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プロフィール
コメント数 2375
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  引き裂かれたカーテン 《ネタバレ》 
ジェームズ・スチュアートやケイリー・グラントそしてグレース・ケリーとは疎遠となり、いい意味でも悪い意味でも迷走していた60年代のヒッチコック、女優以上にヒーロー男優に迷いがあった感があります。『マーニー』のショーン・コネリーに続いてついに大物ポール・ニューマンが起用することになった次第です。そりゃあニューマンにはヒッチコック作品に呼ばれることには不満はなかったでしょうが、“若き天才物理学者”というキャラには正直いって合ってなかったような気がしてなりません。ヒッチコックには冷戦スパイものというべきいくつかの作品がありますが、本作を含めてどれもイマイチなんですよね。言ってみればこの映画でのニューマンは亡命者を装った二重スパイというわけなんですが、米国の国防兵器の開発に携わっているような科学者が危険な任務を引き受けるようになる動機というか必然性が見えてこない。まあ言ってみれば素人スパイなわけで、タクシーに乗って工作員に会いに行くシークエンスなんて東独当局にバレるのは当然と言えば当然です。ここで監視役を殺してしまうことで後半のハラハラ・ドキドキに繋がるわけだけど、この殺し自体がなんか雑な展開な感が拭えません。東独の科学者から数式を聞き出すところも思ったよりあっさり感が強くて、ここをもっと凝った展開にしたら違ったサスペンスが生まれたんじゃないでしょうか。脇はほとんど西ドイツの俳優が起用されていて仲間内では当然ドイツ語で喋っているのでニューマンがドイツ語を解しないという設定はリアルさがあるんですけど、さすがに劇場で「火事だ!」という英語の叫びにドイツ人の観客がパニックになるというのは、ちょっとアレでしたね(笑)。ニセ路線バスと本物のバスとの接近遭遇など随所にヒッチコック流の盛り上げが健在でしたが、全体的にサスペンス映画としては緩すぎです。 考えてみれば、本作がヒッチコックのフィルモグラフィで最後の大物男優の主演作でした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-07-28 22:37:13)
2.  ヒトラーの贋札 《ネタバレ》 
ナチ・ドイツが実行した史上最大の通貨偽造事件と言われるベルンハルト作戦、第二次大戦中に英国の外貨準備高の四倍ものポンド紙幣を偽造したというから呆れます。戦後に真贋を問わずすべての5ポンド紙幣を回収して破棄しなければならなかったそうですから、英国財政は相当なダメージを喰らったのは間違いないです。この偽札づくりは強制収容所のユダヤ人使ったので成功したわけで、ユダヤ人をただ虐殺するだけでなくとことん利用しつくすドイツ人気質には肌寒くなるものがあります。偽造に成功したのが敗戦の一年前とかなり煮詰まってからだったのが、英国には不幸中の幸いでしたね。トルコの英国大使館でスパイとして活躍したコードネーム・キケロに支払われた三十万ポンドは実はすべてこの偽札だったそうで、ドイツ人のセコさには失笑するしかないです。 ある意味で、数あるナチスのユダヤ人強制収容所を題材にした映画の中でも、かなり珍しい部類になるんじゃないでしょうか。なんせ作業につくユダヤ人たちは特別待遇、白衣すら着用するような清潔な服装、そしてちゃんとマットレスつきのベッドで寝れて、仕事に成功すればご褒美として卓球台までプレゼントされる。敗戦時に囚人たちが蜂起したときに偽造に従事していた者たちが親衛隊員と疑われて射殺されそうになるエピソードには納得です。収容所の中でも完全に隔離されたエリアで作業していたわけで、痩せこけてボロボロの囚人たちには清潔な服装で栄養状態が良好な彼らが同じユダヤ人囚人だとは見えるはずないですね。また主人公のソロヴィッチが善良な市民ではなく、暗黒街でもブイブイ言わせていたアウトレイジだというのも珍しいパターンです。ソロヴィッチはもと犯罪者らしく生き残ることが正義で、共産主義者で大義のためにサボタージュして成功を遅らせようとするブルガーとは対立しますけど、ブルガーを含めて仲間を裏切らず守ろうとする姿勢はまさにアウトレイジの仁義です。実はこのブルガーは実在の人物で、しかも自らの体験を基にした原作著書の作者なんですよ。つまりこのブルガー視点の物語であっても不思議ではないのに、あえてアウトレイジのソロヴィッチが主人公だというのは面白いところです。そんなしぶとい男であるソロヴィッチですけど、終戦直後にモンテカルロで持ち出したドル札で豪遊しますが、収容所の体験がフラッシュ・バックして全部カジノでわざと溶かしてしまうところには、彼の心中の善が噴き出してきたのを見せられたように感じました。そしてラストの「カネはまた造ればいいさ」というソロヴィッチの呟き、カッコいいじゃありませんか。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-06-30 23:03:28)
3.  ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!
