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1.   《ネタバレ》 
源氏物語の若紫巻に少女を略取し、理想の女性に育てて妻とする話があるが、それの老人版。南方浄土をめざす補陀落渡海も連想させる。弓は曲線で女性、矢は直線で男性器及び男性、弓矢で夫婦和合の象徴となる。弓は、昼は少女の守護をし、夜は音楽を奏でて少女を慰撫する。弓占いは、少女が神性の宿る巫女であり、同時に少女が老人に全幅の信頼を置いていることの証しだ。 船は仏画が描かれ、いわば神殿である。絶海にあるのは俗世間と隔絶する意味と水の浄化作用が必要なため。少女が大人になるには十年の歳月が必要だが、同時に水による浄化も必要。 老人の祈願は聖少女と夫婦になることだが、その本質は若さを取り戻したいという願望。若さとは永遠の命のこと。 老人は日々少女を慈しみ育て、結婚の日を心待ちにしていた。が、思わぬ邪魔立てが入る。少女が釣客の青年に恋をし、青年も少女を連れて行くという。老人は青年を射殺そうとするが、少女が身を挺して庇う。諦観した老人は自死を図るが、それに気づいた少女に助けられる。老人の純粋な愛を知った少女は老人との結婚を決断する。 小舟で結婚の儀式が執行される。老人は天に矢を放ち、海中に身を投じる。永遠の命を得るには肉体は滅びなくてはならない。老人の霊魂は天上に昇り、矢と融合して小舟に還ってきた。少女はその霊魂と交合し、初夜を終える。処女で無くなった少女は神性を失い、俗世間に帰ってゆく。そこで新しい人生が始まるのだ。 多義的解釈のできる寓話に満ちた内容で、現代の神話である。永遠の若さを求めるのは古くからの人類の欲望だ。それを監督は「ピンと張った糸には強さと美しい音色がある。死ぬまで弓のように生きていたい」と表現する。神話といってもきれいごとばかりではない。老人は決して聖人ではない。嫉妬深く、暦をごまかし、青年を殺そうとし、自死の時もナイフを隠して、苦しさのあまり綱を切断しようとしたことを少女に分からないようにする。少女も排尿姿をさらけ出す。純粋で美しいな部分も、利己主義で醜い部分も。清濁併せ持つのが人間の本来の姿だ。老人が本来の姿をさらけ出すことで、思いが生も死も超越して少女に届き、結婚の願いが叶った。青年の登場は、実は老人の宿願達成には必要だったのだ。青年が少女の両親を探し出す部分は不要だろう。両親がすぐに乗り込んでくる筈だから。相手が老人だけに感情移入はしにくい。 
[DVD(字幕)] 8点(2014-10-28 20:50:18)
2.  U-571 《ネタバレ》 
独軍の暗号機エニグマの解読は、英軍のUボート鹵獲等の功績によって行われた。それをあえて、米軍が行ったことにするという意味が分からない。強引に史実を変える理由や必要があるわけでもなく、単なる娯楽映画に興を添えるために史実を拝借した程度のことだろう。浅慮である。 航行不能となったUボートが救難信号を発する。それを傍受した米軍はエニグマ獲得を目的に、潜水艦をUボートに偽装し、救助と思わせてUボートに乗り込み、敵艦を拿捕する作戦を立てる。作戦は予定通りに運び、艦内に乗り込んで占拠に成功するものの、独軍駆逐艦が現れ、偽装潜水艦を撃沈されてしまう。敵艦に乗り込んだ米兵達はUボートを操作して、帰還しようとする。これが前半だ。奇抜な発想で興味を引く。これに並行して兵員の絆、自己犠牲、副艦長の成長物語が描かれる。そつのない脚本で、合格点はつけられる。が、洗練されてはいない。副艦長の成長物語を描くのに急で、とってつけたような印象になってしまっている。