と、そこで働く女性の厳しい現実。一人の男性を母と娘で争う骨肉の愛憎劇。実家が置屋であることが原因で結婚が破談となり自殺未遂までした娘が、実家に帰り、母と置屋商売に理解を示して再出発する物語。 女将は密かに若い医者と情誼を通じており、金を出して開業させてやりたいとまで思っている。医者は女将の好意に甘えて交際してきたが、女将の娘が帰ってくると、娘に乗り換えてしまう。女将は娘に嫉妬するが、そのとき、狂言の舞台では、老いらくの恋を揶揄した「枕物狂」が演じられていた。道具立てが凝っている。娘が、母と医者の関係を知り、ひと騒動起るが、結局、医者の底が割れて二人は別れる。この愛憎劇が最大の山場と思うが、割とあっさりと描かれ、精彩を欠く。母にしろ娘にしろ、本当の男のことが好きだったのか疑問が残る。情念が感じられないのだ。どうも用意した素材を活かしきれていないように思える。芸者の一人が病気になるが、これもあっさりと死んでしまう。最大の悲劇なのに涙を流す暇もない。逃げた芸者が戻ってくるが、逃げ出した理由などもよく解らない。死んだ芸者の妹が、父の病気と貧困を理由にここで働かせて欲しいと申し出るが、返事は保留されたまま終る。人物の心の深層にまでは立ち入らない姿勢を貫いている。娘が若女将になるという暗示で、希望を持たせて終るが、娘が女将を継ぐと決めたわけではない。全てにおいて、明瞭に描くのを避けているようだ。善悪、正邪、理非、白黒がはっきり決められないのが人間である。女将は世間慣れしているが、医者に対しては愚かである。娘は学があり賢いが、男性には経験不足である。医者は外面は良いが、利己的である。そこが人間の面白さであり魅力である。そういう生の人間を描くのに、置屋はうってつけである。監督は、賢者にも聖人にもなれない人間が愛おしくてたまらないのだろう。あいまいさを残すのが日本流だ。日本映画の真髄を見た気がする。
[DVD(邦画)] 7点(2015-02-07 03:07:28)
3.  運命を分けたザイル 《ネタバレ》 
絶体絶命の雪山遭難から奇跡の生還を果たした登山家の物語。“絶体絶命”は掛け値なしで、これを奇跡と言わずして何を奇跡というだろうか。それほど絶望的な状況だった。1985年英国人のジョーとサイモンの二人が未踏峰のアンデス山脈シウラ・グランデ峰の西壁に挑む。無事登頂に成功するが、下山中に雪庇が崩れ、滑落したジョーが右足を骨折してしまう。二人はお互いの体をロープで括り、ジョーがロープの長さだけ滑べり落ち、落ちた地点にサイモンが合流する方法で下山する。それを繰り返すうち、ジョーは氷壁に宙吊りになってしまう。折しも吹雪で視界はきかず、声も届かない。共倒れを防ぐ為、サイモンはロープを切る。ここから奇跡が始まる。ジョーは45mも落下して氷棚に叩きつけられるが、命はとりとめる。急峻な氷壁は登れず、仕方なく地下に降りると偶然にも地表へ通じる出口が見つかった。そこから迷路のような氷河を這いずりながら抜け、と氷堆石帯に出た。そこからは片脚と杖代りのアイスバインで、激痛に耐えつつ、文字通り転がりながら移動し、9㎞の距離を5日間かけて漸くキャンプに辿り着いた。幸運にもサイモンはキャンプを去らずに待機していた。観ていて“痛い”ことおびただしい。何度も目をそむけた。痛いだけでなく、体感温度マイナス60度の極寒、飢餓、絶望感、死への誘惑に耐えながら一歩一歩すすんでいく姿は凄絶で筆紙に尽くしがたい。強靭な精神力があってこそだが、強い生への執着があったのかといえば、そうでもなく、本人に言わすと「生き抜くために進んだんじゃない。死ぬときに誰かにいて欲しかった」かららしい。死を意識したとき頭に浮かんだのが、好きでもないディスコ曲だったという話も体験者にしかわからぬことで、生々しい。長い距離も20分ごとに目標を定めて歩んだ積み重ねの結果だという。サイモンは、ジョーが怪我したとき、「このまま転落してくれたら」と告白し、ロープを切った重荷を一生背負っていくという。学ぶことの多い映画だ。特筆すべきは撮影技術で、空撮、遠景、俯瞰、仰視、アイゼンとアイスバイルの大写しを巧みに使い分けている。山岳映画の最高峰だろう。現地で撮影し、クレバスも本物、空撮に映る姿は俳優ではなく、本人だ。山岳美も素晴らしく、粉雪の作りだす「アンデスの悪魔」は必見。再現劇方式で本人達が顔を出すが、年月を経ている為、冗談交じりになっているのが残念。
[DVD(字幕)] 8点(2015-02-04 05:43:27)
4.  受取人不明 《ネタバレ》 
映像を象徴的に表現にする超凡さは映像詩人と呼ぶにふさわしい。主題は朝鮮戦争の心的傷と米軍基地問題だが、真の主題は、暴力や無知、差別などの人間の持つ悲劇性だろう。虚飾を排し、人間の暗部を冷徹な眼で抉り出し、人間の真の姿を歴々と提示して見せる。この監督の独断場だ。少女は碧眼の劣等感で屈折し、自分をからかう子供を威嚇し、愛犬で自慰行為をし、覗き人のの目を鉛筆で突き、目の手術と交換に米兵の恋人になるなど打算的だ。少年は貧困で学校に行けず、又気弱な為、いじめを受ける。少女に恋しているが、純愛ではなく、夜に忍び込んで部屋を盗み見する淫靡さを持つ。混血児は差別されて他に職業が無く、母の愛人の犬屠殺業を手伝っている。母は黒人兵相手の娼婦だった。米国に渡るのを夢見て手紙を出すが、いつも宛先不明で戻ってくる。娼婦故に差別され、村人と諍いが絶えない。戦争が暗い影を落とす。少女の父は北に亡命、少年の父は足の障害者、混血児は戦争の落し子だ。片目は偏見の象徴。差別の目で見られるということ。少女と目を負傷した少年と混血児の三人が揃う場面は印象的だ。少女は身の保全の為、治癒した片目を潰すという二重の悲劇にみまわれる。犬は下層民の象徴。