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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 823
性別 男性

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1.  ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 《ネタバレ》 
原作は当然未読。 原作に面白みがあるので、ストーリーの進行を追っていけば、前作同様にそれほど飽きることはない。 しかし、基本的にはストーリーを追っかけているだけの映画であり、映画としての質はそれほど高いとは思えない。 例えば、組織に編集部が脅迫されていたと思うが、切迫された“恐怖”というものが感じられず、追い込まれた感があまりない(怖いのは直接攻撃のヒットマンだけであり、心理的な恐怖が欲しいところ)。 また、組織についての“不気味さ”なども感じ取れない。あの程度では、ただの犯罪グループを摘発したくらいしか思えない。 とてつもない巨大な組織を相手にしているという“怖さ”がないと面白みが半減するだろう。 法廷パートにおいても、『これで勝てるのか?』というドキドキ感を生むほどの緊張感や焦燥感がない。 隠し玉がDVDくらいなのでもっと焦りが欲しく、勝負の鍵となるギリギリに掴んだ精神科医のパソコンの逆転劇を効果的に演出して欲しいところ。 しかし、ハリウッド映画のような洗練された感はないが、小細工せずにストレートに製作された映画というものも懐かしいようでありそれほど悪くはない。 ラストもハリウッド映画ならば、部屋に入れたり、キスしたりといった小細工をしそうだが、「また今度…」「きっとだぞ」と言って別れる辺りのあっさりした感じも悪くはなかった。 結局、二人の関係はメールや言葉を交わさない視線のやり取りのみであり、精神的な部分・心の中での絆は深いと思わせるものではあるが、直接的なやり取りが少なかった。 直接的なやり取りが出来ないということは、リスベットが幼い頃に受けた心の傷というものがかなり根深いということなのかもしれない。 ほとんど笑わないリスベットが笑顔を見せたのが、父親が死んだ時などの数回というのも印象的なものとなっている。 彼女は確かに勝利をしたのかもしれないが、本当の意味で勝つことは難しいのかもしれないと感じさせる。 背中のドラゴンタトゥーのように、心に刻まれた傷は消えないのか。 ただ、ミカエルだけではなくて、保険会社のかつての上司、親身になってくれた医者、疫病神、ボクサーなど、彼女を支えてくれた人たちの存在も彼女の心に刻まれただろう。
[映画館(字幕)] 6点(2011-04-16 13:21:24)
2.  ミレニアム2 火と戯れる女 《ネタバレ》 
原作は当然未読。 ストーリーの進行を追っていけば、それほど飽きることはない。 しかし、前作での見所であったミカエルとリスベットの絡みがほとんどないので、前作に比べると何かが物足りなく感じられる。 また、事件の追及方法も極めてシンプルであり、天才ハッカーという設定の割には驚くべき手法が用いられるわけではなく、この点に関しては面白みには欠ける。 さらに、肝心のオチや黒幕ザラの正体にもビッグサプライズもなければ、派手な展開が待ち受けているわけではない(壮絶さはあるが)。 全体的に、たんたんとした展開は飽きるほどではないが、やや冗長にも感じられた。 2件の殺人事件や少女売春事件もなんとなく有耶無耶に置き去りとされてしまっており、“核”がボヤけている事件を注視するのはやや疲れてしまった。 ただ、複雑そうにみえるストーリーだが、非常にシンプルかつオーソドックスな作りの上に、字幕等でキャラクター説明をしているので、ストーリーを追うことに困ることもない初心者向けの作りとなっている。 第三章の法廷篇にどのように繋がっていくのか、ハリウッドでどのように味付けされるのかは楽しみだ。 ハリウッドでは本作と同じように製作されることはなく、もっと手の込んだものとなるだろう。 それにしても“火と戯れる女”とはどういう意味だろうか。 “銃弾を受けても死なない女”“バイクに乗る女”“土と戯れる女”の間違いではないか。
[映画館(字幕)] 5点(2011-04-16 12:45:22)(良:1票)
3.  ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 
原作未読。長尺だが、飽きることがなくストーリーに集中でき、鑑賞後は素直に面白かったと感じたので評価は高めにしたい。宗教ネタや重いネタも絡んではいるが、事件のネタ自体はそれほど驚かされるものではなく、比較的ありふれた猟奇的殺人事件がベースとなっているものの、捜査の推移を見守っていれば、それなりに楽しむことができる。事件の謎や人間関係は一見複雑にみえるが、比較的シンプルで丁寧な作りとなっているので、付いていきやすいと思われる。観客を置き去りにして、製作者の都合でストーリーをガンガン進めるというようなハリウッド映画のような作りではなくて、捜査を依頼された雑誌記者と同じような目線で観客はゆっくりと丹念に事件を見つめることができるのも好印象だ。