1. 天空の蜂
《ネタバレ》 原作既読。一部の映画ファンには悪名高き堤幸彦監督ですが、本作については基本的に原作の筋通りにキチンと作れていて「中々やるじゃないの!」という感じでした。この作品の原作が伝えているテーマは主に「何事にも無関心で無責任な一般市民への警鐘」と思っていますが、その点はそれなりに映画でも描けていたのではないでしょうか。堤幸彦にありがちな、意味不明なファンタジー展開や、下らない即物的なギャグもかなり控え目になっています。 但し、観た後の感想を率直に言うなれば「下手くそだったなぁ」という感じでした。何か危機的な状況が起きれば兎に角スローモーションばかり、何か深刻な事態が起きている(若しくは起きつつある)時は重低音のマーチを飽きるほど流す、観客にキャラクターの心情を知らせたいときは取り敢えずキャラに叫ばせる、画面に動きを出したいときは別にただ歩いているシーンでもカメラをブンブン振り回す。まあ簡単に言ってしまうと“過多”なのだと思います。私は非常に大味なだけで無駄が多い映画な様な気がしました。 江口洋介、本木雅弘、柄本明、石橋蓮司、等々素晴らしい演技力をお持ちの俳優が、喚き散らす様な演技を強いられる中で、中塚所長を演じる國村隼だけは上から責任を押し付けられて苦悩するプロフェッショナルを上手く表現されていたと思いました。 [映画館(邦画)] 2点(2015-09-14 21:18:50) |
2. テッド2
《ネタバレ》 前作に引き続きお下劣ギャグがこれでもかと入っています。また映画ネタも多く、特に『ジュラシック・パーク』のパロディーは演出等も含めて非常に良く出来ていて笑えました。また終盤のコミコンも、映画ネタを盛り込むにはもってこいの舞台なので、色んなコスプレのキャラクターが暴れまわる様はまあ面白かったです。 但し、前作にも増して即物的ギャグに徹してしまっている気はしました。前作はテッドの無茶苦茶な行動がギャグとして機能していましたが、本作では既にテッドの人となりを知ってしまっているので、キャラクターの説明にもなっていないギャグが矢継ぎ早に詰め込まれている感じでしたね。個人的にはストーリーをちゃんと補強するタイプのギャグのほうが好きです。 あと物語の肝となる「テッドが人間であるか否か」を問う法廷劇が割とあっさりと終わってしまうのは残念でした。終盤でモーガン・フリーマン演じる人権派弁護士が簡単にテッドが人間であることを証明してしまうのもどうなのかと。もう少しヒロインの弁護士として仕事の成長も描いて良かったんじゃないでしょうか。 [映画館(字幕)] 7点(2015-08-28 17:36:03)(良:2票) |
3. デビルズ・ノット
《ネタバレ》 実際の事件を基にしたノンフィクションなのですが、それが足かせになっていたかなと思います。確かにアメリカではデリケートな事件、安易な脚色は出来なかったでしょうし、するべきでは無いのかも知れませんが、ちょっと今回の映画では単純に平板で面白くない。名優コリン・ファースを起用していますが、元々イギリス俳優なのでアメリカの私立探偵という設定にも少し違和感を感じますし、何より余り魅力的なアクティングは見られなかった。リース・ウィザースプーンも田舎訛りで話す姿は上手いと思いますが、それ以上の魅力は残念ながら感じられなかったです。 [映画館(字幕)] 6点(2015-08-04 06:56:43) |
4. 天才スピヴェット
《ネタバレ》 ジャン=ピエール・ジュネの美的感覚が只管に心地よい作品でした。大陸横断で見せる大自然の風景の美しさ、田舎ののどかな風景の美しさ、その後に出てくるゴミゴミしたシカゴの大都市すらも美しく見えるから不思議。 後半にちょっとだけテレビ局の傲慢さも描かれていて、それも面白かったです。150年生まれるのが遅かったとスピヴェットに指摘されたお父さんが、あのムカつくインタビュワーにパンチをくれてやった瞬間はスカッとしました。ラストも家族それぞれがあるべき型に収まって良かったですね。 [映画館(字幕)] 7点(2015-01-13 20:25:15) |