犬を虐待し、食べるのは、同族相争う意で朝鮮戦争のこと。犬たちが縄を引いて人間の首を絞めるのは、三人の反逆を意味する。土は祖国の象徴。混血児の死は自殺だろうが、混血なので半分しか土に埋まらない。母は遺体を掘り出し、それを食べることで息子を誕生以前の状態に復し、火の浄化で魂を土に還元することを願った。異形の愛である。銃は暴力の象徴。木製銃でも悲劇の引き金となる。土中から拳銃が堀り出されのは戦争の再現を意味する。少年は銃で膝を撃たれ、父親と同じ下肢障害者となる。弓は非力の象徴。戦争の前では誰もが非力だ。刺青は束縛の象徴。混血児が母の刺青を削ったのは、母を開放する意味があった。米兵は少女を束縛しようと刺青を刻もうとした。溜まりに溜まった怒りの暴発とその反作用と悲劇の連鎖で物語は終焉する。全員が不幸となる救いのない物語だ。だが、絶望でない。愚かだが、利己主義ではなく、一種緊急避難的意味があり、魂は救済されるだろう。手紙が届く。混血児の父の知人からで、蓋し黒人兵の死を告げるもの。兵士がその手紙を読む場面の朝靄の美しさに仄かな希望が暗示される。人間の本来の姿はかくも醜く、美しい。
[DVD(字幕)] 8点(2014-10-27 16:14:58)
5.  ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説 《ネタバレ》 
日本各地に残る浦島伝説、羽衣伝説、竹取伝説を下敷きにして、宇宙人と怪獣を登場させ、自然破壊や公害等で地球を毀損する現代人に警鐘を鳴らす内容である。宇宙人が、日本の原人ともいうべき海人族を導き、宇宙人が遮光器土偶やかぐや姫や羽衣天女の雛型となったという設置。宇宙人は、現代人の遺跡破壊や行き過ぎたリゾート開発に瞋り、怪獣を使って破壊行動を行った後、海人族の末裔を伴い宇宙船で地球を脱出した。宇宙船は「ノアの方舟」で、行く先は「常世の国」の理想郷だ。内容から、観客が宇宙船に乗った人々を羨ましいと思わなければ成功とはいえないだろう。実際は、全く羨ましさを感じなかった。宇宙人は、意に染まない人間を抹殺する酷薄な殺人鬼に過ぎないし、海人族は能面のように不気味で生彩がなく、人間らしさに欠けている。自然を心から愛し、仁徳に優れ、善行をなす、理想的な人間として描けば印象は違っただろう。慈悲深い宗教指導者のような描き方でも共感できただろう。宇宙人も海人も薄気味悪いので同調できないのだ。目玉であるべき肝腎の怪獣が添え物扱いでは、ウルトラQの名前が泣く。ウルトラQ・シリーズは、怪獣番組の嚆矢で、怪獣を魅せることで爆発的人気を獲得し、次のウルトラマン・シリーズに繋がった。本作品で、怪獣の出番はほんの顔見世程度でしかなく、民家を少し破壊して早々に退出する。登場する必然性も希薄で、天変地異でも代替え可能だ。又、怪獣の造詣に魅力が無いことも申し添えておく。怪獣に対する愛情、思い入れが足りないのは明らか。「怪獣を中心に据えた物語」という基本概念を尊重すべきだった。宇宙人の造詣もお粗末だ。遮光器土偶は宇宙服に似ているという発想から、宇宙人の姿を遮光器土偶そのものとし、もう一つの金属質の形態も、取り立てて見映のするものではない。最後まで、彼女の真意や苦悩は伝わらなかった。目指しているもの、理想としている姿が不得要領なのだ。地球を捨てれば解決ということでもあるまい。独特の角度、構図、移動撮影、照明等の凝った演出が堪能できるのが、この映画最大の佳処だ。建物をゆがめたり、構図を奇妙な形に切り取ったり、隠微で乾いた雰囲気を出す演出が達者なのだ。竹取物語の輝く竹にちなんで、竹林の地中から照明を放射する映像は脳裏に焼き付いている。ただ斬新だった演出手法も、今となっては尋常一様のものでしかなく、これは前衛芸術の宿命だ。
[地上波(邦画)] 6点(2014-09-18 01:07:43)
6.  うつせみ 《ネタバレ》 
無断で留守宅に住みつく男が主人公。原題の「空家」は心の空虚を意味する。男は社会との接点を持たない。その象徴として彼は“無言”。彼は留守宅に侵入すると、音楽をかけ、洗濯をし、料理を作り、風呂に入り、寝る。人が居ないと寛げるのだ。壊れものがあれば修理する。これは男に“癒す力”があることの象徴。ある家で、心に空家を持つ女と出逢い、一緒に行動するようになる。男と居ることで女は癒される。始めは言葉を失っていたが、最後は言葉を取り戻す。愛の言葉だ。英題の「3-Iron」はゴルフクラブの3番アイアン。低い弾道で長距離を飛ばせるが、扱いが難しい。この映画の隠れた命題は「暴力」だ。3番アイアンはその象徴。クラブは護身用、凶器にもなる。この世に暴力はなくならない。女が心を喪失したのも夫の暴力による。ボクシングも一種の暴力で、男が修理した子供用ピストルも使い方次第で暴力となる。警察の取り調べでも暴力が横行する。男は護身用としてクラブを持ち、常に技を磨いている。心の防御を固めていたのだ。が、時には凶器としても使われる。男が女の夫と刑事に、夫が男に痛打を加えた。暴力の危険性を知っている女は男にゴルフの練習を辞めさせようと邪魔をする。しかし、男の誤打した球が車のフロントガラスに当って事故が起る。落ち込む男。今度は女が癒す番となり、二人の心は接近した。冒頭の揺れるゴルフネット越しの女神像は、暴行される女を表現する。洗濯物を手洗いするのは、洗濯機の音や動きが暴力的だから。家庭には温かみが必要だ。が、実際には諍いや暴力が絶えない。だから男は留守にしか入り込めない。長椅子のある家は夫婦仲が良い。温かみのある家庭だ。だから、女も自然に入っていけたし、夫婦も受け容れた。あの家は「理想の家」の象徴である。世の中が理想の家になれば男にも住む場所ができる。暴力のある家に入るには、不可視になるしかない。男はその術を身につけ、夫には見えない人物となり、女の家に侵入した。そして二人は結ばれた。お互いが相手の心の家に住みついたので、二人合わせても体重はゼロだ。恋愛の姿を借りて、暴力ある社会を批判した眩い幻想譚。その奇想と整合の取れた脚本、映像の美しさには瞠目する。消極的な解決策に異論もあるが、口にするのは無粋だ。雰囲気を楽しめばよい。男が納棺士の技術を持つ。女がアナログ体重計を操作する。この二点は不要と感じた。