駆逐艦との戦闘は御都合主義が目立つ。仕様を超えて深く潜るとか、魚雷が発射できないとか、捕虜がモールス信号を送るとか、死体と油を放出して沈んだと偽装するとか、手垢がついた演出だが、見せ方が上手く、悪くはない。艦砲一発で無線設備を粉砕する。魚雷一発で駆逐艦を撃沈する。この二つが気になる。戦艦は鋼板が厚く、二重壁構造で、艦内部も複数に区切られているため容易には沈まない。沈むにしても時間がかかる。商船と勘違いしていると思う。また爆弾が誘発しない限りあんなに爆発炎上しない。潜行可能な潜水艦を使っての撮影が功を奏して、写実的に描かれていたのに、爆発場面だけは現実味に欠ける上、CGも粗雑で残念だ。それに、真正面に進んでくる敵艦に対して魚雷を当てるのはとても難しい。船同士が無線で通信する場面が全く無いのも不自然。無線に答えられない時点でバレてしまう。無いものねだりを言うようだが、敵軍に対する尊敬が感じられないのが遺憾だ。名作「Uボート」にはそれがあったから、評価が高い。「勝った、万歳」で終っては底が浅い。戦争の凄惨さが描けていないということだ。英雄の影にも悲劇が付きまとうのが戦争だ。 
[DVD(字幕)] 7点(2014-09-04 23:41:43)
3.  雪国(1965) 《ネタバレ》 
駒子は雪国の生まれ。貧しさゆえに16才で東京に酌婦に出された。旦那に落籍され、将来は踊りの師匠として生計を立てる約束だったが、旦那が1年程で亡くなり、国に戻った。両親も亡くなり、天涯孤独の身となったが、踊りの師匠の厚情で養女となった。師匠は息子の行男とめあわす積りだったらしいが、東京に出た行男が結核にかかり、自身も中気で半身不随となってしまう。東京で付添っていた葉子が行男を連れて帰り、奇妙な三角関係となる。駒子はふと知り合った旅行者の島村に惹かれる。知的で甘い風貌、柔らかな物腰、温泉町にはない都会的雰囲気を持つ。駒子を今の境遇から抜け出させてくれる希望にみえるのだ。嫌いな面もある。既婚者の上に、身勝手で薄情だ。無遠慮に枕芸者を世話しろと言い出したり、鳥追い祭に来る約束を反故にしたり。島村にとって自分は、一年に一度だけ会いに来て、気まぐれに抱く女でしかない、そう思うと辛かった。やがて駒子の境遇が変わる。行男の医療費を払う為に芸者となったが、行男と師匠は相次いで鬼籍に入る。新しい旦那もできた。それでも島村が来ると微かな希望にすがるように会いに行ってしまう。島村にとって駒子は縮布のような存在だ。「雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に洒ぎ、雪上に晒す」時折、その美しさを愛で、肌を撫でていれば満足なのだ。事件が起こった。葉子が火事に遭って重傷を負ったのだ。老人や子供を置き去りにできず、助けているうちに逃げ遅れたのだ。恵まれない境遇でありながら、汚れを知らず、殊勝で純真さを失わない葉子。駒子にとって彼女は、喪った処女時代の分身だ。また一つ大切なものを失ってしまった。駒子は雪国に骨を埋める決心をし、島村に別れを告げる。島村は帰るしかない。美を追求する原作者の妄想が生んだ幻想譚。トンネルを抜けると異界が広がっている。雪国という清浄な世界。白銀一色の景色は鮮麗で、女性は美人で清潔、人々は素朴な生活を営んでいる。そこでは原作者である島村は女性には好かれる。遠くにあるからこそ美しく、憧憬の対象であり、最後に別れがあることを承知している。「伊豆の踊子」と同工異曲。彼女達の境涯に同情はするが、冷徹な態度は変わらない。あくまで旅人として距離を置き、私生活には立ち入らない。男性からみた理想的な女性像でしかないが、「日本的な美」を切り取った功績は大きい。映画は美という点でかろうじて合格。 
