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プロフィール
コメント数 2383
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  翔んだカップル オリジナル版 《ネタバレ》 
そうか、これが相米慎二の監督デビュー作なのか。一作目からして相米流映画術が完成しているというか、その後もブレずに同じように映画を撮り続けられたのいうのがある意味尊敬に値します。また薬師丸ひろ子の初主演作でもあるけど、てっきり角川映画だと今まで思っていたけど実はキティフィルムの製作だったと知って今更ながらちょっとびっくり。だから相米慎二の好き勝手に撮れたわけでしょうね。アイドル主演映画なのに、薬師丸のアップが極端に少なくて引いたカメラアングルを多用するなんて、角川春樹なら許すはずないですからね。他の鶴見辰吾・尾身としのり・石原真理子も含めて皆まだ十代、相米に四人まとめて「ゴミ、ガキ」と貶されながらの演技は、薬師丸の主演女優人生のスタートに強いインパクトを与えたことは間違いないでしょう。また肌が合わない人には耐えがたいような相米演出の独特な臭みには、賛否が分かれたことんじゃないかな。クジラの風船がフワフワと漂うシーンなんかは、特にね。でも私は石原真理子の部屋に薬師丸が訪ねてきて鶴見と大喧嘩するところ、そしてラス前のあのもぐら叩きのカットなんかは、好きですねえ。できればあのもぐら叩きのところでバサッとエンドにした方が、ずっと良かったのにと思う次第です。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2024-03-23 22:47:36)
2.  透明人間(2020) 《ネタバレ》 
“ドラキュラ伯爵”“フランケンシュタインの怪物”“狼男”、この三つがユニバーサルが産み出した定番のホラーモンスターですが、彼らよりちょっと影が薄いのがこの透明人間。そりゃあただ透明になっただけで本質は普通の人間ですし、H・G・ウエルズの原作があるが映画化されると三大モンスターとは違ってそれぞれ独自のキャラ設定になっているし、どの作品も製作当時の時代が反映されたリブート的なストーリーになっている。いわば普通の人間が透明になってどんな悪さをしでかすかが透明人間映画のキモなんですが、この映画ではなんと透明ストーカーになっちゃうんですね。ソシオパスの天才科学者が透明スーツを開発して逃げ出した恋人に付きまとうわけですが、そんな世紀の大発明、もっと違う使い道があるだろう(笑)。それでも恋人の就職面接を邪魔したり妹に成りすましメールを送って仲たがいさせたり、いかにもストーカー気質野郎がやりそうなことで、あまりに陰湿でゾッとさせられます。ひとつ前のヴァーホーヴェン版の『インビジブル』がCG多用のやり過ぎぐらいのグロさだったけど、低予算を逆手にとったような誰もいない空間を見せるパン撮影が多用されていて、ヒロインの心理的な動揺も同時に表現出来て上手いなと思いました。監督があの『ソウ』シリーズの産みの親であるリー・ワネルですから、極力CGに頼らず緻密な計算に基づきながらも手造り感もある映像には工夫が見られます。ラストに向けての文字通りのサプライズは天才科学者の兄弟関係だったと言えますが、あの展開にはやっぱ腑に落ちないところがありますよね。でもいちばん私が震えたのは物語が進行するにつれてどんどん険しくなってくるヒロインの表情で、ラストのカットなんてもう鬼の微笑みでした。 ヒロインが宿した科学者の子種、この後いったい彼女はどうするんだろうか、とふと考えると怖いものがあります…
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-03 22:32:44)
3.  怒号する巨弾 《ネタバレ》 
『怒号する巨弾』なんとも凄まじいタイトルですけど、これはっきり言ってストーリーとは何の関係もないんです。なんでもサイレント映画時代にこの題名の海外映画があり、当時は活動弁士として活躍していた新東宝社長の大倉貢の印象に残っていて、内容とは関係なく「これを使え!」となったそうです。まあ新東宝のタイトル詐欺にはもう慣れっこですけどね(笑)。 戦時中にスパイ容疑をかけられて獄死した父親の復讐のために、息子の天知茂が戦後15年たって冤罪をでっちあげて父の会社を乗っ獲った政財界の大物を抹殺してゆくというのが大まかなストーリーです。冒頭とラストには轟音を響かせて飛ぶ米軍戦闘機、そしてタイトルバックには街角で慈悲を乞う傷痍軍人(現代の人間に異様な風景に見えるでしょうけど、昭和生まれのわたくしには幼い頃こういう人たちを見た記憶がたしかにあります、歳がばれますね)を映すと、妙に太平洋戦争敗戦を観る者に意識させる撮り方です。主人公の警視庁警部・宇津井健も戦争で自分以外の家族が全滅したという設定で、この映画の独特の暗い雰囲気に貢献しています。天知茂は戦後に名前を変えて美術商になり三ツ矢歌子とは恋人関係になりますが、彼女の父親こそ天知親子を拷問した特高警察の幹部で現・警視総監、天知の最後の標的というわけです。 この映画の天知こそが“ザ・天知茂”という典型的なキャラで、その暗い影を引きづった立ち振る舞いには、惚れ惚れとさせられます。