1. ナインスゲート
《ネタバレ》 世間が言うほどつまらなくはなく、むしろ面白かったのだが何か物足りない気もしてしまうのは「悪魔崇拝」が描かれたポランスキーのオカルト映画というところでどうしても『ローズマリーの赤ちゃん』を想起してしまうからだけではなさそうだ。主人公は本に携わった仕事をしているが本を愛しているわけではなさそうで(貴重な古書をタバコを吸いながら触りまくる)、金で動くいわゆる商売優先の人。こう書くと悪魔に魅入られる人間という気もしないでもないが、正義の人ではないけどどこか憎めないキャラは彼が演じた某海賊映画の船長をこじんまりとした感じに似ていなくもなく、だからこそ面白かったわけでもあるが、結末がああなるとちょっと愛嬌がありすぎるような気もしないでもない。『ローズマリーの赤ちゃん』や『テナント』や『反撥』のような妄想がなく、オカルトを現実の世界のものとして描く。だからあの女はバイクにも乗り怪我もしセックスもする。何度も言うがだから面白い。でもやっぱり何か足りない。何かはたぶん「狂気」。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-17 14:15:55) |
2. 夏物語(1996)
《ネタバレ》 ロメール・四季の物語の中ではやっぱこれが一番好きかな。唯一男が主人公の物語。けっこう男前なんだけどキープ君タイプ。バカンスとして割り切っちゃえばいいところを割り切れない。正直なんだけど信念が無い。3人の女に振り回されているようで結局振り回されているのは女のほう。器用で不器用。なんやかんやがあって、そのオチかよ!ってなオチも納得の人間描写。海で始まり海で終わる。けっきょく何も起こらない夏。ロメールのいつもの映画のように何も起こらない。でもちょっとうらやましい夏。若い人の感性をここまで繊細に描ききれるロメールっていったい何歳? [CS・衛星(字幕)] 8点(2006-10-12 15:07:41) |
3. ナイト・オン・ザ・プラネット
ジャームッシュの手にかかれば誰だって映画の主人公になれる。人が人に出会う、その前もその後もおそらく他人のままの二人の一回だけの出会い。その一回きりの出会いさえあれば映画ができる。世界中の中から5つの都市が選ばれ、それぞれの場所で、タクシー運転手と客のひとときを切り取る。5つの都市といっても登場する人たちのバックボーンはもっと複雑で、様々な人種が交錯する様はいかにもジャームッシュ映画。ジャームッシュは常に映画の中で様々な国の文化に触れ、文化と文化が自然に、あるいは不自然に溶け合う様を好んで取り入れている。そういう意味ではこの作品は最もジャームッシュらしいと言える。その一方でジャームッシュらしくない部分もある。それは一つ一つのエピソードがひとつのストーリーとして洗練されすぎている点。どのエピソードにもささやかな伏線がありささやかな起承転結がある。脚本が出来すぎなのだ。ここまで完成された5つのショートストーリーを見せられたら、いくらそれが「らしくない」といっても満足度のほうが大きいので個人的にはOKなんですが。彼の作品の中では、映像よりも脚本のうまさというか、話の構成のうまさというのが印象に残る作品。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-05-12 16:09:35) |
4. 波の数だけ抱きしめて
「彼女が水着に着替えたら」よりまだ見れた。現実的度合いが「私をスキーに連れてって」に戻った。でもしかし、三上を大きく上回る織田の優柔不断ぶりにはかなりイライラさせられるし、出てくる連中はみんなくさすぎるし、三角関係だか四角関係だかって展開もベタベタでこれもイライラする。織田裕二のファンか中山美穂のファンならOKなんだろうが..。 3点(2004-01-21 18:15:37) |
5. 南京の基督
芥川龍之介の「南京の基督」と監督のオリジナルを合わせたものらしいが、なかなかいい。いいというよりせつない。せつないというよりせつな過ぎる。富田靖子がひたすら純真無垢な娼婦を見事に演じきっていることで輪をかけてせつなさを強調している。 7点(2003-10-27 17:50:10) |