[DVD(邦画)] 7点(2013-10-14 15:29:14)
4.  雪の女王(1957) 《ネタバレ》 
原作をほぼ忠実に再現。製作者は原作の意図をよく理解し、そつなく仕上げている。主人公ゲルダが女性で、関わる人物も女性が中心。魔法使いの女、城の王女、盗賊の女、盗賊の女の娘、北方の女、更に北方の女、雪の女王。「女性のもつ内なる力」が主題である。原作では更に北方の女が、カイは雪の女王の囚人になっていることを教える。トナカイが、この娘に力を与えてくれ頼むと「この娘に生まれついて持っている力よりも大きな力を授けることはできない。力を得ようとしても無理。それはあの娘の心の中にある。ごらん、どんなにして、色々と人間や動物が、あの娘のためにしてやっているか、どんなにして、裸足のくせに、あの娘がよくもこんな遠くまでやって来られたか」と諭す。無欲の愛こそが何物にも勝るということだが、それはゲルダ一人に依るものではなく、彼女を助ける女性も分担している。雪の女王の心を溶かしたのは、女性陣の愛のリレーの結晶だといえる。敵役も女であるが故に愛にはもろいのだ。女性賛美のメッセージが込められているといってさし支えない。重要アイテムは靴。靴は「子供、保護」の象徴。ゲルダがおろしたての赤い靴を川に捧げたことで、船が動きだし、冒険の旅が始まった。ゲルダがカイを真摯に心配し、甘えた子供心を捨て去ったことが奇跡を呼んだのだ。途中、城の王女から長靴をもらうが、最終旅では裸足になる。厳しい環境に身をおいてこそ、真の心の成長があるのだ。ゲルダが靴を脱がなければ、カイの目と心の中に入った氷を溶かすことはできなかったし、雪の女王と対決もできなかった。雪の女王はあっけなく溶け去ってしまうが、それは二人の無欲の愛に打たれたから。だが、少しあっさりしすぎていないか?原作では、「氷の板で永遠の文字を作る」という最終試練があるのにそれを省いている。その代わりに原作ではさらりと流している、盗賊の女の娘が悔悛しゲルダを助ける場面をこまやかに描く。ここが最も涙を誘う。この娘は、「子供版雪の女王」だ。このように全体としてバランスがよい。原作では、二人が町に帰還したとき、心は子供のままだが大人の姿になっていた。子供心を捨て去った代償である。後に「風の谷ナウシカ」「千と千尋の神隠し」を制作した宮崎駿氏がこの映画に感銘を受けたと伝えられているが十分にうなずける事だ。案内役を夢の神のおじいさんがするが、これは不要だろう。
[DVD(字幕)] 8点(2012-07-06 17:31:27)(良:1票)
5.  U・ボート ディレクターズ・カット版 《ネタバレ》 
Uボートは深海の英雄、灰色の狼などと呼ばれその勇躍ぶりは世界に知られるが、その任務の実態は過酷なものだった。それを世に知らしめたのがこの作品。一度出撃したら何ヶ月も荒波の中の航海が続く。艦内は狭く窮屈で、もぐれば空気は汚れる一方、快適な生活とはほど遠い。華々しく空母や駆逐艦を沈めるわけではなく、狙うのは輸送船。犠牲の多くは非戦闘員だ。たとえ敵を見つけても遠くては追いつかない。潜水艦は足が遅いのだ。一度駆逐艦に見つかれば、立ち向かう手段はなく、ひたすら隠れ、逃げるのみ。命令とあらばどんな危険な任務でも拒絶できない。艦長は英雄は幻想であると知っているので、いくら「あなたは英雄です」と讃えられてもにこりともしない。 ◆一定の戦果を挙げ、海底沈没の絶体絶命の危機を乗り越えて、生きてる喜びをかみ締めながらようやく帰還できたUボートの船員達。それをパレードの歓喜の声が待ち受ける。だが上陸の暇もあらばこそ、敵の猛烈な空襲に遭遇する。逃げ惑う船員達に容赦なく浴びせられる爆弾と弾丸。惨めに陸で死に様をさらす英雄達。爆弾を直撃され沈んでいくUボート、それを見届けてから息を引き取る艦長。戦争に英雄などなく、所詮何もかもが虚しい。それまでの重苦しい鬱積した展開を晴らすような圧巻のラストシーンは「戦場にかける橋」と同様、映画史上に残る痛烈な反戦メッセージだ。 ◆苦言を呈せば、エンターテインメントとして弱いということ。唯一の戦果である輸送船撃沈シーンを何故見せなかったのか?ソナーの音だけにしてリアリティを持たせたいのはわかるが、ここは数少ないハイライト。Uボート活躍ぶりが際立ってこそ、最後のどんでん返しのショックが大きくなるというもの。【豆知識】①Uボートが出港したのも帰還したのも同じフランスの軍港ラ・ロシェル。イタリアにたどり着いたのではない。②地中海潜入作戦の目的は北アフリカで奮戦していたロンメル将軍のアフリカ軍団への支援。③レーダー開発は連合軍の方が進んでいて、夜間襲撃が可能だった。④潜水艦同士で灯火信号を使ったのは無線だと相手に気づかれるため。⑤実物大Uボートは撮影中に、スピルバーグ監督のレイダース失われたアーク用にレンタルされたが、返却されたとたん嵐に会って沈んでしまい、回収、修復に時間がかかった。⑥船員の髭は本物。撮影期間は日に当たらないように室内で過ごしたので青白い顔も本物。
[DVD(吹替)] 9点(2011-09-05 00:34:58)(良:1票)
6.  夢(1990) 《ネタバレ》 
【日照り雨】軒先のセットは氏の家を再現したもの。黒沢氏の父は元軍人で厳しかった。家の厳しさよりも怖ろしいもの見たさの好奇心がまさった子供時代。虹はあこがれで冒険の象徴。人生の冒険の始まり。日照雨は「蜘蛛巣城」の森のシーンにつながる。【桃畑】4男4女の中で育つ。16歳で夭折した姉への追慕。伐採された桃の木の精霊との交感。伐採されたのは氏の幼年時代。涙が流れる。家族愛にも経済的にも恵まれた家庭環境であったことが窺い知れる。【雪あらし】努力すれば報われるという氏の人生哲学。雪山登山は困難を極める映画作りの象徴。雪女は母性の象徴。「雪は暖かい、氷は熱い」は、逆境こそが人生の糧になるということ。母親には甘えることができたようだ。画家を目指して挫折。映画界に入り、監督になれたのは33歳。天才ではなく努力の人だった。【トンネル】氏は体が弱く、兵役経験無しだが戦死は身近だった。さまよう戦死者の魂。戦争の無意味さと残酷さ。彼らの死に誰も責任を取らない。戦後すぐ反省をこめて撮った「わが青春に悔なし」の頃の夢か。爆弾を巻いた犬は特攻の象徴。若く散った特攻隊員の魂が氏の良心を激しく吠え立てる。【鴉】尊敬するゴッホ。画の修行時代ゴッホの画を見たあとでは全てのものがゴッホのタッチに見えたという。「どんな自然も美しい。自我を失くすと自然は夢のように絵になる。そのためには機関車のように働く」映画作りに共通する言葉。ゴッホを追うのは画家になりたいという望み。飛び立つ鴉は魂の解放の象徴。【赤冨士】「生きものの記録」と同趣旨。人間は自然の一部であることを忘れ、科学で便利さを追求し続ける人間の愚かさ。氏が子供時代、父の生家の秋田で生活した経験が影響している。自然と共存する人たちの生きざまを知ったのは貴重な経験。 【鬼哭】核汚染により鬼と化してしまった人間の地獄絵図。鬼の苦悩は氏の苦悩そのもの。人間と自然を心より愛しているが故に現実の人間に対する怒りと煩悶は強い。氏の人類への警告は生半可なものではない。 【水車のある村】 水車は自然を利用する人間の知恵の象徴。理想郷を描く。石に添える花の挿話は体験談。葬式の歌は、自然と調和して生きている人たちへの賛歌。103歳の老人は老境に達した氏の理想の姿。初恋の人は青春の象徴。その葬儀で嘆き悲しむ代わりに、喜び祝い行進する。すでに死を受容する心境にある。
