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やましんの巻さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 731
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自己紹介 奥さんと長男との3人家族。ただの映画好きオヤジです。

好きな映画はジョン・フォードのすべての映画です。

どうぞよろしくお願いします。


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人生いろいろ、映画もいろいろ。みんなちがって、みんないい。


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1.  ダーク・シャドウ(2012) 《ネタバレ》 
大江健三郎は、死を目前にした人間には独特の破壊的な想像力がある、というようなことを書いていた。それを、こう言い換えてみようか。「イジメられっ子にも、やはり独特の破壊的な想像力がある」のだと。・・・ティム・バートンの映画を見るたび、ぼくはそう思わずにはいられない。  バートン作品の世界は、肉体的・精神的な「フリークス」の饗宴だ。彼らは常に社会の秩序やら道徳(モラル)やらを嘲笑し、破壊しようとする。そしてバートンは、そういった「フリークス」の狂騒的な大暴れこそを嬉々として想像=創造することにかけて、文字通り独創的だったのだ。彼は、明らかに彼ら怪物やら怪人たちへと自分を一体化しつつ、社会への徹底した敵意というか〈悪意〉を爆発させる。そう、バートンにとって、彼ら“異形の者たち”こそ社会から迫害され排斥され追いやられる「弱者」であり、“イジメられっ子”に他ならない。そしてバートンは、そんな彼らのそれこそ必死の反撃を、バーレスクな「“負”の祝祭空間」としてヴィジュアル化してみせる。しかも、それを見事に上質な「エンターテインメント」に仕立て上げるところに、彼の本領があるのだった。  それがいつしか(というか、『マーズ・アタック!』以降の)その作品からは、ウエルメイドな画作りだけが前面化して、何より〈悪意〉が蒸発されていく。それとともに、彼の「フリークス」もすっかり“毒気”を失ってしまったかのようだ。だが、この最新作でバートンは、いかにも「ソープオペラ(TVの昼メロ)」の原作らしい醜悪な欲望むき出しの群像劇を得て、彼らを徹底的に茶化すことで社会そのものへの〈悪意〉を取り戻したかのようなのだ。相手に詫び(笑)を入れながら血を吸いまくるJ・デップの吸血鬼や、自己中心的すぎる(そして、演じるエヴァ・グリーンが素晴らしすぎる!)魔女を含めて、観客は本作の誰ひとりにも共感や感情移入できまい。だが、この自己の欲望にひたすら忠実な面々こそ、バートンの〈悪意〉による社会の、私やアナタの「鏡像」に他ならないのだ。しかしその、何と不愉快すれすれの「面白さ」であることか!   なるほど、ここには「フリークス」ゆえの悲哀を湛えた、あのバートンらしいペーソスはないかもしれない。が、久々に“ふっきれた”バートン作品は、やっぱりタダ者じゃないことも確かなのだ。
[映画館(字幕)] 9点(2012-06-05 19:20:15)(良:1票)
2.  ターミネーター4 《ネタバレ》 
まさにイーストウッドの硫黄島2部作を思わせる、冒頭のくすんで色褪せた映像による戦闘場面にはじまって、確かにこの映画は、これまでに見てきた様々な有名作・ヒット作・マニアックなB級作(マイケル・アイアンサイド! そして『スクリーマーズ』!)などのあのシーンこのシーンを彷彿させる“既視感”に満ち満ちている。全編これ引用=再現の連続、オリジナルに対する模造品[パスティーシュ]そのものだ。  それをオリジナリティの欠如だと否定するのも、ただのパクリじゃんと嘲笑するのも簡単だろう。が一方で、そういったシーンのすべてにおいて、無節操であることに開き直るあつかましさや、パロディやら引用と言い募るようないやらしさを感じさせないのも、また確かなのではあるまいか。ここにあるのは、マックGが愛してやまない映画たちへの単純にして純粋なオマージュであり、それらを自ら再現することへの無邪気なヨロコビそのものだ。