ブレイクし出したころのビートルズをフューチャーしたアイドル映画というか元祖MVとも言えるでしょう。当時のビートルズを象徴するアイコンであったマッシュルームカットも、今の眼で見れば良家の可愛らしいお坊ちゃんたちという感じで、なんでこれが大人の顰蹙を買ったのか理解できませんね。ストーリーは、いちおうロンドン(?)から列車に乗って地方の都市でTVの公開収録をしたビートルズが慌ただしくヘリコプターで去ってゆくというだけのことですが、これが商業映画で初監督のリチャード・レスターがお得意のレスター節全開で撮ってますから、それはもうクセが強いことと言ったら…笑えない・意味不明な英国ギャグには辟易させられます。この人、産まれも育ちもアメリカ人なのに生粋の英国人みたいなセンスなのが不思議です。ビートルズも、後に俳優としても活躍するリンゴ以外は演技がド下手ですが、若々しい彼らの映像が観れるというのは感涙です。彼らも映画初出演ですから、まあ仕方ないですかね。四人そろっての劇映画出演は『HELP!四人はアイドル』と本作しかないので貴重ではあります。 演技じゃないのはビートルズの演奏に興奮する少女たちの熱狂ぶりで、観ててちょっと引いてしまいます。でも彼女たちも生きていれば今じゃみんな80前後のおばあちゃん、人間って儚い存在なんですねえ…
[ビデオ(字幕)] 5点(2021-01-28 23:25:49)
4.  ヒトラーに屈しなかった国王 《ネタバレ》 
ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻を始めた1940年4月9日から11日までの2日間の物語がストーリーです。立憲君主国において、王が非常時に果たすべき役割とは何か?というテーマのもとに、ノルウェー王ホーコン七世の苦悩をリアルに描いています。 まず、孫たちと遊ぶ平凡なお爺ちゃんとしか見えない王の日常にちょっと驚きです。ヨーロッパとはいえ小国の部類に入るノルウェーですから、王家のありさまも庶民的です。ましてこの王はもとはと言えばデンマークの王子で、1905年のノルウェーのスウェーデンからの独立時に議会から招聘された人で生まれながらに王になる定めではなかっただけに、謙虚な姿勢は好感が持てます。この役を演じるのは現007シリーズでMr.ホワイト役のイェスパー・クリステンセンで、この王のキャラは名演です。対するドイツ大使として王との交渉に奔走するのは、『ヒトラーの贋札』で印象深かったカール・マルコヴィクス。興味深いのは、この大使がヒトラーにはもちろん逆らえないけど、何とかノルウェーに有利になるように図りたいと頑張るちょっと信念を持った人物として描いているところです。終盤の王と大使の緊迫感あふれる会見がクライマックスですけど、両者ともよい演技でした。いまや絶対的な悪であるナチス・ドイツの代表者をここまで好意的に描くとは、ノルウェーという国の柔軟な精神が感じられます。対照的かなと感じたのは「売国奴」の代名詞として辞書にまでその名を遺すクヴィスリングの扱いで、セリフでは言及されるけどとうとう画面に登場せずでした。王と王太子の関係性もかなり踏み込んで描かれています。この時点ですでに他界していた母親である王妃を、王太子が辛辣に批判するシーンもあります。ウィキペディアなどではとても好意的に記述されている英国王室から嫁いだこの王妃にも、いろいろ批判される面があったみたいです。 結局この2日間でホーコン七世はヒトラーの理不尽な要求を断固拒否して両国は正式に戦争状態になります。英仏軍も加勢して抗戦しますが、二か月後には王室は英国に亡命しノルウェーは降伏します。でも1941年に始まるバルバロッサ作戦まで、ヒトラーが侵攻した国で最も長期間抵抗したのは実はノルウェーでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-01-30 21:19:14)
5.  ヒポクラテスたち 《ネタバレ》 
