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 > かっぱ堰 さんの口コミ一覧
かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1248
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  チャンシルさんには福が多いね 《ネタバレ》 
いわゆる何も起こらない映画である。これまで監督が映画制作に携わった経験が主人公の人物像にも反映しているとのことで、この映画自体も映画愛を感じさせるものになっている。 序盤で主人公が男を飲みに誘った場面では、行ったのがなぜか日本語の表示しかない居酒屋で、韓国映画に日本が出るとろくなことがないので警戒感が一瞬高まった。しかしそこで主人公が小津安二郎の名前を出したのでなるほどそうだったのかと思って、変に疑ってしまってすいませんでしたという気分だった。その後の「東京物語」の話の中では、主人公が日本人戦死者の存在に触れた(※)のがかなり意外に感じられた。 また同じ場面で「何も起こらない」(※)という言葉を、観客が言うならともかく映画関係者のはずの人物が言ったのは、映画関係者でない立場からしてもかなり心外に思われた。まさにそのような映画に関わってきた主人公からすれば、まるで異次元人とか不倶戴天の敵に見えたのではないかと思ったが、しかしそれで別に対立関係になるわけでもなく、それはそれとして他に共感できる部分を探そうとする展開だったらしい。 一般に、内部をまとめるために外部に敵を作るのはよくあることとして、内部でもわざわざ対立軸を作って誰かを攻撃したり争ったりするのでは生きづらい社会になるだろうが、この映画はそういう世界からは距離を置き、人々が何となく穏やかに協調して生きる社会を志向しているように見える。はっきりしないがそのように感じさせるものはあり、実際にそう思っていたとすればその点で非常に好感の持てる映画だった。 ※字幕の翻訳が正確だという前提で。  物語としては、人生の中間点を迎えた主人公の再出発の話ということらしい。いろいろ言葉が出て来るのでまとめにくいが、話全体としてはないことを嘆くのではなく、あるものに目を向けた上で前に進めということかと思った。また捨てることは大事だが、全部捨てればいいわけでもないとも言っていたかも知れない。人生の転機にふさわしい提言にも思われる。 ちなみにエンディングテーマは祝詞の詠唱のようなものを現代風にアレンジした感じの曲だったが、これが映画の内容を端的に表現していたようで最後の締めにふさわしい。歌詞は "チャンシルは福も多い" という意味の文章を起・承・結の3回繰り返して、そのうち一行目が原題と同じ、その後は文末を少しずつ変えて変化を出している。字幕も原文を生かした邦訳になっているが、歌の最後だけ前にはない「福まみれ」にしたのは翻訳段階での悪ノリのようで、ユーモラスな人間ドラマの印象を強調していたのは悪くなかった。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-27 10:50:16)
2.  チャイルド44 森に消えた子供たち 《ネタバレ》 
原作は読んでいないがこの映画に関しては、どちらかというと見て損した部類だった。時間が137分もあるが、それでも恐らく原作での詳細な設定や描写が断片化して半端になっているところが多々ある。 社会性という面でいえば、2015年の時点でこの物語を映画化することの意図がわからない。日本国内向け公式サイトでは一応、「全体主義国家がいかに人間の精神を崩壊させていくかという普遍的なテーマ」を扱っていると書いてあるが、結局はこの時代またはこの場所限定のことにしかなっておらず、誰も今の自分に関係あることとは思わない。ちなみに楽園に殺人は存在しないという建前は当時本当にあったのか知らないが、そういう現実度外視の観念論は東洋でも好まれそうな気はする(大陸でも半島でも列島でも)。 ドラマとしては、悪人顔の主人公を始めとして主要人物に誠意が感じられず信用できそうにもなく、この連中は何をやっているのかと中盤くらいまで突き放した気分でいたが、終盤にかけてやっと人々の意思がはっきりして来てまともに見られるようになる。それはそういう構成にしたのだろうが、それにしても結果的には話がうまく出来すぎで、最後は勧善懲悪物のようになっていたのはどうかと思った。アメリカの娯楽映画だからこれでいいのかも知れないが。 ちなみに世界のどこの場所の映画でも英語で作るのはさすが世界帝国だと思ったが、昔の邦画にもそういう例(大陸系)があったと思うので他国のことはいえない。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-02-04 10:23:38)
3.  血を吸う粘土 ~派生 《ネタバレ》 