対する宇津井健は融通の利かない超真面目人間で、根本的に大根である彼の演技力には最適のキャラでした。脚本は末期の新東宝としてはマシな方です。天知が美術商のはずなのにいかつい手下どもに君臨するギャングのボスみたいなのは、どう見てもヘンテコですけどね。そしてラストで天知と宇津井がライフルVS拳銃の決闘を繰り広げるのは新東宝映画に不慣れな人には?でしょうが、これは新東宝アクション映画では有りがちな展開でしょうじき「ああ、またか」という感じでしたね。でも撮影は新東宝にしては凝っていて、下から煽るように映すショットの多用や深作実録ヤクザ映画のような街頭での無許可ロケやそこをビルの屋上からの鳥瞰視点で撮っているなど、当時としてはけっこう斬新です。もっと印象深いのは、新東宝唯一の巨匠・渡辺宙明の音楽で、時には即興ジャズ風のキレのある演奏もあり、そしてそのメロディが耳に残る“天知茂のテーマ”(これは私の勝手な命名です)は名曲です。この映画の劇伴は、新東宝映画群の中でもトップクラス、いや間違いなくトップでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-07-25 23:26:09)
4.  東京裁判 《ネタバレ》 
最近は“東京裁判史観”なる用語まであって色々と論議が尽きない東京裁判、判決から35年後に裁判を真正面からとらえたこのドキュメンタリー、製作からほぼ40年たった現在でも考えさせられることが改めて湧いてきます。■とにかく上映時間四時間半はめちゃくちゃ長い。でもよく考えると、ニュルンベルク裁判と違って判決までほぼ二年半も続いたわけで、真面目に追ったらこれぐらい長くなるのもやむを得ないかなと思います。最も昭和初年から敗戦そして占領時代までの挿入された記録フィルムだけで全部足すと一時間近くになるけどね。高校生あたりの現代史授業の教材としてはうってつけかもしれません。■検事側すら最終論告で言及しているように、ナチスの犯罪をさばいたニュルンベルク裁判の被告たちと東京裁判の被告は同列に置かれるべきではない。これは私個人の感想ですが、東京裁判は政治家・官僚組織がその行政および外交の失敗が罪に問われた珍しいケースなんじゃないでしょうか。大日本帝国はドイツ・イタリアの様に一人の独裁者が好きなように動かせた国家じゃなく、明治憲法の下での集団指導で運営される体制で“天皇制独裁”なんて大嘘です。明治維新以降だんだんと国家の指導層が劣化してゆきついにたどり着いたのが敗戦だったわけで、その意味ではA級戦犯の中には万死に値する人物がいるのは確かだと思います。とは言ってもそれがいわゆる勝者によって断罪される筋合いのことかというと別問題です。温度差があったとはいえやはりこれは連合国による復讐で、裁判自体が戦争行為の一部で正義とは無関係なんじゃないでしょうか。■こうやってじっくり見させていただくと、勝者の法廷の粗や杜撰さが発見できました。まず裁判長以下の判事団は、それぞれ母国で法曹に関係していた面々だけど、国際法の専門家が一人もいないというのが驚きです。ソ連とフランスの判事に至っては、英語も日本語も理解できなかったというから呆れます。中でも裁判長のウェッブが日本憎悪に凝り固まっており、何が何でも天皇を訴追しようとゴネるわけです。首席検事のキーナンがこれまた典型的な強面で、ギャング相手みたいに被告たちに接します。でもマッカーサーからは天皇を訴追しないという方針を伝えられており、ウェッブを抑え込もうと陰で東条英機の失言をまるで弁護人の様に修正させるのがなんか滑稽。ソ連の検事に至っては日露戦争も日本の有罪要因だと主張、ここまで来ると失笑するしかないですね。その反面、各被告についたアメリカ人弁護人たちの弁論は想像以上に雄弁で、学会の大御所を引っ張ってきた日本人弁護人とは比べ物になりません。彼らは本国でも無名の弁護士たちですけど、やはり訴訟大国だけあってその能力は半端ないです。■判決はご存知の通り七人が絞首刑ですけど、やはりただ一人文官で死刑になった広田弘毅はさすがに可哀想でしたね。なんせ南京事件が彼の責任とされているのにはびっくりです。あと、全員が有罪というのは驚くべき厳しさ、ニュルンベルク裁判でも何人かは無罪だったのにね。しかしこの被告たちの人選には首を傾げるしかないです。大川周明なんて、当時の日本人でも知らない人がほとんどでしょ。この被告人選定には、なんか日本人で入れ知恵した人がいたんじゃないでしょうかね。あと海軍から死刑が出なかったのもなんか腹立つ、永野修身が生きていたらたぶん死刑だったんじゃないかな。宣告後に隣の留置所から死刑を免れた嶋田繫太郎の高笑いが聞こえてきて腹が煮えくり返った、と武藤章が手記に残しています。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-06-12 22:55:13)(良:1票)
5.  徳川セックス禁止令 色情大名 《ネタバレ》 
