41. バベットの晩餐会
《ネタバレ》 『バベットの晩餐会』と『バックドラフト』なくして、あのTV名番「料理の鉄人」は生まれなかっただろう。っていうくらいに、厨房のシーンの絵(特に調理器具のピカピカ度を強調するライティング)が斬新だった。この絵作りはもう「発明」に近いね。目指したのはきっと「グルメの登場しないグルメ映画」なんだろう。だから嫌味がなく、調理の魔術に目も心も奪われる。まあクライマックスのウズラパイは、焼き鳥屋で平然とスズメ串を食べてる者としてはインパクト薄かったかな。原子力にも平和利用って言い訳があるわけだ。あの絢爛たるフルコースディナーは、グルメでない登場人物たちの心を満たしてくれたに違いない。厨房という戦場で、村人の頑迷な心を打ち砕いた、一人の献身的悪魔の物語。 5点(2004-05-14 04:42:03) |
42. バンデットQ
ストーリーテリングの基本はつかみとひっぱりとカタルシス。その3つの技をとことん追求したと言う意味で素晴らしいエンターテインメントだ。ただし、観客は毒に耐性のある少年の心を持っていなければならないという制約付きだけどね。それにしても豪華な映画だ…ひとつの時代のセットや衣装やロケ地を使いまわせば安く上がるものを、あそこまで目まぐるしく替えてしまうとは(タイタニックのシーンなんか豪快なだけで、ストーリー上なくてもいいじゃんって感じ)。結局のところ一番の勘所は、監督の奇想につきあってバカな無駄遣いを楽しむ姿勢を持つ事かもしれない。アメリカに『珍説世界史パート1』あればイギリスに『バンデットQ』あり。ギリアムよ、原点に帰ってきてくれ…! 7点(2004-05-04 02:03:16) |
43. バニラ・スカイ
《ネタバレ》 最初1/4は『市民ケーン』の現代版かと思った。次の1/4は『他人の顔』かと思った。だが見ているうちに『四谷怪談』になった。そしていつの間にか『マトリックス』を経て『トータル・リコール』に…『オープン・ユア・アイズ』を見てないから比較はできないが、このぶっ壊れ方は最高! 気持ちは10点。トム・クルーズの映画だから-1点てとこかな。俳優使ったスタジオ撮りの映画なんて所詮虚構なんだから、これくらい物語を壊してくれなきゃ面白くないよ。久々に最初から最後まで食い入るように見つめてしまった2時間16分でした。ラストに訪れる極北の愛に、癒し系環境音楽がまた出口のなさを現していてゾクリとする。『映画を見る』という行為そのものを揶揄した自己否定的な映画、という見方で宜しいかな?(追記:冷静に見直してみて精神科医のカート・ラッセルで減点。演技云々と言うよりキャスティングが凡。オイラがキャスティング担当だったら、モンティパイソンのジョン・クリーズを充てたと思う。『マルコビッチの穴』で一種特別なアクターになったジョン・マルコビッチもいいかも。要するに議論のシーンで余裕をかました演技ができて、かつ何か現実の破れ目を感じさせるキャスティングじゃなきゃダメなのだ。だから最後のラッセルのセリフ「オレの名は…オレの名は…」以降が、いかにも締まらない口調になってしまった。あのセリフを活かすのは、本作には絶対必要だ) 7点(2004-05-04 01:40:45)(良:1票) |
44. 花嫁はエイリアン
オープニングの歌はプリンスの曲をトム・ジョーンズがカバーしたんですかね。初めて見た時、あのパワーとグルーヴィーな声に圧倒された記憶があります。内容的にはベタベタな話でしたけど、それ言うのは野暮ってモンですよね。テンポのいい科白が気持ちよかった。こういうのは字幕もいいけど吹き替えでも見たかったなあ…。 6点(2004-03-15 03:50:45)(良:1票) |
45. ハドソン・ホーク
大金を投じた投げやり作品が大好きなオイラの、ベストシネマ2位。ただ単に投げやりなだけじゃなく、超強引なカットつなぎ(デート先への無理やりな到着シーンなんか、こんなん他の映画で観たことねーよ!)とか昼が夜になる無茶苦茶さ(これはDVD版の監督音声解説で自慢げに語ってますね)とか、判ってやってる点がいいのれす。絶対ありえないバチカン諜報機関とかCIA軍団とかもナイス。だけど世間的には堂々のラジー賞受賞作なのれすね…これからも我が道を行きますとも、ええ。 10点(2004-03-13 22:45:34) |
46. π(パイ)
塚本晋也の『鉄男』が世界的カルト映画となった事を如実に示した作品。てか、なぜテーマにπを選んだの? 巨大数列をFFTで解き明かそうとする90年代に、なぜπ? 株価との相関もイマイチ。ネタ的には『スニーカーズ』という先駆作があるだけに、映像の味覚だけで評価しなきゃならなくなったのが辛いとこでした。80年代作品なら唸ったトコロですが。 1点(2004-03-08 05:18:18) |
47. ハンバーガー・ヒル
『プラトーン』より『フルメタル・ジャケット』より『地獄の黙視録』より、『ハンバーガー・ヒル』だなあ。戦争映画なのかスプラッタ映画なのかわからなくなって来るくらい、ショッキングだった。あまりに無謀な命令、死ぬとわかっていても攻めに行かにゃならん兵隊さんたち。観客も彼らに付き合わされて地獄めぐりをするうち、後半で手足が吹っ飛ぶくらいじゃ神経に響かなくなってる。そしてエンディングで出る「その後」の字幕には唖然として、かつ不快な疲労を憶えます。そのメッセージはいやと言うほど伝わった。ただ、多くのベトナム帰還兵と同じように記憶の奥底に沈めてしまって、この映画を「なかった事」にしているわけだが…。 7点(2004-03-08 05:07:07)(良:1票) |
48. バルカン超特急(1938)
前期ヒッチコックの最高峰ですね。サスペンス/ミステリーは十二分だけど、それより何より要所に散りばめられたコミカルな展開が好きです。言われた通りマジメに体操してるし(笑)。 8点(2004-02-23 03:27:14) |
49. バグダッドの盗賊(1924)
《ネタバレ》 サイレント時代のアクションスター、ダグラス・フェアバンクスの代表作。で、グリフィス御大がセットのコーディネートをしてる。お姫様に恋した盗賊(フェアバンクス)が、拉致する事も出来るところを敢えて「世界の秘法探し」というアラビアンナイト的正道を選ぶ。他方、ラムズフェルド国防長官似の中国皇帝は、バグダットを我が手中にせんと、求婚するフリして兵士の従者を都に入れ、王宮急襲を挙行する。自国の危機を知ったフェアバンクスは手にした秘法を使ってバグダットへ舞い戻り…なんかイラク戦争に壮絶にかぶるんですけど。しかもこれ、アメリカのサイレント時代を代表する娯楽大作なんですけど。イラク戦争を経た今となっては、三点引かざるを得ないですなあ…フェアバンクスがいま存命だったら何て言う事か。 アメリカさんよ、自分で作った夢を壊すなよ。 5点(2004-02-22 20:01:07) |