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1.  つぐみ
思い切ったナレーションの多用。言葉で分かる部分は言葉に任せちゃって、画は画でいこうって腹みたい。細かいエピソードの連続でいこうという腹でもある。映画としてのうねりは放棄しているようなので、それについて文句を言ってもしょうがない。「最後のひと夏」ってことが重要だと思うんだけど、イメージが過去に戻ったりするから「ひと夏」って切実さがあんまり出てこない。輪郭がぼやける。つぐみは外面は普通の子やってて、家の中では「後味悪いぞー」などと毒づく(あそこはいい)。そこが面白いんで、その違いはキッチリしたほうがいいのに、無頓着だったような気が。牧瀬嬢はかわいいすよ。
[映画館(邦画)] 5点(2014-03-07 09:47:55)
2.  ツルモク独身寮
浜田光夫的勤労青年がスクリーンから姿を消してだいぶたつが、家具工場で働く地方出身者の独身寮物語ってのにちょっと興味をひかれた。でもどうだろう、「歯車には歯車のプライドがある」ってだけで結論にしちゃってたみたいで、歯車の交換可能な悔しさとか、こんなことやってていいのか、という苛立ちとかがここにはない。けっきょくこの設定はモチーフではなく味付けでしかなかったのか。ブスの描き方も、なんかヤだった。フロントガラスに顔押し付けなくてもいいんじゃないか。竹内力が、二枚目を差別すんなよ、って叫ぶのはちょっとおかしかったけど。
[映画館(邦画)] 5点(2013-06-05 09:11:13)
3.  冷たい熱帯魚 《ネタバレ》 
でんでんは最初ピン芸人で、サングラス掛けてハードボイルド風にクールに登場し、それを外すとあの顔で、その落差で笑いを取るという、いたって単純な・しかしそこでは必ず笑える「芸風」だった(趣味は卓球と知って凄く納得)。その落差を本作では裏返しに使ったわけで、この映画に価値があるとすれば、彼にやっと助演賞を与えられたということ。最近でも印象に残っているのは『クライマーズ・ハイ』の、地方新聞はこういう人物によって支えられてるんだなあ、と思わせた部長、『母べえ』の、日本のファシズムはこういう善良さによって支えられてたんだなあ、と納得させた隣組の組長、など素晴らしかった。本作のようなアクの強い役でないと賞を貰えないのが悲しいところだが、ファンとしては嬉しい。園監督は映画作りより、役者起用に才能があると思っている。本作でのでんでんの前にも、安藤サクラ、満島ひかり、吉高由里子、と幾多の才能にスポットを当ててきた。もう当時から評価はあったが『気球クラブ、その後』の永作博美も素晴らしかった。本作で気合いが感じられたシーンは、落語の「らくだ」を思わせる逆転の前のでんでんの言い募りの場で、インテリが非インテリに対して抱いている根源的な不安を、彼がズバズバと突いてくる、その滑らかでない喋りの鈍痛感。
[DVD(邦画)] 5点(2013-02-16 09:55:58)(良:1票)
4.  ツィゴイネルワイゼン
ちょっと変な話。赤く染まる骨、夫婦の会話の途中に聞こえる何かの声、娘の夢を頼りに本を返してもらいにくる女、屋根瓦にどこかから落ちてくる小石の音。はっきりとした「怪談」ではなく、ちょっと変という程度の「怪異」。この雰囲気がいい。サラサーテの呟き。あきらかに何か語っているのだが、よく聞き取れない、もしかするとよく聞き取れないように呟いているのかも知れず、自尊心がハッキリ語らせようとしないが、心の中にしまい続けているのもつらい、という想い。それが次第に嫉妬とか怨みとかに固まっていく。内にこもって骨を血で染めたり、ちぎりコンニャクの山を作ったりする。生きていると勘違いしている者の夢なのか、ストーリーは次第に曖昧になっていくのだが、画面は実に明晰なのだ。おどろおどろしさよりも、カラッとしたユーモアが漂ってくる(たとえば盲人三人の決闘シーン)。清順の世界とは、これだったんだ、あまりに明晰なゆえに掴み切れた気になれない夢魔。そして男2女1の三角形が繰り返されていく。嫉妬。外れた1が怨みを抱きながら2と並んでいる怖さ。
[映画館(邦画)] 8点(2012-08-23 10:01:37)
5.  ツイン・ドラゴン