すっかり下手な職人監督に成り下がってしまった大森一樹の代表作といえば、本作でしょう。まだアマチュア映画作家らしい青臭い雰囲気を持ちながらも、ベテラン俳優にも手堅く演技させることができた演出手腕はなかなかなものでした。とくに女優初挑戦の伊藤蘭があれだけ達者な演技ができるとは意外でしたね。寮の中でラジオから「微笑み返し」が流れてきたり蘭ちゃんが吸ってるタバコも「蘭」だったりと、いろいろ遊びもあります。それにしても時代を感じられるのは出演者が喫煙するシーンの多さで、病院内で医者がスパスパふかしてるのは、なんか不思議な感じすらします。 見直してみてとくに感じることは、医学生たちに不思議と感情移入できるようなキャラがいないところです。図書館や喫茶店のようなパブリックな場で患者の個人情報に関するようなことをペチャクチャおしゃべりするところなんて、はっきり言って不快です。主人公の荻野愛作くんにしたって中途半端な凡人に過ぎず、産婦人科の研修中に彼女を妊娠させるだらしなさと、みんなにばれるのが怖くて大学病院じゃなくてインチキ堕胎医に彼女を連れて行く卑怯な一面、いかにもガリ勉秀才の成れの果てという感じですね。でもこれは作劇としては悪いことではなくて、それだけリアルな人間像だということなんです。 劇中で左翼がかった精神科医の活動がちょこっと出てきますが、そこではたと思い返すことがありました。確かこの当時は、あのゴダールの名作は「きち〇いピエロ」と呼ばれていたはずなんです。このあたりから、私の大嫌いな「言葉狩り・言い換え」が始まっていたみたいです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-08-12 22:56:33)
6.  ヒトラーの忘れもの 《ネタバレ》 
当時にはすでに地雷処理用の特殊戦車が運用されていたから、何百万個の地雷を処理するならこれを使った方が効率よかったはず。デンマーク軍はそんな戦車を持っていなかったし、他国から借りてくるのはコストがかかるのでドイツ兵を使って処理させた方がもちろん安上がりだったということでしょう。でもデンマークは大戦初期にドイツに降伏しているので交戦国ではないので、彼らドイツ兵はデンマークの捕虜ではないはず。つまり米軍か英軍の捕虜を貰ってきて作業させた感じで、これは一種の奴隷使役みたいなもので、どう考えてもジュネーブ条約に違反しているんじゃないでしょうか。戦争に勝ったら何でもありと言うのが、残念ながら国際政治の現実なんです。 冒頭からの少年兵たちの地雷処理のシーンは、緊張感がピリピリ伝わってきます。でも時がたつにつれてなれと言うか緊張感が薄れてくるのが映像からも伝わって来て、あのトラックごと大爆発につながってしまいます。彼らに対峙するデンマークの軍曹の人物造形が秀逸なので、この映画に深みを与えています。普通の脚本なら少年兵と軍曹が心を通わせるようになるというヒューマニズムが強調されるところですが、愛犬が爆死して雷に打たれたように軍曹の態度が一変するところには、いろいろ考えさせられます。「たとえ敵兵とはいえ、こいつ人間より犬の方が大事なのかよ」とも感じてしまいますが、この心情は犬を飼っている人には痛切に伝わるんじゃないでしょうか。戦争で心を閉ざしてしまった孤独な軍曹の、人間としての成長がこの映画の隠れた主題なのかもしれません。いい映画だったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-01-25 23:44:52)
7.  ビバリーヒルズ・コップ 《ネタバレ》 
エディー・マーフィーと言えばアクセル・フォーリー刑事、ハリウッド俳優の中でもこれほど自身の個性にピッタリの当たり役を得た人は他にいないんじゃないでしょうか。あまりにインパクトが強すぎて、彼はその後のキャリアで苦労することになるんですけど、それはまた別のお話し。なんでこのお話がこんなにウケたのかって考えると、デトロイトとビバリーヒルズという同じアメリカの大都会でありながらも天と地ほども違う国内格差を巧みに盛り込んだ脚本プロットに、そのカギがあったように思います。特に80年代は、凋落が始まったデトロイトとバブル景気に沸くLAを対比するという視点が、新鮮だったと思います。でも製作者たちも、まさかデトロイトが現在の様な悲惨な状況にまで追い込まれるとは予想以上だったでしょう。 