そして、そんな〈愛〉の対象の最たるものが当の『ターミネーター』シリーズだったことは、たぶん間違いない。  そう、これは、映画が好きで、何よりキャメロンが創りあげたこのシリーズが大好きな男の手になる作品だ。だからこそ1作目と同じ容貌のシュワルツェネッガーが登場した時、単なる楽屋落ちやファンへの目くばせという次元を超えた「感動」があったのだと思う。マックGは、何としても『1』のシュワを自作で登場させたかった。ただそれだけの欲望と歓喜が、映画を見るぼくたちのハートに“共鳴作用”を呼んだがゆえの感動だったのだと。  それを、ただ「頭が悪い」と一笑に付すのは、先にも言ったように正しい。が、C・ノーラン監督のバットマン・シリーズみたくシニカルにお利口ぶった映画じゃなく、あるいは、映画を新奇な「見せ物[スペクタクル]ショー」程度のものとナメているとしか思えないマイケル・ベイ監督の撮るようなシロモノでもない、いいトシをしたオトナが「俺が見たいターミネーターを、俺自身が撮ったんだぜぃ!」と嬉々としているかのような本作にこそ、ぼくは文句なしに心ひかれる。しかも、数限りない制約だの軋轢の連続だったろう製作過程にあって、そういったノーテンキさをギリギリ貫けたあたり、この監督の“したたかさ”が窺えるじゃないか。  結論。「頭の悪さ」も、時には“才能”たり得るのです。
[映画館(字幕)] 8点(2009-08-19 12:52:26)(良:3票)
3.  ターミナル 《ネタバレ》 
別にトム・ハンクスが出演して、「空港」が重要な舞台になっているからと言うんじゃないけれど、この映画はやはり『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』との関連で語られるべきなんだと思う。設定も、物語にも、何のつながりはない。でもこの2本は、ひとつの〈主題〉において連続している。つまり、〈父〉という主題において。  あの作品のディカプリオ演じる主人公は、実の父親を“捨てる”ことで、トム・ハンクス扮するFBI捜査官という理想的な「父親(的存在)」を得る。つまり主人公は、父親を心の中で「殺す」ことによって、ようやく立ち直ることができたのだった(その後、主人公の父親は本当に死んでしまう…)。そして今回はトム・ハンクスが「息子」を演じ、亡き父親とのある“約束”を果たすために、空港内で何ヶ月も足留めを食らうという不条理な悲喜劇をサバイバルしていく。あきらかに『キャッチ・ミー~』で見捨てた父親との“和解”こそが、この映画ではめざされているのだ…(そう考えたなら、なぜキャサリン・ゼタ=ジョーンズの客室乗務員とのロマンス部分があれほど“淡白”な描かれ方だったかが、納得できる。あの老インド人同様、彼女もまた「自己犠牲」によって主人公を救う、人間の“善意”の象徴であり、こう言って良ければ主人公の「主語天使(!)的存在」として配されていたのだと)。  少年時代、母親が弟と妹を連れて家を出たというスピルバーグ。「自分は捨てられた」、という悲しみと、残された父親との確執は察するにあまりある。そして彼は、そういった心象を常に密かなモチーフとして、自作品にしのばせてきた。特に近年の作品には、ますます私小説ならぬ「私映画」的傾向が色濃くなってきたように思える(たとえば、“母に捨てられた子ども”の物語としての『A.I』…)。しかも、それをあくまで大ヒット狙いの商業映画として成立させようとしているところに、ヒットメイカーとして宿命づけられた彼の“困難さ”があるんだろう。でもぼくは今回のこの映画を、ひとりのアダルト・チルドレン(!)だった監督による、おかしくて悲しい、けれど「救い」に満ちた美しい〈ファミリー・ロマンス(家族の精神史〉だと信じて疑わないのです。
8点(2005-01-21 17:26:02)(良:2票)
4.  脱走四万キロ 《ネタバレ》 
