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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

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1.  トウキョウソナタ 《ネタバレ》 
黒沢清は目に見えぬものを見えたかもしれないと思わせてしまう。それはホラーというジャンルにおいてじゅうぶん発揮されてきた。しかし『アカルイミライ』という傑作がホラー以外でもその力を発揮できることを証明してみせた。だから黒沢清の非ホラー映画を心待ちにしていた。この待ちに待った黒沢清の新作が傑作であることは当然なのだという、作品にとっては非常に酷な期待を持って観たのだが、全く期待は裏切られることなく、そして期待を裏切られないということがこんなにも幸せなことなのかと感動した。『トウキョウソナタ』に登場する家族のそれぞれは、これまでの黒沢映画が描いてきた人物同様に、自らの存在価値を見出せずにもがいている。この世界に自分は必要なのか。この家族に自分は必要なのか。「お母さん役もそんなにいやな事ばかりじゃないよ」と小泉今日子が演じる佐々木恵が言う。そこに「お母さん役の人」はいるが「佐々木恵」という個人はいない。お母さんでいることから外に出て何かを見る。真っ暗な夜の海辺にオレンジの薄明かりに照らされる小泉今日子の顔が映し出された瞬間に、あぁ黒沢清の映画だぁと何かがこみ上げてくる。圧巻はラストにも訪れる。希望という目に見えないものが間違いなく映されるのだ。ドビュッシーの「月の光」を主人公である少年が奏でる。その美しく優しい音色と少年を照らす光と決定的なカーテンのゆれ。このカーテンのゆれはゾクゾクっとした。神懸かっている。神懸かっているにもかかわらず、それはやっぱり当然なのだ。なぜならこれは黒沢清の映画なんだから。
[映画館(邦画)] 9点(2008-10-20 18:28:56)(良:2票)
2.  永遠<とわ>の語らい 《ネタバレ》 
博物館での足元を映したシーンと船内で歌手が歌うシーン以外は全く動かないカメラが静かに文明の歴史を語ってゆく。前半は、船、港、遺跡、という一定のリズムの中で文明の創造と崩壊の歴史を永遠に語られるべくして生まれた伝説と共に母から娘へと語り継がれる。古代文明から人は何を学ぶのか。後半はその問いに答えるかのように国籍の異なる人物たちが語り合う。そして博物館が以前はモスクで、その前は聖堂だったという歴史が語るように、ひとつの文明を終わらせる何かが暗躍する。文明が生み出したであろうテロリズムである。暴力が文明を終わらせたようにこの映画もまた唐突に終わりを告げる。その非情さは、映画自体をも破壊してしまう驚愕のラストで表現される。 私たちは「9.11」を語るとき、その非人道性を頭ではわかっていても政治的な意見へと変貌しがちである。しかしこの映画は純粋にテロに対する怒りや悲しみや悔しさという気持ちを奮い立たせる。この映画を観た直後は呆然とするしかない。しかしその夜は怒りと悲しみと悔しさで眠れなかった。この映画は永遠に語り継がれるべき映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-06 14:22:33)(良:3票)
3.  トゥルー・ロマンス
作品自体はなんてことないのだろうが大好きな映画のひとつです。それは何故かというと、作品の評価の理由としたら非常に不謹慎なのですがアラバマに惚れました。他の役者もいい味出しててうまくはまってるし、なんだか楽しげな音楽もいいし、所々見られるタランティーノ風味もいいがこの映画の大好きの理由の大半はアラバマです。
9点(2003-09-01 12:02:34)
4.  東京暮色
黒沢清『トウキョウソナタ』を観たときに黒沢清の過去の諸作品を想起したのと同じくこの『東京暮色』を想起した。どちらも家族が崩壊してゆく映画ではなく、最初から崩壊しているということを見せてゆく映画。そして父が家族の中で威厳ある存在でいるという幻想の崩壊が描かれている。日本映画は、いや、アメリカを例外とする世界の映画は「母」をこそ映画の題材にしてきたのに対し、小津はアメリカ映画の影響なのか、はたまた自らの思惑があってのことなのかは知らないが、「父」を描いてきた。小津の描く「父」は何もしなくても、何も言わなくても、「父」として、家族の長として存在することを家族が認めていた。しかし『東京暮色』の父は何もしないのではなく何もできない存在として描かれる。そして母の不在こそが家族を分断させる決定打となっている。小津が描く「父」はいつもどこか寂しげな一面を見せてきたが、ここではその寂しさも泣きっ面に蜂状態。娘(原節子)も母(山田五十鈴)もそれぞれの事情を抱えてそれぞれの道を歩む。杉村春子は相変わらずのマイペース。父はひたすら何も出来ない。理想の家族形態が存在する古き良き時代の終焉を描いた映画といえるんじゃないだろうか。悲劇を悲劇として描かず、あくまで日常として描く。痛切で怖い映画だ。