[DVD(邦画)] 7点(2011-01-24 10:27:12)(良:2票)
7.  郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946) 《ネタバレ》 
女の過去は語られていないが貧困の内に育ったのは間違いない。それ故に、愛や自由よりも生活の安定を求め、一回りも二回りも年上の風貌の上がらない男性と結婚。場末のハンバーグショップを経営しながら、店を大きくすることを夢見ている。放浪好きの男が店員として入ると、その荒々しい男性的魅力にひかれる。二人は情愛を交すが、亭主が居ては幸せにはなれない。一度は駆け落ちを決意するが、断念する。女が根無し草のような貧困生活に耐えられないのだ。放浪を好む男と安定を望む女ではうまく暮らせる筈がない。二人は愛というより欲望でつながっていた。欲望の炎に焼かれながら過ごす二人にやがて殺意が芽生える。亭主さえいなくなれば!どちらともなく言い出した最初の計画は未遂に終わる。事件にもならず、ほっとする二人。男は出てゆく。だが運命の魔手が男を亭主と再会させ、店に戻す。ぎこちない復縁。そこへ亭主が店を売り、田舎に引き籠ると言い出す。田舎で姉と同居し、姉の介護をしろという。二人は躊躇無く殺害を決意。殺害は成功したが、裁判で検事の計略にはまり、二人は反目。しかし弁護士の奇策で無罪を勝ち取る。二人は店を続けるが、疑心暗鬼の雲が晴れない。弁護士の元事務員に脅迫されたりする。女は出てゆこうとするが男に止められる。女は男の愛を試すため、遠泳に誘う。「ここでなら私を殺しても誰も見てないわ」ここで初めて精神的に結ばれる二人。あとは幸せな生活が待っているはずだった。しかし帰りの車で事故を起こし、女は死亡。あらんことか男は罪に問われ、死刑宣告を受ける。無実を主張する男に検事は言う。「女の手紙が見つかり、お前との姦通が証明された。女殺しでは無罪でも、亭主殺しでは有罪だ」女殺しでは無罪と聞いて男はほっとする。死ねば一緒になれるという望みが出来たからだ。奇妙な形で結実した男女の愛の姿が斬新だ。「郵便配達は二度ベルを鳴らす」という題名だが、郵便配達とは神慮のことだろう。神は念を押してベルを鳴らす郵便夫のように罪を決して見逃さないのだ。罪を犯せば罰が下る。二人の愛が成就するためには死をもって贖う必要があった。無知と貧困とエゴにより引き起こされた罪だが、それによって真の愛に気づく二人。皮肉な運命だ。女は口紅を落として登場し、口紅を落として死ぬ。口紅は欲望の象徴。小粋な演出が光る。
[DVD(字幕)] 7点(2011-01-16 21:40:05)
8.  誘拐犯(2000) 《ネタバレ》 