とにかくこのシリーズは、マーフィーのマシンガントークを愉しむのが正解で、英語のヒアリングができなくてもその可笑しさが伝わるんですから大したものです。マーフィーを囲む面々もみんな生き生きとキャラが立っていて、悪役キャラが多いロニ―・コックスも上司と現場の板挟みで苦労する真面目な中間管理職を好演してます。ちなみにデトロイトのフォーリーの上司トッド警部を演じている人は、実は現職のデトロイトの警察官でロケハンでスカウトされたんだそうです。 そしてなんといっても素晴らしいのは音楽センスで、イーグルスのグレン・フライが参加しているという贅沢さ!“フォーリーのテーマ”なんかは耳にしたことがない人は珍しいぐらいで、私は“エディ・マーフィのテーマ”とひそかに名付けています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-31 23:09:42)
8.  羊たちの沈黙 《ネタバレ》 
ヒッチコックの『サイコ』を完全に無視したハリウッドが遂に降参してオスカーを与えた、サイコ・キラー映画の完成形。このジャンルでは無数のフォロワーが挑戦を重ねているけど、いまだに本作を凌駕する作品は現れていません。またこのお話はクラリスとレクター博士の異常なラブストーリーで、上司のクロフォードを交えた三角関係の物語でもあります。 ジョディ・フォスターにとってもこの映画に出演してレクター博士と向き合うことは過酷な体験だったそうで、続編の『ハンニバル』には降板してしまいました。そうなると、映画史上もっとも印象に残るサイコ・キラーを演じながら、続編でも脳みそを嬉々として喰っちゃうアンソニー・ホプキンスの方が役者としての器が大きいのか、はたまたそういう素質を持っている人なんでしょうか。と言いたくなるくらい、レクター博士はまさに“人間エイリアン・モンスター”と呼ぶにふさわしい存在でした。なんせ自分に関わったり通り道にいただけみたいな人でも、クラリス以外は足元にいるアリを踏み潰すみたいに殺しまくるんですから。確かにこれでは本筋のサイコ・キラーのバッファロー・ビルの影が薄くなってしまいます、そしてここがこの映画の微妙なところなんですね。まあビルは単なる狂言回しだと思うしかないです。 監督のジョナサン・デミは言うまでもなくなくロジャー・コーマン一派ですが、この映画では奇をてらわずオーソドックスな撮り方でなかなかの手腕を見せてくれます。そりゃ主役ふたりがあれだけの演技を見せてくれれば、傑作になるってもんですよ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-26 21:15:01)(良:2票)
9.  ヒトラー暗殺、13分の誤算 《ネタバレ》 
『ヒトラー最期の12日間』を撮ったオリヴァー・ヒルシュビーゲルが、ヒトラー暗殺未遂事件である“ビュルガーブロイケラー爆破事件”にスポットをあてて再びヒトラーものに挑戦です、もっともヒトラー自身はほんの一瞬しか登場しませんけど。 田舎の工員だったゲオルク・エルザ―という男がヒトラーが毎年演説するミュンヘンのビヤホールに爆弾を仕掛けますが、見事爆破には成功したが13分早くヒトラーが退出してしまったために暗殺には失敗した事件です。冒頭でエルザ―はあっさり逮捕されてしまい事件をクライマックスにしての緊迫感をあおるようなストーリーテリングではなく、ゲシュタポがエルザーを取り調べる過程がこの映画のメイン・プロットということになります。エルザ―は割とあっさり自白してどうやって事件を仕組んだかを回想するわけですが、実は彼の単独犯行でした。史実通りなんですけど、確かにヒトラーまでもが背後の陰謀組織の存在を疑ったのは納得できるほど、この男の行動は不思議です。共産党シンパなのに敬虔なクリスチャンというだけでも矛盾していますが、人間の心の中なんてそう簡単に割り切れるものじゃないのも確かでしょう。その辺りは余り突っ込んだ描き方をしていないところがあり、自分としてはちょっと不満です。この映画の脚本の肝は、取り調べるゲシュタポ高官のアルトゥール・ネーベとエルザ―のやり取りにあるのは間違いないでしょう。このネーベという人は、映画のラストでもふれられている様になんと1944年のヒトラー暗殺未遂事件に関与して処刑されているんです。