[DVD(字幕)] 8点(2009-01-29 11:59:10)(良:1票)
5.  トランシルヴァニア
『ガッジョ・ディーロ』の女版。『ガッジョ・ディーロ』の青年はロマの中に入って行き、ロマの人々と触れ合うことでロマの生き方に共鳴してゆくのだが、この『トランシルヴァニア』の女はべつにロマの人々に共鳴したわけではなく、「何もかもを捨ててただ生きる」という野生的ともいえる本能に沿った行為が結果としてロマの生き方に被さってゆくのだ。格闘の真似事をする女を見た土地の人間があきれるくらいだから、けしてロマ的な女ではないのだろうが、絶望から逃げるのではなく、絶望の中で生きることを選んだ彼女は次第に生きる喜びを見出してゆく。ラストに見せる眩しいばかりの表情にやられた。女はどうしようもないくらいに弱いくせにとてつもなくたくましい。かなわない。そう思わせたアーシア・アルジェントも凄い女優だ。そしてこんなにも生命力に満ちた映画を作ったトニー・ガトリフも凄い監督だ。
[映画館(字幕)] 8点(2008-03-21 17:42:02)
6.  ドクトル・マブゼ
先に作られた『カリガリ博士』(これもドイツ映画!)の主人公にカリスマ性を与えたようなマブゼ博士。そして『カリガリ博士』が表現主義の中で描かれたのに対し、『ドクトル・マブゼ』は実にリアルな現実世界の中に表現主義的描写を散りばめる。催眠術のシーンやラストの幻影がそれにあたる。なのでよけいに怖い。天才的な犯罪の手口がまたリアル。群集心理を利用して捕まった仲間を射殺するなんてファシズムが押し寄せようとする当時の時代背景を鑑みると空恐ろしい気すらする。そして株価操作も偽札造りもマブゼ博士にとってはトランプ賭博となんら代わらない「お遊び」でしかないというのも妙に信憑性があって怖い。犯罪映画の原点であるだけでなく、メロドラマも取り入れられ見応え十分。長尺も、連続ドラマをまとめて観ているような面白さ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2008-01-10 14:23:16)
7.  東京物語
今、どこであるのかを、例えば煙突からモクモクと煙が出ているカットで「東京」と判らせ、冒頭と同じ画を見せることで「尾道」だと判らせ、旅館と海が当然「熱海」で、「大阪」は大阪城のカットをもってくる。今、どの家にいるのかをその前に差し込まれる美容院や病院の看板が語ってくれる。説明セリフやナレーションが無くても画だけで判らせる。 大半が人物が大写しで映される中、例えば熱海での翌朝の老夫婦の後姿や、半ば追い出されたカタチの二人の道端に腰掛ける姿や、一人で朝焼けを見ていたと言う妻に先立たれた父の姿は小さく小さく映し出すことでその寂しさを表現する。老夫婦の尾道の家での会話に近所のおばさんが割って入る。老夫婦のあいだにおばさんがいる、という構図を、妻亡き後もそのまま同じ構図で映し出す。妻のいた場所がぽっかりと空いた構図が強烈な喪失感を演出する。映画とはまさにこういう作品のことをいうのである。しかしそれだけでは傑作とは言えない。この作品は映画として本来当たり前にすべきことをちゃんとしていて、それをベースに小津流の独特の画と独特の間で小津らしさを出し、さらに老夫婦をメインにした「家族」のストーリーの中から、東京で一人で生きる女の物語をラストで出現させるという構成が素晴らしすぎる。終始見せてきた原節子の意味ありげな視線が本当の「東京物語」の伏線だったのである。傑作です。
[DVD(字幕)] 8点(2006-01-16 12:53:37)(良:4票)
8.  トラフィック(1971)
車社会をあざ笑うかのようなシ-ンの数々。でもその”滑稽”の象徴たる車と車に関わる人々がなんとも可愛らしい。愛ある風刺です。といってもコメディなんだから笑えなきゃ意味がない。前半は笑いのツボが少しずれてたんですが、犬と毛皮のシーンでスイッチ入りました。月面探査もうけました。ショーに出品するはずのキャンピングカーを含めてたくさんの魅力的な車が登場しますが、私のお気に入りは女の人が乗る黄色のオープンカー。帽子入れも付いてるしね(笑)