また見てしまった。派生というか続編のようでもあり、若手多数出演の中で黒沢あすか姉さん(監督の妻)が奮闘するフォーマットができつつある。 今回も主要キャストとして、講談社主催「ミスiD2018」の関係者6人が出ている。選ばれただけあって容姿も高水準の人を揃えていたが、揃い過ぎて劇中人物としては不自然だった。なお主演の藤井愛稀(ふじいいつき)という人は、さすが主人公なので一筋縄ではいかない個性的な可愛さを見せている(母親とも津田寛治とも似ていない)。 バケモノ造形は、今回は粘土の素材感にそれほどこだわった感じには見えなかったが、鳥を捕って食うのが面倒くさいのは印象に残った。最後は何が出たかと思えば結局これかという感じだったが、このとぼけた顔を見せなければこの映画でないということではあるらしい。 ほかに映像面では、今回は普通にアーティスティックなビジュアルで見せていると思ったら、結局最後は本来の泥臭い世界が現出するという趣向だったようでもある。ビニールカーテンを使った虚構空間とかは面白くなくもない。  ストーリーとしては12年後の話だったようで、前回の怨念は薄れてしまって惰性的に凶行を繰り返すのかと思ったら、最後だけ唐突に前回並みのスケール感で大惨事が起きていた。この騒動の元凶になったジジイはいったい何がしたかったのか。ちなみに前回イモムシ(モスラ)と思ったのはミミズだったらしい。 ほかに人間ドラマ的なものとして、今回は主人公を中心にした家族関係のテーマがあったように見える。実父への思い、それとは別に実母への思い、養家の娘との関係など複雑だったようだが、切れ切れなのであまり心に残らない。どうもそういうところが素直に受け取れない作りなので、次回は(あれば)改善願いたい。  以上いろいろ書いたが、面白くなくもないが絶賛するほどでもないという微妙な感じなのは前回同様だった。しかし今回は総体的な映像面の印象と、主人公の可愛さで前回+1点にしておく。 なお笹野鈴々音さんがどこに出るのかと思っていたら何と顔が見えていないではないか。スーツアクターになってしまったのか。せっかく出るのだから可愛く見せてもらいたい(共演者のブログのようなものに打ち上げ時の写真が出ている)。
[インターネット(邦画)] 6点(2020-07-04 09:59:34)
4.  ちょき 《ネタバレ》 
和歌山県が出る映画を見たのは8本目である(ドキュメンタリー含む)。個人的には最近、和歌山県のイメージが著しく悪化しているが、それはこの映画の評価に直結しない。映像面では橋の風景(紀の川?)が特徴的で、これはご当地感とともに開放感とか飛翔感の表現だったかも知れない。 物語的には全盲の少女と、美容師の男の交流物語になっている。ジャンルとしては「ロマンス」だが、いわゆる「淫行」はしていないので犯罪とはいえない。妻を亡くして一人暮らしの男のところに若い娘が訪ねて来て、浮かれてしまったのは無理もない。  最後はハッピーエンドっぽく終わっているが、問題なのはこれだけ年齢が離れていると、それぞれの世界認識が全く違うのではないかということである。少女が男に好意的なのは明らかとしても、例えばまだ父親像と恋人像が分化していない状態かも知れず、これに適切に対応するには男の方に思慮と責任感が求められる。しかしその男の方も、実は娘だか恋人だか妻だかわからないまま少女に対しているのは問題だろうが、この少女を愛しく思う心情だけは間違いないということらしい。男が身を引けばいい結果が出るわけでもなく、リスク覚悟で少女を独りにしない(自分も独りにならない)と決めたのなら、それはそれと思わなければならない。あるいは亡き妻と一緒になった時も同じ心境だったのか。 またその亡き妻が共通の記憶になって、今後の二人の関係にガイドラインを提供する可能性もある。そもそも今回は妻が結びの神だったようで(天満宮は性質が違う)浜辺でつないだ左手の指輪は二人の間に挟まる異物というよりも、二人をつなぐ結び目だったのかも知れない。実際は死者の意向などわかるはずもないわけだが、絵馬を通じて、それぞれが互いの幸せを祈った結果がこうなったのなら必然ともいえる。 ちなみに鑑賞者側としても、男が少女を愛しく思う心情は、男を介さず少女の映像から直接感じる(ロリコンと言うなら言え)。鑑賞者としては黙って見ているだけだが、劇中の男なら職業柄、髪を扱う指先に感じる/込めるものがあったと思われる。時代をこえた二人の接点が髪だったということらしい。  キャストとしては、主演の増田璃子という人は同じ監督の「転校生」(2012)というショートムービーでも見たことがあり、今回かなり好感度が高まったが、最近の情報がないようでどうしているのか不明である。目の上に傷が見えるのは何かと思ったら、これは物語上の意味があったらしい。また友人役の藤井武美という人もときどき目にする若手女優なので今後に期待する。ちなみに芳本美代子という人は今回少しかわいく見えた。
[インターネット(邦画)] 8点(2020-03-23 20:29:06)(良:1票)
5.  血を吸う粘土 《ネタバレ》 