5. テッド
《ネタバレ》 世界的なパペットアニメーション作家J・シュヴァンクマイエルは自伝で「人形とは子どもと大人の世界の境界線である」と述べています。シュヴァンクマイエルが言うには、子どもは人形を使って自分の世界を形成し、大人になる時に人形(自分の世界)を殺して大人の理不尽で不条理で自分のルールが適応されない世界に足を踏み入れるのだといいます。この映画でも人形(というかヌイグルミ)は大人になるための一種の障害として描かれているのが面白いなあと。どんなに仲が良くて親友でもいつかは決別しなければ大人になれないという話しは、「スーパーバッド 童貞ウォーズ」に良く似ていますが、そんな話を非常に寓話的に描いている。 そんな感じで物語の根幹はしっかりしているのですが、物語の中盤でテッドがそれを声に出して全て説明してしまったのは少し残念でした。どうせなら画の力で伝えて欲しかったな。 80年代を代表する底抜けバカSF映画「フラッシュゴードン」、傑作SF映画「エイリアン2」絡みのネタもオタク心をくすぐるような内容で終始楽しかったです。 ただ所謂時事ネタも沢山盛り込まれており、こういう類の映画は実際にアメリカに住んでいないと100%楽しめないと思うので、少し減点しました。結構分からないネタも多かった。 [映画館(字幕)] 7点(2013-01-22 22:31:10)(良:1票) |
6. ディクテーター 身元不明でニューヨーク
《ネタバレ》 毎度ブッ飛んだキャラクターで笑わせてくれるサシャ・バロン・コーエンですが、彼の作品の中では今のところ一番面白いと感じた作品でした。過去作の「ボラット」や「ブルーノ」は有名人や一般人にドッキリを仕掛けていく半ドキュメンタリー的な内容なのですが、今回の「ディクテーター」は完全に劇映画としてストーリーがキッチリとある為、単純に面白い。ではどこが面白かったかと言うとそれは前述の通り「独裁者アラジーン」のキャラクターに尽きます。生まれた時から独裁者の地位を約束され、民主主義・資本主義大反対、処刑大好き、ついでにバイセクシャルでセックスも大好きという完全に悪役としか言いようもない男がなんと主人公。側近の裏切りによって祖国ワディヤ共和国が独裁政治を止め民主国家に生まれ変わることを目撃し、悲壮なBGMをバックに放水車に向かって「独裁万歳!」と叫ぶ場面なんて最高。もの凄く主人公が可哀そうに見えるように演出されていますが、どう考えても主人公の主張に賛同できないから笑うしかありません。最後の主張も実に良い。結局ワディヤ共和国の民主化は世界中の石油業者が金儲けをするために過ぎず、ワディヤ国民のことなんてちっとも考えられていなかった。そこでアラジーンは演説で「独裁は最高だ!なんせ国民の金を1%の人間に集めることだって簡単だからな」と言う。コレはつまり「お前ら資本主義だって金持ち1%に富を集中しているじゃねーか、お前らがやってることも独裁だ!」ってコトですね。これは世界中のデモに発展した"ウォール街を占拠せよ運動"そのものです。最後に痛烈に資本主義の暴走を揶揄している点が素晴らしいなと思います。そしてアラジーンはオッパイも無いし体臭もキツイ男の子みたいな(アンナ・ファリスごめんね)女と結婚する。民主主義は一部の民衆が金を荒稼ぎするシステムを作るものじゃない。好きな物がどれだけ他人から見て無価値でもそれを好きと言えるシステムが真の民主主義。だから相手が好きだったらオッパイなくても、体臭キツくても、ユダヤ人でも別に良いぜ!と独裁者であるアラジーンが最も民主主義的だったのには不覚にも感動を覚えてしまいました。エンドロールで流れる曲は「Aladeen Motherfuckers」。Motherfuckerには最低と最高という意味がある。アラジーンは最低だけど最高なキャラクターだ。「ラララララ~、アラジーン・マザファッカ~♪」 [映画館(字幕)] 9点(2012-09-21 00:37:52)(良:1票) |