もっと驚くことはエルザ―自身も終戦1か月前までざっと6年近く処刑されなかったということでしょう。こうなるとヒトラーの考えることですから謎としか言いようがありません、「俺を殺そうとしたエルザ―が死ぬときは、自分も死ぬときだ」とでも思っていたのかな? 最近ドイツではエルザ―の記念切手が発行されたりして英雄扱いなんだそうですが、なんか「ドイツ人よ、ちょっとおかしくないか?」って気がします。結局彼が仕掛けた爆弾ではナチ党員とはいえ普通の人が死んだだけなんですから、こうなるとテロリストと英雄の違いとはいったいなんなんだろうと悩んでしまいます。彼を英雄視するのは、民主的な選挙でナチスに政権を取らせてヒトラーを国民投票で総統にしてしまったドイツ人の後ろめたさの現れかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-01-24 21:49:28)
10.  110番街交差点 《ネタバレ》 
なんてたって、タランティーノが『ジャッキー・ブラウン』で使ったボビー・ウーマックが歌う主題歌がメチャカッコよい。もっとも流れたのはタイトル・ロールだけで、タラの方が使い方としてはるかにセンスが良いのは認めざるを得ないでしょう。 この全編にみなぎる緊迫感はただもんじゃありません。マフィアとハーレムを仕切る黒人ギャングそして警察がマフィアのカネを強奪した三人組を追っての三つもどえを繰り広げるスピーディなストーリー。冒頭とラストのシークエンスを除いたほとんどのシーンが夜間撮影なのも雰囲気が出ています。もっとも当時の感度の低いフィルムで野外ロケ撮影ですから、画面が暗すぎて観にくいというのは難点ですけど。老刑事と大学出の若い黒人刑事という警察側の図式はもろ『夜の大捜査線』ですけど、アンソニー・クインの老刑事がハーレム・ギャングから賄賂をもらっていたり、ヤフェット・コット―のエリート刑事に黒人ギャングのボスが賄賂で餌付けを仕掛けたりと、はるかに人間模様がリアルです。アンソニー・フランシオサのイカレたマフィア幹部も味がありましたね。ラストの締め方の感じでは、エリート黒人刑事がこれからハーレム・ギャングとズブズブな関係になってゆくことを暗示しているみたいです。 ブラックスプロイテーション映画というとおバカ映画のイメージがありますけど、本作はそんなジャンルを飛び越した隠れた傑作と呼ぶにふさわしいと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-01-06 23:34:22)
11.  ビリー・ザ・キッド/21才の生涯 《ネタバレ》 
ビリー・ザ・キッドがパット・ギャレットに射殺されるまでの短期間の物語なんですけど、まるで何も起こっていないかのような淡々とした語り口がもう渋すぎです。冒頭のパット・ギャレット射殺シーンをはじめ銃撃戦の描写は、ペキンパーお得意のスローモーションを駆使して迫力は満点です。キッドとギャレットの追跡劇をそれぞれの視点で平行して描く構成も、ペキンパーの円熟した技量の冴えを感じさせてくれます。とくにジェームズ・コバーンのギャレットが、渋さが爆発でもうカッコよいというしか言葉がありません。この人は本当に西部劇では輝く俳優だとしみじみ思いました。いま話題のボブ・ディランですが、俳優としては素人の彼に合わせたキャラクターなので、違和感なく物語に溶け込んでいます。脇を固める助演陣も、いつものペキンパー組に加えて何気に渋くて豪華な面々がそろっています。 これぞペキンパー西部劇の到達点で、その詩情はジョン・フォードを超えたといっても過言じゃないでしょう。
[ビデオ(字幕)] 9点(2016-12-19 21:28:24)
12.  ピーター・グリーナウェイ 81/2の女たち 《ネタバレ》 