著名な特殊メイクアーティストが監督・脚本を務めたホラー映画である。主要キャストとして、講談社主催「ミスiD2017」のグランプリと受賞者の計4人が出ているのでアイドルホラーとしての性質もあったらしく、うち藤田恵名という人は主題歌「私だけがいない世界」も歌っている。ほか講師役の女優と監督は夫婦とのことである。 見た感じでは、いま映っているものが何を表現しているのかよくわからないところが多く、また一つの場面がしつこく続き、その間の一本調子の悲鳴がやかましい。全体構成としても何回危機を繰り返せば気が済むのかという感じで(早く家を出ろ)、やっとここまで来たかと思ったらまだ10分も残っていると思うところもあったが、まあ最後の展開を見ればそういうことかとは思った。ドラマ的には登場人物の悲痛な思いが表現された場面もあったが、残念ながら自分としてはそれほど同調できなかった。 なお何で粘土ホラーなのかは不明だが、監督がやりたかったからというのなら別に言うことはない。人の顔をちぎって潰すとか、粘土化した人物の顔を直接バーナーで乾燥させたりするのは素材を生かした趣向かも知れない。また終盤でクレイアニメーションを使うとか、土人形がハロウィンのように見えるところもあった。  ところで劇中の学校は美術大学向けの予備校という設定だったようで、その背景に監督の怨念があるというのはわかったが(本人が言っている)、どうも劇中人物がトーキョーにこだわる理由が不明で、行きたければ行けばいいだろうがとしか思えない。監督の出身地とされている神奈川県藤沢市は、本物の地方人の立場からすればほとんど東京も同然であり(首都圏という意味で)、誰の思いを代弁しているのかわからなかったが、ただもしかすると本物の地方人というよりは、首都圏の周縁部から都心部を眺めているイメージなのかという気もした。ラストの遠望ではそういう劇中世界が端的に表現されていたようでもあり、いまだに東京のシンボルが東京タワー?というのは古風な世界観だが、これは奥多摩から上京して東京タワーを目指した「モスラ」(1961)の再現を意図したものかも知れない。最後は土人形というよりイモムシ+「デビルマン」の某キャラクターのようなものになっていたようである。 以上のようなことで、独創的というか独特なところが多いが、絶賛ともいかないのでそれなりの点数にしておく。
[DVD(邦画)] 5点(2018-09-01 16:26:47)
6.  チェリーボーイズ 《ネタバレ》 
同名マンガの映画化とのことだが読んだことはない。内容は題名の通りで、中高生ならまだしも25歳というのが共感の条件をかなり外している。 登場人物を見て笑う映画のようだが自分としてはバカな連中の出る映画が嫌いなので可笑しくもなく、何でこんなのを見てしまったかと後悔しながら耐えていた。最初に笑ったのは全体の2/3くらいのところで、パチンコ店女子従業員の表情をあまりにじっくり見せられたのでちょっと吹き出してしまった(こんなに可愛いのにこれまで何もなかったわけがない)。また終盤で見せた池田エライザ嬢の呆れ顔も可笑しかったので、女優の顔を見ている方が面白いのかと思ったが、最後のオチがあまりに馬鹿馬鹿しいのでついに笑わされてしまった。 男はみな一様にバカなのかと思えば実際は三者三様で、うち2人は酒屋の男に最後まで付き合う動機はなかったはずだが、それでもついて行ってやったのは友情の証とでも思うしかない。ラストはわずかな前進を見せて終わったようでもあり、それでよくやった、頑張れと言ってやりたくなったわけでもないが、まあ結果的にはそれなりの物語ができていたようではある。自分としては「映画 みんな!エスパーだよ!」(2015)とどっちがマシかと比べてしまったが、大して変わらなかったということで点数は同じにしておく。主要キャストの役者ぶりには感動した。 ※なお「強制性交等」は犯罪です(刑法第177条)。未遂も罰せられます(同第180条)。劇中の公務員は懲戒免職になります。
[DVD(邦画)] 5点(2018-08-04 13:57:01)
7.  ちはやふる 結び 《ネタバレ》 
原作とアニメは見ていない。主演女優が好きで見たわけではないが、今回は優希美青さんが出ているから見たという面はある。 このシリーズは毎回そうだがどうも前半部分が見づらい。冒頭部分では流れるコメントとか志賀廣太郎氏が目障りだが、続いて今回もまた部活の勧誘風景があってイケメン探しの新入生とかが学園ラブコメの雰囲気を出している。恋する少女の企みが大変な結果につながったなどという少女マンガ的展開を好んで見ているわけではない(朝からわざわざ映画館まで行って)と言いたくなるが、それでもこれをクリアしなければ感動の後半部分を見られないので我慢するしかない。 前半部分のごたごたのせいで肝心の試合も危うい展開で、「ちは」を全員が取られるといった思いがけない場面もあるが、それでも最後は勝つという都合のよさも毎度のことに思われる。しかし、やはり試合場面での緊張感と躍動感、登場人物の言葉や行動には心を動かされるものがあり、最後は爆発的な喜びの感情がもたらされるという点が、このシリーズ最大の価値になっているように思われる。  ところで今回も終了直前までまた続編があるのではという気がしていたが、ラストでは一応の決着がついていたので安心した。よくわからないことが多いままで終わった印象だったが、原作自体がまだ連載中とのことで、これが妥当な締め方なのだろうとは思う。要は主人公が競技かるた部を創設する時点で言っていたことが実現するということで、観客としても納得できる未来が見えた感じだった。 結果的には映画三部作で見る限り、登場人物の恋愛感情(三角関係)が本筋というよりも、何かに一生懸命取り組むことが人生でどういう意味を持つのか、それを前提としていまこの時点で何をしなければならないのかを問う、非常にまともな青春物語になっている。かつ「上」「下」ではふらふらしているだけに見えた主人公の物語としてもちゃんと完結していたようである。  ちなみに大江奏さん(かなちゃん)は今回あまり目立った活躍がなく、最後はリタイアしてしまったのは残念だったが、恋するあまり大変なことをしでかした少女への対応など見ていると、この人の優しさと心の広さが表現されていたようで嬉しい。原作では巨乳という設定だったとのことだが、そうでなくても全然構わないので、この人にはずっとこの人でいてもらいたい。