映画は双子が好き。いや映画だけじゃないな、「物語」一般が双子好きなんだ。現実にも双子はあるのに、なんか物語性(非現実感)が漂う。双子が並んで立ってる図だけで、妖しさがある(たとえば『シャイニング』)。というわけでこれ、ジャッキー・チェンが双子なの。おとなしい指揮者とチンピラ的のと。ウェイターのおしりでカットを変えて、背中の衝立越しに座っている二人を交互に撮るとこなんかに、特撮よりも映画の楽しさがあった。波止場でのアクション、BGMがニセの指揮者が演奏会で演奏している曲をそのまま使ってるのがおかしい。ラストのミツビシの車の試験場でのアクションが見どころ。このころはまだ40前か。窓から車中に飛び込み、上を駆け抜け、衝突寸前で跳び上がったりと、いつもながらとは言えキビキビしている。シートベルトを着用しようという教訓つき。
[映画館(字幕)] 6点(2012-05-20 09:08:50)
6.  妻よ薔薇のやうに
原作ものではあるが、登場人物がみな弱さを持っていて、それを肯定していくという成瀬の匂いの強い話。正妻は長野から送られてきた金で衣装をあつらえるような鈍感さを持っていながら、短歌の世界では一応名を成している歌人。外で見かけた幸福そうな一家もそれをそのまま感動できず、一度短歌に凍結してしまわないとならない性分。旦那は旦那で、もういい年なのに夢追い人。金鉱探しで一生を棒に振ってしまいそうな感じ、しかもそれをうすうす予感しているようなところもある。妾は妾でそれを見抜いていて、そっと溜め息ついたりしている(この時代、妾というものはただただ可哀想な弱者か、女狐のような悪者として描かれがちだったと思うんだけど、この英百合子はちゃんと一人の女性として立体感を持って存在していた、どちらかと言えば「可哀想」サイドだけど)。みんな不幸へ不幸へと傾いていてそれを自覚しながら引きずり込まれていく。成瀬の世界をひとことで言えば「ずるずる」。流されていく弱さを個々に見ていくとどうしようもないんだけど、しかしその弱さの総体をどこか肯定している。それが明るい印象を残している。こんな世界観ってあんまりないんじゃないか。
[映画館(邦画)] 8点(2012-04-26 10:09:43)
7.  ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間
意味ありげなものを重ねて重ねて、意味から遠いところへ行くのがこの人の世界。だから「解決編」と思ってはいけないんだろう。非難すること、されること、あるいは「糾弾」というきつい言葉を使ったほうがいいのか、それが繰り返される。手が汚れているとネチネチ言い出すあたり、車で見知らぬ男に急に糾弾されるシーンとか、自分の分からない理由で、あるいはぼんやりと「あれかな」という程度に思い当たる理由で、不意に糾弾されるんじゃないかという不安。この作品の手応えはそこらへんにありそう。へんにオカルトがかった部分はつまんない。それはそれで「糾弾」で、叫ぶけど、叫べば叫ぶほどウツロなの。ウツロで埋めるために叫んでいるような。この監督、力がこもるのはいかがわしい場所のシーン、音楽の力もあったけど、思春期の若者の目を通してみられるその雰囲気がなんか独特。外側にだけ世界が広がっていくんじゃなくて、内側にも広がっていく。覇気のない歌声に導かれて。赤と青。それと安っぽいセット趣味も独特。赤い部屋なんか。宙吊りにされる、ゆっくりとした前傾。なんなんだろう、こういう趣味。ブームになるような万人受けするもんじゃないと思うんだけど。
[映画館(字幕)] 6点(2012-03-21 10:01:05)
8.  妻への恋文
話の大枠は「他人の顔」みたいなところもあるんだけど、フランスはあんまりアイデンティティの問題とか自由の問題とかに突っ込まず、倦怠期ものの恋愛喜劇に収めていく。なんかもったいないと思うんだけど、こういう態度がエスプリってんだろう。最初は旦那が妻への関心を失ってるように見せて(テレビのシーン)、オレンジの手紙の効果をあげようとしている。部屋を分けて床のきしみで駆け引きしたり、しかし焦れば焦るほど、幸福な時の流れは早まっていく。男は「大人の愛」という安定を拒否する情熱の信者、幸福な時が過ぎ去っていくことに敏感なの。これ『髪結いの亭主』のすぐあとに来た映画で、邦題もなんか意識してたな、でもそのために印象が弱まってしまった。
[映画館(字幕)] 6点(2011-07-25 10:14:36)
9.  冷たい雨に撃て、約束の銃弾を 《ネタバレ》 
