2. 東京物語
ネタバレ もう5,6回は観ているだろうか。 かつては「家長」として大きな権力と権威を振るっていたであろう父が、戦後民主主義の時代になって、成長した子どもたちは言うことを聞かなくなり、むしろ親に「ああしろ、こうしろ」とズケズケと指図するようになって、ささやかに落胆する。 とはいえ、子どもたちにもそれぞれの仕事と家庭があるので致し方のないところでもあり、老夫婦の面倒を最も親身になってみてあげるのが二男の未亡人という血縁のない人間であったわけで、しょせん「血の絆」などというものは頼みにならないものだというメッセージは、現代にもしたたかに響く。 この物語の根幹は、こうした戦後における「家父長制」の崩壊にあるわけだが、やはり「家族」と「血」における絆は所詮は脆いものであり、大事なのは「血」よりも「愛情」であることを説教臭さのない柔らかいタッチで観る者に伝えてくれるのがこの作品の素晴らしいところ。 そしてまたタイトルにある「東京」も、復興へまっしぐらという活力を取り戻し、人々の生き様も朗らかで華やかにみえて、上京してきた主人公の老夫婦にとってはどこか息苦しさを感じてしまうという矛盾。そこには当然、出迎えた息子や娘たちの温情の乏しい対応も影響している。 数ある小津作品の中でも「戦後日本」の抱える光と影を如実に描いた傑作だ。 [インターネット(邦画)] 10点(2025-06-30 04:37:25)(良:1票) |