[映画館(邦画)] 7点(2018-03-17 18:49:28)
8.  ちはやふる 下の句 《ネタバレ》 
今回は序盤から福井関係のエピソードで盛り下がってしまう。肝心の主人公がよくわからない理由でさんざん勝手なことをしておいてから本番でも脱落してしまい、いよいよ対決と思えば今度はメンタルの問題かという感じで苛立たしい。さすがに後半は盛り返していたが、勝つときは髪を耳にかけるのであれば初めからすればいいだろうがとは思った。 ちなみに原宿限定タオルに対するクイーンの反応には全く笑えない(この顔では洒落になっていない)。  主人公にいいところがない一方、他のメンバーが各自最善を尽くしていたのは他人事ながら嬉しくなる。孤立主義だった男も、今ここにいる意味を他人に与えられるだけでなく、自ら自分の存在意義を見出すに至ったようで幸いだった。 またメンバーのつながりを得意札の共有で象徴させていたのは効果的である。皆が「ちは」の札を一斉に取る(1人だけ取れない)場面は前回もあったが、今回は飛んだ札がわざとらしくガラスにぶつかって、話に聞いていた かなちゃんと机くんが笑顔を交わすのが見えたというのが結構泣かせた。クライマックスでのハイタッチも少し感動的である。 ほか個別の場面として、この映画では主人公が本気になった時の目に強烈な印象があるわけだが、今回は子役の目にも少しドキッとさせられた。またかなちゃんはやはり手に優しさを込める人だということらしい。  ところで、いかにも作為的ながら観客にきっちりアピールする場面が多数用意されているのは映画として悪くない。原作を読んでいないのでわからないが、たとえ感動要素の多くを原作に拠っているのだとしても、それをちゃんと生かした映画ができているのだろうという気はした。また映像的には、特に主人公のイメージカラーらしい鮮やかな赤が印象的な映画になっている。 ここまでの間、主人公が本領発揮する場面は意外に少なく、それ以外の人々が存在感を高めていくのが中心だった気がするが、3月公開の「結び」はいよいよ主人公中心の物語になるのだろうと思っておく(過度の期待はしていないが)。
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2018-01-07 14:58:10)(良:1票)
9.  ちはやふる 上の句 《ネタバレ》 
原作とアニメは見ていない。主演女優が好きで見たわけではない。 最初が部活の勧誘で始まるのでまたこれかという気になるが、続く序盤のマンガっぽさに呆れてしまい、これはそもそもマンガだからと自ら言い聞かせながら見ることになる。ただ「バカ」「カバ」とか「お母さん」とかは悪くない。 また本筋の展開では、最初は主人公を天才のように見せておきながら、その主人公を含めていきなりどん底まで落ち込んでしまい、その上に本番でも深刻なトラブルが発生していながら結局は優勝してしまうという流れが、ご都合主義とはいわないまでもあまり自然に感じられなかった。ちなみに主題歌はエンディングの雰囲気をぶち壊している。  一方ドラマ的には、若いのに運命の限界を感じていた男が、土壇場で一気に壁を突破したのが痛快で感動的だった。また孤立主義だった男が、今回とりあえず仲間の存在を認識できたというのも悪くない。やらないでも済むが頑張ってやればそれなりの成果が出て、結局やってよかったことになるといった経験則の表現にもなっている。 また何より大会の場面が圧巻で、特にチームの皆が一斉に手を振るのが流れの変化を象徴していたのは非常に印象的だった。ラストの対戦にも意外性があり、見る側としてもこれはやられた、という感がある。「瑞沢優勝」と言い切らないうちからの展開は感動的だった。 ほか歌の解釈ということに関しては、定説は定説として人それぞれの思いも別にあるということだったらしい。勝負では最初の何文字かしか問題にならないとしても、背景にある歌の全体像を認識することで文学的な世界が広がる様子も見せていた。  なお登場人物としては大江奏という人が、当初は奇矯な言動が多かったが、落ち着いて来ると優しい人柄が見えて来て、歌を詠む声もきれいで好きになった。意気消沈している男の肩をほかの男が次々に叩いてから、この人がそっと手を置いたところは少し泣ける。「“田子の浦”取りました」と言っている顔を見ると自分も嬉しくなった。 ちなみに男は誰が出ようが出まいが関心ないわけだが、ライバル役で出た清水尋也という役者は他のところで見たことのある清水尚弥の実弟だったらしく、雰囲気がかなり似ているので、序盤で兄が端役で出たのを見てから弟が出ると混乱した。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-01-07 14:58:08)