シンプルで丁寧な作りとはいっても、訳の分からない伏線を張って自滅したり、登場した瞬間に「オマエ犯人だろう」というような単純な作りではなっておらず、犯人や事件の真相は最後まで分かりにくいので、ハリウッド映画とは異なる“新鮮味”を感じられる。スウェーデンの最近の映画はあまり見たことがなかったので、この機会に見られてよかった。 また、ハリウッド映画とは異なり、派手さがない一方で、エログロ度が高いというのも特徴。殺そうとする直前に、水を飲ませてやるといったやり取りなどは、なかなか興味深い視点からも描かれている。 リスベットとミカエルの微妙な関係も物足りないながらも、興味深く描かれている。この二者の関係がより深まるのは“続編”を待つしかないようだ。ただ、自己の感情は押し殺し、暴力的な感情に満ちているように見えるリスベットだったが、ミカエルにメールを送付した時点で、心のどこかで何かを求めているのではないかと推測もできる。 リスベットは消えない“過去”をもっているからこそ、ノーマルとはいえないアプローチを図り、一緒に寝ようとするミカエルに対してストレートな対応ができないところも何かを雄弁に語っている。抱いてはいけない感情が溢れてきたから、あの時に姿を消したのだろうか。忘れることができないから、刑務所に逢いに来たのだろうか。 サスペンスの面白みだけではなくて、こういった複雑な感情が入り混じっている点も面白みの一つとなっている。単純化された相対する性格のコンビとはやや異なるタイプのコンビであり、二者の微妙で単純ではない関係も本作を豊かなものにしている。
[映画館(字幕)] 7点(2010-02-04 23:04:01)
4.  ミルク(アメリカ映画) 《ネタバレ》 
「ゲイの政治家を描いた作品」が面白いわけがないとレッテルを貼り付けて、今まで敬遠してきたが、いざ鑑賞してみると、飽きる部分がほとんどなく、映画自体が意外と面白い。 ゲイの気持ちはさすがに理解できず、コアな部分については感情移入しにくいが、マイノリティに対する人権侵害を許さない戦いという観点から見れば、感情移入することもできる。 自分らしく生きられない人々、自分を偽って“クローゼットの中”で生きなくてはいけない人々が、自分らしく生きるための戦いは美しくも感じられる。 彼ら自身の戦いだけではなくて、自分達と同じような迫害や苦しみを味わなくてはいけない子ども達のための戦いでもあるというのも、素晴らしいメッセージだ。 また、ハーヴィー・ミルク一人の戦いではなくて、彼の仲間や彼の支持者、彼の言葉を聞いた者、彼の当選を知った者たちによるムーブメントがこの流れを作ったことがよく分かるようになっている。 チカラのある一人の戦いではなくて、迫害を受ける人々それぞれ一人ずつ立ち上がってこそ、世の中を変えることができるパワーを産むということが伝わってくる。 まさに彼が行ったのは“リクルート”ということだろうか。 ハーヴィー・ミルクについては何も知らなかったが、本作を観れば、彼の生き様、彼の夢、彼の希望、彼の志、彼の愛がはっきりと見えてくる。 当該人物について何一つ描けていない伝記モノが多い中において、本作は極めて優秀な伝記モノとジャッジすることができる。 ただ、本作を見て、ハーヴィー・ミルクについて、清廉潔白な偉大な人物であるとは思わなかった。 ガス・ヴァン・サント監督は、彼をリスペクトする気持ちはあっても、彼を美化する気持ちはないと感じられた。 そういう意味においても、なかなかフェアな映画に仕上がっている。 彼は“特別な存在”ではなくて、恐らく“誰とも変わらない普通の男”ということなのかもしれない。 ゲイについては、さすがに気持ちも分からず、身近にもいないので、彼らの心情を深く理解することはできないが、彼らに対する“偏見”はやや無くなったと思う。 本作には、そのような効果もきちんと含まれている。 アカデミー賞作品賞ノミネート、主演男優賞受賞は偽りではなくて、本作に対する妥当な評価といえる。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-06 13:17:24)
5.  ミリオンズ 《ネタバレ》 
ダニー・ボイル監督らしいユニークであり、ファンタジックであり、独特な世界観は見事である。 また、全体的に子ども目線で上手く描かれているように思われる。 しかし、自分に宗教的な素養が足りないことも問題かもしれないが、物足りなさを覚える作品となっている。 教訓的な要素も、感動的な要素もあまり感じられなかった。 序盤こそ、面白みを感じていたが、中盤に差し掛かり失速していった気がする。 起承転結のうち、“転”が上手く描けていないのではないかと思われる。 お金の存在を知った父親と女性、犯人の登場、ユーロ騒動が上手く機能しているとは思えず、結論に対してスムーズにオチていないのではないか。 ユーロ騒動が描かれているが、彼らが欲を出しすぎて、時期を失して、ポンド紙幣が全て紙切れ同然となったというオチもなく、あまり意味をなさない(ユーロ騒動があったから大金が手に入ったわけだが)。 また、本作のテーマの一つである“母親が聖人になれたか”というオチに導くとすれば、ダミアンの起こした行動がもう少し周囲の人間を変えていくようなミラクルが欲しかったところだ。 ダミアンが正しい使い道を模索して、失敗を繰り返しながら、本当の使い道を探し出したり、周囲の者が大切なものに気づくという流れにもっていけなかっただろうか。 お金を燃やして終わり、井戸を掘り当てて終わりというオチは、キレいではあるが、どことなく疑問や中途半端さを感じた。