ロイ(・ウォード)・ベイカー監督と言えば、ジェームズ・キャメロンの『タイタニック』でもかなり“参照”されたとおぼしい『SOSタイタニック』や、あるいはハマー・フィルムのドラキュラ映画でご存知の方も多い(?)のでは。実を言うと、ある時期まで(いや、実は今なお)このベイカー監督の名前は、ぼくにとって、例えば同じイギリスのデヴィッド・リーンなんかよりもずっと“偉大(!)”だったんである…  この監督の映画は、「ドキュメンタリー的」な面と「ドラマ性」とが融合し、時には対立しながら、あるひとつの濃密な“劇的空間”を画面に構築していく。そして題材やストーリーによって、「ドキュメンタリー的」な要素が勝ったり「ドラマ性」が大きくなったりする、そのバランス感覚においても傑出してたんだと思う(…後年、ハマーのゲテ物ホラー映画を撮る頃には、そういったバランスなどほとんど“放棄”しているかのようだったが…)。  例えば、この『脱走四万キロ』だ。イギリス映画でありながら実在したドイツ軍パイロットを主人公とし、しかもまんまとイギリス軍の収容所から脱走するまでの顛末を描くという本作。冒頭の空中戦から、主人公が不時着して捕虜となるまでのくだりにおいて、実写フィルムを巧みに織りまぜながら見る者を一挙に「ドラマ」へと引っ張り込んでいく。その後は、何回も脱走を繰り返すパイロットの“一人舞台”となるのだけれど、特に後半、厳冬のカナダの収容所に送られた彼が、雪の平原や森、凍った河を逃亡する描写は、ひたすらロングに引いた苛酷な自然の中にポツンと映る主人公の姿を延々と追うだけでありながら(ほとんどセリフすらない)、本当に血沸き肉躍る、いっときも眼が離せない、スリリングな冒険譚になっているんである! …昨今の大げさな設定やらCGによるド派手な映像やらがなくても、この地味なモノクロ映画は、主人公の置かれた“状況”をキャメラで捉えるだけで、かくも濃密な「ドラマ」が描きうることを教えてくれる(そんなベイカー監督の才能が遺憾なく発揮されたのが、本作の翌年に作られた『SOSタイタニック』に他ならないだろう)。何も「ドキュメンタル」な撮り方だから良いんじゃない、その“状況”の描写力において傑出しているからこそ、素晴らしいのだった。  この監督をきちんと再評価してくれる評論家センセイ、誰かおられませんかねぇ…
9点(2004-11-20 15:58:23)(良:1票)
5.  大怪獣出現 《ネタバレ》 
この映画は、まだ中学生だった頃テレビで見ました。その後、数年してもう一度再見。なかなかのインパクトを与えてくれる出来映えで、未だに強烈な印象が残っています。(日本では、大幅にカットされた短縮版でのみ公開とか。でも、近年WOWOWで「完全版」を放映したんですって? …いいなあ、見たかった!)  ストーリー的には、1950年代に流行した“放射能によって変形・巨大化したモンスターもの”のひとつ。海底で甦った古代のカタツムリ(と、いろんな文献で紹介されているけれど、どうみてもトンボの幼虫のヤゴかイモムシやんか)軍団と、アメリカ海軍との攻防がメインになっているあたり、特に『放射能X』に似ている。  とは言え、パラシュート訓練中に海で行方不明になった兵士をめぐる冒頭(捜索中、血を吸われたミイラ状の死体が、突然海上に浮かんでくるショック演出の巧さ!)から、映画はサスペンスを途切れさせることなく見る者をグイグイと引き込んでいきます。何よりモンスターの、醜悪さと昆虫的攻撃性が見事に表現された造型の素晴らしさ!(…後に『魔獣大陸』とかいう映画を見たら、ソックリな顔したモンスターが登場していた記憶がある。この怪物クン、意外とあちらじゃ「有名」なのかしらん) どうにか彼らの巣を見つけて爆破し、やれやれと思ったら、調査用に回収してあった研究室の卵がふ化してヒロイン(と、その幼い娘)が絶体絶命のピンチというのも、ありきたりな展開ではありながら、伏線の張り方やその語り口がうまいものだから、思わず手に汗にぎってしまう。いやぁ、この映画の脚本と演出は、間違いなく一級品です。  当時のこの手の作品には、明らかに「政治的」寓意性(アカ狩り、冷戦といった“共産主義”のメタファーとして、当時の「モンスター」や「エイリアン」たちは描かれていたものだ)を持っていたり、「核」と“放射能”への恐怖を煽るものが大半だったのに対し、本作は、そういうイデオロギー臭や社会ヒステリー的な要素をほとんど意に介していない。その上でただ純粋に「怪獣映画」としての面白さ、それだけを主眼とした潔さこそが、ぼくには好ましい(皆さんがバカにするローランド・エメリッヒ監督の映画も、同じ意味でぼくは評価しています)。作品的には単なる「B級モンスター映画」なれど、山椒は小粒でもピリリと辛い、とは、こんな作品のことを言うんすよね!