[DVD(字幕)] 8点(2014-09-13 05:39:42)(良:1票)
7.  ウエスト・サイド物語(1961) 《ネタバレ》 
想像するにミュージカルの既成概念を打ち破った作品ではないだろうか。それまでのミュージカルといえば、お気軽に楽しく歌って踊って、ハッピーエンドの愛と夢と希望の物語で、シリアスなものは少なく、童話や空想物語に近いものだった。本作品は全編に溢れる若さと躍動感が特徴で、斬新な俯瞰カットやクローズアップや多カット編集により、汗の匂いが嗅げるほど役者に肉薄している。そして暴力抗争の末、少年ギャングの三人が亡くなるという悲劇。シリアス、暴力、ギャング、バッド・エンド、悲劇、これらはミュージカルにふさわしくない題材だ。「フレンチ・コネクション」「LAコンフィデンシャル」「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」等のミュージカルは想像しにくい。素材と形式が合わないからだ。一方で「アウトサイダー」「理由なき反抗」等はミュージカルにしてもおかしくない。理由は登場人物が未成年だから。未成年者はその存在自体があやふやでどこか危なげ、童話や空想物語の人物めいた所がある。青春物語にすれば例え暴力や悲劇を扱ってもミュージカルになる。それの嚆矢が本作品だろう。スタジオを出て町に飛び出したのも特筆すべきこと。しいて命名すればストリート・ミュージカルの誕生。埃にまみれた昼の街の薄汚なさと混雑ぶり、露に濡れた夜の街の不気味な暗闇、それらの中に入り込むことにより、真実味が増し、演技と悲劇に重みが出た。もう一つ言えば芸術性だろう。綻びひとつ見えない完璧なシンクロ・ダンス、オーケストレーションの凝った編曲と演奏力の高さ、楽曲の素晴らしさは云うまでもない。シリアス加減のバランスも抜群で、例えば刑事やキャンディ屋のじいさんが「けんかはやめて~」と歌い出していたら台無しになっていただろう。昔のミュージカルでファッションも題材も古めかしいのに、どこか斬新さを感じさせるのはこれらの為だろう。物語は民族差別、恵まれない環境、若さの暴発、敵味方に別れた恋人、憎悪の連鎖、復讐殺人と盛りだくさん。あんな小さなナイフじゃ死なない、何故救急車を呼ばないのか、死体の処理や葬式はどうした、兄を殺した相手とその日に寝るのか、遅れると何故待ち合わせ場所に電話をかけないのか等、ツッコミどころはある。喧嘩に明け暮れるギャング団はアホだが、主人公二人は違うので感情移入できる。その設定の上手さ。上階の窓から投げつけたられた瓶は世間の冷淡視の象徴だ。
[DVD(字幕)] 8点(2012-12-24 23:53:53)(良:1票)
8.  ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間 《ネタバレ》 
「全てを映す、あらゆる視点から映す」という編集方針が成功の要因。この映像を見れば、どんな朴念仁でも、”ウッドストック”が単なる音楽祭でなかったことは容易に理解するだろう。約30組の人気アーティストの熱演と熱狂する大群衆の姿を見るだけでも圧巻なのに、ドキュメンタリー映像が付加され、当時の社会的状況や若者文化の一端が垣間見れる。音もフィルムもカメラワークも荒削りだが、これらが三位一体となって価値を高めており、間違いなく歴史に残る映像だ。特徴を一言でいえば「若者の熱狂」だろう。当時の音楽には若者を熱狂させる魔法のような力があった。愛や平和への切実な思いが込められていたからだろう。ベトナム戦争反対運動、徴兵忌避、麻薬の乱用、従来の価値観を否定するヒッピー文化の興隆など様々な社会変動の中で、最大規模に催されたイベントだった。企画が金銭目的でなかったのはあきらか。農場主のスピーチや、意外にも若者をほめる警察署長や医者など心温まるインタビューがあるが、最も感銘を受けたのはトイレ掃除のおじさん。芳香剤を置く気配りを見せて「自分にも彼らくらいの息子が二人いる。一人はベトナムに行っている」これにはほろりとさせられた。音楽のことはわからないけど、居ても立ってもいられず、トイレ掃除のボランティアを買って出たのだろう。ディレクターカット盤は225分、40周年記念盤は更に170分追加されている。好演が多い。ウッドストックを代表する曲を一つ選ぶとすれば、リッチー・ヘブンス がゴスペルの歌詞を借りて即興演奏した「フリーダム」だ。コード弾きを越えた「親指弾き」での熱唱は神がかり。三大ギタリストは、ジミヘン、ジョニー・ウインター、サンタナで、これにアルヴィン・リー、ピート・タウンジェント、レズリー・ウェストと続く。三大歌手は、ジョー・コッカー、ジョーン・バエズ、ジャニス・ジョップリン。二大ドラマーは、キース・ムーンと19歳のマイケル・シュリーヴ(サンタナ)。視覚的なカッコよさは、ザ・フー。上半身裸でマイクを振り回し、若さを発散させるダルトリーの姿は、ロックンロールそのもの。ジミヘンはトリに相応しい。スケジュールが押しに押して登場したのが四日目の朝となり、観客は2万数千人に減っていたが、演奏は文句なしに素晴らしく、特に「星条旗よ永遠なれ」の風変りな美しさは誰の耳にも記憶に残るだろう。天才のなせる業だ。 
