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1.  不能犯 《ネタバレ》 
そもそも自分は手を汚したくないので他者に殺してもらおう、という了見自体が「純粋な殺意」とは呼べない気がするのだが。 そこらへんが引っ掛かり続けるとドラマに入りづらい。 そのかわり、沢尻エリカと松坂桃李に関する設定を視覚化するため、白光と陰影を配分して二人を対称化させるレイアウトが為されており、 余計な装飾を省いてすっきりしたモノトーン系の背景と衣装によって二人の芝居を引き立てるなどよく工夫している。  ラストの階段も、上下と左右のベクトルでの対称化という訳だ。
[映画館(邦画)] 5点(2018-02-07 23:01:51)
2.  覆面系ノイズ 《ネタバレ》 
画面に超どアップとなって息を荒げるヒロインの顔が連発される度に辟易するのだが、 一方で江の島の海や鉄道をバックにした情景が穏やかな波のリズムで対になるのが救いだ。  前半でピアノを弾く志尊淳のショットが、運指と表情を徹底して別撮りするので実演の努力をまったくしていないだろう ことが明白でがっかりするのだが、これがギターに代ると本人の指使いで見せて名誉挽回してくれるのもいい。  クライマックスのマッチポンプ的な焦らしは逆効果。映画の要請として、ヒロインを走らせる為というのは解るにしても、 積極的に遅刻するヒロインが愚鈍にみえてしまう。
[映画館(邦画)] 4点(2017-12-03 09:14:21)
3.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 
恐らく膨大な美術ボードが描かれたのだろう。 その世界観の提示に汲々としている感じだ。本当に160分も必要だったのだろうか。  白い濃霧や雪、黒い闇や波濤、雨に煙って視界不良の世界が奥行きをつくりだすが、 そこに環境音なのかBGMなのか、紛らわしい音響が虚仮脅しのように響くのも仕舞いには飽きる。  前作同様に碧い瞳のクロースアップで始まるオープニングだが、眼球や見ることのモチーフへのこだわりも 相対的に非常に弱く、単なるオマージュに過ぎない。 その冒頭の視線は、ヴァンゲリスのメロディと共にラストで横たわるライアン・ゴズリングの主観ショットにも繋がる よう、工夫するのが妥当かと思うのだが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2017-10-27 23:31:04)
4.  不屈の男 アンブロークン 《ネタバレ》 
イタリア移民としての被差別、走ることとの出会い、そしてオリンピック走者としての活躍が回想処理によってまずは語られる。 ナショナリスティックな曇りを取り払い、映画的な主題に立ち返れば、走ることに対する抑圧と解放のドラマということになるか。  丹念に描写された前半の海上漂流は、踏むべき地面の無いゴムボート上では立つことも歩くことも出来ない、そういう意味での責苦でもある。 収容所では足・顔を殴打され、幾度も地面に伏すこととり、直江津では重い木材を担がされ、ひたすら直立させられることとなる。 単純化するなら、走ることで自己実現してきた者が走るという行為を奪われ、それを取り戻すまでのドラマ、となろう。  それだけに、エピローグでにこやかに走るザンぺリ-ニ氏の姿は感動的である。  ロジャー・ディーキンスの撮影は、実話の映画化といこともあって合理的な光源を基にした自然主義的なルックだ。 爆撃機のキャノピーの中を一瞬横切る太陽の入射光などの細部が画面にリアリズムを与えている。 直江津の石炭採掘場の見事な美術を舞台に展開されるのは、収容所長との視線の闘いでもある。 ここに至って、写実的な照明はより強度を帯び、二人は順光と逆光で対照化される。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-29 04:52:30)
5.  ファインディング・ドリー 《ネタバレ》 