いわゆる東映時代劇ポルノでもかなり後期の作品。時代の進展により初期と比べるとエロ度のパワーアップはかなりのレベルに達しています、なんせにっかつロマンポルノという強力なライバルが登場していますからね。というわけで今回はカネをかけていますね、なにせヒロイン(なのかな?)におフランスからあのサンドラ・ジュリアンを呼んできました。サンドラ・ジュリアンと言えば日本でだけ人気が爆発した伝説のポルノ女優、もちろんリアルにスクリーンで観たことはなく自分は今回が初体験です。しかしよく見るとボディに関しては良く言えば日本人向きという感じの大人しさ、やはりウケたのは清純的と言えなくもないルックスなんでしょうね。初期のポルノ映画界隈ではやはり欧州系の方が日本では流行ったみたいで、ケバケバしい女優が多いUS製はまだ刺激が強かったんじゃないでしょうか。たしかにサンドラよりも一緒に登場する無名の黒人女優の方が、目を奪われるナイスバディでしたからね。そんなサンドラをお殿様に献上する豪商・博多屋を演じるのが渡辺文雄、サンドラとはフランス語で会話したりしてさすが東大卒だけあって様になっています。でもなんでフランス娘が江戸中期の日本にいるの?それはね、彼女は処刑されたフランス人宣教師の娘だからよ、っていう設定みたい。はぁ、女人禁制の宣教師になんで娘がいるの?なんて突っ込むのは野暮ってもんですよ(笑)。エロ以外にもサービス精神過剰なのか、女性の作法通りの切腹まで見せてくれます。この映画は切腹シークエンスの演出に見られるように、とてもコメディとは思えない重い撮り方をところどころでしているんです。あとバカ殿の近習若侍や途中から登場する山城新伍の様に、ふつうはストーリーの核になるようなキャラが途中で消えちゃんですよ。まさか監督は、この映画を群像劇のつもりで撮っていたのかも(笑)。 まあ基本はそのぶっ飛んだバカバカしさを愛でる類の映画ですけど、下品さくだらなさの陰に意外と製作当時の状況をシリアスにぶっこんだ脚本でもあります。バカ殿が押し付けるセックス禁止令・法令175條とは猥褻物頒布等の罪・刑法175条のパロディであるのは明白。ラストの字幕ももろにその反175条のスローガン。でもこんなおバカ映画で気勢を上げても、説得力ないんですけど…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-05-09 22:49:01)
6.  どん底作家の人生に幸あれ! 《ネタバレ》 
文豪チャールズ・ディケンズの自伝的小説『デイヴィッド・コパーフィールド』の五十年ぶりの劇場映画化です。それにしても『どん底作家の人生に幸あれ!』とはずいぶん大胆な邦題ですね、でも意外と内容を上手く要約した良いセンスだと思います。 原作はサマセット・モームが選んだ“世界十大小説”にランクインするほどの名作、英文学をかじった人なら知らない者がいないほどの有名小説です。文庫本にしても4分冊にもなる長編ですが、それを二時間にまとめるというのはなかなか骨の折れる仕事だったと思います。この映画化でユニークなところは、主役のコパーフィールドをインド系のデヴ・パテルが演じており、また一部の主要登場人物がインド系・黒人・東洋系の俳優が起用されているところです。なので、コパーフィールドの白人の親友スティアーフォースの母親が黒人女優、なんて不思議な映像を見せられます。このキャスティングの意図は私には?ですが、推測するにデヴ・パテルを主演に使いたいというアイデアから始まった企画なのかもしれません。でも観ているうちにどんどん違和感がなくなるのが不思議、それだけパテルの演技が素晴らしかったということでしょう。この人の映画は初めてでしたが、彼は近い将来オスカー男優賞をゲットするような大物俳優になることは間違いなしです。コパーフィールドの伯母役はティルダ・スウィントンですが、珍妙なキャラを飄々と演じています。『デッド・ドント・ダイ』もありますが、彼女って最近はヘンなキャラで怪演を見せてくれることが多いんじゃないかな(笑)。 メタ・フィクション的なストーリーテリングは現代的な印象を与えますが、実はこれは原作の語り口の再現でもあります。開始から約三分の二までは原作に忠実な展開ですけど、ラストにかけてはかなり監督の独自解釈になっています。世間知らずの妻ドーラやウィックフィールド弁護士の死はなかったことにして、作家として成功したコパーフィールドのもとにほとんどの登場キャラが楽しそうに集まる大ハッピーエンドで幕が下りるのです。ディケンズ自身もこの自伝的小説で失恋や失敗だった結婚生活などを幸福な体験に作り替えており、尺の都合で端折らなくてはいけない事情を逆手にとって、ディケンズの夢想した幸福を見せようとしたんじゃないかな。波乱万丈なストーリーだけど、多幸感に満ち溢れたラストはこれで良かったんじゃないかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-04 22:37:08)(良:1票)
7.  ドレミファ娘の血は騒ぐ
こりゃあ、にっかつから納品拒否くらったというのは当然かもしれません、ATGに持ち込んだ方が良かったんじゃない?というか、PFF(ぴあフィルム・フェスティバル)に当時エントリーされていた自主映画とどっこいどっこいです。スタッフは塩田明彦・万田邦敏といった黒沢清と同じ蓮實重彦門下生が終結しているし、プロと言える俳優は伊丹十三・洞口依子・麻生うさぎぐらいで、その他大勢の学生役にも黒沢と同じ界隈を集めて素人演技を見せてくれる。おまけにストーリーと表現方法は青臭くてなおかつ理解不能、まったくどこを褒めたら良いのか頭を抱えてしまいます。まあこの映画の果たした唯一の役割は、伊丹十三と洞口依子を結びつけたことしかないでしょう。『タンポポ』『マルサの女2』で彼女は鮮烈な爪あとを残してくれました、その後の黒沢清作品の常連にもなりましたけどね。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2021-12-15 21:16:23)