8点(2004-11-20 14:25:12)(良:1票)
6.  第7騎兵隊 《ネタバレ》 
たぶん↓のお二人と同様、関西の地方局によるテレビ放映で見ました(こんな古い西部劇を流してくれるあたり、ほんと“ビバ! サンテレ”ですよね。サイケデリコンさん)。でもって、確かにご両人のおっしゃる通り、お話的にはどうにも盛り上がらない。だって、カスタ-将軍の第七騎兵隊が全滅した“リトルビッグホーンの戦い”は、生き残った騎兵隊員の口で語られるだけだし、クライマックスにしても、結局のところインディアン対騎兵隊の銃撃戦などないまま、1頭の馬(!)の出現があっさりと戦闘を解決してしまう。派手なドンパチだけを期待する向きには、やはりおすすめ出来ません。  ただ、映画のはじめ近く、人の気配のない砦の様子をさぐるランドルフ・スコットの主人公が、砦の内部を見渡す場面がある。カメラは主人公の視線のままぐる~りと360度パンしていくんだけど、最後に映し出すのが主人公のスコットの顔! …人は鏡でもない限り、決して自分の顔を見ることはできないよね。だのに、はじめは明らかに彼の“眼”としてあったカメラが、最後に自分自身を見るといったこのシーンは、あくまでさりげなく、けれど実に大胆なものだと思わずぼくは興奮させられましたです(強いて言うなら、アラン・レネの『去年マリエンバートで』の名高い360度パンに匹敵するくらいの…マジっすよ!)。  さらに、この映画は西部劇のくせに室内場面が多いのだけど、手前の人物と、背景の両方にカメラのピントが合っているパンフォーカスで撮られている。それだけでなくテーブルなどの小道具と壁の色が統一されているなどの演出により、この「壁」が何とも生々しいっていうか、異様にぼくたち観客の眼差しをひきつけてやまないっていう点も、指摘しておきたいと思う。こんなに「壁」を意識させられたのは、これも大げさな例をもってくるなら、カール・ドライヤーの『奇跡』以来じゃないかな。ホンマっすよ!  …これが鈴木清順の映画とかなら、「なるほどスゴイや」と感嘆すると同時に納得もさせられるそういう画面の“突出ぶり”を、こんな日本未公開の名もないB級西部劇で目撃させられることの驚き。そのことにこそ、ぼくは興奮したいと思う。たとえこの映画の監督が、一部ではカルト的な人気と評価を得ていることを知らなくても、テレビのモニターからでさえ作品の“特異さ”はひしひしと伝わってくるのだから。ただただ、スゴイです。
10点(2004-10-20 13:00:12)(良:1票)
7.  大列車強盗(1903)
走る貨車のなかで、列車強盗と守衛が撃ち合っている。こんな至近距離でよく弾(たま)が当たらないもんだなあという、何とも牧歌的(?)場面。しかし一方で、彼らの背後は扉が開いたままになっていて、そこには流れるような森の光景が映し出されている。この映画を見ると、いつもぼくの眼はそこに釘付けとなってしまう…。  もちろんスタンダードサイズの映画だから、ほぼ正方形に近いフレームの映画のなかに、もうひとつ「開かれた扉」というフレームがある。そしてそれは、ぼくの記憶ではヴィスタサイズ風の横長で、そこに映し出された“流れるような森の光景”の映像には、見るたびいつも陶然とさせられてしまうのだった。  あるいは、登場人物たちの服装やちょっとした小道具など、その細部(ディテール)がもたらすリアリティはどうだ。この映画が撮られた1903年と言えば、まだワイルド・バンチ一味も、ブッチ・キャシディ&サンダンス・キッドも実在していた。西部劇の主役たちが生きていたんである! この映画に描かれたものは、すべて当時の「現実」であり、それを再現したものであるのに他ならない。そしてそれは、今なお本作を、フィクションでありながら「ドキュメンタリー」的な生々しさを見る者に与えないだろうか(少なくともぼくは、そう感じた)。  