途中までは十分に楽しめた。”ハプニング誘拐”で、妊婦が予想外の行動を取るとろに魅かれた。赤ん坊の父親が裏社会の人間で、大金持ちという設定が面白い。しかもお金を払えば出元がばれるのでお金は出せないという設定。少々無理があるが許容範囲だ。思わぬ人間関係のつながりが明らかになり、サスペンス度は増す。しかし間違った出口に向かってしまったようだ。最終的には偶然の出来事が重なっただけの錯綜した物語という印象。複雑な人間関係をうまく処理できてない。というより人間が描けてないのだ。◆まず誘拐犯だが、これは生活の必要上、偶然耳にした情報から誘拐をするのだから、悪人であってはならない。いつしか妊婦と心を通わせ、妊婦を守る立場を堅持すべきだった。それが途中で人殺しのプロのような行動を見せるようになり、貧乏なはずなのに高価な銃を何丁も所持し、何人も人を殺す。これじゃあ感情移入できない。妊婦を解放するのが目的に変更したのだから、お金は放っておけばよかったのだ。それでうまく逃げおおせればハッピーエンドで好印象だったのに。 ◆妊婦は自分の子供を奪われたくないからボスの元から逃げ出そうとする。なら誘拐犯と協力をすればいい。それなのに銃をぶっ放す。それに産めば100万ドルの代理母報酬はありえない。相場は5万ドル。代理母なんていくらでもいる。又普通に考えれば、生物学上の母親(卵子提供者)はボス妻の筈だ。どうして妊婦の卵子が使われたのか?医者と普通にセックスして妊娠したということになる。代理母詐欺だ。子供が欲しかったのか、お金が欲しかったのかどっちなんだ。お金が欲しかっただけが、母性が目覚めて心変わりしたのか。医者と恋愛関係にあったのか?また医者はどうしてそんな無理な要求に同意したのか。父親を困らせたかったのか。困らせる方法ならいくらでもあるはずだ。結局赤ん坊は誰の子供として育てられるのか?当然医者の子としてだろう。だから最後のボス妻が妊娠するという都合のよいオチがある。そして妊婦の父が掃除屋だと?観客を馬鹿にするな! 【気になった点】①ボスが代理母に4人ものボディガードをつけて監視している。 ②ボス妻は異常行動が多いのに事件には絡まない。誰の子を妊娠したんだ。 ③女店員のあの目つきは何?④黒人ボディーガードがホテルの経営者を誤射した。⑤掃除屋は誘拐犯の足しか撃たなかった。 
[DVD(字幕)] 6点(2010-12-26 02:02:34)
9.  夕陽のガンマン 《ネタバレ》 
前半はありえないようなシーンの連続で退屈だが、後半賞金稼ぎの二人がチームを組んでから、2転、3転する展開で楽しめた。音楽は秀逸だし、銃を発射するまでのタメや間合いが心地よい。よく練れた演出と脚本だ。二人のガンマンの友情物語でもあるし、妹の復讐譚でもある。敵ボスの人間性も描かれており、物語に重みを増している。観客の裏をかく銀行強盗も見事。ただ最後の仲間割れはいただけない。あれは賞金稼ぎのどちらかの入れ知恵でそうなる展開ならなお良かった。 ◆ただ手下やメキシコ人など類型的で、リスペクトが感じられない。虫けら同然の扱いだ。 ◆大佐は汽車を無理やり止めるし、モンコはホテルの客を強制排除するし、いわゆる”善人”ではない。善人では務まらいタフな仕事だということを言いたいのだろうが、それにしてもモンコ、やりすぎでしょ。一度は大佐を裏切るし。 ◆オルゴール付懐中時計だが、あれは若い男が女にプレゼントしたものではないのか?それを若かりしときの敵ボスが奪ったと解釈したが。でも同じものを女の兄である大佐が持っている。兄妹で同じものを持つのは珍しい。そもそも女が懐中時計を持つものなのか。というと妹が若い男にプレゼントしたものなのか。また硬派の男がオルゴール付の懐中時計など持つかという疑問もある。 ◆下手人がすぐに見つかりすぎではないか?保安官はそいつがどこの町にいるか知っているし、店で聞けば教えてくれる。逃げ隠れしたいないわけで、保安官が自分で確保しないのはどうしてだろう。 ◆モンコが保安官を正直さが足りないとなじり、バッチを奪い、他の保安官を選べというが、どうしてだろうか? ◆モンコが敵地に乗り込んだとき、葉巻を銃で撃たれて半分になったのに、次のシーンで元の長さに戻っている。 ◆帽子を何度も撃たれているのに帽子に穴があいていない。 ◆リンゴを撃っている間に敵に撃たれないのが不思議だ。 ◆銀行をお金は木にかけていただけなのに、どうして誰も気づかなかったのか。 ◆遺体を運ぶ時、ちゃんと側板を閉めましょう。絶対落ちて、数が足りなくなる。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-25 09:03:16)
10.  U.M.A レイク・プラシッド 《ネタバレ》 
◆ホラーもの、パニックものとしては成功していない。緊迫感が薄く、いつまで経っても怖くならず、あれれという間に終了。いい画が取れてるし、音楽も良質、俳優も有名人が出ているのにもったいない。一言で言うと真面目さが足らない。怪物の存在を知りながら、あんな小さなボートで行動しないでしょ。 ◆怪物そっちのけで、登場人物たちがケンカしたり、いがみあったり、恋愛したりで忙しい。土台コメディタッチの動物パニック映画って無理でしょう?それってヘリコプターでワニを捕まえるようなものだよね。或いはワニ用の罠で保安官を宙吊りにするようなものか。笑いかパニックかのどちらかに絞りましょう。 ◆怪物がワニと分った時点で興味が半減。生態がわかっているし、大型銃で退治できる。しかもおばあちゃんが餌付け?エサが牛だと?おじいちゃんは食われた?ついでに小ワニも餌付け?開いた口がふさがらないとなこのこと。おとぎ話じゃないんだから。 ◆それにしてもあの博物館の女学芸員は何のために居るのか。もうちょっと必然性を考えてくれ。生物学者ならともかく、化石を扱っている人だよね。上司にふられたっていいながら、もう恋に走っているし。 ◆「ワニは水中で襲わない」と説明があったが、最初の被害者は水中の襲われた。
[DVD(字幕)] 5点(2010-12-25 03:46:24)
11.  ユージュアル・サスペクツ 《ネタバレ》 
良いミステリーはオチが分かってから、犯人の目で再構成してみて、行動に矛盾がないかどうかで決まる。冒頭バーバルの一人称から語られるので、クリスティの「アクロイド」のようにアンフェアという意見があるが、あれは刑事に向かって語っているので筋違い。事実だけを述べる。①6週間前トラックハイジャックがあり、武器が盗まれる。②NYで密輸を警護する車が襲われ、汚職刑事が逮捕される。盗まれた宝石の行方は不明。③昨日麻薬組織のアルゼンチンの船が炎上し、27人が死亡。麻薬は無く、ソゼを知る人物が死亡。キートン死亡。④昨日キートンの恋人弁護士イーディが殺された。⑤コバヤシ(本名不明)は存在する。以上。ソゼは、自分の正体を知る人物の暗殺を計画。いつ船が経つなどの情報も入手。そこで四人を説き伏せるか脅迫し、船を襲わせた。本当は子分に襲撃させたのかも知れない。ここでキートンが射殺されたのだけは確実。残り三人の生死は不明だが、多分死亡している。ソゼはわざと警察に捕まり、作り話を証言した。これは警察にソゼ=キートン説を誘導し、ソゼを葬るため。その為唯一の証人であるイーディも殺害。最初にキートンを電話で密告したのもソゼ。辻褄は合っている。ソゼの証言者が大金で組織に売られたり、バーバルの釈放に知事から圧力がかかるなど、ソゼはかなりの大物であることは間違いない。似顔絵からソゼ=バーバルでほぼ確定。それ以上の深読みは不毛。ミスリードのソゼ=キートン説でも矛盾しない脚本は高く評価されるべき。ソゼは鉄の意志を持つ男ではなく、おしゃべりの知能犯だった。注目すべきは、最初の面通しの容疑者選びの過程。通常は本命キートン以外はホームレスを使うが、あの面子が選ばれた。ソゼの力が働いたからだ。警察に協力者がいたはずで、警察はそこをヒントにソゼに辿りつけるかも知れない。バーバルが刑事に「お前が役立たずで、バカで、弱いから利用されたんだ!」と責められ、泣くところがツボ。最大の見せ場です。