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-16 16:40:22)
9.  ウエスタン 《ネタバレ》 
「もしルキノ・ヴィスコンティが西部劇を作るとすれば」をコンセプトに作られたらしい。道理で、カルディナーレを起用したり、歴史劇要素を盛り込んでいるわけだ。観客の期待を良い意味で裏切る。冒頭、永々と三人の無頼者の”顔芸”をクローズアップで魅せたあと、満を持して主人公ハーモニカが登場。言葉の言いがかりによる撃ち合いで、あっという間に全員倒れ、しばらくして、ハーモニカが起き上がる。次にアイルランド移民のブレッド一家が登場。が、三人は突如射殺される。殺し屋が登場すると、その顔は”アメリカの正義”ヘンリー・ホンダ!残った子供が登場して、そこで初めて音楽が流れる。それまでは生活音のみ。音楽も素晴らしいが、このじらしにも似たタメが見事な効果を上げる。ここまでは芸術品。子供をも殺す残虐性を見せつけ、映画の方向性が決定する。ブレッドの妻が登場して中だるみするものの、馬車が休憩所に入ってから再沸騰する。外でけたたましい馬のいななきと拳銃音が響いたあと、のそっと入ってくる一人の男。酒を飲む手がアップとなり、囚人と知れる。何と不気味なことか。そしてハーモニカとの息づまる初対面。ケレン味に満ちた演出で、十分に時間を使った序章は完璧。監督は才能を出し切っている。この緊張の糸が最後まで持続しなかったのは悔しい。一見して主題は「復讐」にみえるが、実は「夢」ではないか。ブレッドの夢は、自分の土地に鉄道が引かれ、町が建つこと。それを夢見て、十数年も待ち続けた。妻の夢は、娼婦をやめ、田舎で暮らし、普通の家庭を持つこと。鉄道王モートンの夢は、鉄道を海の見える太平洋にまで引くこと。病気で余命の少ないことが、彼を犯罪にかりたてる引き金となった。悲劇である。ハーモニカの夢は兄の仇討ち。複数の夢は交差し、死ぬ者は死に、去る者は去り、残るものは残った。そして新たな町に新たな歴史が刻まれる。わかりづらい部分がある。冒頭、ハーモニカがフラスコの部下三人を殺すが何故?事故なのか?フラスコがハーモニカを雇ったはずだが。もう一つ、山賊のシャイアン一味がモートンを襲う場面が省略されている事。シャイアンがモートンに撃たれたにしては、戻ってきた姿が元気すぎる。ここと、ハーモニカが死にゆくフラスコにハーモニカを銜えさせるところがリアリティに欠く。尚ブレッドの娘がダニーボーイを口ずさむが、この歌詞は1910年のもので時代が合わない。
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-13 06:22:03)(良:1票)
10.  ヴェラクルス 《ネタバレ》 
1866年フランスの傀儡政権であったメキシコ政府は、フランス兵主体の軍隊でかろうじて持ちこたえていたが、農民主体の革命軍に脅かされていた。いわゆるフランス干渉戦争が舞台。1873年に登場した十七連発のウインチェスター73年型ライフルと思われるものが登場するのはご愛嬌か。それまでは六連発だった。人間を好まない根っからの悪漢ジョーとその手下どもと、常識人である南軍の敗将ベン元大佐が政府軍に雇われ、侯爵と共に伯爵夫人の馬車を港湾都市ヴェラクルスまで護衛する任務を担う。馬車には金貨が隠されていて、それを知るジョー、ベン、伯爵夫人、侯爵、それぞの思惑が交錯し、さらに革命軍がこれを狙うという展開で、先が読めない面白さがある。人間ドラマとして、ジョーとベンの二人の強烈なキャラクターのぶつかり合いと最終決闘がある。遺憾に思えるのは、ベンのキャラが弱いこと。馬から落ちて死んだふりしたり、金貨に執着をみせたりと一貫性がないように思える。汗もかかず、髪も服装も乱れないのでは戦場感がなさすぎる。ベンと農民娘との恋愛は映画に彩を添えている。ジョーが最後に改心すれば、彼の成長物語として感動できたと思う。その伏線があっただけに残念。圧巻であるはずの、最後のモブ突撃シーンだが、へたなぶつぎり編集で、流れが断ち切られ、派手な銃撃戦にも関わらず緊張感がでていない。最終対決では、銃撃音が急になくなり、あたりが静寂にと包まれるというベタな演出。洗練されておらず、凡庸な出来だ。傑作になりこそねた。
[DVD(字幕)] 8点(2012-12-12 17:29:07)
11.  運動靴と赤い金魚 《ネタバレ》 
靴を失くすという小さな日常の出来事から広がる物語。たかが靴だが、貧しい家の子供にとっては切実。大人の視点で言えば、靴を失くしたことを正直に打ち明ければよいし、兄妹の運動靴の交換は学校のすぐ近くで行えばよいし、マラソン一等賞の賞品を売って運動靴を買えばよい。でも子供には子供独特の考えがあって、思わぬ行動に出ることがある。そこが面白く、子供たちの一喜一憂が新鮮。◆兄弟愛を描いているようで、主眼は家族愛でしょう。特に父子愛。母は病気で存在感が薄い。が、自分達より貧しい隣人にスープをおすそわけするという(イスラムならではの?)優しさを持つ。父の描写が素晴らしい。子供達には強い父。家賃五ケ月も溜めているのに家主には何故か強気の姿勢。家に砂糖がなくても、仕事で預かった砂糖を拝借するようなことをしない。茶給仕の仕事では家族を養うには足らない収入。そこで庭仕事の仕事を始めるという善き父ぶり。一方でコーランの一節には涙を流し、お屋敷街の豪邸で「庭師です」と売り込めず、犬に吠えられ逃走という小心ぶり。庭仕事で予期せぬ高報酬を貰っても自転車事故を起こしてチャラに。そして最後に最大のサプライズ、お金をやりくりして子供と約束した靴を購入。こんなに正直で人間味溢れた父親の元では子供も素直に育つと思う。