[DVD(字幕)] 5点(2009-05-10 21:40:20)
6.  ミスト 《ネタバレ》 
映画をみて、これほど“絶望”という想いを感じられたことはなかったと思う。 この点において、本作は評価されるべきだろう。 最後に巨大生物を登場させることによって、微かな“希望”にも完全なピリオドを打ったところも上手い。 ラストの行動に繋げるだけの決め手や動機付けにもなっている。 彼らにはもはや抗う姿勢すら見せていないほどの“絶望”を与えている。 問題はラストのオチだろう。 自ら死を選び、全滅するくらいならば、誰でも予想はできるオチだ。 まさか“死”よりも過酷な責苦を主人公に負わせるとは思わなかった。 なぜ、主人公にこれほどの責苦を負わせたのかが、最大のポイントではないか。 キングやダラボンの宗教観など実際には分からないが、個人的には本作を見て、彼らは「神はいない」ということを描くよりも、逆に「神はいる」と描いたような気がする。 人類が神に逆らうようなことばかり行っていると、“死”よりも恐ろしい“地獄”を味わうことになるという警鐘を描いたように感じてしまった。 庭に木を植えるというような人間の業にすら、罰があるというのは行きすぎな話だが、自然を破壊し、自然の摂理に逆らっていれば・・・という想いがあるのではないか。 「神はいない」ということを描きたいのならば、全滅させればいい話だ。 ホラーとしても面白い作品だが、この点の仕上がりはそれほど良くはない。 制作費18百万ドル(このラストで大金を使えるはずはない)と超低予算映画なので、CGの出来が非常に悪く、蜘蛛の糸の勢いのなさには苦笑してしまうほどだ。 ただ、本作のメインテーマはホラーというよりも、パニック時における人間模様だったのではないか。 “恐怖”に襲われた際の集団心理や陥りやすいワナを上手く描いている。 人々の恐怖を利用し、神を悪用することによってマインドコントロールされ、狂信的・暴力的なカルト集団の誕生の過程までをも描いてしまっている。 また、人々は協力し合えば助かったかもしれないのに、最後まで争いやプライド、己の信念を捨て去ることはできないというのも面白い。 こういった点についても、ダラボンは描きたかったはずだ。 その意味では、影の主役は間違いなく、狂信的な宗教家ミセス・カーモディを演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンだろう。 彼女の怪演がなければ、この映画の魅力は激減してしまう。
[映画館(字幕)] 7点(2008-05-17 14:40:33)
7.  未知との遭遇/特別編 《ネタバレ》 
スピが描いたこの夢のあるファーストコンタクトは、「こうであって欲しい」という強い願望が込められており、とても共感できるものとなっている。 偽の毒ガス騒動や催涙弾での追撃なども描かれているが、基本的な視点はとても優しい感じがする。 そして、優しさとともに純粋さもポイントになっていると思う。ロイのような無垢で一途な子どもっぽい純粋さは確かに現代人が忘れてしまった感情なのかもしれない。「あなたがうらやましい」という言葉も胸に突き刺さる。 なんとなく、このロイという人物とスピが重なってもみえる。ロイが追い求めた真実に対する情熱と、この映画に掛けるスピの情熱は同じのようにも思えた。 ただ、時折みせる「おもちゃ箱をひっくり返した」ような稚拙な演出によって、せっかくの良作もちょっと台無しになってしまっている気がした。
[DVD(字幕)] 6点(2006-12-31 00:23:40)
8.  未来世紀ブラジル 《ネタバレ》 
やはりテリーギリアム監督は苦手な監督だと再認識させられる一本。 独特の世界観を体現できる監督という点では評価できるかもしれないが、シリアスでもなければ、コメディというわけでもない世界。この捉えどころのなさ、生ぬるさが肌に合わない。 しかし、将来の官僚主義を、実にシニカルでアイロニカルな眼で鋭くみつめている点はさすがだとは思う。ギリアム監督は、公務員でもやっていたのかと思うほど実に的確に描かれている。徹底的な書類第一主義、「役所はミスしない」という傲慢さ、ミスをしたとしても責任の所在の不明瞭さ、これらによって引き起こされる「責任感」「人間性」「感情」の喪失が感じられる。優しい家庭人のジョンが、誤認逮捕したバトルを拷問死させてしまっても、少しも悪びれもなく「書類に書いてあったから」と言い放っているところが、実に上手いと思うところだ。 また、テロリスト撲滅という名目のために、国民を情報管理、情報操作している姿は、9.11以後のアメリカの姿そのものではないだろうか。本作においては、爆発はするもののテロリストの姿が全くみえないことも、映画内の爆発は政府による自作自演であることをギリアムは暗に示しているようにもみえる。タトルはただのモグリの配管工だし、ジルは政府のミスを告発しようとしているに過ぎない。彼らはテロリストではなく、政府にとってたんに都合の悪い者である。「罪」をでっち上げて彼らを逮捕しようとする姿は、戦前の思想統制までも思い起こさせる。 また、巨大な官僚主義に対して、「夢」を信じて一人むやみに立ち向かってしまうサムラウリーの姿には、ギリアム監督の「夢」である「ドンキホーテ」的な要素も感じられる。 そして、その戦いが決して報われることがないのも実にギリアムらしくアイロニカルなところだ。巨大な官僚主義には結局は勝つことができない。勝てるとすれば、それは「夢」の世界でしかないという皮肉が実に上手い。 誉める点は実に多いのだけれども、どうしても好きになれないのが本作の欠点だ。安っぽさ、不真面目感がそう感じさせるのだろうか。また、どのキャラクターも感情移入しにくい点にも多少問題があるのかもしれない。