8.  トゥルーマン・ショー 《ネタバレ》 
考えれば考えるほど恐ろしくなる映画です。人間の誕生から三十年間(結果的には終了してしまったけど、もちろん死ぬまで)を24時間TV放映する究極のリアリティ・ショー、隔離されたような離れ島の箱庭みたいな環境で続く平凡な生活、こんな代物を三十年も放映しているという世界観はツッコミどころだらけだけど、これはSFなんだから全然OKです。でもトゥルーマンが自分は造り物の世界を生きているんだと気づいてゆくところは、“統合失調症の男の妄想が実は真実だった”というお話しを見せられているような気がして実存的な不安に陥れられます。実際、この映画がきっかけで“トゥルーマン・ショー妄想”という概念が精神医学界では誕生したそうです。そのトゥルーマンをあのジム・キャリーが陽気に、でも彼としては抑え気味に演じているところが、なんか居心地の悪さを感じてしまうのが不思議です。そしていわば彼の創造主であり彼の人生を設計して運営するクリストフの存在がとても意味深なんです。キリスト教徒の眼で見れば、彼は明らかに全能の唯一神のカリカチュアであるのは明白でしょう。そんな神でもあるクリストフがトゥルーマンに試練を与え、死を賜えようとするけど最後はトゥルーマンを助けるところには彼なりの父性が感じられます。そもそも、“クリストフ”という名前は“キリスト=クライスト”をもじってるんじゃないかな。 脚本を書いたのはアンドリュー・ニコル、本来は監督もする予定だったそうです。彼の初期作『ガタカ』『シモーヌ』と本作は傑出した脚本で、この人はSFを書かせたら天才なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-10-20 21:37:17)(良:2票)
9.  徳川女系図 《ネタバレ》 
記念すべき(?)“東映ポルノ”シリーズ第一作にして、大手映画会社が製作した初の成人指定映画なんだそうです。実は日本で“ポルノ”と銘打った映画を初めて撮ったのは東映で、日活ロマンポルノより早かったんですよ。こんなことになったのは当時の東映社長がボウリング場経営などのレジャー分野進出に熱心で映画製作に興味を無くしてしまい、映画部門を制作本部長の岡田茂に丸投げしたからなんです。当時のピンク映画の隆盛を目の当たりにして「これからはポルノでゆくぞ!」の鶴の一声、ヒットが続いてとりあえず路線変更は軌道に乗りましたが、ふつう東大出の重役がこんなことしませんって。それまで散々時代劇を製作してきた東映ですから衣装やセットはストックがあり、ピンク映画じゃ真似できない豪華なエロ映画が誕生したわけです。 五代将軍綱吉時代の大奥が舞台ですから、とうぜん出演者はほとんど女優。エロの方は試写を観た岡田茂に「期待したよりもおとなしい」と言われちゃうぐらいですから、大したことない。でも凄いのはエキストラ的な役柄の大奥のその他大勢の女たちで、当時のピンク映画界隈の女優を大挙出演させています。その女優たちがオッパイ丸出しで繰り広げる乱痴気騒ぎが見もので、これほど大量のオッパイがスクリーンに映ったのは日本映画史上で初の快挙(?)だったそうです。でもそこそこ名が通った女優は肌や太ももを見せるぐらいでほとんど脱ぎがないというのは、女優格差があからさまで笑っちゃいます。 ドラマ自体は石井輝男が監督だけあって、綱吉の下々からすれば贅沢な苦悩をテーマにして割とカッチリ撮られています。荒唐無稽なストーリーながらも将軍綱吉の伝わっている故事がさりげなく散りばめられた脚本かと思います。ラストは御台所信子が綱吉を刺殺するトンデモ展開ですが、実は俗説のなかに“綱吉・信子、無理心中説”があるそうなので、良く調べてるなと感服いたしました。 「(二つの)丘を下れば林もございます、お疲れになったら川の水も飲ませて差し上げます」、この意味深なセリフは綱吉に愛撫される女中が発するものです、こういうセンス好きです(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-05-10 22:21:50)
10.  徳川いれずみ師 責め地獄 《ネタバレ》 