ルイ・アームストロングが流れ出したスローモーションシーンの何とはない既視感。すぐには浮かばなかったが、 矢口史靖『スイングガールズ』の猪シーンだと思い出した。 移動に不自由を課された主人公たちが様々に飛ぶこと(上昇と落下)をモチーフに冒険を繰り広げるが、 そのクライマックスとなる大ジャンプを例の曲が情感とヒューモア豊かに彩っている。  トラックを一旦は止めたものの再びドアを閉ざされ移送される。今度こそ万事休すかと思われた瞬間、目に入るのは天井の非常ハッチである。 クライマックスの水平運動に慣らされた目に垂直軸のベクトルを不意に導入させることで驚きを創出する。 『トイ・ストーリー』から一貫した、軸転換によるアクションと作劇のスタイルだ。  ドリーにとって大切なのは、目の前に広がる光景すべてに、全方位的にまずは目を凝らして「見る」こと。 それが下方の貝殻の発見につながり、ピクサー的かつアメリカ映画的な「家に帰ること」に繋がっている。
[映画館(吹替)] 8点(2016-08-07 08:26:19)
6.  フィフス・ウェイブ 《ネタバレ》 
大状況の収拾を放棄するのならば、いっその事その中でヒロインが熊のヌイグルミを弟に届けるドラマにもっと特化すれば良かったのに。 かなり単純な謎解きに加え、特に肝心なクライマックスとなるべき基地潜入後の大雑把さはかなりキツい。 いくらでも危機状況とサスペンスを創り出せる状況にありながら、それすら放棄しているように見える。  冒頭シーンから、若者が銃を持つこと・撃つこと・撃たれることの重みにも拘って描写しているのがわかるが、 ならばそのテーマについてもヒロインの行動を以て何等かの映画的回答をして欲しいとも思う。 単にヒロインの大腿を見せる為だけのマクガフィンでは駄目でしょう。  徴兵制の批評も、やるならもっと痛烈にやって欲しい。  さすがに食傷気味となってきた災害によるカタストロフィとデストピアのビジュアル・エフェクトだが、 津波体験者の方にとってはトラウマを蘇らせる映像かもしれない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-04-24 21:49:37)
7.  ブリッジ・オブ・スパイ 《ネタバレ》 
マーク・ライランスの自画像、鏡像、本人の三身が一画面内に映し出される冒頭のショット。 それは二対一の交換のドラマ、国を跨ぐスパイのアイデンティティのメタファーでもあろうか。 鏡への反射の演出は随所にみられ、様々に考察の余地がある。  裁判劇を含む饒舌な脚本でありながら、冒頭で示されるそのスパイ活動の描写は尾行劇とレンズを凝視する事という視覚の駆使であり、 そこに画面で語るスピルバーグの本領が発揮されている。  ヤヌス・カミンスキーは、凍てつくヨーロッパと、温かみのあるニューヨークのルックのコントラストをよく際立たせ、 クライマックスの橋は越境という決定的局面を光と共に象徴的に浮かび上がらせている。  本作での光は、米国パイロットを幾度も苛み、銃弾の撃ち込まれたトム・ハンクス家族を晒し、橋の向こう側に輝くライトも 必ずしも希望を象徴していない。蒼白い光芒の下、シルエットと化して消えゆくそれぞれのスパイと、立ち尽くすトム・ハンクスの 暗示的なロングショットが切なくも美しい。  マーク・ライランスの寡黙な芝居が素晴らしい一方、眉間に皺を寄せるばかりのトム・ハンクスの表情は少々単調か。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-01-11 21:21:24)
8.  フランス組曲 《ネタバレ》 
ドイツ占領下のフランス。貞淑なヒロインと紳士的なドイツ軍士官のスリリングな視線の劇。 特に序盤のシチュエーションはオフからの足音等の音響と共に、メルヴィルの『海の沈黙』のような静かな緊張感を湛えている。  半開きのドアや鏡面等のフレーミングによって、ヒロインのミシェル・ウィリアムズは小さく切り取られているが、 ドラマがそこから大きくうねるのに伴い、義母役:クリスティン・スコット・トーマスと共に彼女もまた枠を越えて大きく変貌していく。  萎縮する女から、恋を経て雄々しく前進する女へ。ミシェル・ウィリアムズがひときわ魅力的だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-01-10 23:53:06)
9.  フラワーズ・オブ・シャンハイ 《ネタバレ》 