10.  チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜 《ネタバレ》 
[2018-01-05修正]この映画の2年前に放送されたTVドラマ「チア☆ドル」と明らかに名前が似ているが事情は不明である。説明調の副題がTVドラマ以上の軽薄感を出している。 まず登場人物が福井福井としつこく言うのでそんな場所は知らんと突き放したくなるが、それでも映像に出ているのが福井という場所なのだろうと何となく思い込んでいたところ、実際の撮影地はほとんど新潟だったとのことで少しショックだった。地元としても期待がなくはなかっただろうが、そこをあえて地元密着にはしないことで、日本のどこにもある地方からいきなり世界につながりうる時代を表現しようとしたということかも知れない。  内容的には最初が少女マンガ原作かと思うようなバカ高校生の状態から始まるので呆れるが、続く前半のコメディ部分は結構可笑しい。「わからんのやってあんたには」のところは笑ったが、ほかにも滑ったようでいて滑り切ってしまわずにかろうじて引っかかったところで失笑させる緩さがある。県大会で大失敗しているのに観客は楽しげに笑っていたのも面白かった。 その後もあらかじめ見えている終着点に向けて着実に盛り上げて行く構成になっているが、自分としては主人公が端の方にいてもなお重要な存在になるという話なら期待できると思って見ていた。しかし結局最後は人気女優をセンターに置かなければ済まなかったらしく、その後に指導教員の内幕を延々と説明していたのが言い訳じみていて気が抜けた。本番でも素直に気分が高揚するのを許さず、不快な実況アナウンサーや教頭など(校長も)を出すのはコメディ要素にもなっていない。終了後も、観客の歓声がまだ続いている最中に笑顔を消してステージから去るなどという行動は全く納得できない。 そのようなことで、要ははじめの方はまあよかったが、後になるほど気に障ることの多い映画だったということである。個人的印象としては前年の「ちはやふる」(本物の福井が出る)に残念ながら負けている感じだった。  なお今回は中条あやみという人が少し好きになった。また富田望生という人は外見的な適性に恵まれないのに加えて家庭的にも恵まれない役で、悪いところを一人に押し付けたような設定が安易に思われたが、本番では一応この人の見せ場もなくはなかったようである(細切れだが)。
[DVD(邦画)] 5点(2017-10-17 19:28:22)
11.  チキンズダイナマイト 《ネタバレ》 
「優れた若手映画作家の発掘と育成」を目的に、NPO法人映像産業振興機構(VIPO)が2006年から文化庁委託事業として行っている“ndjc”(若手映画作家育成プロジェクト)での選定を受けて製作された短編映画である。同様の経緯で製作されたものとして、ここのサイトに作品登録されている範囲では「琥珀色のキラキラ」「動物の狩り方」がある。映像ソフトとしては同じ監督の「独裁者、古賀。」(2013)のDVDに収録されている。 内容は実質的に「独裁者…」の簡略版または普及版のようで、似たようなテーマでコメディ化してハッピーエンドに変えた形になっている。他のレビューサイトなどを見るとこっちの方が評判がいいようで、見やすくかつ笑える映画になっているとは思われる。しかし当然ながら長編だった前作の方が明らかに内容が充実しており、「独裁者…」を先に見た自分にとっては中身が希薄のように思われたが、それはまあ娯楽性とテーマ性のバランスの問題ということかも知れない。 なおヒロイン役の恒松祐里という人は、「くちびるに歌を」(2014)の合唱部の仲村ナズナ役(本来の主人公)で、この映画では清純女子高生ともいえないが、下品なストーリー展開の中でもイメージを崩さずに済んでいた。
[DVD(邦画)] 4点(2016-10-01 13:44:30)
12.  賃走談 2号車<OV> 《ネタバレ》 
「賃走談 1号車」の続きであり、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「2」である。「1」と同じく古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。  【帰ってきた女】 視聴環境によるかも知れないが画面が暗すぎる(女優の顔がよく見えないではないか)。また男の口調が気に入らない(3人とも)。話の基本構造としては単純だが、しかし登場人物の立場によって出来事の性質が変わるのは面白い。[4] 【チイちゃん】 雨の日の不吉感がある。人物を暗く見せたり明るく見せたりして混乱させるのが面白い。印象が二転三転する。[4] 【くりかえす最後の記憶】 題名だけでどういう話かわかってしまい、また男の行動で何が起こったのか容易に想像できる。そもそも男の動機が不明なのは困ったことだが、最大の問題点はタクシーがほとんど関係ないことである。なお管理人のジョークはオヤジじみているが、年長者が若年者に気配りしている感じが出ており、彼我の年齢差を超えてかろうじて同調してもらえそうなあたりを狙っているのがいい。[4] 【怪談タクシー】 悪くない題名である。冷静な運転手と感情豊かな客の対比は面白い。愛すべき女性像に好感が持たれるが、最後は可哀想で切なくなる。2006年でさえなく2014年だったことの衝撃が印象的だった。