この監督は、自分の撮っている映画の前には観客というお客様がいるんだぞ、ということを微塵も考えないタイプの映画作家なんです。まあそういうところは画家に似ていると言えなくもないです。そういえば映画の前半で主人公のフィリップがモンドリアンのただの幾何学模様にしか見えない有名な絵に講釈を垂れるシーンもありまして、グリナウエイもそこらへんは自覚しているのじゃないですか(笑)。 大富豪が妻の死を忘れるために世界の美女を集めてはハレムを作る話と予備知識を持って観てしまうと、ものの見事にノック・アウトされてしまいます。そのために集めた女優も中にはそこそこにネーム・ヴァリューがある人もいますが、ほとんど脱ぎもないというのはちょっと致命的。お話はもちろんわけが分からない代物なんですから、せめてそれぐらいのサービスはして欲しかったな。あとこの監督は日本びいきだということでやたら日本文化(というかなぜかパチンコ屋)がモチーフにされてますけど、けっきょくは日本という国は雨が降るみたいにしょっちゅう地震がおきるところだということに落ち着きそうです。これってもちろんジョークですよね…
[ビデオ(字幕)] 3点(2016-11-06 22:50:46)
13.  ピエロがお前を嘲笑う 《ネタバレ》 
この程度で“驚愕のラスト”なんてコピーはほんと使ってほしくないですよ。誰が観たってこれは『ファイトクラブ』のハッカー版で、とくに終盤の第一の落ちまでの持って行き方は『ファイトクラブ』臭がとっても濃厚です。あそこで終わらせちゃったら“驚愕のラスト”にならないので無理やりに第二の落ちを付けましたって感じがプンプンします。でも観てる方としては「へー、そうなんだ」程度の感想しかわいてこないという現実を真摯に受け止めるべきでしょう。 主役の坊や以外の三人がまたちっともハッカーらしくないというのは困りますねえ。地下鉄の車輌内にたむろする仮面の連中でサイバー空間を表現するというのはこの映画で唯一の褒めどころかもしれませんが、別に彼らがハッカー集団じゃなくても良くね?、という疑問は消えないんですよね。ストーリー構成もけっこう雑というか無理があり、落ちていた入館証を使ってユーロポールに侵入というところは思わず絶句させられました。 ハリウッドでリメイクということらしいですが、よっぽど彼の地もネタ切れみたいですね。でも腕の良い脚本家と監督が組めば、ひょっとしたら傑作になる素質はあるのかもしれません(そんなわけないか)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2016-10-04 21:54:19)
14.  百円の恋 《ネタバレ》 
予備知識なくこの映画を観たら、最初はこのヒロインらしき女がボクサーになるなんておそらく想像だにできなかったでしょう。この映画ではとても感情移入できないどうしようもない登場人物ばかり出てきて、見続けるのがイヤになりそうなぐらい。そしてあの100円ショップの店、とても商売が成り立つとは到底思えないけど、店内に引っ切り無しに流れているお店のテーマソングだけは妙に頭に残ります。前半は安藤サクラのぶよぶよの肉体に合わせた様なグダグダな人間模様を、音楽も使わないでダラダラと見せられている様な感じが強烈。ところが男に逃げられボクシングに打ち込みだしてどんどん身体がスリムになってくると、それに合わせるように撮り方も引き締まって来て効果的に音楽も使われてきます。これはなかなかの手腕を持っている監督だと思います。もちろん安藤サクラあってのこの映画なわけですけど、それにしてもデ・ニーロばりの肉体改造と機敏なボクサーぶりは凄いの一言しかありません。会場に向かって通路を進むときの彼女のあの表情、こんな演技が出来るのは邦画界では彼女しかいません。「安藤サクラの顔つきは、ほんとに人を殺しかねない表情だ」という本作の映画評を見た記憶がありますが、まさにその通りです。 唯一残念だったのは、新井浩文は良いとしても両親や妹まで試合を観に来させたところで、これで一気にこの映画が持っているクールさが減じられてしまった気がします。そこは1点マイナスとさせていただきます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-26 23:41:37)
15.  ヒッチコック 《ネタバレ》 
