1. 必死の逃亡者
《ネタバレ》 ボギー久々の悪役はやっぱり様になる。この作品はどこにでもある一般的な中流家庭を襲うってところがミソ。だから当然主役のお父さんもまた一般的フツーのお父さん。映画を引っぱるだけの存在感なんてない。ここでハンフリー・ボガートの強烈な存在感が必要となる。抵抗することが強いのではなく家族を守ることが強いのだともってくる父と息子のアメリカ映画らしいドラマが退屈にならずに済むのも、父や娘が外出を許されるという緊迫感を阻害させるような展開でもそれをあまり感じさせないのもボギーから発せられる危険なオーラがあるからに他ならない。手下がゴミ収集車を追いかけに出たり娘と恋人のあれこれがあったりとドラマを盛り上げる各エピソードが多すぎるような気もするがそこから裾野を広げずにあくまで核は家族であり、よって舞台は家であるということを徹底しているところが好感が持てる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-10-14 17:04:47) |
2. 左きゝの拳銃
ビリー・ザ・キッドものはこれ以外には『ヤングガン』とペキンパーの『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯 』ぐらいしか見ていないが、ビリーの人物像はこの作品のビリーが最も納得のいくもので、作り手もおそらく一番重要視したのはリアルなビリー像だったんじゃないだろうか。復讐の影で多くの人に迷惑をかけ、多くの命をないがしろにすることに気付かない血気盛んでいて浅はかにすぎる青年をニューマンが熱演。粗野な一方で教養の無さをコンプレックスに思う子供っぽさがニューマンのファニーフェイスとまたしっくり合う。パット・ギャレットがえらくかっこよく描かれているが、ビリーのおそらくは史実であろうエピソードに時間を使いすぎて出番が少ないのがもったいない。アーサー・ペンのデビュー作らしいが、銃撃戦の合間やラストのギャレットと対峙するまでの沈黙の時間がなるほどアーサー・ペンらしいと思った。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-12-12 14:09:39) |
3. 陽のあたる場所
物語は金で目がくらみ人間らしさを見失ってしまったための悲劇、つまり資本主義を糾弾したものがベースにあるのですが、カメラはメロドラマを捉える。その背景には撮影時の赤狩りに対処したという事実があるらしいのですが、まちがいなくエリザベス・テイラーの美貌がメロドラマへの欲求を加速させています。そして訪れる、肩越しから超どアップで捉えたチュー!!映画史上に残る美しいキスシーン。リズの美貌があのシーンを可能にし、あのシーンがリズのその後の活躍を確約したといっても過言ではないと思う。そして物語はこのシーンへ向けて進み、このシーンが余韻としてその後のシーンに影響を与えている。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-23 13:28:55)(良:1票) |
4. 拾った女
スリとすられる女、そしてそれを見ている男、と主要な人物が交互に写されいきなりサスペンスを盛り上げるオープニングシーンは電車の揺れの再現、窓からの光、新聞紙などの小道具の使い方も含めて何気ないけど完璧に観客をひきつける。この映画はストーリーもじゅうぶん楽しめるがストーリーを堪能しなくても楽しめる。まずなんといってもテンポがいい。テンポがいいから唐突なラブシーンにも酔える。印象深いシーンは多々あるがコミカルな部分を背負っていたタレコミ屋の老女がゆっくりと大げさにクローズアップされてゆくシーンがとりわけ印象に残る。彼女のコミカルな会話が走馬灯のように蘇り彼女の人生、はたまた下層級の生活の厳しさまでもが浮き彫りにされてゆくというとんでもなく素晴らしいシーンです。娯楽映画としてのツボをおさえた作品であると同時に細部へのこだわりに満ちた作品です。 [映画館(字幕)] 7点(2006-07-07 11:50:13) |
5. 彼岸花
いいですねー、京ことば。主人公一家と京都の親戚母娘の会話の両極端なテンポがもたらす絶妙なリズム。両者ともに、より際立っていました。静かなる紳士ぜんとした男が唐突にわいた娘の結婚話しにイライラし、物分かりの良い妻にも意見され、「おい!うるさい!ラジオ消せ!」と怒鳴るシーン。怒鳴られたことによる困惑のなかで、夫の心情を察して微かな笑みを浮かべる妻。ウチだったらギロッてにらまれて1週間は口を聞いてもらえないことまちがいないだろう、、ということで、苦々しくも羨ましい、でもやっぱりいいなぁと思えるシーンでした。小津の他の作品のように、同じ部屋でも色々な方向から撮っているんですが、赤いヤカンに代表される小物たちの存在が混乱を避ける目印となり、またその可愛らしい自己主張が心を和ませます。誰もいない廊下の片隅にある赤い座布団の敷いた籐の椅子が、場面の切り替え時に度々映し出されますが、静かな余韻に浸るいい間(ま)を作り出すとともに、最後の最後に妻がその椅子に座る画の伏線にもなっているのには驚きました。小津の映画はこういう驚きに溢れています。 [DVD(字幕)] 9点(2005-06-23 18:20:29)(良:1票) |
6. 白夜(1957)
《ネタバレ》 マストロヤンニに感情移入しちゃうとラストはちょっときつい。でもマストロヤンニを無邪気な笑顔でどん底に落としちゃうさとう珠緒似の可愛いマリア・シェルと何やってたのかさっぱりわからんクールな色男ジャン・マレーにとってはハッピーハッピー大ハッピー!なエンディング。ま、二人とも会えない間はやっぱり辛かっただろうし、マストロヤンニにもちゃんと救いの犬が慰めに来てくれてたし、なんといっても寮に帰れば口うるさいけど愛がいっぱいのおばさんが待ってることだし、やっぱりハッピーエンドだと思いましょう。実のところ、この映画はつい最近初めて観ました。ヴィスコンティがなぜこの名作文学の映画を撮ったのか知らないが、こういうのもいけるんだ、という驚きがありました。雪のシーンが綺麗です。雪のシーンを撮りたかったのかな? 7点(2004-05-20 12:56:27)(良:1票) |