8点(2004-03-24 12:08:18)
9.  都会のアリス
都会に毒された男が少女と旅をするうちに癒されていく、という感じだろうか。ヴェンダースのロードムービー三部作の一作目。ヴェンダース映画の子供達は皆純粋で愛らしいが今作のアリスは格別である。おとなぶってもやっぱり子供でそこがなんとも可愛らしいのだが、時々ドキッとするような表情をする。ひたすらに移動していく景色とアリスの表情でこの映画の大半を語っている。ヴェンダースにとって子供というのは天使のような存在なのだろう。大人が子供に触れることで大人も浄化されるのである。つまりこれも人間肯定映画なのだと思う。
8点(2004-02-19 13:08:17)
10.  となりのトトロ
ほのぼのとして昔を懐かしむような夢物語。でも時代設定が一昔前の日本の田舎で、昔はいたかもしれないと思わせるが、今の世界にはいないといわれているようで寂しい。この作品も他の宮崎アニメ同様に、人間は自然に対してとり返しのつかないことをしてしまったというメッセージが込められているのかも。そう考えると、ただ昔を懐かしむだけで、宮崎アニメのなかでは一番夢のない作品かもしれない。(他は一筋の光明がある) しかしトトロや猫バスなどが登場するこの世界観はそんな気持ちを一掃するほどのファンタジーワールドである。 <<追記:2004.3.15>>二歳の娘のせいでここ二週間家にいれば毎日今作を観さされる。オープニング曲の「さんぽ」が大好きなようです。昨日一日二人で留守番をしていたのだが、3回も見さされた。でも飽きない。「くまのプーさん」はいい加減飽きたが今作は飽きない。あらためて名作なんだと思いました。それから最初の頃はうるうるっとくるシーンはなかったのに、先週あたりからさつきが泣くシーンでうるうるしてしまった。昨日なんか、さつきがめいを捜して裸足で走るシーンやその後トトロにお願いに行くシーンでもうるうるきてしまった。何十回と観ているうちにやっと童心で観れたのかもしれない。そんなこんなで1点加点します。
8点(2003-11-12 13:19:03)
11.  時計じかけのオレンジ
観てから数日は、オープニングのシーン(テーマソングとも言える曲をバックに主人公の顔のアップから徐々に引いていくシーン)が頭から離れませんでした。それだけインパクトがあったということ。また暴力的な描写の多い作品でありながらもクラシック曲が見事にマッチしてしまうというのも凄い。そして後になって思うに、本当に無駄の無い脚本である。凄まじい暴力描写が印象に残る観てすぐ後より、しばらくしてからのほうがいろいろなことが見えてくる。キューブリックのA.Iを観てみたかったと、あらためて思う。
8点(2003-05-06 12:38:51)
12.  ドリーの冒険
アメリカ映画の父D・W・グリフィスのデビュー作。しっかりと物語映画。その題材に「誘拐」を選んでいるところが興味深い。「誘拐」には当然被害者の物語と加害者の物語がある。その後『國民の創生』『イントレランス』『嵐の孤児』等と同時進行する2つの物語を見せることに天才的な手腕を発揮することになるグリフィスらしい題材ではないか。このたった12分の物語にはちゃんと被害者の物語と加害者の物語があった。二者が交わるシーンのサスペンスまで用意されている。お見事としか言いようがない。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-04-08 16:32:07)
13.  永遠の戦場
第一次世界大戦中のフランスを舞台にしている。製作が第二次世界大戦以前ということもあって戦意抑揚映画というわけでもなく、かといって無駄に兵士が死んでゆく様はあっても反戦色もそれほど強くない。システムに対する皮肉は大いに感じるところはあるけど、そのあたりはホークスの盟友、文豪ウィリアム・フォークナーの戦争感の表れか。戦争を背景としながらも描かれる男女の三角関係はあくまで男女の三角関係の話であって、そのあれやこれやが戦争と絡み合ってメッセージを発信するといった面倒くさいドラマにはしていない。むしろ戦争は男女の恋愛ドラマを盛り上げるアイテムに過ぎない。このあたりがいかにもホークスらしい。とは言うもののその背景の撮り方も半端ない。撮影時には誰か死んでるんじゃないかってくらい戦場の爆発シーンは凄まじい。ヒロインのジューン・ラングという女優が場違いな美しさを発散させているが、大真面目な反戦映画でこの場違いさは致命的な欠点となりかねないだろうが、この作品ではこの場違いな美しさが映画に華を添えている。太田胃酸の音楽が泣かせてくれるのだが、反射的に心の中で「ありがとう、いい薬です」とつぶやいてしまうのが難儀である。