突然モノクロ撮影に戻ったりガチなサイコ・キラーを初めてハリウッド映画に登場させたり、それまでロマンチック・サスペンスの王道を歩んでいたヒッチコックにしては『サイコ』という映画は異質極まりない問題作だったんですね。その辺りの事情を上手く取りこんだバックステージものとして観れば、十分に愉しめると思います。脚本は頑張っているとは思いますけど、エド・ゲインをヒッチコックのダーク・ハーフみたいにして画面に登場させたのは、脚本家の狙いは判るんですけどあんまり上手くいったとは思えんですねえ。この手法を採用するなら、ひたすらヒッチコックの心の闇を追求するシリアス路線でゆくのが正解でしょう。でもこの映画は『サイコ』の撮影エピソードをネタにしたコメディ映画の要素も持っていて、シリアス部分とのさじ加減が中途半端になっているのが辛いところです。 アンソニー・ホプキンスのヒッチコックは悪いけど似ているとは思えなかったし、単なるヒッチコックのパロディみたいな印象ですね。ヘレン・ミレンやスカ・ヨハはなかなか頑張っていたとは思いますけど、あの終わり方じゃあ熟年夫婦の危機を出汁にしたラブコメみたいな感じです。アンソニー・パーキンス役の俳優は実物の雰囲気が良く出ていました、もっともこの俳優はイーライ・ロスだとずっと思ってました、わたくし(笑)
[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-02-08 20:52:11)
16.  ピラニア リターンズ 《ネタバレ》 
“バカがおバカ映画を撮ると悲惨なことになる”という定説を見事に実証してくれました。前作の監督アレクサンドル・アジャのおバカ・センスには足元にも及びません、彼が巨匠に思えたぐらいです。前作に比べるとグロなパワーはダウンしてしまったので、エロのネタで挽回しようとしたみたいですが単なる下品な下ネタだけと言う感じです。アソコからピラニアが飛び出してくるというのは、どう考えてもその理屈が判りません。デヴィッド・ハッセルホフのネタになると、自分はこの俳優の出ていたTVシリーズのことなんか知識皆無なので全然面白くもない。前作から登場のクリストファー・ロイドとヴィング・レイムスだけは少しクスッとさせられました。でも理解不能なのがラストの生意気小僧を襲う惨劇で、さすがにこれは監督の趣味を疑いたくなりました。そしてやっぱり出てきました駄作の証明・エンド・タイトルに流れるNG集、これがまた長いんだ10分以上あります。正味の上映時間が70分少々ですからねえ、こんなに長いNG集は珍しいんじゃないですか。
[DVD(字幕)] 3点(2015-07-17 23:31:13)
17.  ビッグ・アメリカン 《ネタバレ》 
“ロバート・アルトマンがお送りする超大作!”って『ナッシュビル』みたいなおふざけの前口上が開幕早々流されます。でもポール・ニューマンが主演でバート・ランカスターも出ているなんて、カメオ出演多数の『プレタポルテ』や『ザ・プレイヤー』を除くとアルトマン映画史上もっとも格の高いスターが出演しているというのも確かです。西部劇の名作に多々出演している二人を起用しているからと言っても、そこはアルトマンの事ですから普通のウェスタンを撮るわけがありません。しかし、脂の乗り切った時期だけあってバッファロー・ビルのポール・ニューマンと言ったら、もう頭がクラクラするぐらいのカッコよさです。 アルトマンのことですから、ワイルド・ウェスト・ショーをモチーフにしてアメリカの建国神話を揶揄するという感じの映画だろうと想像して観ましたが、なんかそこら辺が中途半端で微妙な脚本ですよね。バート・ランカスターも狂言まわし的な役割かと思えばそうでもなく、この映画にはあんまし必要じゃなかったんじゃないでしょうか。けっきょくバッファロー・ビルとシッティング・ブルの対立というのがストーリーの軸となるわけですが、ブルの亡霊が現れるシークエンスでこの映画の主題を観客に訴えかけなければいけないところなのに、アルトマンはそこが全然盛り上がらないというヘマを犯してしまっているのが残念です。
[DVD(字幕)] 5点(2014-11-26 18:10:13)
18.  ビバ!マリア 《ネタバレ》 