東映“異常性愛路線”といえば言わずと知れた石井輝男、この路線で彼が監督した作品中では本作がもっとも有名なのかもしれません。もっとも本作のプロットはオムニバスだった『徳川女刑罰史』の一エピソードを拡大再利用したものなので、この頃にはさすがにネタ切れ状態だったみたいですね。それにしてもこの“異常性愛路線”は末期とはいえ60年代の製作、日活がロマンポルノ専門になる前ですから東映というか制作本部長だった岡田茂のえげつなさは相当なもんです。 ストーリーもぶっ飛んでます。将軍が綱吉だった時代の二人の刺青師(吉田輝雄と小池朝雄)が腕を競い合うという設定なのに、話が進むうちに長崎・出島が舞台に変わってしまいます。二人は遊郭に所属して遊女に刺青を彫っているので、そりゃハダカは飽きるほど観れます。タイトルバックの処刑シーンも唐突感が拭えませんでしたが、この遊郭はSMクラブでもあってやたら遊女を吊って痛めつけるシーンが多いんです。刺青はそりゃ絵でごまかせますけど、当初の主演女優がきつすぎて失踪したぐらいですから、この吊り責めシーンはマジで撮影してたみたいです。助監督たちが抗議行動を起こして天下の朝日新聞がキャンペーンを張ったぐらいですから、まさに大炎上です。悪役の旗本がなぜかおしろいを塗ったキャラだったり女囚の中に女装した大泉滉と由利徹が交っていて声だけは女優が吹き替えしているなど、「?」がいくつも並ぶところが多々あります。出島のシークエンスもかなりぶっ飛んでいて、まるで香港か上海租界みたいなところでそこには怪しげなカスバみたいなマーケット(?)があるんです。『黄線地帯』で神戸にカスバを出現させた石井輝男ですが、本作の出島カスバの方が造りこみや不気味さは上を行っています。笑っちゃったのはラストの商館でのシーンで、なんと江戸時代なのにこの館は壁のスイッチで照明が点灯できるんです! ラストカットの娼館女将の又裂きの刑も強烈でしたが、ハチャメチャなお話しをサービステンコ盛りでとりあえず観れるものにしちゃうのは石井輝男の力量の成せる技としか言いようがないですね。封切時はコケたけど、近年では海外やサブカル界隈で評価が上がってきたそうですが、そんな熱を込めて褒めるような映画じゃないのは確かです。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2021-03-24 22:48:43)
11.  トップ・シークレット 《ネタバレ》 
むかし観た映画雑誌で、TVみたいな箱からオマー・シャリフが顔だけ出している画像がこの映画の紹介として使われていてずっと「アレはなんなんだろう?」と気になっていましたが、まさか圧縮された自動車に閉じ込められていたなんて・・・ ジム・エイブラムズ&ザッカ―兄弟の小ネタ集みたいなお得意の構成ですが、彼らの初期の仕事にしては脇を固める俳優陣がなんというかまさにムダに豪華な典型って感じです。オマー・シャリフから始まってジェレミー・ケンプ、ピーター・カッシング、マイケル・ガフ、彼らみたいな渋い俳優がこんなおバカ映画に出ているのを観れるのはすごく得した気分です。『裸の銃(ガン)』シリーズと違って既存映画のパロディがほとんどなく、純粋な(?)小ネタギャグをこれだけ連発してくれているので、自分は『裸の銃(ガン)』シリーズよりこっちが好みです。アホっぽいヴァル・キルマーが彼らしい大根演技でアホなことをやっているって一周回ってなんかシュールですが、エンドロールを信用すると劇中の唄は全部本人がパフォーマンスしているみたいで、ヴァル・キルマー恐るべしです。プレスリー風のロックが流行っているところからすると60年代が設定みたいですけど、東独軍人たちの制服はナチ・ドイツとほぼ一緒。レジスタンスの面々も名前も風貌もフランス人で、これも大戦中のお話しみたい。もちろんこういうグチャグチャはザッカ―兄弟たちの狙ったところですけどね。 そういやNATOの潜水艦を一網打尽にする陰謀はどうなったんだ?なんてツッコミは野暮ってもんで、投げやり・尻すぼみな展開もザッカ―兄弟なら許されるってもんでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-02-28 23:00:49)(良:1票)
12.  トランセンデンス(2014) 《ネタバレ》 
昨今リアルな世界ではAIの進化が話題になっていますけど、AIとは言っていないけど人間的な思考能力を持ったコンピューターが世界を支配するというプロットはSF映画の世界では60年代から登場し始めています(元祖は『2001年宇宙の旅』のHALなのかな)。いまや色んな作品で使われるありふれたプロットなんですが、現実社会がやっとSFに近づいてきたって感じなんでしょう。それでも人間の意識をサイバー世界にアップロードする(正直その理屈はイマイチ理解できないですけど…)という発想は、珍しいというか初めて出会った気がします。要は人間の脳みその中身とコンピューターが一体化するってことなんだけど、それって『ロボコップ2』のケインとどこが違うんですかね? というわけで怪物いや神みたいな存在となるのがジョニー・デップなんですが、開幕して三十分で死んでしまいます。天下のジョニデが主演で二時間の上映時間で三十分しか出てこないなんてあり得ないわけで、あとはモニターに映るほとんど静止画面みたいな登場になります(このジョニデも実はCGだったりして)。ところが劇中でなんかコソコソやってるなと思ったら、どういう理屈かは判らんけど細胞から創造して元の肉体を復活させちゃうんですからぶっ飛んでます。自分の配下の面々に憑依できる能力まであったのだから、てっきりそいつらの肉体を使って奥さんと子作りするのかなと勘ぐってました、でも昔そんな映画あったよな(笑)。 まあ終わってみれば、典型的な風呂敷を広げ過ぎて収拾がつかなくなった映画という感想に落ち着きます。技術者や科学者を大量殺戮したテロ組織がいつのまにか人類を破滅から救う善玉みたいになっちゃうし、ほんとにそれでいいのか?穿った観方をすれば、肉体の滅亡=死と復活というところはキリスト教的な脚本と言えるかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-12-15 22:14:26)