ただ最後の駄目押しは聞かなくてもよかった。別の締め方がなかったものか。[7]  前作と同じくスターダストプロモーションの所属タレントが多く出演しているが、今回は女優の方に少し重心が移った感じで、タクシー運転手が主人公とも限らなくなっている。基本的に若手女優はスターダストの所属だが、「チイちゃん」だけは女優といっても子役(2005年生まれ)である。 前作と同じ企画の一部であるから水準としては変わりなく、怖いものではないが映像作品としての印象は悪くない。最底辺の安物ホラー群の中にも、結構見られるものがあるのだなとこれで少し見直した。特に「怪談タクシー」は個人的に好きな女優が出ていることもあって印象深いエピソードである。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-03 18:52:49)
13.  賃走談 1号車<OV> 《ネタバレ》 
「タクシー怪談に焦点を絞った」ホラーとのことで、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「1」である。この世界では名の知られた?古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。  【手形】 夜勤明けの風景が爽やかだが音楽が沈痛。カーテンの色に溶け込んでいた脚は誰だったのか。心霊現象が中心ではなく「ほんとに怖いのは人間」的な話だったのは残念だが、逃げ出そうとした女性客と死にそうな女性客はなかなか真に迫っていた。[4] 【犬】 平凡な話かと思ったら最後に意表をつかれた。それを含めてありきたりな展開と評されるかも知れないが、あえて先読みしようとせずにボーッと見ている限りは少し驚かされる。[4] 【歪み】 運転手は学習能力がないのかと思ったが、どうやっても同じ結果になるということだったらしい。ラストはよくわからなかったが、抜本的解決を図ろうとしたらこうなったということか。女性客(演・相葉香凛)はほんわか系だが、最後の一言に裏があるのではと勘繰ってしまう。[4] 【11号車】 第1話の「手形」を別の監督が引き継いで後日談を作った形になっている。「手形」の方は「ほんとに怖いのは人間」的性格が強かったが、それは発端がそうだったというだけで、ここに至って本格的な心霊現象に移行したらしい。そうすると逆にこれが怪談の本体であって「手形」が前日談とも捉えられる。窓に映る顔の怖さが少し目を引いたが、終盤の視覚効果がいかにも安い感じで、またグロいのも不要に思われる。 なお見栄晴も年を取ったものだと思うが、同じように自分も年を取ったわけである。[3]  企画・製作が株式会社SDPであり、同社が関わった他のオムニバスホラーと同様、スターダストプロモーションの所属タレントを多く出演させている。他のものは女優の魅力で見せるものが多い気がするが、今回のこれは全てタクシー運転手が主人公になっており、男に重点が置かれた印象が強い。 題名は“珍走団”から来ていると思われるのでふざけた感じだが、映像作品としての印象は悪くなく、話としても少し気の利いた作りになっている。どうせ最底辺の安物ホラーだろうと思っていたら意外に悪くなかったというのが実感だった。
[DVD(邦画)] 4点(2016-07-03 18:52:47)
14.  チョコリエッタ 《ネタバレ》 
自慢にならないがフェリーニという人の映画は見たことがない。 159分もある映画だが、何が言いたいのかがわからない。原作の方はまだしも何を問題にしているかが明瞭だが、この映画は変に小難しいのと、必要性が疑わしい不純物を含んでいるため素直に肯定できなくなっている。この世界はクソだとのことだがクソに交われば臭くなるのであって、クソを持ち出した時点でこの映画もクソの臭いを付けていることを自覚してもらいたい。  しかし一方で、主人公の存在がこの映画の価値を高めているのは間違いない。159分もある映画だが、この人を見ていれば何とか耐えられる。髪の毛を取り払ったことで細く長い首筋が引き立ち、またいわば顔が素っ裸にされたような感じになって、素材のよさをそのまま生かした奇妙で愛すべき少女像が表現されている(友達になりたいとは思わないが)。自分にとってはとにかく強烈な森川葵映画だったが、この女優本人は当然として、主人公の人物像をこのように作ったスタッフにも敬意を表すべきなのだろう。 また細かいことでは、主人公が左手で書いた文字が見事な出来で感心した。エンディング曲は誰が歌っているのかと思ったら主演女優が気の抜けた感じで歌っているのだった。  以上、全体としてあまりいい点はつけられないが、とりあえず主演女優、及びその母親役(の女子高生姿)に点を入れておく。自分としてはこの母親役の女優も結構好きだったりする(16歳、と本人が言ったところで笑ってしまった)。
[DVD(邦画)] 5点(2016-04-29 08:34:12)
15.  チチを撮りに 《ネタバレ》 