約十数人が集って談笑している宴席。テーブル上のランプと共にその反射を受けて食器類も艶やかに光を放っている。 そのカメラ位置でフレーム内に収まるのは四~五人であり、後景を動く女性たちの動きや話し手の移り変わりに応じてカメラは左に右にと揺蕩う。 その会食シーンでは脚本もなく実際に俳優に酒を飲ませながら撮ったというから、即興の芝居に合わせての臨機応変のカメラワークでもあろう。 その動きは緩やかで、発話者が必ずしも画面内にあるとは限らない。そこで画面には(フレーム外への)遠心的な力が呼び込まれる。  いわゆる、静的・耽美的・審美的な映像を狙うなら、もう一段カメラを引いてフィックスで撮ればよろしいが、 それは単に絵画的な求心性へと向かうだろう。  だから剣戟と屋外ロケーションと風の主題を持つ『黒衣の刺客』が動的で、こちらが静的な映像主義だとは決して云えまい。  舞台を屋内に限定して外光と風を封印し、椅子とテーブルで俳優の動きを制限し、映画のショットを四十弱に制限する。 その自ら課した制約は『百年恋歌』第二話ではサイレントにまで達し、『黒衣の刺客』では画面を薄絹で幾重にも遮りもする。  その不自由の中から、世界の深まり・拡がりが見えてくる。
[DVD(字幕)] 8点(2015-10-13 23:54:19)
10.  夫婦フーフー日記 《ネタバレ》 
『婚前特急』が悪くなかったので観てみたが、開始10分くらいで出たくなる ひどい映画だった。  がさつで可愛げのない永作博美のキャラクターはそれが美点に転化することはなく、 最後まで情が移ることがないのは撮影の巧拙の問題だけではない。 ハンバーガーを頬張る表情に何やら過剰に思い入れているようだが、 作り手の一部だけの自己満足のようにみえる。 はっきり云って、どうでもいい。  佐々木蔵之助に号泣芝居をさせれば、もらい泣きでも頂戴できると目論んだか。 はっきり云って、下品である。  シックス・センスがどうとか、固有名詞を羅列したボケ・ツッコミの 対話もことごとくつまらない上に、幽霊的存在の表象にもまるで工夫が みられない。 現在の二人が過去の場に立ち会うだの、時制弄りだの、 手垢のついた設定は無意味で退屈の極みである。  運動論的に云えば、看病や仕事や育児や執筆で悪戦苦闘する様を具体的に描写するのが 映画化の意義だろうに、どれもこれも中途半端で、 特に子供に関しては育児放棄の印象しかない。  移動は高速バスに揺られているだけ。 最後にとりあえず少しだけ走らせてみました、というのがまた生ぬるい。  結局、45分のテレビで済むオハナシに過ぎない。
[映画館(邦画)] 2点(2015-05-31 21:30:07)
11.  ブラックハット
『ラスト・オブ・モヒカン』のオーディオコメンタリーでマイケル・マン監督が 披露する時代考証の知識には圧倒される。 『コラテラル』のコメンタリーで雄弁に語るキャラクター設定の緻密さにもまた 感心させられる。 この作品についても、ハッキングに関する綿密で膨大なリサーチが為されたはずだろうし、 主役脇役問わず各人物の背景や生い立ちまで詳細に設定されていることだろう。 それらはこれ見よがしにひけらかされることなく、 各人なりの明確な原理と裏付け・信念が、即物的な行動のみの描写となって 画面に載せられていく。  いきなり幼少時代に遡って主役の人物背景を説明し始まった『アメリカン・スナイパー』とは 大きな違いだ。  クリス・ヘムズワースが、『ラッシュ』に続き、男の色気があっていい。 うなじや二の腕を映し出しながらタン・ウェイにいまいち官能性が薄いのが マイケル・マンたる所以か。それとも機動性・高解像度と引換えに光量不足を露呈してしまう デジタルカメラの弱みゆえか。  夜明けの航空機内、復讐に向かう二人は抱き合い、カメラと共に共振する。 ここからラストに至るまで、さらなる台詞の削ぎ落としは見事の一語。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2015-05-29 23:54:55)
12.  フランシス・ハ
パンフレットのモノクロスチル写真でみるグレタ・ガーウィグはさして魅力的には 見えないのだが、ひとたびスクリーンの中で活動し出すとその仕草が、 表情が、不器用なカッコ悪さまで引っくるめて生き生きした魅力を発散し始める。  ルームメイトと戯れあい、ゴロ寝し、街路を飛び跳ね、駆ける。  ありがちな大仰な表情芝居がまるでなく、全身でフランシスを生きる 彼女は実にしなやかで愛らしい。  文句なしに、映画のヒロインだ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2015-04-15 23:51:32)