13.  トランス・ワールド 《ネタバレ》 
予備知識は最低限で鑑賞。このプロットだけからすると、ルイス・ブニュエルの傑作『皆殺しの天使』のパクりかなと思っていたら、プラス『バタフライ・エフェクト』という凝った構成の拾い物でした。 最初三十分は正直いって退屈な展開。でも三人が認識していた自分の現在いる場所がバラバラだと判ったあたりから、俄然面白くなってきます。そして明らかになってくる驚愕の三人の関係性、ここまで来ると正直「そんなのありか?」と唸ってしまいました。なんせ低予算を逆手にとって説明や謎明かしはほとんどなしで通し、これぞまさに神様の悪戯としか思えないような展開です。この三人のキャスティングがまた意味深です。イーストウッドの息子にサム・ウォーターストンの娘、それにピル・パクストンの(遠い)親戚というひねり具合、これは劇中の三人の関係と作品のテーマを考えると、けっこう粋な遊びごごろを感じてしまいます。スコット・イーストウッドはまさに若き日のクリントそのままというルックスで、感慨深いものがありました。 ラストの展開はハリウッドお得意の“未来は変えられる”といううんざりさせられるテーゼの登場ですが、登場キャラがどんどん消滅するところはちょっと新鮮かなとも思います。でもあの人だけが生き残ったことでハッピーエンドになるという理屈は、ちょっと理解するのが難しいところです。ラストの空爆シーンのCGのショボさはやっぱ低予算だよなと再確認ですが、作品の評価を落とす要素ではないと思います。冒頭とラストに登場するお店のオーナー、なんか謎めいたキャラで印象に残りますね。それにしても、あの金庫の中には何が入っていたんだろうか?
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-09 19:57:22)
14.  トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 
少子化どころか人類すべてが妊娠できなくなってしまった世界、なぜそうなったのかは全然解明されていないが、そこは説明過多に陥らないのでストーリーテリングとしてはアリでしょう。それよりも、英国以外の国家システムが崩壊して難民が押し寄せる世界という設定がイマイチ「?」なのです。秩序が崩壊した原因は子供が生まれなくなったのが遠因とこの映画では仄めかす様な表現で終わっていますが、人間ってそこまで自暴自棄になりますかね?はっきり言って子供が欲しいと切望する若者は別としても、新しい生命が誕生しないだけで今生きている生命には疫病のような危機は発生していないように見受けられるし、そんなに焦りまくる事態ではないようにも思えるんですけど。でも地球上のすべての生命体の共通の本能は自己の子孫を残すという進化論的な命題に収束するわけで、人類といえども今の世代で種が絶えてしまうと認識してしまったら理性が失われて文明崩壊が起こるかもしれません。そういう哲学的な思弁の行き着く果てが、この映画と言うか原作の世界観なのかもしれません。 メキシコ人であるアルフォンソ・キュアロンにとっては、不法入国・難民問題は他人事と涼しい顔はできない現実でもあるでしょう。全体主義国家になってしまった英国での難民取り締まりの描写は、イラクやシリアでの現実を踏まえた恐ろしい描写ですが、まさかキュアロンも、難民こそ殺到しませんが10年後に英国がブレグジットで大陸から孤立する道を選ぶとは、夢にも思わなかったでしょう。政府も蜂起を狙う抵抗勢力も血も涙もない集団で、ヒューマン・プロジェクトなる団体だけが善玉というか信頼できる組織、でもこの三者はキーが産む子供を巡って争っているわけではない。この人類の救世主になるかもしれない赤ん坊と騒乱に満ちた実世界との係わりを上手くつなげられなかったところが、本作の弱さかもしれません。もっともそこは監督のあえて意図した撮り方だったかもしれません、突然出現した赤ん坊に兵士も難民も畏敬に打たれたように道を空けるシーン、これこそがキュアロンがこの映画でもっとも見せたかったところなのかもしれません。この映画を語られるときに長回しばかりが取り上げられるのは、ちょっと不本意なのかもね。 出演者ではやはりマイケル・ケインが光っていました。この役作りは、もうジョン・レノンにしか見えません。レノンも長生きできたら、きっとこんな感じの老人になってたんだろうな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-27 22:37:34)
15.  泥棒野郎 《ネタバレ》 