東洋人と西洋人が映画の中で絡むと不協和音が生まれがちなので心配していたが、ラテン系だとそうでもない。というか、本作では異邦人ということが、記憶が薄れていくことと重なってイキている。すべての人間社会にとっても異邦人になっていきつつあるということ。ラストシーンがテーブルでニコニコしている主人公なのにはちょっと肩透かし感があったが、あれはつまり孫の記憶が完全に消え去って、その代わりに孫のような子どもたちと団欒をしている映像が入り込んできた、って感じなのだろう。ジョニー・トーらしい丁寧さが出たのは、銃撃戦よりもスパゲッティ食べながらの銃を巡るやりとりのとこ。しだいに男がただものではないと分かってくるあたり。サッと投げられる皿の気合い。その皿の行方にただのシェフでない証明があり、その皿は後のシーンのリング状のフリスビーにつながっていく。そしてゴミ捨て場での銃の試し撃ち、自転車がカラカラと動いていくとこ。記憶が消えていく男との約束をボスとの契約より優先するって「男の美学」は分かるんだけど、ちょっと命を粗末にしすぎてないか。ゴミの野での銃撃戦にもう一工夫ほしかった。ボスの卑劣さを観客に得心させる描写にも。
[DVD(字幕)] 7点(2011-06-20 10:25:50)(良:1票)
10.  月はどっちに出ている 《ネタバレ》 
問題の立て方は悪くないのだが、どうも映画としてザクッとくるところがない。そのエッジの不確かな鈍痛感こそ、在日外国人の痛みに一番近いのかも知れないけど。タクシー運転手という、他人と一対一の仕事場の面白さがあまり生かされなかったのでは。一番実感があったのは、乗り逃げ客の場だな。姜(が)さんと呼ぶ、自称韓国問題に関心のある客、ただただ穏やかに受けていく忠男、逃げた後の追っかけがあって、客は開き直って暴れ、次いで手をついて謝り、次いで防御の姿勢を取るところがおかしい。日本そのものの戯画として秀逸。釣銭を渡すのがいい。道に迷う新米、東京タワー、黄金のウンコ、の次に富士山が来る。タクシーの漂流の感覚と出稼ぎ者の感覚、その「地に足が着いていない」心細さと自由さ、それらをもっと詰めれば、在日の問題が普遍的なテーマにまで広がったようにも思えるが、ちょっとタクシー会社内のシーンの比重が大きすぎた。この浮島のような会社が燃える、ということの重さがも一つ感じられなかった。アイデンティティの不確かな世界を、満ちては欠ける月だけを頼りに車を走らせていく、って設定は理解できる。
[映画館(邦画)] 6点(2011-05-28 12:49:22)
11.  翼に賭ける命 《ネタバレ》 
いちおう大恐慌期の話なんだけど、それにしちゃヒロインなんかゴージャスな感じで、あんまり巡業芸人の「うちひしがれ感」がないの。社会派映画じゃなくてあくまでメロドラマだから貧乏くささはダメってことなんだろう。でもそこらへんの階級差が出せてないために、話のポイント、飛行機を手に入れるために夫が妻に経営者への色仕掛けを強いるあたりの凄味が、も一つ出てこない。あるいはかつての戦場の撃墜王が現在レースの飛行機乗りをやってる屈辱感も。しかしこのレースシーンは迫力があった。だいたい飛行機ってのは、対照物がないのでスピード感が出なく、映画では優雅な感じになってしまうものだが、このレースは低空飛行で、浜辺すれすれに飛んでいく。疾走感。二度目のレースシーンでは、子どもの遊具の回転飛行機と重ね合わされ、盛り上げていた。パイロットの虚無感をきちんと踏まえ、それを原動力とした飛行として描かれていたら、このレースシーンの迫力は名作の名場面と言われるようになったのではないか。これ原作フォークナーなの。アメリカの大作家のうち、フォークナーはなぜかあんまりいい映画化がない。彼は無名時代ハリウッドでシナリオ書きの副業をせっせとこなしていて(たとえば『三つ数えろ』)映画との相性はいいはずなのだが、ああそうか、だから自分の文学では映画化しづらい世界に行ってしまったのか。原作読んでないけど、終盤の新聞社での長ゼリフなんか、文学の香り高く言葉が練られている。これ原作が生かされてる部分なんじゃないかと思ったが、違ってたらごめんなさい。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-03-06 12:14:30)
12.  劔岳 点の記 《ネタバレ》 