兄妹が、失くした靴を履いている少女の家を訪ねるが、その父親が盲目で、どうやら自分達より貧しいらしいとわかったとき、何も言わずに帰るという心温まる挿話があるが、この優しい心を育てたのは両親の薫育でしょう。親の後ろ姿を見て子供は育ちます。◆靴を洗っている最中に、ついシャボン玉遊びになる場面は、子供の幸福を象徴する最も美しいカット。男の子疵ついた足を癒すように集まる金魚は家族の愛の象徴。最後の喜ぶ場面を省略したのは潔い決断。◆違和感があるのは、学校の女子部の終了と男子部の開始の間の時間が無さすぎること。普通はお昼休みが入る。これは兄に走らせて、これが意図せぬ訓練となり、後半のマラソンでの活躍につなげるための”強引な”演出。あと一等賞を取らせるのは如何なものかと思う。テストで満点、マラソンで一等では出来過ぎの感あり。主題からして四等賞が妥当かと。溝に流れる靴を取ろうする場面、自転車事故場面、マラソン場面などはカメラワークがこなれていない印象。父が新しい靴を調達する場面は一番最後がよろしいのでは。
[DVD(字幕)] 8点(2012-09-10 12:06:17)
12.  浮き雲(1996)
ハリウッド映画の演出過剰、過激な映画を観慣れていると、この作品のようなあらゆる意味で抑制の効いた”つつましい”映画が新鮮に見えてくる。最小限の科白しかなく、表情は常に無表情、アクションも控えめで、これといった盛り上がりの無い日常を淡々と描く。結論を見せない演出も特徴のひとつ。職場をクビになったり、就職に失敗したり、賭けで負けたりする場面などは最後まで描かれず、次のシーンで結果が暗示される。顔の表情だったり、酒の飲み過ぎで倒れていたりと、笑える仕組み。省略の達人である。無表情キートンのように観客を突き放すのではなく、ほのぼのとした温かみが感じられるのも佳い。独特のセンスがひかります。どのジャンルにも当てはまらないような映画だが、しいて分類すればコメディ。それも大笑いや中笑いではなく、ペーソスの中に温かみのあるクスリ笑い。物悲しさと笑いの同居はチャップリンを彷彿させる。慣れてくると登場人物の飄々としたおとぼけぶりに笑いを禁じ得なくなってくる。味わいがあるんですね。あと意表を突く演出が多いのも特徴。例えば、アル中で包丁を振り回すシェフ。その存在だけでも笑えるのに、彼を取り押させるのに男性が失敗し、女性が殴って取り押さえる。その様子を一切見せない。科白もない。あっという間に何事もなかったかのように収まり、翌日シェフは怪我させた男に治療代を毎度の事のように払う。このシェフが失業してホームレスにまで落ち込むが、アル中更生施設を経て復帰するのも意表を突く。悪徳職業斡旋所で騙されたはずが職が見つかったり、結局そのオーナーがが悪徳経営者だったりと、どこまでもすっとぼけた脚本。これといった盛り上がりがないのに退屈しないのは”意表”の効用でしょう。この映画は監督の人生観や性格が強く反映されている思う。これだけユニークな映画はめったにないから。つつましく、引き籠り系の性格であることは想像がつく。物語は、共に失業して仲たがいした夫婦が絆を取り戻す話と、やむなく廃業したレストランを再開させる話。ハッピ・ーエンドで陽気な音楽がかかっても、あくまでも笑わない夫婦。感情を表に出さない国民性が下地にあると思いますよ。そんなことを考えてしまう奇妙な映画でした。この独特の世界観は癖になるかも。良作です。
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-08 23:04:51)(良:1票)
13.  ULTRAMAN 《ネタバレ》 
ウルトラマンの人気の秘密は、ウルトラマンが悪者怪獣をやっつける爽快さと怪獣のかっこよさの2点に尽きると思う。 この作品は、不要なリアリズムを持ち込んで魅力を大いに減じている。ウルトラマンの人間体は独身の青年でよいのに、病気の子供との時間を取りたいがために戦闘パイロットを辞める心優しい父親になっている。ウルトラマンの家庭を出しては、神秘性・カリスマ性が失われるのは当然の帰結。怪獣造形に醜怪さ、グロさを求めているが、これが不正解。子供たちは心のどこかで怪獣を応援している。町や港を奔放に破壊する巨大怪獣の自由さと力強さにあこがれを抱くのだ。大人に対してあこがれるように。だから造形が美しく、親しみがもてる怪獣ほど人気がある。おどろおどろした悪魔的な怪獣など怖がられ、すぐに忘れ去さられるだろう。名前も「ザ・ワン」で無機質だ。変態途中の人間の顔も醜怪の一言。子供達は顔をそむけるだろう。「ウルトラマン・シリーズの魅了=怪獣の魅力」を理解していないのだ。怪獣を強大かつ極悪にすればそれを倒したときのカタルシスが増すだろうという考えは間違いだと思う。さらに本作品はそれまでのシリーズでは無縁だった人間のダークさを出している。怪獣に乗っ取られた人間の恐怖の顔が皮膚から浮き出てきたり、怪獣を倒す特務員がその人間の恋人だったりする。子供たちに心の闇を見せてどうしようというのか?痛快で楽しい筈の怪獣映画で。並列放映されていたドラマ「ウルトラマン・ネクサス」はそのダークさが災いして、視聴率1%台と低迷、打ち切りとなった。本作品も興行収入1億4千万円と散々な結果。理由は明白。一言でいえば、ヒーローをヒーロらしく描いてないこと。ダークさ、シリアス路線で挑むならば、ウルトラマン以外のシリーズを立ち上げるか、完全に大人向けに作るかするしかない。内容をシリアス、ダークに転じて、対象は子供のままというのが矛盾している。◆気になった点。主人公の子供が難病であるという設定が生かされていない。自衛隊員が青い球体に飲み込まれる場面が描かれていないのでわかりづらい。赤い球体がどこからやってきたのか、赤い球体と青い球体の関係など説明がない。極悪怪獣が言葉を発するという違和感。ウルトラマンのごてごてした造詣も戦いぶりもかっこよくない。