[DVD(字幕)] 6点(2006-12-31 00:09:06)
9.  ミッドナイト・エクスプレス(1978) 《ネタバレ》 
映画のタイトルが、なんといってもしびれる。「ミッドナイトエクスプレス」とは、受刑者たちで使われる隠語で「脱獄」を意味する言葉。この幻の列車に乗るのか、乗れるのか、それとも待ち続けるしかないのか…。そもそもこんな列車は幻想に過ぎず…、受刑者が、監獄という「絶望」の中で生き続けるためにすがりつく、単なる希望に過ぎないのだろうか。本作のタイトルの意味を知っただけで、かなりの儚さを感じさせる。 本作のような作品というのは、関係者に対して影響力が大きく、力をもった映画である。 アメリカ・トルコ間での受刑者の在り方を変えたというだけではなく、本作を観れば、誰しもヤクを密輸入しようとは思わないはずだろう。ヤクの密輸入がもはや軽い行為でないと分かるはずだ。政治だけでなく、海外へ渡航する一般市民までをも変えるだけの力を持つ映画という点で評価は高くなる。 また、犯罪が自分自身だけでなく、自分の周囲の関係者をも不幸に貶めることであることがきちんと描かれている点において、本作が他の犯罪を含めた犯罪への抑止力にもなるだろう。 本作のストーリーに関して、自業自得という意見をもつのも分からないではないが、本作の問題はその一言で済まされるものではない。犯罪者(加害者)の人権を過度に必死になって護ろうという動きには個人的には否定的であるが、本作では人間が人間として生きる権利さえ奪われていることが一番の問題であり、さらに、犯した犯罪に比して、下された不当な判決、不当な手続きによって拘禁され続けたという点にも問題がある。 スーザンとの再会シーンは、まさに衝撃である。人間としての本能を抑えきれないほどギリギリの精神状態になるまで、追い詰められているということがよく分かるシーン。やはり、人間を発狂させ、廃人に追い込む非人道的なやり方は認められるものではなく、自業自得を超えた世界である。 DVDの特典には、ビリー本人もちらっと出ていた。映画の監獄セットに対して、当時を思い出し、あのときの恐怖を思い出すといったナレーションがあったが、本作のどこまでが真実なのだろうか。しかし、日本でも近年(2002年ごろ)、中国でビラを配っただけで不当に1年半ほど拘禁された事件があったところだ。本作に描かれたことは、まだまだ過去の事件とは済まされないようだ。
[DVD(字幕)] 7点(2006-10-08 02:16:00)(良:1票)
10.  ミッドナイトクロス 《ネタバレ》 
ブライアンデパルマの作品群の中で良作の一本だと思う。 まず、設定がかなりユニークなのが良かった。「音響技師」が主役というのは珍しいと思う。「音」がキー(鍵)になる映画というのも、あまり見かけたことがなかったので、とても新鮮味があった。たまたま録音された「音」が徐々に事件の全貌を明らかにしていく様は見事である。 その描き方もなかなかリアルであり、凝った感じに仕上げられており、普段感じることがない音響や効果について学ぶこともできる。 ラストにナンシーアレンの悲鳴を作成中のB級映画に用いたのは賛否があろうが、個人的にはかなり良かったと思う。あの時のトラボルタの心境としては、自分に対する一種の「戒め」の意味が強いのではないかと感じた。 以前にオトリ捜査で失敗して、刑事を死なせているという過去を持ち、今回も再び失敗して人を死なせてしまった。しかも今回はただ人を死なせただけではなく、自分の愛する女性であり、自分に対して悲痛なまでも「救い」を求めた女性である。 あのときの「悲鳴」は決して彼は二度と忘れることはできないだろう。二度と耳から離れることはないと思うが、それ以上に己に対する「責め」を課したように感じる。どんなに忘れたくても忘れられない方法で、なおかつ絶対に消したくても消せない方法で、あの「悲鳴」を自己の作品に留めることによって、彼女を救えなかったという「罪」を一身に背負おうとしたのだろう。あのB級映画を二度と観なくても、映画界に席を置いている限り、その「罪」から逃れることはできない。たとえ映画界から離れたとしても、彼が生きている限り、やはり逃れることはできないと思う。救えなかった「罪」を一生背負い続け、生き続けるという決心を彼はしたのだと思う。 そして、本事件の真相は必ずしも明らかにならなかったことも逆に良かったのではないか。知事の死は単なる事故として処理され、知事の殺人犯は返り討ちにあった連続殺人鬼の死として幕を閉じる。 様々な事件はすべて闇へと葬られていくが、これら事件はひとつの「悲鳴」という形に結晶化され、事件の一端を物語ることになるという儚さが、美しい花火と対比的に描かれている。さらに、トラボルタの悲痛な表情やセリフ、流れる音楽が「後味の悪さ」に輪を掛ける。なんとも表現のしようのない独特の感情は他の映画では味わえないものだろう。こういった映画は高評価したい。
[DVD(字幕)] 8点(2006-09-21 00:01:30)(良:2票)