昔は山岳映画というジャンルがあった。つまり秘境は秘境というだけで映写する価値があった。今ではテレビでほとんどの秘境が開拓されてしまっており、どうかなあと思っていたが、でもけっこう見せるのだ。切り立った峰を人々が歩いていく臨場感なぞ、ゾクゾクッとくる。現場での実写にこだわった愚直さを(ちょっと押しつけがましく感じるところもあるが)、メデてやろうという気になった。そういうふうに、おもに記録映像として鑑賞していたようなのだが、ただ一ヶ所、間違いなく映画を意識させられたところがある。ノブの役どころは、軽はずみをして危険を導くといういかにも物語を単純にならしてしまうものなのだが、実際に彼が岩肌を這い登って行くところには記録映像としての息遣いが感じられる。その彼が斜めに滑り落ちる。さすがにここはリアリズムにこだわれず、現実の転落とは違う何やら「優雅」な滑空を見せてくれるのだ。ああ映画だ、と瞬間思った。たとえばミュージカルで主人公が踊り出すタイミングにも似た、リアリズムからそれ以上のものに跳躍するときめきが、ここで一瞬感じられた。音楽はヴィヴァルディ、バッハ、アルビノーニなどバロック名曲集。登頂の時は『バリー・リンドン』のテーマ(ヘンデルだったっけ)が高鳴る。
[DVD(邦画)] 6点(2010-10-14 09:56:29)
13.  つばさ 《ネタバレ》 
とにかく視点が自由に動ける、ってことが映画の獲得した喜びのなかでも重要なものだったということがよくわかる。ブランコといっしょに揺られ、向こうから来る男が上下しながら近づいてくる。テーブルを越えてぐんぐんシャンペンに近づいていくカメラ。そして何と言っても飛行機からの眺め、兵隊がワーッと散っていくところなど、そのまま『地獄の黙示録』へつながっていくノリ。空中戦でちっぽけな飛行機が雲海に沈んでいくのなんかも、なかなか哀切で、当時の観客のショックは大きかっただろう。せいぜい車や列車のスピードを実感するぐらいの生活だったのだろうから。ラストは反戦っぽいけど、どちらかというとアメリカ魂の謳歌のほうに主点があった。隊での上官の雰囲気とか、クララ・ボウの一途さなんかもアメリカの理想像。控え目なようでいて積極的。友情の皮肉な展開、「俺だよ、俺だよ」とパニックになるところが怖い。爆弾投下のシーン、落ちていって家を爆破するところまでワンカット、あれは迫力あった。教会の尖塔の天辺が崩れてきたり。疲れて一服してた兵士が、爆片を浴びてその姿勢のまま死んでしまってるなんてのもあった。第一次世界大戦てのが、まだつい最近の出来事で、それに関するあれこれが、まだまだニュース的に新鮮だったんだな。ちょい役でゲーリー・クーパーが出てきたとき、場内に拍手が起こったのは驚いた。20世紀末の日本で観たんだけど。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-29 10:38:55)
14.  
戦前の日本のリアリズムは、ちっとも戦後のイタリアに負けてなかった。演技、顔の表情も素晴らしい。背景に土地を含む構図も見事。いくつかの場面を思い返してみよう。風見章子が友だちを見送る場面、川原で木を拾っているその荒涼とした風景、遠くの舟との呼びかけあい。表情を抑えているところがいい。夏の水運び、つまずいて転んだりは決してしない、そういうときは桶を置いて休むのだ、それだけ水は大事に扱う、リアリズムの精神はこういうところで発揮される。雨乞いの太鼓をずっとバックで鳴らし続ける。収穫、苦しい場面を続けざまに押しつけるのではなく、仕事の喜びもちゃんと伝えてくれる。年貢(?)を運んで、その家で恐縮してご馳走になりながら帯の値段を尋ねる場面とか、火事のエピソード(長いショットで丹念に撮った迫力、知らせるのに田圃まで遠いいの)、人の家に飛び火してしまったことの疚しさのほうが先に来る、こんなところに村社会が見えてくる。セリフがよく聞き取れないのだが、父と婿の確執も重要そう。不完全なフィルム状態のままでも、傑作と言っていいだろう。
[映画館(邦画)] 8点(2010-01-07 12:01:09)(良:1票)
15.  鶴八鶴次郎(1938)