[DVD(邦画)] 3点(2012-06-30 15:51:01)
14.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
違和感が強い。人類と宇宙人との戦争を描いたSF娯楽大作の筈が、離婚別居中の父子が破綻しかけた親子愛を取り戻すシリアスドラマになっていて取り合わせが悪い。路線は斬新だが娯楽性は薄れる。肝心の人間ドラマが薄っぺら。父は子供たちに関心がなく高圧的だが、彼なりに愛情はある。泊りに来る子供達に食料も用意していないが、仕事は断った。息子は反抗期で、娘とは心が通じない。そこへ宇宙人襲来。父が命がけで自分達を守る姿を見て、子供達が心を開く。その企図は分るが、息子は心を開きかけたが、勝手に戦場へ行ってしまう。娘は恐怖に震えるのみ。ラストでも娘は母と抱き合う。息子と再会しても、彼がどう過ごしたか不明なので感動に至らない。父子関係に大きな変化がなく、感情移入ができず、何とか助かって欲しいとは思えない。宇宙人が劇的に倒れたのと同様に人間ドラマも劇的な変化が欲しい。父が娘のために人殺しするのは本末転倒。◆トライポットの攻撃シーンは迫力あり。地割れや火だるま電車シーンは秀逸。軍との戦闘場面がほとんどないのは残念。空を飛んだり、宇宙船がいないのも不本意。空襲による圧倒的な軍事力を見せれば、人類の絶望感が表現できたのに。1家族の視点で描く弊害だ。大統領も軍司令部も学者も登場せず、群像劇もない。地球規模の戦闘が局地に留まっている。その象徴が、家族が潜む地下室に宇宙人が侵入するシーン。田舎の廃屋に侵入して何の情報を得ようとするのか。宇宙服もなし、武器も持たずに。◆遥か昔からテトラポットで地球を観察していたという設定は不用。何のために何万年も待つのかという解けない疑問を抱かせるだけ。最初は光線で人を蒸発させていたが、後半では人を捕捉、集血。一貫性がない。赤い植物は宇宙人の繁栄に必要なもの(テラフォーミング?)なのだろうが、地球環境で生息できるかの実験を怠っていた。◆有名なオチは変更のしようがない。だから視点を変えて家族愛を描いた。だがもっと説明のしようがあるだろう。宇宙人をおばかさんにしたのでは台無しである。映画を否定するようなもの。宇宙人なりに高度な対策を練ってきたが、地球の細菌やウイルスには彼らの科学を越えた神秘の性質があり、それに破れたという風な後づけが欲しい。あっけないのが悪いのではなく、説明がないのが悪い。ちなみに父がクレーンを操縦する姿はトライポットを操縦する宇宙人に擬していて興味深い。
[DVD(吹替)] 7点(2011-09-25 20:19:08)(良:1票)
15.  ウィロー 《ネタバレ》 
【気を削がれる場面】①物語は、王が、ある赤ん坊が将来自分を殺す(王位を簒奪)という予言を受ける運命説話。映画も一人の子が生まれ悪の女王を倒すという予言で始まる。なのに、最後まで子は赤ん坊のまま。何の活躍もしない。あの子がどう特別なのか?。 ②ウィローの旅の目的は、人間に赤ん坊を返すというもの。人間に返したら、ブラウニーを支配する妖精が赤ん坊を奪って、ウィローに守護を託す。魔女に会いに行ったら、動物の姿になっている。次の旅は良い国王の国へ行くこと。到着したら誰もいない。いちいち流れが中断される。赤ん坊を拾ったウィローが、仲間と出会いながら、悪い魔女を倒す旅に出る単純な話で良い筈。 ③ウィローの最初の旅の仲間は途中で帰ってしまう。だったら最初から出さなければ良い。 ④妖精は魔法の杖を魔女ラゼルに渡して一緒に旅をしろと言う。何故自分で渡さないのか。そもそも妖精は赤ん坊を自由に連れ戻す能力がある。だから赤ん坊が危機になってもハラハラしない。 ⑤風来坊マッドマーディガンは檻の中。赤ん坊を預る条件で助けられるが、赤ん坊はすぐに奪われる。その場面は省略。マッドは赤ん坊を探しもせず、酒場で年増と不倫。最も頼りになる旅の仲間なのだから、もっとましな挿話にすべき。 ⑥マッドと悪の女王の恋が不自然。告白されただけで恋に落ち、母を裏切るだろうか。伏線として母の悪政を批判する場面が欲しかった。 ⑦悪の女王は、赤ん坊の予言は信じたが、娘が自分を裏切るという予言は信じなかった。何故か? ⑧悪の女王が、赤ん坊の魂を奪う儀式が無駄に長い。闇夜から朝になっている。儀式無しで殺しちゃだめなのなら、その理由を説明せよ。 ⑨悪が支配する世界。支配される民衆はそっちのけ。最後に民衆が蜂起すれば良かった。 【感想】退屈な話。特殊能力のある仲間が一丸となって悪を倒すのなら面白いが、みんなばらばらの方向を向いている。マッドは成り行き、娘は恋、ブラウニーは道案内、ラゼルは復讐、ウィローは赤ん坊。人食い犬や怪獣が彩りを添えて何とかもたせている。戦闘も魔法合戦も先が見え見え。ウィローが手品で敵ボスを欺くのは良かった。村での手品の伏線が効いている。サブストーリは、ウィローが魔術師見習いから一人前の魔術師に成長する話。折に触れ勇気を見せているが、大して活躍していない。最後はラゼルに魔法の本をもらってお終い。すっきりしません。
[DVD(字幕)] 4点(2011-02-15 09:39:30)
16.  ウォンテッド(2008) 《ネタバレ》 