11.  ミッション・トゥ・マーズ 《ネタバレ》 
サスペンスの巨匠ブライアンデパルマ監督がこんなSFも創れるんだと、まず驚かされた。映像からは、デパルマ監督特有の匂いは感じられない。CGを駆使した創り込みも丁寧であり、新ジャンルの挑戦への気合、既存の自己のイメージからの脱却も感じられ、それなりに好感はもてる。 しかし、映画自体は、「2001年宇宙の旅」をベースにして、「未知との遭遇」「アポロ13」「アルマゲドン」などのSF映画を何もかもごちゃ混ぜにして創り上げられた印象を受けた。「これはどこかで観たな」という既視感を感じさせる映画になってしまっているのが残念だ。 オチ自体は別に悪くはないと思うが、こんな骨だけで肉のついていない脚本でよくここまでの映画に仕立てたものだと少しは監督を評価したい。この地味なストーリーならば、アイディアを各所から拝借しないと、一本の映画としては、もたないだろう。 その他に本作の問題としてテンポの悪さが挙げられると思う。イライラするほどテンポが悪すぎる。おまけにシニーズが事故の際、酸素減少中にも関わらず、なぜかヘルメットを被らないという意味不明な行動をとるため、そのイライラが頂点に達する。 その宇宙船の事故も取って付けたようにしか感じない。脚本が貧弱なためか、ストーリーを膨らませるために「アポロ13」などを参考にしてやむを得ず描いたようにしか感じなかった。 また、それに伴うウッディの死も単なる感動狙いではないか。ストーリー上、それほど大きな効果や意味は感じられなかった。シニーズは病気で亡くなった妻の言葉「別の世界を観たい」や妻の失意がきっかけになって、地球に還らず宇宙船に乗るという決断を下したわけだが、ウッディの死が、誰かの気持ちや行動を変えたというわけではなく、単に火星に到着するための「犠牲」という形式上の効果しか生んでいないのは勿体無さ過ぎる。ウッディの奥さんにもっと大きな影響を与えないと、彼の死はあまり意味はないだろう。シニーズも妻の言葉だけでなく、ウッディからも大きな影響を受けたという風にした方がよりラストの行動の理由付けにも納得がいくのではないか。ラストにウッディのネックレスを渡す(=ウッディの魂も連れて行く)といったことはしているものの、ウッディの死を上手くストーリーに活かすことができなかったことが、本作が傑作にならずに多くのSF映画の中に埋没してしまった理由の一つのようにも感じる。
[DVD(字幕)] 5点(2006-09-13 20:40:57)
12.  M:i:III 《ネタバレ》 
このシリーズは万人が楽しめるように創られていて好感が持てる。あまり深く考えなければ相当興奮できる内容になっている。シリーズを観てなくても楽しめる内容にもなっており、シリーズ毎に特徴を変える戦略もよい。本作では前作以上にラブストーリー色を強め、人間臭いイーサンを描き出している。原点回帰のチームプレイを重視し、非現実的な世界ながらも比較的リアリティ(変装、声、振り子の原理等)にこだわっている。オープニングから全編を通してクライマックスのように迫力あるシーンの連続で緊迫感が保たれているが、逆にいえば美味しいところを序盤・中盤にもってきているために最大のクライマックスであるラストにもう一工夫必要だったのかもしれない。 <ネタバレ>イーサンとホフマンのオープニングのやり取りにあまり意味がないことは残念だ。モナハンはアレだし、ホフマンはカウントダウンして一体何が聞きたかったんだということになる。単にホフマンの一種の遊び(遊び好きみたいなセリフもあったし)で、イーサンをパニックに陥らせて、飛行機から落とされそうになったことへの復讐だったのだろう。 また、ホフマンは雑草というセリフがあったが、雑草相手にしては奪還劇が度を越えている。度を越えた奪還劇を描きながら、ラビットフットという重要なものが存在している場所ではアジトや護衛の手薄さをみせつけられるとやや違和感を覚える。 それにしても、全シリーズ、内部から裏切り者を輩出するというのは、いったいどんな組織なのかと思わざるを得ない。方向性が違うだけで根っからの悪人ではないし、この組織にいれば普通の生活はできないというセリフで補充はされているものの。そして、肝心のラストでミシェルモナハンに銃を握らせる必要はなかったと思う。せっかくリアリティを重視した本作であるにも関わらず、初めて銃を握った女性が訓練を受けた複数の人間相手に立ちまわるのは相当の違和感である。あんなシーンよりもむしろ蘇生を重視すべきである。イーサンがなかなか蘇生せずにそれでも必死に蘇生を試みさせる姿に二人の愛の深さや信頼感を感じ、観客は感動をするのではないか。「イーサンひょっとしてマジ死んだかも」と観客に思わせる位、このシーンはもっと時間を掛けて描くべきだったと思う。不評だと思うけど、ラビットフットの正体をぼやかした点とラビットフット強奪を省略した点はなかなか面白いやり方だ。
[映画館(字幕)] 8点(2006-06-25 04:07:51)
13.  M:I-2 《ネタバレ》 
