1. うず潮(1964)
《ネタバレ》 林芙美子には『うず潮』という小説がありますが、これはその映画化ではありません。この年(昭和39年)に放送していたNHKの連続テレビ小説『うず潮』の映画化のようです。クレジットに表記されていますし、田中澄江は朝ドラの脚本を書いています。おそらくテレビドラマの台本をアレンジして、映画に仕立てたのでしょう。この頃すでにテレビの影響力が強かったことを示す例として、興味深いところがあります。 お話の方は、尾道を舞台にしたフミ子の青春編。両親が行商人であることによる偏見、金にルーズな父親など、家庭関係では苦労する姿が描かれています。その一方で、女学校を舞台にした学園ドラマの要素もありますし、恋愛はやや弱めの扱いですが、浜田光夫と山内賢による恋のさや当てはちゃんと用意されています。ひとつひとつのエピソードは短いのですが、内容が盛りだくさんなので満足感はあり、飽きることもなく見られました。ただ、大正時代の物語だということをあまり感じなかったのは、よかったのか悪かったのか。 吉永小百合はさすがに現代物のようにチャキチャキしたところはありませんが、やさしさとガンコさを兼ね備えたフミ子を好演していました。まあこの人が演じると、かなり優等生的になってしまいますが。脇もそれぞれよかったですが、特に沢村貞子の先生がおかしかった。 青春ドラマとしてはなかなか引きつけられるところがあり、ドラマの人気が高くて映画化されたこともうなずけます。続編が作られるほどではなかったようですが。 [地上波(邦画)] 7点(2014-02-05 22:29:30) |
2. 動く標的
《ネタバレ》 ハードボイルドらしいところといえば、最初のクレジットのところとか、終盤でハーパーが「1年のうち5~6週間だけが楽しい」とか言うところでしょうか。個人的には特にハードボイルドが好きというわけではないので、あまりピンと来ませんが。ただしハードボイルドを離れても、ハーパーというのはなかなか興味深い人物ではあります。 ミステリーとしてはまあ普通ですが、情報が次から次へと簡単に手にはいるのはどうかと思います。そのあたりがフィクションの限界でしょうか。謎解き云々よりも、新興宗教を隠れみのにして不法移民を受け入れるというあたりに、風俗的な面白さを感じました。ただ、夫が死んだと伝えられたサンプソン夫人が妙に嬉しそうだったり、その前後のミランダを意味ありげに映していたり、事件の実行犯が都合よく全員死んだりと、まだ裏があるのではないかと思わせるところがあります。もっともそれも、ハーパーに関係がないといえば関係ない。そういうところは妙にリアルでした。 まあこの映画の最大の謎は、原作のアーチャーがハーパーに変えられて、しかも映画のタイトルにまでなっているということでしょうけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-07-03 22:22:25) |
3. ウエスタン
《ネタバレ》 序盤は、人物関係やシチュエーションがわからないものの、じっくり間を持たせた撮り方が魅力的で、かえって引きつけられます。が、中盤以降に状況がわかりだしてもそれを続けていると、ワンパターンで退屈ぎみ。単なる“ええ格好しい”にしか見えなくなってきます。この作品、お話の方はけっこういいかげんで辻褄の合わない部分もあるのですが、どちらかというと映像を見せるタイプなので、その辺は端折ったと割り切るべきでしょう。が、そう考えてもあまり面白くない。理由を考えるに、悪役であるフランクに魅力が感じられないからではないか。 ヘンリー・フォンダという俳優も、この役に合っていなかったと思います。逆に、シャイアン役のジェイソン・ロバーズがかなりの好演。カルディナーレ、ブロンソンとのトリオはところどころユーモラスな味も出ていて、かなりよかった。この3人に比べると、フランクは極悪人という記号でしかありません。そのあたりがバランスが悪かったです。モリコーネの音楽もよかったけれど、全体としてはそれほど高く評価できません。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-04-13 21:12:16) |