◆一番凄いと思ったのは、ネズミを千匹も捕まえたことかな。実際やってみると大変だと思うよ。それに一匹、一匹に時限爆弾を仕掛けるのだから。 ◆一番不可解なのは、ウェズリーの父親クロスだ。息子を守るのなら、電話するとか、手紙出すとかしなさい。金銭的援助くらいしてやってよかったと思うよ。それに何故息子を轢き殺そうとしたり、実際に腕を撃ったりしたのか。呼び出したいのなら電話するか、弾丸を届ければよい。 ◆一番不思議なのは、貯金の残高が増えたり、減ったりするところ。 ◆一番驚いたのは、親爺の協力者(弾丸製作者)が、川に落ちたウェズリーを救出したところ。いったいどうやったらそんなことが出来たのか?病院に運ばれたのを連れ帰ったのか。 ◆一番がっかりしたのは、フォックス(アンジー)の360度回転同士撃ち+自殺弾。一人一人との対決が見どころになった筈なのに残念。 ◆一番知りたいのは、1000年も続く「運命の機織り機」の正体の謎。暗殺すべき人物の名前が暗号の二進法で織られて出てくるらしいが、同姓同名がいたらどうなるの?「Death Note」じゃないけど、名前を知られていなければセーフ? ◆一番疑問なのは、飛び杼を掴んだり、蝿の羽を撃ちぬいたり、弾丸を曲げることは訓練で可能としても、超ジャンプや超カー・アクションはどうやってできるようになったのかということ。 ◆一番ひっかかるのは、スローンはクロスを殺すのに息子を暗殺者に仕立てるという手の込んだやり方をし事た。普通に考えれば、息子を人質にとり、おびきよせればよかったのだ。 ◆一番バカバカしいと思ったのは、ウェズリー最初の暗殺方法。わざわざ走っている電車の屋根の上から会議室を狙うなんて。相手に近づいて撃てばいいじゃないか。 ◆一番欲しいと思ったのは、あのすぐに傷が回復する風呂。特許で食っていける。 ◆一番哀れなのは、ウェズリーに勘違いで射殺されたネズミ爆弾男。「流れ弾にやられた」なんてウェズリーを庇っている。
[DVD(字幕)] 5点(2010-10-13 05:53:22)
17.  うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 《ネタバレ》 
◆文化祭の前日が永遠に続くという不思議な現象が起る。前日の記憶な消えてゆく。この現象に初めて気づいた温泉マーク先生が家に帰ると、部屋は埃と黴まみれになっていた。長い月日が経っていたのだ。種を明かせばバカバカしい夢オチの一種だったが、その前のサスペンス部分は中々なもの。世界が滅んだと思わせる導入部は衝撃的だ。絵柄が古く、表現が大げさであることを除けば、今でも楽しめるアニメだ。 ◆偽現実世界の正体はラムの夢だが、「皆が楽しく暮らしていればいい」という無邪気すぎる夢が現実となったもの。あまりにも単純すぎるが、宇宙人だから納得できてしまう。無邪気な夢に無邪鬼が絡むという洒落。一人の見る夢に巻き込まれた人たちはさぞかし迷惑だろうと推察するが、「特に害がないので別にいいじゃん」という連中が多い。そこが「うる星やつら」の世界観。今が楽しければそれでいい、物事を深考えない。それが青春であり、思春期の若者の特権である。「永遠に続く青春」が原作の世界観で、それを逆手に取った脚本となっている。 ◆人間には今住んでいる世界と別の世界に行けたらという願望がある。これと楽しいときが永遠に続いたらという願望が結びつき、そしてそこへ全員がタイムスリップしたら、現実との違いは何だろうという哲学的な内容を具現化したもの。 ◆美しい時間、楽しい時間が永遠に続くのは残酷なことでもある。日常と違うことが起るから感情が湧き起り「楽しい」と感じる。しかしそれは続かないから意味がある。大好きなゲームに熱中していても、いつか飽きがくる。刺激に慣れ、別の刺激が欲しくなるのだ。だから大人から順番に変事に気付いてゆく。 ◆映像で見るべき場面がある。喫茶店の会話で水の入ったガラスに二人が映る場面、しのぶと風鈴が交差する場面、冒頭の荒廃した世界でラムがジェットスキーで遊ぶ場面など。又文化祭の催しが「第三帝国喫茶」で本物の戦車が教室に据えられるというハチャメチャぶりなどギャグも満載。夢を食うバク(子ブタ)のキャラも意表を突く。他人に夢を見させる仕事をしているが、一度も自分の夢を見たことがない無邪鬼のアイロニーも興味深い。深読みできるアニメです。 
[ビデオ(邦画)] 7点(2010-07-05 00:15:46)(良:1票)
18.  うる星やつら オンリー・ユー 《ネタバレ》 
◆諸星とラム、エル、しのぶの恋愛の四角関係が描かれる。◆しのぶとは幼馴染で、元恋人同士という微妙な関係が続いている。しかし本作ではその存在が薄い。◆ラムの場合、地球征服をかけた「鬼ごっこ」で、諸星の「(しのぶと)結婚するぞ」という言葉をラムが自分へのプロポーズと勘違いして、仮の女房となった。地球を征服されるので拒絶できない。嫉妬すると電撃攻撃をする。◆エルの場合、幼少のころの「影踏み」で、諸星に影を踏まれる。影を踏まれた人と結婚しなければならないという古い伝統があり、11年後の結婚が決まった。エル星の王女。◆ラムとエルの共通点は多い。地球外生物、美少女、勘違いで結婚、背後に絶対的な権力を持ち交際を断れない、愛することに関して純真、性的には無垢。◆エルの宇宙船が現れ、諸星とエルの結婚を宣言。エルが美女と聞いて諸星は乗り気になる。それを阻止するためにラムは諸星を自分の星に拉致し、結婚式を上げようとする。しかしエルの潜入員の活躍で諸星は再び拉致されエルの星へ。エルの美少女ぶりに諸星は結婚の意思を伝える。しかしエルが大量のイケメン男性を冷凍保存していることを知り、その気持ちは一気に冷める。結婚式の最中にラムが乱入して無事救出する。脱出のワープのミスで「影踏み」の場面へ戻る。影を踏んでなかったことが判明し、婚約は無効。今度はラムの星で結婚式を挙げようとするが、またしても諸星は逃げ出す。◆「うる星やつら」は、純真無垢な思春期のラブコメ。