[映画館(字幕)] 7点(2011-01-31 16:33:43)
14.  賭博師ボブ
原作があった『海の沈黙』『恐るべき子供たち』とは違いメルヴィルのオリジナル脚本ということもあって、後のフィルムノワール群を彷彿させるものになってます。『海の沈黙』では屋内の灯りに照らされる「顔」を美しく撮っていたアンリ・ドカエが今作では夜明け前の薄暗いモンマルトルの街並みを美しく撮りあげる。主役はこの街だ。街の顔役としてのボブのジャン・ギャバン的落ち着いた振る舞いがなかなかに様になっててかっこいいのだが、その貫禄はボブが発しているのではなく彼に対応する街の住人たちと、酒と女とギャンブルがどこか質素に、でも当たり前に存在するモンマルトルそのものがそう見せているだけのようでもある。だからちょっと微笑ましいラストの展開もすんなりと受け入れられる。まさに「賭博師ボブ」であった。この「ゆるさ」こそが古き良き時代のモンマルトルってことなのだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2010-11-26 12:17:45)(良:1票)
15.  ドゥ・ザ・ライト・シング
ちょっと逸れたところから入るが、以前ジョナサン・デミ『レイチェルの結婚』のレビューの中で同監督『サムシング・ワイルド』がスパイク・リーの映画のように云々と書いたことがあったんだけど、そのとき念頭にあったのがこの『ドゥ・ザ・ライト・シング』。でかいラジカセを担いで歩く黒人が印象的だったり、劇中に多彩な音楽がかかったり。あと、『サムシング・ワイルド』は劇中の人物がエンディング曲を歌い『ドゥ・ザ・ライト・シング』は劇中の人物がオープニング曲をバックに踊る。『サムシング・ワイルド』で使われる歌「ワイルド・シング」と「ライト・シング」まで言っちゃうとこじつけか。スパイク・リーのほうが後なので同じニューヨーカーのデミに敬意を表し、また人種のるつぼとしてのニューヨークを描いていることに対してのリスペクトなのではと。いや知らんけど。と、そんなことを書いてると内容に触れるスペースがなくなってきたのだが、要するに何が言いたいのかというと、何かとメッセージ性を語られる監督だけど、実はメッセージよりも映画としての見せ方の工夫とかのほうにしっかりと力が入ってて、それゆえにメッセージがどこか冷めた視点となり、結果映画がより深みを得ているんじゃないかと。この作品は特に。
[DVD(字幕)] 7点(2010-08-19 15:15:24)
16.  東京暗黒街・竹の家
冒頭の列車強盗から警察の現場検証までことごとくバックに悠然と在る富士山の美しいこと。当時と今とじゃ富士山自体はそう変わらんのだろうからまわりの景色の差なんだろうけど本当に美しい。貴重な画だと思う。噂のヘンテコなニッポンはさほど気になりませんでした。『キル・ビル』のようにあえてそうしている映画がウケている現代ではむしろアバンギャルドという褒め言葉で受け入れられる範疇にあろうかと。実際、踊る芸子(?)さんらが着物からドレスに早変わりするところなんかはその方向を狙ったものなんじゃなかろうか。とはいうものの『ブラックレイン』とは違って主役も敵役もアメリカ人なのでニッポンを舞台とする必要性ってのは物語的には全く無かったりする。それでもあまりにもアメリカと違った世界には当然ながらアメリカにはないアイテムに溢れ、結果アクションシーン一つとってみても実にオリジナリティ溢れるシーンとなって我々を楽しませることとなる。その点においてこのニッポンは実に魅力的な舞台として効力を発揮している。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-07-15 14:40:58)
17.  トロピカル・マラディ 《ネタバレ》 