[DVD(字幕)] 9点(2009-10-11 14:59:11)
12.  夢千代日記 《ネタバレ》 
夢千代は湯里の置屋の女将。幼少の頃長崎で被爆し、恐れていた白血病が発病、余命半年と診断される。そこから物語が始まる。帰りの電車中、余部鉄橋で飛び降り自殺を目撃。同じ列車に乗っていては目撃は不可能だろう。実際問題相当ジャンプ力がないと橋枠を越えられないし、手を合わせた姿では飛べるものではない。映画では窓の上から人が降って来た。苦笑。そもそも心中するのに電車の飛び降り選ばないだろう。一瞬しか好機がないからだ。普通飛び降りるのは崖から。置屋の芸妓は不幸のオンパレード。兎は客の子供を代理出産。「もう子供を堕すのはいや」が印象的。客の妻からよろしくお願いしますと頭を下げられる。紅は自殺願望が強い。妻子ある男を好きになる。客から車をせしめ、男にプレゼントするが、結局振られる。入水自殺未遂。夢千代に「命をもてあそばないで」とビンタ。小夢は足が不自由。老画家に買われ、ヌードモデルに。絵が完成し、画家が小夢の体をむさぼっている最中に頓死。癌で余命三ヶ月だったとか。「最後の命を燃やすことができて感謝してます」と妻の弁。エロじいにしか見えなかったが、有名な画家だった。いい年をして小娘の裸に夢中になるところが笑える。其の他、本番を強要されるストリッパーなど登場。温泉町は不幸の吹き溜まり。さて飛び降り事件だが、目撃証言で自殺か殺人かが決まる。もう一人の目撃者が旅役者の宗方。夢千代は宗方に証言するように頼むが、かたくなに拒否させる。実は宗方は父親殺しの逃亡者で、時効間近。二人はいつしか魅かれあうが、恋は死で終る。宗方は逮捕。脚本に作りすぎ、詰め込みすぎの感が強い。オリジナリティーがなく、全てが類型的。夢千代の日常や心の揺れ動きに焦点を絞るべきだった。被爆者という設定が生きていない。被爆した頃の夢千代の様子を描いていないからだ。吉永小百合の女優としての魅力でもっているような作品。監督から死に際に「ピカが憎い」と言えと頼まれた吉永が拒否したという撮影挿話が残っている。言わなくて正解。耐えて、受け入れてこそ夢千代であり、憎んだりしたら夢千代じゃなくなる。
[DVD(邦画)] 5点(2009-08-08 17:34:38)
13.  許されざる者(1960) 《ネタバレ》 
オードリーがインディアンの娘だなんて、むちゃな設定だなあ。 インディアンをあんなに気味悪く演出して、悪意でもあるのだろうか? 内容はインディアン受難の物語。 とくにおもしろいところもないなあ。 出演者全員が不幸という映画もめずらしい。 気に入らないことがあると、すぐに銃なんかぶっぱなすから話がこじれるんだな。 話し合いでいこうよ、話し合いで。 意見や価値観が違っても、同じ人間どうしなんだから、話し合いでなんとかなるもんだよ。 お互い相手の立場になって考えようね。 銃社会ってほんとうにイヤだね。
[DVD(字幕)] 2点(2008-01-21 03:36:57)
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