他にも、100年以上前に作られたこの10分程度の映画は、今なお、ぼくという現代の観客を魅了する部分に事欠かない。それは決して「歴史的」やら「骨董的」な意義だのとかじゃなく、まさに1本の「映画」として、ぼくの瞳と心を奪ってしまうのだ。  …例えば、有史以前の人類が洞窟内に描いたラスコーやアルタミラの壁画。その単純な線と色彩による馬や牛、人などの絵は、驚くべき力強さで見る者を圧倒する。それを「古い」とは、誰も言えないだろう。それは「古い」のではなく、「オリジナル(原初・起源)」だからこそ永遠の“生命”を持つ。同じくこの映画もまた、真の「オリジナル」として永遠に「新しい」のだと、ぼくは信じている。
10点(2004-10-13 11:46:23)(良:6票)
8.  達磨はなぜ東へ行ったのか
ぼくには、むしろアンドレイ・タルコフスキーの映画に近いものを感じさせてくれる映画でした。禅仏教の「真理」を探求することより、火・水・土・風というもののなかに摂理を見出していくかのような、東洋的というよりはむしろ「西洋的」な、ただ「物質」そのものと化した映像。思えばタルコフスキーの最良の映像もまた、あらゆる象徴や隠喩に還元されない火や水、風、草や樹木といった「物質」それ自体の現前で見る者を圧倒するものではなかったでしょうか。…およそドラマとしての「面白味」を望みようがない作品ではあるけれど、映画が「映画」じゃなくなるぎりぎりの地点で成立したこの作品には、言葉の真の意味で「孤高」の輝きがある。もっとも、これは劇場で集中して見ないと、その2時間10何分という長さはそれこそ生理的忍耐度を試す禅的(?)苦行になりかねない…と、ご忠告申し上げます(笑)。
9点(2004-02-16 17:51:00)(良:1票)
9.  タイムライン
この原作を一読した時、監督のリチャード・ドナーは、当初これを「時空を超えた愛」の物語として映画化したかったのだと思う。その痕跡は、随所にうかがえる。特に、本来は主人公であるはずのポ-ル・ウォ-カ-を差し置いて、最も目立っているのはその友人役ジェラルド・バトラーであり、彼と、14世紀の女性との“ロマンス”の方が、メインプロットであるはずの「主人公の父親を過去から救出する」という展開以上に印象的だってあたり。しかし、映画はそのことにより決定的な弱点を抱え込むことになった。結局それにより、どっちつかずの曖昧な印象を与えることになってしまったという…。たぶん、あくまで「SF大作」にしなければならないという有象無象の“プレッシャー”が、監督であるドナーを迷わせることになったんだろうか。本来この監督は、『レディホーク』に見られるごとくハリウッド屈指の「ロマンチスト」なんだ。『スーパーマン』だって、あのスーパーマンとロイス・レーンの“夜空のデート”場面の美しさを思い出してほしい。そんな彼が、もし、マイケル・クライトンの原作や、昨今のSFアクション的ノリなんぞに惑わされず、自分の撮りたいようにこの作品を撮っていたら…本作は、実に実に感動的な映画になったことだろう。くり返す、その痕跡は至るところに見出せるのだ。だからこそ、本当に残念です…。
7点(2004-01-08 13:08:47)(良:3票)
10.  旅の重さ
ひとりの女子高生が、ある夏、四国巡礼の旅に出る…と言うか、家出する。そして彼女が出会い、体験する人々とのあれこれを描いて、これがもう全編に詩と現実がせめぎあい、溶け合う、本当に「美しい」日本製ロードムービーの傑作でした。主演の高橋洋子が実に初々しく、途中の旅芸人一座とのエピソードではヌード&レズシーンまで演じてしまうのだけど、これがハッとさせられるものの少しもいやらしくない。むせ返るような緑したたる四国の夏が、画面からも感じられるようなオールロケの映像は、10代の少女が見た・感じた・記憶した心象風景をヴィヴィッドに捉えています。そこに被る吉田拓郎の音楽も、単なるBGMじゃない画面とのコラボレーションとして、見事に渡り合っている。監督の斉藤耕一は、この年、もう1本『約束』という”冬”の映画を撮っていますが、対照的なこの2本の傑作を作りあげただけでも、彼の名は永遠です。