前半は男と男の出会いとイチャイチャが言葉少なに描かれてゆく。男女ではなく男同士であること以外はべつに変わったところはなく、ちょっとした笑いも交えてなんとも清清しい恋愛の一端を見せられているような、そんな前半であった。ところが二人がデートを終え、一人が夜の闇に消えてゆく瞬間から強烈な緊張感が出現する。人が虎になるという民間伝承が語られ、そこからはいつ虎と化した若者が出てくるのかというサスペンスが常につきまとうことになる。しかしこの映画の凄いところはそこではなく、度々映し出される闇と、その闇の中に浮かび上がる虎の映像にある。このシーンの凄さをどう伝えればいいのかわからない。息をすることすら忘れて凝視した。全く異なった時間の流れを感じさせるのは、前半の日常の丁寧な描写が活きているのだろう。この闇と虎はなにかの比喩なのかもしれない。男を好きになってしまった男の深遠に潜む虎、とか。日常の狭間で悩み、自らの虎を抑えきれなくなった若者は虎を開放してしまう。それを恋人は受け入れる。そんな物語かなと思ったんだけど、実はそんな解釈もどうでもよくって、この映画の最大の魅力は、この映画を見て感じた戸惑いそのものにあるような気がする。なぜ戸惑うのか。それはこの映画が私の許容範囲を超えたものを見せてくれたからに他ならない。
[映画館(字幕)] 7点(2010-01-22 14:08:06)
18.  トレーニング デイ 《ネタバレ》 
汚職に塗れた警官を描いた映画はゴマンとあるが、その多くの汚職警官映画の中でこの作品がオリジナルな魅力を発散させているのは「社会派」の色合いを全く持っていないところだろうか。見終えてみると(ネタバレ)、悪徳刑事が自分のしでかしたミス(ロシアンマフィアがらみで金が必要)を帳消しにするためのアレコレがこの作品の大筋なのだから。要するに、訓練日を描いているように見せながら、訓練日にかこつけたある計画だったというミステリーでしかない。汚職に抵抗する若い警官の葛藤ったって、なにせ訓練日一日の出来事なので『セルピコ』のパチーノのように孤独に苛まれたり『コップランド』のスタローンのように現状維持の平安との選択に悩んだりするたびに顔を出す「社会派」たるものは出てくる暇もないのだ。ある意味、深みがない。にも関わらず面白いのは悪徳刑事の悪徳ぶりの凄まじさとその怖さがリアルに且つハイテンポで襲ってくるから。そしてデンゼル・ワシントンがめちゃくちゃにその悪党ぶり、非情ぶりが様になってるから。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-17 15:42:41)
19.  東京ゴッドファーザーズ
近未来の東京を舞台にしたギャングものと勝手に想像して借りて、見始めてすぐに「しまった」と思った。ただ絵がリアルでキレイなだけの人情話かよ。そう思ったのもつかの間、お話はリアルから程遠い、やけに都合のいい展開が繰り広げられる。なかなかシャレたコメディではないか。話が進むに連れて都合のよさはヒートアップ。どんなピンチも浅はかな奇跡のおかげで難なくやり過ごす。いいねえ、奇跡の大売出し。クリスマスだし。何より強引に前に進むもんだからテンポがいい。停滞しない。真面目ぶってる暇も無い。そして奇跡の大売出しなんて軽く思ってたら最後の奇跡で泣いてしまった。奇跡は起こるべく人の上に起こる。この語りつくされて今さらな青臭いお話を臆面もなく大人向けアニメーションでやっちゃうってのがいい。ご都合主義が最強の武器となっているのも実写ではなくアニメーションだから成し得た部分もあるかもしれないが、こういう題材を堂々とやっちゃう気概あってのことだと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2009-01-28 13:39:38)
20.  東京流れ者
車が勢いよくやってきて建物の前で止めるシーンがあってそれをその建物の上からワンカットで撮ってるんだけど、その止め方が全然建物に沿ってなくておもいっきり斜めなんだけどそれも計算づく。その斜めに止まった車がめちゃくちゃかっこよく画面に収まるのだ。構図のためにカメラを動かすのではなく被写体をその枠に持ってくる発想。奇抜なようで構図はきっちりきまる。ハチャメチャなようでちゃんと考えてる。清順映画が楽しいのは基本が出来た上での自由な発想にある。最後の決着をつけるシーンのピアノだけがポツンと置いてある不自然な空間がいかにも清順&木村威夫がやりそうな画づらでまたそそる。そこで渡が見せる半ば失笑もんのアクロバティックな銃撃戦がまたサイコー。印象的なシーンは他にもゴマンとある。書き出してたらキリがない。
[映画館(邦画)] 7点(2009-01-27 14:14:32)(良:1票)
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