13.  フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 《ネタバレ》 
男には実はアブノーマルな性癖が。というお話なのだが、 交際するか、するまいかのレベルで終始するので生温い。  おまけに勿体ぶった契約交渉を絡めるとか、ただただ鬱陶しい。  例えば直近の例として、黒沢清の『贖罪』第一話がサスペンスフルで 情動的なのは、ヒロインがそのような相手との結婚を選択し、 もはや後戻りが出来ない状況に身を置いてしまっているからである。  そうした切羽詰った状況の中でこそ引き立つだろう愛憎と葛藤が こちらにはまるで希薄だ。  高層階シーンや航空シーンと共に無駄に浮き上がり、舞い上がっている ただ甘ったるいだけの作品である。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 3点(2015-04-12 23:58:22)
14.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
つまるところ、ローガン・ラーマンのビルドゥングス・ロマンである。  聖書談義を採り入れ、良心的兵役拒否者や非戦闘員らを点描し、 砲弾や銃弾に弾き飛ばされる人体の即物的な描写へ執拗に拘りながら、 劇伴音楽からしても基調となるのは悲愴美やヒロイズムといったもの であり、ドラマもそこに収斂する。  単に仲が良いというだけではない危うさを秘めたチーム内の 一筋縄ではいかない人物関係描写や、 汚物・曇天・泥濘・血糊といった不浄の描写がこの監督の持ち味なのだろうことは 分かった。  会食シーンでの時計音、見張りシーンでの草木のざわめき、 次第に高まる砲弾の飛来音など、 静かな場面で緊張を演出する音使いはいい。 
[映画館(字幕)] 5点(2014-12-07 11:35:54)
15.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 
携帯画面の文字情報と、それを読むリーアム・ニーソンのリアクションを 同じ画面内に乗せながら物語を畳み掛けていく。  観客は双方に視線を配りながらの視聴を要求されるが、それぞれのショットを 定番的に分断させるよりも断然テンポとリズムがいい。 その意味でも「NON STOP」である。  犯人とメール交渉をしつつ、相手の反応を機内の複数の監視カメラを通して 女性二人にチェックさせていく。 そこに同時進行で機外との通話が重なる、といった具合に複雑な シチェーションを的確に処理しながらテンションを上げていく手際がいい。  主人公を陥れていくマスメディア、謎解きに一役買う携帯動画メディア。 各種映像媒体の提示も現在的で面白い。  閉所での格闘アクションは相変わらず煩雑でぶつ切りなのが玉に瑕だが。  割れた鏡面に歪む主人公の像などは、もはや監督のトレードマークといえる。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-09-11 23:59:05)
16.  プリースト判事
ここでのウィル・ロジャースは特に判事の業務を行うわけでもない。 トム・ブラウンとアニタ・ブラウンの仲を取り持とうと、 ゴルフボールを飛ばし、茂みの陰で一人芝居をし、飴を伸ばしと、 ひたすら具体的に行動する。二人を物理的に近づけるために。  その周囲を、ステッピン・フォチェットら味のある黒人俳優が 音楽的なイントネーションで語らい、歌う。  さらには、ヤギやアヒルや鳥たちも視覚と聴覚を賑わかし、 大合唱が大団円を盛り上げる。  そんな飄々としたウィル・ロジャースが暗闇の部屋にランプを灯すと、壁に 飾ってあった妻と息子らしき肖像写真が明りの中に浮かび上がり、 それを静かに見つめる彼の顔が写真の家族と重なり合う。  こうした何気ない静かなひとときのうちに、 彼が若い2人のために世話を焼く心中までが 滲み出てくるようで、愛おしい。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-09-05 17:06:21)
17.  ファインド・アウト