全世界の若者が「造反有理」「革命無罪」と叫んでいた頃らしさに満ち溢れた革命ファンタジー。そこにジャンヌ・モローとブリジッド・バルドーというおフランスの二大名花を引っ張ってきたというところが、この映画の最大の功績でしょう。モローとバルドーと言うと同じセクシー系ながらも対照的なキャラなので、かえってそのコンビネーションの妙が愉しめます。やはりバルドーはこの頃が美の全盛期で、もう熟しきった果実という感じです。それに引き換えモローにはかなりおばさん風味が隠しきれなくなっていて、それまでジャンヌ・モローの美を最大限に引き出してきたルイ・マルもさすがにお手上げということでしょうね。その迷いはラブコメなのかアクションなのかどっち着かずの脚本にも現れていて、革命劇の成り行きもあまりインパクトを感じさせられません。もっともゴダールあたりに言わせればマルなんて思想性のないノンポリみたいなものなんで、単純な革命お伽噺と割り切った方が良いでしょう。 全篇にエスプリの効いた小ネタのギャグで繋いでいて、そこら辺は『地下鉄のザジ』を彷彿とさせてくれます。でもさすがに爆弾で首を吹き飛ばされてしまう神父の最期、ちょっとやり過ぎの感があります。
[ビデオ(字幕)] 5点(2014-07-08 20:37:01)(良:1票)
19.  ひばりが丘の対決 《ネタバレ》 
怪談映画のマエストロ中川信夫が撮った、ちょっと変なテイストの映画です。いちおうアクションというジャンルになるとは思うんですけど、なんかヘンなんですよね。 『カルメン故郷に帰る』をパクった様なプロットで、北海道の山奥が舞台という設定なんですが、たしかに山奥だけどどうも北海道らしくない風景で、本州のどこかでロケしている事は間違いない。新東宝の予算で北海道ロケなぞ出来るわけないでしょ(笑)。この“カルメン”が久保菜穂子で、この山奥が故郷というわけじゃなく失踪した兄を捜しに浅草からはるばるやって来ました。職業はもちろんストリッパーです。たしかにこの映画の久保菜穂子はすこぶるチャーミングでして、彼女の新東宝でのフィルモグラフィの中でもっとも輝いているキャラだと思います。彼女が歌い踊るシーンが2つありますが、湖畔で見せてくれるダンスは♪アンパーヌプリヌプリコ、エッパーウ♪なんて何語か判らん歌詞が妙に頭に残りました。 でもカップルは馬車で駅と村を往復する仕事に命をかける高島忠夫と郵便局長の娘矢代京子の方なんです、久保菜穂子は引き立てキャラなのに彼女の方が目立っちゃってます。高島忠夫はちょっとオツムが弱いのかと思うほど茫洋としたキャラで、なんかこの人の容貌にピッタリの役です。 三人組の脱獄囚が後半に登場、こいつら村の家に押し入って強盗殺人、おまけに矢代京子を人質にして逃走。そしてクライマックス、霧が立ち込める峠で三人組と高島忠夫の対決となるわけですが、ここで見せる高島のアクションが鈍重極まりないのはご愛敬です。 どうも『ひばりが丘』というのはこの峠の荒れ地のことみたいなんですが、劇中そんな地名はまったく出てきません。もちろん、西武新宿線の駅がある街でもありません。まあこの題名を見て、まさか北海道の山奥が舞台の映画だと思う人は誰もいないでしょうけど(笑)。 中川信夫の現代劇映画は、どのジャンルでも共通してなんかヘンなテイストを持っているんですよ。まあその頂点にあたるのが『地獄』なんでしょうけど。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2014-06-26 23:45:41)
20.  ひなぎく 《ネタバレ》 
まるでゴダールの脚本をソフィア・コッポラが撮った様な映画、と言うのがこの映画の説明としては相応しいかも。とくにストーリーらしきものはなく、強いて言えば“不思議ちゃん援交姉妹のオヤジ狩りの日々”とでも申しましょうか。とても40年以上むかしの映画とは思えないぶっ飛んだ映像と不思議ちゃん姉妹の強烈なキャラ、そして鮮やかな色彩感覚はもう奇跡としか言いようが有りません。「映画の表現とはとことん自由なんだな」とつくづく思いました。AKB48の『ヘビーローテーション』のPVが全篇本作へのオマージュになっていると言うのは一部では有名な話だそうです(監督は蜷川実花)。
[ビデオ(字幕)] 8点(2014-01-03 10:37:46)
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