時々ウディ・アレンの初監督作として紹介されているのを見かける本作ですが、アレンの初監督作はあくまで"What's Up, Tiger Lily?"ですからね(きっぱり)。日本じゃ絶対に観ることのできない彼の黒歴史である"What's Up, Tiger Lily?"よりも、中編ながらもちゃんと劇映画として製作された本作は実質的には初監督作として認定してあげてもいい様な気もしますがね。 巷では初期アレン映画の最高作は『スリーパー』ということになっていますが、いや違う!私は『泥棒野郎』だと断言しちゃいます。驚くことに、アレンはこの第一作から早くもいわゆるモキュメンタリ―的なストーリーテリングで脚本を書いているんですね。この手法は後に『カメレオンマン』などにも使われているアレンの得意技ですが、60年代というとひょっとしてモキュメンタリーの始祖はアレンなのかもしれません。内容はスタンダップ・コメディアン時代からのナンセンス・ネタがてんこ盛り。傑作“メモを渡して銀行強盗”のネタはあまりにも有名ですけど、個人的には“何度も踏みつぶされるアレンの眼鏡”ネタもお好みです。音楽担当がマーヴィン・ハムリッシュだというところは、ノスタルジック・ジャズの名曲ばかり使う後のアレン映画とは違った雰囲気になっています。ヒロインもその後一度もアレン映画に出ていない無名女優ですが、いまいち掴みどころのないキャラですけどキュートで良かったです。思うにアレンのコメディはダイアン・キートンと組むようになってから変化したわけで、ナンセンス・ギャグがキレまくる『スリーパー』までの初期アレン・コメディは今となっては貴重なのかもしれません。
[ビデオ(字幕)] 7点(2020-06-24 20:34:08)
16.  トップガン 《ネタバレ》 
本年はいよいよ『トップガン マーヴェリック』が満を持して公開されます。トム・クルーズは今ではイーサン・ハントがパブリック・イメージですが、『ミッション・インポッシブル』シリーズが始まるまでは永らく“マーヴェリック”が彼の代名詞だったのが懐かしいですね。 本作の主役というとトム・クルーズなのかF-14トムキャットなのかちょっと悩みますが、まあ「両方です」ということにしとけば間違いないでしょう。そのトムキャットも米海軍を退役してすでに15年余りにもなり、現在運用しているのは米国の天敵イランだけだというのは皮肉な現実です。新作では使用機材はF/A-18スーパー・ホーネットになりますから、トムキャットがブンブン飛び回る映像は今となっては貴重です。見ればご理解いただけるように、トムキャットはとにかくデカい戦闘機です。そしてフェニックスという高性能ミサイルを搭載しているのでトムキャットは遠距離戦というかアビオニクス性能の優位が強みで、それなのにトップガンでドッグ・ファイトの技術を教育するとは米海軍は基本に忠実というか保守的なんですね。 これだけ存在感があるトムキャットにどうしても眼が奪われがちなのに、それに負けないオーラを放っていた若き日のトム・クルーズはやはり大スターになる片鱗を見せていたんじゃないでしょうか。あとこの映画の特長は、トムキャット以外の陸の乗り物アイテムがまた印象に残っているんですよね。トムが地上で愛用するカワサキGPZ900Rやケリー・マクギリスの愛車ポルシェ356は本作のアイコンの一つでもあります。マジック・アワーのサンディエゴのパームの並木道をカワサキGPZ900Rで疾走するトムのカットは、自分が本作を思い返すときに真っ先に浮かぶイメージになっています。“Take My Breath Away”や “Danger Zone”なんて当時のMTVでどんだけ聞かされたことか、これも懐かしい思い出です。 そういえば今回観直してマーヴェリックの三代目後席レーダー員がティム・ロビンスであることに気が付きました。ラストの空戦シークエンスでちょこっと登場するだけですが、空母甲板に立つとその異様な高身長が目立ちます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-10 22:23:46)
17.  トレマーズ 《ネタバレ》 
映画は所詮ビジネスで関係者たちがそれで生計をたてていて、必ずしも歴史に残る傑作や大ヒット作を狙っているわけじゃないことは当然ですけど、本作ぐらい製作者が予想だにしない成功を収めた映画はそうあるもんじゃないですよ。見る価値があるかどうかは別にしても、なんせシリーズになって四本も続編が撮られたんですから。基本コンセプトは、ずばり“陸上版ジョーズ”です。そしてもう一つは、“荒野のロケだけで済ませて低予算で仕上げる”となるでしょう。CGや合成を使わず、全登場人物はたった17人ですからねえ。そしてその17人のうち半数ぐらいはグラボイドに喰われてしまうのに、ぜんぜん暗さを感じさせない明るいトーンで押し切っちゃう強引なストーリーテリング。ケヴィン・ベーコンとフレッド・ウォードのバディ感もいい味出しています。ヒロインの女子大生のジーンズを意味もなくなく脱がせてパンティ姿にするというサービスを忘れていないのもさすが、だいいちあの状況では絡まっている鉄条をふつう切るでしょう、ベーコンは斧持っているんだから(笑)。 気になったのはグラボイドの最期で、あれはひょっとして『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』のパクりなのかと思いますが、偉大なるスピルバーグからインスパイアを与えられたと好意的に解釈したいと思います(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-03-15 20:54:36)(良:1票)