高評価が多いので書きにくいが、自分としては引っかかるところがかなりある。 そのうち“父親を恨むかどうか”に関して書くと、まずこの姉妹に恨む気持ちがないならその場でそう答えればいいだけのことで、また仮に恨んでいたとしても、正当な理由があって恨むのは倫理的に悪いこととは思えない。これが劇中の台詞ではいい子悪い子の教育的問題のように聞こえていたのは違和感がある。 また個人的感覚では、他人を恨むこと自体が自分を惨めにするとは思えない。惨めなのは悪いこと全部を他人のせいにして、死ぬまで恨み事を言い続けるタイプの人物だろう。この姉妹が母親から受け継ぐべきものは、要は“人としての矜持”であって、自分の決断の結果を自ら引き受けようとする覚悟なのだろうと思うが、これが劇中では恨むかどうかという現象的なところで止まっていたようでもどかしさを感じた。 以上のほかにも“逃げ道”とか“ユメよりコメ”の件などに関して苦情を言いたい点はある。また全般的に理屈で作った印象が強く、題名の付け方もそうだが、伏線を張りました→回収しました、という関係が線で結んだように見えたりするのも気に障る。 ただ、母子・姉妹の関係を密度濃く描いた映画というのは間違いないと思われる。その濃密さが部外者の立ち入りを拒むように感じたのが自分としては最大の問題点だったのかも知れないが、喧嘩しても甘ったれた感じとかは嫌いでない。バカっていうな、というのを互いに言い合っていたのは理屈っぽさがなくてよかった。  [2017-01-13「湯を沸かすほどの熱い愛」鑑賞記念で追記] “ユメよりコメ”の件に関して、米屋との間で金銭によらず物とサービスを直接交換していたことを匂わせるエピソードが前半にあった。それ自体の是非について自分がどうこう言う立場にはないが、そういうことを劇中の母親像とセットで観客に受け入れさせようとするのには反発を覚える。ただの一観客として、劇中人物の個別事情にどこまで付き合わされなければならないのかという気分である。それとも娘(人材豊富)を売らないで自分を売ったのがまだしも良心的ということなのか。自分としては東野圭吾「白夜行」を読んでからそういう方向に考えが行くようになってしまって仕方ないが、とにかく変に露悪的なものは見たくない。 またついでに書くと、ラストの魚は圧倒的に意味不明である。こういう支離滅裂かつ笑えない趣向を褒める気には全くならない。
[DVD(邦画)] 5点(2016-04-22 23:44:26)
16.  チープ・フライト<TVM> 《ネタバレ》 
LCCについての考え方がいろいろ盛り込まれたドラマのようである。 劇中で極端な物言いが多いのは気に障るが、それは普段は言えない生の本音をコメディに紛れ込ませたものと解される。しかし言葉遣いに異常にこだわる割に本質的なところで答えが出せず、その上ふざけたパフォーマンスでごまかそうとするのでは、現実の客ならさらに怒るだろうし、真面目に見ていた視聴者も小馬鹿にされた印象がある。劇中で一つ感心したのは元看護師の態度だったが、これは看護師の世界のことがそのまま航空会社に当てはまるかのように印象操作しただけではないかと取れる。 またストーリーとしては、テーマに関わる重要事項を主人公の成長にあわせて視聴者に提示していく形のようだが、そのせいで放送時間の70%を過ぎるまで主人公がLCCの意義を納得できていなかったというのは本物の馬鹿に見える。ベテランCAであれば、そういうことは初めから全部わかって納得してから来るのが当然なわけだが、このドラマでは鼻糞扱いされるために引っ張り出され、最後は見事に洗脳されて終わったようなのが痛々しい。そのほか最初は嫌な奴だったがほんとはいい人だった、というドラマ作りは幼稚に感じられ、また当面の出費より信用が大事といった普通の判断をさも立派なことのように印象づけようとする展開も姑息に見える。 そのようなことで、主張の一部が理解不能な上に全く共感できない話であった。内部ではこれで受けるのかも知れないが、世の中それほど寛容な人物ばかりでもなく、下手な作り方をすると関係ないところにも敵を作るのではないかという気もする…少なくとも自分としては制作に協力した航空会社の印象が著しく悪化した。 なお正直に書いておくと、個人的に好きな女優が誰も出ていないことも低評価につながる要因である(嫌いなのもいる)。
[DVD(邦画)] 2点(2015-07-24 01:23:38)
17.  地球防衛未亡人 《ネタバレ》 
特に見たいとも思っていたわけでもないが、この監督の「地球防衛少女イコちゃん」(1987)に始まるシリーズの最新作として一応見なければならない気がして見た。前作「地球防衛ガールズP9」(2011)との連続性は特にないが背景音楽を流用しているところがあり、最後の荒川河川敷の場面で流れていたピアノ曲は同作関連曲「虹色のステージ」のアレンジである。 今回は冒頭がくどい映像とともになぜか「祝典行進曲」で始まったので失笑したが、以降もけっこう笑う場面が多い。主演女優が普通に演技しているだけで可笑しいので、これでこの女優が微妙に好きになってしまった。この主人公を未亡人という設定にするためだけに人が死んだのは気の毒なことで、このシリーズで死亡者が表に出たのは初めてと思われる。また新聞社の編集部員役で南郷勇一氏が出ていたがこれは毎度のことである。 自分としてはそれなりに面白かったが、評判があまりよくないようなので対抗して少しいい点を付けておく。  なお大した話ではないが、防衛軍のオペレータは「愛川ワコ」という名前で、これは旧作のイコちゃんの氏名が「カワイイコ」というネーミングだったのと同じ趣向かと思って少し考えた。しかしアイカワワコではどうも意味をなしておらず、これはいわゆる一杯喰わされたということか。この女優は他の比較的まともな(主観的判断)映画にも出ているのでこんなバカ映画に出てはもったいないが、主演女優と並べると十分に初々しいので、あるいはこの人が「地球防衛少女」「地球防衛ガールズ」の正当な継承者だったのかも知れない。