派手に車体をぶつけるばかりが能ではない、というカーチェイスがいい。 車種を幾度も変えつつ、 追走するパトカーの目眩めくライトの光芒がテンポの良いカッティングの中で 美しく映えて、車体の接触など一度も無いことが逆に一層の緊迫感を煽る。  運転座席での携帯通話という図の繰り返しは単調になりがちだが、 通話しているアマンダ・サイフリッドの背後の窓ガラスに意識的に 映り込んでいる雨滴、緩やかに流れていく街燈の光やマジックアワーの明かり、 そして森の闇が画面の動的なアクセントとして機能している。  「Just Watch Me」と懐柔を拒否し、「I lied」と何の躊躇もなく マッチの火を洞穴に投げ込み復讐を果たすヒロインの清々しいまでの豪胆。 全編に一貫した、一切躊躇のない無頼派の行動が何より魅力だ。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2013-10-16 01:04:20)
18.  ファウスト(2011) 《ネタバレ》 
つきまとい、つきまとわれ、顔を接さんばかりに寄せ合い、問答する登場人物たち。 スタンダードサイズの画面の中、歪曲のエフェクトと共に その過剰なまでに詰まった人物間の距離が息詰まるような緊迫感を醸す。  猥雑かつ殺伐としたイメージ群の中、 マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)の清楚さが文字通り輝く。  教会内のシーンの厳かな光。 ファウスト(ヨハネス・ツァイラー)に真相を問わんとする彼女の 複雑で繊細な表情を包む光芒。そして雷光が劇的だ。  湖畔に一人佇む彼女がファウストを振り返る、その一瞬の表情の印象深さ。  そのまま二人がグリーンの湖中へと沈んでゆく、その静かな波紋の広がりの清冽。  ラストの峻厳なロケーションもまた素晴らしい。 
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-05-31 23:58:15)
19.  舟を編む
宮崎あおいの「上で食べよう。」のシーンから、十二年後のシーンへ転換する鮮やかさ。 のちに登場する「香具矢さんは馬締さんの配偶者なの」といった台詞の妙が 石井監督らしくて面白い。  または、加藤剛の死去の場面。 病院の廊下に立ち尽くす松田龍平の横顔から、喪服姿の松田・宮崎が傘を差しながら 坂道を登ってくるロングショットへと画面は転換する。 そして二人が蕎麦を一口すする静かな食卓のショットが窓の雪を映し出す。 そのカメラワークが情感に溢れ、素晴らしい。  この手の物語でありがちなパターンである、 結婚式やら恩師の死やらの劇的イベントに時間を割いて感傷的に盛り上げるといった 媚びになるシーンをことごとく割愛してみせる節度ある姿勢に 非常に好感を持つ。  酒を飲めなかった黒木華が、ビールを一気に飲み干す。 吃音っていた松田龍平が、自然に仲間たちと会話を交わし、チームを統率する。 ツマを盛りつけていた宮崎あおいが、凛とした立ち姿で主菜をふるまっている。 外見の変化だけに頼ることなく、具体的な行動の変化によって 時の流れと人の成長を描く。そうした演出方法も真っ当だ。  ほぼ全てのキャラクターが善良すぎる点は玉に瑕だが、 オダギリジョー、小林薫、伊佐山ひろ子などなど、いずれの配役も味がある。 書物の積み重なる編集部や下宿の内装美術も相当に凝っており、素晴らしい。 
[映画館(邦画)] 8点(2013-04-18 23:58:22)
20.  フタバから遠く離れて
映画中盤に、双葉町へ一時帰宅する避難家族たちの模様が映し出される。  舩橋淳監督ら撮影クルーも同行しているが、幾つもの家族を追うには限界がある。 監督から預かったビデオカメラだろうか。取材対象であった中井裕一さんは 自ら機材を持って、被災地の様を記録していく。  墓参に訪れた墓地は荒れ果て、あちらこちらで墓石が崩れている。 中井さんの慨嘆の声。カメラは激しく動揺し、忙しない。 時間がない、と怒鳴りながら親を急かす中井さんの切迫した声が胸を衝く。  限られた時間の中、頼まれてきた思い出の品々を家具の中から慌ただしく探し出す 一時帰宅者たちには悲しむ余裕も無い。  一方で、避難所の家族たちに寄り添うローポジションのカメラ、 牛舎の中で餓死している牛たちの惨い姿に正対するカメラの意志的な構えと スタンスは揺るぎなく、厳しい。  民主党の海江田・細野らによる恐るべき珍セリフも忘れがたい。 
[映画館(邦画)] 7点(2013-04-12 23:40:29)
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