18.  ドッグヴィル 《ネタバレ》 
いろんな意味で、これはとんでもない映画であります。ストーリー展開や後味の悪さときたら、『ファニーゲーム』を凌駕しているんじゃないでしょうか。 床に線を引いただけでのドッグヴィルの集落は、演劇では昔から良く使われている表現でさほど驚きはしません。そして開幕から70分過ぎるあたりまではある意味イイ話で、何も知らずに観ている人はハートウォーミングな映画だと勘違いしてもおかしくはないでしょう。独立記念日の会食が過ぎたあたりから住民の本性が表出してきてお話しはだんだん身も蓋もない方向になって行きますが、住民の中でも最悪なキャラはやはりトムでしょうね。生まれ故郷のホワイトトラッシュの吹き溜まりで燻っているニートのくせに、自分は優秀だと勘違いして愚かな住民相手に牧師気取りで偉そうに説教までする、もう最悪です。こういうちょっと勉強ができるバカほど始末に負えない奴はいません。父親の金をくすねてグレースに罪を擦り付けてからのこいつの言動には反吐が出そうです。 物語が始まってからしばらくは登場キャラ全員に好感が持てたのに、終わってみればだれ一人として感情移入できなくなっている(もちろんグレースもね)ところがこの映画の脚本の凄いところです。また、ストーリーテリングの緩急の付け方は絶妙で、ラース・フォン・トリアーの脚本家としての技巧は大したものだと認めざるを得ません(腹立ちますがね)。グレースがドッグヴィルを抹殺する気になるところなんて、その数分前には想像もつかない展開じゃないですか。実の娘に銃をぶっ放すような危険な男ですけど、「住民への懲罰として犬を殺して壁に打ち付けておこう」なんて(グレースに比べれば)ぬるいこと言ううぐらいで、終わってみればジェームズ・カーンが唯一感情移入できるキャラだったのかも… この映画のテーマはやはり「傲慢」ということになるんでしょうか。母親の前で一人ずつ子供を射殺させるのはもちろんのこと、いくらクズの集まりとは言っても住人を全員抹殺させるグレースこそが傲慢の極致なのかもしれません。でもあの殺戮の場面で、嫌悪よりも快哉やカタルシスを感じてしまうこと(自分もです)に気づいて愕然とする人も多いでしょう。悔しいけどこれこそがラース・フォン・トリアーの意図するところで、闇の中から奴の笑い声が聞こえてきそうです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-02-29 22:12:31)
19.  翔んで埼玉
GACKT・伊勢谷友介・京本政樹そして中尾彬と濃い面々が揃っていて、もうそれだけでゲップが出そうです。そのうえ、BLチックな展開ですからねえ。まあ有名なギャグ漫画の映画化ですからあまり突っ込んでも無粋ですが、思ったよりも笑わせていただきました。私的には河を挟んで埼玉勢と千葉勢が“ご当地芸能人バトル”を展開するところがツボでした。千葉勢がYOSHIKIを出してくるとGACKTがたじろぐという自虐ネタなんか最高じゃないですか。群馬の扱いはもう笑っちゃうほど酷かったですが、ほとんど無視の栃木や茨城と較べたらマシですよ。でも、これって関東圏住み以外の人達にはウケるのかな、という疑問はありましたね。関西でも同じようなディスりあいはありますので、それはそれでネタにして一本映画にしたら面白いでしょう。 くだらないけどなんか徹底してない撮り方なのがちょっと不満でしたね。『テルマエ・ロマエ』と同じ監督だから、まあしょうがないってことですね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2019-12-31 23:20:30)
20.  ドーベルマン(1997)
ヴァンサン・カッセル率いるドーベルマン一味は、いくら警官だけしか殺してないと言っても、「いったい何人殺したんだよ!」と叫びたくなるほどの凶暴さで半端ないです。でも、みんなキャラが立ちまくっていて好きです。とくにヴァンサン・カッセルは、大物俳優の貫禄が目立つ最近のお姿と違って“個性だけで勝負”というそのハッチャケぶりで、若いころの本木雅弘を彷彿させるものがあります。モニカ・ベルッチのやり過ぎ感が濃厚のお下品演技も、もはや怪演の域に達しております。そして間違いなく怪演なのはチェッキー・カリョで、このサディスト刑事のおかげでドーベルマンが正義の義賊みたいな印象すら与えてくれます。強烈な印象というか世界観を感じさせてくれるのがドーベルマン一味と警察が死闘を繰り広げるクラブのシークエンスで、このクラブが『キル・ビル』の青葉屋に通じるものがあるなと感じましたが、監督がタランティーノの崇拝者だと知って納得です。でもよく考えると本作の方が5年も早く撮られているわけで、ある意味でタランティーノに匹敵する感性をこの監督ヤン・クーネンは持っているといえるでしょう。この後にほとんど映画を撮ってないみたいなのは、残念です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-06-04 22:50:17)
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