10点(2003-11-25 13:45:38)(良:1票)
11.  タイムコップ
いわゆる”タイムスリップもの”としちゃあ、上出来の作品じゃないでしょうか。特に、南北戦争や1930年代のウォール街といった過去のシーンの描写が作り込まれていて、ピーター・ハイアムス監督の近作じゃベストの仕事ぶり。妻の死をめぐる主人公の苦悩や悲しみも、人間的なアクセントになっていたし。何よりヴァン・ダムって、どんなにマンガ的なシチュエーションでも不思議と説得力をもたせてしまう。この点は、きちんと評価してあげたいと思う。…まあ、声を大にしてまで広言はしませんが。
7点(2003-11-01 18:59:35)(良:1票)
12.  台風クラブ
台風の接近とともに、少年少女たちが、内なる「自然」を解放していく。そんな彼らの”狂態”を執拗なまでのワンシーンワンカットの長回しで追う画面からは、息苦しいまでに濃密な閉塞した時間と、学校や親や社会をも突き抜けたアナーキーな自由がまっすぐに放射してくるようだ。そして、クライマックスとなるのは、ひとり「自然」を解放することなく、それゆえ苛立ち、苦悩していた少年の自殺。彼は、自分だけが「大人」に成り下がっていたことを罰するために、自ら死を選んだんじゃないか。だから、その姿は、あんなにブザマだったのか…。と、とりとめもなく書き連ねてしまいましたが、ひとつ断言したいのは、間違いなくこの作品こそ1980年代最高の日本映画だってことです。
10点(2003-11-01 18:47:30)
13.  ダイ・ハード2
個人的には、このシリーズの最高作。『1』の周到な設定づくりとち密かつ畳み掛ける演出は認めるけれど、あまりに段取りばかりが鼻について、今イチ乗れなかったもんで。『3』は、まああんなもんだったし。対してこの『2』には、まず「スペクタクルありき」というアツイ意志がびんびんに伝わってくる。細かい辻褄あわせのカットつなぎなんぞどーでもいい、オレが「スゴイ!」と思えるシーンこそをつなげていきたいんだ、という監督レニー・ハーリンの姿勢こそ、真に「映画=見せ物(スペクタクル)」的じゃないか。作品の出来不出来が激しいハーリンだけど、愛してるぜっ!    
8点(2003-11-01 17:57:50)
14.  ダイナソー
確かにディズニー、それもピクサー社じゃなくディズニーのスタッフが作った3Dアニメということで、幼い子供達への配慮が鬱陶しいという部分はあるんだけど、それ以上に、『旧約聖書』的なさまよえるユダヤの民と”約束の地”物語を巧みに取り込んだ内容が、小生的にはOKでした。苦難の旅の末、ようやく「楽園」を見つけ出した恐竜たち。しかし、現代の我々は、そんな彼らが結局は滅んだことを知っているワケでしょ? …これは一見オコチャマ向けのようでいて、かなり深い「宗教的テーマ」を孕んだ作品じゃないかと、小生は思ってます。いや、マジで。
7点(2003-11-01 17:41:39)
15.  タイトロープ
それにしても、イーストウッドはどうしてこんな、精神的にダークかつアブノーマルな部分を持った「ヒーロー」像を、好んで演じたんだろう…。それは、ニューオリンズの淀んだ空気の中で変質的な殺人鬼に自己の内面を映し見てしまうこの主人公が、自分と重なるところがあったからだろうか。『白い肌の異常な夜』(何という放題!)や『恐怖のメロディ』、『ダーティハリー4』というイーストウッドの「陰湿路線」に連なる本作では、実の娘を出演させて、犯人にレイプ(!)させるという鬼畜ぶり。しかし、そこまでして自らの内なるダークサイドと向き合おうとするイーストウッドの作家的真摯さにぼくは深く感動させられました。
9点(2003-11-01 17:19:58)(良:1票)