宙ぶらりんの恋愛関係がえんえんと続く。性的関係をもった時点で終了する性質のもの。精神的には女性上位である。男性は美女(肉体)を求めるが、女性は愛(精神)を求める。男性を一途に愛する女心が共感を呼ぶが、それは母性に近いもの。ラストで諸星がラムとの結婚式から逃げ出してもそれを許すラムの偉大な包容力は母性そのものだ。男性を成長へと導くグレイトマザーにも通じる。登場する男性全員の精神がまだ幼く、女性の究極の愛を受け入れる準備が出来ていない。既に成熟している女性は男性が成長するのを待つしかない。愛の本質が見えない男性にとって女性は、あこがれの存在であると同時に自分を拘束する存在でもある。ようやく手に入れても、すぐに別の女性が気になる。まさに愛の「鬼ごっこ」であり「影踏み」。男性は追いかけるのは好きだが、捕まりたくはない。子供でいたいのだ。
[ビデオ(邦画)] 6点(2010-07-04 18:26:30)
19.  ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟 《ネタバレ》 
過去に最強の超獣を海に封印したウルトラ4兄弟。封印を解き放つため四体の宇宙人が襲来。バカな一体がメビウスに挑んで撃破される。が、Mの戦闘能力は研究される。3体でMを拘束。4兄弟が最後のエネルギーを使って変身、Mを助けようとする。だが侵略者の目的は最初から4兄弟でMは囮にすぎなかった。4兄弟は拘束され、Mは倒れる。子供との約束を守るため、Mは最後の力を振り絞り、再び変身。4兄弟を助ける。だが既に宇宙人は4兄弟のエネルギーをマイナスに変えて封印を解き、超獣を解き放った。超獣は仲間であるはずの宇宙人を殺すほど残虐で悪魔的、かつ強い。たちまち危機に陥るウルトラ兄弟。そこへゾフィー、タロウが駈けつけ、エネルギーを供給。全員でMにエネルギーを注入し、合体、Mは新タイプに変身。超獣を倒す。 サイドストーリー1は、怪獣に襲われた恐怖で自信を失った子供が勇気を希望を取り戻す話。「最後まであきらめないのが大切」「信じる力が勇気になる」「未来を信じる心の強さが不可能を可能にする」などのクサイ言葉のオンパレード。美辞麗句を並べても感動にはならない。それを物語で見せるのが本来のウルトラマン物語の筈。サイドストーリー2は、Mであるミライがなぜウルトラマンは人間のために戦うのかという問いの答えを見つけ出す話。ミライの見つけた答は「人間が好きだから」。単純すぎ!総括:戦闘シーンが多いのが特徴。超獣が強いのは見ごたえがある。が、援軍が来ないと勝てないというのはいただけない。兄弟はもっと知恵を絞らないといけない。今回は宇宙人たちの方が知恵があった。メビウスの内面の成長を描いているが、そんなことは子供たちにとって興味はないだろう。ウルトラマンはあくまでヒーローであるべきで、悩み苦しむヒーローは魅力がない。又ガイズの隊員とウルトラマンが力を合わせて成長する話にすべき。ガッツが蚊帳の外だったのは解せない。一緒に戦ってこそ両者の絆が強くなるのだ。援軍はゾフィー達でなくガイズであるべきだった。原点に戻り、単純でスカッとする「怪獣映画」のウルトラマンが見たい。4兄弟の人間体の現在が見れたのは収穫。
[DVD(邦画)] 6点(2010-06-03 08:58:44)
20.  海のトリトン オリジナル劇場版 《ネタバレ》 
【ストーリーの整理】: かつてアトランティス人が世界を支配していた。ア人はオリハルコン(特殊金属)を元にポセイドン巨像を造り、ポセイドン族を人身御供にした。だが、ポ族の一部は巨像のエネルギーを太陽のように利用して地底世界を作り、生き残った。その数1万人。ポ族は巨像のエネルギーを使って、ア大陸を沈没させ、ア人に復讐を果たした。その時ア人はオリハルコンのマイナスエネルギーで短剣を作った。この短剣で巨像を倒せば、地底世界のポ族を全滅させることができるのだ。ア族はポ族に報復するため、新人種トリトン族を生みだし、短剣を伝えた。だが長い年月が経ち、ト族は短剣の使い方を忘れてしまっていた。それでもポ族は刺客を放ってト族をほぼ滅亡させ、短剣を奪おうとした。ポ族は依然として地底世界に閉じこめられており、地上で暮すためには巨像を動かすことのできる短剣がどうしても必要だったのだ。そこへトリトンが短剣を持って登場。短剣には巨像を引き付ける力があった。そのため巨像が動いてしまい、地底世界のポ族は一瞬にして滅亡してしまった。そして巨像は暴れだした。これを倒さない限り、世界は破壊し尽くされてしまう。トリトンは短剣で巨像を倒した。 【疑問】:①ア人は何のために巨像を造ったのか?②ポセイドン像という名前にした理由は?③どうして人身御供が必要だったか?④地底世界のポ族と、海を支配する司令官ポ族との関係は?地底ポ族が海ポ族を作ったのか?⑤ピピはト族なのに、どうして人魚の姿なのか? 【感想」:原作とは関係なく監督が加えた「オリハルコン短剣」と「善悪逆転」のダークな展開は物語に面白味と重厚さを与えており、成功している。冒険物語を面白くする「ツボ」を心得ているようだ。悪者を次々倒してゆくテンポが心地よい。悪者キャラも個性的で、かつ造形もすぐれている。ただ古いTVアニメの編集ものなので、動きがなめらかでないのが大変残念。またイルカや人魚は、途中ほとんど活躍せず存在感薄い。敵と戦えるだけの能力を持たせるべきだろう。メスイルカはト族の味方でトリトンの乳母的存在だが、真実をどこまで知っていたのだろうか?巨像を倒すのが、あっけなかった。
[DVD(邦画)] 5点(2010-05-20 03:48:57)
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