しっくりいかない・どこか食い違いつつ腐れ縁が続く男女の物語ってとこは、『浮雲』にもつながる成瀬の定番だ。意地っ張りの純情、喧嘩友だち。うじうじ嫉妬に悩みながら、長谷川一夫が路地から路地へボーッと歩いていくロングの場など、成瀬のサインを見ているよう。その先に旅回りの日々のわびしさが、これまた成瀬の好きな世界。似合わない芸道ものの話でありながら、隅から隅まで成瀬の世界になっている。それと明治から大正にかけての寄席芸が見られるのも楽しい。コマから水が飛び散るのや、火のついた棒を投げるのや。山田のドタドタと体が左右に振れる歩き方が印象的だが、あれは着物着たときの自然な歩き方なのだろうか。山田五十鈴って大スターでありながら、それほど主演作を持っていない不思議な人だ。といって「名脇役」とは呼ばれないし。名脇役藤原釜足は、このころからフケをやってたんだなあ。
[映画館(邦画)] 7点(2010-01-04 12:04:03)
16.  ツイスター
このころ流行った災害もの。映画が物語りに寄りすぎてしまった歴史を反省し、スタート時の見世物の力を取戻そうと、原点に帰ろうとする姿勢はいいのだけれど、でも見世物だけで一本の映画の時間を埋めるってのは非常に難かしかろう。こっちも列車の到着で驚く百年前のナイーブな観客ではなくなっている。やっぱり一本の作品としての時間のうねりがなくてはならず、見せ場をつなげばいいってもんじゃない。それに竜巻ってのは、ただ大きさの大小があるだけで違いを作れないしなあ。けっきょく見せ場をつなぐためにはデキアイの人間ドラマをはめるしかなく、全体がいくつかのボソボソとした塊になってしまった。SFX作る楽しみにのめり込んで、気配で楽しませる努力がおろそかになった。逃げ込んだ納屋に刃物がずらりある、みたいな場をもっと欲しい。渦の真ん中から青空がほの見える、ああいうのアメリカ人好きなのね、音楽もコーラスになって宗教がかる。好きというより、まとめやすいんだろうな、「そうか、神のようなものか」でたいていは納得できてしまう。アメリカ映画では中年女性が活躍するのが多いのは偉いと思うんだけど、あれは何か深い意図があるのかな。
[映画館(字幕)] 6点(2009-07-07 11:59:52)
17.  つぐない 《ネタバレ》 
名作といわれるメロドラマがしばしば戦争を背景にしているのはなぜか、という疑問があったのだが、これはその一つの答え。メロドラマは鎮魂なんだな。戦争で恋を成就できずに死んでいった若者たちに代わって、スクリーンの上で恋愛をさせてあげてるんだ。また、恋愛とはその人がまさにその人でなければならない状況、戦争は逆に個人が誰でもいい一個の部品になる状況、その対比もドラマに効果をあげてるんだろう。ただこの作品のカップルの場合、不幸の原因として戦争よりも語り手の関与が大きいわけで、この“つぐない”で許せるかどうかは観客の度量の広さに左右される。話者の、裁かれたかった相手についに裁かれなかったことの後悔の深さ・重さは伝わったけど。唐突に出来事があってから少し巻き戻して説明していく話法が、ラストでもちょっとずるく使われた。あと、姉セシリアが水のモチーフで統一されたこと。タイプライターのリズムが、これが書かれた物語であることを強調していたこと。海岸での長回しは見事だったが、つい撮影の大変さのほうに気が行ってしまったこと。
[DVD(字幕)] 7点(2009-02-23 12:11:28)
18.  ツォツィ 《ネタバレ》 
映画に登場する不良にはパターンがあって、1ふてくされている、2世間に対してたかをくくった態度をとる、3馬鹿にしたうすら笑いを浮かべる、といったところ。なのにこの主人公はそのどれもしてくれない。常に硬い表情を張りつめ崩さない。世間に対してどちらかというと怯えているようでもあり、それを無理に鼓舞して向かってる感じ。車椅子の男に「なんで生きているのか?」と尋ねるあたり、からかいも皮肉もなく、僧に疑問をぶつける求道者の真剣さすら感じられる。彼の表情がこの映画のすべてだ。話の段取りは、母の記憶や女性のたしなめなど、陳腐に落ちかねないぎりぎりのところで進むが、射殺されるドラマチックなラストを採用しなかったことは成功だった。彼の被害者であるブラザーの声に励まされ、みっともなく手を上げる姿で切り上げる。おそらく求道者が道を見いだしたときの姿というのは、そのみっともなさが神々しいこんな姿なのじゃないか、という気にもなってくるのだ。
[DVD(字幕)] 6点(2008-01-16 12:20:25)(良:1票)
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