16.  大地震(1974)
う~ん、懐かしさが先に立って正当な評価が出来ない映画なんだけど…。公開当時、まだハナたれ小僧だったものの、「センサラウンド方式」というものを体感したく勇んでロードショウ館へ。が、あの時は、「なんだ、近所にある電車の高架下の映画館と変わらねえじゃんか」と、いたく失望。列車が通過するたびに劇場全体が地響きをたてるモノスゴイ映画館がありまして、それとまったく一緒だったんすよね。「地震てさあ、グラグラ・ユサユサくるもんだろ? こんなの、ただ空気をビリビリさせてるだけじゃん」って。肝心の作品も、今思い返しても相当チンプなメロドラマだったもんだからなおさら失望。妻と愛人との間で苦悩するなんて役、チャールトン・ヘストンにゃあ断固似合わない! さすがにロスの街が崩壊するシーンは、頑張っていたとは思うのですが…
5点(2003-11-01 16:58:21)
17.  大アマゾンの半魚人
半魚人のメーキャップは、今見ても実に見事。適度にグロテスクで、ヌメヌメとした鱗の感触や、どこか異形の者の哀しみすらもが漂ってくる。こいつが水中を素早く泳ぐシーンは、戦慄とかっちょよさで思わず鳥肌モノです。でもって、水着姿のジュリー・アダムス(美人!)をこっそり盗み見して欲情(?)し、彼女をかっさらうという展開は、いつもながらの「美女と野獣」パターンだけど、このあたりも同じオスとしては感情移入というか、シンパシーを禁じ得ない。ド派手なCG映像フルコースもいいけど、モノクロ画面の昔ながらの”お茶漬けの味”も悪くないもんです。
8点(2003-11-01 14:53:16)
18.  ダーティハリー5
このシリーズにミステリー趣味はいささかお門違いという気もするものの、イーストウッドは、永年の”バディ(友だち)”だったスタントマンのバディ・ヴァン・ホーンを一本立ちさせようと、あえて『5』を製作したんだろうなあ。そんな男気に、つい見る目も甘くなる(ホーンはその後しばらくして、再びセカンド・ユニットやアクション部分の監督という本来の「定位置」にもどるんだけど)。リーアム・ニーソンやジム・キャリーのブレイク前のお顔も拝見できるし、全体的には何かと見どころの多い映画だと言えるんじゃないでしょうか。
7点(2003-11-01 13:54:01)
19.  ダーティハリー4
どなたかもおっしゃってましたが、確かに本作はソンドラ・ロックこそがメイン・キャラクターですねえ。例えていうなら、『コナン』シリーズがあって、その番外編的な『レッド・ソニア』にシュワちゃんが出て、主演のブリジット・ニールセンを助けるみたいな…とは、例えがマイナーすぎましたか(汗)。ただ、他の映画にも垣間見られたイーストウッドの女性観…ミソジニー(女性嫌い)でありながら屈折した愛情を抱き続ける、複雑な内面をここまで反映させた作品もない(特に、ラストシーンね)。そういった意味で、エンターテインメントとしてはいびつな出来映えだけど、個人的にはかなり気になり続けてきた映画です。
7点(2003-11-01 13:06:35)
20.  ダーティハリー3
パンチ不足は否めないけど、タイン・デイリーが好演するバイタリティーあふれる女刑事のキャラでばん回。ちっちゃい彼女が長身のハリーといっしょにチョコマカするあたり、実に微笑ましいです。しかも、シニカルなハリーのユーモアに負けない彼女のしゃれた台詞の数々。最後には殉職しちゃうんだけど、この『3』は、シリーズ中でも最も愛すべき出来映えじゃないかな。ジェームズ・ファーゴの演出も、ふたりの”人間味”を重視した丁寧なタッチが好感度大。これでもう少しアクションの見せ場に迫力と工夫があったら、もっと良かったのに。
7点(2003-11-01 12:48:03)
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