ハトが出てきたあたりから、唖然としながら画面を見つめていた。 そのあとも嘘みたいな展開が快調に繰り広げられていく。 「ミッションインポッシブルってこんな映画だったっけ??」という疑問符が脳裏をかすめながら、戸惑いながら映像を凝視し続けると、次第に嘘みたいな展開が心地よい爽快感に変わっていった。そして観終わった感想は「トムクルーズにハト意外に合うなあ。」というものだった。 この映画をみて感じたことは、トムクルーズのプロデューサー能力は相当に高いなと思われる。 ブライアンデパルマ監督のサスペンスタッチの前作が成功を収めたにも関わらず、前作の「型」にハメることなく、前作とは全く異なるテイストで攻めるというのは、なかなか出来ることではない。コケたら当然ボロクソに言われるということが目に見えているはずであり、大金が動くこの世界では比較的冒険はしないのがセオリーである。それにも関わらず、あえて新たな一面に挑戦し、その可能性に賭けた結果、大成功を収めたわけである。プロデューサーとしては一流と言わざるを得ない。 そしてジョンウー監督の起用も流石と唸らざるを得ない。その分野に秀でた監督をきちんと起用し、監督の好き勝手にやらせたであろう結果が画面からにじみ出ている。予算の関係から監督に好きにやらせない風潮が多い中で、監督の悪ノリに近いノリをそのまま映像化し、監督の長所を引き出している点からもプロデューサーとしては優秀と言わざるを得ない。 ただ、脚本は意外と筋がいいのに、その良さを上手く演出することなく放棄してしまっている点がもったいない。二人の変装の名人がいて、本物なのか、偽物なのかというスリルが残念ながら味わえない。当然ラストのトリックもあれが本物のイーサンハントだと思う人はまず、いないであろう。最初から最後まで全ての変装が完全に「ああ、変装しているな」というのが分かってしまってはもったいないところだ。
[DVD(字幕)] 7点(2006-06-21 23:55:07)(良:1票)
14.  ミッション:インポッシブル 《ネタバレ》 
まさに王道をいく映画。テンポがよく、見せ場もあり、深く考えなければ誰もが楽しめる文句なしの娯楽映画だと思う。 ただ、個人的にちょっと考えさせられたシーンがある。 ①イーサンの母親とおじさんが虚偽の理由で拘束されたためにキトリッジに直接電話を掛けて交渉した後に、ジョンボイトと再会するシーンがある。ジョンボイトがヨブと確信するが、クレアの関与をイーサンは否定しようとする。 ②その後、雨に濡れて呆然としながら戻るイーサンだったが、イーサンのことをクレアは心配してドア付近で毛布に包まりながら待っており、イーサンの無事の帰宅を喜び、安堵してイーサンの手に頬ずりしてキスするシーンへと続く。口ではなく手にキスするところが、信頼感を表している感じがする。 ③そして最後には高速列車TGVの中でジョンボイトに成りすまして、クレアの本性を知る。という流れであった。 ③へと繋げるためには、クレアがクロかもしれないという前振りが必要だと思うが、その前振りが②では全く真逆の前振りではないだろうか。 なぜ自分のことを心配してくれる自分が惚れた女を③でハメようとするのか。もし、クレアがクロかどうか全く分からないから、その真相を知るためにジョンボイトの変装をしたのであれば、普通の女性なら自分のことを疑い試そうとする人間とどうやって信頼関係を結べるだろうか。まったく確証がなく変装したのならばイーサンは人間としてちょっとまずい人間ということになる。 さらに多少クレアはイーサンのことをかばうものの、ジョンボイト(あのタイミングで登場するのもちょっとおかしいが)がいきなりクレアを射殺する流れも悪すぎる。 適切な流れとしては(1)ノックファイル強奪の流れと(2)誰がヨブなのか(クレアがひょっとするとヨブなのか)という二つの流れが必要だったと思う。 クレアの素性を知ろうとするためにクレアに近づき、やがて二人は恋に落ちるが、クレアにもボイト同様に「聖書」みたいな落ち度があって、クレアがクロだと知る。 しかし、最後はイーサンのことを好きになったクレアが逆にジョンボイトを裏切ってボイトに殺されるという流れが通常の流れではないか。 
[DVD(字幕)] 7点(2006-06-21 23:45:24)
15.  ミュンヘン 《ネタバレ》 
後半のオランダ女が登場し、ちょっとディアハンター風になってきてから、この映画はモノ凄く面白くなっていったと思う。 何かを感じさせ、何かを考えさせ、深いインパクトを与える、良い映画なので、もう1点ほど加えてもいいかなと思ったけど、平和に胡座をかいていて、民族とか祖国とかそういう感覚に対して全く希薄である今の自分がこの映画に対して深くは共鳴することはできなかった。ましてや、ミュンヘン事件なんてこの映画を知る前にはその存在する知らなかったし、今でもイスラエルとパレスチナの関係もよく分からんけど、あのラジオの音楽の選曲争いなんかもいい例えなのかなと思う。ラジオが自分の祖国と考えると、何か見えてきそうな気がするが。 そんなわけで、自分にはバナの心の動きを感じることしかできなかった。バナは結構よかったんじゃないかな。数人で打ち合わせしていても、どこにいるかも分からないあの存在感のなさ。そんな普通で頼りない男が、家族のため、祖国のためと自分に言い聞かせて暗殺グループのリーダーになるというところがよい。そして、序盤のぎこちなさ、まとまり感のなさから、困惑気味に手探り状態でスタートし、徐々に暗殺グループとして成長していく。リストにも載っていないオランダ女を殺したときの「(偽造のプロの人のことに対して)全然気づかなかった」セリフがポイントだと思う。彼らが祖国のためでもなく殺人に対して享楽的になっていることが分かる。そして逆にあっという間に、追う者から追われる者へと精神的に追い詰められていく様が見事だ。 追い詰められた男に対するジェフリーラッシュ(国)の切り捨てと、妻(家族)の温かさの対比もまた見事だった。 難点をいえば、線で描くのではなく、点と点を繋いでいるようなかなり雑な創りな気もするし、もっと整理して演出したり、事実に基づいているので難しいかもしれないがもっとストーリーや人間関係を膨らませれば面白くできるのではないかという気がしたが、この映画がアカデミー賞にノミネートされたというのはやはりなかなかアカデミー賞は捨てたものではないと思う。