[DVD(邦画)] 6点(2015-06-02 20:07:13)
18.  地球防衛ガールズ P9 《ネタバレ》 
旧作の「地球防衛少女イコちゃん」より隊員数が増えていて豪華だが、人数が多いため全員の顔を憶えられないのは現代アイドルの実態そのままである。昭和的な清楚さといったことは全く重視されておらず、年齢差も大きいため「少女」というより「ガールズ」というしかない雰囲気になっていた。 そのせいもあって、旧作における美少女の“お願いパワー”などという発想も通用しそうにない。そのため劇中では昔の隊員を引っ張り出してきて“みんなで祈れば願いはかなう”というような昭和的な知恵を授けていたようだが、最後には敵が滅びるわけでもなく潜伏しただけであり、その効果のほどは不明だったというしかない。 今作で最大の危機をもたらしたのは内部崩壊を狙った工作であり、これは昭和特撮の古典的な戦争観からの脱却のように見える。また侵略者だか何だかよくわからない連中が市中に出没するようになっており、もはや単純な敵味方の観念が通用しない時代の反映のようでもある。しかし抑止力としての武装が重要性を失っていないのも国際社会の実態であり、劇中でも実力を保持したまま戦わないで済む防衛軍が復活していたのは幸いだった。  ところで今作で北朝子を名乗っていた人物は、最後に月に帰るのかと思ったら災害に苦しむ人々のもとへ赴くとのことだった。この映画の撮影は2011年の夏だろうと思うが、劇中発言にあった内部崩壊も“宇宙人”も当時の時事ネタと考えれば、この人物が人間(日本)など見放したように言っていたその感覚を同時期の自分もまた共有していたことを思い出す。そうしてみるとこの人物の最後の言葉には、意外に真面目に震災後の日本を元気にしようという意図が込められていたのかも知れない。 以上のように、さまざまな面で21世紀進化型ver.にふさわしい映画になっているといえなくもない。実際どこまで真面目に考えて作ったのかは不明だが、一定の解釈のようなものが可能であるからには、必ずしも純粋なバカ映画として制作されたわけでもないようである。  なお劇中で特に印象的だったのは「ハセトンって何?」であり、ここで壁のサインに通電しているからには広告の意志があるはずなのに意味不明、という不条理さがこの場の異界感を際立たせていた。また「バナナはお菓子じゃないのよ」という台詞には、大昔に忘れ去ったはずのものを突然指摘されて虚を衝かれたような心理的衝撃があった。
[DVD(邦画)] 5点(2015-03-28 20:51:13)
19.  ちょっとエッチな生活体験 接吻5秒前 《ネタバレ》 
「ラブ&エロス シネマ・コレクション」というシリーズの一つである(R15+)。「エロス」の部分は主に別女優が担当しているが、主演女優も何気に相手なしの“ひとりエロス”をやっていたりするのでその方面の見どころは用意されている。 この映画の問題点としては、とにかく初期設定がたまらなく不自然なことである。日頃からロリータフェイスなどと言われている人物を「ショートヘアでボーイッシュな」役にしたギャップで効果を上げているのはいいが、しかしこれほど童顔で華奢で小柄で肌ぷりぷりとか言われていながらそれでもなお周囲の全員が男と思い込んでいるのは非常に変だ。こんなに可愛いのに男だと思うか普通。いつバレるとかの問題ではなく最初からバレバレではないか。そういうウソ臭さに呆れるというより微笑ましさを感じるのはやはり地が可愛いからだろうし、その辺は制作側の巧妙さとも思われる。 一生懸命男を演じていても否応なしに女性らしさが滲んでしまい、またそれらしい衣装などなくても「女」が表面化してしまう場面もある。それをどうやら本人は意識していないらしいが、それでいて「あたしだって女でいたい」と願う純な心情がいじらしいところへ前記のひとりエロスを演じるのでこれがまたたまらなく愛おしい。とにかく見ていてたまらなくなる映画である。  ところで一つだけ残念だったのはラストのオチであり、ここまでの間にもう完全にバレているに違いないと思っていたにもかかわらず相手役がまだ男だと思い込んでいたのはさすがに不自然である。そのため自分としてはここでのカミングアウトを一瞬本気にしてしまったが、まあこの場面自体は「女の本質」さえあれば生物学的な性差も問題にはならない、ということを言っていたのかも知れない。 何にせよ最後がほのぼのと幸せな感じで終わったのは大変結構なことで、年齢制限の割には(主演女優の実年齢の割には)ピュアな青春物語のようになっている。最後には「大好き!」という台詞をこの主人公にそのまま返してやりたくなった…おれに言われても嬉しくないだろうが。
[DVD(邦画)] 7点(2014-11-08 20:53:26)
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