4. 海の若大将
《ネタバレ》 監督がクレージー映画で有名な人に変わったためか、今までとはちょっと雰囲気が違う。なんとなくオーバーアクションというか、誇張されたように思われます。それが過ぎたるはなんとかで、やりすぎという感じ。終盤でのスミちゃんの暴走ぶりとか、何か違う気がする。このあたり、どこまでが脚本でどこからが演出の裁量なのか、よくわからないのですが。あと、停学を食らったはずの青大将が船を買ってもらったりとか、どうも強引な展開がみえます。そんなこんなで、今までのこのシリーズと比べると、ちょっと落ちるという感じ。あと、前作から丸2年経ったからか、スミちゃんが少々老け……、もとい、大人っぽくなった感じがします。藤山陽子も女子大生らしくなりましたね。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2014-11-02 11:11:00) |
5. 宇宙大怪獣ギララ
《ネタバレ》 子供の頃、夏休みになると大映や松竹の特撮映画を放送していて、本作も毎年のように見ていました。それ以来ですから本当に数十年ぶりの鑑賞。みごとに忘れています。というか、序盤はもしかして放送していなかったんじゃないかと思うくらい記憶にありません。そもそも、話の流れからすると月面基地に立ち寄るエピソードは必要ないはず。どうもこれは、当時子供向けの雑誌や書籍によく載っていた「未来の予想」を映画化したような感じではないかと思います。それで、月面でも野菜が採れるし、水もあって風呂にも入れると。大阪万博の3年前、未来は明るかったんですね。 それ以外にもシナリオは酷い。隊員同士の三角関係というのも、大人の観客を意識したのかもしれませんが面白くない。半分くらいの長さで終わりそうなプロットを、あれやこれやで無理矢理引き延ばしたように思えます。それと、特撮ものは本編と特撮とのコンビネーションが重要だと思うのですが、そのあたりがボロボロ。特撮のみならまだ見られるのですが、人物と合成のカットは全然ダメ。いかに東宝の本多・円谷コンビが優れていたかを再認識しました。ただ、ギララのデザインはけっこう好きなので、おまけで+1点。 余談ですが、WOWOWに加入して最初に見た映画がこれでした。なんか情けないぞ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-01-09 19:39:24) |
6. 上を向いて歩こう
《ネタバレ》 世界的な大ヒット曲を元に、よくこんな映画が作れたな、というのが正直なところ。もっともひどいのが浜田光夫が演じている良二で、単純で身勝手なアホとしか思えず、主役格なのにまったく魅力が感じられません。九ちゃんのトラックを盗んで大破させたのもひどいが、九ちゃんが届けたドラムを見たとたん、それまでのことはすべて忘れたかのように大喜びでドラムを叩きまくるというのは、人間性を疑ってしまう。これで友達がいるというのは不思議なものだ。あとの主人公のうち、九ちゃんパートはいちばん見られます。高橋英樹の健ちゃんは、ノミ屋が大学をめざすという設定は面白いのですが、ちょっと騒々しすぎるか。終盤喧嘩のアクションに持っていこうとするのは強引で、とってつけたようなかんじ。 ところで吉永小百合のフィルモグラフィーを見ると、この年は『キューポラのある街』や『若い人』にも出演していて、女子高生役が定番だった頃です。が、本作で演じている紀子は学校に行っている様子もないし、働いているようにも見えない。はっきり言うと、生活というものをまったく感じさせない。そんな彼女の言葉で最後にすべてが解決されてしまうというのは、作中で他の人物を超越した、ある種“神”のような役割を与えられているように思われます。それなら生活感がないのもうなずけますし、最後の演出も合点がいきます。しかし、生活感あふれる九ちゃんや健に対して“天の声”でご託を並べても、まったく説得力がありません。この点で大失敗でしょう。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2014-05-22 17:47:00) |