[映画館(字幕)] 8点(2006-02-05 22:02:51)(良:1票)
16.  Mr.&Mrs. スミス 《ネタバレ》 
クルマで逃げているときに、突然のピットの告白にブチギれるジョリーは最高だった。 映画自体は途中まではなかなか丁寧に創ってあって面白いとは思う。 前半はなかなかいいと思った。日常生活において二人の性格・関係が余すところなく描かれている(特にカーテンについてのやり取り、朝クルマでの道の奪い合い、夜眠る際にランプを消す消さない)上に、ありのままの姿を晒せずに二人のモヤモヤ感、二人の関係に見えない壁、微妙な距離感が上手く描かれていた。また、家に居るときは必ず指輪を付けようとするのも二人のそれなりの愛情が見え隠れする。 前半に二人の性格とその違いを上手く描いているのが、中盤以降なかなかボディブローのように効いている。欲をいえば、一度和解をした後の再度の夫婦ゲンカはもうちょっと丁寧に描くべきだったか。夫婦といってもやはり二人の性格は全く異なるものであり、小さいことで絶えず言い争いにはなるが、やはり二人の関係には愛があるからなんでも乗りきれるという流れなのだから。 それにしても、ラストのオチをもう少し何とかしろといいたい。 ヴィンスヴォーンを黒幕にするとか、二人で名前を忘れたどっかの島で暮らしているとか、くだらないオチでもなんでもいいからとりあえず形だけでもオチをつけて欲しかった。どう考えてもあれでは映画は終わっていないだろう。とって付けたような「10点」というオチでは納得はできない。 そもそも、メインイベントであるピットとジョリーのバトルを中盤にもってきているため、やや後半は盛り上がりに欠いている。 後半は、ボニーとクライドのような破滅への道をひたすら進む逃避行、絶体絶命的なストーリーにでも持っていって良かったかもしれない。絶体絶命の中、先とは矛盾するが最後はヴィンスとかジョリーの仲間が助けるとかの方でもいいかな。 エアサプライとかなかなか小技も効果的でよかっただけにラストだけが惜しまれる。
[映画館(字幕)] 7点(2005-12-04 22:54:35)
17.  ミッシング(2003)
映画自体は真面目に創られており、役者も子役を含めて上手い人ばかりでしっかりと演じられていると感じる。 しかし、映画ははっきり言って、面白くない映画としか言いようがない。 原作を知らないので映画化すべきか否かという根本的な問題は置いておいて、なんでこうも面白くないのかの原因を考えると「演出」と「脚本」に問題があったのではないだろうか。 「演出」の問題点は、圧倒的に緊迫感が欠如していると感じられる。 自分たちがいつ殺されるのかも分からない、リリーが無事なのかどうかも分からない、相手もよく分からないという状況下において、それぞれやけに余裕が感じられる。 極めつけは、救出後に山の頂上に陣を張っている際に、父が大切にしていた十字架を返すシーンだ。このシーンは、断絶していた父と娘が心から和解するシーンで、映画のキモでもある大切なシーンである。十字架が和解の象徴にもなっている。そういう大切なシーンだからこそ、戦闘状態という一種の緊張感とは異なる空気になっているが、どうにも相当の違和感を感じる。このシーンだけが緊張感がないと言っているのではなくて、やはり映画全体に漂う空気があまりよろしくない。もっと生きるか、死ぬかといった空気が必要ではないだろうか。 「脚本」の問題点としては、この映画は「親子の断絶と和解」が一つのテーマになっているはずである、にも関わらず論点がやや不明確になっている点が問題だ。この映画には、ジョーンズとマギー、そしてマギーとリリーという二組の親子が登場する。一方は母を捨てて突然いなくなってしまい亀裂が完全に入っている、そしてもう一方は暮らしに不満を抱き、母に対して怒りを抱えており今まさに亀裂が入りつつある。こういう二組の親子がいて、対比的に色々と面白くできそうなのに全く利用できていない。 一方の娘は父の気持ちを理解して再び愛する気持ちを取り戻し、もう一方の娘も母の気持ちを理解して再び愛する気持ちを取り戻すという二点がこの映画には必要であるが、ジョーンズとマギーの話で終わっているのが勿体無いと言える。しかも、「自分がいると家族に迷惑になる」というやや具体性に欠ける父の訳の分からない独白でしかないのも、感情移入ができない点となっている。 それにしても、アカデミー賞を取った次回作がアメリカだけでなく日本までもこれほどまで無視されようとは…。
[DVD(字幕)] 4点(2005-08-14 00:16:52)
18.  ミリオンダラー・ベイビー 《ネタバレ》 
