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onomichiさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 401
性別 男性
ホームページ http://onomichi.exblog.jp/
年齢 55歳
自己紹介 作品を観ることは個人的な体験ですが、それをレビューし、文章にすることには普遍さを求めようと思っています。但し、作品を悪し様にすることはしません。作品に対しては、その恣意性の中から多様性を汲み取るようにし、常に中立であり、素直でありたいと思っています。

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1.  ノルウェイの森 《ネタバレ》 
素直に感動した。一般の評価が低いことを知っていただけに、期待以上に見応えがあった。  久しぶりにその世界に触れ、心が震えた。確かに小説のいくつかのエピソードが省かれていた分、此の物語に親しみがない人にとっては、それぞれの人物に絡みつく悲しみの影がみえず、彼らの行動の必然が理解できないかもしれない。しかし、僕はその欠陥を記憶で埋めながら、自然に観ることができたと思う。だから、それは欠陥にはならなかった。 僕の中で、永沢さんはナメクジを飲んだ永沢さんだったし、レイコさんは少女に翻弄されて自分を見失ったレイコさんだった。(レイコさんはもう少しシワシワの方がよかったかも) 突撃隊は説明がなくとも突撃隊だった。  映画を観るという行為は絶対的に個人的なものだと僕は思う。故に、その評価は、個人の記憶や経験、境遇によって変わってくるのは当然であり、原作を何度か読んでいる僕にとって、この映画の評価は、そういう個人的なもの、様々な記憶の補完とともに立ち上ってくるものとしてある。  基本的に原作に忠実なところがよかった。何も足さず、的確に小説の情景を、そのエッセンスを映像化していたと思う。松山ケンイチのワタナベくんも菊池凜子の直子も、そして水原希子の緑も、此の物語を体現した存在として、自然にそこに在ったと思う。此の物語はセックスと死をめぐる寓話でもある。映画は総じて感傷を排し、テーマそのものにフォーカスした感じだと思うけど、セックスの表現は悪くないし、僕の作品に対するイメージを損なうものではなかった。  草原で髪を風になびかせる直子。その大きな瞳から虚ろに漂う視線。とてもぐっときた。直子を失ったワタナベくんが海辺で慟哭するシーン。バックの映像はすこし演出に走りすぎたかなとも感じたけど、彼の慟哭の表情は、失ったもの、それが如何に切実なものであったかを僕らに突きつける。  「ワタナベくん、今、どこにいるの?」と最後に緑が電話口で問いかける。彼はどこでもない場所にいる。直子が死んで、彼は、彼の生きてきたひとつの根拠を失った。しかし、彼は、それでも生きていくことを決意し、緑に電話する。生の象徴である緑の口元に漂う微笑み。それは映像だからこそ現れたアカルイミライのようにも見え、それはそれで面白いと思った。  此の物語を体現した人物、映像、演出、、、素晴らしい作品だと思った
[映画館(邦画)] 9点(2010-12-29 20:56:52)(良:1票)
2.  野良犬(1949) 《ネタバレ》 
とても印象的なシーンが多い作品である。戦後まもない東京。真夏である。冒頭の街の喧騒。闇市。警察署内の整頓された書類室。繁華街の片隅の寂れた様子。ダンスショーの楽屋。安ホテルの電話ボックス。郊外の田園風景。 真夏の暑さに茹だり、汗にまみれ、砂埃りが舞う。空気はジメジメとし、太陽はギラギラと照る。今とは違うであろう都会の匂い。そんなすえた匂いが画面から漂う。そして、雷雨である。雨に濡れ、その匂いを感じる。  僕が好きなのは、刑事役の志村喬と三船敏郎が仕事帰りに志村の自宅でビールを飲むシーンである。郊外の一軒家。開け放たれた縁側から夏の夜風が涼やかに吹き込む。そこで交わされる会話。最近の若い者は、、、アプレゲール!云々。戦後派の三船と戦前派の志村。でも志村の子供はまだ幼い。勤続20数年だから、まだ40代か。思いのほか、志村喬は若かったのか。。。  プロ野球の観戦シーン(巨人vs南海)は結構貴重なんだろうなと思う。ジャイアンツの青田、藤本、そして川上が打つ。選手たちの一挙手一投足に超満員の観客がわく。彼らはそれぞれに立ち上がり、喝采し、座る。鳴り物なんてない素朴な応援風景。テレビがない時代だから、観客は選手のプレイにとても素直に感動しているように見える。選手たちも自由気ままでとても楽しそう。  そして、最後のシーン。犯人役の木村功を追い詰める三船敏郎。緑の中を駆け回る。白黒の画面に、色のない映像に、目くるめく極彩色の光景が浮かび上がるよう。平穏なピアノ音の中で、静寂の中で、犯人の慟哭。  戦後という時代。復員者たちは、南方や北方の異国で戦争を戦い、多くの戦死者、餓死者を間近にし、幾多の犠牲の中で帰国する。また国内でも多くの人々が空襲の下で辛苦を味わい、銃後の混乱の中で、国民全体が敗戦を受入れた。そういう時代からたった4年後の物語である。そこにある物語は常に戦後の日本という時代を背景にせざるを得ない。そして、それは現在の僕らに響く。僕らは今でも戦後を出発点として連続した時代を生きているから。その原風景がこの映画に描かれており、だからこそそれが僕らに響くのである。  まだ「戦後」と呼ばれた時代風景の中で、その風景そのものが物語を綴っているような、それが現代の出発点だからこそ、僕らに響いてくる。その時代の貴重な空気、色、光と影、音や匂いが、ある種の思想として、そこにはあるのだ。
[DVD(邦画)] 9点(2010-05-13 00:36:54)
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