1. ドン・ファン(1970)
人形劇です。どこから見ても人形劇です。でも何かが違う。色使いや話の内容のダークさも異様な輝きを放っていますが、人形が屋外を動き回るからというのが大きい。しかもコマ撮りや特撮ではなく、あきらかな人形が屋外を動き回る。剣での格闘のシーンは圧巻。剣と剣の叩き合う音が音楽を奏でる。この作品もまた他の作品同様に前衛的といえる。人を殺すという行為を、けして人間にはみえない人形を壊すという行為でその残酷性を緩和しているんですが、そのぶん、目を刺すとか顔を殺ぎ落とすとか残酷放題。人やアニメでは表現できない独特な空気を持っています。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-06-09 14:50:18) |
2. トリュフォーの思春期
《ネタバレ》 大人の知らない子供たちの冒険。誰がメインとか無く子供たちみんなが主人公。たくさんの子供たちそれぞれの個性がきっちりと描かれています。学校のシーンでは、トリュフォーのことだから『大人は判ってくれない』みたいな先生だったらどうしようって思いましたが、いい先生でよかった。自分の子供が生まれて興奮して授業どころではないとちゃんと子供たちに告げる先生っていいです。虐待事件のあと、子供たちに先生は「子供を愛する親になってください」と言います。当たり前のことだけどシンプル故に心に響きます。大人にとってはなんてことのない、それでも子供にとっては大きなドラマが溢れています。反対に大人にとってはえらい騒ぎなことも子供にとってはなんてことないってのもありました。グレゴリ-坊やの「グレゴリ-、ドシンしちゃった」のシーンです。笑いました。トリュフォーって子供が好きなんでしょうね。この映画のメイキング映像があったら見てみたいなぁ。 7点(2004-06-18 14:17:19)(良:1票) |
3. トラフィック(1971)
車社会をあざ笑うかのようなシ-ンの数々。でもその”滑稽”の象徴たる車と車に関わる人々がなんとも可愛らしい。愛ある風刺です。といってもコメディなんだから笑えなきゃ意味がない。前半は笑いのツボが少しずれてたんですが、犬と毛皮のシーンでスイッチ入りました。月面探査もうけました。ショーに出品するはずのキャンピングカーを含めてたくさんの魅力的な車が登場しますが、私のお気に入りは女の人が乗る黄色のオープンカー。帽子入れも付いてるしね(笑) 8点(2004-03-24 12:08:18) |
4. 都会のアリス
都会に毒された男が少女と旅をするうちに癒されていく、という感じだろうか。ヴェンダースのロードムービー三部作の一作目。ヴェンダース映画の子供達は皆純粋で愛らしいが今作のアリスは格別である。おとなぶってもやっぱり子供でそこがなんとも可愛らしいのだが、時々ドキッとするような表情をする。ひたすらに移動していく景色とアリスの表情でこの映画の大半を語っている。ヴェンダースにとって子供というのは天使のような存在なのだろう。大人が子供に触れることで大人も浄化されるのである。つまりこれも人間肯定映画なのだと思う。 8点(2004-02-19 13:08:17) |
5. 時計じかけのオレンジ
観てから数日は、オープニングのシーン(テーマソングとも言える曲をバックに主人公の顔のアップから徐々に引いていくシーン)が頭から離れませんでした。それだけインパクトがあったということ。また暴力的な描写の多い作品でありながらもクラシック曲が見事にマッチしてしまうというのも凄い。そして後になって思うに、本当に無駄の無い脚本である。凄まじい暴力描写が印象に残る観てすぐ後より、しばらくしてからのほうがいろいろなことが見えてくる。キューブリックのA.Iを観てみたかったと、あらためて思う。 8点(2003-05-06 12:38:51) |