とても繊細で複雑な映画である。こんな映画を撮ることができるのかいうくらい、繊細さを感じた。光と影によるコントラストが、さらに本作を繊細にしている。また、セリフのない数秒のカットでさえ、数分間を物語るくらいの効果があるものがいくつも垣間見られた。この点に関しても、流石と感心せざるを得ない。 ストーリーにおいて、一番気になったのは、彼女が「悔いのない人生」を送ることができたかどうかということだ。 あのような反則による事故によってあのような結末に至り、また「彼女が何のために戦い続けていたか」ということと家族の酷い仕打ちを見ると、果たして悔いのない人生と言えるのだろうか疑問に感じる。むしろ失意のうちに、また無念の想いを抱いていたのではないか。 家族については、家は買えても、心は買うことは出来ないので仕方がないとしても、ボクシングの試合に関しては、自分が脚本家ならば、チャンピオンの反則により、大きな怪我を負う。怪我を負っても戦うことを止めようとしないマギー。何度もタオルを投げ込もうとするも、戦う彼女の姿を見て、どうしてもタオルを投げ込めないフランキー。勝つか負けるかどちらでも良いが、最後までリングで戦った代償として全身不随の怪我を負うという流れにした方が良いのではないか。最後までリングで戦うことができれば、彼女は「悔いのない人生」を送ったと思うし、スクラップが失明した試合をカットマン故、止めれなかったけど実際はどうだったのか…という話ともリンクする。 フランキーはトレーナーとしては、マギーの試合にタオルを投げ込むことができなかったけど、トレーナーを超えた存在として、マギーの人生にタオルを投げ込む業をフランキーに背負わせるというのが、すっきりする流れと思われる。彼女の人生に自己責任を負わせることが出来ないと、後味の悪い、救いのなさだけが残ることになるのではないか。 他方、彼女を死なせないという流れの方が整合的なストーリーのような気もする。スクラップの語る「誰でも一度は負ける」というセリフには、裏を返せば「負けたとしも、どんなに傷ついても、人間は再び立ち上がれる」ということを言いたいのではないか。ラストで彼女が大学で車椅子の姿でもゲール語を学ぶ姿が見られたら、アカデミー賞受賞作品に相応しい映画になったのではないかと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2005-05-30 23:40:05)(良:2票)
19.  Mr.インクレディブル 《ネタバレ》 
文句のつけようがない大満足の大傑作。 かなり練られた脚本とテンポの良さとそれぞれのキャラクターが生きている点が素晴らしい。 ストーリーは計算されつくされており、全てに繋がりがあり全く無駄がない。張ってある伏線も出来がいい。 インクレディブルとモードとの会話で「マント」ネタはどこかで使ってくると思ってたら、やっぱり生かされているし。 弟がジャングルで朝起きた時に姉ちゃんが近くにいてゲンナリするシーンがあったが、銃で襲われる姉ちゃんをカラダを張って助けるシーンに大きな効果を与えている。 普段は喧嘩をしたり嫌っているように見えても、実は内心大切に想っているという気持ちがゲンナリシーンがあったためより一層伝わる。 それが後半ではバリアで弟を逆に助けるシーンにも活きてくる。 またキャラクターにはそれぞれの長所や性格があり、その長所が存分に映像に活かされている。 特に体が伸びる奥さんが敵基地に潜入する場面は秀逸だろう。 弟の疾走感も見事に映像化されていた。 奥さんや弟などは、さすがアニメのチカラを感じる。 姉ちゃんも気持ちの変化というか成長は見逃せない。 始めは内気すぎてちょっと怖い感じがする上に貞子みたいだし、パワーも使いこなせないどうしようもないキャラクターだったが、前半のヘタレぶりが効果的だったために、後半での活躍ぶりは見事に感じる。 飛行機のシーンでは姉ちゃんがバリアを張れなかったため、奥さんがカラダを張って子ども達を助けていたが、あの時の陸にあがった時の疲労感も効果的だ。 疲労感がより描かれることにより、自分に疲労感があっても疲れた息子を誉めることを忘れないという奥さんの性格と子どもへの愛情が垣間見れる。 この映画は、家族愛が描かれているだけでなく、ヒーローモノとしても、スパイモノとしても、色々なタイプの映画を楽しめるように出来ている点も良く、子どもだけでなく大人も間違いなく楽しめるオススメの作品だ。
10点(2004-11-28 03:15:38)(良:3票)
20.  ミザリー 《ネタバレ》 
作家とそのストーカーが織り成す閉鎖的な空間を描いた設定も面白いけど、やはりキャシーベイツの演技に尽きる映画とも言える。 このキャラクターであってもアカデミー賞主演女優賞を受賞できたのもうなづけられる。 時折、豹変するシーンは迫真な演技だったし、無茶苦茶な要求をするシーンも演技というより完全に成り切っていた。 一番笑ったのは、ワインをこぼされた後のジェームズカーンのがっかりした顔だったなあ。 怖さの中に多少のユーモアがあるのがこの映画の良さかと思われる。 自分の作品に二回火をつけるシーンがあるが、これが正に作家と読者の戦いと言えよう。 作家の魂である作品を気に入らないからと言って火をつけろと要求する読者と、その読者の生きがいであり、また自分を救ってくれたと感じていたミザリーという作品に、待ち焦がれたラストを書き上げた後にその復讐のために火を放つ作家…凄まじい攻防としか言いようがない。
7点(2004-10-03 21:45:23)
030.36%
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