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1.  まぼろし 《ネタバレ》 
愛は、無上の幸福と引きかえに胸の奥底に漠とした不安の影を落とす。愛とは常にその内部に愛するものを失う不安を胚胎させるものだからだ。フランソワ・オゾンは私たちが持つ絶対的なその畏れを、主婦マリーにある日突然訪れる出来事として、具象する。事件なのか事故なのかあるいは生きているのか死んでいるのか、それすらも不明なまま突きつけられる耐え難い喪失。愛する夫はあとかたもなく目前から掻き消え、そこにあるのは、確かに二人で存在したはずのその場所にただ一人立ち尽くすばかりの、愛にとり残された者の姿だ。残酷なのは、対象が奪われてもなお愛のもたらすその絶対なる不安だけが、否応なしに抜け殻のようなマリーを支配していくことだ。知り合った男と軽率に同衾しながらも情事の途中で笑いだすマリー。「あなたでは軽すぎる」気がふれたわけでも男の小柄な体を馬鹿にしているのでもない。彼女はただ、喜ぶのだ。長年連れ添った夫の重みを実体験として記憶する自身の肉体を、そして最愛の夫の確かなその痕跡を。たとえ相手が夫に似た体躯の男であったとしても、彼女はどこかしらに彼との差異を見出だし、言うだろう。あなたではないのだと、あの人でなくてはだめなのだと。マリーが求め見つめる先にいるのは、まぼろしとなった夫、ただ一人なのだ。失われた愛の上でそれでも機能し続ける彼女の異形の貞淑が胸をえぐる。愛は美しい幻想であり、また醜い強迫観念でもある。そんなふうに確固たる幻想に生きることで愛にすがろうとするマリーを、今さらのように直面する夫の死体が、さらには義母の語る見知らぬ夫の姿が、容赦なく現実に引き戻す。堅固に築いた幻想も強迫観念も、砂上の楼閣のようにガラガラと音をたて崩れ去り、そして彼女は知るのだ。身も心も捧げ信じ抜いたその愛が、どれほどにあやふやで不確かなものだったかを。そしてその愛こそが、まぼろしであったと。マリーは幸福に思えた人生の意味の大半を失い、喪失のかなしみだけがただひたすらに、まぼろしではない本物として、打ちひしがれた彼女に実感を与える。全身を貫くその痛みを受け入れることで、けれど彼女はようやく真実を生きるのだろう。砂浜を駆けだすマリーはまるで瀕死の野生動物のようだ。満身創痍でありながら、その姿は気高く美しい。よたよたと頼りなく、けれど最期まで生きることをあきらめぬその足取りで、彼女はまぼろしの彼方を目指すのだ。
[DVD(字幕)] 9点(2009-10-03 20:27:26)
2.  マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ 《ネタバレ》 
魔法をかけられたみたいに回をかさねて観れば観るほどに大好きになっていく不思議な映画だ。主人公イングマルはまだ子どもなのに、決してさびしいとは言わない。悲しいとも言わない。人工衛星に乗せられて死んだライカ犬や新聞で読んだ不幸な事故に遭った人たちと比べて自分は幸せだ、とただ思うだけだ。それは悲しみをやり過ごす手段というよりも、それこそが、彼にとってできるただ一つの悲しみの表現だからだ。だから、ライカ犬を思う時、それはつまり彼が年相応に泣くことすらできない時なのだ。それがなんともたまらない。両手を広げてむかえてくれるやさしいおじさんおばさん、友だち、そんなあたたかい村の人たちに囲まれて、笑ってはいても彼はいつもどこか所在なさげだ。彼にとっては、どんなに恵まれていようがそこは本当の居場所ではないのだ。彼が行きたい場所は、浜辺でのでんぐり返りに笑ってくれた母親とのまぶしい光景の中にしかない。そんな彼がはじめて泣きわめき、庭の東屋に立てこもるエピソードは、彼が等身大の自分に還るために必要な通過儀礼でもあったのだろう。人工衛星のような闇夜の東屋で、彼は何を思ったのか。やがて朝が来てライカ犬とは違い無事帰還をはたしたイングマルが見つけたのは、あらかじめ用意されていたその場所こそが自分の本当の新しい居場所であるということ。彼はもうライカ犬と自分を比べたりはしないだろう。悲しい時は悲しいと、さびしい時はさびしいと、言うだろう。自分の手でようやくそんな居場所を勝ちとったイングマルが遊び疲れてソファでうたた寝するラストシーンは、戦士のつかの間の休息のようで、ほほえましくも、とてもたくましい。
[DVD(字幕)] 10点(2009-07-23 21:56:37)(良:5票)
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